(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022736
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両におけるCO2貯留用の流路制御装置及び流路制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240214BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240214BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
F01N3/08 A ZAB
B01D53/92 240
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126039
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上出 英行
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】本城 匠
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4G146
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AA18
3G091AB03
3G091AB06
3G091AB08
3G091BA13
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091CA11
3G091CA26
3G091DC02
3G091EA01
3G091EA07
3G091EA34
3G091EA39
3G091EA40
3G091FB09
4D002AA08
4D002AA09
4D002AA12
4D002AA40
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA05
4D002BA06
4D002DA41
4D002DA45
4D002EA01
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB20
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC11
(57)【要約】
【課題】CO
2分離膜の長寿命化に寄与する。
【解決手段】制御装置(100)は、車両に搭載された内燃機関(11)からの排ガスを第1流路(16)又は第2流路(17)に導く制御を行う処理部を備える。第1流路に導かれた排ガス中のCO
2はCO
2分離膜(30)を通じて車両内のCO
2貯留装置(40)に供給される。処理部は、排ガスに含まれる対象物質の濃度に応じて、排ガスを第1流路又は第2流路に導く制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関からの排ガスを第1流路又は第2流路に導く制御を行う処理部を備え、
前記第1流路に導かれた前記排ガス中のCO2はCO2分離膜を通じて前記車両内のCO2貯留装置に供給され、
前記処理部は、前記排ガスに含まれる対象物質の濃度に応じて、前記排ガスを前記第1流路又は前記第2流路に導く制御を行う
、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記対象物質の濃度が所定の基準濃度を下回ると判断される場合、前記排ガスを前記第1流路に導く第1制御を行い、前記対象物質の濃度が前記基準濃度を超えると判断される場合、前記排ガスを前記第2流路に導く第2制御を行う
、請求項1に記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記内燃機関の空燃比の推定結果又は測定結果に基づき、前記対象物質の濃度と前記基準濃度との高低関係を判断する
、請求項2に記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記内燃機関を有する車両の走行状態に基づき前記内燃機関の空燃比を推定する
、請求項3に記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記内燃機関を有する車両の走行状態を検出するためのセンサの出力情報に基づき、前記対象物質の濃度と前記基準濃度との高低関係を判断する
、請求項2に記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記対象物質の濃度を測定する濃度センサを用いて、前記対象物質の濃度と前記基準濃度との高低関係を判断する
、請求項2に記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記第1制御を実行している状態において前記対象物質の濃度が所定の基準濃度を超えると判断したとき、実行する制御を前記第2制御に切り替え、その後、復帰条件が成立すると前記第1制御に戻す
、請求項1に記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項8】
前記排ガスが前記第1流路に導かれる場合、前記排ガス中のCO2が前記CO2分離膜を通じて前記CO2貯留装置に貯留され
前記排ガスが前記第2流路に導かれる場合、前記排ガスは前記第2流路を通じて前記内燃機関を有する車両の車外に排出される
、請求項1~7の何れかに記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項9】
前記対象物質は、窒素酸化物又は硫黄酸化物である
、請求項1~7の何れかに記載の、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置。
【請求項10】
請求項1~7の何れかに記載の流路制御装置と、
前記CO2分離膜と、
前記CO2貯留装置と、
前記第1流路及び前記第2流路に接続され、前記処理部の制御に従って、前記内燃機関からの前記排ガスを前記第1流路又は前記第2流路に導く流路切替装置と、を備えた
、車両におけるCO2回収システム。
【請求項11】
内燃機関からの排ガスを第1流路又は第2流路に導く流路制御工程を有し、
前記第1流路に導かれた前記排ガス中のCO2はCO2分離膜を通じてCO2貯留装置に供給され、
