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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022725
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C08F283/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126019
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】手塚 紗英
(72)【発明者】
【氏名】木村 陸人
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA02
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD131
4J127BE111
4J127BE11Y
4J127BF361
4J127BF36Y
4J127BF381
4J127BF38Y
4J127BG181
4J127BG18X
4J127BG18Y
4J127BG18Z
4J127CB281
4J127CC161
4J127EA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】副生成物として強酸成分が生じることなく、熱硬化を回避できる程度の低温で、アクリル酸エステル構造を主鎖に含む不飽和ポリエステルを製造すること。該不飽和ポリエステルから、モノマーのジメタクリル化合物を再生すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での共役置換反応により不飽和ポリエステルを製造。

[一般式(1)中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Yは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
製造した不飽和ポリエステルに、カルボン酸またはその塩を用いた共役置換反応を行い、前記一般式(1)で表されるメタクリル化合物を再生。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での共役置換反応により、下記一般式(2)で表される不飽和ポリエステルを製造する方法。
【化1】
[一般式(1)中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Yは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【化2】
[一般式(2)中のX、R、Rは、一般式(1)中のX、R、Rと同一である。Y、Zは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【請求項2】
下記一般式(1)-1で表されるジメタクリレートと、ジカルボン酸との間での共役置換反応により、下記一般式(2)-1で不飽和ポリエステルを製造する方法。
【化3】
[一般式(1)中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Yは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【化4】
[一般式(2)中のX、R、Rは、一般式(1)中のX、R、Rと同一である。Y1、Zは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【請求項3】
請求項1記載の一般式(2)で表される不飽和ポリエステルに、カルボン酸またはその塩を用いた共役置換反応を行い、請求項1記載の一般式(1)で表されるメタクリル化合物を再生する方法。
【請求項4】
請求項1記載の一般式(2)-1で表される不飽和ポリエステルに、カルボン酸またはその塩を用いた共役置換反応を行い、請求項1記載の一般式(1)-1で表されるメタクリル化合物を再生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不飽和ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルは、アクリル骨格のラジカル重合により架橋構造を形成する、硬化性樹脂として知られている(非特許文献1)。例えば、ウレタン結合を導入したポリ共役エステルは、木板の接着剤として優れた性能を示すことが報告されている(非特許文献2)。また、アクリル酸エステル構造のアリル位を、アシルオキシ基(エステル結合)やフェノキシ基などの脱離基で置換した不飽和ポリエステルは、アミンやチオールと反応し化学分解する(非特許文献3、4)。この分解は、求核剤であるアミンやチオールがアクリル酸エステル構造のビニリデン基に求核攻撃し、炭素-炭素二重結合がアリル位の炭素を巻き込む形に組み換わるとともに、アリル位の脱離基が遊離する付加-脱離機構(S2′機構)に基づく共役置換反応によって生じる。共役置換反応は室温、大気雰囲気でも効率よく進行することから、高分子の合成・分解の素反応として優れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】▲高▼坂 泰弘、日本接着学会誌、2020年、55巻3号、94-102.
【非特許文献2】T.Robert,S.Friebel,Green.Chem.,2016,18,2922.
【非特許文献3】Y.Kohsaka,T.Miyazaki,K.Hagiwara,Polym.Chem.2018,9,1610.
【非特許文献4】Y.Kohsaka,K.Nagai,Eur.Polym.J.,2020,141,110049
【非特許文献5】T.Katoh,Y.Ogawa,Y.Ohta,T.Yokozawa,J.Polym.Sci.,2021,59(9)787-797
【非特許文献6】▲高▼坂 泰弘、川谷 諒、繊維学会誌、2022年、78巻3号、111-115.
