(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022751
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/03 400A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126064
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
(72)【発明者】
【氏名】田中 航平
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子ペンの先端部分の芯体と筐体との間の隙間から例えば唾液等の水分が侵入することを、電子ペンとしての機能に影響を及ぼすことなく効果的に防止する。
【解決手段】電子ペン1は、ケース2の開口部Hの近傍の内壁面に設けられた突起部22Pの前端面22Pxと、ケース2内に取り付けられた芯体4のペン先部Ptの後端面Ptxとの間に、芯体4の軸部Stが貫通するようにしてリング状の弾性部材16を備える。リング状の当該弾性部材16は、芯体4のペン先部Ptとケース2との間に生じる隙間(空隙)を埋め、外部からの液体の侵入を防止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口部を有する筒状体であって、前記開口部の近傍の内壁面から軸心に向かって突出したリング状の突起部を備えると共に、回路部品が搭載される筐体と、
ペン先部と前記ペン先部の後端面より延伸された軸部とからなる棒状体であって、前記ペン先部と前記軸部とは中心軸を同じくし、前記ペン先部の前記後端面の面積は前記軸部の前端面の面積よりも大きい芯体と、
前記芯体を後端側より前記筐体の前記開口部より挿入し、前記芯体の後端部を前記筐体内に取り付けた場合に、前記筐体の前記突起部の前端面と前記芯体の前記ペン先部の後端面とが対向する部分に、前記軸部が貫通するようにして設けられるリング状の弾性部材と
を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記弾性部材の軸心方向の断面は四角形状になっている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記弾性部材の軸心方向の断面は円形状になっている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記弾性部材は、撥水性を備えた高機能ウレタンフォーム材料により形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項5】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体の軸部の側面には、当該芯体の後端部を前記筐体内に取り付けた場合に、前記筐体の前記突起部の後端面と係合する軸部突起が設けられている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項6】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記筐体の前記突起部には、更に軸心方向に更に突出した突出部が設けられており、
前記芯体の軸部の側面には、当該芯体の後端部を前記筐体内に取り付けた場合に、前記筐体の前記突起部から突出した前記突出部と係合する内側後端面を有する溝部が設けられている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記芯体は導電性を有するものであり、
前記筐体に搭載される回路部品には、前記芯体に接続され、前記芯体から送出する信号を発生させる信号発生回路を含む
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項8】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記筐体に搭載される回路部品には、電磁誘導方式の電子ペンとしての機能するための共振回路を構成するインダクタとキャパシタとを含む
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項9】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記筐体に搭載される回路部品には、
前記筐体内を軸心方向に移動可能にされた前記芯体によって押圧される感圧用部品と、
前記感圧用部品からの出力信号に基づいて前記芯体に印加された筆圧を検出する筆圧検出部と
を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項10】
請求項9に記載の電子ペンであって、
前記筆圧検出部は、リング状の前記弾性部材の弾性率を考慮して、前記芯体に印加される筆圧を検出する
