(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022715
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】医療用ベッドシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20240214BHJP
A61G 7/015 20060101ALI20240214BHJP
A61G 7/018 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61M1/14 110
A61G7/015
A61G7/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126000
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】521327356
【氏名又は名称】医療法人さとに田園クリニック
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】長岡 高広
(72)【発明者】
【氏名】竹林 正明
【テーマコード(参考)】
4C040
4C077
【Fターム(参考)】
4C040AA21
4C040BB06
4C040DD05
4C040EE05
4C040GG15
4C077AA05
4C077BB01
4C077HH03
4C077HH18
4C077JJ02
4C077JJ09
4C077JJ15
4C077JJ30
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】患者の状態に応じて、患者への処置を自動的に行う医療用ベッドシステムを提供する。
【解決手段】医療用ベッドシステムは、透析用のコンソールと、医療用のベッドとを備え、ベッドは、透析患者が横たわる寝床面と、当該寝床面の傾斜を制御する寝床傾斜制御部とを備え、コンソールは、透析患者の生体情報を取得する生体情報取得部と、処置決定部とを備え、処置決定部は、生体情報取得部が取得した生体情報に基づいて、処置内容として、少なくとも、寝床面の挙上角度の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の挙上角度を決定し、寝床傾斜制御部は、寝床面の挙上角度が変更後の挙上角度になるように、寝床面の傾斜を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析用のコンソールと、医療用のベッドとを備え、
前記ベッドは、透析患者が横たわる寝床面と、当該寝床面の傾斜を制御する寝床傾斜制御部とを備え、
前記コンソールは、前記透析患者の生体情報を取得する生体情報取得部と、処置決定部とを備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、処置内容として、少なくとも、前記寝床面の挙上角度の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の挙上角度を決定し、
前記寝床傾斜制御部は、前記寝床面の挙上角度が前記の変更後の挙上角度になるように、前記寝床面の傾斜を制御する、
医療用ベッドシステム。
【請求項2】
前記コンソールは、コンソール制御部とコンソール通信部とを備え、
前記ベッドは、ベッド制御部とベッド通信部とを備え、
前記コンソール制御部は、前記処置内容を示すベッド制御信号を、前記コンソール通信部から前記ベッド通信部に送信し、
前記ベッド制御部は、前記ベッド制御信号を前記ベッド通信部で受信し、
前記ベッド制御部は、前記寝床面の挙上角度が、前記ベッド制御信号が示す挙上角度になるように、前記寝床傾斜制御部に前記寝床面の傾斜を制御させる、
請求項1に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項3】
前記ベッドは、ベッドコントローラからの指示信号を受信する受信口を少なくとも1つの備えており、
前記ベッド制御部は、前記受信口を前記ベッド通信部として、前記受信口で前記ベッド制御信号を受信する、
請求項2に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項4】
前記寝床面は、頭部側寝床面と下肢側寝床面とを含み、
前記寝床面の挙上角度は、前記頭部側寝床面の挙上角度及び前記下肢側寝床面の挙上角度のうちの、少なくとも一方を含む、
請求項1又は2に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項5】
前記生体情報は、血圧、生体電気インピーダンス、及び循環血液量のうちの、少なくとも一つを含む、
請求項1又は2に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項6】
前記生体情報は、血圧であり、
前記生体情報取得部が取得した前記透析患者の血圧が閾値未満となった場合、前記処置決定部が決定する変更後の前記下肢側寝床面の挙上角度は、変更前の当該挙上角度より大きい、
請求項4に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項7】
前記閾値は、前記透析患者の直近の治療時の血圧に基づいて決定される、
請求項6に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項8】
前記閾値は、透析治療開始前の前記透析患者の血圧に基づいて決定される、
請求項6に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項9】
