(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022732
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ガラスパネル
(51)【国際特許分類】
E06B 3/66 20060101AFI20240214BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
E06B3/66 A
C03C27/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126032
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】391015786
【氏名又は名称】三芝硝材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉森 真一
(72)【発明者】
【氏名】西 英夫
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA06
2E016BA08
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
4G061AA02
4G061AA11
4G061AA26
4G061BA01
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】 強度と意匠性両方に優れる構成を有するガラスパネルを提供すること。
【解決手段】 2枚の板ガラスが対向して配設されていて、板ガラス間の周縁部のうち、長手方向一方側及び他方側にはそれぞれ長尺板ガラスが1枚ずつ、上側及び下側にはそれぞれ少なくとも短尺板ガラスが1枚ずつ、板ガラスの面と垂直に配設されて、2枚の板ガラス間には中空部が形成されており、中空部には、2枚の板ガラスと垂直に長尺板ガラスと短尺板ガラスが格子状に配設されているガラスパネル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の板ガラスが対向して配設されていて、板ガラス間の周縁部のうち、長手方向一方側及び他方側にはそれぞれ長尺板ガラスが1枚ずつ、上側及び下側にはそれぞれ少なくとも短尺板ガラスが1枚ずつ、板ガラスの面と垂直に配設されて、2枚の板ガラス間には中空部が形成されており、中空部には、板ガラスの面と垂直に、長尺板ガラスが少なくとも1枚、短尺板ガラスが少なくとも2枚が格子状に配設されているものであって、長尺板ガラス及び短尺板ガラスの長辺側端面と板ガラスの面とは中間膜又は接着剤で接合され、長尺板ガラスの面と短尺板ガラスの短辺側端面とは接着剤で接合されていることを特徴とするガラスパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸や窓、間仕切り等の建具に使用されるガラスパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸や窓、間仕切り等の建具に使用されるガラスパネルは、合わせガラスや1枚の板ガラスで構成されており、その強度を高めるために、厚みのある板ガラスを使用することがある。また、合わせガラスや1枚の板ガラスで構成されるガラスパネルの場合、その意匠性を高めるためには、板ガラスに模様を施したり、色彩を有するフィルム等の装飾部品を取り付けたりする技術が一般に知られている。
【0003】
一方、戸や窓の建具に使用されるガラスパネルとして、2枚の板ガラスの間に中空部を有して構成される複層ガラスがある。特許文献1には、2枚の板ガラスの間の中空部に木製、金属製、または合成樹脂等で形成される格子を有する複層ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
特許文献1には複層ガラスの強度についての記載は無い。特許文献1に記載の複層ガラスは、使用されている板ガラスの性能に依存すると考えられる。
【0006】
通常、強度を高めるためには板ガラスの厚みを大きくするが、板ガラスの厚みが大きいほどガラスパネルは重くなり、ガラスパネルを取り付ける際、取付業者の作業効率が悪くなってしまう。また、ガラスパネルを開閉可能な戸や間仕切り、窓ガラス等として用いる場合は使い勝手が悪くなってしまう。したがって、板ガラスの厚みを大きくして強度を高めることには限界がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の複層ガラスのように、意匠性を向上させるため、2枚の板ガラスの間の中空部に、木製、金属製、または合成樹脂製等で形成される装飾部品を配したり、色彩を有する装飾部品を配したりする技術は従来からよく用いられている技術であり、目新しさに欠けていた。
【0008】
板ガラスの強度を高めるための技術として他に、イオン交換法又は風冷強化法を施した強化ガラスがあるが、強化ガラスにおいても、意匠性を高めるための技術は上記のものが一般的である。