前記流路制御工程では、前記排ガスに含まれる対象物質の濃度に応じて、前記排ガスを前記第1流路又は前記第2流路に導く
、車両におけるCO2貯留用の流路制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置及び流路制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関の作動により発生した排ガス中のCO2を、車外に排出せずに、車両内に設置されたCO2貯留装置に貯留する技術が研究されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、排ガスにおけるCO2の濃度はそれほど高いものではなく、CO2貯留装置の能力を十分に引き出しているとは言い難い。CO2貯留装置に供給されるガス中のCO2の濃度を高めることで、CO2貯留装置の能力を十分に引き出すことができる。このため、内燃機関からの排ガスをCO2分離膜に供給することで排ガスからCO2を分離し、分離されたCO2をCO2貯留装置に供給するといった方法が検討される。
【0005】
しかしながら、排ガスにはCO2分離膜の劣化を促進させる物質が含まれることがあり、単純に排ガスをCO2分離膜に常時供給することはCO2分離膜の長寿命化にとって望ましくない。
【0006】
本発明は、CO2分離膜の長寿命化に寄与する、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置及び流路制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両におけるCO2貯留用の流路制御装置は、車両に搭載された内燃機関からの排ガスを第1流路又は第2流路に導く制御を行う処理部を備え、前記第1流路に導かれた前記排ガス中のCO2はCO2分離膜を通じて前記車両内のCO2貯留装置に供給され、前記処理部は、前記排ガスに含まれる対象物質の濃度に応じて、前記排ガスを前記第1流路又は前記第2流路に導く制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CO2分離膜の長寿命化に寄与する、車両におけるCO2貯留用の流路制御装置及び流路制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略的な平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係り、貯留制御が行われる場合の排ガスの流れを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係り、直接排出制御が行われる場合の排ガスの流れを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係り、流路切替装置の構造及び動作の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係り、制御装置及び車載センサ群の構成図である。
【
図6】本発明の実施形態に属する第4実施例に係り、対象物質の濃度推定に関わる学習済みモデルの作成及び運用手順を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に属する第6実施例に係り、貯留制御及び直接排出制御間の切り替えに関わる動作フローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に属する第8実施例に係り、制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0011】
図1は本実施形態に係る車両1の概略的な平面図である。車両1にはCO
2回収システムが搭載される。CO
2は二酸化炭素を指す。車両1は例えば路面上を走行可能な自動車であるが、車両1の種類は任意である。
【0012】
車両1には、内燃機関11、排気マニホールド12、排気管13、浄化装置14、流路切替装置15、貯留用接続路16、排気用接続路17、分離ガス路18、残ガス排出路19、マフラ20、CO2分離膜30、CO2貯留装置40、制御装置100及び車載センサ群200が設けられる。CO2回収システムでは、内燃機関11からの排ガス中のCO2をCO2貯留装置40にて貯留(換言すれば回収)することができる。以下、各部の構成及び機能を説明する。
【0013】
内燃機関11は、燃料を内部で燃焼させることによって車両1を駆動するための駆動力を発生させる。内燃機関11に加えて電動機(不図示)が車両1に設けられていて良い。この場合、内燃機関11と電動機を併用して車両1を駆動するための駆動力を発生させる。
【0014】
内燃機関11内での燃料の燃焼によって生じた排ガス(排気ガス)は排気マニホールド12を通じて排気管13に流入する。排気管13に浄化装置14が設けられる。排気管13は、内燃機関11と浄化装置14との間に設けられる排気管13aと、それ以外の排気管13bと、で構成される。排気管13aは排気マニホールド12を介して内燃機関11に連結される。内燃機関11から排出された排ガスが排気管13aの内部を通って浄化装置14に流れ込む。
【0015】
浄化装置14は自身に流入した排ガスを浄化する。具体的には当該浄化において、浄化装置14は、自身に流入した排ガス中のNOX(窒素酸化物)、HC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)等を除去する。浄化装置14は、NOX、HC及びCO等の除去に適した触媒( 例えば三元触媒、NOX吸蔵還元触媒)にて構成される。但し、除去すべき物質が完全に浄化装置14にて除去されるとは限らず、除去すべき物質の濃度等に依存して、除去すべき物質の幾らかは浄化装置14を通過し得る。
【0016】
浄化装置14による浄化後の排ガスは排気管13bの内部を通って流路切替装置15に流れ込む。流路切替装置15に対して貯留用接続路16及び排気用接続路17が連結される。流路切替装置15は、排気管13bを通じて流れ込む排ガスを、制御装置100の制御の下で、貯留用接続路16及び排気用接続路17の何れか一方に送り出す。
【0017】