前記コンソールは、液温制御部を備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記寝床面の挙上角度に加えて、透析液の液温の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の液温を決定し、
前記液温制御部は、前記透析液の液温が前記の変更後の液温になるように、前記透析液の液温を制御する、
請求項1に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項10】
前記コンソールには、報知部が備えられており、
前記報知部は、前記処置決定部が前記寝床面の挙上角度の変更を要と決定した場合であって、現在の前記寝床面の挙上角度に鑑み、挙上角度の変更が不適切であると判断したときに報知をおこなう、
請求項1又は2に記載の医療用ベッドシステム。
【請求項11】
透析患者の生体情報を取得する生体情報取得部と、処置決定部とを備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、処置内容として、少なくとも、前記透析患者が横たわる寝床面の挙上角度の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の挙上角度を決定する、
透析用のコンソール。
【請求項12】
コンソール通信部を更に備え、
前記コンソール通信部は、前記処置内容を示す制御信号を、前記寝床面を備える装置に送信する、
請求項11に記載の透析用のコンソール。
【請求項13】
液温制御部を更に備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記寝床面の挙上角度に加えて、透析液の液温の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の液温を決定し、
前記液温制御部は、前記透析液の液温が前記の変更後の液温になるように、前記透析液の液温を制御する、
請求項11又は12に記載の透析用のコンソール。
【請求項14】
報知部を更に備え、
前記報知部は、前記処置決定部が前記寝床面の挙上角度の変更を要と決定した場合であって、現在の前記寝床面の挙上角度に鑑み、挙上角度の変更が不適切であると判断したときに報知をおこなう、
請求項11に記載の透析用のコンソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ベッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
頭側及び下肢側の高さを操作スイッチを用いて制御することが可能なベッドが知られている。例えば、特許文献1には、電動式ベッドに操作スイッチ装置を設け、操作スイッチ装置を操作することで電動式ベッドの各部の高さをかえる医療用ベッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の医療用ベッドは、患者の状態に応じて、患者への処置を自動的に行うものではない。
本発明は、患者の状態に応じて、患者への処置を自動的に行う医療用ベッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
医療用ベッドシステムは、
透析用のコンソールと、医療用のベッドとを備え、
前記ベッドは、透析患者が横たわる寝床面と、当該寝床面の傾斜を制御する寝床傾斜制御部とを備え、
前記コンソールは、前記透析患者の生体情報を取得する生体情報取得部と、処置決定部とを備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、処置内容として、少なくとも、前記寝床面の挙上角度の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の挙上角度を決定し、
前記寝床傾斜制御部は、前記寝床面の挙上角度が前記の変更後の挙上角度になるように、前記寝床面の傾斜を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、患者の状態に応じて、患者への処置を自動的に行う医療用ベッドシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の医療用ベッドシステムの機能の概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の医療用ベッドシステムの構成の概要を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態の医療用ベッドシステムの機能的構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態の医療用ベッドシステムによる透析治療の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態の医療用ベッドシステムによる透析治療の他の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(医療用ベッドシステムの概要)
図1及び
図2は、本発明の実施形態の医療用ベッドシステム1の概要を示す図である
医療用ベッドシステム1は、血液透析治療で使用されるシステムである。なお、血液透析治療を単に透析治療又は透析ということがある。
透析治療において発症頻度が高い合併症として血圧低下がある。実施形態の医療用ベッドシステム1は、透析治療中の血圧低下に対して自動的に処置を行うことを可能にするシステムである。
【0009】
図1に示すように、医療用ベッドシステム1は、透析用のコンソール10及び医療用のベッド40を備える。透析治療を受ける患者は、ベッド40に横たわる。そして、患者はコンソール10を介して透析治療を受ける。
【0010】
(ベッド)
ベッド40は、マットレス50を備える。患者は、マットレス50の寝床面52の上に横たわる。寝床面52は、ベッド40が設置された状態でのマットレス50の上方UD側の面である。
