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特開2024-22763円筒状空芯コイルの製造方法、円筒状空芯コイル組立装置、単品コイル製造装置及び円筒状空芯コイル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022763
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】円筒状空芯コイルの製造方法、円筒状空芯コイル組立装置、単品コイル製造装置及び円筒状空芯コイル
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240214BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240214BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20240214BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K15/04 C
H01F41/04 F
H01F41/04 A
H02K3/04 E
H01F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126086
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】牧野 修之
(72)【発明者】
【氏名】平野 達弥
【テーマコード(参考)】
5E062
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5E062EE08
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB05
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA02
5H603CB01
5H603CC01
5H603CC19
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP17
5H615QQ02
5H615QQ08
5H615SS04
5H615SS10
5H615SS11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】精度よく簡単に形成可能な円筒状空芯コイルの製造方法を提供する。
【解決手段】軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルの製造方法である。複数の環状コイルを形成する環状コイル形成工程S1と、環状コイルの第1部分と第2部分とを環状コイルの厚み方向に相対変位させることにより、環状コイルにおいて段差部を形成加工及び湾曲加工を行って、厚み方向の一方に凸状である単品コイルを形成する環状コイル加工工程S2と、厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイルを、単品コイルの第1部分が単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なった状態で複数の単品コイルを組み合わせることにより、円筒状空芯コイルを形成する単品コイル組立工程S3と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルの製造方法であって、
線状のコイルを巻回することにより、環状形状を有する環状コイルを形成する環状コイル形成工程と、
前記環状コイルにおける周方向の一部である第1部分と前記環状コイルにおける周方向の残部である第2部分とを前記環状コイルの厚み方向に相対変位させることにより、前記環状コイルにおいて前記第1部分と前記第2部分との間に段差部を形成するとともに、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる加工を行って、前記厚み方向の一方に凸状である単品コイルを形成する環状コイル加工工程と、
前記厚み方向の一方に凸状である複数の前記単品コイルを、前記軸方向から見てそれぞれの凸側を前記軸線の放射方向外方に位置付けつつ前記軸線を囲む周方向に並べるとともに、単品コイルの第1部分が前記単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なった状態で前記複数の単品コイルを組み合わせることにより、円筒状空芯コイルを形成する単品コイル組立工程と、
を有する、
円筒状空芯コイルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒状空芯コイルの製造方法において、
前記環状コイル加工工程は、
前記環状コイルの前記第1部分と前記第2部分との間に段差部を形成する段曲げ工程と、
前記段曲げ工程の後、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる湾曲工程と、
を有する、
円筒状空芯コイルの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の円筒状空芯コイルの製造方法において、
前記環状コイル加工工程では、
前記段差部の形成と同時に、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる、
円筒状空芯コイルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の円筒状空芯コイルの製造方法において、
前記環状コイル加工工程では、前記第1部分及び前記第2部分を湾曲させて、前記第1部分の曲げ半径を前記第2部分の曲げ半径よりも大きくする、
円筒状空芯コイルの製造方法。
【請求項5】
軸方向に延びるピンと、
厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイルを、前記ピンに対して径方向外方の所定位置で収容して、前記軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並び且つ互いに厚み方向に重なる位置に配置する収容部と、
前記収容部に収容された前記複数の単品コイルを径方向内方にそれぞれ押圧して円筒状空芯コイルを形成する複数の押圧部と、
を有する、
円筒状空芯コイル組立装置。
【請求項6】
請求項5に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、
前記収容部の少なくとも一部が、前記押圧部として機能する、
円筒状空芯コイル組立装置。
【請求項7】
請求項6に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、
前記複数の押圧部は、それぞれ、前記軸方向の一方側端部が他方側端部よりも前記ピンに対して径方向外方に離間している傾斜状態で前記収容部に収容された前記複数の単品コイルの前記一方側端部を、径方向内方にそれぞれ押圧して、前記複数の単品コイルの前記一方側端部を、前記ピンに近づける、
円筒状空芯コイル組立装置。
【請求項8】
請求項5に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、
前記複数の押圧部を、前記複数の単品コイルに対して同期して押圧させる同期部を、さらに有する、
円筒状空芯コイル組立装置。
【請求項9】
請求項5に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、
前記収容部は、前記複数の単品コイルを、前記軸方向の一方側端部が他方側端部よりも前記ピンに対して径方向外方に離間している傾斜状態で支持する傾斜部を有する、
円筒状空芯コイル組立装置。
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、
前記ピンは、前記複数の押圧部のそれぞれの前記複数の単品コイルに対する押圧に応じて上下する、
円筒状空芯コイル組立装置。
【請求項11】
軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置して、それぞれが円筒状空芯コイルの一部を構成する複数の単品コイルを製造するための単品コイル製造装置であって、
