(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022739
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両におけるCO2貯留用の選択制御装置及び選択制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240214BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F01N3/08 A ZAB
B01D53/92 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126043
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上出 英行
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】本城 匠
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB08
3G091BA13
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA20
4D002CA20
4D002EA01
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB20
(57)【要約】
【課題】CO
2を貯留するために必要なエネルギを抑制する。
【解決手段】車両に搭載された内燃機関からの排ガス中のCO
2を車両内のCO
2貯留装置に供給するときに選択処理を行う。CO
2貯留装置は各々にCO
2を貯留可能な複数の貯留セルを有する。複数の貯留セルの内の何れかである対象セルに対し排ガス中のCO
2が供給される。選択処理において各貯留セルのCO
2貯留状態に応じて対象セルを選択する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関からの排ガス中のCO2を前記車両内のCO2貯留装置に供給するときに選択処理を行う処理部を備え、
前記CO2貯留装置は各々にCO2を貯留可能な複数の貯留セルを有し、前記複数の貯留セルの内の何れかである対象セルに対し前記排ガス中のCO2が供給され、
前記処理部は、前記選択処理において各貯留セルのCO2貯留状態に応じて前記対象セルを選択する
、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項2】
前記複数の貯留セルは第1貯留セル及び第2貯留セルを含み、
前記処理部は、前記第1貯留セルが前記対象セルとして選択されている状態において前記第1貯留セルにおけるCO2の貯留量が前記第1貯留セルにおけるCO2の最大貯留量より小さいが前記第1貯留セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率が所定の基準貯留値を超えたとき、前記対象セルを前記第1貯留セルから前記第2貯留セルに切り替え、
前記第2貯留セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率は前記基準貯留値より小さい
、請求項1に記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記複数の貯留セルの夫々におけるCO2の貯留量又は貯留率が全て前記基準貯留値を超えたとき、所定の通知を通知受理者に対して行う
、請求項2に記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記複数の貯留セルの夫々におけるCO2の貯留量又は貯留率が全て前記基準貯留値を超えたとき、設定情報に基づき第1制御又は第2制御を実行し、前記第1制御では前記排ガス中のCO2の前記CO2貯留装置への供給を継続させる一方、前記第2制御では前記排ガス中のCO2の前記CO2貯留装置への供給を停止する
、請求項2に記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項5】
前記排ガス中のCO2を含む入力ガスの圧力がポンプにて調節された状態で前記入力ガスが前記対象セルに供給され、前記対象セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率の増大に伴って前記入力ガスの圧力及び前記ポンプの駆動に必要なエネルギは大きくなる
、請求項1~4の何れかに記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項6】
所定の回収機器に対し何れかの貯留セル内のCO2を放出する放出段階において、前記回収機器に対して前記複数の貯留セルの何れかである放出セルが連結されることで前記放出セル内のCO2が前記回収機器に放出され、
前記処理部は、前記放出段階において、各貯留セルのCO2貯留状態に応じて前記放出セルを選択する第2選択処理を実行する
、請求項1に記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項7】
前記複数の貯留セルは第1貯留セル及び第2貯留セルを含み、
前記第1貯留セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率が所定の基準貯留値より大きく、且つ、前記第2貯留セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率が前記基準貯留値より小さいとき、前記第2選択処理において、前記処理部は前記第1貯留セルを前記第2貯留セルよりも優先して前記放出セルに選択する
、請求項6に記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項8】
前記複数の貯留セルは第1貯留セル及び第2貯留セルを含み、
前記第1貯留セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率が前記第2貯留セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率より大きいとき、前記第2選択処理において、前記処理部は前記第1貯留セルを前記第2貯留セルよりも優先して前記放出セルに選択する
、請求項6に記載の、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置。
【請求項9】
請求項1~4及び6~8の何れかに記載の選択制御装置と、
前記CO2貯留装置と、を備えた
、車両におけるCO2回収システム。
【請求項10】
内燃機関からの排ガス中のCO2をCO2貯留装置に供給するときに選択工程を実行し、
前記CO2貯留装置は各々にCO2を貯留可能な複数の貯留セルを有し、前記複数の貯留セルの内の何れかである対象セルに対し前記排ガス中のCO2が供給され、
前記選択工程において、各貯留セルのCO2貯留状態に応じて前記対象セルを選択する
、車両におけるCO2貯留用の選択制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置及び選択制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関の作動により発生した排ガス中のCO2を、車外に排出せずに、車両内に設置されたCO2貯留装置に貯留する技術が研究されている(例えば下記特許文献1参照)。物理吸着又は化学吸着等を利用してCO2吸着剤にCO2を吸着させることによりCO2の貯留を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この際、CO
2吸着剤へのCO
2の吸着量が増えるほど、即ちCO
2貯留装置の総貯留量が増えるほど、CO
2貯留装置へ入力されるCO
2のガスの圧力をより高める必要がある。つまり、CO
2吸着剤へのCO
2の吸着量が少ない状態では低圧力での吸着が可能であるが、CO
2の吸着量が増すほど必要な圧力が高まる。必要な圧力の増大は、吸着に必要なエネルギを増大させる。このため、単体のCO
2貯留装置から成る参考構成において、
図17に示す如く、CO
2貯留装置の総貯留量が増えるに従い、単位量のCO
2を追加的に貯留させるために必要なエネルギが増大してゆく。必要エネルギの増大はエネルギ効率を悪化させる。
