(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022714
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】圃場管理方法、圃場管理システムおよび圃場管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125997
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】今井 友揮
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】単一の圃場が複数の領域として個別に使用されている場合に、このことを自動的に検知して分筆を提示する。
【解決手段】圃場管理方法は、1つの圃場として登録されている登録圃場(9)内を移動しつつ作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻における位置を表す位置情報に基づいて、作業装置が移動した移動軌跡(81、82、83、84、85)を検出すること(S02)と、移動軌跡に基づいて、登録圃場が複数の作業領域(91、92)として個別に使用されている可能性があるか否かを判定すること(S04)と、この可能性があるとき、登録圃場から、複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場(9A、9B)への分筆の候補として、登録圃場を複数の圃場に分けるための分筆線(90)を提示すること(S06)とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの圃場として登録されている登録圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の、複数の時刻における位置を表す位置情報に基づいて、前記作業装置が移動した移動軌跡を検出することと、
前記移動軌跡に基づいて、前記登録圃場が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があるか否かを判定することと、
前記可能性があるとき、前記登録圃場から、前記複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線を提示することと
を含む
圃場管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圃場管理方法において、
前記移動軌跡における形状の類型を表すパターンを検出すること
をさらに含み、
前記判定することは、
前記移動軌跡の前記パターンに基づいて、前記可能性があるか否かを判定すること
を含む
圃場管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圃場管理方法において、
前記登録圃場のうち、前記作業装置が前記移動軌跡に沿って前記作業を行った作業領域を検出すること
をさらに含み、
前記提示することは、
前記複数の作業領域に基づいて前記分筆線の位置および形状を算出すること
を含む
圃場管理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の圃場管理方法において、
1つの前記作業装置に由来する前記位置情報を取得すること
をさらに含み、
前記位置情報は、第1作業期間における第1位置情報と、前記第1作業期間とは異なる第2作業期間における第2位置情報とを含み、
前記移動軌跡を検出することは、
前記第1位置情報に基づいて、前記作業装置が前記第1作業期間に移動した第1の移動軌跡を検出することと、
前記第2位置情報に基づいて、前記作業装置が前記第2作業期間に移動した第2の移動軌跡を検出することとを含む
圃場管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の圃場管理方法において、
前記第1の移動軌跡を検出することは、
前記第1の移動軌跡における形状の類型を表す第1パターンが往復型であるとき、前記第1の移動軌跡のうち、前記作業装置が前記作業を実行しながら直線的に移動する第1作業軌跡が延在する第1往復方向を検出することと、
前記第2の移動軌跡における形状の類型を表す第2パターンが往復型であるとき、前記第2の移動軌跡のうち、前記作業装置が前記作業を実行しながら直線的に移動する第2作業軌跡が延在する第2往復方向を検出することと
をさらに含み、
前記判定することは、
前記第1パターンおよび前記第2パターンが往復型であり、前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とが互いに重なり合っておらず、かつ、前記第1往復方向と、前記第2往復方向との角度が、所定の基準角度より大きいとき、前記可能性があると判定すること
を含む
圃場管理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の圃場管理方法において、
第1の作業装置に由来する第1位置情報を取得することと、
前記第1の作業装置とは異なる第2の作業装置に由来する第2位置情報を取得することと
を含み、
前記移動軌跡を検出することは、
前記第1位置情報に基づいて、第1の移動軌跡を検出することと、
前記第2位置情報に基づいて、第2の移動軌跡を検出することと
を含み、
前記判定することは、
前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とに基づいて、前記可能性があるか否かを判定すること
を含む
圃場管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圃場管理方法において、
前記判定することは、
前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とが互いに重なり合っていないとき、前記可能性があると判定すること
を含む
圃場管理方法。
【請求項8】
請求項4または6に記載の圃場管理方法において、
前記判定することは、
前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とのうち、少なくとも一方が渦巻き型であるとき、前記可能性があると判定すること
を含む
圃場管理方法。
【請求項9】
1つの圃場として登録されている登録圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の、複数の時刻における位置情報に基づいて、前記作業装置が移動した移動軌跡を検出する検出部と、
前記移動軌跡に基づいて、前記登録圃場が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があるか否かを判定する判定部と、