寝床面52は、頭部側寝床面521及び下肢側寝床面522を含む。頭部側寝床面521には、主に、患者の頭部、体幹及上肢が横たえられ、下肢側寝床面522には、主に、患者の下肢が横たえられる。
頭部側寝床面521及び下肢側寝床面522は、傾斜させることが可能である。また、頭部側寝床面521の傾斜角度と、下肢側寝床面522の傾斜角度とは、別々に設定及び制御などをすることができる。
【0011】
(コンソール)
コンソール10は、透析実施機器として機能する。コンソール10からは、透析条件の設定を行うことが可能である。また、コンソール10は、内蔵血圧計を備えており、血圧を測定すると共に、測定した血圧を記録することが可能である。
コンソール10とベッド40とは、コンソール接続線70で接続されている。コンソール10は、このコンソール接続線70を介して、ベッド40にベッド制御信号を送信することができる。ベッド制御信号については、後に説明する。
【0012】
コンソール10がベッド40にベッド制御信号を送信することできるようにすることで、コンソール10とベッド40とを連携させることができる。
この連携により、コンソール10からの指示に基づいて、ベッド40の寝床面52の傾斜角度を自動制御することが可能になる。
【0013】
(下肢挙上)
前述の透析治療中の血圧低下に対する回避処置又は回復処置の一つに、患者の下肢挙上がある。下肢挙上とは、患者の下腿を持ち上げる処置である。
下肢挙上は、非侵襲かつ簡便確実で効果が高い血圧低下の回避又は回復処置として、透析治療領域では第一の選択処置となっている。下肢挙上により、各臓器や毛細血管内にプールされている静脈血を循環血液に戻し、静脈環流量を増大させる。これにより、心拍出量及び抹消血管抵抗を増大させ、その結果、昇圧がはかられる。
【0014】
図1に下肢挙上の概要を示す。
下肢挙上は、下肢側寝床面522を水平線HLから上方UDに持ち上げることによって行われる。すなわち、患者への下肢挙上の処置は、下肢側寝床面522を挙上させることによって行われる。
具体的には、下肢側寝床面端部522Eを上方UDに持ち上げる。下肢側寝床面端部522Eは、下肢側寝床面522における頭部側寝床面521と反対側の端部である。
【0015】
(挙上と降下)
なお、以降の説明において、寝床面52の挙上は、寝床面52を上方UDに持ち上げることを意味する。逆に、寝床面52を上方UDとは逆の方向に下ろすことを、寝床面52の降下とする。
【0016】
(挙上角度)
寝床面52を挙上又は降下させることで形成された、水平線HLと寝床面522とのなす角を、挙上角度とする。
挙上角度には、水平線HLと頭部側寝床面521とのなす角、及び、水平線HLと下肢側寝床面522とのなす角がある。
【0017】
(下肢挙上角度)
図1に、水平線HLと下肢側寝床面522とのなす角を、下肢挙上角度A2として示している。そして、
図1に、下肢挙上角度A2が20度、40度及び60度である場合の下肢側寝床面522を模擬的に示している。
【0018】
図1に示すように、コンソール10とベッド40とを連携させることで、コンソール10からの指示に基づいて、下肢挙上角度A2を自動的に制御することが可能になる。すなわち、透析治療中の血圧低下に対する処置を自動的に行うことが可能になる。
具体的には、例えば、透析治療開始から所定の間隔で患者の血圧を測定し、血圧があらかじめ設定された閾値を下回った場合に、自動的に下肢拳上を開始することなどが可能になる。詳細については、追って説明する。
【0019】
(ベッドとの接続)
コンソール10とベッド40との接続について
図2に基づいて説明する。
医療用のベッド40には、通常、ベッド40の寝床面52の高さや傾斜角度を入力するためのベッドコントローラ60が付属している。
ベッドコントローラ60とベッド40とはコントローラ接続線72によって接続されている。そして、ベッド40には、コントローラ接続線72の差し込み口である受信口(図示せず)が備えられている。
そこで、ベッド40に受信口が複数個備えられている場合には、コンソール10からのコンソール接続線70を受信口に差し込むことで、コンソール10とベッド40とを接続することができる。
【0020】
(分配機)
ベッド40に受信口が1個しか備えられていない場合には、ベッドコントローラ60とベッド40との間のコントローラ接続線72に、コンソール接続線70を接続することが考えられる。
具体的には、T字型の分配器を中継器として用いることが考えられる。
この分配器は、3つの接続口を有し、分配器の内部において、それぞれの接続口からの配線が互いに接続されている。
3つの接続口のうちの1つにベッドコントローラ60からの接続線を接続し、他の1つにコンソール10からの接続線を接続し、残る1つにベッド40への接続線を接続する。
これにより、ベッド40が受信口を1個しか備えていない場合であっても、コントローラ接続線72及びコンソール接続線70を、いずれも分配器を介してベッド40に接続することがきる。
【0021】
(他の連携や他の処置)
以上の説明では、コンソール10とベッド40との連携の概要について、患者の血圧低下、及び血圧低下に対する処置としての下肢挙上を例にして説明した。
ただし、コンソール10とベッド40との連携を利用した処置には、下肢挙上以外に頭部挙上などがある。
また、患者の血圧に応じた処置には、下肢挙上以外に透析液の液温の調整などがある。
以下、医療用ベッドシステムの機能部の説明をした上で、他の処置についても説明する。
【0022】
図3に基づいて、医療用ベッドシステムの各機能部の構成について説明する。
図3は、医療用ベッドシステムの機能的構成を示す機能ブロック図である。
【0023】
(コンソール)
コンソール10は、コンソール制御部12、生体情報取得部14、処置決定部16、液温制御部20及びコンソール通信部18を備える。
【0024】