制御装置100は以下の貯留制御と直接排出制御を切り替え実行できる。貯留制御は、排気管13bを通じて流路切替装置15に流れ込む排ガスを流路切替装置15から貯留用接続路16に送り出す制御である。直接排出制御は、排気管13bを通じて流路切替装置15に流れ込む排ガスを流路切替装置15から排気用接続路17に送り出す制御である。
【0018】
図2に貯留制御が行われる場合の排ガスの流れを示す。貯留制御が行われる場合、流路切替装置15から貯留用接続路16に送り出された排ガスはCO
2分離膜30に供給され、CO
2分離膜30にて分離ガスと残ガスとに分離される。
【0019】
CO2分離膜30は、自身に供給された排ガスの内、気体の二酸化炭素のみを選択的に通過させる膜である。貯留制御において、CO2分離膜30を通過したガスは分離ガスとして分離ガス路18を通じCO2貯留装置40に送られる。貯留制御において、CO2分離膜30を通過しなかったガスは残ガスとして残ガス排出路19に送られる。残ガス排出路19はマフラ20に連結されており、残ガスはマフラ20を介して車外に排出される。車外とは車両1の外部を指す。
【0020】
図3に直接排出制御が行われる場合の排ガスの流れを示す。直接排出制御が行われる場合、流路切替装置15から排気用接続路17に送り出された排ガスは、CO
2分離膜30を経由することなくマフラ20を介して車外に排出される。
【0021】
マフラ20は排ガスの排気口である。尚、残ガスは排ガスの一部である。マフラ20は排気用接続路17及び残ガス排出路19に連結される。マフラ20は排気用接続路17内の排ガス又は残ガス排出路19内の残ガスにおける温度及び圧力を低下させて排気騒音を低減させる機能を持つ。
【0022】
CO2貯留装置40は、分離ガス路18に連結され、CO2分離膜30を通過した分離ガス中のCO2を捕捉して貯留する。CO2貯留装置40におけるCO2の捕捉及び貯留の方法として、公知の方法を含む任意の方法を利用することができる。例えば、CO2の捕捉及び貯留の方法として、物理吸着法、物理吸収法、化学吸収法又は深冷分離法を利用できる。一例として、物理吸着法を採用される場合のCO2貯留装置40の構造及び機能を説明する。この場合、CO2貯留装置40は、活性炭又はゼオライト等のCO2吸着剤と、CO2吸着剤を収容する容器と、を備える。CO2吸着剤に対しCO2を含んだガス(上述の分離ガス)を接触させることによりCO2をCO2吸着剤に吸着させることができる。
【0023】
尚、CO2分離膜30を通過した分離ガスの主成分はCO2であるが、CO2以外の成分も不純物として分離ガスに含まれ得る。CO2貯留装置40に送られた分離ガスの内、CO2貯留装置40にて捕捉及び貯留されなかったガス(上記不純物を含む)は、マフラ20又は図示されない排出口を介して車外に排出される。
【0024】
図4(a)に流路切替装置15の構造を示す。流路切替装置15は三方性の電磁弁であって良い。流路切替装置15は電磁弁15a及び15bを備える。
図4(a)では電磁弁15a及び15bの構造が概念的に示されており、実際の電磁弁15a及び15bの構造は
図4(a)に示すものと異なり得る(後述の
図4(b)及び
図4(c)でも同様)。電磁弁15a及び15bの夫々は制御装置100により開状態又は閉状態に制御される。電磁弁15aは排気管13b及び貯留用接続路16間に設けられ、電磁弁15aが開状態であるときにのみ、排気管13bからの排ガスが貯留用接続路16に流入する。電磁弁15bは排気管13b及び排気用接続路17間に設けられ、電磁弁15bが開状態であるときにのみ、排気管13bから排ガスが排気用接続路17に流入する。故に、貯留制御では、制御装置100により
図4(b)に示す如く電磁弁15aが開状態に制御される一方で電磁弁15bが閉状態に制御される。逆に、直接排出制御では、制御装置100により
図4(c)に示す如く電磁弁15aが閉状態に制御される一方で電磁弁15bが開状態に制御される。
【0025】
図5に示す如く、制御装置100は演算処理部110及びメモリ120を備える。演算処理部110は、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等を含む。制御装置100にて実行される任意の制御、動作及び処理は、演算処理部110にて実行される制御、動作及び処理であると解されて良い。演算処理部110においてMPUとGPUが一体に形成されていても良い(例えばMPUにGPUが内蔵されていても良い)。
【0026】
メモリ120は、ROM(Read only memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び、RAM(Random access memory)等の揮発性メモリを含む。メモリ120に格納されたプログラムを演算処理部110にて実行することで、制御装置100の各機能が実現されて良い。ここにおけるプログラムは複数のプログラムを含んでいて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが実行されることで、制御装置100の各機能が実現されても良い。制御装置100は1以上のECU(Electronic Control Unit)にて構成されていて良い。2以上のECUにおける2以上のMPUにより演算処理部110が構成されていても良い。
【0027】
車載センサ群200は車両1に設置された各種センサから成る。車載センサ群200に含まれるセンサとして
図5には、回転数センサ211、車速センサ212、ギアセンサ213、アクセルセンサ214、ブレーキセンサ215及び舵角センサ216が示される。但し、
図5に示されないセンサも車載センサ群200に含まれ得る。
【0028】
回数数センサ211は内燃機関11であるエンジンの回転数(クランクシャフトの回転数)を検出し、検出した回転数を表す回転数情報を生成及び出力する。車速センサ212は車両1の速度を検出し、検出した速度を表す車速情報(車速パルス)を出力する。ギアセンサ213は車両1に設けられた変速機のギアの状態又はギア比を検出し、検出したギアの状態又はギア比を表すギア情報を出力する。アクセルセンサ214は車両1に設けられたアクセルペダルへの操作量(運転手による操作量)を検出し、検出した操作量を表すアクセル情報を出力する。ブレーキセンサ215は車両1に設けられたブレーキペダルへの操作量(運転手による操作量)を検出し、検出した操作量を表すブレーキ情報を出力する。舵角センサ216は車両1の舵角(操舵角)を検出し、検出した舵角を表す舵角情報を出力する。