【0009】
このように、従来、ガラスパネルの強度及び意匠性を高めるためには、それぞれ別々の技術を適用する必要があった。また、意匠性を高めるための技術は近年目新しさに欠けていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の点に鑑み、強度と意匠性両方に優れる構成を有するガラスパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1記載のガラスパネルは、2枚の板ガラスが対向して配設されていて、板ガラス間の周縁部のうち、長手方向一方側及び他方側にはそれぞれ長尺板ガラスが1枚ずつ、上側及び下側にはそれぞれ少なくとも短尺板ガラスが1枚ずつ、板ガラスの面と垂直に配設されて、2枚の板ガラス間には中空部が形成されており、中空部には、板ガラスの面と垂直に、長尺板ガラスが少なくとも1枚、短尺板ガラスが少なくとも2枚が格子状に配設されているものであって、長尺板ガラス及び短尺板ガラスの長辺側端面と板ガラスの面とは中間膜又は接着剤で接合され、長尺板ガラスの面と短尺板ガラスの短辺側端面とは接着剤で接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載のガラスパネルによれば、板ガラスの厚みを大きくすることなく優れた強度が具備され、かつ、ガラスパネル内にガラスで格子柄が形成されることで特有の美しさが備わるので、意匠性にも優れる。また、2枚の板ガラス間の中空部においては、色彩を有するフィルム等による装飾も可能なので、装飾の自由度が高く、より一層意匠性に優れる。加えて、2枚の板ガラス間に空気層となる中空部が備えられていることで、屋内外を隔てる建具に使用する場合、2枚の板ガラスと空気層とで3層構造となるので、断熱性に優れる。また、長尺板ガラス及び短尺板ガラスの長辺側端面と板ガラスの面とが中間膜で接合される場合は、ガラスパネルが破損しても破片がほぼ飛び散らず、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラスパネルの一部を切り欠いた正面図である。
【
図2】
図1の(a)は端面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るガラスパネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は例示に過ぎず、本発明及び、その適用物を制限することを意図するものではない。以降、前後左右については
図1に示す通りとする。
【0015】
本発明の実施形態に係るガラスパネルの形状例を
図1に示す。この図のガラスパネルは、上下二辺が支持される引戸として使用されることを想定している。周囲の壁面、及び枠体に関わる構造は図示していない。また、使用される場所は屋内外を問わない。
【0016】
本発明の第一実施形態に係るガラスパネルは、2枚の板ガラス11,12が対向して配設されていて、
図1に示されるように、板ガラス11,12間の周縁部10a,10b,10c,10dのうち、長手方向一方側の周縁部10a及び長手方向他方側の周縁部10bにはそれぞれ長尺板ガラス20a,20bが1枚ずつ、上側の周縁部10c及び下側の周縁部10dにはそれぞれ短尺板ガラス30が8枚ずつ、板ガラス11,12の面と垂直に配設されていて、板ガラス11,12間には、中空部Sが形成される。
【0017】
中空部Sには、板ガラス11,12と垂直に、長尺板ガラス20と短尺板ガラス30が格子状に配設されていて、これにより、見付面側からガラスパネルを見たとき、ガラスパネル内部には長尺板ガラス20及び短尺板ガラス30からなる格子柄が形成される。
【0018】
図2(a)(c)に示されるように、長尺板ガラス20a,20b,20及び短尺板ガラス30の長辺側端面と板ガラス11,12の中空部S側の面110,120とは直に接合しており、これは、板ガラス11,12の中空部S側の面110,120に中間膜が積層され、そして、加圧及び加熱処理により圧着されることで接合されている。ここで言う中間膜とは、ポリビニルブチラール(PVB膜:Poly Vinyl Butyral)、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA膜:Ethylene-Vinyl Acetate)、又はアイオノマー樹脂(Ionomer)から形成されるものである。ただし、これら中間膜と同等、又は強度が高い中間膜から形成されるものであってもよい。
【0019】
図2(a)(b)に示されるように、長尺板ガラス20a,20bの中空部S側の面200a,200b、及び、長尺板ガラス20の面200と短尺板ガラス30の短辺側端面とは直に接合しており、これは、接着剤で接合されている。ここで言う接着剤とは、エポキシ系樹脂から形成されるものであり、短尺板ガラス30の短辺側端面に接着剤が塗布された後、長尺板ガラス20a,20b,20の面200a,200b,200が積層され接着剤が硬化することで接合される。