【0005】
本発明は、CO2を貯留するために必要なエネルギの抑制に寄与する、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置及び選択制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両におけるCO2貯留用の選択制御装置は、車両に搭載された内燃機関からの排ガス中のCO2を前記車両内のCO2貯留装置に供給するときに選択処理を行う処理部を備え、前記CO2貯留装置は各々にCO2を貯留可能な複数の貯留セルを有し、前記複数の貯留セルの内の何れかである対象セルに対し前記排ガス中のCO2が供給され、前記処理部は、前記選択処理において各貯留セルのCO2貯留状態に応じて前記対象セルを選択する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、CO2を貯留するために必要なエネルギの抑制に寄与する、車両におけるCO2貯留用の選択制御装置及び選択制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る車両の概略的な平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るCO
2貯留装置の構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係り、複数の貯留セルの概略的な外観斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係り、複数の貯留セルの概略的な平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係り、CO
2貯留装置内に設定される複数のスロット位置を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係り、制御装置の機能ブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係り、各貯留セルのCO
2貯留状態を示すテーブルデータの構造図である。
【
図9】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、新たに発生するCO
2を貯留するときのCO
2回収システムの動作フローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、貯留量と貯留に必要なエネルギとの関係を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、対象セルの順次切り替えにより、貯留に必要なエネルギが低く抑えられる様子を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、新たに発生するCO
2を貯留するときのCO
2回収システムの動作フローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、貯留率と貯留に必要なエネルギとの関係を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に属する第3実施例に係り、車両の概略的な平面図である。
【
図15】本発明の実施形態に属する第6実施例に係り、CO
2貯留装置が回収機器に接続される様子を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に属する第6実施例に係り、CO
2の放出段階におけるCO
2回収システムの動作フローチャートである。
【
図17】参考構成に係り、貯留量と貯留に必要なエネルギとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
図1は本実施形態に係る車両1の概略的な平面図である。車両1にはCO
2回収システムが搭載される。CO
2は二酸化炭素を指す。車両1は例えば路面上を走行可能な自動車であるが、車両1の種類は任意である。
【0011】
車両1には、内燃機関11、排気マニホールド12、排気管13、浄化装置14、分離ガス路18、残ガス排出路19、マフラ20、CO2分離膜30、CO2貯留装置40、ポンプ50及び制御装置100が設けられる。CO2回収システムでは、内燃機関11からの排ガス中のCO2をCO2貯留装置40にて貯留(換言すれば回収)することができる。以下、各部の構成及び機能を説明する。
【0012】
内燃機関11は、燃料を内部で燃焼させることによって車両1を駆動するための駆動力を発生させる。内燃機関11に加えて電動機(不図示)が車両1に設けられていて良い。この場合、内燃機関11と電動機を併用して車両1を駆動するための駆動力を発生させる。
【0013】
内燃機関11内での燃料の燃焼によって生じた排ガス(排気ガス)は排気マニホールド12を通じて排気管13に流入する。排気管13に浄化装置14が設けられる。排気管13は、内燃機関11と浄化装置14との間に設けられる排気管13aと、それ以外の排気管13bと、で構成される。排気管13aは排気マニホールド12を介して内燃機関11に連結される。内燃機関11から排出された排ガスが排気管13aの内部を通って浄化装置14に流れ込む。
【0014】
浄化装置14は自身に流入した排ガスを浄化する。具体的には当該浄化において、浄化装置14は、自身に流入した排ガス中のNOX(窒素酸化物)、HC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)等を除去する。浄化装置14は、NOX、HC及びCO等の除去に適した触媒( 例えば三元触媒、NOX吸蔵還元触媒)にて構成される。但し、除去すべき物質が完全に浄化装置14にて除去されるとは限らず、除去すべき物質の濃度等に依存して、除去すべき物質の幾らかは浄化装置14を通過し得る。
【0015】
浄化装置14による浄化後の排ガスは排気管13bの内部を通ってCO2分離膜30に供給される。CO2分離膜30は、自身に供給された排ガスの内、気体の二酸化炭素のみを選択的に通過させる膜である。CO2分離膜30を通過したガスは分離ガスとして分離ガス路18を通じCO2貯留装置40に送られる。CO2分離膜30を通過しなかったガスは残ガスとして残ガス排出路19に送られる。残ガス排出路19はマフラ20に連結されており、残ガスはマフラ20を介して車外に排出される。車外とは車両1の外部を指す。
【0016】
マフラ20は排ガスの排気口である。尚、残ガスは排ガスの一部である。マフラ20は残ガス排出路19内のガス(残ガス)における温度及び圧力を低下させて排気騒音を低減させる機能を持つ。
【0017】
CO2貯留装置40は、分離ガス路18に連結され、CO2分離膜30を通過した分離ガス中のCO2を捕捉して貯留する。CO2貯留装置40におけるCO2の捕捉及び貯留の方法として、公知の方法を含む任意の方法を利用することができる。例えば、CO2の捕捉及び貯留の方法として、物理吸着法、物理吸収法、化学吸収法又は深冷分離法を利用できる。一例として、物理吸着法を採用される場合のCO2貯留装置40の構造及び機能を説明する。この場合、CO2貯留装置40は、活性炭又はゼオライト等のCO2吸着剤と、CO2吸着剤を収容する容器と、を備える。CO2吸着剤に対しCO2を含んだガス(上述の分離ガス)を接触させることによりCO2をCO2吸着剤に吸着させることができる。
【0018】
尚、CO2分離膜30を通過した分離ガスの主成分はCO2であるが、CO2以外の成分も不純物として分離ガスに含まれ得る。CO2貯留装置40に送られた分離ガスの内、CO2貯留装置40にて捕捉及び貯留されなかったガス(上記不純物を含む)は、マフラ20又は図示されない排出口を介して車外に排出される。
【0019】
分離ガス路18に対してポンプ50が配置される。ポンプ50はCO2分離膜30とCO2貯留装置40との間に設けられ、制御装置100の制御の下、CO2分離膜30からCO2貯留装置40に供給される分離ガスの圧力を調節する。分離ガス路18を通じCO2分離膜30からCO2貯留装置40に供給される分離ガスを、以下では、入力ガスと称する。
【0020】