(コンソール制御部)
コンソール制御部12は、コンソール10に備えられる各機能部を統括し又制御する。
【0025】
(生体情報取得部)
生体情報取得部14は、患者の生体情報を取得する。生体情報としては、血圧、生体電気インピーダンス(BIA:Bioelectrical Impedance Analysis)、循環血液量(BV:Blood Volume)などがある。
図3に示す構成では、患者の血圧を測定するために、生体情報取得部14に血圧測定部141が接続されている。コンソール10に備えられている内蔵血圧計が、血圧測定部141として機能する。
生体情報取得部14は、内蔵血圧計が測定した患者の血圧を、生体情報として血圧測定部141から取得する。
なお、血圧計は、コンソール10に内蔵されるのではなく、コンソール10とは別体のものとすることもできる。
また、生体情報として生体電気インピーダンスを取得する場合には、生体電気インピーダンス測定装置を設け、生体電気インピーダンス測定装置が測定した生体電気インピーダンスの値を、生体情報取得部14が取得するようにしてもよい。
また、生体情報として循環血液量を取得する場合には、循環血液量測定装置を設け、循環血液量測定装置が測定した循環血液量の値を、生体情報取得部14が取得するようにしてもよい。
【0026】
(処置決定部)
処置決定部16は、生体情報取得部14が取得した生体情報に基づいて、患者に施すべき処置の有無を決定し、さらに、施すべき処置がある場合には、その処置の内容を決定する。
【0027】
(処置の例)
図3に示す構成では、前述のように、生体情報として患者の血圧を取得している。
透析治療の際の血圧の変動に対する処置としては、ベッド40の寝床面52の挙上及び降下、並びに透析液の液温の変更がある。
具体的には、血圧の低下に対する処置としては、下肢側寝床面522を挙上することによる患者の下肢挙上、及び、透析液の液温を下げること、が挙げられる。また、血圧の上昇に対する処置としては、頭部側寝床面521を挙上することによる患者の頭部挙上、及び、透析液の液温を上げること、が挙げられる。
【0028】
図3に示す構成では、処置決定部16に、挙上角度決定部161及び液温決定部162が備えられている。
挙上角度決定部161は、ベッド位置情報信号に基づき、寝床面52の挙上又は降下の要否、並びに要の場合には、頭部側寝床面521又は頭部側寝床面端部521Eのいずれを対象とするのか、及び挙上又は降下させる角度を決定する。
一方、液温決定部162は、透析液の液温の変更の要否、及び要の場合には変更する温度の幅を決定する。
【0029】
(液温制御部)
液温制御部20は、液温決定部162が決定した処置の内容、すなわち、透析液の温度を何度上げるのか、又は下げるのか、に従って、透析液の温度を変更する。
【0030】
(コンソール通信部)
コンソール通信部18は、後に説明するベッド通信部46にベッド位置情報信号や、ベッド制御信号を送信する。
ベッド位置情報信号は、ベッドの頭部側及び下肢側寝床面の現在の角度情報を含む信号である。
ベッド制御信号は、挙上角度決定部161が決定した処置の内容、すなわち、頭部側寝床面521又は下肢側寝床面522のいずれを、何度挙上又は降下させるのかに関する情報を含む信号である。
【0031】
図3に示す構成では、コンソール通信部18とベッド通信部46とはコンソール接続線70で接続されている。
ただし、コンソール通信部18とベッド通信部46との接続は、コンソール接続線70による接続に限定されない。他の有線による接続としてもよい。また、コンソール通信部18とベッド通信部46との接続は、無線による接続とすることもできる。
【0032】
(ベッド)
次に、ベッド40について説明する。
ベッド40は、ベッド制御部42、寝床傾斜制御部44及びベッド通信部46を備える。
【0033】
(ベッド制御部)
ベッド制御部42は、ベッド40に備えられる各機能部を統括し又制御する。
【0034】
(ベッド通信部)
ベッド通信部46は、コンソール通信部18からのベッド位置情報信号、ベッド制御信号及びベッドコントローラ60から指示信号を受信する。指示信号については、後に説明する。
また、前述のように、ベッド40の受信口をベッド通信部46として使用することもできる。
【0035】
(寝床傾斜制御部)
寝床傾斜制御部44は、ベッド通信部46がコンソール通信部18から受信したベッド制御信号の内容に基づいて、寝床面52を挙上又は降下させる。
【0036】
(報知部)
医療用ベッドシステム1には、報知部22が備えられていてもよい。報知部22は、コンソール制御部12につながっていて、処置決定部16の挙上角度決定部161がベッド位置情報信号を受け取ったときに、それ以上の挙上が不可能と判断した際に透析装置の画面上に表示を行う、若しくはブザー音を出力する。
【0037】
(ベッドコントローラ)
ベッドコントローラ60は、前述のように、ベッド40の寝床面52の高さや傾斜角度を入力するために、ベッド40に付属する端末である。ベッドコントローラ60からは、ベッドコントローラ60に入力されたベッド40に関する情報が、指示信号として、ベッド通信部46に入力される。
ベッドコントローラ60とベッド通信部46とはコントローラ接続線72で接続されている。ベッドコントローラ60とベッド通信部46と接続も、コンソール通信部18とベッド通信部46との接続と同様に、無線による接続とすることもできる。
【0038】
前述の各機能部は、複数の機能ブロックにより構成されてもよいが、各機能ブロックは必ずしも物理的に分かれている必要は無く、1つのCPUが、複数の機能ブロックの機能を実現してもよい。
また、各機能部は、他の機能部との配置などを考慮して、2つ以上の場所に分かれて配置されていてもよい。また、1つの機能ブロックが2つ以上の場所に分かれて配置され、分散制御されていてもよい。各機能部は記憶部を備えていてもよく、記憶部は、種々の記録媒体で構成することができる。