ことを特徴とする電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タブレットPC(Personal Computer)などの情報処理装置に搭載された位置検出装置に対する位置指示器として用いられる電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンの芯体には、POM(ポリアセタール)等の硬質樹脂により形成されたもの他、合成繊維を束ねることで形成される芯であって、軸心方向に合成繊維間の空隙が設けられることにより、弾力性を持たせたせるようにしたものがある。また、プラスチックなどの合成樹脂により形成される芯であって、軸心方向に種々の形状の気孔を設けることで、弾力性を備えるようにしたものもある。上述の弾力性を持たせるようにした芯体の場合には、位置検出センサの位置検出面上の樹脂やガラスなどの保護材に接触すると、柔らかい感触が得ることができると共に、保護材上で電子ペン(芯体)が滑ってしまうことも防止できる。
【0003】
近年、児童、生徒向けの学習システムにおいて、電子ペンを用いたタブレットPCが用いられるようになってきている。従来から小学校低学年の児童は、“ペンを噛む”、“ペンを咥える”、”ペンを舐める“という“癖”の動作をする場合がある。この“癖”の動作は、電子ペンの使用時においても同様であり、電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする場合がある。電子ペンの芯体が突出している側を噛んだり、咥えたり、舐めたりすると、芯体が突出している電子ペンの開口部分から唾液がペン内部に浸み込んでしまう場合があると考えられる。電子ペンの内部には、電子回路等が配置されているため、水分の浸入により正常に動作しなくなったり、故障の原因になったりすることが考えられる。
【0004】
特に、上述したように、合成繊維が束ねられて形成さ軸心方向に空隙が設けられた芯体や合成樹脂で形成され軸心方向に気孔が設けられている芯体の場合には、毛細管現象によりその空隙、気孔を通して唾液が電子ペン本体に進入しやすくなっている。そこで、後に記す特許文献1には、合成繊維が束ねられて形成さ軸心方向に空隙が設けられた芯体や合成樹脂で形成され軸心方向に気孔が設けられている芯体に苦味成分をしみ込ませる電子ペン用の芯に関する発明が開示されている。これにより、噛んだり、舐めたり、咥えたりした場合には苦味を感じ、これらの動作をしないようにすることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりしたときに、苦味を感じれば、当該“癖”の動作は徐々にしなくなるように仕向けることができるので、特許文献1に開示された発明は、電子ペンの保護の観点から有用な技術である。しかし、電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする動作は、上述したように“癖”であり、1回苦い経験をしたからといって、直ぐに当該動作を辞められることは少ないと考えられる。このため、苦味を感じても、電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする“癖”の動作はある程度の期間継続されてしまい、その間に電子ペンの先端部分の芯体と筐体との間の隙間から唾液が電子ペン内部に侵入する恐れがある。
【0007】
また、電子ペンの芯体は、合成繊維が束ねられて形成さ軸心方向に空隙が設けられた芯体や合成樹脂で形成され軸心方向に気孔が設けられている芯体だけでなく、POM等の硬質樹脂やその他の材料により形成されるものも存在する。この場合にも、電子ペンを噛んだり、咥えたり、舐めたりする動作を繰り返せば、電子ペンの先端部分の芯体と筐体との間の隙間から唾液が電子ペン内部に侵入する恐れがある。また、上述した“癖”の動作以外においても、電子ペンの先端部分の芯体と筐体との間の隙間から水分が侵入することを防止することは、電子回路等が搭載される電子ペンにとっては重要なことである。
【0008】
以上のことに鑑み、この発明は、電子ペンとしての機能に影響を及ぼすことなく、電子ペンの先端部分の芯体と筐体との間の隙間から例えば唾液等の水分が侵入することを、効果的に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
先端に開口部を有する筒状体であって、前記開口部の近傍の内壁面から軸心に向かって突出したリング状の突起部を備えると共に、回路部品が搭載される筐体と、
ペン先部と前記ペン先部の後端面より延伸された軸部とからなる棒状体であって、前記ペン先部と前記軸部とは中心軸を同じくし、前記ペン先部の前記後端面の面積は前記軸部の前端面の面積よりも大きい芯体と、
前記芯体を後端側より前記筐体の前記開口部より挿入し、前記芯体の後端部を前記筐体内に取り付けた場合に、前記筐体の前記突起部の前端面と前記芯体の前記ペン先部の後端面とが対向する部分に、前記軸部が貫通するようにして設けられるリング状の弾性部材と
を備えることを特徴とする電子ペンを提供する。
【0010】
この発明の電子ペンによれば、筐体の開口部近傍の内壁面に設けられた突起部の前端面と、筐体内に取り付けられた芯体のペン先部の後端面との間に、芯体の軸部が貫通するようにしてリング状の弾性部材が設けられる。リング状の当該弾性部材は、芯体のペン先部と筐体との間に生じる隙間(空隙)を埋め、外部からの液体の侵入を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態の電子ペンの構成例を説明するための図である。