制御装置100はポンプ50の動作を制御することで入力ガスの圧力を制御する。入力ガスの圧力の制御を、以下、圧力制御と称する。圧力制御された入力ガスがCO2貯留装置40に供給される。入力ガスの圧力を検出する圧力センサ(不図示)が車両1内に設置されていて良く、制御装置100は当該圧力センサの検出結果に基づき入力ガスの圧力を所望圧力に制御できて良い。また、制御装置100は車両1内に形成された通信網を介してCO2貯留装置40に接続され、CO2貯留装置40の動作制御も行う(詳細は後述)。車両1内に形成された通信網はCAN(Controller Area Network)を含む。
【0021】
図2に示す如く、制御装置100は演算処理部110及びメモリ120を備える。演算処理部110は、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等を含む。制御装置100にて実行される任意の制御、動作及び処理は、演算処理部110にて実行される制御、動作及び処理であると解されて良い。演算処理部110においてMPUとGPUが一体に形成されていても良い(例えばMPUにGPUが内蔵されていても良い)。
【0022】
メモリ120は、ROM(Read only memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び、RAM(Random access memory)等の揮発性メモリを含む。メモリ120に格納されたプログラムを演算処理部110にて実行することで、制御装置100の各機能が実現されて良い。ここにおけるプログラムは複数のプログラムを含んでいて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが実行されることで、制御装置100の各機能が実現されても良い。制御装置100は1以上のECU(Electronic Control Unit)にて構成されていて良い。2以上のECUにおける2以上のMPUにより演算処理部110が構成されていても良い。
【0023】
図3に示す如く複数の貯留セル41と選択連結部42とがCO
2貯留装置40に設けられる。選択連結部42により複数の貯留セル41の何れかが分離ガス路18に連結される。各貯留セル41は、分離ガス路18に連結されたとき、圧力制御された入力ガスの供給を受けて当該入力ガス中のCO
2を捕捉し且つ貯留する。各貯留セル41においてCO
2の捕捉及び貯留の方法はCO
2貯留装置40に関連して上述した通りであり、公知の方法を含む任意の方法を利用することができる。ここでは具体例として各貯留セル41にて物理吸着法を採用されるものとする。この場合、各貯留セル41は、活性炭又はゼオライト等のCO
2吸着剤と、CO
2吸着剤を収容する容器と、を備える。各貯留セル41において、CO
2吸着剤に対しCO
2を含んだガスを接触させることによりCO
2をCO
2吸着剤に吸着させることができる。
【0024】
CO2貯留装置40に設けられる貯留セル41の個数は2以上であれば任意であるが、ここでは、CO2貯留装置40に計8つの貯留セル41が設けられていることを想定する。8つの貯留セル41を互いに区別する必要がある場合、8つの貯留セル41を貯留セル41[1]~41[8]と称する。iは任意の自然数を表す。貯留セル41[i]は第i番目の貯留セル41であり、この際、iは貯留セル41[i]のセル番号を表す。
【0025】
CO2貯留装置40への入力ガスは貯留セル41[1]~41[8]に対して同時に入力されるわけではない。演算処理部110は、貯留セル41[1]~41[8]の何れかを対象セルに選択する貯留用選択処理を実行し、その選択結果に基づき、対象セルを指定する対象セル指定信号をCO2貯留装置40に送信する。選択連結部42は、対象セル指定信号に基づき、対象セルに対して圧力制御された入力ガスを供給されるよう対象セルを分離ガス路18に連結させる。
【0026】
図4に貯留セル41[1]~41[8]の概略的な外観斜視図を示す。
図5に貯留セル41[1]~41[8]の回転軸の方向から見た貯留セル41[1]~41[8]の概略平面図を示す。
図6には各貯留セル41が配置されるスロット位置PP[1]~PP[8]が示される。ここでは例として、各貯留セル41が概略円筒形状の容器を有しているものとする。CO
2貯留装置40には、CO
2貯留装置40内で貯留セル41[1]~41[8]を支持する支持体42aが設けられる。支持体42aは、各容器の円筒の軸に平行な軸を回転軸42bとして回転駆動可能に構成される。各貯留セル41は回転軸42bを中心とする円周上に位置し、上記回転駆動により円周上をステップ移動する。これにより、貯留セル41[1]~41[8]は1つずつ、スロット位置PP[1]~PP[8]の何れかに配置される。
【0027】
ここでは、スロット位置PP[1]に配置された貯留セル41が対象セルとして機能して分離ガス路18に連結されるものとする。従って例えば、貯留セル41[1]が対象セルに選択された場合には、貯留セル41[1]がスロット位置PP[1]に配置されて分離ガス路18に連結され、貯留セル41[1]が圧力制御された入力ガスの供給を受ける。同様に例えば、貯留セル41[2]が対象セルに選択された場合には、貯留セル41[2]がスロット位置PP[1]に配置されて分離ガス路18に連結され、貯留セル41[2]が圧力制御された入力ガスの供給を受ける。貯留セル41[3]等が対象セルに選択された場合も同様である。
【0028】
図4~
図6の構成例において、選択連結部42は、支持体42aと、回転軸42bと、対象セル指定信号に基づき支持体42aを回転駆動させる回転駆動部(不図示)と、を含んで構成される。対象セル指定信号に基づき支持体42aを回転駆動させることで、対象セル指定信号にて指定された対象セルがスロット位置PP[1]に配置されて分離ガス路18に連結される。
【0029】
尚、
図4~
図6の構成は例に過ぎず、貯留用選択処理にて対象セルに選択された貯留セル41が分離ガス路18に連結されて入力ガスの供給を受ける限り、CO
2貯留装置40の構造及び選択連結部42の構造は任意である。例えば、選択連結部42において貯留セル41[1]~41[8]と分離ガス路18との間に個別に電磁弁(不図示)を設けておくようにしても良い。この場合、選択連結部42において、対象セルとして選択された貯留セル41に対応する電磁弁のみを開状態にすることで、分離ガス路18からの入力ガスを開状態の電磁弁を通じ対象セルに供給するようにしても良い。
【0030】
図7に制御装置100の機能ブロック図を示す。制御装置100には機能ブロックF1~F7が設けられる。演算処理部110において、単一のプログラム又は複数のプログラムが実行されることで機能ブロックF1~F7が実現されて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが個別に実行されることで任意の複数の機能ブロックが実現されて良い。制御装置100において、任意の機能ブロックは、他の任意の機能ブロックが認識する情報を自由に参照できる。
【0031】
機能ブロックF1、F2、F3、F4、F5、F6、F7は、夫々、貯留状態検出部、対象セル選択部、圧力制御部、通知処理部、流路制御部、放出管理部、放出セル選択部である。
【0032】
任意の1つの貯留セル41に関し、当該貯留セル41に現在貯留されているCO2の量を、CO2の貯留量と称する。任意の1つの貯留セル41に関し、当該貯留セル41が貯留可能なCO2の最大量を、CO2の最大貯留量と称する。任意の1つの貯留セル41に関し、CO2の最大貯留量に対するCO2の貯留量の割合をCO2の貯留率と称する。各貯留セル41におけるCO2の最大貯留量は既知データとして貯留状態検出部F1に予め与えられる。
【0033】
貯留状態検出部F1は貯留セル41[1]~41[8]の夫々のCO2貯留状態を検出する。貯留セル41[i]のCO2貯留状態とは、貯留セル41[i]におけるCO2の貯留量、又は、貯留セル41[i]におけるCO2の貯留率である。貯留状態検出部F1は貯留セル41[i]におけるCO2の貯留量及び貯留率の双方を検出して良い。貯留セル41[i]に対する説明は貯留セル41[1]~41[8]の全てに適用される。尚、CO2貯留状態、CO2の貯留量、CO2の最大貯留量、CO2の貯留率は、以下、夫々、貯留状態、貯留量、最大貯留量、貯留率と略記され得る。
【0034】