【0029】
走行状態情報は、上述の回転数情報、車速情報、ギア情報、アクセル情報、ブレーキ情報及び舵角情報を含む。走行状態情報により車両1の走行状態が表される。センサ211~216は車両1の走行状態を検出するためのセンサであると言える。
【0030】
車両1においてCAN(Controller Area Network)を含む通信網が形成される。制御装置100及び車載センサ群200内の各センサは当該通信網に接続され、当該通信網を介して任意の情報及び信号の送受信が可能である。
【0031】
CO2貯留装置40を用いることで排ガス中のCO2を捕捉及び貯留(換言すれば回収)することができる。但し、排ガスにおけるCO2の濃度はそれほど高いものではなく、CO2貯留装置40の能力を十分に引き出しているとは言い難い。例えば、排ガスにおけるCO2の濃度は、ガソリン車では10%程度であり、ディーゼル車では2~4%程度になることもある。尚、本発明が適用される車両1はガソリン車でも良いし、ディーゼル車でも良い。CO2貯留装置40に供給されるガス中のCO2の濃度を高めることで、CO2貯留装置40の能力を十分に引き出すことができる。これを考慮し、本実施形態に係るCO2回収システムでは、CO2分離膜30を導入してCO2貯留装置40に供給されるガス中のCO2の濃度を引き上げる。
【0032】
一方、CO2分離膜を使用する際、通常、CO2分離膜へのガスの供給前にガスの精製を行う。ガスの精製の中で、CO2分離膜にとっての有害物質が除去される。有害物質としてNOX及びSOXが挙げられる。NOXは窒化酸化物を指し、例えばNO、NO2、N2O4、N2O3又はN2Oである。SOXは硫黄酸化物を指し、例えばSO2又はSO3である。
【0033】
内燃機関11からの排ガスにはNOX及びSOXが含まれる。排ガス中のNOX及びSOXの一部は浄化装置14にて除去されるものの、場合によっては、比較的高い濃度のNOX及びSOXが排気管13b中の排ガスに残存する。NOX又はSOXが水分で凝縮される際に発生する凝縮水は強酸であり、当該凝縮水がCO2分離膜30に触れるとCO2分離膜30の劣化が促進される。
【0034】
排ガス中のNOX及びSOXを全て無害化するべく大量の活性炭等を車両1に設けることは現実的ではない。車両1にて確保できるスペースには限りがあるからである。他方、排ガスに関わる規制では一定時間内におけるNOX又はSOXの平均排出量が重要であり、平均排出量が規制値以下であれば一時的に高濃度のNOX又はSOXが車外に排出されても問題は生じない。
【0035】
これらを総合勘案し、本実施形態に係るCO2回収システムでは、高濃度のNOX又はSOXが排出されるような状況において排ガスをCO2分離膜30を通さずに直接車外に排出する。排ガスにおけるNOX又はSOXの濃度が、CO2分離膜30にとって耐えることのできる程度の濃度であるときには、排ガスをCO2分離膜30を通じてCO2貯留装置40に送る。
【0036】
以下、複数の実施例の中で、CO2回収システムに関わる幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0037】
尚、以下の説明において対象物質とはNOX又はSOXを指す。対象物質としてのNOXは、NO、NO2、N2O4、N2O3及びN2Oの内、全部又は一部を含む。対象物質としてのSOXは、SO2及びSO3の内、全部又は一部を含む。以下の説明において濃度とは、任意の定義による濃度であって良いが、例えば質量パーセント濃度又は体積パーセント濃度である。対象物質の濃度を記号“CNS”によって参照する。対象物質の濃度CNSは、排気管13b内の排ガスにおける対象物質の濃度を指す。但し、排気管13a内の排ガスにおける対象物質の濃度が対象物質の濃度CNSであっても良い。
【0038】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
【0039】
演算処理部110は、対象物質の濃度CNSに応じて、貯留制御又は直接排出制御を選択的に実行する。貯留制御により、内燃機関11からの排ガスがCO2分離膜30に向かう流路に導かれる(即ち排気管13b中の排ガスが貯留用接続路16を含む流路に導かれる)。結果、排ガス中のCO2がCO2分離膜30を通じてCO2貯留装置40にて捕捉及び貯留(換言すれば回収)される。直接排出制御により、内燃機関11からの排ガスがCO2分離膜30を経由せずにマフラ20に向かう流路に導かれる(排気管13b中の排ガスが排気用接続路17を含む流路に導かれる)。結果、当該流路を介して内燃機関11からの排ガスが車外に排出される。
【0040】
対象物質の濃度CNSに応じて貯留制御又は直接排出制御を切り替え実行することにより、排ガスに関する規制の順守とCO2分離膜30の長寿命化を両立させることができる。
【0041】
より具体的には、演算処理部110は、対象物質の濃度CNSを所定の基準濃度CREFと比較する。そして、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを下回ると判断される場合、演算処理部110は貯留制御を実行する。対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えると判断される場合、演算処理部110は直接排出制御を実行する。
【0042】
これにより、排ガスに関する規制の順守とCO2分離膜30の長寿命化を両立させることができる。尚、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFと一致すると判断される場合、演算処理部110は貯留制御及び直接排出制御の何れを実行しても良い。
【0043】
対象物質がNOXである場合、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを下回るとは、NOXの濃度が基準濃度CREFを下回ることを意味する。対象物質がSOXである場合も同様である。NOX及びSOXの双方が対象物質に含まれると考えた場合、NOX及びSOXの各濃度が基準濃度CREFを下回るときに限り、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを下回ると解されて良い。この場合、NOX及びSOXの濃度の少なくとも一方が基準濃度CREFを超えるとき、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えると解される。
