(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022717
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】遮熱シート及び遮熱シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20240214BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
B32B15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126003
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】508079175
【氏名又は名称】栗田煙草苗育布製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田昌幸
(72)【発明者】
【氏名】一柳隆治
(72)【発明者】
【氏名】酒井隆宏
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB10A
4F100AK01D
4F100AK42D
4F100AK68B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00B
4F100CB03B
4F100DG12C
4F100GB72
4F100JD10A
4F100JK02
4F100JK03
4F100JL12B
4F100JN06A
(57)【要約】
【課題】耐久性が高く長期的に使用することが可能な遮熱シートを提供する。また、軽量であり可搬性に優れた遮熱シートを提供する。
【解決手段】遮熱シート1は、熱反射層2と、補強層3と、熱反射層2と補強層3との間に設けられた接着層4を有し、補強層3は紗織物を有している。遮熱シート1の熱反射層2は、アルミニウムの蒸着層5を有する樹脂フィルム6からなることが望ましい。遮熱シート1の補強層3を構成する紗織物は、経糸の打ち込み本数が4本/インチ以上30本/インチ以下であり、かつ、緯糸の打ち込み本数が4本/インチ以上30本/インチ以下であることが望ましい。遮熱シート1の補強層3を構成する紗織物の目付は、10g/m
2以上200g/m
2以下であることが望ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱反射層と、補強層と、該熱反射層と該補強層との間に設けられた接着層を有する遮熱シートであって、該補強層が紗織物を有することを特徴とする遮熱シート。
【請求項2】
前記紗織物において、経糸の打ち込み本数が4本/インチ以上30本/インチ以下であり、かつ、緯糸の打ち込み本数が4本/インチ以上30本/インチ以下である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項3】
前記紗織物の目付が、10g/m2以上200g/m2以下である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項4】
前記紗織物の目付が、10g/m2以上200g/m2以下である請求項2に記載の遮熱シート。
【請求項5】
前記熱反射層が、アルミニウムを蒸着させた樹脂フィルムからなる請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の遮熱シート。
【請求項6】
JIS L 1096:2010 C法(トラペゾイド法)で測定した引裂強さが25N以上である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の遮熱シート。
【請求項7】
可搬である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の遮熱シート。
【請求項8】
熱反射層と補強層とを有する遮熱シートの製造方法であって、該補強層が紗織物を有するものであり、該熱反射層と該補強層とを、接着により一体化させることを特徴とする遮熱シートの製造方法。
【請求項9】
前記熱反射層と前記補強層とを、ホットメルト接着剤を使用して一体化させる請求項8に記載の遮熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱シートに関し、更に詳しくは、紗織物を用いており、強度や耐久性に優れる遮熱シートに関する。
また、本発明は、かかる遮熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、度重なる自然災害等の影響により、防災に対する関心が高まりつつある。一時的に身を守るための対策用品として、遮熱シートが使用されている。遮熱シートとして、代表的なものはアルミニウムを蒸着させた樹脂フィルムであり、これを覆うことで身体から放出される輻射熱を反射し、低体温になることを防いでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材層と、通気層と、光反射層と、保護層とがこの順に積層されているシートが開示されており、通気層の材質はポリエチレン等であり、光反射層は、通気層の一の面に例えばアルミニウムを蒸着することで形成される。