貯留状態検出部F1は公知の任意の方法を用いて各貯留セル41のCO2貯留状態を検出できる。例えば、貯留状態認識部F1は、貯留セル41[i]が対象セルに選択されているときにおける流量センサ(不図示)の流量検出値に基づき、貯留セル41[i]のCO2貯留状態(貯留量又は貯留率)を検出できる。流量センサは、CO2分離膜30から分離カス路18を通じて対象セルに向かう入力ガスの流量を検出するセンサであって良い。或いは、流量センサは、排気管13a又は13bを流れる排気ガスの流量を検出するセンサであって良い。この際、内燃機関11の定常動作時においては、内燃機関11からの排気ガスに含まれるCO2の濃度が略一定であるという知見を利用する。尚、各貯留セル41におけるCO2の貯留量及びCO2の貯留率の初期値はゼロである。貯留状態検出部F1は、貯留セル41[i]が対象セルであるとき、初期値を基準にして流量センサの流量検出値を積算することで各時刻における貯留セル41[i]のCO2貯留状態を検出及び把握する。
【0035】
図8に示す如く、貯留セル41[i]におけるCO
2の貯留量を記号“V[i]”にて表し、且つ、貯留セル41[i]におけるCO
2の貯留率を記号“R[i]”にて表す。貯留状態検出部F1は貯留量V[1]~V[8]及び貯留率R[1]~R[8]を格納したテーブルデータDDを作成してメモリ120に保持させておいて良い。
【0036】
対象セル選択部F2は上述の貯留用選択処理を行う。この際、対象セル選択部F2は各貯留セル41のCO2貯留状態に応じて対象セルを選択する(詳細は後述)。
【0037】
圧力制御部F3は、対象セルのCO2貯留状態に応じて圧力制御を行う。従って例えば、貯留セル41[1]が対象セルであるとき、圧力制御部F3は貯留セル41[1]のCO2貯留状態に応じて圧力制御(貯留セル41[1]に供給される入力ガスの圧力制御)を行う。同様に例えば、貯留セル41[2]が対象セルであるとき、圧力制御部F3は貯留セル41[2]のCO2貯留状態に応じて圧力制御(貯留セル41[2]に供給される入力ガスの圧力制御)を行う。圧力制御において、圧力制御部F3は、対象セルのCO2貯留状態に基づき、対象セルに対し新たにCO2を貯留させるために必要な入力ガスの圧力を特定し、必要な圧力が得られるようポンプ50を駆動制御する。
【0038】
圧力制御により、入力ガスの圧力がポンプ50にて調節された状態で入力ガスが対象セルに供給される。この際、対象セルに対し新たにCO2を貯留させるために必要な入力ガスの圧力は、対象セルにおけるCO2の貯留量又は貯留率の増大に伴って大きくなる。入力ガスの圧力の増大はポンプ50の駆動に必要なエネルギを増大させる。
【0039】
必要エネルギの増大はエネルギ効率を悪化させる。エネルギ効率の悪化は望ましくない。燃料機関11に投入される燃料と同じ燃料を用いてポンプ50を駆動させても良く、この場合、入力ガスの必要圧力の増大は燃費の低下に直結する。本実施形態では、入力ガスの必要圧力が高まり過ぎることが防止されるよう、CO2貯留装置40に複数の貯留セル41を設けて、入力ガスの供給先の貯留セル41を必要に応じて切り替えてゆく。
【0040】
以下、複数の実施例の中で、CO2回収システムに関わる幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。機能ブロックF4~F7の機能については後の実施例の中で説明される。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0041】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図9は、新たに発生するCO
2を貯留するときのCO
2回収システムの動作フローチャートである。
図9を参照して当該動作を説明する。初期状態において貯留セル41[1]~41[8]のCO
2貯留量は全てゼロである。初期状態においてステップS11に至るものとする。ステップS11において、内燃機関11及び制御装置100が作動開始する。ステップS11の段階において、任意の1つの貯留セル41が対象セルとして選択されて分離ガス路18に連結される。ここでは、ステップS11において、初期状態における対象セルとして貯留セル41[1]が選択されて分離ガス路18に連結されるものとする。また、説明の具体化及び明確化のため、変数jを導入する。変数jは、現在、対象セルとして選択されている貯留セル41のセル番号を表す。貯留セル41[1]~41[8]のセル番号は夫々1~8である。故に、ステップS11の段階にて“j=1”である。
【0042】
ステップS11以降、内燃機関11から排ガスが継続的に排出される。内燃機関11からの排ガスに基づく圧力制御された入力ガスは、対象セルである貯留セル41[j]に供給される。ステップS11に続くステップS12では、貯留セル41[j]による入力ガス中のCO2の貯留が開始される。ステップS12の後、ステップS13に進む。
【0043】
ステップS13において、貯留状態検出部F1は、貯留セル41[j]におけるCO
2の貯留量V[j]を所定の基準貯留量V
REFと比較する。続くステップS14にて、その比較結果がチェックされる。“V[j]>V
REF”が成立する場合(ステップS14のY)、ステップS15に進み、“V[j]>V
REF”が成立しない場合(ステップS14のN)、ステップS13に戻る。尚、“V[j]>V
REF”は“V[j]≧V
REF”に読み替えられても良い。基準貯留量V
REFは正の値を有し且つ各貯留セル41におけるCO
2の最大貯留量よりも小さい。貯留量V[j]の増大過程において、貯留量V[j]が或る一定量を超える近辺でポンプ50の駆動に必要なエネルギが急激に増大する(
図10参照)。当該一定量付近の量(例えば当該一定量より若干小さな量)を基準貯留量V
REFとして予め設定しておくと良い。
【0044】
ステップS15において、対象セル選択部F2は、基準貯留量VREF以下の貯留量を有する貯留セル41がCO2貯留装置40に存在するか判断する。基準貯留量VREF以下の貯留量を有する貯留セル41がCO2貯留装置40に存在する場合(ステップS15のY)、ステップS16に進む。基準貯留量VREF以下の貯留量を有する貯留セル41がCO2貯留装置40に存在しない場合(ステップS15のN)、ステップS17に進む。
【0045】
ステップS16において、対象セル選択部F2は貯留用選択処理を実行することにより、新たな対象セルを選択する。ステップS16の貯留用選択処理では各貯留セル41におけるCO2の貯留量を参照し、基準貯留量VREF以下の貯留量を有する貯留セル41を新たな対象セルとして選択する。基準貯留量VREF以下の貯留量を有する貯留セル41が複数存在する場合、その複数の貯留セル41の内、任意の貯留セル41(例えば最も小さなセル番号に対応する貯留セル41)を新たな対象セルとして選択して良い。ステップS16では、新たに対象セルとして選択された貯留セル41のセル番号が変数jに代入される。ステップS16の後、ステップS12に戻り、ステップS12以降の処理が繰り返される。
【0046】
初期状態を起点に初回にステップS16に至った場合には、貯留量V[1]~V[8]の内、貯留量V[1]のみが基準貯留量VREFを超えており、貯留量V[2]~V[8]は全て基準貯留量VREF以下である。このため、初回のステップS16では、貯留セル41[2]~41[8]の何れかが新たな対象セルとして選択される。典型的な例としては、初回のステップS16にて貯留セル41[2]が新たな対象セルとして選択される。その後、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目、第6回目、第7回目のステップS16にて、夫々、貯留セル41[3]、41[4]、41[5]、41[6]、41[7]、41[8]が新たな対象セルとして選択される。第7回目のステップS16にて貯留セル41[8]が新たな対象セルとして選択された後、ステップS15に至ったとき、貯留量V[1]~V[8]は全て基準貯留量VREFより大きいのでステップS17に進む。
【0047】
ステップS17において通知処理部F4は第1通知処理を行う。第1通知処理において、通知処理部F4は各貯留セル41のCO2貯留状態に関わる所定の通知を通知受理者に対して行う。通知受理者は基本的には車両1の運転手であるが、車両1の運転手以外の乗員又は管理者等であっても良い(後述の他の実施例でも同様)。
【0048】
後の実施例にて説明されるが、CO2貯留装置40をガソリンスタンド等に設置された回収機器に接続することにより、各貯留セル41に貯留されたCO2を回収機器へと放出させることができる。第1通知処理における通知は、当該放出を促す放出勧告通知であって良い。