【
図2】実施の形態の電子ペンの要部を説明するための図である。
【
図3】実施の形態の電子ペンで用いられるリング状の弾性部材について説明するための図である。
【
図4】実施の形態の電子ペンの他の構成例を説明するための図である。
【
図5】実施の形態の電子ペンの他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、この発明による電子ペンの実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態の電子ペンは、電子ペン側から信号を送出し、当該信号を受信した位置検出センサ上の位置に応じて指示位置を検出するアクティブ静電容量方式のものである場合を例にして説明する。
【0013】
[アクティブ静電容量方式の電子ペンの構成例]
図1は、この実施形態の電子ペン1の構成例を説明するための図であり、説明のために、電子ペン1のケース(筐体)2の一部を切断して、その内部を示したものである。また、
図2は、電子ペン1の要部を説明するための図である。具体的に、
図2(A)は、
図1では示していない電子ペン1のペン先側の要部の拡大断面図である。また、
図2(B)は、電子ペン1において、筆圧検出及び信号送信の機能を実現する部分を抜き出して模式的に示した図である。
【0014】
図1に示すように、電子ペン1は、軸心方向(軸心に沿う方向)に細長であって、軸心方向の一方がペン先側とされて、開口部を有するようにされると共に、軸心方向の他方が閉じられた円筒状の形状とされているケース(筐体)2を備える。このケース2は、導電性材料、この例ではアルマイト加工されたアルミニウムからなるもので、内部に中空部を有する円筒形状のケース本体21と、このケース本体21と結合されるフロントキャップ22及びリアキャップ23により構成されている。フロントキャップ22及びリアキャップ23が、ケース本体21に嵌合されることで、ケース2が形成される。
【0015】
フロントキャップ22は、
図2(A)に示すように、軸心方向の貫通孔22aを有する筒状体の構成とされると共に、電子ペン1のペン先側の部分の外観形状が、ペン先に近くなるほど外径が小さくなるテーパー形状のものである。フロントキャップ22のペン先側の端部は、貫通孔22aの開口部Hになっている。ケース2の中空部内には、
図1に示すように、プリント基板8などの搭載部品を保持するための基板ホルダー3や電池5が収納されると共に、
図2(A)に示すように、芯体ホルダー(芯体保持部)6や感圧用部品(筆圧検出部)7が収納されている。
【0016】
また、
図2(A)に示すように、フロントキャップ22の開口部Hの近傍の内壁面には、軸心に向かって張り出したリング状の突起部22Pが設けられている。すなわち、フロントキャップ22の開口部Hからやや後端側の内壁面には、内側に向かってリング状に張り出した突起部22Pが設けられている。このため、
図2(A)に示すように、フロントキャップ22の突起部22Pの前端面22Pxよりも開口部H側の部分が、後述する芯体4のペン先部の後端部分が嵌合するカップ状部となっている。
【0017】
そして、
図1及び
図2(A)に示すように、フロントキャップ22の開口部Hを通じて、芯体4が貫通孔22aに挿入されて、ケース2の内部の芯体ホルダー6に対して取り付けられる。また、芯体4は芯体ホルダー6からの取り外しも可能にされる。すなわち、芯体4は、ケース2内に対して着脱が可能になっている。芯体4は、詳しくは後述するが、導電性材料で形成された芯棒41と、非導電性材料で形成された保護部材42とからなるものであり、その外観は、ペン先部Ptと軸部Stとの大きく分けて2つの部分からなっている。
【0018】
基板ホルダー3は、絶縁性の樹脂、例えば、液晶ポリマーにより形成され、ケース2の中空部内に収納されたときに、
図2(A)に示すように、電子ペン1の軸心方向に、感圧用部品保持部3aとプリント基板載置台部3bとが連続する構成を有する。感圧用部品保持部3aは、感圧用部品7(筆圧検出用の複数個の部品)を収納する中空部を備える円筒形状とされたものであり、フロントキャップ22の貫通孔22aの内径よりも小さい外径のものである。プリント基板載置台部3bは、プリント基板8を載置して保持するボート状のものであって、具体的には、筒状体を軸芯方向に略半分切断したような形状のものである。
【0019】
基板ホルダー3は、感圧用部品保持部3aが芯体4側となるようにして、感圧用部品保持部3a及びプリント基板載置台部3bの全体がケース2内に収納されて、移動しないように固定される。また、
図2(A)に示すように、基板ホルダー3の感圧用部品保持部3aには、芯体4を保持する芯体ホルダー6が結合され、芯体4の主に芯棒41に印加される圧力(筆圧)が、感圧用部品保持部3a内の感圧用部品7に伝達されるようになっている。
【0020】
図1に示すように、基板ホルダー3のプリント基板載置台部3bの、感圧用部品保持部3aとは反対側の端部には、端子導体51が設けられている。この端子導体51は、電池5のプラス側端子5aと電気的に衝合すると共に、プリント基板8の電源ラインの銅箔パターンと電気的に接続されている。リアキャップ23のケース本体21との嵌合部には、電池5のマイナス側端子5bと電気的に接続する、導電性金属からなるコイルばね端子52が設けられている。電池5は、