前記可能性があるとき、前記登録圃場から、前記複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線を提示する提示部と
を備える
圃場管理システム。
【請求項10】
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現させるための圃場管理プログラムであって、
前記処理は、
1つの圃場として登録されている登録圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の、複数の時刻における位置情報に基づいて、前記作業装置が移動した移動軌跡を検出することと、
前記移動軌跡に基づいて、前記登録圃場が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があるか否かを判定することと、
前記可能性があるとき、前記登録圃場から、前記複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線を提示することと
を含む
圃場管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圃場管理方法、圃場管理システムおよび圃場管理プログラムに関し、例えば、農作業を行う圃場の管理に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
圃場の位置および範囲と、その圃場で行う農作業の記録および予定とを、サーバ上で管理する技術がある。一般的に、単一の圃場を複数の栽培領域に分けて、それぞれの栽培領域で異なる作物を栽培する場合や、それぞれの栽培領域で植付時期をずらすなどして異なる栽培スケジュールで同じ作物を栽培する場合などには、圃場をこれら複数の栽培領域に分割し、それぞれの栽培領域を個別に管理することが好ましい。ここでは、それまで単独に管理していた圃場を、管理データ上で複数の圃場に分割する処理を、分筆と呼ぶ。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特開2020-54315号公報)には、農業情報処理装置、農業情報処理方法および農業情報処理用プログラムが開示されている。特許文献1の農業情報処理装置は、一つの圃場を分割して利用する場合に、この圃場を分割するラインの位置を、ユーザが画面上で動かすなどして決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の農業情報処理装置をユーザが操作して分割ラインの位置を決定するためには、分割後のそれぞれの栽培領域の実際の面積をユーザが予め正しく把握しておく必要がある。しかし、それぞれの栽培領域の面積を事前に圃場で測定する作業は、煩雑である。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、単一の圃場が複数の領域として個別に使用されている可能性がある場合に、このことを自動的に検知して分筆を提示するための圃場管理方法、圃場管理システムおよび圃場管理プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
一実施の形態によれば、圃場管理方法は、1つの圃場(9)として登録されている圃場(9)内を移動しつつ作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻における位置を表す位置情報に基づいて、作業装置(2)が移動した移動軌跡(81、82、83、84、85)を検出すること(S02)を含む。圃場管理方法は、さらに、移動軌跡に基づいて、登録圃場(9)が複数の作業領域(91、92)として個別に使用されている可能性があるか否かを判定すること(S04)と、この可能性があるとき、登録圃場(9)から、複数の作業領域(91、92)をそれぞれ含む複数の圃場(9A、9B)への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線(90)を提示すること(S06)とを含む。
【0009】
一実施の形態によれば、圃場管理システムは、検出部(522)と、判定部(523)と、提示部(524)とを備える。検出部(522)は、1つの圃場(9)として登録されている登録圃場(9)内を移動しつつ作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻における位置情報に基づいて、作業装置(2)が移動した移動軌跡(81、82、83、84、85)を検出する。判定部(523)は、移動軌跡に基づいて、登録圃場(9)が複数の作業領域(91、92)として個別に使用されている可能性があるか否かを判定する。提示部(524)は、この可能性があるとき、登録圃場(9)から、複数の作業領域(91、92)をそれぞれ含む複数の圃場(9A、9B)への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線(90)を提示する。
【0010】
一実施の形態によれば、圃場管理プログラムは、演算装置(52)に実行させることによって所定の処理を実現させるためのものである。この処理は、1つの圃場(9)として登録されている圃場(9)内を移動しつつ作業を行う作業装置(2)の、複数の時刻における位置を表す位置情報に基づいて、作業装置(2)が移動した移動軌跡(81、82、83、84、85)を検出すること(S02)を含む。この処理は、さらに、移動軌跡に基づいて、登録圃場(9)が複数の作業領域(91、92)として個別に使用されている可能性があるか否かを判定すること(S04)と、この可能性があるとき、登録圃場(9)から、複数の作業領域(91、92)をそれぞれ含む複数の圃場(9A、9B)への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線(90)を提示すること(S06)とを含む。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、単一の圃場が複数の領域として個別に使用されている可能性がある場合に、このことを自動的に検知して分筆を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施の形態による圃場管理システムの一構成例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、一実施の形態による往復型の移動軌跡の一構成例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、一実施の形態による往復型の移動軌跡の別の一構成例を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、一実施の形態による渦巻き型の移動軌跡の一構成例を示す図である。
【
図2D】