【0049】
第1通知処理における通知は、表示装置での表示により実現されて良い。具体的には例えば、第1通知処理において、通知処理部F4は車両1の運転席付近に設置された表示装置(不図示)に所定のメッセージを含む通知用画像を表示させる表示制御を行う。通知用画像におけるメッセージは、例えば「CO2貯留量が基準に達しました。所定の回収スポットにてCO2を放出して下さい」といった文言を含む。通知用画像が表示される表示装置は、通知受理者が所持する携帯端末(例えば車両1の運転手が所持するスマートホン)の表示装置であっても良い。第1通知処理における通知は、表示装置での表示に加えて又は表示装置での表示に代えて、音声出力による通知を含んでいても良い。
【0050】
このように、対象セル選択部F2は、貯留用選択処理において各貯留セル41のCO2貯留状態に応じて対象セルを選択する。
【0051】
これにより、貯留に必要なエネルギが大きくなりすぎないように対象セルを選択することができ、以って、貯留に関わるエネルギ効率の向上が図られる。
【0052】
貯留セル41[iA]が対象セルとして選択されている状態を想定する。この状態において、貯留セル41[iA]におけるCO2の貯留量が基準貯留量VREFを超えたとき、対象セル選択部F2は対象セルを貯留セル41[iA]から貯留セル41[iB]に切り替える。貯留セル41[iB]におけるCO2の貯留量は基準貯留量VREFより小さいものとする。上述したように、基準貯留量VREFは貯留セル41[iA]におけるCO2の最大貯留量よりも小さい。このため、貯留セル41[iA]におけるCO2の貯留量が当該最大貯留量より小さいが貯留セル41[iA]におけるCO2の貯留量が基準貯留量VREFを超えたときに対象セルの上記切り替えが行われることになる。つまり、貯留が限界に達するのを待ってから切り替えを行う方法とは相違する。iA及びiBは互いに異なる8以下の自然数である。
【0053】
貯留セル41[i
A]におけるCO
2の貯留量が基準貯留量V
REFを超えた後、貯留セル41[i
A]を対象セルとして設定し続けると、CO
2の単位量当たりの貯留に関わる必要エネルギが増大してゆく。上述のような切り替えを行うことで、貯留に必要なエネルギが大きくなりすぎる前に対象セルが切り替えられるため、貯留に関わるエネルギ効率の向上が図られる。
図11に、全貯留セル41のCO
2の総貯留量と必要エネルギとの関係を概念的に示す。対象セルの切り替えにより必要エネルギの顕著な増大は抑制される。
【0054】
また通知処理部F4は、貯留セル41[1]~41[8]の夫々におけるCO2の貯留量が全て基準貯留量VREFを超えたとき、第1通知処理にて所定の通知を通知受理者に対して行う(ステップS17)。
【0055】
これにより、CO2を放出すべき時期を運転手に知らせることができ、適正な時期におけるCO2の実際の放出が促進される。
【0056】
尚、ステップS13及びS14において、演算処理部110(例えば対象セル選択部F2又は圧力制御部F3)は入力ガスの圧力を監視し、入力ガスの圧力が所定の基準圧力に達したときに、ステップS15への移行を発生させるようにしても良い。入力ガスの圧力が所定の基準圧力に達したとき、貯留状態検出部F1にて対象セルにおけるCO2の貯留量が基準貯留量VREFが超えたと推定されて良い。
【0057】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第1実施例では、CO
2貯留状態を表す指標としてCO
2の貯留量を採用しているが、代わりにCO
2の貯留率を採用するにしても良い。即ち、
図9のフローチャートを
図12のフローチャートに変形しても良い。
図12のフローチャートはステップS21~S27の処理から成る。ステップS21~S27の処理は、貯留量が貯留率に変更される点を除けばステップS11~S17の処理と同様であり、第1実施例の記載が第2実施例にも適用される。この適用の際、第1実施例における貯留量、基準貯留量、V[1]~V[8]、V[j]、V
REFを、第2実施例では、貯留率、基準貯留率、R[1]~R[8]、R[j]、R
REFに読み替えれば足る。
【0058】
従って、貯留セル41[j]による入力ガス中のCO
2の貯留開始後(ステップS22)、ステップS23にて貯留状態検出部F1は貯留セル41[j]におけるCO
2の貯留率R[j]を所定の基準貯留率R
REFと比較する。そして、“R[j]>R
REF”が成立する場合(ステップS24のY)、ステップS25に進み、“R[j]>R
REF”が成立しない場合(ステップS24のN)、ステップS23に戻る。尚、“R[j]>R
REF”は“R[j]≧R
REF”に読み替えられても良い。基準貯留率R
REFは1以下の正の値を有する。貯留率R[j]の増大過程において、貯留率R[j]が或る一定値を超える近辺でポンプ50の駆動に必要なエネルギが急激に増大する(
図13参照)。当該一定値付近の比率(例えば当該一定値より若干小さな比率)を基準貯留率R
REFとして予め設定しておくと良い。
【0059】
ステップS25において、対象セル選択部F2は、基準貯留率RREF以下の貯留率を有する貯留セル41がCO2貯留装置40に存在するか判断する。基準貯留率RREF以下の貯留率を有する貯留セル41がCO2貯留装置40に存在する場合(ステップS25のY)、ステップS26に進む。基準貯留率RREF以下の貯留率を有する貯留セル41がCO2貯留装置40に存在しない場合(ステップS25のN)、ステップS27に進む。
【0060】
ステップS26において、対象セル選択部F2は貯留用選択処理を実行することにより、新たな対象セルを選択する。ステップS26の貯留用選択処理では各貯留セル41におけるCO2の貯留率を参照し、基準貯留率RREF以下の貯留率を有する貯留セル41を新たな対象セルとして選択する。基準貯留率RREF以下の貯留率を有する貯留セル41が複数存在する場合、その複数の貯留セル41の内、任意の貯留セル41(例えば最も小さなセル番号に対応する貯留セル41)を新たな対象セルとして選択して良い。ステップS26では、新たに対象セルとして選択された貯留セル41のセル番号が変数jに代入される。ステップS26の後、ステップS22に戻り、ステップS22以降の処理が繰り返される。
【0061】
貯留率R[1]~R[8]が全て基準貯留率RREFより大きい状態でステップS25に至るとステップS27に進む。ステップS27にて実行される第1通知処理は、ステップS17にて実行される第1通知処理と同じである。
【0062】
ステップS23及びS24において、演算処理部110(例えば対象セル選択部F2又は圧力制御部F3)は入力ガスの圧力を監視し、入力ガスの圧力が所定の基準圧力に達したときに、ステップS25への移行を発生させるようにしても良い。入力ガスの圧力が所定の基準圧力に達したとき、貯留状態検出部F1にて対象セルにおけるCO2の貯留率が基準貯留率RREFが超えたと推定されて良い。
【0063】
以下、基準貯留量VREF及び基準貯留率RREFの何れかを表す値を基準貯留値と称する。各貯留セル41の貯留量と比較される基準貯留値は基準貯留量VREFであり、各貯留セル41の貯留率と比較される基準貯留値は基準貯留率RREFである。
【0064】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。
図14に示す如く、車両1に対し、流路切替装置15、貯留量接続路16及び排気用接続路17が追加設置されて良い。
【0065】
第3実施例において、浄化装置14による浄化後の排ガスは排気管13bの内部を通って流路切替装置15に流れ込む。流路切替装置15に対して貯留用接続路16及び排気用接続路17が連結される。流路切替装置15は、排気管13bを通じて流れ込む排ガスを、流路制御部F5(
図7参照)の制御の下で、貯留用接続路16及び排気用接続路17の何れか一方に送り出す。流路制御部F5は以下の貯留制御と直接排出制御を切り替え実行できる。
【0066】
貯留制御は、排気管13bを通じて流路切替装置15に流れ込む排ガスを流路切替装置15から貯留用接続路16に送り出す制御である。貯留用接続路16はCO2分離膜30に連結される。貯留用接続路16は送られた排ガスはCO2分離膜30に供給される。このため、貯留制御が行われるときには、上述したように、排ガス中のCO2がCO2貯留装置40に供給されて排ガス中のCO2が対象セルにて捕捉及び貯留される。