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】▲高▼坂 泰弘、宮崎匠、α-(ハロメチル)アクリル化合物、重合体、重合体の製造方法、硬化物の製造方法及び硬化物、特許登録7012329
【特許文献2】▲高▼坂 泰弘、宮崎匠、α-(ハロメチル)アクリル化合物、重合体、重合体の製造方法、硬化物の製造方法及び硬化物、特開2022-044637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエステルの製造法には、Lewis酸触媒存在下、高温・減圧条件でジカルボン酸およびそのエステルとジオールを反応させる直接合成法ならびにエステル交換法が知られている。これらの製造方法は可逆反応に基づくため、通常はジオールモノマーを大過剰に使用し、余剰のジオールを高温・減圧処理によって除去して平衡を生成物側に偏らせる必要がある。可逆反応に基づくポリエステル合成には、ジエステルとジカルボン酸の間のエステル交換を使用する、カルボン酸交換法(もしくはエステル-エステル交換法)も報告されている(非特許文献5)。この報告では有機分子触媒を含む様々な触媒が検討されているが、求核アシル置換反応(エステル交換反応)に基づいている点では従来の直接合成法ならびにエステル交換法と同様で、高重合度ポリマーの製造には125℃、減圧条件が必要とされている。
【0006】
アクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを、直接合成法あるいはエステル交換法で製造する場合、熱開始ラジカル重合による硬化反応の併発が課題になる。非特許文献5では、重合温度を130℃という比較的低温に留めて、さらに通常アクリル骨格に対してppm単位で使用する重合禁止剤を0.5wt%も使用することで、熱硬化反応を抑制することに成功している。同時に、重合度の増大を狙ってさらなる高温で加熱をしたり、反応時間を延長したりすると、硬化反応が併発し溶媒不溶な架橋ポリマーが生成することも描写されている。こうした事情から、アクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを、熱硬化が抑制可能な低温で合成する新しい手法が望まれる。
【0007】
本発明者らはα-(ハロメチル)アクリル化合物の求核的共役置換(S2’)反応を利用して、室温、大気雰囲気で高重合度のアクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを製造する手法を開発している(非特許文献3、特許文献1、特許文献2)。しかしながら、この製造法は副生成物として強酸性のハロゲン化水素が遊離するため、等モル以上の塩基を共存させて、これらを不活性化する必要がある。加えて、重合後にこれらを除去し不飽和ポリエステルを単離精製する操作が求められるため、工業的応用へ課題を残している。
【0008】
ところで、非特許文献3によれば、主鎖にアクリル骨格、そのアリル位にアシルオキシ基(エステル結合)を置換した不飽和ポリエステルは、アミンやチオールと共役置換反応を起こし化学分解する。このとき生じる分解物は、分解対象となった不飽和ポリエステルを合成する際に使用したモノマーとは異なる化合物である。すなわち、前述の化学分解のみでは、モノマーの再生によるケミカルリサイクルを達成することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
付加-脱離機構(S2′機構)に基づく共役置換反応は室温、大気雰囲気でも効率よく進行することから、重合の素反応として優れている。これまで、遊離成分にハロゲン原子、求核剤にカルボン酸を使用した共役置換反応に基づく不可逆反応に基づく重縮合により、高重合度のアクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを製造する手法を開発している。同様の反応で、遊離成分をカルボン酸、求核剤をカルボン酸とすると、可逆的に共役置換反応が進行する。このときの平衡定数は、遊離成分および求核剤のカルボン酸の酸性度や、アクリル骨格のアリル位の置換基によって決定される。
【0010】
重縮合において、生成するポリマーの重合度を高めるためには、反応点の反応度(転化率)を100%に近づける必要がある。Floryの理論では、重縮合の素反応において、平衡定数をKとすると、
(重合度) &#8804; 1+K1/2
の関係が成り立つことを示している。すなわち、重縮合の素反応が可逆反応の場合は、何らかの外的措置により平衡を高分子側に偏らせる工夫を要する。例えば、一般的なポリエステル合成法であるエステル交換法は、可逆的な求核アシル置換反応に基づく重縮合であり、ジエステルとジオールを触媒存在下で高温加熱して、遊離する低級アルコールを減圧除去する工程で高重合度化を図る。
【0011】
主鎖にアクリル骨格を含む不飽和ポリエステルは、高温加熱すると熱硬化する性質がある。したがって、高温加熱を必要とする、一般的なエステル交換法による合成は不適である。本発明者は鋭意検討の結果、アリル位にアシルオキシ基(エステル結合)を置換したジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での共役置換反応を素反応とする重合により、不飽和ポリエステルを製造できることを見出した。このとき、遊離成分であるカルボン酸を重合中に系外排除することで、重合後の精製操作を必要とすることなく、アクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを得ることができる。カルボン酸の構造や触媒を検討した結果、熱硬化を回避できる適切な温度で、遊離するカルボン酸を除去することで、主鎖にアクリル骨格を含む不飽和ポリエステルが合成できるようになる。
【0012】
前記の重合法で得られる不飽和ポリエステル、すなわち主鎖にアクリル骨格、そのアリル位にアシルオキシ基(エステル結合)を置換した不飽和ポリエステルに、カルボン酸やそれらの塩を求核剤とする共役置換反応を行うと、モノマーであるジメタクリル化合物を再生することができる。すなわち、前記の重合法と、カルボン酸あるいはそれらの塩を用いた不飽和ポリエステルの分解法を組み合わせれば、モノマー/ポリマーの可逆的な生成を利用したケミカルリサイクルによる物質循環が実現する。