【0044】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例は第1実施例と組み合わせて実施される。
【0045】
第2実施例において、演算処理部110は内燃機関11の空燃比を推定する空燃比推定処理を実行する。そして、演算処理部110は空燃比の推定結果に基づき、対象物質の濃度CNSと基準濃度CREFとの高低関係を判断して良い。
【0046】
これにより、対象物質の濃度CNSの直接検出を要することなく、濃度CNS及びCREF間の高低関係を推定でき、以って、排ガスに関する規制の順守とCO2分離膜30の長寿命化を両立させることができる。
【0047】
空燃比推定処理により推定された空燃比を、以下、推定空燃比と称する。演算処理部110は、推定空燃比及び理論空燃比間の差に基づき、対象物質の濃度CNSと基準濃度CREFとの高低関係を判断できる。理論空燃比は燃料機関11に投入される混合気中の酸素と燃料とが過不足なく反応するときの空燃比であり、演算処理部110にとって理論空燃比は既知である。実際の空燃比と理論空燃比との差が大きくなるほど、内燃機関11からの排ガスに対象物質がより多く含まれやすくなる。
【0048】
このため、演算処理部110は、推定空燃比及び理論空燃比間の差の大きさDIFAF1を所定の乖離閾値THAFと比較する。推定空燃比及び理論空燃比間の差の大きさDIFAF1が乖離閾値THAFより大きいとき、演算処理部110は、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えると判断する。推定空燃比及び理論空燃比間の差の大きさDIFAF1が乖離閾値THAF以下であるとき、演算処理部110は、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを下回ると判断する。演算処理部110は対象物質の濃度CNSの値を具体的に推定する必要は必ずしも無い。演算処理部110は、大きさDIFAF1に基づき対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えるか否かを判断すれば足る。
【0049】
尚、推定空燃比が理論空燃比より大きいときにおける乖離閾値THAFと、推定空燃比が理論空燃比より小さいときにおける乖離閾値THAFと、を互いに異ならせても良い。
【0050】
演算処理部110は、車両1の走行状態に基づき内燃機関11の空燃比を推定でき、従って車両1の走行状態に基づき対象物質の濃度C
NSが基準濃度C
REFを超えるか否かを判断できる。演算処理部110は走行状態情報(
図5参照)に基づき車両1の走行状態を認識できる。
【0051】
空燃比は車両1の走行状態に依存するため、車両1の走行状態に基づき空燃比を良好に推定できる。
【0052】
例えば、内燃機関11の始動時には実際の空燃比が理論空燃比より大きくずれる。故に、車両1の発進時において演算処理部110は上記大きさDIF
AF1が乖離閾値TH
AFより大きいと判断できる。より具体的には例えば、車両停止状態から始動状態を経て車両走行状態に移行する発進過程中の発進対応期間において、演算処理部110は上記大きさDIF
AF1が乖離閾値TH
AFより大きいと判断して良い。ここで車両停止状態は、内燃機関11が非作動であって且つ車両1が停止している状態を指す。始動状態とは内燃機関11が作動しているが、車両1が未だ停止している状態を指す。車両走行状態は内燃機関11が発生した駆動力に基づき車両1が走行している状態を指す。発進対応期間は、上記発進過程において、内燃機関11が作動し始めてから車両1の速度が所定速度(例えば時速5km)に達するまでの期間を指す。演算処理部110は走行状態情報(
図5参照)に基づき現時点が発進対応期間に属するのかを判断できる。車両停止状態から始動状態への遷移後、一定時間分だけ、上記大きさDIF
AF1が乖離閾値TH
AFより大きいと判断されるようにしても良い。
【0053】
また例えば、惰行走行時には実際の空燃比が理論空燃比より大きくずれる。車両1が惰性走行を行っているときにおいて、演算処理部110は上記大きさDIF
AF1が乖離閾値TH
AFより大きいと判断して良い。惰行走行とは、アクセルペダルを踏みこむことによる車両1の加速及びブレーキペダルを踏みこむことによる車両1の減速を伴うことなく、車両1が惰性で走行することを指す。演算処理部110は走行状態情報(
図5参照)に基づき、現在、惰行走行が行われているかを判断できる。
【0054】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例は第1実施例と組み合わせて実施される。
【0055】
内燃機関11の空燃比を測定する空燃比センサ(不図示)が車両1に設けられていて良い。この場合、演算処理部110は、空燃比推定処理を実行する代わりに、空燃比センサによる空燃比の測定結果に基づき、対象物質の濃度CNSと基準濃度CREFとの高低関係を判断して良い。
【0056】
これにより、対象物質の濃度CNSの直接検出を要することなく、濃度CNS及びCREF間の高低関係を推定でき、以って、排ガスに関する規制の順守とCO2分離膜30の長寿命化を両立させることができる。
【0057】
空燃比センサにより測定された空燃比を、以下、測定空燃比と称する。空燃比センサは排気管13a又は13bに設置され、排気管13a又は13b内の排ガス中の酸素濃度を測定することを通じて測定空燃比を表す信号を出力する。空燃比センサの出力信号がCANを含む通信網を介して演算処理部110に伝達されることで、演算処理部110にて測定空燃比が取得及び認識される。
【0058】
演算処理部110は、測定空燃比及び理論空燃比間の差に基づき、対象物質の濃度CNSと基準濃度CREFとの高低関係を判断できる。
【0059】
