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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022718
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】塗装装置及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/02 20060101AFI20240214BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240214BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240214BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240214BHJP
   E04F 21/08 20060101ALI20240214BHJP
   E01D 19/10 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
B05B13/02
B05D1/02 A
B05D3/00 B
B05D7/00 L
E04F21/08 A
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126004
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】518004185
【氏名又は名称】株式会社サーフェステクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健康
【テーマコード(参考)】
2D059
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
2D059AA24
2D059GG22
4D075AA01
4D075AA32
4D075AA43
4D075AA71
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC05
4F035AA03
4F035BC02
4F035CA01
4F035CA04
4F035CD03
4F035CD06
4F035CD11
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の塗装装置と比べて塗装対象となる壁面に対する塗膜の厚みムラを生じさせ難い塗装装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の塗装装置(1)は、塗装対象となる壁面(S)に沿って移動する台車(2)と、前記壁面(S)に塗装を施す塗料噴霧ノズル(41)と、前記台車(2)に前記塗料噴霧ノズル(41)を搭載する架台(3)と、前記台車(2)に対して前記架台(3)を傾けるチルト機構(6)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象となる壁面に沿って移動する台車と、
前記壁面に塗装を施す塗料噴霧ノズルと、
前記台車に前記塗料噴霧ノズルを搭載する架台と、
前記台車に対して前記架台を傾けるチルト機構と、
を備えることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記チルト機構は、塗装を開始する際の前記架台の基準姿勢を維持するように前記台車が移動する路面に対して前記架台を傾けるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記チルト機構は、前記基準姿勢の前記架台と前記壁面との距離が維持されるように、前記架台の傾きを制御する制御機構をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
請求項1に記載の塗装装置を使用した塗装方法であって、
塗装を開始する際の前記架台の基準姿勢を定める工程と、
前記架台が前記基準姿勢を維持しながら前記台車が前記壁面に沿って移動する工程と、
前記台車が移動しながら前記塗料噴霧ノズルが前記壁面に塗装を施す工程と、