図1に示すように、プラス側端子5aを端子導体51に接続するようにケース2内に挿入される。その後、リアキャップ23が、コイルばね端子52により電池5のマイナス側端子5bを押圧するようにして、ケース本体21に嵌合される。
【0021】
この実施の形態では、導電性材料からなるケース本体21は、電気的にプリント基板8のアース導体と接続されている。リアキャップ23及びケース本体21が導電性材料で構成されているので、電池5のマイナス側端子5bは、これらリアキャップ23及びケース本体21を介して、プリント基板8のアース導体と電気的に接続される。一方、電池5のプラス側端子5aは、端子導体51を通じてプリント基板8の電源ラインの銅箔パターンに接続される。これにより、電池5の電圧が、プリント基板8に形成されている回路の電源電圧として供給される。
【0022】
プリント基板8上には、信号発生回路8S、IC(Integrate Circuit)10及びその周辺回路部品からなる回路部が設けられている。信号発生回路8Sは、電子ペン1の芯棒41から送出する信号を発生させる。IC10は、信号発生回路8Sからの信号の芯棒41への送信を制御する制御回路を構成する。周辺回路部には、プッシュスイッチ(サイドスイッチ)11,12が含まれる。また、プリント基板8には、芯棒41と信号発生回路8Sとを接続する導体端子部材14と感圧用部品7から筆圧の検出出力を伝達する導体端子部材15とが接続される。
【0023】
芯体4は、
図2(A)に示したように、導電性弾性部材9を介して導電性材料からなる芯体ホルダー6に嵌合されることにより、芯体ホルダー6に対して結合保持される。そして、芯体ホルダー6が、基板ホルダー3の感圧用部品保持部3a内の感圧用部品7の保持部材73に嵌合されることにより、芯体4に印加される圧力(筆圧)が感圧用部品7に伝達されるようになっている。
【0024】
この場合に、芯体ホルダー6は、当該芯体ホルダー6と基板ホルダー3との間に設けられる、導電性金属などの導電性材料からなる弾性部材の例としてのコイルばね13により、基板ホルダー3に対して常に芯棒41側に付勢されるように構成されている。なお、コイルばね13は、導体端子部材14と共に、プリント基板8に配設されているIC10による送信が制御される信号発生回路8Sからの信号を芯棒41に伝達するための電気的接続用部材を構成するものである。このため、基板ホルダー3の感圧用部品保持部3aのペン先側の端部には、金属板13aが設けられており、コイルばね13と導体端子部材14とを電気的に接続している。
【0025】
すなわち、
図2(B)に示すように、信号発生回路8Sからの信号は、導体端子部材14→金属板13a→コイルばね13→芯体ホルダー6→芯棒41の順に辿って、この芯棒41から送出される。これら導体端子部材14、コイルばね13、金属板13a、芯体ホルダー6、芯棒41が、電気的接続用部材を構成し、プリント基板8の信号発生回路8Sからの位置指示信号の送出経路を形成している。
【0026】
この実施の形態の感圧用部品(筆圧検出部)7は、芯体4に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサを用いた場合である。感圧用部品7は、
図2(A)に示すように、誘電体71と、端子部材72と、保持部材73と、導電部材74と、弾性部材75との複数個の部品からなる。端子部材72は、導電性材料からなり、感圧用部品7で構成される容量可変コンデンサの第1の電極を構成する。また、導電部材74は例えば導電性ゴムで構成され、弾性部材は導電性材料からなるコイルばねで構成されている。導電部材74と弾性部材75とは電気的に接続されて、当該容量可変コンデンサの第2の電極を構成する。
【0027】
これにより、第1の電極を構成する端子部材72と、第2の電極を構成する導電部材74との間で形成される容量可変コンデンサの静電容量が、芯棒41に印加される圧力に応じて変化する。この容量可変コンデンサの静電容量の変化が、導体端子部材15を通じて、感圧用部品7からプリント基板8に設けられているIC10に供給されて、IC10で筆圧が検出される。すなわち、IC10は、信号発生回路8Sからの信号の芯棒41への送信を制御する制御回路であると共に、感圧用部品7からの出力信号に基づいて、芯体4に印加された筆圧を検出(算出)する筆圧検出部としての機能を実現する。これにより、芯棒41を通じて送信する信号に対して筆圧情報を含めて送信することが可能にされる。
【0028】
すなわち、この実施形態の電子ペン1は、
図2(A)に示したように、芯体4は、ケース2の内部において、芯体ホルダー6に装着されて、軸心方向に移動可能になっている。これにより、芯体4は、使用者によって芯棒41にかけられる筆圧に応じてケース2の内部に向かって押し込まれ、これに応じて、芯棒41及び芯体ホルダー6が、感圧用部品7を押圧し、筆圧を検出できる構成になっている。また、芯棒41にかけられた筆圧が解除されたときには、上述したコイルばね13の作用により、芯体ホルダー6及び芯体4は、
図2(A)に示した初期状態に復帰できる構成になっている。
【0029】