図2Dは、一実施の形態による複合型の移動軌跡の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による圃場管理装置の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による圃場管理方法の処理の一構成例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、一実施の形態による分筆提案条件について説明するための図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による分筆提案表示の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施の形態による分筆提案条件について説明するための図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態による分筆提案条件について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
圃場を管理する営農システムにおいて、その使用者は、自身が管轄するそれぞれの圃場を登録して管理する。営農システムでは、登録されている圃場のそれぞれについて、その位置および範囲を表す圃場データと、過去に行った農作業の記録や将来行う農作業の予定などを表す作業データとを記録する。
【0014】
単一の圃場を複数の作業領域に分け、それぞれの作業領域で異なる農作物を育成したり、それぞれの作業領域で同じ農作物を異なる栽培スケジュールで栽培したりする場合には、営農システムにおいてそれぞれの作業領域を個別の圃場として登録して管理することが好ましい。これは、営農システムに記録された圃場データに基づいて、登録されている圃場ごとに作業を管理するからである。また、予定されている作業を行う対象となる圃場の、圃場データ上に記録された範囲が、実際に作業を行う作業領域の範囲と異なれば、営農システムが使用者に提供するデータの精度が低下する場合があるからである。
【0015】
しかし、営農システムに登録されている圃場の圃場データを、実際の運用に即して複数の作業領域に分ける分筆処理は、使用者にとって煩わしく、無視できない負担が発生する場合がある。そこで、本開示では、圃場内で移動しつつ作業を行った作業装置の、複数の時刻における位置情報に基づいて、単一の圃場が複数の領域として個別に使用されている可能性がある場合に、このことを自動的に検知して使用者に分筆を提示することのできる圃場管理方法、圃場管理システムおよび圃場管理プログラムを提案する。
【0016】
添付図面を参照して、本開示による圃場管理方法、圃場管理システムおよび圃場管理プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による圃場管理システム1は、作業装置2に搭載された搭載端末3と、圃場管理装置5と、外部端末6とを備える。一例として、外部端末6は、スマートフォンやタブレット端末などを含んでもよい。
【0018】
作業装置2は、圃場9で地上を移動しながら農作業を行うトラクターやコンバインなどの作業車両を含む。作業装置2は、さらに、圃場9の上方を飛行しながら農作業を行うドローンなどを含んでもよい。
【0019】
搭載端末3と、圃場管理装置5と、外部端末6とは、ネットワーク4を介した無線通信および/または有線通信によって各種情報の送受信を行う。一例として、搭載端末3は、作業装置2が圃場9内で移動しながら作業したときに通過した複数の地点の位置をGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などで測定した位置情報を、ネットワーク4を介して、圃場管理装置5へ送信する。圃場管理装置5は、受信した位置情報に基づいて、圃場9が複数の作業領域として個別に使用されているか否かを判定する。また、圃場管理装置5は、圃場9が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があると判定したとき、圃場9から、これら複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場へ分筆する分筆線を、分筆候補として提示する。外部端末6は、分筆候補を、使用者が視覚的に確認できるように表示出力してもよい。
【0020】
作業装置2が圃場9内で作業を行うときに移動する移動軌跡には、複数のパターンが存在する。移動軌跡のパターンとは、移動軌跡の形状の類型であり、一例として往復型および渦巻き型がある。一実施の形態では、1つの圃場9内に、互いに異なるパターンの移動軌跡で作業された複数の作業領域が検出されたとき、圃場9が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があると判定される。
【0021】
図2Aの例では、移動軌跡80Aは、複数の直線状の作業軌跡801Aと、複数の曲線状の旋回軌跡802Aとを含む。作業装置2は、作業領域91のほぼ全域にわたって、所定のX軸方向に対してほぼ平行な方向に延在する複数の作業軌跡801Aに沿って作業を行う。また、作業装置2は、ある作業軌跡801Aから別の作業軌跡801Aへ移動するとき、作業を中断して、曲線状の旋回軌跡802Aに沿って旋回しながら移動する。このような移動軌跡80Aを、ここでは、往復型の移動軌跡80Aと呼ぶ。なお、
図2Aの例では、作業軌跡801Aが延在する方向は、圃場9の長手方向に対してほぼ平行であるが、
図2Bの例に示すように、往復型の移動軌跡80Bの作業軌跡801Bは、圃場9の長手方向以外のY軸方向に対して平行であってもよい。一実施の形態では、同一の圃場9内に存在する2つの往復型の移動軌跡80A、80Bのうち、旋回軌跡802A、802B以外の、作業軌跡801A、801Bが延在する方向が互いに異なるとき、これら2つの往復型の移動軌跡80A、80Bはパターンが互いに異なるものとして取り扱う。なお、2つの作業軌跡801A、801Bが延在する方向の角度が、所定の基準角度より大きいとき、作業軌跡801A、801Bが延在する方向が互いに異なると判定してもよい。
【0022】
図2Cの例では、作業装置2は作業領域91のほぼ全域にわたって、作業領域91の周縁に沿って周回しながら外側から内側へ移動しながら作業を行う。このような移動軌跡80Cを、ここでは、渦巻き型の移動軌跡80Cと呼ぶ。一実施の形態では、往復型の移動軌跡80A、80Bと、渦巻き型の移動軌跡80Cとは、パターンが互いに異なるものとして取り扱う。なお、作業装置2が内側から外側へ移動しながら周回する移動軌跡も渦巻き型として取り扱う。ただし、外側から内側へ向かう渦巻き型の移動軌跡と、内側から外側へ向かう渦巻き型の移動軌跡とは、パターンが互いに異なるものとして取り扱ってもよい。また、時計回りに周回する渦巻き型の移動軌跡と、反時計回りに周回する渦巻き型の移動軌跡とは、パターンが互いに異なるものとして取り扱ってもよい。
【0023】
さらに、