【0013】
すなわち、本発明は以下の[1]~[4]を提供する。
【0014】
[1]下記一般式(1)で表されるジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での共役置換反応により、下記一般式(2)で表される不飽和ポリエステルを製造する方法。
【化1】
【0015】
[一般式(1)中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Yは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【0016】
【化2】
[一般式(2)中のX、R、Rは、一般式(1)中のX、R、Rと同一である。Y、Zは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【0017】
[2]下記一般式(1)-1で表されるジメタクリレートと、ジカルボン酸との間での共役置換反応により、下記一般式(2)-1で不飽和ポリエステルを製造する方法。
【0018】
【化3】
【0019】
[一般式(1)中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Yは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【0020】
【化4】
[一般式(2)中のX、R、Rは、一般式(1)中のX、R、Rと同一である。Y1、Zは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【0021】
[3]前記一般式(2)で表される不飽和ポリエステルに、カルボン酸またはその塩を用いた共役置換反応を行い、前記一般式(1)で表されるメタクリル化合物を再生する方法。
【0022】
[4]前記一般式(2)-1で表される不飽和ポリエステルに、カルボン酸またはその塩を用いた共役置換反応を行い、前記一般式(1)-1で表されるメタクリル化合物を再生する方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、比較的低温で熱硬化による架橋を抑えながら、強酸性の遊離成分を生じることなく、アクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを製造することができる。さらに、得られた不飽和ポリエステルに対して、カルボン酸あるいはそれらの塩を共役置換反応させることで、モノマーであるジメタクリル化合物を再生することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<不飽和ポリエステルの製造方法>
本発明は、一般式(1)で表されるジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での可逆的な共役置換反応を利用した不飽和ポリエステルの製造方法である。
【0025】
以下、本発明の化合物の好ましい実施形態について説明する。以下の実施形態は本発明の一例であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
≪第1実施形態≫
本発明は、一般式(1)で表されるジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での可逆的な共役置換反応を利用した不飽和ポリエステルの製造方法である。
【0027】
【化5】
[一般式(1)中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Yは2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【0028】
{R、R
一般式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。R、Rのアルキル基は、例えば、直鎖状、又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。具体的には、炭素数1~5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)やベンジル基、アリル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基は、例えばフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。一部がヘテロ元素で置換されているアルキル基は、例えば2-メトキシエチル基、2-エトキシメチル基、2-(2‘-メトキシエトキシ)エチル基が挙げられる。一部がヘテロ元素で置換されているアリール基は、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-フラニル基、2-チオフェニル基が挙げられる。
【0029】
本実施形態において、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基又はフェニル基がより好ましく、水素原子又はフェニル基が特に好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0030】
{X}
一般式(1)中、Xは水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。Xとしては、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ヒドロキシメチル基(メチロール基)、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、2-ピリジル基などが挙げられる。本実施形態において、Xは水素原子、メチル基、フェニル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0031】