【0004】
また、特許文献2には、アルミニウムシート又はアルミニウム箔に不織布を補強支持するポリエチレン樹脂よりなる支持シートとポリエチレン樹脂よりなる不織布を積層し、さらに炭粉体を含有する塗料組成層をこの順に配設した遮熱シートにおいて、かかる遮熱シートを糸状体に形成するとともに、かかる糸状体を織成、編成、または縫成することにより形成されることを特徴とする遮熱シートが開示されている。
【0005】
また、アルミニウムを蒸着させた樹脂フィルムからなる遮熱シートは、建築物や車両用の温度上昇を防ぐための遮熱材としても適用されている(特許文献3~5)。
【0006】
遮熱シートを防災目的に使用する場合、屋外で使用される場合も多く、災害発生時には、遮熱シートを携帯して移動する機会も多い。このため、かかる用途に使用される遮熱シートには、耐久性や軽量性が要求される。
しかし、上記のような公知技術の遮熱シートは、薄く、引裂強さが十分でなく、耐久性が低いため、そのような要求を満たすものではなく、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3225022号公報
【特許文献2】特開2012-056305号公報
【特許文献3】特開2021-154700号公報
【特許文献4】特開2017-119376号公報
【特許文献5】特開2017-119377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐久性が高く長期的に使用することが可能な遮熱シートを提供することにある。また、本発明の課題は、軽量であり可搬性に優れた遮熱シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アルミニウムを蒸着させた樹脂フィルムを有するシートにおいて、紗織物を有する補強層を設けることによって、紗織物を構成する糸により樹脂フィルムの破れ等が抑制されるため、十分な遮熱性を維持しつつ、軽量な割に耐久性に優れた遮熱シートを作製することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、熱反射層と、補強層と、該熱反射層と該補強層との間に設けられた接着層を有する遮熱シートであって、該補強層が紗織物を有することを特徴とする遮熱シートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、熱反射層と補強層とを有する遮熱シートの製造方法であって、該補強層が紗織物を有するものであり、該熱反射層と該補強層とを、接着により一体化させることを特徴とする遮熱シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遮熱シートは、耐久性が高く長期的に使用することが可能である。
特に、防災目的で使用される遮熱シートは、屋外で使用される場合が多く、災害発生時に携帯される場合が多い。このため、耐久性の高い本発明の遮熱シートは、かかる目的に使用するのに適している。
【0013】
本発明の遮熱シートは、補強層の素材として、軽量な紗織物を使用しており、補強層を設けることによる重量の増加幅が少なく、耐久性が高い割に軽量である。また、補強層の素材に紗織物を使用した本発明の遮熱シートは柔軟性が高い。
軽量かつ柔軟であることから、本発明の遮熱シートは可搬性に優れる。この点からも、本発明の遮熱シートは、災害発生時等に携帯して使用するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の遮熱シートの構造の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の遮熱シートの構造の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の遮熱シートの構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0016】
図1~2に、本発明の遮熱シート1の構造の例を示す。遮熱シート1は、熱反射層2と、補強層3と、該熱反射層2と該補強層3との間に設けられた接着層4を有する。
【0017】
熱反射層2は、本発明の遮熱シート1において、輻射熱を反射する作用を持つ層である。かかる作用を発揮するのであれば、熱反射層2の材質や構造に特に限定はない。かかる作用を発揮するために、熱反射層2は、金属層5を有しているのが望ましい。
【0018】
かかる金属層5を構成する金属の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等が挙げられる。また、これらの金属を含んだ合金、例えば、アルミニウム合金、ステンレス等も使用することができる。
輻射熱の反射効果が高い点、樹脂フィルム6の上に蒸着等により容易に形成できる点、コストが安価である点等から、金属層5を構成する金属としては、アルミニウムが望ましい。
【0019】
熱反射層2は、樹脂フィルム6の上に、金属層5を有していることが望ましい。樹脂フィルム6は、輻射熱を反射する作用を持つ金属層5を、物理的衝撃から保護ないし補強するために設けられる。