【0067】
直接排出制御は、排気管13bを通じて流路切替装置15に流れ込む排ガスを流路切替装置15から排気用接続路17に送り出す制御である。直接排出制御において、流路切替装置15から排気用接続路17に送り出された排ガスは、CO2分離膜30を経由することなくマフラ20を介して車外に排出される。従って、直接排出制御が行われるとき、CO2貯留装置40に対する排ガス中のCO2の供給が停止される。尚、第1及び第2実施例において、対象セルが貯留セル41[iA]から貯留セル41[iB]に切り替えられるとき、一時的に直接排出制御を行って良い。即ち、当該切り替えの過程において、貯留セル41[iA]及び分離カス路18間の連結が解消されてから貯留セル41[iB]及び分離カス路18間の連結が確立されるまで直接排出制御を行って良い。
【0068】
第3実施例においてマフラ20は排気用接続路17及び残ガス排出路19に連結される。マフラ20は排気用接続路17内の排ガス又は残ガス排出路19内の残ガスにおける温度及び圧力を低下させて排気騒音を低減させる機能を持つ。
【0069】
流路切替装置15は三方性の電磁弁であって良い。流路制御部F5は、車両1の運転手から与えられた指示等に基づき貯留制御及び直接排出制御を切り替え実行できて良い。
【0070】
特に、貯留量V[1]~V[8]が全て基準貯留量VREFを超えている又は貯留率R[1]~R[8]が全て基準貯留率RREFを超えている状態(以下、重貯留状態と称する)において、流路制御部F5は以下のように動作して良い。即ち、重貯留状態において、流路制御部F5は流路設定情報に基づき貯留制御又は直接排出制御を実行して良い。流路設定情報は、重貯留状態において貯留制御及び直接排出制御の何れを実行するかを指定する情報である。
【0071】
流路設定情報は、制御装置100及びユーザ間のマンマシンインターフェースを通じ、ユーザから制御装置100に対して与えられる。つまり、ユーザは、重貯留状態に達したとき、貯留制御を採用して新たに発生するCO2の貯留を継続するか、直接排出制御を採用してCO2を車外に排出させるかを、選択指定することができる。ユーザとは制御装置100又は車両1のユーザであり、典型的には車両1の運転手であるが、それ以外の人物であり得る。
【0072】
重貯留状態にて貯留制御が実行される場合には、上述の必要エネルギの増大が生じるものの、新たに発生するCO2を限界まで各貯留セル41に貯留させ続けることができる。ステップS17又はS27の後、貯留制御が実行される場合には、各貯留セル41の貯留量が最大貯留量に達するまで対象セルを順次切り替えてゆけば良い。重貯留状態にて直接排出制御が実行される場合には、新たに発生するCO2が車外に排出されるものの、上述の必要エネルギの増大に伴うエネルギ効率の低下を抑制することができる。
【0073】
重貯留状態における貯留制御及び直接排出制御は夫々にメリット及びデメリットを有する。本実施例によれば、ユーザの希望に合わせて重貯留状態にて貯留制御及び直接排出制御の何れを採用するかを決定でき、利便性が高まる又は高い満足度をユーザに与えることができる。
【0074】
尚、通知処理部F4は、現在、貯留制御又は直接排出制御の何れが行われているかを示す通知を通知受理者(主として車両1の運転手を想定)に行っても良い。ここにおける通知は、車両1の運転席付近に設置された表示装置(不図示)での表示により実現されて良く、音声出力による通知を含んでいても良い。
【0075】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第1~第3実施例において、通知処理部F4は任意のタイミングでCO2貯留装置40のCO2貯留状態を通知受理者に通知する状態通知処理を行って良い。状態通知処理における通知は、表示装置での表示による通知及び音声出力による通知の内、少なくとも一方を含む。ここにおける表示装置は第1実施例に示したものと同じである。
【0076】
状態通知処理で通知されるCO2貯留装置40のCO2貯留状態は、各貯留セル41の貯留量及び貯留率、並びに、CO2貯留装置40の貯留量及び貯留率の内、全部又は一部を含む。CO2貯留装置40の貯留量とは全貯留セル41の貯留量の総和である。CO2貯留装置40の貯留率とは、全貯留セル41の最大貯留量の総和に対する全貯留セル41の貯留量の総和の割合である。
【0077】
例えば、
図9のステップS11の後、ステップS17に至る前の任意のタイミングにおいて状態通知処理を行って良い。同様に例えば、
図12のステップS21の後、ステップS27に至る前の任意のタイミングにおいて状態通知処理を行って良い。状態通知処理により、CO
2貯留装置40にて現在、どの程度のCO
2が貯留されているかを通知受理者に知らせることができる。
【0078】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。基準貯留量VREFより小さな貯留量を有する貯留セル41又は基準貯留率RREFより小さな貯留率を有する貯留セル41は、対象セルの候補として機能する。対象セルの候補を、以下、貯留候補セルと称する。
【0079】
今、
図9又は
図12のフローチャートにおいて、“j=1”であるときにステップS15又はS25に進んだことを想定する。そして、ステップS15又はS25において、貯留セル41[2]~41[8]が貯留候補セルであったとする。
【0080】
この場合、対象セル選択部F2は、ステップS16又はS26の貯留用選択処理において、各貯留候補セルの製造年月日に基づき、何れかの貯留候補セルを対象セルとして選択して良い。この際、貯留セル41[2]~41[8]の内、最も遅い日付に製造された貯留セル41を対象セルとして選択することができる。各貯留候補セルの製造年月日は既知情報として対象セル選択部F2に予め与えられているものとする。
【0081】
或いは、対象セル選択部F2は、ステップS16又はS26の貯留用選択処理において、各貯留候補セルの履歴使用回数に基づき、何れかの貯留候補セルを対象セルとして選択して良い。或る貯留候補セルの履歴使用回数とは、過去において当該貯留候補セルが対象セルとして選択された回数である。対象セル選択部F2は、貯留セル41ごとに使用カウント値を保持し、貯留セル41[i]を対象セルとして選択するごとに貯留セル41[i]の使用カウント値を1だけ増大させる。そうすると、貯留セル41[i]の使用カウント値は、貯留セル41[i]が対象セルとして選択された回数(即ち履歴使用回数)を指し示す。貯留セル41[2]~41[8]が貯留候補セルであるとき、対象セル選択部F2は、貯留セル41[2]~41[8]の内、最も小さな使用カウント値に対応する貯留セル41を対象セルとして選択することができる。
【0082】
最も遅い日付に製造された貯留セル41又は履歴使用回数(使用カウント値)が最小の貯留セル41は、他の貯留セル41よりも劣化が進んでおらず、CO2の貯留に要するエネルギが少ないと予想される。このため、製造年月日又は履歴使用回数に基づき対象セルを選択することで、CO2の貯留に関わる必要エネルギを極力抑えることが可能となる。
【0083】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。
図15を参照する。
図15にはCO
2貯留装置40が回収機器80に接続される様子が示される。ガソリンスタンド又は車庫など、任意の地点に回収機器80が設置される。CO
2貯留装置40が回収機器80に接続された状態において、何れかの貯留セル41内のCO
2が回収機器80に放出される。
【0084】
何れかの貯留セル41内のCO
2が回収機器80に放出される状態又は段階を、放出状態又は放出段階と称する。回収機器80には放出用配管81が接続される。放出段階(放出状態)では、何れかの貯留セル41である放出セルが放出用配管81を通じて回収機器80に連結されることで、放出セルに貯留されているCO
2が放出用配管81を通じて回収機器80に放出される。放出段階において、放出セル選択部F7(
図7参照)は貯留セル41[1]~41[8]の中から放出セルを選択する放出用選択処理を行う。
【0085】
図16を参照して、放出段階に関わるCO
2回収システムの動作の流れを説明する。まず、作業者又はロボット等がCO