各機能部の各種機能は、例えば記憶部に格納されたプログラムを実行することで実現されてもよい。
各機能部の各機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア電子回路のみで実現されてもよい。
【0039】
(血圧低下及び血圧上昇に対する処置)
透析治療の際に患者の血圧に基づいて行われる処置について、前述の各機能部との関係を含めて説明する。
医療用ベッドシステム1では、透析治療の際の患者の血圧変動などに対して、主に、寝床面52の挙上又は降下を行う、透析液の温度を下げる又は上げる、及び、血圧測定間隔を短くする、との処置が行われる。
【0040】
詳しくは、血圧を上昇させる処置としては、患者の下肢を挙上すること、及び透析液の温度を下げること、が挙げられる。逆に、血圧を低下させる処置としては、患者の頭部を挙上すること、及び透析液の液温を上げること、が挙げられる。
【0041】
(透析開始前の低血圧、及び透析開始後の血圧低下)
以下、より具体的に説明する。
透析開始前において患者の血圧が低い場合、及び透析開始後に患者の血圧が低下した場合には、患者の下肢を挙上する、及び透析液の温度を下げる、との処置が行われる。
患者の下肢を挙上することは、先に
図1に基づいて説明したように、ベッド40の下肢側寝床面522を挙上することで行われる。また、この挙上は、ベッド制御部42に接続された寝床傾斜制御部44が行う。
一方、透析液の温度を下げることは、コンソール制御部12に接続された液温制御部20が行う。
【0042】
(透析開始後の血圧上昇)
次に、透析開始後の血圧上昇に対する処置について説明する。
透析開始後に患者の血圧が上昇した場合には、患者の頭部を挙上する、及び透析液の温度を上げる、との処置が行われる。
【0043】
患者の頭部を挙上すること、すなわち頭部挙上について、先に参照した
図2に基づいて説明する。
(頭部挙上)
頭部挙上とは、患者の頭部を持ち上げる処置である。
頭部挙上は、頭部側寝床面521を水平線HLから上方UDに持ち上げることによって行われる。すなわち、患者への頭部挙上の処置は、頭部側寝床面521を挙上させることによって行われる。
具体的には、頭部側寝床面端部521Eを上方UDに持ち上げる。ここで、頭部側寝床面端部521Eは、頭部側寝床面521における下肢側寝床面522と反対側の端部である。
【0044】
(頭部挙上角度)
図2に、水平線HLと頭部側寝床面521とのなす角を、頭部挙上角度A1として示している。
頭部側寝床面521の挙上は、ベッド制御部42に接続された寝床傾斜制御部44が行う。寝床傾斜制御部44は、コンソール10から受信したベッド制御信号に含まれる頭部挙上角度A1の変更指示に基づいて、頭部挙上角度A1を制御する。
コンソール10とベッド40とが連携することで、コンソール10からの指示に基づいて、頭部挙上角度A1を自動的に制御することが可能になる。
これにより、透析治療中の血圧低下に加えて、血圧上昇に対する処置も自動的に行うことが可能になる。
【0045】
透析液の温度を上げることは、透析液の温度を下げることと同様に、コンソール制御部12に接続された液温制御部20が行う。
【0046】
(血圧測定間隔)
血圧低下や血圧上昇などに対して前述の処置が行われた場合、その後、患者の血圧を測定する間隔を短くすることが好ましい。患者が処置から受ける影響を、細かく観察することが好ましいためである。
【0047】
(透析治療の流れ)
医療用ベッドシステム1による透析治療の流れを
図4に基づいて説明する。
図4は、透析治療の流れを示すフローチャートである。
以下に流れを説明する透析治療においては、透析治療開始後に発生する血圧低下について、処置が必要とする血圧低下の閾値を120mmHgとしている。
【0048】
透析治療の流れをステップに沿って説明する。
以下の説明において、透析治療を単に透析と言う場合がある。また、例えばS1はステップ1を示し、S2はステップ2を示す。また、動作主体について特段の説明のない動作は、コンソール制御部12又はベッド制御部42が行う。後述する
図5についての説明においても同様である。
(S1)
S1において、透析を開始する。
【0049】
(S2)
患者の透析開始前の血圧が120mmHg以上か否かを判定する。
血圧が120mmHg以上の場合にはS3に進み、血圧が120mmHg未満である場合にはS7に進む。
血圧の測定は血圧測定部141及び生体情報取得部14が行う。
【0050】
(S3)
患者の透析開始前の血圧が120mmHg以上であるので、透析中に血圧が120mmHg未満になるかを判定する。
患者の血圧の測定間隔は30分とし、測定ごとに血圧が120mmHg未満であるかを判定する。
患者の血圧が120mmHg未満に低下した場合にはS4に進み、患者は血圧低下に対する処置を受ける。
患者の血圧が120mmHg未満に低下ない場合には、そのまま透析を継続し、所定時間透析を継続した後に、S11で透析を終了する。
処置の要否などの決定は、処置決定部16が行う。
【0051】
(S4)
患者の血圧が120mmHg未満に低下したため、血圧低下に対する処置を行う。
具体的には、患者の下肢を20度挙上する。また、透析液の液温を36.5℃から35.5℃に下げる。さらに、患者の血圧の測定間隔を30分から15分に短縮する。
処置内容の決定は、処置決定部16、挙上角度決定部161及び液温決定部162が行う。また、下肢の挙上は寝床傾斜制御部44が行い、透析液の液温の変更は液温制御部20が行う。
処置が終了するとS5に進む。
【0052】
(S5)
S4で血圧低下に対する処置を行った後、患者の血圧が120mmHg以上になるまで上昇したかを判定する。患者の血圧の測定間隔は15分とする。
患者の血圧が120mmHg以上になるまで上昇した場合には、そのまま透析を継続し、所定時間透析を継続した後に、S11で透析を終了する。