電子ペン1のIC10は、位置検出センサに対して、信号発生回路8Sからの信号に応じた座標検出(位置検出)のためのバースト信号(位置指示信号)を送出するように制御する。これにより、位置検出センサ側では、位置検出センサ上の電子ペン1による指示位置が検出可能にされる。さらに、電子ペン1のプリント基板8に構成されているIC10を含む回路では、バースト信号を送出している期間において、感圧用部品7において静電容量に基づいて筆圧を検出する動作を実行する。IC10は、バースト信号の送出期間の終了後、検出した筆圧に応じて信号発生回路8Sからの信号を変調した符号化信号を芯棒41から送出し、筆圧を位置検出センサ側に通知する。これにより、位置検出センサ側では、電子ペン1の芯体4に加えられた筆圧の検出も可能にされる。
【0030】
このようにして、この実施形態の電子ペン1は、位置検出センサに対して位置検出センサ上の位置を指示すると共に、芯棒41にかけられた筆圧を検出して、当該位置検出センサに対して通知する機能を実現する。さらに、この実施の形態の電子ペン1は、導電性を備えた芯棒41から送出される信号に応じて、電子ペン1の傾きをも位置検出センサ側において適切に検出できるようにしている。
【0031】
<芯体4の構成例>
図2(A)に示したように、芯体4は、芯棒41と保護部材42とからなる。芯棒41は、導電性の棒状体のものである。この実施の形態において、芯棒41は、導電性エラストマーが用いられて形成されている。導電性エラストマーは、絶縁性の高いゴム材料に導電性粒子(カーボン、金属粉、金属蒸着紛など)を一定の配合割合でほぼ均一に混ぜることで導電性を付加したゴムである。従って、芯棒41は、弾力性を備えた柔らかなものであり、いわゆる書き味の柔らかなペン先を実現している。
【0032】
保護部材42は、
図2(A)に示したように、芯棒41の先端部と後端部を除く中間部の側面を覆い、芯棒41を保護する。この実施の形態において、保護部材42は、ポリカーボネイトによって形成されている。ポリカーボネイトは、熱可逆性プラスチックの一種であり、加熱によって軟化し、所望の形状に成形できるようになり、それを冷却すれば固化する特性を有する。
【0033】
このため、芯体4の形成に当たっては、まず、導電性エラストマーを材料とする芯棒41を成型する。そして、当該芯棒41(一次側)に対して、同一金型内にポリカーボネイトを注入して保護部材42(二次側)を形成するという、いわゆる2色成型により、芯棒41の中間部の側面に保護部材42を設けた芯体4を形成できる。なお、2色成型は、異質材成型あるいはダブルモールドとも呼ばれる部材の成型方法である。
【0034】
芯体4の外観は、上述もしたように、ペン先部Ptと軸部Stとの大きく分けて2つの部分からなる棒状体である。ペン先部Ptは、電子ペン1のペン先を構成し、
図2(A)、(B)に示すように、先端に向かって先細りとなってテーパー形状(略円錐形状)となった部分であり、その頂点部分からは芯棒41の丸みを帯びた先端部が突出している。軸部Stは、ペン先部Ptの後端面より後方に向かって延伸された部分である。
【0035】
図2(A)、(B)から分かるように、ペン先部Ptと軸部Stとは中心軸を同じくし、ペン先部Ptの後端面の面積は軸部Stの前端面の面積よりも大きくなっている。このため、ペン先部Ptの後端面Ptxは、軸部Stとの接合部分以外の部分がリング状に露呈している。また、軸部Stの側面には、軸部突起43が設けられている。軸部突起43は、
図2(A)、(B)に示したように、後端側に向かって低くなるように傾斜が設けられたものである。このため、芯体4を開口部Hより差し込んで、ケース2内に装着する場合には、芯体4の軸部突起43が、ケース2のフロントキャップ22の突起部22Pに当たる。しかし、軸部突起43に設けられたペン先側から後端側に低くなる傾斜によって、芯体4を比較的にスムーズにケース2内に押し込んで芯体ホルダー6に装着できる。
【0036】
一方、
図2(A)に示すように、芯体ホルダー6に芯体4が装着された後においては、軸部突起43の前端面43yと、フロントキャップ22内の突起部22Pの後端面22Pyとが対向して係合する状態となる。これにより、ケース2内の芯体ホルダー6に装着されている芯体4をケース2から引き抜こうとしても、軸部突起43の前端面43yと、突起部22Pの後端面22Pyとが係合することにより簡単に引き抜くことができなくなる。
【0037】
従って、電子ペン1を使用する例えば児童が、芯体4のペン先部Ptを歯で噛むなどして引き抜くことが容易にできないようにされる。しかし、芯体ホルダー6に装着された芯体4のペン先部Pt部分を、指の爪などで挟んで注意深く力を加えて引き抜くようにすれば、引き抜く(取り外す)ことができる。従って、芯体4の交換も必要に応じて行うことができる。更に、芯体4には、リング状の弾性部材16が装着されることにより、電子ペン1のペン先部分より水分の侵入を防いで、防水性を高めている。
【0038】
<リング状の弾性部材16の利用>
この実施の形態の電子ペン1の場合には、芯体4とケース2との間にリング状の弾性部材16を配置することにより、電子ペン1の先端部分において、芯体4とケース2との間に生じる隙間(空隙)を塞ぎ、水分が侵入することを防止している。これにより、例えば児童が、電子ペン1のペン先側を噛んだ、咥えたり、舐めたりしても、唾液が電子ペン1の内部に入り込むことがないようにしている。また、電子ペン1のペン先側に、例えば水やお茶などをこぼしたとしても、水やお茶などが電子ペン1の内部に入り込むことがないようにしている。