具体的には、演算処理部110は、測定空燃比及び理論空燃比間の差の大きさDIFAF2を所定の乖離閾値THAFと比較する。測定空燃比及び理論空燃比間の差の大きさDIFAF2が乖離閾値THAFより大きいとき、演算処理部110は、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えると判断する。測定空燃比及び理論空燃比間の差の大きさDIFAF2が乖離閾値THAF以下であるとき、演算処理部110は、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを下回ると判断する。演算処理部110は、対象物質の濃度CNSの値を具体的に推定する必要は必ずしも無い。演算処理部110は、大きさDIFAF2に基づき対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えるか否かを判断すれば足る。
【0060】
尚、測定空燃比が理論空燃比より大きいときにおける乖離閾値THAFと、測定空燃比が理論空燃比より小さいときにおける乖離閾値THAFと、を互いに異ならせても良い。
【0061】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第4実施例は第1実施例と組み合わせて実施される。
【0062】
対象物質の濃度C
NSは車両1の走行状態に依存する。このため、演算処理部110は、車両1の走行状態を表す走行状態情報(
図5参照)に基づき対象物質の濃度C
NSを推定することを通じて、対象物質の濃度C
NSが基準濃度C
REFを超えるか否かを判断して良い。
【0063】
これにより、対象物質の濃度CNSの直接検出を要することなく、濃度CNS及びCREF間の高低関係を推定でき、以って、排ガスに関する規制の順守とCO2分離膜30の長寿命化を両立させることができる。
【0064】
例えば、内燃機関11であるエンジンの回転数及び車両1に設けられた変速機のギア比と、濃度CNSと、の関係を表すテーブルデータを予め作成してメモリ120に保持させておく。この場合、演算処理部110は、テーブルデータと回転数情報及びギア情報とに基づき濃度CNSを推定し、推定結果に基づき濃度CNSが基準濃度CREFを超えるか否かを判断できる。走行状態情報の内、回転数情報及びギア情報以外の情報が用いられる場合も同様である。
【0065】
また、学習データ作成工程を経て機械学習工程にて学習済みモデルを作成した後、学習済みモデルを演算処理部110に組み込むようにしても良い。ここにおける学習済みモデルは、走行状態情報(
図5参照)に基づき対象物質の濃度C
NSが基準濃度C
REFを超えるか否かを判断するためのアルゴリズムを指す。
図6のフローチャートを参照して、当該方法について説明を加える。
【0066】
まずステップS1にて学習データ作成工程が実施される。学習データ作成工程では、或る走行状態において、排気管13bにおける実際の対象物質の濃度CNSを実測することで、その時の走行状態を表す走行状態情報と実測された濃度CNSとの組から成る組データを作成する。学習データ作成工程において、様々な走行条件下で組データを作成することで第1~第N組データを作成する。第1~第N組データの内、任意の2以上の組データ間において、走行状態情報は相違する(但し、偶然、一致することもある)。Nは2以上の整数であり、例えば10000~100000である。第1~第N組データにより学習データセットが形成される。
【0067】
学習データセットが得られた後、ステップS2の機械学習工程に進む。機械学習装置を機械学習工程にて用いる。機械学習装置は任意のコンピュータ装置であり、制御装置100そのものであり得ても良い。機械学習工程において、機械学習装置は、機械学習装置内に設けられたニューラルネットワーク(以下、NNと表記する)を、上記学習データセットを用いて機械学習させる。ここにおける機械学習は、各組データにおける濃度CNSを教師データとする教師有り機械学習である。NNは走行状態情報を入力データとして受け、入力データに基づき出力データとして濃度推定値を導出する。NNが導出する濃度推定値は、対象物質の濃度CNSのNNによる推定値である。機械学習工程による機械学習を経た後のNNは、走行状態情報に基づき濃度CNSを良好に推定できる学習済みモデルとなる。
【0068】
得られた学習済みモデルを演算処理部110に組み込んだ状態で、ステップS3の実運用工程に進む。実運用工程において、演算処理部110は、車両1の走行状態を表す走行状態情報(
図5参照)に基づき、学習済みモデルを用いて対象物質の濃度C
NSが基準濃度C
REFを超えるか否かを判断する。
【0069】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第5実施例は第1実施例と組み合わせて実施される。
【0070】
対象物質の濃度CNSを測定する濃度センサ(不図示)が車両1に設置されていても良い。濃度センサは、排気管13b内に挿入され、排気管13b中の排ガスにおける対象物質の濃度CNSを測定する。変形として、濃度センサは、排気管13a内に挿入され、排気管13a中の排ガスにおける対象物質の濃度CNSを測定するものであっても良い。
【0071】
濃度センサによって測定された対象物質の濃度CNSを、特に測定濃度CNSと称する。濃度センサは測定濃度CNSを表す信号を出力する。濃度センサの出力信号がCANを含む通信網を介して演算処理部110に伝達されることで、演算処理部110にて測定濃度CNSが取得及び認識される。
【0072】
第5実施例に係る演算処理部110は、濃度センサを用いて濃度CNS(測定濃度CNS)と基準濃度CREFとの高低関係を判断し、その判断結果に基づき貯留制御又は直接排出制御を実行する。即ち、対象物質の測定濃度CNSが基準濃度CREFを下回ると判断される場合、演算処理部110は貯留制御を実行する。対象物質の測定濃度CNSが基準濃度CREFを超えると判断される場合、演算処理部110は直接排出制御を実行する。
【0073】
これにより、排ガスに関する規制の順守とCO2分離膜30の長寿命化を両立させることができる。尚、対象物質の測定濃度CNSが基準濃度CREFと一致すると判断される場合、演算処理部110は貯留制御及び直接排出制御の何れを実行しても良い。
【0074】
尚、第5実施例に係る方法では、対象物質の濃度CNSが実際に基準濃度CREFを超えて上昇し、その上昇が演算処理部110にて認識された後に、貯留制御から直接排出制御に切り替えられることになる(逆の場合も同様)。このため、第5実施例の方法は、第2~第4実施例の方法との比較においてリアルタイム性が劣る可能性がある。この点を考慮すれば、第2~第4実施例の方法が第5実施例の方法よりも好ましい場合もある。