{Y}
一般式(1)中、Yは2価の連結基である。Yとしては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から、2個の水素原子を除いた基が挙げられる。また、ヘテロ原子を有する2価の連結基であってもよい。
【0032】
・脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が挙げられ、炭素数が1~12であることが好ましく、炭素数1~10がより好ましく、炭素数1~8がさらに好ましく、炭素数2~6が最も好ましい。
【0033】
・芳香族炭化水素基
芳香族炭化水素基として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環や、前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環、芳香環を脂肪族炭化水素基で連結したフルオレン、カルバゾール等の芳香族基が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0034】
・ヘテロ原子を有する2価の連結基
ヘテロ原子を有する2価の連結基としては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、等を含む連結基が挙げられる。
【0035】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を記載する。
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
{ジカルボン酸}
ジカルボン酸は共役置換反応が進行する限り、特に化学構造を制限するものではないが、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を用いることができ、これらは炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよく、水素原子がハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基等の反応に関与しない官能基で置換されていてもよい。融点以上の加熱で重合反応系を均一にすると反応が円滑に進むことから、炭素数2~20のジカルボン酸が好ましい。ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が特に好ましく、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸がさらに好ましい。前記ジカルボン酸はそれぞれ単独で用いても、複数のジカルボン酸を混合して用いてもよい。
【0041】
{重合触媒}
・3級アミン、3級ホスフィン
共役置換反応は、3級アミンや3級ホスフィンがアクリル酸エステル構造に求核攻撃し、共役置換反応を生じて生成するオニウム塩中間体を経て触媒される。この観点では、3級アミン、3級ホスフィンが好ましく、例えばトリエチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィンが特に好ましく、求核性の観点でDMAP、DABCO、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィンがさらに好ましい。
【0042】
・強塩基
カルボン酸を脱プロトン化し活性化する目的で、強塩基を使用することができる。強塩基としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等のアミジン類、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等のグアニジン類が好ましい。
【0043】
・遷移金属塩
ジメタクリレートのカルボニル基を活性化し共役置換反応を促す遷移金属塩を触媒として使用することができる。遷移金属塩としては塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ、2-エチルヘキサン酸すず(II)などのスズ触媒、酸化アンチモンなどのアンチモン類、オルトチタン酸テトライソプロピルなどのチタン触媒、トリイソプロポキシアルミニウムなどのアルミニウム触媒が好ましい。
【0044】
・有機分子触媒
ジメタクリレートのカルボニル基とカルボン酸の双方を活性化する有機分子触媒として、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ジフェニルリン酸を使用することができる。好ましくはTBDである。
【0045】
溶媒の使用が反応効率に大きな影響を及ぼさない場合は、溶媒の使用を特に禁止するものではない。むしろ、ジメタクリレートやジカルボン酸が固体の場合は、積極的に溶媒を使用することが望ましい。例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、酢酸或いはこれらの混合溶媒を、ジカルボン酸1部に対して、1~100mLを加えることが、反応系を均一化する、あるいは粘度を低下させ撹拌効率を向上させる観点から、特に好ましい。
【0046】
重合温度はジメタクリル化合物ならびに不飽和ポリエステルが熱硬化しない限りは、特に制限されるものではないが、反応系を均一に保ち、重合度の向上を図る観点では、重合温度は融点は160℃以下であることが好ましく、特に好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0047】
本発明により得られる不飽和ポリエステルの構造は、一般式(2)で表される。
【0048】
【化10】
上記式(2)において、R、R、X、Yは上記式(2)と同様のものとすることができる。Zはジカルボン酸由来の2価の連結基である。
【0049】
不飽和ポリエステルの分子量、分子量分散度、融点等は特に制限されるものではないが、重合系を熱硬化が抑制できる温度域で均一に保ち、重合度の向上を図る観点では、融点は160℃以下であることが好ましく、特に好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