を有することを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行台車に搭載された塗料噴霧ノズルによって、道路の壁高欄に塗装を行う塗装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような塗装装置によれば、道路に沿って長く延びる壁高欄に対する塗装作業を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-118875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗装対象となる壁高欄の壁面は一般に鉛直面となっている。これに対して路面は、雨水などの排水効率を考慮して壁高欄側に低くなるように傾斜している場合や、高速道路のカーブ部分では壁高欄側に高いバンク角を形成していることも多い。
従来の塗装装置(例えば、特許文献1参照)がこのような路面を走行すると、走行台車も傾斜する路面に沿って傾く。走行台車に搭載された塗料噴霧ノズルと壁面との距離は、路面の傾斜角に応じて変動する。そのため従来の塗装装置は、道路に沿った壁面の延在方向に塗膜の厚みムラを生じさせるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、塗装対象となる壁面に対する塗膜の厚みムラを従来よりも生じさせ難い塗装装置及び塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した塗装装置は、塗装対象となる壁面に沿って移動する台車と、前記壁面に塗装を施す塗料噴霧ノズルと、前記台車に前記塗料噴霧ノズルを搭載する架台と、前記台車に対して前記架台を傾けるチルト機構と、を備えることを特徴とする。
また、前記課題を解決した塗装方法は、前記塗装装置を使用した塗装方法であって、塗装を開始する際の前記架台の基準姿勢を定める工程と、前記架台が前記基準姿勢を維持しながら前記台車が前記壁面に沿って移動する工程と、前記台車が移動しながら前記塗料噴霧ノズルが前記壁面に塗装を施す工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗装装置によれば、塗装対象となる壁面に対する塗膜の厚みムラを従来よりも生じさせ難い塗装装置及び塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る塗装装置の構成説明図である。
図2A】塗装装置が壁面への塗装を開始する際の架台の基準姿勢を示す模式図である。
図2B】道路中央側から壁高欄側に向かうほど徐々に低くなる下り勾配の路面において、基準姿勢を維持するように台車上で架台が傾いている様子を示す模式図である。
図2C】道路中央側から壁高欄側に向かうほど徐々に高くなる上り勾配の路面において、基準姿勢を維持するように台車上で架台が傾いている様子を示す模式図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る塗装装置の構成説明図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る塗装装置の動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の塗装装置及び塗装方法を実施するための形態(第1実施形態及び第2実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、例えば高速道路などの壁高欄に沿って移動しながら壁高欄の壁面に塗装を施す塗装装置について説明するが、本発明の塗装装置はこれに限定されるものではなく、後記するように壁面に対する塗装に広く使用することができる。
【0010】
(第1実施形態)
≪塗装装置≫
まず、本発明の第1実施形態に係る塗装装置について主に図1を参照しながら説明する。
第1実施形態に係る塗装装置1は、台車2と、架台3と、塗料噴霧機構4と、飛散防止カバー5と、チルト機構6と、を主に備えて構成されている。
【0011】
<台車>
台車2は、台車本体21と、複数の車輪22とを主に備えて構成されている。
本実施形態での台車本体21は、板状部材を主体に平面視で矩形状に形成されたものを想定している。なお、台車本体21を構成する材料や、台車本体21の形状は限定されるものではない。例えば、台車本体21は、平面視で矩形枠状に組み合わされた鋼材により形成されていてもよいし、格子状に組み合わされた鋼材により形成されていてもよい。