【0020】
樹脂フィルム6の素材の例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;が挙げられる。
金属層5を構成する金属、特にアルミニウムやアルミニウムを主成分とする合金をその上に蒸着しやすい点や、コストの点から、樹脂フィルム6の素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が望ましい。
【0021】
樹脂フィルム6の厚み(以下、特に断らない限り「厚み」は、「平均厚み」をいう。)は、9μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることが特に好ましい。また、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
樹脂フィルム6の厚みが上記下限以上であると、金属層5を均一に安定して保持できる。樹脂フィルム6の厚みが上記上限以下であると、遮熱シート1を十分に軽量なものとすることができ、コスト的にも有利である。
【0022】
樹脂フィルム6の上に金属層5を形成する方法に特に限定はなく、蒸着による方法、金属箔を接着する方法、等が例示できる。
均一な金属層5が得られやすい点や、コストの点から、金属層5を形成する方法としては、蒸着による方法が望ましい。
【0023】
上記のように、金属層5を構成する金属としては、アルミニウムが望ましく、樹脂フィルム6の上に金属層5を形成する方法は、蒸着による方法が望ましい。
すなわち、遮熱シート1における熱反射層2はアルミニウムを蒸着させた樹脂フィルム6からなることが特に望ましい。
【0024】
蒸着により金属層5を形成する方法における、具体的な蒸着の形式は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長(PVD)法;プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長(CVD)法;等が挙げられる。
【0025】
金属層5の厚みは、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが特に好ましい。また、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。
金属層5の厚みが上記下限以上であると、遮熱シート1の遮熱性が十分に発揮されやすい。金属層5の厚みが上記上限以下であると、遮熱シート1を十分に軽量なものとすることができ、コスト的にも有利である。
蒸着による方法は、厚みが上記範囲内の金属層5を形成するのに適している。
【0026】
補強層3は、本発明の遮熱シート1において、熱反射層2を補強し、遮熱シート1の耐久性を向上させる作用を持つ層である。
【0027】
補強層3は、紗織物を有していれば特に限定はない。補強層3は、紗織物のみで(紗織物単体で)構成されていてもよいし、
図3に例示するように、紗織物3Aと他のシート状物3Bが一体化されて補強層3を構成していてもよい。
【0028】
本発明の遮熱シート1は、補強層3の素材として、紗織物を使用している。紗織物を使用することにより、本発明の遮熱シート1は、耐久性が高い割に軽量であり、また、柔軟性が高い。
また、補強層3の素材として紗織物を使用していることにより、本発明の遮熱シート1は、特許文献2のように、不織布を補強層の素材として使用した場合と比べて、引裂強さや引張強さに特に優れている。
【0029】
補強層3が有する紗織物は、緯糸と経糸からなる平織物であり、開口部を有している。
紗織物の開口率(紗織物の占める全面積に対する、糸が存在しない部分(開口部)の占める面積の割合)は、1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。また、99%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下が特に好ましい。
開口率が上記範囲内であると、紗織物が柔軟となり、前記した効果が発揮されやすい。
【0030】
紗織物の糸(緯糸及び経糸)の素材としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、アラミド、ポリアリレート、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール等の合成繊維;コットン(綿)、麻、ウール(毛)、絹等の天然繊維;ガラス、金属等の無機繊維;等が例示できる。緯糸と経糸の素材は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、紗織物の糸の種類は、紡績糸、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸の何れでもよい。
【0031】
紗織物の糸の太さは、フィラメント糸の場合、50デニール以上が好ましく、70デニール以上がより好ましく、100デニール以上が特に好ましい。また、1000デニール以下が好ましく、700デニール以下がより好ましく、500デニール以下が特に好ましい。
【0032】