図2Dに示すように、作業領域91の外側部分を渦巻き型の移動軌跡80Dに沿って作業し、残る内側部分を往復型の移動軌跡80Eに沿って作業する場合がある。このような移動軌跡を、ここでは、複合型の移動軌跡と呼ぶ。ただし、複合型の移動軌跡のうち、外側の渦巻き型の移動軌跡80Dで先に作業してもよいし、
図2Dの進行方向を逆にして内側の往復型の移動軌跡80Eで先に作業してもよい。なお、以下の説明においては、複合型の移動軌跡のうち、外側の渦巻き型の移動軌跡80Dによって作業領域91の形状が推測可能であることから、複合型の移動軌跡も渦巻き型の移動軌跡80Cの一種として取り扱う。ただし、先に外側で作業する複合型の移動軌跡と、先に内側で作業する複合型の移動軌跡とは、パターンが互いに異なるものとして取り扱ってもよい。
【0024】
図3に示すように、一実施の形態による圃場管理装置5は、いわゆるコンピュータとして構成されてもよい。
図3の例において、圃場管理装置5は、バス51と、演算装置52と、記憶装置53と、通信装置54と、入出力装置55とを備える。バス51は、演算装置52、記憶装置53、通信装置54および入出力装置55を、互いに通信可能に接続するように構成されている。
【0025】
演算装置52は、取得部521と、検出部522と、判定部523と、提示部524とを備える。記憶装置53は、圃場管理プログラム記憶部531と、データベース532とを備える。圃場管理プログラム記憶部531は、圃場管理プログラムを記憶する。データベース532は、圃場9の位置および範囲を管理する圃場データと、圃場9で行う作業の記録および予定を管理する作業データとを格納する。
【0026】
演算装置52は、圃場管理プログラムを読み出して実行することによって、取得部521、検出部522、判定部523および提示部524のそれぞれの機能を実現する。取得部521、検出部522、判定部523および提示部524のそれぞれは、演算装置52および記憶装置53が協働して実現する処理を実行する仮想的な機能ブロックである。取得部521は、搭載端末3から送信された作業装置2の位置情報を取得する。検出部522は、位置情報に基づいて、作業装置2が移動した移動軌跡を検出する。検出部522は、さらに、移動軌跡に基づいて、圃場9のうち、作業装置2が作業を行った作業領域を検出する。判定部523は、圃場9内に互いに独立した複数の作業領域が存在するか否かを判定する。提示部524は、圃場9内に互いに独立した複数の作業領域が存在するとき、圃場9から複数の作業領域への分筆を提示する。これらの機能ブロックのより具体的な処理については、後述する。
【0027】
圃場管理プログラムは、外部の記録媒体530から読み出されて圃場管理プログラム記憶部531に格納されてもよい。記録媒体530は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0028】
通信装置54は、ネットワーク4を介する無線通信および/または有線通信により、搭載端末3および/または外部端末6を含む外部の装置との通信を行う。
【0029】
入出力装置55は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置55は、画像を出力する表示装置、入力を受け付けるキーボードおよび/またはマウスなどを含む。
【0030】
図4のフローチャートを参照して、一実施の形態による圃場管理方法の処理の一例について説明する。圃場管理方法の処理は、圃場管理装置5が起動するときに開始してもよい。このとき、圃場管理装置5の演算装置52が圃場管理プログラムを実行することによって、圃場管理方法の処理が実現される。
【0031】
図4のフローチャートが開始すると、ステップS01が実行される。ステップS01において、圃場管理装置5の取得部521が、搭載端末3から送信された作業装置2の位置情報を取得する。
【0032】
より詳細には、まず、作業装置2がキーオン状態になり、圃場9内を移動しつつ行う作業を開始する。このとき、作業装置2に搭載された搭載端末3が、作業装置2がキーオン状態になってからキーオフ状態になるまでの複数の時刻に、作業装置2が通過した地点の位置をGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などにより測定することによって、作業装置2の位置情報を生成する。作業装置2が通過した地点のうち、位置を測定した地点を測位点と呼ぶ。搭載端末3は、それぞれの測位点における位置の測定を、所定の時間間隔ごとに周期的に行ってもよい。位置情報は、それぞれの測位点の位置を測定した測位情報と、位置を測定した測定時刻を表す時刻情報とを対応付けて含んでもよい。
【0033】
位置情報は、さらに、測位時刻のそれぞれにおける作業装置2の状態を表す状態情報を含んでもよい。ここで、状態情報は、測位情報および時刻情報に対応付けられてもよい。また、作業装置2の状態は、作業装置2が備える作業機が、圃場9に対する作業を実行していたか、あるいは中断していたかを表す。作業を行う作業機は、例えば、播種を行う播種装置、施肥を行う施肥装置、収穫を行う収穫装置などを含む。前述のとおり、往復型の移動軌跡は、作業装置2が作業を行いながら移動する直線状の作業軌跡と、作業装置2が作業を中断して移動する曲線状の旋回軌跡とを含む。なお、作業装置2の状態情報は、搭載端末3が、作業装置2の作業機が作業を実行しているか、あるいは中断しているかをモニタすることによって生成してもよい。
【0034】
搭載端末3は、生成した位置情報を、ネットワーク4を介して、圃場管理装置5へ送信する。圃場管理装置5の取得部521は、位置情報を受信して取得する。取得部521は、取得した位置情報を記憶装置53に格納してもよい。
【0035】
ステップS01の後、ステップS02が実行される。ステップS02において、圃場管理装置5の検出部522が、位置情報に基づいて、作業装置2が作業をしつつ圃場9内を移動した移動軌跡を検出する。
【0036】
一例として、検出部522が、位置情報に含まれる複数の測位情報がそれぞれ表す複数の測位点を、それぞれの測位情報に対応する時刻情報が表す測定時刻の順に並べる。このときに、測定時刻が隣接する任意の2つの測位点を直線(正確には線分)で結ぶことで得られる線を、作業装置2の移動軌跡として検出部522が検出する。
【0037】
ここで、検出部522は、一度に取得された一連の位置情報に基づいて、2つまたはそれ以上の移動軌跡を検出してもよい。これは、例えば、同一の作業装置2が、圃場9に含まれる第1の作業領域では第1の作業を行い、同じ圃場9に含まれる第1の作業領域とは別の第2の作業領域では第1の作業とは別の第2の作業を行った場合などに発生し得る。より詳細には、同一の圃場9のうち、第1の作業領域と第2の作業領域とでそれぞれ異なる作物を栽培する場合などに発生し得る。
【0038】