【0050】
平衡を高分子側に偏らせ、重合度を向上させる目的で、遊離するカルボン酸を系外排除することが好ましい。系外排除の方法としては、中性または塩基性の水による反応混合物の洗浄、減圧加熱による留去が好ましく、特に減圧加熱による留去が好ましい。減圧度はカルボン酸が気化すれば特に制限されることはないが、100mmHg以下が好ましく、50mmHgが特に好ましく、5mmHg以下がさらに好ましい。加熱温度は前記の通りである。
【0051】
≪第2実施形態≫
本発明は、一般式(1)-1で表されるジメタクリル化合物と、ジカルボン酸との間での可逆的な共役置換反応を利用した不飽和ポリエステルの製造方法である。
【0052】
【化11】
[一般式(1)-1中、X、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。複数あるR、Rは同一であってもよく異なっていてもよい。Y1は2価の連結基で、一部がヘテロ元素で置換されていてもよい。]
【0053】
上記式(1)-1において、R、R、Xは上記式(1)と同様のものとすることができる。
【0054】
{Y1
一般式(1)中、Yは2価の連結基である。Yとしては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基から、2個の水素原子を除いた基が挙げられる。また、ヘテロ原子を有する22価の連結基であってもよい。
【0055】
・脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が挙げられ、炭素数が1~12であることが好ましく、炭素数1~10がより好ましく、炭素数1~8がさらに好ましく、炭素数2~6が最も好ましい。
【0056】
・芳香族炭化水素基
芳香族炭化水素基として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環や、前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環、芳香環を脂肪族炭化水素基で連結したフルオレン、カルバゾール等の芳香族基が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0057】
・ヘテロ原子を有する2価の連結基
ヘテロ原子を有する2価の連結基としては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、等を含む連結基が挙げられる。
【0058】
以下に一般式(1)-1で表される化合物の具体例を記載する。
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
ジカルボン酸、重合触媒、重合溶媒、重合温度、遊離するカルボン酸の系外排除の方法、および不飽和ポリエステルの分子量、分子量分散度、融点は第1実施形態と同様ものとすることができる。
【0064】
≪第3実施形態≫
本発明は、前記一般式(2)で表される不飽和ポリエステルに、カルボン酸またはそれらの塩を用いた共役置換反応を行い、前記一般式(1)で表されるメタクリル化合物を再生する方法である。
【0065】
{カルボン酸}
カルボン酸は、共役置換反応が進行する限り、特に化学構造を制限するものではないが、例えば、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸、脂肪族カルボン酸を用いることができ、これらは炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよく、水素原子がハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基等の反応に関与しない官能基で置換されていてもよく、不飽和結合を含んでいてもよい。カルボン酸を溶媒の一部または全てとして大過剰に使用すると反応が円滑に進むことから、炭素数1~18のカルボン酸が好ましく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸が特に好ましく、ギ酸、酢酸が特に好ましい。
【0066】
{カルボン酸塩}
カルボン酸に替えて、カルボン酸塩を用いることができる。カルボン酸塩は、共役置換反応が進行する限り、特に化学構造を制限するものではないが、例えば、芳香族カルボン酸塩、脂環式カルボン酸塩、脂肪族カルボン酸塩を用いることができ、これらは炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよく、水素原子がハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基等の反応に関与しない官能基で置換されていてもよく、不飽和結合を含んでいてもよい。カルボン酸塩は無溶媒で不飽和ポリエステルと混合粉砕するか、溶媒中で不飽和ポリエステルと混合して反応させる。このとき対応するカルボン酸が弱酸であるほど、すなわちカルボキシラートイオンが優れた求核性を持つほど分解反応が円滑に進むことから、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、吉草酸塩などの脂肪族カルボン酸塩が好ましく、酢酸塩が特に好ましい。対カチオンは反応が進行する限り、特に化学構造を制限するものではないが、不飽和ポリエステルとの親和性や、有機溶媒への溶解性の観点から、第4級アンモニウムカチオン、第4級ホスホニウムカチオンが好ましい。
【0067】
{触媒}
カルボン酸による不飽和ポリエステルの分解を図る場合は、反応を加速させる目的で、触媒を使用することが好ましい。
【0068】
・3級アミン、3級ホスフィン
共役置換反応は、3級アミンや3級ホスフィンがアクリル酸エステル構造に求核攻撃し、共役置換反応を生じて生成するオニウム塩中間体を経て触媒される。この観点では、3級アミン、3級ホスフィンが好ましく、例えばトリエチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィンが特に好ましく、求核性の観点でDMAP、DABCO、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィンがさらに好ましい。