紗織物の糸の太さは、紡績糸の場合、綿番手で5番手以上が好ましく、7番手以上がより好ましく、10番手以上が特に好ましい。また、100番手以下が好ましく、70番手以下がより好ましく、50番手以下が特に好ましい。
【0033】
紗織物における緯糸・経糸の打ち込み本数は、それぞれ、4本/インチ以上がより好ましく、5本/インチが更に好ましく、6本/インチ以上が一層好ましく、7本/インチ以上が特に好ましく、8本/インチ以上が極めて好ましく、10本/インチ以上が最も好ましい。また、30本/インチ以下が好ましく、29本/インチ以下がより好ましく、28本/インチ以下が更に好ましく、27本/インチ以下が一層好ましく、26本/インチ以下が特に好ましく、25本/インチ以下が極めて好ましく、24本/インチ以下が最も好ましい。
【0034】
経糸の打ち込み本数と緯糸の打ち込み本数は、同じであっても異なっていてもよい。また、経糸の打ち込み本数と緯糸の打ち込み本数の両方が、上記範囲内であるのが好ましい。
【0035】
緯糸・経糸の打ち込み本数が上記下限以上であると、遮熱シート1の耐久性が十分となりやすい。緯糸・経糸の打ち込み本数が上記上限以下であると、遮熱シート1の柔軟性・折り曲げ性が良好となり、また、遮熱シート1が軽量となりやすい。
【0036】
なお、糸の密度(打ち込み本数)の算出にあたり、「1本の糸」とは、中が均一に詰まった1本の糸(例えば、モノフィラメント糸)、短繊維からなる1本の紡績糸、長繊維からなる1本のマルチフィラメント糸、又は、天然繊維や合成繊維を引き揃えたり、撚りをかけたりすることで1本になっているものをいう。すなわち、容易に分離できない状態で1本になっているものは、糸の密度の算出にあたり、「1本の糸」という。
【0037】
紗織物の目付は、10g/m2以上であることが好ましく、15g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることが特に好ましい。また、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましく、100g/m2以下であることが特に好ましい。
紗織物の目付が上記下限以上であると、遮熱シート1の耐久性が十分となりやすい。紗織物の目付が上記上限以下であると、遮熱シート1が軽量となり、可搬性等の取り扱い性に優れたものとなりやすい。
【0038】
紗織物の厚みは、0.20mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましく、0.30mm以上であることが特に好ましい。また、0.70mm以下であることが好ましく、0.65mm以下であることがより好ましく、0.60mm以下であることが特に好ましい。
紗織物の厚みが上記範囲内であると、遮熱シート1の耐久性が十分となり、また、柔軟性も十分となりやすい。
【0039】
紗織物の緯糸と経糸の交点は、目止め加工されていなくてもよいし、目止め加工されていてもよい。
目止め加工の方法に特に限定は無く、例えば、目止め剤を付与することによる接着でもよいし、熱融着でもよい。
【0040】
本発明の遮熱シート1の補強層3の素材として使用される紗織物は、カレンダー加工を施したものであってもよい。カレンダー加工は、補強層3と熱反射層2を一体化する前に施される。カレンダー加工の具体的な方法としては、例えば、特許第5859697号公報に記載の方法が挙げられる。
【0041】
紗織物にカレンダー加工を施すことにより、加工前の紗織物と比較して、開口率は小さく、厚みは小さくなる。紗織物の厚みが小さくなることで、遮熱シート1の柔軟性が向上しやすくなる一方、遮熱シート1の引裂強さや引張強さが低下する場合がある。
このため、所望する遮熱シート1の性状に応じて、カレンダー加工の要否、及びカレンダー加工時の条件(カレンダーロールの温度、線圧、紗織物の走行速度等)を適宜選択する必要がある。
【0042】
紗織物3Aと他のシート状物3Bが一体化されて補強層3を構成している場合、該「他のシート状物3B」の例としては、織物、編物、不織布、フィルム、紙等が挙げられる。
【0043】
紗織物3Aと他のシート状物3Bを一体化する方法としては、接着や熱融着が例示できる。接着により一体化する場合、公知の接着剤を適宜使用することができる。熱融着により一体化する方法として、例えば、特許第5859699号公報に記載のカレンダー加工による方法が挙げられる。
【0044】
紗織物3Aと他のシート状物3Bをカレンダー加工により一体化することで補強層3を作製する場合、紗織物単体をカレンダー加工して使用する場合と同様に、補強層3の厚みが小さくなり、また、遮熱シート1の柔軟性が向上しやすくなるというメリットがある反面、遮熱シート1の引裂強さや引張強さが低下するデメリットが生じる場合がある。
このため、所望する遮熱シート1の性状に応じて、カレンダー加工の要否、及びカレンダー加工時の条件(カレンダーロールの温度、線圧、紗織物の走行速度等)を適宜選択する必要がある。
【0045】
「紗織物3Aと他のシート状物3Bが一体化されて補強層3を構成している場合」とは、
図3のように、1つの紗織物3Aと1つのシート状物3Bが一体化されている場合のみに限られず、補強層3が、紗織物3A及び/又はシート状物3Bを複数含む場合もある。例えば、2つのシート状物3Bの間に1つの紗織物3Aが挟まれた状態で一体化された場合(図示せず)が挙げられる。