患者の血圧が120mmHg以上になるまで上昇しない場合には、S6に進み、患者は、血液低下に対するさらなる処置を受ける。
血圧の測定は血圧測定部141及び生体情報取得部14が行う。
【0053】
(S6)
S4の処置を受けても患者の血圧が120mmHg以上になるまで上昇しないため、血圧低下に対するさらなる処置を行う。
具体的には、患者の下肢挙上の角度を20度から30度に上げる。また、透析液の液温を35.5℃から35.0℃に下げる。
処置内容の決定は、処置決定部16、挙上角度決定部161及び液温決定部162が行う。また、下肢の挙上は寝床傾斜制御部44が行い、透析液の液温の変更は液温制御部20が行う。
処置が終了すると、そのまま透析を継続し、所定時間透析を継続した後に、S11で透析を終了する。
【0054】
(S7)
次に、S2で、患者の透析開始前の血圧が120mmHg未満であると判定された場合について説明する。
前述の判定をされた場合、S2からS7に進む。
S7では、患者の透析開始前の血圧が100mmHg未満か否かを判定する。
血圧が100mmHg未満でない場合には、低血圧に対する特段の処置は行わず、S3に進み、透析を進める。
血圧が100mmHg未満である場合にはS8に進み、患者は低血圧に対する処置を受ける。
血圧の測定は血圧測定部141及び生体情報取得部14が行う。
【0055】
(S8)
患者の血圧が100mmHg未満であるため、低血圧に対する処置を行う。
具体的には、患者の下肢を20度挙上する。また、透析液の液温を36.5℃から35.5℃に下げる。さらに、患者の血圧の測定間隔を30分から15分に短縮する。
処置内容の決定は、処置決定部16、挙上角度決定部161及び液温決定部162が行う。また、下肢の挙上は寝床傾斜制御部44が行い、透析液の液温の変更は液温制御部20が行う。
処置が終了するとS5に進む。それ以降の流れは、S2の判定が「はい」の場合と同じである。
【0056】
(血圧上昇に対する処置)
以上、患者の透析開始時の低血圧、及び透析開始後の血圧の低下に対する処置を中心に説明してきた。以下、患者の血圧上昇に対する処置について説明する。
【0057】
医療用ベッドシステム1は、血圧上昇に対する処置についても、コンソール10とベッド40とを連携させることができる。この連携により、血圧上昇に連動して血圧上昇に対する処置を自動的に行うことができる。具体的には、コンソール10からの指示に基づいて、ベッド40の寝床面52の傾斜角度を自動制御する。
【0058】
医療用ベッドシステム1による透析治療における、血圧上昇に対する処置の流れを
図5に基づいて説明する。
図5は、透析治療の流れを示すフローチャートである。
なお、以下に流れを説明する透析治療においては、処置を必要とする血圧上昇の閾値を180mmHgとしている。
【0059】
透析治療の流れをステップに沿って説明する。
(S21)
S21において、透析を開始する。
【0060】
(S22)
患者の血圧が透析中に180mmHg以上になるまで上昇したか否かを判定する。
患者の血圧の測定間隔は30分とし、測定ごとに血圧が180mmHg以上であるかを判定する。
患者の血圧が180mmHg以上になるまで上昇しない場合には、そのまま透析を継続し、所定時間透析を継続した後に、S26で透析を終了する。
患者の血圧が180mmHg以上になるまで上昇した場合にはS23に進み、患者は血圧上昇に対する処置を受ける。
血圧の測定は血圧測定部141及び生体情報取得部14が行う。
【0061】
(S23)
患者の血圧が180mmHg以上になるまで上昇したため、血圧上昇に対する処置を行う。
具体的には、患者の頭部を20度挙上する。また、透析液の液温を36.5℃から36.8℃に上げる。さらに、患者の血圧の測定間隔を30分から15分に短縮する。
処置内容の決定は、処置決定部16、挙上角度決定部161及び液温決定部162が行う。また、頭部の挙上は寝床傾斜制御部44が行い、透析液の液温の変更は液温制御部20が行う。
処置が終了するとS24に進む。
【0062】
(S24)
S23で血圧上昇に対する処置を行った後、患者の血圧が160mmHg以下になるまで低下したかを判定する。患者の血圧の測定間隔は15分とする。
患者の血圧が160mmHg以下になるまで低下しない場合には、そのまま透析を継続し、所定時間透析を継続した後に、S26で透析を終了する。すなわち、血圧上昇に対する処置をそのまま維持して透析を継続する。
患者の血圧が160mmHg以下になるまで低下した場合には、S25に進み、血圧上昇に対する処置を解除する。
血圧の測定は血圧測定部141及び生体情報取得部14が行う。
【0063】
(S25)
患者の血圧が160mmHg以下になるまで低下したため、血圧上昇に対する処置を解除する。
具体的には、患者の頭部挙上をもとに戻す。すなわち、頭部を20度降下させる。また、透析液の液温を36.8℃から36.5℃に下げる。さらに、患者の血圧の測定間隔を15分から30分に戻す。
処置内容の決定は、処置決定部16、挙上角度決定部161及び液温決定部162が行う。また、頭部の挙上は寝床傾斜制御部44が行い、透析液の液温の変更は液温制御部20が行う。
処置が終了するとS22に戻る。
【0064】
以上、医療用ベッドシステム1の1つの実施形態について説明した。なお、医療用ベッドシステム1の前述の実施形態には、種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
(血圧閾値の設定)
血圧閾値は、患者の治療状態により定められる所定の値とすることができる。ここで所定の値とは、多くの透析患者において透析開始直後に発生する血圧低下に対応することが必要と考えられる血圧低下閾値とすることができる。具体的には、120mmHgとすることができる。
