(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022727
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】胸腔鏡下手術用ポート
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20240214BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B17/02
A61B17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126023
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】江花 弘基
(72)【発明者】
【氏名】野口 喜久子
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA01
4C160AA14
4C160FF42
(57)【要約】
【課題】単孔式胸腔鏡下手術において、スコープや手術器具の自由な操作を確保しながら、スコープを操作、保持する補助者の負担を軽減することで安定した操作ができる胸腔鏡用ポートを提供する。
【解決手段】体表側に位置する外側リングと11と、胸腔内に位置する弾性の内側リング12と、前記外側リング11と内側リング12に両端部を接続し体表から胸腔内に位置する弾性スリーブ13とで構成した開創器10と、該開創器10に直接的あるいは間接的に一部をつなげて取付けられるゴム弾性部材からなるホルダーリング20とにより構成され、前記ホルダーリング20は、上面視において前記開創器10の開口部135を周面の一部あるいは全部により区画する態様で位置され、該ホルダーリング20が前記開創器10との接続部を支点として可動するように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体表側に位置される外側リングと、胸腔内に位置される弾性の内側リングと、前記外側リングと内側リングに両端部を接続して体表から胸腔内に位置される、正面視において鼓形状に形成された弾性スリーブとからなる開創器と、
該開創器に直接的あるいは間接的に一部をつなげて取付けられるゴム弾性部材からなるひとつあるいは複数のホルダーリングと、により構成され、
前記ホルダーリングは、上面視において、前記開創器の開口部を、該ホルダーリングの周面の一部または全部により区画する態様で位置させ、
該ホルダーリングが、前記開創器との取付け部を支点として可動することを特徴とする胸腔鏡下手術用ポート。
【請求項2】
前記ホルダーリングは、前記開創器に設ける取付け部に着脱自在に取付けられる請求項1の胸腔鏡下手術用ポート。
【請求項3】
前記開創器には、前記弾性スリーブの軸方向に沿って平行に形成する排気管を設け、該排気管を含んで胸腔内から体外への排煙通路を備える請求項1乃至2のいずれかの胸腔鏡下手術用ポート。
【請求項4】
前記排気管の近位側の端部に、前記開創器の上面で該開創器の外周側方向に向けた曲げ部を設け、該曲げ部を前記ホルダーリングの開創器との取付け部とする請求項3の胸腔鏡下手術用ポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸腔鏡下手術のさいに内視鏡や手術器具を胸腔内へ導入するために創部に挿着される胸腔鏡下手術用ポートに関する。
【背景技術】
【0002】
胸腔鏡下手術は、肋間隙に設ける複数の切開創に体表から胸腔内に至る筒状の胸腔ポートを挿着し、該胸腔ポートの通路を通して胸腔鏡や鉗子等の医療用器具を胸腔内に挿入しての手術が行われる。
【0003】
これに用いられる胸腔ポートとしては、例えば、肋間隙に留置されたとき内部がつぶれない機械的強度を持った合成樹脂により断面長円形状に形成される筒状部と、該筒状部の両端に設けられる外側フランジおよび内側フランジとにより構成し、前記筒状部の内腔が隔壁部分で2つあるいは3つに仕切られた器具(特許文献1)、あるいは、体表側に位置するフランジと、胸腔側に位置する鍔と、体表側から胸腔内にかけて位置される柔軟な筒状のスリーブ、及び、該スリーブの外周面に沿って軸方向に平行に設ける吸引管を備えた胸腔鏡下手術用ポート(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6302467号公報
【特許文献2】特許第6418612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の特許文献1の器具によると、肋間隙に設定される筒状ポートが機械的強度を持ちながらも柔軟で、また、長円形状をとることにより肋間隙に適合して接触面積を大きくする等無理のない開創により患者への負担を軽減できるとされている。また、ポートの内腔が複数に区切られるため、ひとつのポートから複数の胸腔鏡スコープ(以下、単にスコープ)や鉗子等の器具を胸腔内に適用することができる。また、特許文献2の器具によると、ポートに吸引管を備えることで電気メス等の使用により発生するサージカルスモークを術野から適宜排出することができる。