【0039】
図3は、電子ペン1で用いられるリング状の弾性部材16について説明するための図である。弾性部材16は、
図3(A)の上面図に示すように、リング状のものであり、貫通孔の内径rは、芯体4のペン先部Pt側の軸部Stの外径と同じか、それよりもやや短くなっている。リング状の弾性部材16は、芯体4の軸部Stが弾性部材16の貫通孔を貫通することにより芯体4に取り付けられ、芯体4のペン先部Ptの後端面に接する位置に装着される。
【0040】
上述もし、また、
図2(A)にも示したように、芯体4は、ケース2のフロントキャップ22の開口部Hより後端側から挿入し、芯体4の後端部が導電性弾性部材9を介して芯体ホルダー6に嵌合され、芯体ホルダー6に取り付けられる。これにより、ケース2のフロントキャップ22の開口部H近傍に設けられた突起部22Pの前端面22Pxと芯体4のペン先部Ptの後端面Ptxとが対向する部分に、リング状の弾性部材16が設けられる。
【0041】
図3(B)は、
図3(A)の点線A-Aで示した位置で弾性部材16を切断した場合の断面図であり、この実施の形態において弾性部材16の断面は四角形になっている。これにより、
図2(A)にも示したように、弾性部材16は、芯体4がケース2内に取り付けられた場合に、芯体4のペン先部Ptの後端面Ptxとケース2の突起部22Pの前端面22Pxとに密着し、芯体4とケース2との間に生じる隙間を塞ぐ機能を実現する。
【0042】
なお、芯体4のペン先部Ptに筆圧が印加されたとする。この場合に、弾性部材16は、ペン先部Ptの後端面Ptxによりフロントキャップ22の突起部22Pの前端面22Px側に押圧されることにより潰れ、芯体4は電子ペン1の後端側に押し込まれる。また、芯体4のペン先部Ptに印加された筆圧が解除されたとする。この場合には、潰れた弾性部材16が元の状態に復帰するので、弾性部材16がペン先部Ptの後端面Ptxを押し返し、芯体4は元の状態に復帰する。このように、弾性部材16は、筆圧に応じて潰れたり、復帰したりすることができるものであるので、芯体4の軸心方向への筆圧に応じた摺動移動を阻害することなく、感圧用部品7を通じた筆圧の検出も適切に行うことができる。
【0043】
なお、リング状の弾性部材16は、
図3(A)におけるA-A断面図である
図3(B)に示したように、その断面形状が四角形であるものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、
図3(C)に示すように、その断面形状が円形であってもよい。すなわち、リング状の弾性部材16の断面形状は、ペン先部Ptとフロントキャップ22との間に生じる隙間を適切に塞ぐことができれば、種々の形状とすることができる。
【0044】
<リング状の弾性部材16の材質>
弾性部材16は種々の弾性材料により構成できる。例えば、弾性を有する樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどを用いて形成することが可能である。特に、電子ペン1の弾性部材16を形成するのに適した材料として、撥水ポロン(ポロンは登録商標)がある。撥水ポロンは、撥水性を備えたポロン(登録商標)である。ポロン(登録商標)は、高密度で、極めて微細かつ均一なセル構造を有した高機能ウレタンフォームである。このため、圧縮残留歪(負荷を取り除いても残る歪)が小さく、エネルギー吸収性、シール性(密閉性)、寸法安定性、非移行性(他の材質の部分に移行しない)などの優れた特徴を持つものである。
【0045】
すなわち、撥水ポロン(ポロンは登録商標)は、撥水性を備えると共に、軽い筆圧が掛けられた場合にも容易に潰れ、筆圧が解されれば迅速に元の状態に戻り、しかも型崩れなどを生じさせにくいものである。このため、弾性部材16を撥水ポロンで形成することにより、ペン先部Ptとフロントキャップ22との間に生じる隙間を適切に塞いで水分の侵入を防止することができ、かつ、芯体4の軸心方向への摺動移動を阻害することもないものとなる。
【0046】
<弾性部材16を用いることによる筆圧検出時の注意点>
弾性部材16を形成する材料によっては、弾性部材16の弾性率が大きくなる場合がある。例えば、上述した撥水ポロンを用いてリング状の弾性部材16を形成した場合には、弾性部材16の弾性率は小さい。このため、弾性部材16が介在しても、芯体4が筆圧に応じてケース2の後端側への移動量が大きく変わることはないので、芯体4が感圧用部品7を押圧する押圧力も大きく変わることはない。しかし、例えば天然ゴムを用いてリング状の弾性部材16を形成した場合には、弾性部材16の弾性率はポロン(登録商標)で形成した場合に比べれば大きくなる。このため、弾性部材16が介在することにより、芯体4が筆圧に応じてケース2の後端側への移動量が小さくなり、芯体4が感圧用部品7を押圧する押圧力も小さくなる場合があると考えられる。
【0047】