また、血圧閾値は、透析前に取得した一患者の血圧値をベースにして定めることもできる。さらに、血圧閾値は、同一患者の直近の透析治療時の最低値、最高値又は平均血圧値をベースにして定めることもできる。また、血圧閾値は、患者の年齢、性別、体型、既往症などに基づいて定めることもできる。このように、血圧閾値を患者個々の事情に合わせて設定する場合には、患者とその個々の事情とをID(Identification)番号などを用いて関連付けさせておき、そのID番号を用いて血圧閾値を設定することもできる。
また、閾値として、血圧以外にもBIA(生体電気インピーダンス)を指標とすることもできる。
さらに、絶対値ではなく、例えば、ΔBP(血圧変化量)などの値の変化量や、値の減衰率などの変化率を閾値とすることもできる。
また、循環血液量の減少に連動して、血圧低下に対する処理を行うようにすることもできる。
また、同様に血圧上昇に対応することができる血圧上昇閾値を設定することもできる。
【0066】
(処置の内容)
血圧低下などへの処置として、下肢挙上や透析液の液温を下げることなどを説明した。だだし、取り得る処置はそれらに限定されず、例えば、除水量を下げるなど、除水量を変更することを処置に含めることもできる。
【0067】
また、寝床面52の挙上角度の変更と、透析液の液温の変更とは、同時行う必要はない。一方を他方に優先して行うこともできる。
【0068】
(確認操作)
血圧低下などへの処置は、コンソール10とベッド40との連携により、血圧値に連動して自動的に行わることを説明した。
ただし、処置が行われる前に、確認操作を行うようにすることもできる。
具体的には、血圧値が閾値を下回った場合にコンソール10に確認画面を表示させ、処置が行われる前に確認操作が必要となるような手順とすることもできる。これにより、誤った処置が行われることを抑制しながら、半自動で患者への処置を行うことができる。
【0069】
血圧計は、コンソール10に内蔵されるものに限定されず、コンソール10と別体としてもよい。その場合は、血圧計とコンソール10とを通信ケーブルで接続することができる。
【0070】
コンソール10とベッド40との接続に関連して説明した分配器や中継器は、前述のもの限定されず、コンソールやベッドの仕様に基づいて適宜変更することができる。ケーブルやソケット、分配器や中継器などの仕様を、異なる仕様の間での接続が可能になるような仕様、すなわち仕様変換が可能な仕様にすることで、コンソールやベッドのメーカーの違いや仕様の違いを越えて、コンソールとベッドとの接続及び連動を可能にすることができる。
【0071】
コンソール10は、ベッド40又はベッド40以外の、患者が横たわる寝床面52を備える装置に、その装置を制御するための制御信号を送信することができる。そのため、コンソール10は、コンソール10単体で、寝床面52を備える種々の装置を制御する制御装置として使用することもできる。
【0072】
本発明の医療用ベッドシステム1では、前述のように、コンソール10とベッド40とが連携している。そのため、患者の状態、例えば患者の血圧が任意の上限値や下限値に達したり、血圧の減衰率が所定の値に達したりすることに連動して、自動又は半自動で下肢挙上や頭部挙上などのベッドコントロールを行うことができる。
【0073】
従来、患者の血圧取得と下肢挙上などの処置とは連動していない。そして、血圧取得は、以下のように行われている。
すなわち、透析中の血圧取得は、血圧に応じた透析条件変更やコンソールを介した血圧記録行うため、コンソール内臓血圧計を用いて取得することが一般的である。
一方、下肢挙上などの処置は、患者が横たわっているベッドの有線コントローラ(ベッドコントローラ)を用いる。ベッドコントローラは透析による血液汚染防止や透析手技の妨げとならないようコンソールとは反対側のベッドサイドに設置してあることが多い、
そのため、血圧取得を行うコンソールとベッドとが連動していない場合には、透析スタッフは血圧取得をコンソールで行い、規定範囲外、すなわち所定の閾値を越えた血圧を認めたときには、コンソール操作を行った後に反対側のベッドサイドへ移動して、下肢挙上などベッドコントロールを行う必要がある。
つまり透析治療において最も多用する下肢挙上処置などの操作を行う度に、透析スタッフはベッドの周囲を回っての移動を伴う動作が求められていることが現状である。
これが透析スタッフにとって、多大な負担となっている。
【0074】
そのため、本発明において、コンソール10とベッド40とが連携し、血圧値とそれに対する処置とが連動し、自動又は半自動でのベッドコントロールが可能になると、透析スタッフの負担軽減の度合いは非常に大きい。
その結果、透析スタッフに、他の患者の昇圧剤を要するような重篤な血圧低下への対応や、他の諸々の患者ケアを行うための時間的余裕が生まれる。
これにより、透析患者の増加や、透析スタッフのマンパワー不足に対応することが容易になる。そして、患者ケアの質の低下や、負担に起因する透析スタッフの疲弊を抑制することができる。
【0075】
(1)透析用のコンソールと、医療用のベッドとを備え、
前記ベッドは、透析患者が横たわる寝床面と、当該寝床面の傾斜を制御する寝床傾斜制御部とを備え、
前記コンソールは、前記透析患者の生体情報を取得する生体情報取得部と、処置決定部とを備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、処置内容として、少なくとも、前記寝床面の挙上角度の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の挙上角度を決定し、
前記寝床傾斜制御部は、前記寝床面の挙上角度が前記の変更後の挙上角度になるように、前記寝床面の傾斜を制御する、
医療用ベッドシステム。
【0076】
(2)前記コンソールは、コンソール制御部とコンソール通信部とを備え、
前記ベッドは、ベッド制御部とベッド通信部とを備え、
前記コンソール制御部は、前記処置内容を示すベッド制御信号を、前記コンソール通信部から前記ベッド通信部に送信し、