【0069】
・強塩基
カルボン酸を脱プロトン化し活性化する目的で、強塩基を使用することができる。強塩基としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等のアミジン類、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等のグアニジン類が好ましい。
【0070】
・遷移金属塩
ジメタクリレートのカルボニル基を活性化し共役置換反応を促す遷移金属塩を触媒として使用することができる。遷移金属塩としては塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ、2-エチルヘキサン酸すず(II)などのスズ触媒、酸化アンチモンなどのアンチモン類、オルトチタン酸テトライソプロピルなどのチタン触媒、トリイソプロポキシアルミニウムなどのアルミニウム触媒が好ましい。
【0071】
・有機分子触媒
ジメタクリレートのカルボニル基とカルボン酸の双方を活性化する有機分子触媒として、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ジフェニルリン酸を使用することができる。好ましくはTBDである。
【0072】
溶媒の使用が反応効率に大きな影響を及ぼさない場合は、溶媒の使用を特に禁止するものではない。例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン或いはこれらの混合溶媒を、カルボン酸1部に対して、1~100mLを加えることが、反応系を均一化する、あるいは粘度を低下させ撹拌効率を向上させる観点から、特に好ましい。
【0073】
無溶媒で反応を行う場合は、不飽和ポリエステルとカルボン酸またはそれらの塩、触媒の混合物に、物理的刺激を与えることで分解を促す方法が好ましい。物理的刺激には、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の公知の撹拌装置や粉砕装置を用いることができる。無溶媒分解は、分解対象である不飽和ポリエステルが限定されないため、溶解性に乏しい不飽和ポリエステルも分解することができ、また物理的刺激により分解性構造が露出するため分解反応の反応率も高い。
【0074】
温度は不飽和ポリエステルならびにジメタクリル化合物が熱硬化しない限りは、特に制限されるものではなく、好ましくは室温である。
【実施例0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
<分析機器>
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製AVANCE NEO)を用いて25℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムを用い、内部標準は、テトラメチルシラン用いた。
【0077】
(分子量)
ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)及び分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「Shodex GPC HK-404L」(昭和電工(株))を2本直列に装填し、溶出液としてクロロホルム(GPC用,和光純薬工業)を0.30L/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光)および示差屈折率計(RI-4035,日本分光)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー,TSKゲルオリゴマーキット)による五次曲線で較正して評価した。
【0078】
<実施例1>
{1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート]の合成}
300mLナスフラスコに1,4-ブチレンビス[α-(ヒドロキシメチル)アクリレート](10.0g,38.8mmol)、ジクロロメタン(25mL)、無水酢酸(15.0mL,159mmol)を加えて溶解させた。氷浴で冷やしながら、少しずつトリエチルアミン(16.4mL,118mmol)を滴下し、ジクロロメタン(10mL)で洗い込み、15分間氷浴下で攪拌した後、室温で3時間反応させた。ジエチルエーテル(150mL)を加え、反応混合物を氷浴で冷却した0.2M塩酸(750mL)に加えた。ジエチルエーテル(100mL)で3回、ジクロロメタン(150mL)で1回生成物を抽出し、さらに水層をジエチルエーテル(50mL)で3回抽出した。これらの有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で2回洗浄した、無類硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濾過した後に濃縮した。薄層クロマトグラフィーで3つのスポットが確認されたため、高速フラッシュ自動精製システムSelekt(Biotage)(ヘキサン:アセトン=2:1,R=0.30)で精製し、1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート]を白色固体(5.32g,収率:40.0%)として得た。
【0079】
得られた1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート]のH NMRスペクトル(400MHz,CDCl,25℃)データを以下に示す。
δ/ppm:6.37(d,J=1.0Hz,2H,CHH=),5.86(d,J=1.0Hz,2H,CHH=),4.81(s,4H,アリル位),4.23(t,J=6.0Hz,4H,O-CH),2.10(s,6H,アセチル基),1.78(quin,J=2.9Hz,4H,CH).