2貯留装置40を放出用配管81を通じて回収機器80に接続(連結)する。ステップS61において、放出管理部F6はCO
2貯留装置40が回収機器80に接続されたかを確認し、当該確認がとれた後にステップS62への移行を許可する。接続確認方法は任意であり、それらの接続の有無を峻別可能なセンサ(不図示)を用いれば良い。
【0086】
ステップS62において放出用選択処理が行われる。放出用選択処理において、放出セル選択部F7は各貯留セル41のCO2貯留状態に応じて放出セルを選択する。これにより、CO2の貯留量又は貯留率が大きいものから優先的にCO2を放出させるといったことが可能となる。結果、CO2の新たな貯留を低いエネルギで行い得る状態に、なるだけ短時間で復帰させることができる。
【0087】
所定の下限閾量VLを超える貯留量を有する貯留セル41又は所定の下限閾率RLを超える貯留率を有する貯留セル41は、放出セルの候補となる。放出セルの候補を、以下、放出候補セルと称する。貯留セル41[1]~41[8]が放出候補セルであると想定して、放出用選択処理を説明する。放出用選択処理では放出候補セルの中から(ここでは貯留セル41[1]~41[8]の中から)放出セルを選択する。
【0088】
放出用選択処理は第1の放出用選択処理であって良い。第1の放出用選択処理において、放出セル選択部F7は、貯留量V[1]~V[8]を所定の基準貯留量VREFと比較し、比較結果に基づき放出セルを選択する。この際、基準貯留量VREFより大きな貯留量を有する貯留セル41を、基準貯留量VREFより小さな貯留量を有する貯留セル41よりも優先して放出セルに選択する。このため例えば、貯留量V[1]~V[8]の内、貯留量V[1]が基準貯留量VREFより大きく且つ貯留量V[2]~V[8]が基準貯留量VREFより小さいならば、貯留セル41[1]を放出セルに選択する。
【0089】
放出用選択処理は第2の放出用選択処理であって良い。第2の放出用選択処理において、放出セル選択部F7は、貯留率R[1]~R[8]を所定の基準貯留率RREFと比較し、比較結果に基づき放出セルを選択する。この際、基準貯留率RREFより大きな貯留率を有する貯留セル41を、基準貯留率RREFより小さな貯留率を有する貯留セル41よりも優先的に放出セルに選択する。このため例えば、貯留率R[1]~R[8]の内、貯留率R[1]が基準貯留率RREFより大きく且つ貯留率R[2]~R[8]が基準貯留率RREFより小さいならば、貯留セル41[1]を放出セルに選択する。
【0090】
放出用選択処理は第3の放出用選択処理であって良い。第3の放出用選択処理において、放出セル選択部F7は、貯留量V[1]~V[8]を互いに比較し、最大の貯留量を有する貯留セル41を他の貯留セル41よりも優先して放出セルに選択する。このため例えば、貯留量V[1]~V[8]の内、貯留量V[1]が最大であれば、貯留セル41[1]を放出セルに選択する。第1の放出用選択処理と第3の放出用選択処理を組み合わせ可能である。従って例えば、貯留量V[1]~V[8]の内、貯留量V[1]~V[4]のみが基準貯留量VREFより大きいとき、貯留セル41[1]~41[4]の内、最大の貯留量を有する貯留セル41を他の貯留セル41よりも優先して放出セルに選択することができる。
【0091】
放出用選択処理は第4の放出用選択処理であって良い。第4の放出用選択処理において、放出セル選択部F7は、貯留率R[1]~R[8]を互いに比較し、最大の貯留率を有する貯留セル41を他の貯留セル41よりも優先して放出セルに選択する。このため例えば、貯留率R[1]~R[8]の内、貯留率R[1]が最大であれば、貯留セル41[1]を放出セルに選択する。第2の放出用選択処理と第4の放出用選択処理を組み合わせ可能である。従って例えば、貯留率R[1]~R[8]の内、貯留率R[1]~R[4]のみが基準貯留率RREFより大きいとき、貯留セル41[1]~41[4]の内、最大の貯留率を有する貯留セル41を他の貯留セル41よりも優先して放出セルに選択することができる。
【0092】
第1、第2、第3又は第4の放出用選択処理により、CO2の貯留量又は貯留率が基準貯留値(VREF又はRREF)を超えるものから、又は、CO2の貯留量又は貯留率が大きいものから優先的にCO2を放出させることができる。結果、CO2の新たな貯留を低いエネルギで行い得る状態に、なるだけ短時間で復帰させることができる。
【0093】
ステップS62にて放出セルが選択されるとステップS63に進む。ステップS63において、放出管理部F6は放出セルとして選択された貯留セル41を放出用配管81を通じて回収機器80に連結させる。放出セルと回収機器80との連結において、放出セルから放出されるCO2が放出用配管81及び回収機器80の外部に漏れることが無いよう、気密性が保たれる。ステップS63において、放出セルと回収機器80とが連結されると、放出セルから回収機器80に向けたCO2の放出が開始される。
【0094】
放出管理部F6は上述の選択連結部42(
図3参照)を用いて放出セル及び放出用配管81間の接続を確立し、これによって放出セル及び回収機器80間の連結を実現して良い。ここでは、スロット位置PP[5]に配置された貯留セル41が放出セルとして機能して放出用配管81に接続(連結)されるものとする(
図6参照)。従って例えば、貯留セル41[1]が放出セルに選択された場合には、貯留セル41[1]がスロット位置PP[5]に配置されて放出用配管81を通じて回収機器80に連結される。同様に例えば、貯留セル41[2]が放出セルに選択された場合には、貯留セル41[2]がスロット位置PP[5]に配置されて放出用配管81を通じて回収機器80に連結される。貯留セル41[3]等が放出セルに選択された場合も同様である。
【0095】
ステップS63の後、ステップS64に進む。放出セルから回収機器80に向かうCO
2の流量を検出する流量センサ(不図示)の検出結果に基づき、貯留状態検出部F1は、現時点の放出セルの貯留量及び貯留率を検出する。ここでの検出結果に基づき、貯留状態検出部F1はテーブルデータDD(
図8参照)を逐次更新してゆく。ステップS64において、放出管理部F6は、放出セルの貯留量又は貯留率が所定の下限閾値以下であるかを判断する。貯留量と比較される下限閾値は下限閾量V
Lであり、貯留率と比較される下限閾値は下限閾率R
Lである。下限閾量V
Lは基準貯留量V
REFよりも十分に小さく、下限閾率R
Lは基準貯留率R
REFよりも十分に小さい。
【0096】
放出セルの貯留量又は貯留率が所定の下限閾値以下であるとき(ステップS64のY)ステップS65に進み、そうでないとき(ステップS64のN)ステップS64の処理が繰り返される。従って、放出セルの貯留量が下限閾量VL以下にまで低下したこと又は放出セルの貯留率が下限閾率RL以下にまで低下したことを契機に、ステップS65に進む。
【0097】
ステップS65において、放出管理部F6は、現時点のテーブルデータDDに基づき、下限閾値を超える貯留量又は貯留率を有する貯留セル41が存在するかを判断する。即ち、放出管理部F6は放出候補セルが存在するかを判断する。上述したように、放出候補セルは、下限閾量V
Lを超える貯留量を有する貯留セル41又は下限閾率R
Lを超える貯留率を有する貯留セル41である。
図16における一連の処理の中で、放出セルに選択済みの貯留セル41は、ステップS65にて放出候補セルにならない。
【0098】
ステップS65において放出候補セルが存在する場合には(ステップS65のY)、ステップS62に戻ってステップS62以降の処理を繰り返す。ステップS65において放出候補セルが存在しない場合には(ステップS65のN)、ステップS66に進む。従って例えば、全貯留セル41が十分に高い貯留量及び貯留率を有する状態でステップS61からの処理が開始された場合には、ステップS62~S65の処理が8回分実行されてからステップS66に進むことになる。
【0099】
ステップS66において通知処理部F4は第2通知処理を行う。第2通知処理において、通知処理部F4は各貯留セル41のCO2貯留状態に関わる所定の通知を行う。第2通知処理における通知は、各貯留セル41からのCO2の放出が完了した旨を示す放出完了通知であって良い。放出完了通知によりCO2の放出完了時期を通知受理者(主として運転手)に知らせることができる。
【0100】