補強層3が複数の紗織物3Aを含む場合、それらは、同種であってもよいし、異種であってもよい(補強層3が複数のシート状物3Bを含む場合も同様である)。
【0046】
前記した熱反射層2及び補強層3を接着により一体化(接合)させることにより、本発明の遮熱シート1となる。
すなわち、遮熱シート1は、熱反射層2と補強層3との間に、接着層4を有する(
図1~3)。接着層4の形成には、公知の接着剤を適宜使用することができる。
【0047】
熱反射層2が、樹脂フィルム6の上に、金属層5を有している場合、金属層5の側の面を補強層3と一体化してもよいし(
図1)、金属層5の反対側の面を補強層3と一体化してもよい(
図2、
図3)。
【0048】
紗織物3Aと他のシート状物3Bが一体化されて補強層3を構成している場合、紗織物3Aの側の面を熱反射層2と一体化してもよいし(
図3)、シート状物3Bの側の面を熱反射層2と一体化してもよい(図示せず)。
【0049】
熱反射層2及び補強層3を接着により一体化させる際には、ホットメルト接着剤を使用して接着するのが、特に望ましい。
ホットメルト接着剤は、常温では固体であり、通常80~100℃程度に加熱することで溶融し接着が行われ、冷却により固化される。ホットメルト接着剤は、有機溶剤を使用しないので安全性が高く、環境への負荷も生じにくい。また、ホットメルト接着剤による接着は、高速の処理が可能であり、生産性が高い。
【0050】
本発明における熱反射層2と補強層3との接着による一体化に使用することのできる具体的なホットメルト接着剤の種類としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)系ホットメルト接着剤、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、ポリウレタン系ホットメルト接着剤、ゴム系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤等が例示できる。
【0051】
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)系ホットメルト接着剤は、熱反射層2と補強層3との接着性が良好である点から、本発明における熱反射層2と補強層3との接着に使用するのが特に望ましい。
【0052】
補強層3は、打ち込み本数の少ない紗織物を有していることから、段差を有する構造となっている。このため、このような構造の物に対して均一に接着しやすいゴム系ホットメルト接着剤も、本発明における熱反射層2と補強層3との接着に使用するのが特に望ましい。
【0053】
ホットメルト接着剤を使用して、熱反射層2と補強層3とを一体化させる際のホットメルト接着剤の具体的な塗工方法としては、スプレー塗布、ロールコータ塗布、ナイフコーターが例示できる。
【0054】
熱反射層2と補強層3とを一体化させる際のホットメルト接着剤の付与量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、0.3g/m2以上であることがより好ましく、0.5g/m2以上であることが特に好ましい。また、10g/m2以下であることが好ましく、7g/m2以下であることがより好ましく、5g/m2以下であることが特に好ましい。
ホットメルト接着剤の付与量が上記下限以上であると、熱反射層2と補強層3とが十分に接着し、剥離しにくい。ホットメルト接着剤の付与量が上記上限以下であると、遮熱シート1が柔軟になりやすい。
【0055】
本発明の遮熱シート1の引裂強さ(後述の実施例により測定される引裂強さ)は、25N以上であることが好ましく、30N以上であることがより好ましく、40N以上であることが特に好ましい。また、該引裂強さは大きいほど良いが、コスト等を考慮すると、例えば、1000N以下、500N以下又は200N以下で十分である。
【0056】
本発明の遮熱シート1の引張強さ(後述の実施例により測定される引張強さ)は、100N/4cm以上であることが好ましく、150N/4cm以上であることがより好ましく、200N/4cm以上であることが特に好ましい。また、該引張強さは大きいほど良いが、コスト等を考慮すると、例えば、5000N/4cm以下、2000N/4cm以下又は1000N/4cm以下で十分といえる。
【0057】
本発明の遮熱シート1は、補強層3の素材として紗織物を使用していることから、不織布を補強層3の素材として使用した場合と比べて、引裂強さや引張強さが大幅に優れている。
これは、紗織物は、不織布とは異なり、経糸と緯糸が直交しているため、外力が加わる方向に対して抗張力が十分に作用するためと考えられる。
【0058】
本願の遮熱シート1は、軽量であり、また、その割に耐久性に優れている。特に、本願発明の遮熱シート1は、引裂強さや引張強さが大幅に優れている。
このため、本発明の遮熱シート1は、可搬の遮熱シートとして使用するのに特に適している。例えば、災害発生時に屋外で遮熱シートを使用する場合、移動の際に、遮熱シートの破損が起こる等のリスクがある。引裂強さや引張強さが大幅に優れた本願発明の遮熱シートは、破損しにくく、長期間に亘り使用することが可能である。