【0075】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。第6実施例では、貯留制御及び直接排出制御間の切り替えに関わる動作手順例を説明する。
図7は貯留制御及び直接排出制御間の切り替えに関わる動作フローチャートである。
【0076】
制御装置100に駆動電力が供給開始されることでステップS11に至る。ステップS11にて、演算処理部110は初期制御として貯留制御を実行する。演算処理部110は、流路切替装置15に対し制御装置100のインターフェースから第1指令信号又は第2指令信号を送信することができる。第1指令信号は貯留制御を実現するための制御である。第1指令信号を受けて流路切替装置15は電子弁15aを開状態とし且つ電子弁15bを閉状態とする(
図4(b)参照)。第2指令信号は直接排出制御を実現するための制御である。第2指令信号を受けて流路切替装置15は電子弁15aを閉状態とし且つ電子弁15bを開状態とする(
図4(c)参照)。このため、ステップS11において、演算処理部110は、流路切替装置15に対し制御装置100のインターフェースから第1指令信号を送信し、これによって貯留制御を実行する。
【0077】
ステップS11に続くステップS12において、演算処理部110は第2~第5実施例の何れかに示した方法により対象物質の濃度CNSを特定する。濃度CNSは推定又は測定により特定される。その後、ステップS13に進む。
【0078】
ステップS13において、演算処理部110は特定された濃度CNSが所定の基準濃度CREFを超えるかを判断する。ここにおける判断において、第2~第5実施例に示した何れの方法が採用されても良い。濃度CNSが基準濃度CREFを超えると判断された場合(ステップS13のY)、ステップS14に進む。濃度CNSが基準濃度CREFを超えないと判断された場合(ステップS13のN)、ステップS12に戻る。
【0079】
ステップS14において、演算処理部110は、流路切替装置15に対し制御装置100のインターフェースから第2指令信号を送信する。これにより、演算処理部110にて実行される制御が貯留制御から直接排出制御に切り替わる。この後、直接排出制御は、後述のステップS16に至るまで、継続実行される。
【0080】
ステップS14の後、ステップS15に進む。ステップS15において演算処理部110は所定の復帰条件の成否を判定する。復帰条件が成立していると判定された場合(ステップS15のY)にはステップS16に進み、そうでない場合(ステップS15のN)にはステップS15の判定動作が繰り返される。
【0081】
ステップS16において、演算処理部110は、流路切替装置15に対し制御装置100のインターフェースから第1指令信号を送信する。これにより、演算処理部110にて実行される制御が直接排出制御から貯留制御に切り替わる。この後、ステップS12に戻る。
【0082】
復帰条件について説明する。例えば、演算処理部110にて実行される制御が貯留制御から直接排出制御に切り替わってから所定時間が経過すると復帰条件が成立して良い。ここにおける所定時間は予め定められた時間であり、例えば数秒程度である。或いは例えば、ステップS15の段階において、推定又は測定された濃度CNSが基準濃度CREFを下回ると演算処理部110にて判断されたとき、復帰条件が成立しても良い。
【0083】
図7に示す動作手順により、高濃度の対象物質によってCO
2分離膜30の劣化が進むことを抑制しつつ、排ガスに関する規制を順守することができる。
【0084】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。演算処理部110は、各時刻において対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超えるか否かを判断する。このため、演算処理部110は、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超える状態が継続するとき、その継続時間を計測することができる。以下、当該継続時間を高濃度継続時間と称する。高濃度継続時間は、対象物質の濃度CNSが基準濃度CREFを超える状態が途切れることなく継続する時間である。
【0085】
演算処理部110は高濃度継続時間に応じた通知を通知受理者に対して行う通知処理を実行できて良い。例えば、高濃度継続時間が所定の判定時間を超えるとき、演算処理部110は通知処理を行う。通知受理者は基本的には車両1の運転手である。但し、通知受理者は車両1の運転手以外の乗員又は管理者等であっても良い。
【0086】
通知処理における通知は、表示装置での表示により実現されて良い。具体的には例えば、通知処理において、演算処理部110は車両1の運転席付近に設置された表示装置(不図示)に所定のメッセージを含む通知用画像を表示させる表示制御を行う。通知用画像におけるメッセージは、例えば「環境保全のためエコドライブを心がけましょう」といった文言を含む。これにより、対象物質の排出が少なくなるようなエコドライブが実践されやすくなると期待され、対象物質の排出の低減によりCO2分離膜30の長寿命化が期待される。通知用画像が表示される表示装置は、通知受理者が所持する携帯端末(例えば車両1の運転手が所持するスマートホン)の表示装置であっても良い。
【0087】
演算処理部110は高濃度継続時間が増大するにつれて通知処理における通知の内容を変化させても良い。即ち例えば、演算処理部110は、高濃度継続時間が所定の第1判定時間を超えるが所定の第2判定時間以下であるときに第1通知処理を行い、高濃度継続時間が第2判定時間を超えるとき第2通知処理を行って良い。ここで第2判定時間は第1判定時間よりも長い。そして、通知用画像におけるメッセージを第1及び第2通知処理間で相違させると良い。第2通知処理におけるメッセージは、第1通知処理におけるメッセージよりも、エコドライブをより強く推奨するようなメッセージであると良い。
【0088】
通知処理における通知は、表示装置での表示に加えて又は表示装置での表示に代えて、音声出力による通知を含んでいても良い。
【0089】
<<第8実施例>>
第8実施例を説明する。