第2通知処理における通知は、表示装置での表示により実現されて良い。具体的には例えば、第2通知処理において、通知処理部F4は車両1の運転席付近に設置された表示装置(不図示)に所定のメッセージを含む完了通知画像を表示させる表示制御を行う。完了通知画像におけるメッセージは、例えば「CO2の放出が完了しました」といった文言を含む。完了通知画像が表示される表示装置は、通知受理者が所持する携帯端末(例えば車両1の運転手が所持するスマートホン)の表示装置であっても良いし、回収機器80に設けられる表示装置であっても良い。第2通知処理における通知は、表示装置での表示に加えて又は表示装置での表示に代えて、音声出力による通知を含んでいても良い。
【0101】
通知処理部F4は、放出段階における任意のタイミングでCO
2貯留装置40のCO
2貯留状態を通知受理者に通知する状態通知処理を行って良い。状態通知処理の内容自体は第4実施例で示した通りである。例えば、
図16のステップS61の後、ステップS66に至る前の任意のタイミングにおいて状態通知処理を行って良い。放出段階での状態通知処理により、CO
2の放出の進み具合いを通知受理者に知らせることができる。
【0102】
尚、第6実施例における基準貯留量VREFは第1~第5実施例における基準貯留量VREFと同じものであって良いが、前者の基準貯留量VREFの具体的な値と後者の基準貯留量VREFの具体的な値とを互いに相違させても良い。同様に、第6実施例における基準貯留率RREFは第1~第5実施例における基準貯留率RREFと同じものであって良いが、前者の基準貯留率RREFの具体的な値と後者の基準貯留率RREFの具体的な値とを互いに相違させても良い。
【0103】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。第7実施例では、上述した各事項に対する変形技術又は補足事項等を説明する。
【0104】
貯留セル41の最大貯留量は、CO2貯留装置40に設けられる全ての貯留セル41間において、互いに同じであって良い。但し、CO2貯留装置40に設けられる貯留セル41[iA]及び41[iB]について、貯留セル41[iA]及び41[iB]の最大貯留量は互いに異なっていて良い。上述したように、iA及びiBは互いに異なる8以下の自然数である。互いに異なる最大貯留量を有する2以上の貯留セル41がCO2貯留装置40に設けられる場合にあっては、特に、貯留量ではなく貯留率に基づいて様々な制御を行う方が良い。
【0105】
CO
2貯留装置40において貯留セル41は交換可能に設けられていて良い。貯留セル41の交換とは、CO
2貯留装置40に設けられていた貯留セル41を取り外した上で、新たに用意された貯留セルを貯留セル41としてCO
2貯留装置40に取り付けることを指す。取り外された貯留セル41の種類と、新たに取り付けられる貯留セル41の種類は、相違することがある。従って、貯留セル41[i]が交換される際、交換前後において貯留セル41[i]の最大貯留量が変化し得る。貯留セル41が交換可能である場合、第1通知処理における通知は(
図9又は
図12参照)、貯留セル41の交換を促す交換勧告通知であって良い。貯留セル41における容器をCO
2貯留装置40に取り付けたまま、容器内のCO
2吸着剤を新たなものに取り換えることが、貯留セル41の交換に相当しても良い。
【0106】
内燃機関11の作動中において分離膜30を通じて新たに送られる排ガス中のCO2を対象セルに貯留しながら、放出セルからCO2を回収機器80に放出させることが可能であっても良い。例えば、内燃機関11の作動によって車両1に設けられる空調機を作動させ、これによって生じるCO2を対象セルに貯留しながら、放出セルからCO2を回収機器80に放出させるといった利用例が考えられる。
【0107】
排ガスに関わる装置として、上述の各図面に示されない装置(以下、追加装置と称する)が車両1に設けられていても良い。追加装置として排ガス冷却装置が車両1に設置されて良い。排ガス冷却装置は、排ガスの流路においてCO2分離膜30の上流側に配置され、CO2分離膜30に流入する排ガスの温度を低下させる。排ガス冷却装置の設置により、熱によるCO2分離膜30の劣化を抑制することができる。追加装置としてエネルギ変換装置が車両1に設置されて良い。エネルギ変換装置は、排ガスが有する熱エネルギを他のエネルギ(電気エネルギ等)に変換する。変換により得られた他のエネルギ(電気エネルギ等)を車両1にて利用することができる。排ガスをエネルギ変換装置に通すことで排ガスの温度が低下する。このため、エネルギ変換装置は排ガス冷却装置の一種であるともいえる。排ガスの流路においてエネルギ変換装置をCO2分離膜30の上流側に配置し、CO2分離膜30に流入する排ガスの温度をエネルギ変換装置にて低下させて良い。
【0108】
図1に示す構造では排ガスの一部はCO
2分離膜30を経由してからマフラ20に送られる。しかしながら、浄化装置14からCO
2分離膜30に向かう排ガスを、まず分離前マフラ(不図示)に供給し、分離前マフラを経由した後の排ガスをCO
2分離膜30に供給する第1変形構成が採用されても良い。同様に、第3実施例(
図14参照)において、貯留制御が行われるとき、流路切替装置15を通過した排ガスを、まず分離前マフラ(不図示)に供給し、分離前マフラを経由した後の排ガスをCO
2分離膜30に供給する第2変形構成が採用されても良い。分離前マフラはマフラ20であっても良いし、車両1に対しマフラ20とは別に設置されたマフラであっても良い。上述の各変形構成では、CO
2分離膜30に流入する排ガスの温度を分離前マフラにより下げることができるため、熱によるCO
2分離膜30の劣化を抑制することができる。分離前マフラは上述の排ガス冷却装置の一種であると解しても良い。各変形構成においても、CO
2分離膜30を通過したガスは分離ガスとして分離ガス路18を通じCO
2貯留装置40に送られる。CO
2分離膜30を通過しなかったガスは残ガスとして車両1に設置された排出口(マフラ20であり得る)から車外に排出される。
【0109】
対象セルの選択又は放出セルの選択に注目したとき、制御装置100は選択制御装置として機能すると言える。制御装置100は、他の様々な機能(例えば車両1の走行を制御する機能)を備えていても良い。
【0110】
本実施形態に係るCO2回収システムは、少なくとも制御装置100及びCO2貯留装置40を備えて構成される。但し、車両1に搭載されるものとして上述した任意の部品は、CO2回収システムの構成要素に含まれ得る。CO2貯留装置40によるCO2の貯留能力を大きく引き出すべくCO2分離膜30が設けられることが望ましいが、車両1及びCO2回収システムにCO2分離膜30が設けられることは必須では無い。
【0111】
CO2回収システム、又は、CO2回収システムにて具体化された本発明を、車載用途とは異なる任意の用途に適用することも可能である。
【0112】
車両1は内燃機関11を用いて発生した駆動力にて移動する移動体の例である。本発明において、移動体は車両に分類されないもの(例えばロボット、ドローン)であっても良い。
【0113】
本発明の実施形態にて述べた任意の方法をコンピュータに実行させるプログラム、及び、そのプログラムを記録した記録媒体であって且つコンピュータ読み取り可能な不揮発性の記録媒体は、本発明の実施形態の範囲に含まれる。本発明の実施形態における任意の処理は、半導体集積回路等のハードウェア、上記プログラムに相当するソフトウェア、又は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されて良い。ここにおけるソフトウェア及びハードウェアは夫々に複数あっても良い。
【0114】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 車両
11 内燃機関
12 排気マニホールド
13、13a、13b 排気管
14 浄化装置
15 流路切替装置
16 貯留用接続路
17 排気用接続路
18 分離ガス路
19 残ガス排出路
20 マフラ
30 CO2分離膜
40 CO2貯留装置
41、41[1]~41[8] 貯留セル
42 選択連結部
50 ポンプ
80 回収機器
81 回収用配管
100 制御装置
110 演算処理部
120 メモリ
F1 貯留状態検出部
F2 対象セル選択部
F3 圧力制御部
F4 通知処理部
F5 流路制御部
F6 放出管理部
F7 放出セル選択部