一例として、同一の作業装置2から取得された一連の位置情報の一部に基づいて第1の移動軌跡が検出され、同じ位置情報の別の一部に基づいて第2の移動軌跡が検出され、これら第1の移動軌跡と第2の移動軌跡とが互いに重なり合っておらず、かつ、これら第1の移動軌跡と第2の移動軌跡とのパターンが互いに異なるとき、検出部522は、これら第1の移動軌跡と第2の移動軌跡とを個別の移動軌跡として検出する。ここで、2つの移動軌跡が互いに重なり合わないことは、2つの移動軌跡が互いに交差しておらず、かつ、互いに重なる部分が存在しないことを意味する。
【0039】
第1の移動軌跡の作業軌跡と、第2の移動軌跡の作業軌跡とが互いに重なり合っていないとき、第1の移動軌跡と第2の移動軌跡とが互いに独立していると判定される。一例として、同一の作業装置2で、同一の圃場9に含まれる複数の作業領域のそれぞれにおいて異なる複数の作業を連続して行うとき、第1の作業領域で第1の作業を完了してから、第2の作業領域で第2の作業を開始するまでに、作業装置2が作業を中断した状態のまま、作業領域の間を移動したり、作業者が休憩を取ったりする場合がある。このような観点から、検出部522は、一連の位置情報に含まれる複数の測位点のうち、作業状態が中断状態である測位点を抽出することで、一連の位置情報から複数の移動軌跡を検出してもよい。すなわち、抽出した測位点に対応する測位時刻のうち、所定の長さまたはそれ以上の期間にわたって作業状態が連続して中断状態であった作業中断期間を検出することで、作業中断期間より前の期間に作業装置2が移動しつつ作業を行った第1の移動軌跡と、作業中断期間より後の期間に作業装置2が移動しつつ作業を行った第2の移動軌跡とを区別して検出してもよい。
【0040】
図4のステップS02の後、ステップS03が実行される。ステップS03において、圃場管理装置5の検出部522が、移動軌跡のパターンを検出する。移動軌跡のパターンは、前述のとおり、移動軌跡における形状の類型を表す。
【0041】
より詳細には、検出部522が、移動軌跡が往復型であるか、渦巻き型であるかを検出する。一例として、検出部522は、画像処理やAI(Artificial Intelligence:人工知能)などを使用して、移動軌跡のパターンを検出してもよい。移動軌跡から直線状の部分を抽出し、抽出した複数の直線状軌跡が所定の第1方角に対してほぼ平行に延在しており、かつ、時間に応じてこれら複数の直線状軌跡がこの第1方角にほぼ直交する第2方角に向かって増えるように配置されているとき、移動軌跡は往復型であると判定してもよい。また、複数の直線状軌跡が周回するように配置されているとき、移動軌跡は渦巻き型であると判定してもよい。
【0042】
本実施の形態では、
図4のステップS02で検出された2つの移動軌跡のパターンが両方とも往復型であり、かつ、これら2つのパターンが異なる場合について説明する。両方のパターンが往復型であり、かつ、同じパターンである場合については、第2の実施の形態として説明する。また、少なくとも一方の移動軌跡のパターンが渦巻き型である場合については、第3の実施の形態として説明する。
【0043】
往復型の移動軌跡80A、80Bに含まれる作業軌跡801A、801Bが延在する方向を、便宜上、往復方向と呼ぶ。
【0044】
図5の例では、作業装置2が、圃場9内で、まず、始点811から終点812まで、第1の移動軌跡81に沿って移動しつつ第1の作業を行い、次に、始点821から終点822まで、第2の移動軌跡82に沿って移動しつつ第2の作業を行った場合の、各移動軌跡81、82を示している。第1の移動軌跡81と、第2の移動軌跡82とは、互いに重なり合っていない。さらに、第1の移動軌跡81の往復方向はX軸方向であり、第2の移動軌跡82の往復方向はY軸方向であり、X軸方向とY軸方向との角度は、2つの移動軌跡81、82の往復方向を区別するには十分に大きい。これらの結果から、
図5の例に示した第1の移動軌跡81と第2の移動軌跡82とは、パターンが互いに異なる。
【0045】
図4のステップS03の後、ステップS04が実行される。ステップS04において、圃場管理装置5の判定部523が、圃場9が複数の作業領域91、92として個別に使用されている可能性があるか否かを判定する。ここで、判定部523は、2つの移動軌跡81、82が互いに重なり合っていないとき、これら2つの移動軌跡81、82にそれぞれ由来する2つの作業領域91、92が個別に使用されている可能性があると判定する。
【0046】
圃場9が複数の作業領域91、92として個別に使用されている可能性は無いと判定された場合(No)、
図4のフローチャートの処理は終了する。反対に、圃場9が複数の作業領域91、92として個別に使用されている可能性があると判定された場合(Yes)、処理はステップS05へ進む。
【0047】
図4のステップS05において、圃場管理装置5の検出部522が、圃場9のうち、作業装置2がそれぞれの移動軌跡81、82に沿って作業を行った作業領域を検出する。
【0048】
より詳細には、検出部522が、ステップS02で検出した移動軌跡81、82のそれぞれに対応する作業領域を検出する。一例として、作業装置2が実際に作業を行った領域に作業領域をより一致させるために、任意の移動軌跡81、82に含まれる測位点の凸包を算出し、算出した凸包の外周から作業装置2の作業幅に応じた所定の拡張幅だけ外側に拡張した面積を、その移動軌跡81、82に対応する作業領域として検出してもよい。ここで、作業幅とは、作業装置2が作業を行いながら移動する前進方向に直交する幅方向における、作業装置2がそれぞれの瞬間において圃場9に対して作業を行う作業範囲の長さである。作業幅は、作業装置2が行う作業ごとに異なってもよい。作業装置2が行う作業ごとの作業幅を表す具体的な数値は、例えば、使用者が事前に外部端末6を使用するなどして入力し、圃場管理装置5のデータベース532に格納されていてもよい。また、拡張幅は、作業装置2の位置を測定するGNSSアンテナの位置から、作業範囲の外周までの、幅方向における距離である。拡張幅の一例として、GNSSアンテナが、作業装置2の、幅方向に対して中央に配置されている場合は、作業幅の半分を拡張幅としてもよい。拡張幅の別の一例として、GNSSアンテナが、作業装置2の幅方向における中央からオフセットされて配置されている場合は、拡張幅を幅方向に適宜に増減してもよい。
【0049】
図5の例では、第1の移動軌跡81に対応する作業領域として、第1の作業領域91が検出されている。同様に、第2の移動軌跡82に対応する作業領域として、第2の作業領域92が検出されている。このとき、
図5の例に示すように、2つの互いに独立した移動軌跡81、82にそれぞれ対応する2つの作業領域91、92は、互いに独立している。すなわち、第1の作業領域91と第2の作業領域92とは互いに重なっていない。
【0050】
図4のステップS05の後、ステップS06が実行される。ステップS06において、圃場管理装置5の提示部524が、使用者に、検出された複数の独立した作業領域91、92をそれぞれ含む複数の圃場に圃場9を分けるための分筆線を提示する。