そこで、弾性部材16の弾性率が大きい場合には、IC10において、リング状の弾性部材16の弾性率を考慮して、感圧用部品7からの出力信号(静電容量の変化)に基づいた筆圧を算出すればよい。これにより、弾性率の大きな弾性部材16が介在することにより、弾性部材16が存在しない場合に比べて、芯体4のケース2の後端側への移動量が少なくなっても、芯体4に印加される筆圧を適切に検出することが可能になる。
【0048】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の電子ペン1の場合には、芯体4のペン先部Ptとケース2のフロントキャップ22の内壁面の突起部22Pとの間に生じる隙間を、リング状の弾性部材16により塞ぐことができる。これにより、電子ペンとしての機能に影響を及ぼすことなく、電子ペン1の先端部分の芯体4のペン先部Ptとケース2のフロントキャップ22との間の隙間から水分が侵入することを効果的に防止できる。
【0049】
また、芯体4を電子ペン1のケース2に対して装着した場合には、芯体4の軸部Stの側面に設けられた軸部突起43の前端面43yとケース2のフロントキャップ22の内壁面の突起部22Pの後端面22Pyとが係合する。これにより、ケース2内に装着された芯体4が容易に取り外されることがないようにできる。従って、電子ペン1の芯体4のペン先部Ptを、例えば児童が噛んで引き抜くような動作をしても、簡単に引き抜くことができないようにすることができる。
【0050】
これらのことから、“ペンを噛む”、“ペンを咥える”、”ペンを舐める“という“癖”がある児童等が使用しても、故障や破損といった不具合を生じさせ難い電子ペンを実現することができる。換言すれば、児童等の一般的な筆記具の使用に不慣れな者が使用するのに適した電子ペンを実現できる。
【0051】
[変形例]
<フロントキャップの突起部の形状や芯体の形状の変形>
ケース2のフロントキャップ22の突起部22Pの形状や芯体4の形状については、種々の変形が可能ある。
図4、
図5は、実施の形態の電子ペンの他の構成例を説明するための図である。このうち
図4は、ケース2のフロントキャップ22の内壁に設ける突起部22Pの形状を変えたものであり、
図5は、ケース2のフロントキャップ22の内壁に設ける突起部22Pの形状と芯体4の軸部Stの形状との両方を変えたものである。
【0052】
<突起部22Pの変形例>
まず、
図4の例について説明する。
図4と
図2(A)とを比較すると分かるように、
図4に示した電子ペン1Aの場合には、ケース2Aのフロントキャップ22Aの突起部22PAの形状が異なっている点を除けば、
図2(A)に示した電子ペン1と同様に構成されたものである。このため、
図4において、
図2(A)と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分についての説明は重複するため省略する。
【0053】
図4に示すように、フロントキャップ22Aの内壁面に設けられた突起部22PAは、突起部22PAの後端面より前端面側に向かって貫通孔でない穴部22SAを設けることにより、穴部22SAの側壁となる壁部22HAが形成されたものである。このような突起部22PAが形成されたフロントキャップ22Aを備えたケース2A内に、芯体4を取り付けるため、開口部Hから芯体4をその後端側よりケース2A内に挿入し押し込むようにしたとする。この場合、芯体4の軸部Stの軸部突起43が、フロントキャップ22A内の突起部22PAの壁部22HAに当たると、壁部22HAはその後端側がより穴部22SA側に傾くようになり、芯体4をケース2内に押し込みやすくすることができる。
【0054】
芯体4をケース2A内の芯体ホルダー6に装着した状態では、
図4に示すように、フロントキャップ22Aの突起部22PAの壁部22HAの後端部HAyが、芯体4の軸部Stの軸部突起43の前端面43yと係合するようになる。これにより、ケース2A内に装着された芯体4を引く抜くことは容易にできないようにされる。もちろん、注意深く力を入れて引き抜くようにすれば、芯体4をケース2から引き抜くことが可能である。このように、
図4に示した電子ペンの場合には、ケース2A内への芯体4の装着をしやすくすると共に、芯体4を容易には引き抜くことができないようにしたものである。
【0055】
なお、フロントキャップ22Aの突起部22PAの壁部22HAには、軸心方向に対して沿う方向の切り込み(スリット)が複数個所(例えば、軸心を中心にし、壁部22HAを円周として90度ごとに4か所)に設けられている。これにより、壁部22HAが、穴部22SA側に傾きやすくすることができる。
【0056】
<突起部22Pと芯体4の変形例>
次に、
図5の例について説明する。
図5(A)は、説明を簡単にするため、フロントキャップ22B部分を中心とする、よりペン先側の部分に限って示した電子ペン1Bの断面図である。
図5(A)と
図2(A)とを比較すると分かるように、
図5(B)の電子ペン1Bは、ケース2Bのフロントキャップ22Bの突起部22PBの形状と、芯体4Bの軸部StBの形状が異なっている点を除けば、
図2(A)の電子ペン1と同様に構成されたものである。このため、
図5(A)において、
図2(A)と同様に構成される部分には同じ参照符号を付し、当該部分についての説明は重複するため省略する。
【0057】