【0006】
一方、腹腔鏡下手術で広がりを見せる単孔式手術が、近年では胸腔鏡下手術でも発展しつつあり、該単孔式胸腔鏡下手術に適合するポート器具が求められている。単孔式手術は、ひとつのポート(開口部)からスコープや手術器具を複数本同時に胸腔に挿入して行われるが、胸腔鏡下手術は腹腔鏡下手術と異なり気腹の必要がないため、ポートの開口部に気密のための弁などがないことで、手術操作の自由度が高い一方、術者が鉗子やエネルギーデバイスを操作して手術をしている間、常に補助者がスコープを適当な位置で操作、保持する必要があり、該安定した操作、保持に懸念がある。また、長時間適当な位置にスコープを保持することは負担の大きな作業となっている。
【0007】
そこで、本発明は特に単孔式胸腔鏡下手術に好適であり、スコープや手術器具の自由な操作を確保しながら、スコープを操作、保持する補助者の負担を軽減することで安定した操作ができる胸腔鏡用下手術用ポートを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の胸腔鏡下手術用ポートは、体表側に位置される外側リングと、胸腔内に位置される弾性の内側リングと、前記外側リングと内側リングに両端部を接続して体表から胸腔内に位置される、正面視(軸方向に平行する面からの視点)において鼓形状に形成された弾性スリーブとにより構成された開創器と、該開創器に直接的あるいは間接的に一部をつなげて取付けられるゴム弾性部材からなるひとつあるいは複数のホルダーリングと、により構成されており、前記ホルダーリングは、上面視(軸方向に垂直な面からの視点)において、前記開創器の開口部を、該ホルダーリングの周面の一部または全部により区画する態様で位置されており、該ホルダーリングが、前記開創器との取付け部を支点として可動可能に形成されてなる。
【0009】
また、前記ホルダーリングは、前記開創器に設ける取付け部に着脱自在に取付けられることが好ましい。
【0010】
更に、前記構成に加え、前記開創器には、前記弾性スリーブの軸方向に沿って平行に形成する排気管を設け、該排気管を含んだ胸腔内から体外への排煙通路を備えることが好ましく、また、該排気管の近位側端部には、前記開創器の上面で該開創器の外周側方向に向けた折り曲げ部を設け、該折り曲げ部を、前記ホルダーリングの開創器との取付け部とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の胸腔鏡下手術用ポートによると、ホルダーリングにスコープ等を挿着することで、スコープ等をホルダーリングにより支持して軸方向への動きを止めておくことができき、また、スコープ等を操作するさい、ホルダーリングと開創器の接続部が支点となることで、スコープ等の操作を安定させ、操作、保持する操作者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の胸腔鏡下手術用ポートの第一の実施の形態を示す全体構成図(正面図)Aと拡大
図B。
【
図3】前記第一の形態にスコープ及び手術器具を適用したときの模式図。
【
図4】前記第一の形態のホルダーリングの動作を示す模式図。
【
図5】本発明の第二の実施の形態を示す全体構成図。
【
図6】本発明の第三の実施の形態を示す全体構成図。
【
図7】本発明の第四の実施の形態を示す全体構成図。
【
図8】本発明の第五の実施の形態を示す全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の胸腔鏡下手術用ポートの実施の形態について図面を参考に詳細に説明する。
図1、
図2は、本発明の第一の実施の形態を示す全体構成図で、
図1のAは全体構成の正面図、Bは一部分の拡大図を示している。
図2は上面図を示しており、
図3は、本構成にスコープや手術器具を適用したときの模式図を示している。
本形態の胸腔鏡下手術用ポート(以下、胸腔ポートと記載する)は、胸腔鏡下手術のなかでも、ひとつの切開創から胸腔鏡(スコープ)71や鉗子等の手術器具72を複数本挿入して行われる胸腔鏡下単孔式手術に好適となる器具で、肋間隙86に設けたひとつの切開創に取付け、標準的にはスコープ71と2本の手術器具(鉗子やエネルギーデバイス、等)72を胸腔85(壁側胸膜83と臓側胸膜84の間)に挿入して用いられる。
【0014】
本形態の胸腔ポートは、該胸腔ポートを肋間隙86に挿着したとき体表81に接して位置する外側リング11と、挿着したとき胸腔85の壁側胸膜83に接して位置する内側リング12と、前記外側リング11と内側リング12に端部134を接続して正面視が鼓形状に形成された筒状の弾性スリーブ13とからなる開創器10と、