図8に制御装置100の機能ブロック図を示す。制御装置100には機能ブロックF1~F3が設けられると考えることができる。演算処理部110において、単一のプログラム又は複数のプログラムが実行されることで機能ブロックF1~F3が実現されて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが個別に実行されることで任意の複数の機能ブロックが実現されて良い。
【0090】
機能ブロックF1、F2、F3は、夫々、濃度判断部、制御切替部、通知処理部である。濃度判断部F1は上述の何れかの実施例にて示した方法により対象物質の濃度CNSと基準濃度CREFとの高低関係を判断する。制御切替部F2は、濃度判断部F1の判断結果に基づき、実行する制御を貯留制御及び直接排出制御間で切り替える(換言すれば貯留制御又は直接排出制御を切り替え実行する)。通知処理部F3は第7実施例に示した通知処理を行う。
【0091】
貯留制御及び直接排出制御の切り替えによる排ガスの流路の切り替えに注目したとき、制御装置100は流路制御装置として機能すると言える。制御装置100は、他の様々な機能(例えば車両1の走行を制御する機能)を備えていても良い。
【0092】
<<第9実施例>>
第9実施例を説明する。第9実施例では、上述した各事項に対する変形技術又は補足事項等を説明する。
【0093】
CO2貯留装置40にて貯留されたCO2は、例えば、ガソリンスタンド又は車庫等に設置された回収機器(不図示)に対してCO2貯留装置40が接続されたときに、CO2貯留装置40から回収機器に放出される。或いは、CO2貯留装置40全体又はCO2貯留装置40内のカートリッジを車両1から取り外すことで、CO2貯留装置40に貯留されたCO2が車外に取り出されても良い。この場合、車両1に設置されていたCO2貯留装置40又はカートリッジが新たなものに交換されてから、CO2回収システムが改めて起動することになる。
【0094】
対象物質の濃度C
NSは内燃機関11における燃料の燃焼温度に依存する。このため、演算処理部110は、内燃機関11における燃料の燃焼温度に応じて、対象物質の濃度C
NSと基準濃度C
REFとの高低関係を判断するようにしても良い。燃焼温度を直接測定することは難しいため、演算処理部110は走行状態情報(
図5参照)に基づき燃焼温度を推定するようにしても良い。
【0095】
排ガスに関わる装置として、上述の各図面に示されない装置(以下、追加装置と称する)が車両1に設けられていても良い。追加装置として排ガス冷却装置が車両1に設置されて良い。排ガス冷却装置は、排ガスの流路においてCO2分離膜30の上流側に配置され、CO2分離膜30に流入する排ガスの温度を低下させる。排ガス冷却装置の設置により、熱によるCO2分離膜30の劣化を抑制することができる。追加装置としてエネルギ変換装置が車両1に設置されて良い。エネルギ変換装置は、排ガスが有する熱エネルギを他のエネルギ(電気エネルギ等)に変換する。変換により得られた他のエネルギ(電気エネルギ等)を車両1にて利用することができる。排ガスをエネルギ変換装置に通すことで排ガスの温度が低下する。このため、エネルギ変換装置は排ガス冷却装置の一種であるともいえる。排ガスの流路においてエネルギ変換装置をCO2分離膜30の上流側に配置し、CO2分離膜30に流入する排ガスの温度をエネルギ変換装置にて低下させて良い。
【0096】
図1に示す構造では貯留制御(
図2参照)が行われるとき、排ガスの一部はCO
2分離膜30を経由してからマフラ20に送られる。しかしながら、貯留制御が行われるとき、流路切替装置15を通過した排ガスを、まず分離前マフラ(不図示)に供給し、分離前マフラを経由した後の排ガスをCO
2分離膜30に供給する変形構成が採用されても良い。分離前マフラはマフラ20であっても良いし、車両1に対しマフラ20とは別に設置されたマフラであっても良い。当該変形構成では、CO
2分離膜30に流入する排ガスの温度を分離前マフラにより下げることができるため、熱によるCO
2分離膜30の劣化を抑制することができる。分離前マフラは上述の排ガス冷却装置の一種であると解しても良い。変形構成においても、CO
2分離膜30を通過したガスは分離ガスとして分離ガス路18を通じCO
2貯留装置40に送られる。CO
2分離膜30を通過しなかったガスは残ガスとして車両1に設置された排出口(マフラ20であり得る)から車外に排出される。
【0097】
本実施形態に係るCO2回収システムは、少なくとも制御装置100、CO2分離膜30、CO2貯留装置40及び流路切替装置15を備えて構成される。但し、車両1に搭載されるものとして上述した任意の部品は、CO2回収システムの構成要素に含まれ得る。
【0098】
CO2回収システム、又は、CO2回収システムにて具体化された本発明を、車載用途とは異なる任意の用途に適用することも可能である。
【0099】
車両1は内燃機関11を用いて発生した駆動力にて移動する移動体の例である。本発明において、移動体は車両に分類されないもの(例えばロボット、ドローン)であっても良い。
【0100】
本発明の実施形態にて述べた任意の方法をコンピュータに実行させるプログラム、及び、そのプログラムを記録した記録媒体であって且つコンピュータ読み取り可能な不揮発性の記録媒体は、本発明の実施形態の範囲に含まれる。本発明の実施形態における任意の処理は、半導体集積回路等のハードウェア、上記プログラムに相当するソフトウェア、又は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されて良い。ここにおけるソフトウェア及びハードウェアは夫々に複数あっても良い。
【0101】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
11 内燃機関
12 排気マニホールド
13、13a、13b 排気管
14 浄化装置
15 流路切替装置
15a、15b 電磁弁
16 貯留用接続路
17 排気用接続路
18 分離ガス路
19 残ガス排出路
20 マフラ
30 CO2分離膜
40 CO2貯留装置
100 制御装置
110 演算処理部
120 メモリ
200 車載センサ群
211 回転数センサ
212 車速センサ
213 ギアセンサ
214 アクセルセンサ
215 ブレーキセンサ
216 舵角センサ
F1 濃度判断部
F2 制御切替部
F3 通知処理部