【0012】
本実施形態での車輪22は、壁高欄Wが設けられる道路Rを台車2が壁高欄Wの壁面Sに沿って走行可能なように、台車本体21に複数設けられている。具体的には、車輪22は、壁面Sを道路Rの縦断方向(図1の紙面に垂直な方向(以下、単に「道路縦断方向」と称することがある))に転動可能なように台車本体21に取り付けられている。
本実施形態では、台車本体21における道路Rの横断方向(以下、単に「道路横断方向」と称することがある)に所定の間隔を開けて並ぶ車輪22同士が車軸23で連結され、車軸23で連結された一対の車輪22が台車本体21の道路縦断方向に所定の間隔を開けて複数対並ぶものを想定している。
【0013】
また、これらの複数対からなる車輪22のうち、少なくとも一対の車輪22は、これらの車輪22同士を連結する車軸23が、図示しない所定の減速機を介してモータ、内燃機関などの駆動源に連結されている。つまり、この少なくとも一対の車輪22は、駆動源によって回転する駆動輪となっている。
【0014】
また、これらの複数対からなる車輪22のうち、駆動輪を除く残りの対からなる車輪22は、従動輪を構成している。
なお、従動輪は、対からなる車輪22に限定されずに、道路Rに対して一つの車輪22が個別に転動可能なキャスタなどで構成することもできる。車輪22の数及び位置は、特に制限はなく、台車2の走行安定性を考慮して適宜に決定できる。
以上のような複数の車輪22によって、台車2は、予め設定された一定速度にて壁高欄Wの道路R側を壁高欄Wの壁面Sに沿って走行することとなる。
【0015】
なお、台車2は、手押し式あるいは牽引式とすることもできる。また、台車2の速度は限定されるものではなく、壁高欄Wの形状や、必要な塗装厚などに応じて適宜決定すればよい。また、台車2は、車輪式(タイヤ式)に限定されるものではなく、例えば、クローラ式であってもよい。また、台車2は、壁高欄Wに沿って敷設されたレール上を走行する構成とすることもできる。
【0016】
<架台>
架台3は、台車本体21上に配置される箱枠構造体にて構成されている。具体的には、架台3は、台車本体21上に所定の間隔を開けて配置される平面視で矩形の底枠部材31と、この底枠部材31の4隅に立設される4本の脚部材32と、各脚部材32の上端部に平面視で矩形となるように4本の桟部材33が渡し架けられて接続された構造を有している。ただし、架台3は、これに限定されるものではなく、底枠部材31と脚部材32と桟部材33とを適宜に組み合わせた立体構造体であれば特に制限はない。
【0017】
また、架台3には、スペーサ34が取り付けられている。
スペーサ34は、架台3から壁高欄Wの壁面Sに向けて延びる棒状のスペーサ本体34aと、スペーサ本体34aの前端部に取り付けられて壁面S上を道路縦断方向に沿って転動するローラ部34bと、を備えている。
なお、図1中、スペーサ34は、1本のみ示しているが、台車本体21の道路縦断方向の両側にそれぞれ設けられている。
このようなスペーサ34は、ローラ部34bが壁面Sに当接することによって、壁高欄Wと台車2との距離を一定に保つこととなる。
なお、本実施形態でのスペーサ本体34aは、壁面Sに対して道路横断方向(図1の左右方向)への進退が自在となるように台車本体21に取り付けられている。これにより台車2と壁面Sとの間の距離調節が可能となっている。
【0018】
<塗料噴霧機構>
塗料噴霧機構4は、塗料噴霧ノズル41と、回動アーム42と、塗料噴霧ノズル41の駆動機構(図示を省略)と、を主に備えて構成されている。
なお、図1は、飛散防止カバー5の内側に配置されることとなる塗料噴霧ノズル41を視認可能なように、作図の便宜上、飛散防止カバー5の一部と、後記する配管53の一部とを部分的に切り欠いて表している。
【0019】
塗料噴霧ノズル41は、図示は省略するが、ポンプによって塗料貯留タンクから配管を介して供給された塗料を壁高欄Wの壁面Sに向けて噴霧するように構成されている。このとき塗料噴霧ノズル41は、壁面Sの縦方向(上下方向)に往復移動しながら壁面Sに塗装を施すようになっている。
具体的には、塗料噴霧ノズル41は、架台3に一端側が軸支された回動アーム42の他端側(回動端側)に取り付けられている。