該開創器10の弾性スリーブ13外周面の軸方向に平行して設けられ、前記開創器10の上面で前記弾性スリーブ13の外周方向に向けた折り曲げ部32を設けた排気管31と、
前記排気管31の折り曲げ部32に掛留める態様で着脱自在に取り付けた弾性体のリングからなるホルダーリング20により構成する。
【0015】
開創器10は、外側リング11と内側リング12で胸壁82を挟み、両端部134を外側及び内側リング11、12に接続することで弾性スリーブ13に張力(開創力)を生じさせ、切開創に装着したとき、切開創の元に戻ろうとする力に抗して該切開創を外方に開創しておくもので、弾性スリープ13の内腔部135がスコープ71や手術器具72を胸腔内85に挿入するための通路となる。
【0016】
外側リング11及び内側リング12は、弾性スリーブ13に開創力を生じさせるのに必要な強度を備えた弾性体のリングとして形成され、本例においては、超弾性合金のワイヤー111、121を保護チューブで被覆し楕円形状等の長円形状のリングとして形成した。なお、本形態においては超弾性ワイヤー111、121としてNi‐Ti合金など公知の超弾性ワイヤーを芯材として、該超弾性ワイヤー111、121に保護チューブとして比較的弾性の大きなポリエーテルブロックアミド共重合体/ポリウレタンチューブの補強チューブ112、122、更にその外層に弾性スリーブ13との接着性を考慮してシリコーンチューブ113、123を被覆して形成した。
【0017】
該外側リング11及び内側リング12のサイズは、肋間隙86の切開創に挿着したさいに該切開創に確実に保持可能で、また、該切開創から無理なく挿入でき、かつ、挿着部に負担にならないものであれば特定するものではないが、長円形のリングの長径50mm以上、85mm以下、短径40mm以上、65mm以下に設定される。なお、本例において、外側リング11及び内側リング12の長径‐短径は55mm‐45mmと80mm‐60mmの2つのタイプを準備した。
【0018】
なお、外側リング11、内側リング12は、幅の狭い肋間隙86への挿着に好適な形状として前記の通り楕円形状等の長円形状が好ましいが、円形等他の形状のリングであっても良い。また、内側リング12には、体表81から胸腔内85への挿入を考慮して前記のような弾性リングが用いられるが、上側リング11は、必ずしも弾性を備えたリングでなくても良い。
【0019】
弾性スリーブ13は、切開創保護と開創維持のため柔軟な弾性部材(本例においてはシリコーン樹脂)により軸方向に平行となる断面を鼓形状に、軸方向に垂直となる断面を前記外側リング11、内側リング12の形状に適合して楕円形状等の長円形状に形成した膜厚0.7mm~1.0mm程度の筒状シートにより形成し、該筒状シートの両端部134をそれぞれ前記外側リング11及び内側リング12に拡張し、半周程度巻き、該リングと接着剤で接続して形成した。
【0020】
該弾性スリーブ13のサイズは特定するものではないが、肋間隙86に設ける切開創に挿着可能で、胸腔鏡下単孔式手術に適用可能なスリーブ中間部の内径として、切開創取付け前の自然状態で長径20mm以上、50mm以下、短径12mm以上、30mm以下に設定される。また、胸壁82を挟持する外側リング11の底部から内側リング12の頂部の弾性スリーブ13の軸方向の長さは、胸壁82の厚さやスリーブ13の伸縮性が考慮され12mm以上、30mm以下に設定される。なお、本例においてスリーブ13の内径は、長径‐短径:25mm‐15mmタイプと、45mm‐25mmタイプの2つのタイプが準備され、スリーブ長(外側リング11と内側リング12の幅)は、15mmと20mmの2つのタイプが準備された。
【0021】
前記実施の形態による外側リング11、内側リング12、及び、弾性スリーブ13により構成される開創器10は、前記弾性スリーブ13の中間部で胸壁82との接触部となる楕円筒部131と、弾性スリーブ13の一方の端部134aが拡張され外側リング11と接続した体表81側に位置させる上面部132と、弾性スリーブ13の他端部134bが拡張され内側リング12と接続した胸腔内85に位置させる下面部133からなり、前記楕円筒部131の内腔部135が手術器具71、72のためのポート135となる。
【0022】
なお、本開創器10の形態は、肋間隙86に適合して切開創を開創できる幅と、スコープ71及び手術器具72、2本が挿入可能でかつ互いが干渉しない操作が可能な内腔部135のスペースが確保できるものであれば本形態の形状に限定されるものではない。
【0023】