【0020】
このように構成した本発明の第一実施形態のガラスパネルによれば、2枚の板ガラス11,12の間に、長尺板ガラス20a,20b,20及び短尺板ガラス30が格子状に配設されていることで、板ガラス11,12の厚みを大きくすることなく、優れた強度が具備され、かつ、見付面側から見たとき、ガラスパネル内にガラスで格子柄が形成されることで特有の美しさが備わるので、意匠性にも優れる。具体的には、板ガラス11,12の厚みが3ミリメートル、ガラスパネルの見込寸法が30ミリメートルのとき、厚みが21ミリメートルの板ガラスと同等の強度を有し、重量は21ミリメートルの板ガラスの3分の1以下となり、厚みのある板ガラスと同等の強度を、板ガラスを厚くすることなく具備し、かつ、意匠性にも優れる。また、2枚の板ガラス11,12間の中空部Sにおいては、色彩を有するフィルム等による装飾も可能なので、装飾の自由度が高く、より一層意匠性に優れる。
【0021】
加えて、2枚の板ガラス11,12間に中空部Sが備えられていることで、中空部Sがガラスパネル内部で空気層となり、屋内外を隔てる建具に使用する場合、2枚の板ガラスと中空部Sによって3層構造となるので、断熱性に優れる。
【0022】
また、長尺板ガラス20a,20b,20及び短尺板ガラス30の長辺側端面と板ガラス11,12の中空部S側の面110,120とが中間膜で接着されるので、ガラスパネルが破損しても破片がほぼ飛び散らず、安全性に優れる。
【0023】
続いて、本発明の第二実施形態に係るガラスパネルについて説明する。
図3に示されるのは、本発明の第二実施形態に係るガラスパネルである。第二実施形態のガラスパネルは、第二実施形態に係るガラスパネルの基本構成は、本発明の第一実施形態と同一であるが、第二実施形態のガラスパネルは、板ガラス11,12に加え、板ガラス13を備え、よって、3枚の板ガラス11,12,13が対向して配設されている点と、板ガラス11,12の間に形成される中空部S1に加えて、板ガラス12,13の間に中空部S2が形成されて、中空部S1,S2のそれぞれに長尺板ガラス20及び短尺板ガラス30が板ガラス11,12の面と垂直に配設されている点が、第一実施形態とは異なる。
【0024】
中空部S1、及び、中空部S2に配設された長尺板ガラス20及び短尺板ガラス30により、見付面側からガラスパネルを見たとき、ガラスパネル内部には長尺板ガラス20及び短尺板ガラス30からなる格子柄が形成される。
【0025】
このように構成した本発明の第二実施形態のガラスパネルによれば、3枚の板ガラス11,12,13で形成される中空部S1,S2に、長尺板ガラス20a,20b,20及び短尺板ガラス30が格子状に配設されていることで、板ガラス11,12,13の厚みを大きくすることなく優れた強度が具備され、かつ、見付面側から見たとき、ガラスパネル内にガラスで格子柄が形成されることで特有の美しさが備わるので、意匠性にも優れる。また、板ガラス11,12の間の中空部S1、及び、板ガラス12,13の間の中空部S2においては、色彩を有するフィルム等による装飾も可能なので、装飾の自由度が高く、さらに意匠性に優れる。
【0026】
加えて、板ガラス11,12の間の中空部S1、及び、板ガラス12,13の間の中空部S2が備えられていることで、中空部S1,S2がガラスパネル内部で空気層となり、屋内外を隔てる建具に使用する場合、3枚の板ガラスと中空部S1,S2によって5層構造となるので、断熱性及び遮音性に優れる。
【0027】
また、長尺板ガラス20及び短尺板ガラス30の長辺側端面と板ガラス11,12,13とが中間膜で接合される場合は、ガラスパネルが破損しても破片がほぼ飛び散らず、安全性に優れる。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、長尺板ガラス及び短尺板ガラスの長辺側端面と板ガラスの中空部側の面とは、板ガラスの中空部S側の面に中間膜が積層され、そして、加圧及び加熱処理により圧着されることで接合される構成としていたが、中間膜ではなく接着剤で接合されていてもよい。また、長尺板ガラスの面に短尺板ガラスの短辺側端面を接合する構成としていたが、短尺板ガラスの面に長尺板ガラスの短辺側端面を接合する構成としてもよい。
【0029】
本発明が備える板ガラスは、好ましくは、厚みが1~8ミリメートル、長手方向寸法は3200ミリメートル以内、短手方向寸法は1200ミリメートル以内で、本発明のガラスパネルの見込方向寸法は12~50ミリメートルだが、本発明の主旨を逸脱しなければ、これらの数値の範囲外であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
11,12 板ガラス
10a,10b,10c,10d 周縁部
20,20a,20b 長尺板ガラス
30 短尺板ガラス
S,S1,S2 中空部