【0020】
回動アーム42は、駆動機構(図示を省略)によって軸受43回りに回動することで、回動端側に取り付けられた塗料噴霧ノズル41を壁面Sの縦方向(上下方向)に往復移動させる。また、本実施形態での塗料噴霧ノズル41は、回動アーム42の回動端側に軸支されて、この軸支部回りに上下方向に回動可能となっているものを想定している。具体的には、塗料噴霧ノズル41は、駆動機構(図示を省略)によって、回動アーム42の回動端側で、上下方向に首振り動作が可能となっている。
【0021】
なお、本実施形態での前記の駆動機構(図示を省略)は、モータなどの回転電機と、回転電機の回転力を回動アーム42の軸受43や、塗料噴霧ノズル41の軸支部(図示を省略)に伝達する複数のプーリや、これらの複数のプーリに架け渡された無端ベルトなどで構成することができる。また、前記の駆動機構(図示を省略)は、回動アーム42の軸受43や、塗料噴霧ノズル41の軸支部(図示を省略)のそれぞれに独立に設けられた回転電機や減速機の組み合わせで構成することもできる。
また、塗料噴霧ノズル41は、前記の回動式の構成に代えて、上下方向に延びるように設けられた摺動レールに沿って直動アクチュエータにて駆動されるリニア駆動形式の構成にすることもできる。
【0022】
<飛散防止カバー>
飛散防止カバー5は、塗料噴霧ノズル41を中に挟んで道路縦断方向に互いに向き合う一対の側板51と、これら側板51の上辺同士を接続する天板52とによって、コ字断面形状を呈する立体構造体にて構成されている。すなわち、飛散防止カバー5は、側板51と天板52とが囲む内側に内部空間を形成するとともに、道路横断方向(図1の左右方向)及び下方向に開いている。
このような本実施形態での飛散防止カバー5は、架台3の壁面S側に所定のブラケット(図示を省略)を介して取り付けられるものを想定している。
【0023】
また、飛散防止カバー5には、飛散防止カバー5の内側空間の排気を行う配管53が接続されている。そして、飛散防止カバー5側から延びる配管53の先端は、吸引ポンプ54に接続されている。
配管53は、飛散防止カバー5の内側で塗料噴霧流から離脱した、壁面Sの塗装に寄与しない塗料微粒子(ミストなど)を吸引ポンプ54の吸引力で飛散防止カバー5の外側に排出する。なお、本実施形態での配管53は、一対の側板51のうちの一方の側板51にのみ接続される構成となっているが、配管53は、一対の側板51のそれぞれに振り分けられて接続される構成とすることもできる。また、本実施形態での配管53の数は、2本となっているが、1本又は3本以上であってもよい。
また、図示は省略するが、配管53のそれぞれには、吸引ポンプ54の直ぐ上流側にHEPAフィルタなどのエアフィルタや、サイクロン式などの塗料回収装置を配置することもできる。
【0024】
<チルト機構>
本実施形態でのチルト機構6は、架台3の底枠部材31の道路横断方向における外側端部31aを台車2の台車本体21上に軸支する軸支部61と、底枠部材31の内端部31bと台車本体21との間隔を調節する間隔調節手段62と、を備えている。
本実施形態での間隔調節手段62は、ボールネジ構造体で構成されている。具体的には、間隔調節手段62は、台車本体21に取り付けられたスラスト軸受62aと、このスラスト軸受62aに下端が回転可能に支持されたボールねじ62bと、ボールねじ62bに挿通されるとともに底枠部材31の内側端部31bに取り付けられたナットブラケット62cと、ボールねじ62bのカップリング部62d近傍を回転可能に支持するように架台3の適所に取り付けられたラジアル軸受62eと、ボールねじ62bに傘歯車(図示を省略)を介して回転力を付与するリングハンドル62fと、を有している。
【0025】
本実施形態でのチルト機構6は、リングハンドル62fを右回り又は左回りに回転させることで、上下方向に延びるボールねじ62bは、上面視で左回り又は右回りに回転する。ナットブラケット62cは、このようなボールねじ62bの回転動作に伴って上下動する。間隔調節手段62は、台車本体21と底枠部材31の内側端部31bとの間隔を調節する。
また、ナットブラケット62cが上下動することによって、ナットブラケット62cが取り付けられた底枠部材31の内側端部31bは、底枠部材31の外側端部31aの軸支部61回りに回動する。すなわち、チルト機構6を操作すると、底枠部材31の内側端部31bが上下に移動し、台車2の上面に対する架台3の傾斜角度が変化する。