【0051】
より詳細には、提示部524は、圃場9を検出された複数の作業領域91、92に分筆するための分筆線の位置および形状を、圃場9の位置および範囲と、それぞれの作業領域91、92の位置および範囲とに基づいて決定する。分筆線の位置および形状を表す情報を、圃場管理システム1が使用者に分筆を提示するための分筆提示情報と呼ぶ。分筆提示情報は、さらに、圃場9の位置および範囲を表す圃場情報と、それぞれの作業領域91、92の位置および範囲を表す情報とを含んでもよい。
【0052】
分筆提示情報は、使用者が所有する外部端末6が表示してもよい。このとき、提示部524は、通信装置54を制御し、ネットワーク4を介して、分筆提示情報を外部端末6へ送信する。外部端末6は、分筆提示情報を受信し、画面上に表示するなどして分筆提示情報を出力する。ここで、外部端末6は、地図上に、圃場9の位置および範囲と、提示する分筆を行った場合に圃場として登録するそれぞれの作業領域91、92の位置および範囲と、圃場9を複数の作業領域91、92に分割する分筆線の位置とを表示してもよい。
【0053】
図6の例では、
図5の圃場9を分筆した場合に圃場9の代わりに登録される2つの分筆後圃場9A、9Bと、このときに圃場9を分筆する分筆線90とを示している。第1の分筆後圃場9Aは、第1の作業領域91を含むように設定されている。同様に、第2の分筆後圃場9Bは、第2の作業領域92を含むように設定されている。さらに、第1の分筆後圃場9Aと、第2の分筆後圃場9Bとは、分筆線90によって互いに接している。なお、
図6の例では、
図5の例に示した圃場9の全てが第1の分筆後圃場9Aまたは第2の分筆後圃場9Bに含まれている。
【0054】
図4のステップS06が終了すると、
図4のフローチャートの処理は終了する。その後、使用者は、外部端末6を操作するなどして、提示された分筆線90を受け入れてもよいし、拒否してもよいし、分筆線90の位置および/または形状を修正した上で受け入れてもよい。さらにその後、圃場管理装置5、圃場管理システム1またはその他のシステムが、分筆処理を実行してもよい。
【0055】
以上に説明したように、一実施の形態による圃場管理方法、圃場管理システム1および圃場管理プログラムによれば、単一の圃場9が複数の領域として個別に使用されている可能性がある場合に、このことを自動的に検知して分筆を提示することができる。
【0056】
(変形例)
上述した第1の実施の形態において、圃場管理装置5がコンピュータとして構成されている場合の構成について説明した。この構成の変形例として、圃場管理装置5は、例えば営農システムなどの、より大規模なサーバの一部として構成されてもよい。
【0057】
(変形例)
上述した第1の実施の形態において、圃場9の圃場データおよび作業データがデータベース532に格納されている場合の構成について説明した。この構成の変形例として、圃場9の圃場データおよび作業データの一部または全てが、圃場管理装置5の外部のデータベースに格納されていてもよい。この場合、圃場管理装置5は、ネットワーク4を介して外部のデータベースにアクセスしてデータの読み出しおよび/または書き込みを行ってもよい。
【0058】
(変形例)
上述した第1の実施の形態において、
図4のステップS03で移動軌跡のパターンを、画像処理やAIなどを使用して検出する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、移動軌跡のパターンを、位置情報に含まれる複数の測位点にそれぞれにおける移動ベクトルに基づいて算出してもよい。この場合において、往復型の移動軌跡の往復方向は、この移動軌跡に含まれる複数の測位点のそれぞれにおける移動ベクトル方向の分布に基づいて検出される。より詳細には、作業装置2が、往復型の移動軌跡のうち、直線状の作業軌跡に沿って移動するとき、作業装置2の移動ベクトル方向の分布は、この作業軌跡に平行な第1方向またはこの第1方向の逆方向に集中する。反対に、作業装置2が、往復型の移動軌跡のうち、曲線状の旋回軌跡に沿って移動するとき、作業装置2の移動ベクトル方向の分布は、特定の方向に集中しない。一般的に、往復型の移動軌跡の場合、各測位点における移動ベクトル方向の分布が最も多い方向が、往復方向に一致する。より詳細には、一連の位置情報からその一部を抽出し、抽出した一部の位置情報に基づいて検出した移動軌跡の移動ベクトル方向が、所定の第1方向を含む第1方向範囲と、第1方向の逆方向を含む第2方向範囲とに集中して分布しているとき、この移動軌跡は往復型の移動軌跡であり、その往復方向が第1方向およびその逆方向であることが検出される。なお、第1方向範囲と、第2方向範囲とは、水平方向の全方向の所定の角度ごとに分割した範囲のうち、第1方向と第1方向の逆方向とをそれぞれ含む範囲であってもよい。
【0059】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態では、検出部522が、
図4のステップS02において、1つの作業装置2に由来する位置情報に基づいて複数の往復型の移動軌跡81、82を検出し、その後、ステップS05において、これら複数の移動軌跡81、82に基づいて複数の作業領域91、92を検出する場合の構成について説明した。本実施の形態では、この構成の変形例として、複数の作業装置2に由来する位置情報に基づいて複数の移動軌跡を検出する場合の構成について説明する。
【0060】
本実施の形態による圃場管理システム1および圃場管理装置5は、
図1および
図3に示した第1の実施の形態による圃場管理システム1および圃場管理装置5と同じである。
【0061】
本実施の形態による圃場管理方法および圃場管理プログラムの処理は、
図4のフローチャートに示した第1の実施の形態による圃場管理方法および圃場管理プログラムの処理に、以下の変更を加えることで得られる。
【0062】
図4のステップS01において、取得部521が、複数の作業装置2から位置情報を個別に取得する。ここで、複数の作業装置2のそれぞれに搭載された搭載端末3は、対応する作業装置2を前記取得部521が識別するための識別情報を、対応する作業装置2の位置情報にさらに対応付けて、前記位置情報を生成する。それぞれの作業装置2に搭載された搭載端末3が、対応する作業装置2の位置情報を生成して圃場管理装置5へ送信する動作は、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0063】
図4のステップS02において、検出部522が、複数の位置情報のそれぞれに基づいて移動軌跡を検出する。このとき、それぞれの位置情報から単独の移動軌跡を1つずつ検出してもよいし、少なくとも1つの位置情報から複数の移動軌跡を検出してもよい。1つの位置情報から複数の移動軌跡を検出する処理は、第1の実施の形態と同様であってもよい。ただし、第1の実施の形態との相違点として、異なる2つの作業装置2にそれぞれ由来する2つの位置情報から2つの往復型の移動軌跡をそれぞれ検出するとき、これら2つの移動軌跡が互いに独立していると判定する条件に、2つの移動軌跡の往復方向が異なることは含まれなくてもよい。