【実施例0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
以下に示すようにして各遮熱シートを作製した。
【0061】
実施例1
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウム層が蒸着されたフィルム(株式会社麗光製。以下、「アルミ蒸着フィルム」という。)と、経糸・緯糸ともに綿番手30番の単糸(ポリエステル)を使用し、経糸22本/インチ、緯糸21本/インチで製織した紗織物Aとを、ホットメルト接着剤により接着し一体化することで、遮熱シートを作製した。ホットメルト接着剤として、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)系ホットメルト接着剤を使用し、塗工量は2.6g/m
2とした。また、アルミ蒸着フィルムのアルミニウム層の反対側の面と、紗織物Aとが接着するような向きにして接着した(
図2)。
【0062】
実施例2
実施例1で使用した紗織物Aと、スパンボンド不織布(東洋紡株式会社製、エクーレ(登録商標))とを、カレンダー加工することで、紗織物Aと不織布が一体化した複合シート(補強層)を作製した。
実施例1で使用したものと同じアルミ蒸着フィルムと、該複合シート(補強層)とを、ホットメルト接着剤により接着し一体化することで、遮熱シートを作製した。ホットメルト接着剤として、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)系ホットメルト接着剤を使用し、塗工量は2.6g/m
2とした。また、アルミ蒸着フィルムのアルミニウム層の反対側の面と、複合シート(補強層)の紗織物側の面とが接着するような向きにして接着した(
図3)。
【0063】
比較例1
実施例1において、紗織物Aをスパンボンド不織布に変更した以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
使用したスパンボンド不織布は、実施例2において、複合シートの材料として使用したものと同じである。
【0064】
比較例2
実施例1において使用したものと同じアルミ蒸着フィルムを、そのまま遮熱シートとした。
【0065】
実施例3
実施例1において、紗織物Aを、経糸・緯糸ともに綿番手14番の単糸(ポリエステル)を使用し、経糸14本/インチ、緯糸14本/インチで製織した紗織物Bに変更した以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
【0066】
実施例4
実施例1において、紗織物Aを、経糸・緯糸ともに綿番手20番の単糸(ポリエステル)を使用し、経糸14本/インチ、緯糸14本/インチで製織した紗織物Cに変更した以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
【0067】
実施例5
実施例1において、紗織物Aを、経糸に綿番手5番の単糸(ポリエステル)、緯糸に綿番手10番の双糸(ポリエステル)を使用し、経糸8本/インチ、緯糸8本/インチで製織した紗織物Dに変更した以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
【0068】
実施例6
実施例1において、紗織物Aを、経糸に綿番手30番の単糸(ポリエステル)、緯糸に綿番手10番の単糸(ポリエステル)を使用し、経糸8本/インチ、緯糸8本/インチで製織した紗織物Eに変更した以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
【0069】
実施例7
実施例1において、紗織物Aを、経糸・緯糸ともに200デニールのポリエステルマルチフィラメント(綿番手で27番相当)を使用し、経糸24本/インチ、緯糸18本/インチで製織した紗織物Fに変更した以外は、実施例1と同様にして遮熱シートを作製した。
【0070】
実施例、比較例で作製した各遮熱シートのタテ方向の引裂強さをJIS L 1096:2010 C法(トラペゾイド法)で、引張強さをJIS L 1096:2010 A法(ストリップ法)で測定した。
測定結果を表1及び表2に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
補強層に紗織物を使用した本発明の遮熱シートは、補強層を有しない遮熱シート(比較例2)や、補強層に不織布を使用した遮熱シート(比較例1)と比較して、引裂強さや引張強さの点において大幅に優れていた。
【0074】
本発明の遮熱シートにおける紗織物の綿番手が低い、つまり、糸が太いほど糸1本あたりの引裂強さが大きかった。また、綿番手(糸の太さ)が同一の場合、打ち込み本数の多い実施例1の方が打ち込み本数の少ない実施例6に比べて引裂強さが大きかったが、糸1本あたりの引裂強さは同等だった。
本発明の遮熱シートは、耐久性が高く長期的に使用することが可能であり、また、軽量かつ柔軟であることから、本発明の遮熱シートは、例えば、身に着けたり、防災テントに設置したりといった、災害発生時の保温用シートとして利用されるものである。