図5(A)に示すように、フロントキャップ22Bの内壁面に設けられたリング状の突起部22PBは、その内側側面から更に後端側に向かって突出するように形成された突出部22HBが設けられたものである。また、芯体4Bは、
図5(A)、(B)に示すように、ペン先部Ptと軸部StBとからなるものであるが、軸部StBの側面に溝部44が設けられたものである。突出部22HBを有する突起部22PBが形成されたフロントキャップ22Bを備えたケース2B内に、軸部StBの側面に溝部44が設けられた芯体4Bを取り付けるため、開口部Hから芯体4Bをその後端側よりケース2B内に挿入し押し込むようにしたとする。
【0058】
この場合、芯体4Bの軸部StBにフロントキャップ22B内の突起部22PBの突出部22HBが当たると、突起部22PBの突出部22HBが内側から外側に向かう方向にやや倒れるようになり、芯体4Bをケース2B内に押し込みやすくすることができる。また、芯体4Bをケース2B内の芯体ホルダー6に装着した状態では、
図5(A)に示したように、フロントキャップ22B内の突起部22PBの突出部22HBと、芯体4Bの軸部StBの溝部44の内側後端面44Bkとが係合する状態となる。これにより、ケース2A内に装着された芯体4Bを引く抜くことは容易にできないようにされる。
【0059】
もちろん、
図5を用いて説明した例の電子ペンの場合にも、注意深く力を入れて引き抜くようにすれば、芯体4をケース2Bから引き抜くことが可能である。このように、
図5に示した電子ペンの場合には、
図4を用いて説明した電子ペンの場合と同様に、ケース2B内への芯体4Bの装着をしやすくすると共に、芯体4Bを容易には引き抜くことができないようにしたものである。
【0060】
なお、
図5(A)を用いて説明した電子ペンにおいて、フロントキャップ22Bの突起部22PBの突出部22HBはリング状に形成される部分である。このため、突出部22HBには、軸心方向に対して沿う方向の切り込み(スリット)が複数個所(例えば、軸心を中心にし、突起部22HBを円周として90度ごとに4か所)に設けるようにする。これにより、突出部22HBが、内側から外側に向かって傾きやすくすることができる。
【0061】
<芯体4の材質の変形例>
上述した実施の形態の電子ペン1の場合、芯体4は、導電性エラストマーで形成された芯棒41と、ポリカーボネイトで形成された保護部材42とからなるものとして説明した。しかしこれに限るものではない。芯体4の全体を種々の導電性材料で形成することももちろん可能である。例えば、芯体4を金属や導電性を有するようにした硬質樹脂により形成することもできる。すなわち、芯体4は、種々の材料により形成することができる。
【0062】
より具体的には、合成繊維を束ねることで形成される芯であって、軸心方向に合成繊維間の空隙が設けられることにより、弾力性を持たせたせるようにすると共に導電性を有するようにした芯体であってもよい。また、プラスチックなどの合成樹脂により形成される芯体であって、軸心方向に種々の形状の気孔を設けることで、弾力性を備えるようにすると共に導電性を有するようにした芯体であってもよい。これらの空隙や気孔を有する芯体の場合は、芯体に苦味成分を浸透させることにより、噛んだり、咥えたり、舐めたりした場合には苦味を感じ、これらの癖を徐々にやめさせるようにすることができる。また、苦味成分を浸透させていることにより、唾液の浸透を防止することもできる。なお、空隙や気孔は、芯体のペン先となる先端(一方の端部)から後端(他方の端部)まで貫通している必要はなく、途中まで設けられていればよい。すなわち、芯体に設けられる空隙や気孔は、先端から後端に向かって所定の長さの部分に形成されていればよい。
【0063】
<種々の方式の電子ペンへの適用>
上述した実施の形態では、電子ペン1は、アクティブ静電容量方式のものである場合を例にして説明した。しかし、電子ペンは、アクティブ静電容量方式のものに限るものではない。例えば、インダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)とで構成される共振回路を備えた電磁誘導方式の電子ペンにもこの発明を適用することができる。要は、電子ペンのペン先側において、芯体とケース(筐体)との間に隙間が生じるために水分が侵入する可能性のある電子ペンに、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B…電子ペン、2、2A、2B…ケース(筐体)、21…ケース本体、22、22A、22B…フロントキャップ、22a…貫通孔、H…開口部、22P、22PA、22PB…突起部、22Px…前端面、22Py…後端面、22SA…穴部、22HA…壁部、22HB…突出部、HAy…後端部、23…リアキャップ、3…基板ホルダー、3a…感圧用部品保持部、3b…プリント基板載置台部、4、4A、4B…芯体、41、41B…芯棒、Pt…ペン先部、Ptx…後端面、St、StB…軸部、42、42B…保護部材、43…軸部突起、43y…前端面、44…溝部、44Bk…内側後端面、5…電池、6…芯体ホルダー、7…感圧用部品、8…プリント基板、8S…信号発生回路、9…導電性弾性部材、10…IC、13…コイルばね、13a…金属板、14…導体端子部材、15…導体端子部材、16…弾性部材