【0064】
本実施の形態による
図4のステップS03、ステップS04、ステップS05、ステップS06の処理は、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0065】
図7の例では、第1の作業装置2が、圃場9内で、始点811から終点812まで、第1の移動軌跡81に沿って移動しつつ第1の作業を行い、第1の作業装置2とは別の第2の作業装置2が、同じ圃場9内で、始点831から終点832まで、第2の移動軌跡83に沿って移動しつつ第2の作業を行った場合の、各移動軌跡81、83を示している。
図7の例において、第1の作業装置2が第1の作業を行った第1期間と、第2の作業装置2が第2の作業を行った第2期間とは、同じ期間を共有してもよいし、しなくてもよい。
【0066】
図7の例において、
図5の場合と同様に、第1の移動軌跡81と、第2の移動軌跡83とは、互いに重なり合っていない。その一方で、
図7の例では、
図5の場合とは異なり、第1の移動軌跡81の往復方向と、第2の移動軌跡83の往復方向とは、いずれもX軸方向に平行である。このような場合でも、判定部523は、第1の移動軌跡81に基づいて検出される第1の作業領域91と、第2の移動軌跡83に基づいて検出される第2の作業領域92とは、個別に使用された可能性があると判定してよい。その理由は、第1の移動軌跡81に沿って移動しつつ第1の作業を行った第1の作業装置2と、第2の移動軌跡83に沿って移動しつつ第2の作業を行った第2の作業装置2とが、互いに異なる作業装置2であるからである。
【0067】
以上に説明したように、一実施の形態による圃場管理方法、圃場管理システム1および圃場管理プログラムによれば、単一の圃場9が複数の領域として複数の作業装置2によってそれぞれ個別に使用されている可能性がある場合に、このことを自動的に検知して分筆を提示することができる。
【0068】
(第3の実施の形態)
上述した第1、第2の実施の形態では、検出部522が、
図4のステップS02において、移動軌跡に基づいて互いに重なり合っていない複数の往復型の移動軌跡81、82、83を検出し、その後、ステップS05において、これら複数の往復型の移動軌跡81、82、83に基づいて個別に使用された可能性がある複数の作業領域91、92を検出する場合の構成について説明した。本実施の形態では、これらの構成の変形例として、移動軌跡に基づいて互いに重なり合っていない複数の渦巻き型の移動軌跡を検出し、これら複数の渦巻き型の移動軌跡に基づいて個別に使用された可能性がある複数の作業領域を検出する場合の構成について説明する。
【0069】
本実施の形態による圃場管理システム1および圃場管理装置5は、
図1および
図3に示した第1の実施の形態による圃場管理システム1および圃場管理装置5と同じである。
【0070】
本実施の形態による圃場管理方法および圃場管理プログラムの処理は、
図4のフローチャートに示した第1の実施の形態による圃場管理方法および圃場管理プログラムの処理に、以下の変更を加えることで得られる。
【0071】
図4のステップS01において、取得部521が、1台または複数台の作業装置2から位置情報を取得する。圃場9内で作業した作業装置2の総数が1台であれば、第1の実施の形態の場合と同様に、取得部521は一連の位置情報を取得する。圃場9内で作業した作業装置2の総数が複数台であれば、第2の実施の形態の場合と同様に、取得部521はそれぞれの作業装置2のそれぞれから一連の位置情報を取得する。
【0072】
図4のステップS02において、検出部522が、位置情報に基づいて移動軌跡を検出する。圃場9内で作業した作業装置2の総数が1台であれば、第1の実施の形態の場合と同様に、検出部522は、一連の位置情報から複数の移動軌跡を検出してもよい。圃場9内で作業した作業装置2の総数が複数台であれば、第2の実施の形態の場合と同様に、検出部522は、それぞれの位置情報から単独の移動軌跡を1つずつ検出してもよいし、少なくとも1つの位置情報から複数の移動軌跡を検出してもよい。
【0073】
本実施の形態では、検出した移動軌跡のうちの少なくとも1つが渦巻き型である場合について説明する。前述のとおり、渦巻き型の移動軌跡は、作業装置2が、圃場9または作業領域の周縁に沿って周回しながら外側から内側へ移動する形状を有する。また、前述のとおり、複合型の移動軌跡も、ここでは渦巻き型の移動軌跡として取り扱う。
【0074】
作業装置2が1つの作業領域に対して渦巻き型の移動軌跡に沿って移動しながら作業を行うとき、最初にこの作業領域の最も外側の周縁に沿って周回を始める場合がある。このような場合、もし単一の圃場9内に複数の互いに重なり合っていない移動軌跡が検出され、かつ、これら複数の移動軌跡のうちの少なくとも1つが渦巻き型であった場合は、圃場9内で作業を行った作業装置2の総数によらず、少なくとも、渦巻き型の移動軌跡に対応する作業領域と、その他の移動軌跡に対応する作業領域とは、個別に使用された可能性があると判定される。
【0075】
図8の例では、作業装置2が、圃場9内で、始点841から終点842まで、第1の移動軌跡84に沿って移動しつつ第1の作業を行い、さらに、始点851から終点852まで、第2の移動軌跡85に沿って第2の作業を行った場合の、各移動軌跡84、85を示している。ここで、第1の作業を行った作業装置2と、第2の作業を行った作業装置2とは、同一の作業装置2であってもよいし、異なる2台の作業装置2であってもよい。また、異なる2台の作業装置2が第1の作業と第2の作業とをそれぞれ行った場合、第1の作業装置2が第1の作業を行った第1期間と、第2の作業装置2が第2の作業を行った第2期間とは、同じ期間を共有してもよいし、しなくてもよい。
【0076】
図8の例において、
図5の場合と同様に、第1の移動軌跡84と、第2の移動軌跡85とは、互いに重なり合っていない。その一方で、
図8の例では、
図5の場合とは異なり、第1の移動軌跡84と、第2の移動軌跡85とは、いずれも、渦巻き型である。このような場合において、判定部523は、第1の移動軌跡84に基づいて検出される第1の作業領域91と、第2の移動軌跡85に基づいて検出される第2の作業領域92とは、個別に使用された可能性があると判定する。その理由は、第1の移動軌跡84と、第2の移動軌跡85とのうち、少なくとも1つが渦巻き型であるとの条件を満たしているからである。
【0077】
以上に説明したように、一実施の形態による圃場管理方法、圃場管理システム1および圃場管理プログラムによれば、単一の圃場9が複数の領域として個別に使用された可能性があり、かつ、少なくとも1つの領域において作業装置2が渦巻き型の移動軌跡84、85に沿って移動しつつ作業を行った場合に、このことを自動的に検知して分筆を提示することができる。