【0080】
実施例1で得られた1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート]の化学式を以下に示す。
【0081】
【化16】
{1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート]の重合}
【0082】
20mLフラスコに,1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート](0.300g,0.876mmol),アジピン酸(0.128g,0.876mmol),DMF(1.0mL)を加えて溶解させ、DABCO(9.8mg,87μmol)のDMF(0.753mL)溶液を加え、室温で1時間攪拌した。その後,80℃で6時間加熱しながら、徐々に減圧した(<30Torr)。残渣を50℃でコンビニエバポC1(バイオクロマト(株)製)により濃縮乾燥してクリーム状の白色固体(0.472g)を得た。
【0083】
<実施例2>
DABCOの使用量を4.9mg(44μmol)とした以外は実施例1と同様に行い、白色固体(0.413g)を得た。
【0084】
<実施例3>
DABCOの使用量を2.0mg(17.5μmol)とした以外は実施例1と同様に行い、白色固体(0.423g)を得た。
【0085】
<実施例4>
DABCOの使用量を12mg(88μmol)とした以外は実施例1と同様に行い、淡黄色オイル(0.581g)を得た。
【0086】
<実施例5>
アジピン酸に替えてセバシン酸(0.177g,)0.876mmol)を使用した実施例1と同様に行い、淡黄色オイル(0.422g)を得た。
【0087】
<実施例1>~<実施例5>の結果を表1にまとめる。
アジピン酸に替えてセバシン酸(0.177g,)0.876mmol)を使用した実施例3と同様に行い、淡黄色オイル(0.422g)を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
<実施例6>
下記式で示す不飽和ポリエステル(70mg,M=7200,M/M=2.26)をステンレス容器(1.5mL)に入れ、アクリル骨格に対して等モル量の酢酸テトラブチルアンモニウム(124mg,41μmol)とステンレスボール(直径0.5mm)とともに、レッチェ製ミキサーミルMM200を用いて、振動数30Hzで40分間粉砕混合したところ、68.2%の反応度で共役置換反応が生じ、モノマーである1,4-ブチレンビス[α-(アセトキシメチル)アクリレート]を含む混合物が得られた。
【0090】
【化17】
【0091】
上記に記載した通り、本発明ではアリル位にアシルオキシ基(エステル結合)を置換したジメタクリレートと、ジカルボン酸との間での共役置換反応を素反応とする重合により、不飽和ポリエステルを製造できた。この遊離成分であるカルボン酸を重合中に系外排除することで、重合後の精製操作を必要とすることなく、アクリル酸エステル構造を主鎖骨格に含む不飽和ポリエステルを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明では不飽和ポリエステルの可逆的な合成法を提供するため、ケミカルリサイクルによる高分子資源の循環を実現することができる。低温での不飽和ポリエステル合成を可能にすることで、省エネルギーな製造方法として利用することができる。
【0093】
非特許文献6には、一般式(2)-1で表される不飽和ポリエステルについて、ジカルボン酸の選択により、融点を50~160℃に調整できることが記載されている。複数のジカルボン酸を使用した共重合体も含めると、多様な物性の不飽和ポリエステルが提供可能なことになり、さらに成形プロセスや結晶化促進剤等の使用で結晶化度を向上させることで、機械特性を改善することができる。本発明は穏和な条件でジメタクリル化合物を再生する手法を提供するため、これらの共重合体や樹脂混合物についても適用可能な物質循環技術として利用することができる。