このように、チルト機構6は、台車本体21上での架台3の傾きを変化させる。
【0026】
なお、図1中、符号63は、台車本体21上での架台3の傾きを所定角度に維持するストッパである。本実施形態でのストッパ63は、台車本体21から上方に延出する板状の支持ブラケット63aと、支持ブラケット63aに形成されて上下方向に長い長孔63a1と、架台3側から延びて長孔63a1に挿通されるねじ部(図示を省略)を有するロックレバー63bと、を備えている。
このストッパ63によれば、台車本体21に対して所定角度に開いた架台3と台車本体21の支持ブラケット63aとをロックレバー63bにて固定することができる。
【0027】
≪塗装方法≫
次に、第1実施形態に係る塗装装置1(図1参照)の動作について説明しながら塗装装置1を使用した塗装方法について説明する。
この塗装方法は、塗装を開始する際の架台3(図1参照)の基準姿勢を定める工程と、架台3が前記の基準姿勢を維持しながら台車2(図1参照)が壁面S(図1参照)に沿って移動する工程と、台車2が移動しながら塗料噴霧ノズル41(図1参照)が壁面Sに塗装を施す工程と、を有している。なお、本実施形態での架台3の基準姿勢とは、架台3の壁面Sとの対向面が、壁面Sと平行となる姿勢をいう。ただし、この基準姿勢は、後に説明するように変更することもできる。
【0028】
図2Aは、塗装装置1が壁面Sへの塗装を開始する際の架台3の基準姿勢を示す模式図である。図2Bは、道路中央側から壁高欄W側に向かうほど徐々に低くなる下り勾配(排水勾配)の路面Raにおいて、基準姿勢を維持するように台車2上で架台3が傾いている様子を示す模式図である。図2Cは、道路中央側から壁高欄W側に向かうほど徐々に高くなる上り勾配の路面Raにおいて、基準姿勢を維持するように台車2上で架台3が傾いている様子を示す模式図である。
なお、図2Aから図2Cにおいては、作図の便宜上、図1における飛散防止カバー5を仮想線(二点鎖線)にて描き、配管53、吸引ポンプ54、及び間隔調節手段62の記載を省略している。
【0029】
図2Aに示すように、塗装装置1が壁面Sへの塗装を開始する際の、本実施形態での架台3の基準姿勢は、水平な路面Raを移動する台車2上で、架台3の底枠部材31が水平になっている状態を想定している。
また、このような基準姿勢の架台3は、壁高欄Wの壁面Sとの距離が基準距離D1となっているものを想定している。そして、基準姿勢の架台3は、飛散防止カバー5における壁高欄W側の端縁を、壁高欄Wの壁面Sに対して、所定の隙間を開けて対峙させるように配置する。なお、本実施形態におけるこの所定の隙間は、台車2が壁面Sに沿って移動する際に、飛散防止カバー5における壁高欄W側の端縁が壁高欄Wの壁面Sに対して干渉しない程度に狭く設定されることが望ましい。
【0030】
図2Bに示すように、塗装装置1の台車2が、下り勾配の路面Raを移動する場合には、台車本体21は、路面Raの傾斜角度θ1に沿うように傾く。
これに対して、塗装装置1のチルト機構6(図1参照)は、架台3が図2Aに示す基準姿勢を維持するように、台車本体21上で架台3を傾ける。
具体的には、路面Raの傾斜角度θ1と、台車本体21に対する架台3の底枠部材31の傾斜角度θ2とが等しくなるように、台車2上で架台3が傾けられる。これにより架台3の底枠部材31は、塗装装置1の側面視で、水平面Hと平行となる。飛散防止カバー5は、図2Aに示したと同様に、飛散防止カバー5における壁高欄W側の端縁が、壁高欄Wの壁面Sに対して、前記の所定の隙間を開けて対峙することとなる。
【0031】
また、図2Bに示すように、台車2上での架台3の基準姿勢の維持は、傾斜角度θ1の路面Ra上での架台3と壁面Sとの距離D2を規定した場合に、図2Aに示す基準距離D1との関係で、|D1-D2=ΔD|の値が0に近づくように、好ましくはΔDが0となるように、台車本体21に対する架台3の底枠部材31の傾きを変化させることでも達成される。
【0032】
また、図2Cに示すように、塗装装置1の台車2が、上り勾配の路面Raを移動する場合には、台車本体21は、路面Raの傾斜角度θ3に沿うように傾く。
これに対して、塗装装置1のチルト機構6(図1参照)は、架台3が図2Aに示す基準姿勢を維持するように、台車本体21上で架台3を傾ける。