【0078】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0079】
(付記)
各実施の形態で記載した圃場管理方法、圃場管理システムおよび圃場管理プログラムは、以下のように言うことができる。
【0080】
第1の態様に係る圃場管理方法は、
1つの圃場として登録されている登録圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の、複数の時刻における位置を表す位置情報に基づいて、前記作業装置が移動した移動軌跡を検出することと、
前記移動軌跡に基づいて、前記登録圃場が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があるか否かを判定することと、
前記可能性があるとき、前記登録圃場から、前記複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線を提示することと
を含む。
【0081】
第2の態様に係る圃場管理方法は、
第1の態様に係る圃場管理方法であって、
前記移動軌跡における形状の類型を表すパターンを検出すること
をさらに含み、
前記判定することは、
前記移動軌跡の前記パターンに基づいて、前記可能性があるか否かを判定すること
を含む。
【0082】
第3の態様に係る圃場管理方法は、
第1または第2の態様に係る圃場管理方法であって、
前記登録圃場のうち、前記作業装置が前記移動軌跡に沿って前記作業を行った作業領域を検出すること
をさらに含み、
前記提示することは、
前記複数の作業領域に基づいて前記分筆線の位置を算出すること
を含む。
【0083】
第4の態様に係る圃場管理方法は、
第1~第3のいずれか1つの態様に係る圃場管理方法であって、
1つの前記作業装置に由来する前記位置情報を取得すること
をさらに含み、
前記位置情報は、第1作業期間における第1位置情報と、前記第1作業期間とは異なる第2作業期間における第2位置情報とを含み、
前記移動軌跡を検出することは、
前記第1位置情報に基づいて、前記作業装置が前記第1作業期間に移動した第1の移動軌跡を検出することと、
前記第2位置情報に基づいて、前記作業装置が前記第2作業期間に移動した第2の移動軌跡を検出することと
を含む。
【0084】
第5の態様に係る圃場管理方法は、
第4の態様に係る圃場管理方法であって、
前記第1の移動軌跡を検出することは、
前記第1の移動軌跡における形状の類型を表す第1パターンが往復型であるとき、前記第1の移動軌跡のうち、前記作業装置が前記作業を実行しながら直線的に移動する第1作業軌跡が延在する第1往復方向を検出することと、
前記第2の移動軌跡における形状の類型を表す第2パターンが往復型であるとき、前記第2の移動軌跡のうち、前記作業装置が前記作業を実行しながら直線的に移動する第2作業軌跡が延在する第2往復方向を検出することと
をさらに含み、
前記判定することは、
前記第1パターンおよび前記第2パターンが往復型であり、前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とが互いに重なり合っておらず、かつ、前記第1往復方向と、前記第2往復方向との角度が、所定の基準角度より大きいとき、前記可能性があると判定すること
を含む。
【0085】
第6の態様に係る圃場管理方法は、
第1~第3のいずれか1つの態様に係る圃場管理方法であって、
第1の作業装置に由来する第1位置情報を取得することと、
前記第1の作業装置とは異なる第2の作業装置に由来する第2位置情報を取得することと
を含み、
前記移動軌跡を検出することは、
前記第1位置情報に基づいて、第1の移動軌跡を検出することと、
前記第2位置情報に基づいて、第2の移動軌跡を検出することと
を含み、
前記判定することは、
前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とに基づいて、前記可能性があるか否かを判定すること
を含む。
【0086】
第7の態様に係る圃場管理方法は、
第6の態様に係る圃場管理方法であって、
前記判定することは、
前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とが互いに重なり合っていないとき、前記可能性があると判定すること
を含む。
【0087】
第8の態様に係る圃場管理方法は、
第4または第6の態様に係る圃場管理方法であって、
前記判定することは、
前記第1の移動軌跡と、前記第2の移動軌跡とのうち、少なくとも一方が渦巻き型であるとき、前記可能性があると判定すること
を含む。
【0088】
第9の態様に係る圃場管理システムは、
1つの圃場として登録されている登録圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の、複数の時刻における位置情報に基づいて、前記作業装置が移動した移動軌跡を検出する検出部と、
前記移動軌跡に基づいて、前記登録圃場が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があるか否かを判定する判定部と、
前記可能性があるとき、前記登録圃場から、前記複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線を提示する提示部と
を備える。
【0089】
第10の態様に係る圃場管理プログラムは、
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現させるための圃場管理プログラムであって、
前記処理は、
1つの圃場として登録されている登録圃場内を移動しつつ作業を行う作業装置の、複数の時刻における位置情報に基づいて、前記作業装置が移動した移動軌跡を検出することと、
前記移動軌跡に基づいて、前記登録圃場が複数の作業領域として個別に使用されている可能性があるか否かを判定することと、
前記可能性があるとき、前記登録圃場から、前記複数の作業領域をそれぞれ含む複数の圃場への分筆の候補として、前記登録圃場を前記複数の圃場に分けるための分筆線を提示することと
を含む。
【符号の説明】
【0090】
1 圃場管理システム
2 作業装置
3 搭載端末
4 ネットワーク
5 圃場管理装置
51 バス
52 演算装置
521 取得部
522 検出部
523 判定部
524 提示部
53 記憶装置
530 記録媒体
531 圃場管理プログラム記憶部
532 データベース
54 通信装置
55 入出力装置
6 外部端末
80A、80B 移動軌跡(往復型)
80C 移動軌跡(渦巻き型)
80D 移動軌跡(複合型)
801A、801B 作業軌跡
802A、802B 旋回軌跡
81、82、83、84、85 移動軌跡
811、821、831、841、851 始点
812、822、832、842、852 終点
9 圃場(登録圃場)
9A、9B 圃場(候補)
90 分筆線
91、92 作業領域