排気管31は、手術中に電気メスなどエネルギーデバイスの使用により発生するサージカルスモークを胸腔内85から体外の排煙装置(図示せず)に排気するための排煙通路30の一部として形成される。本形態の排気管31は、前記開創器10の弾性スリーブ13の楕円筒部131の外周面に接して軸方向に平行して設ける可撓性のチューブで、前記弾性スリーブ13の前記排気管31の両端部に当たる位置に設ける通孔を貫通して、遠位側端部312は内側リング12より突出しない位置に、近位側端部311は外側リング11より突出して位置させて設け、排気管31の通孔通過部は接着剤により固接される。また、本例では、該排気管31は、鉗子等の手術器具72による手術操作に影響が少ない位置として、楕円等長円形状に形成された弾性スリーブ13の内腔部135の長辺の一方側の頂部136となる位置に設定された。
【0024】
そして、前記排気管31の近位側の端部311に、前記開創器10の上面部132で該開創器10の外周側方向に向けた連結チューブ33をL字形の接続コネクタ32を介して接続し、更に、該連結チューブ33の端部に排煙装置への接続アダプター34を接続して排気管31からの排煙通路30とした。
【0025】
ホルダーリング20は、該ホルダーリング20の内腔23にスコープ71を挿着したさいに、軸方向への自然な可動を抑制すると共に、該スコープ71を可動、操作するさいに支点として機能するもので、ポリアミド合成樹脂等によりリング状に形成された芯材21にゴム弾性および適度な摩擦力を有した樹脂チューブ22(本例においては、シリコーンチューブ)を被覆して円形に形成した。
【0026】
該ホルダーリング20のサイズは手術に用いるスコープ71のサイズに適合するものが選択されるが、本形態においては外径21.5mm、内径15.5mm程度のものと、外径26mm、内径20mm程度の大小2タイプを準備した。
【0027】
そして、該ホルダーリング20を、前記排気管31の近位側端部311に設ける連結チューブ33と接続するL字型の接続コネクタ32部分に引掛けて、前記弾性スリーブ13の上面部132と連結チューブ33で挟むように留め置くことで、前記開創器10と固接することなく着脱自在に取付けられる。ここで、前記開創器10に取付けられたホルダーリング20の内腔23の少なくとも一部が、上面視において前記弾性スリーブ13の開口部135の一部にかかり、該弾性スリーブの開口部135を区画するように配置され、該ホルダーリング20にスコープ71等を挿着したさい、弾性スリーブ13と干渉することなく開口部内135に導入される。なお、前記大小2サイズのホルダーリング20を必要に応じて選択して付け替えて使用することもできるが、予め、2サイズのホルダーリング20を取付けておいて、手術に不要な一方を切断して取り外す仕様としても良い。
【0028】
本形態の胸腔ポートを使用しての手術は、患者の肋間隙86に20~40mm程度の唯ひとつの切開創を設けて行われる。
切開創への胸腔ポートの挿着は、胸腔ポートの内側リング12の弾性を利用し、押しつぶした状態で胸腔内85に挿入する。挿入すると内側リング12は弾性復元力により元の自然状態に戻り、体表81に接する外側リング11と壁側胸膜83に接する内側リング12により胸壁82が挟持された状態で保持される。このさい、外側リング11と内側リング12に両端部134を拡張して接続した弾性スリーブ13が、切開創の閉じようとする力に抗する外方への応力により潰れることがなく開創が維持され、スコープ71や手術器具72のためのポートとして機能する。
【0029】
そして、前記胸腔ポートのホルダーリング20にスコープ71を挿着し、術者が該胸腔ポートから挿入した鉗子等の手術器具72を操作して手術を進める間、補助者により前記スコープ71が保持され、ホルダーリング20を軸として可動、操作される。
【0030】
本形態の胸腔ポートによれば、単孔式胸腔鏡下手術に用いる開創器の開口部135を区画するように取付けたホルダーリング20を備えることにより、該ホルダーリング20に適合するスコープ71を挿着したとき、開口部135内でスコープ71の軸方向への移動が規制され保持されることで、手を添える程度で所望の位置にスコープ71を安定して保持しておくことができ、スコープ71を保持している補助者の負担を軽減することができ、また、安定した映像下での手術が可能となる。
【0031】
また、
図4は本形態におけるホルダーリングの動作を示す模式図である。ホルダーリング20がゴム弾性を備えていること、また、ホルダーリング20と開創器10の取り付け部が、該ホルダーリング20の一部分でしかないことで、前記開創器10とホルダーリング20の取り付け部を支点として、弾性スリーブ13の内腔135の範囲でスコープを軸とした周方向M1や角度方向M2を自在に可動することができる。これにより、スコープ71がホルダーリング20に挿着されていても所望の角度への可動が可能となり、スコープ71を操作する補助者の負担が軽減され、安定した映像による手術が可能となる。
【0032】
また、ホルダーリング20を開創器10部分に着脱自在に取付けすることができるため、例えば、スコープ71の径によりサイズの異なるホルダーリング20を選択、あるいは、付け替えて使用することができる。