前記ベッド制御部は、前記ベッド制御信号を前記ベッド通信部で受信し、
前記ベッド制御部は、前記寝床面の挙上角度が、前記ベッド制御信号が示す挙上角度になるように、前記寝床傾斜制御部に前記寝床面の傾斜を制御させる、
(1)の医療用ベッドシステム。
【0077】
(3)前記ベッドは、ベッドコントローラからの指示信号を受信する受信口を少なくとも1つの備えており、
前記ベッド制御部は、前記受信口を前記ベッド通信部として、前記受信口で前記ベッド制御信号を受信する、
(1)又は(2)の医療用ベッドシステム。
【0078】
(4)前記寝床面は、頭部側寝床面と下肢側寝床面とを含み、
前記寝床面の挙上角度は、前記頭部側寝床面の挙上角度及び前記下肢側寝床面の挙上角度のうちの、少なくとも一方を含む、
(1)から(3)のいずれかの医療用ベッドシステム。
【0079】
(5)前記生体情報は、血圧、生体電気インピーダンス、及び循環血液量のうちの、少なくとも一つを含む、
(1)から(4)のいずれかの医療用ベッドシステム。
【0080】
(6)前記生体情報は、血圧であり、
前記生体情報取得部が取得した前記透析患者の血圧が閾値未満となった場合、前記処置決定部が決定する変更後の前記下肢側寝床面の挙上角度は、変更前の当該挙上角度より大きい、
(4)の医療用ベッドシステム。
【0081】
(7)前記閾値は、前記透析患者の直近の治療時の血圧に基づいて決定される、
(6)の医療用ベッドシステム。
【0082】
(8)前記閾値は、透析治療開始前の前記透析患者の血圧に基づいて決定される、
(6)の医療用ベッドシステム。
【0083】
(9)前記コンソールは、液温制御部を備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記寝床面の挙上角度に加えて、透析液の液温の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の液温を決定し、
前記液温制御部は、前記透析液の液温が前記の変更後の液温になるように、前記透析液の液温を制御する、
(1)から(8)のいずれかの医療用ベッドシステム。
【0084】
(10)前記コンソールには、報知部が備えられており、
前記報知部は、前記処置決定部が前記寝床面の挙上角度の変更を要と決定した場合であって、現在の前記寝床面の挙上角度に鑑み、挙上角度の変更が不適切であると判断したときに報知をおこなう、
(1)から(9)のいずれかの医療用ベッドシステム。
【0085】
(11)透析患者の生体情報を取得する生体情報取得部と、処置決定部とを備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、処置内容として、少なくとも、前記透析患者が横たわる寝床面の挙上角度の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の挙上角度を決定する、
透析用のコンソール。
【0086】
(12)コンソール通信部を更に備え、
前記コンソール通信部は、前記処置内容を示す制御信号を、前記寝床面を備える装置に送信する、
(11)の透析用のコンソール。
【0087】
(13)液温制御部を更に備え、
前記処置決定部は、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記寝床面の挙上角度に加えて、透析液の液温の変更の要否、及び変更要の場合の変更後の液温を決定し、
前記液温制御部は、前記透析液の液温が前記の変更後の液温になるように、前記透析液の液温を制御する、
(11)又は(12)の透析用のコンソール。
【0088】
(14)報知部を更に備え、
前記報知部は、前記処置決定部が前記寝床面の挙上角度の変更を要と決定した場合であって、現在の前記寝床面の挙上角度に鑑み、挙上角度の変更が不適切であると判断したときに報知をおこなう、
(11)から(13)のいずれかの透析用のコンソール。
【0089】
以上、本発明の医療用ベッドシステムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。上記実施形態の個々の構成を2つ以上組み合わせたものも本発明である。
【0090】
なお、コンソールとは、ベッドサイドに設置され、透析液の調整などを行う狭義のコンソールに限定されるものではない。コンソールとは、透析実施機器として機能する部分を広く含む。そのため、コンソールとは、1つの装置であることには限定されず、種々の機能が分担された複数の装置の集合体とすることもできる。具体的には、例えば生体情報取得部と、処置決定部とが別々の装置に配置されていてもよい。
また、本発明に関連する他の実施形態として、生体情報取得部及び処置決定部などの構成要素の何れか或いは全てが、コンソールの外部に配置される形態もある。ここで外部に配置とは、構成要素が物理的に一群として配置されている形態に限定されず、構成要素の一部が例えばクラウドサーバーなど遠隔に配置されている形態も含む。また、構成要素間の接続は有線接続には限定されず、無線接続であってもよい。このような形態であっても、全体として本実施形態と同様の機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 医療用ベッドシステム
10 コンソール
12 コンソール制御部
14 生体情報取得部
141 血圧測定部
16 処置決定部
161 挙上角度決定部
162 液温決定部
18 コンソール通信部
20 液温制御部
40 ベッド
42 ベッド制御部
44 寝床傾斜制御部
46 ベッド通信部
50 マットレス
52 寝床面
521 頭部側寝床面
521E 頭部側寝床面端部
522 下肢側寝床面
522E 下肢側寝床面端部
60 ベッドコントローラ
70 コンソール接続線
72 コントローラ接続線
A1 頭部挙上角度
A2 下肢挙上角度