具体的には、路面Raの傾斜角度θ3と、台車本体21に対する架台3の底枠部材31の傾斜角度θ4とが等しくなるように、台車2上で架台3が傾けられる。これにより架台3の底枠部材31は、塗装装置1の側面視で、水平面Hと平行となる。飛散防止カバー5は、図2Aに示したと同様に、飛散防止カバー5における壁高欄W側の端縁が、壁高欄Wの壁面Sに対して、前記の所定の隙間を開けて対峙することとなる。
【0033】
また、図2Cに示すように、台車2上での架台3の基準姿勢の維持は、傾斜角度θ3の路面Ra上での架台3と壁面Sとの距離D2を規定した場合に、図2Aに示す基準距離D1との関係で、|D1-D2=ΔD|の値が0に近づくように、好ましくはΔDが0となるように、台車本体21に対する架台3の底枠部材31の傾きを変化させることでも達成される。
【0034】
そして、この塗装方法では、架台3がこのような基準姿勢を維持しながら台車2が壁面Sに沿って移動する際に、塗料噴霧ノズル41が壁面Sに対して塗装を施すこととなる。
【0035】
≪作用効果≫
次に、本実施形態における塗装装置1及び塗装方法の奏する作用効果について説明する。
本実施形態の塗装装置1は、台車2上で架台3を傾けるチルト機構6を備えている。
このような塗装装置1によれば、路面Raの傾きが変動したとしてもチルト機構6にて架台3の傾きを変えて架台3の姿勢を補正することができる。
路面Raの傾きが変動したことによる塗料噴霧ノズル41と壁面Sとの距離の変動は抑制される。壁面Sの延在方向における塗膜の厚みムラは生じ難くなる。
【0036】
また、このような塗装装置1のチルト機構6は、塗装を開始する際の架台3の基準姿勢を維持するように台車2が移動する路面Raに対して架台3を傾けるように構成されている。
このような塗装装置1によれば、架台3の基準姿勢に基づいてチルト機構6が架台3の姿勢を補正するので、塗膜の厚みムラは、より確実に生じ難くなる。
【0037】
また、このような塗装装置1においては、基準姿勢の架台3は、飛散防止カバー5における壁高欄W側の端縁を、壁高欄Wの壁面Sに対して、前記の所定の隙間を開けて対峙させるように配置する。
これにより塗装装置1は、飛散防止カバー5の内側で塗料噴霧流から離脱した、壁面Sの塗装に寄与しない塗料微粒子が、飛散防止カバー5と壁高欄Wの壁面Sとの離間部から漏れ出ることを効果的に抑制する。
【0038】
また、飛散防止カバー5には、飛散防止カバー5の内側空間の排気を行う配管53が接続されている。そして、飛散防止カバー5側から延びる配管53の先端は、吸引ポンプ54に接続されている。
配管53は、飛散防止カバー5の内側で塗料噴霧流から離脱した、壁面Sの塗装に寄与しない塗料微粒子を吸引ポンプ54の吸引力で飛散防止カバー5の外側に排出する。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る塗装装置1について説明する。
図3は、第2実施形態に係る塗装装置1の構成説明図である。
なお、この第2実施形態に係る塗装装置1において、前記第1実施形態に係る塗装装置1(図1参照)と同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
また、図3においては、図2Aから図2Cと同様に、作図の便宜上、図1における飛散防止カバー5を仮想線(二点鎖線)にて描き、配管53、及び吸引ポンプ54の記載を省略している。
【0040】
図3に示すように、第2実施形態に係る塗装装置1は、第1実施形態に係る塗装装置1における間隔調節手段62(図1参照)に代えて、間隔調節手段64を有している。
間隔調節手段64は、距離センサ64aと、制御機構64bと、アクチュエータ64cと、を備えている。
【0041】
距離センサ64aは、架台3と壁面Sとの距離を計測して、その距離特定信号を制御機構64bに出力するようになっている。この距離センサ64aとしては、光学式、電波式、超音波式のいずれであっても構わない。
制御機構64bは、CPU(Central Processing Unit)で構成される制御部と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)などからなる記憶部とで主に構成されている。
【0042】