【0033】
また、手術のさいに胸腔内85で発生するサージカルスモークを体外に排気する排気管31を含む排煙通路30を備えることで、排煙のための排気管を別に設定、操作する必要がない。また、該排煙通路30を開創器10の上面部132に該開創器10の外周方向に向けた折り曲げ部32を設け、該折り曲げ部32を前記ホルダーリング20の取り付け部とすると、ホルダーリング20取付けのための取り付け部を別に設ける必要がない。
【0034】
図5~
図8は、本発明の別の実施の形態を示すもので、いずれも開創器へのホルダーリングの取付け手段のバリエーションを示すものである。これらの形態における開創器10、排煙通路30、及び、ホルダーリング20の構造については前記第一の実施形態と基本同様であるため同様部分の説明を省略し、相違部のみを記載する。
【0035】
図5は、本発明の第二の実施の形態を示している。本形態における胸腔ポートは、前記開創器10へのホルダーリング20の取付け手段を開創器10の上面132に設けるフック4としたもので、該フック4は、ホルダーリング20がスコープ71や手術器具72の操作時に容易に外れないように鈎型に形成されており、開創器10の上面132で、ホルダーリング20を取付けたさいに、上面視で該ホルダーリング20の内腔23の一部、あるいは、全部が開創器10の内腔135を区画可能な位置に当たる弾性スリーブ13に接着剤により固定されている。なお、本形態のフック4を用いた場合は、排煙通路30は必ずしも設けなくても良い。
【0036】
図6は、本発明の第三の実施の形態を示している。本形態の胸腔ポートは、前記開創器10にホルダーリング20の外周面の一部が直接接続される形態で、本形態においては弾性スリーブ13の上面(拡張部)132と楕円筒部131の遷移部近傍の楕円筒部131に、内腔135を区画するように該内腔側に向け外側リング11と平行になるように接着剤等により取り付けられ接着部5を形成する。また、本例における接着部5は、前記楕円筒部131の長辺の一方の頂部136a側に設けた排気管31と対角となる他方の頂部136bに設けた。この位置に設けることでホルダーリング20に挿着されるスコープ71等と他にポートから挿入される手術器具72の干渉を抑えることができる。
【0037】
図7は、本発明の第四の実施の形態でAは全体構成図、Bは連結部60の拡大図を示している。本形態の胸腔ポートは、開創器10へのホルダーリング20への取付けを、連結部60を介して間接的におこなう形態で、本形態では、連結部60の一方側端部に設ける第一のフック61により外側リング11に取付け、該連結部60の他端部に設ける第二のフック62にホルダーリング20を取付ける構成とした。なお、外側リング11と第一のフック61、または/及び、ホルダーリング20と第二のフック62は、着脱自在に設けるものでも、予め固接されるものでも良い。ここで、第一のフック61を着脱自在に設けると連結部60を自在の位置に設定可能で、第二のフック62を着脱自在に設けるとサイズの異なるホルダーリング20を付け替えての使用ができる。
【0038】
図8は、本形態の第五の実施の形態を示している。本形態の胸腔ポートは、ホルダーリング20を複数設けた形態で、第一のホルダーリング20aは、前記第一の実施の形態と同様に排煙通路30の折り曲げ部32に取付けられており、第二のホルダーリング20bは、前記第二の実施の形態と同様にフック4に掛けて設けられる。なお、複数のホルダーリング20は同一のサイズであっても各々異なるサイズであっても良く、また、取付け手段は前記したいずれの手段を用いても良い。
【0039】
前記第一の実施の形態から第五の実施の形態の開創器10へのホルダーリング20の取付け手法は、これらに限定されるものではなく、上面視において開創器10の内腔135をゴム弾性のホルダーリング20の内腔23により区画する位置に該ホルダーリング20を設定可能であればよい。
【符号の説明】
【0040】
10. 開創器
11. 外側リング
12. 内側リング
111.121. 超弾性合金ワイヤー
112.122. 補強チューブ
113.123. シリコーンチューブ
13. 弾性スリーブ
131. 楕円筒部
132. 上面部(拡張部)
133. 下面部(拡張部)
134. 端部
135. 内腔部(開口部・ポート部)
136. 長辺頂部
20. ホルダーリング
21. 芯材
22. (リング)チューブ
23. (リング)内腔
30. 排煙通路
31. 排気管
311. 近位端部
312. 遠位端部
32. 折り曲げ部(L字形接続コネクタ)
33. 連結チューブ
34. 接続アダプター
4. 鈎型フック
5. 接着部
60. 連結部
61. 第一のフック
62. 第二のフック
71. スコープ
72. 手術器具(鉗子等)
81. 体表
82. 胸壁
83. 壁側胸膜
84. 臓側胸膜
85. 胸腔
86. 肋間隙