本実施形態での制御部は、記憶部に予め記憶させた前記基準距離D1(図2A参照)と、距離センサ64aからの距離特定信号によって取得した前記の架台3と壁面Sとの距離D2とに基づいて、|D1-D2=ΔD|の値が0に近づくように、アクチュエータ64cに対して駆動信号を出力するようになっている。
アクチュエータ64cは、この駆動信号を受信することによって、台車2上で架台3が前記の基準姿勢を取るように駆動する。
アクチュエータ64cとしては、例えば、正逆回転可能なモータ付きボールねじ、油圧シリンダなどが挙げられるが、台車2と架台3との間隔を調節できればこれに限定されるものではない。
【0043】
次に、図3及び図4を主に参照しながら第2実施形態に係る塗装装置1の動作について説明する。
図4は、第2実施形態に係る塗装装置の動作を説明するフロー図である。
図4に示すように、塗装装置1は、距離センサ64aによって、基準距離D1を計測するとともに、制御機構64bが基準距離D1を記憶部に記憶する(ステップS101)。
次に、塗装装置1は、台車2が壁面Sに沿って走行を開始するとともに、塗料噴霧ノズル41が壁面Sに対する塗装を開始する(ステップS102)。
【0044】
塗装装置1の距離センサ64aは、架台3と壁面Sとの距離D2(図2B又は図2C参照)を計測する(ステップS103)。
そして、制御機構64bは、|D1-D2=ΔD|の値が0に近づくように、アクチュエータ64cに対して駆動信号を出力することで、架台3が基準姿勢を維持するように架台3の角度を調節する(ステップS104)。
【0045】
また、塗装装置1は、壁面Sに塗装を施すべき予定の距離を台車2が走行していない場合(ステップS105のNO)には、ステップS103に戻る。そして、壁面Sに塗装を施すべき予定の距離を台車2が走行した場合(ステップS105のYES)には、塗装装置1は、塗料噴霧ノズル41による壁面Sへの塗装を停止するとともに台車2の走行を停止する(ステップS106)。
これにより第2実施形態に係る塗装装置1の一連の動作は終了する。
【0046】
このような第2実施形態に係る塗装装置1によれば、壁面Sに塗装を施すべき道路の予定の距離に渡って、ユーザが関与しなくとも自動で塗膜の厚みにムラを生じることなく壁面Sに塗装を施すことができる。
また、第2実施形態に係る塗装装置1によれば、壁面Sに塗装を施すべき道路の予定の距離に渡って、ユーザが関与しなくとも自動で、飛散防止カバー5における壁高欄W側の端縁を、壁高欄Wの壁面Sに対して、前記の所定の隙間を開けて対峙させることができる。これにより塗装装置1は、飛散防止カバー5と壁高欄Wの壁面Sとの離間部から塗料微粒子が漏れ出ることをさらに効果的に抑制する。
【0047】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前記実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0048】
前記第1実施形態及び前記第2実施形態では、壁高欄Wの壁面Sに対して塗装する場合について説明したが、塗装対象は、壁高欄Wに限定されるものではなく、例えば、トンネル内壁面、橋脚、建築構造物の外壁、側壁、擁壁、護岸、防潮堤などであってもよい。
【0049】
前記第1実施形態では、架台3の基準姿勢が水平面Hに対して架台3の底枠部材31が平行となっている状態(架台3の壁面Sとの対向面が、壁面Sと平行となっている状態)を想定しているが、基準姿勢はこれに限定されるものではなく、水平面Hに対して所定の角度で傾いた状態にて規定することもできる。
【0050】
前記第2実施形態では、架台3と壁面Sとの距離に基づいて架台3が基準姿勢を維持するように制御機構64bが架台3の傾きを制御するように構成されているが、検出した路面Raの傾斜角度に基づいて架台3が基準姿勢を維持する構成とすることもできる(図2B及び図2C参照)。ちなみに、路面Raの傾斜角度は、台車本体21に設けた傾斜センサにて検出することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 塗装装置
2 台車
3 架台
6 チルト機構
S 壁面
41 塗料噴霧ノズル
64b 制御機構
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4