所定の径を有する円弧状の第1外周面と、前記所定の径よりも小さい径を有する円弧状の第2外周面と、前記第1外周面と前記第2外周面との境界に位置し且つ線状のコイルが巻回された巻回体を支持する支持部とを有するワーク支持治具と、
前記ワーク支持治具の前記支持部に支持される前記巻回体を挟んで、前記ワーク支持治具と反対側に位置し、前記巻回体を前記ワーク支持治具との間に挟み込むワーク押さえ部と、
前記第1外周面に対して径方向外方に位置し、前記第1外周面に近づく方向に移動して前記ワーク支持治具によって支持された前記巻回体の一部をプレスする第1プレス部と、
前記第2外周面に対して径方向外方に位置し、前記第2外周面に近づく方向に移動して前記ワーク支持治具によって支持された前記巻回体の一部をプレスする第2プレス部と、
を有する、
単品コイル製造装置。
【請求項12】
軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルであって、
前記単品コイルは、
前記単品コイルの周方向の一部であり且つ径方向内方に湾曲する第1部分と、
前記単品コイルの周方向の残部であり且つ前記径方向内方に湾曲する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に位置する一対の段差部と、
を有し、
前記一対の段差部は、前記第1部分と前記第2部分との間を前記単品コイルの前記厚み方向に相対変位しており、
前記複数の前記単品コイルは、前記軸線の放射方向外方に凸状であり、前記軸方向から見てそれぞれの凸側が前記軸線の放射方向外方に位置する姿勢で前記軸線を囲む周方向に並んで位置し、
前記単品コイルの第1部分が前記単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なる、
円筒状空芯コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状空芯コイルの製造方法、円筒状空芯コイル組立装置、単品コイル製造装置並びに円筒状空芯コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
モータがロータコア又はステータコアを有していない、いわゆるコアレスモータが知られている。コアレスモータに用いられる空芯コイルの製作方法として様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ワイヤから作られた複数のシングルコイルから構成された巻線が開示されている。特許文献1では、シングルコイルは重なり合う瓦のように互いに重なり合っている。また、特許文献1のシングルコイルでは、一方の脚と、他方の脚との間に、半径方向へのズレ部を有する。これにより、高い充填密度を有する巻線を実現している。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、少なくとも2個の型巻コイルからなる自己支持形空芯コイルが開示されている。特許文献2の空芯コイルでは、型巻コイルが外周領域を互いにオーバラップさせた状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-124892号公報
【特許文献2】特開2014-230484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたシングルコイル及び特許文献2に記載された型巻コイルは、ズレ部を有すると共に湾曲した三次元形状である。このように特許文献1及び特許文献2のコイルは複雑な三次元形状であるため、導線の巻線を精度よく行うのは困難である。そのため、例えば、特許文献2に開示されている構成では、異径の巻線治具に導線を巻くことにより、型巻コイルが製造される。しかし、このような巻線治具を用いても、湾曲した三次元的な巻線を精度良く形成することは容易ではない。
【0006】
本発明の目的は、円筒状空芯コイルを構成する単品コイルを、精度良く簡単に形成可能な円筒状空芯コイルの製造方法、組立装置、単品コイル製造装置及び円筒状空芯コイルを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一実施形態に係る円筒状空芯コイルの製造方法は、軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルの製造方法である。前記円筒状空芯コイルの製造方法は、前記環状コイルにおける周方向の一部である第1部分と前記環状コイルにおける周方向の残部である第2部分とを前記環状コイルの厚み方向に相対変位させることにより、前記環状コイルにおいて前記第1部分と前記第2部分との間に段差部を形成するとともに、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる加工を行って、前記厚み方向の一方に凸状である単品コイルを形成する環状コイル加工工程と、前記厚み方向の一方に凸状である複数の前記単品コイルを、前記軸方向から見てそれぞれの凸側を前記軸線の放射方向外方に位置付けつつ前記軸線を囲む周方向に並べるとともに、単品コイルの第1部分が前記単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なった状態で前記複数の単品コイルを組み合わせることにより、円筒状空芯コイルを形成する単品コイル組立工程と、を有する。
【0008】
本発明の例示的な一実施形態に係る円筒状空芯コイル組立装置は、軸方向に延びるピンと、厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイルを、前記ピンに対して径方向外方の所定位置で収容して、前記軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並び且つ互いに厚み方向に重なる位置に配置する収容部と、前記収容部に収容された前記複数の単品コイルを径方向内方にそれぞれ押圧して円筒状空芯コイルを形成する複数の押圧部と、を有する。
【0009】
本発明の例示的な一実施形態に係る単品コイル製造装置は、軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置して、それぞれが円筒状空芯コイルの一部を構成する複数の単品コイルを製造するための装置である。前記単品コイル製造装置は、所定の径を有する円弧状の第1外周面と、前記所定の径よりも大きい径を有する円弧状の第2外周面と、前記第1外周面と前記第2外周面との境界に位置し且つ線状のコイルが巻回された巻回体を支持する支持部とを有するワーク支持治具と、前記ワーク支持治具の前記支持部に支持される前記巻回体を挟んで、前記ワーク支持治具と反対側に位置し、前記巻回体を前記ワーク支持治具との間に挟み込むワーク押さえ部と、前記第1外周面に対して径方向外方に位置し、前記第1外周面に近づく方向に移動して前記ワーク支持治具によって支持された前記巻回体の一部をプレスする第1プレス部と、前記第2外周面に対して径方向外方に位置し、前記第2外周面に近づく方向に移動して前記ワーク支持治具によって支持された前記巻回体の一部をプレスする第2プレス部と、を有する。
【0010】
本発明の例示的な一実施形態に係る円筒状空芯コイルは、軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルである。前記単品コイルは、前記単品コイルの周方向の一部であり且つ径方向内方に湾曲する第1部分と、前記単品コイルの周方向の残部であり且つ前記径方向内方に湾曲する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する一対の段差部と、を有する。前記一対の段差部は、前記第1部分と前記第2部分との間を前記単品コイルの前記厚み方向に相対変位しており、前記複数の前記単品コイルは、前記軸線の放射方向外方に凸状であり、前記軸方向から見てそれぞれの凸側が前記軸線の放射方向外方に位置する姿勢で前記軸線を囲む周方向に並んで位置し、前記単品コイルの第1部分が前記単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の例示的な一実施形態に係る円筒状空芯コイルの製造方法、円筒状空芯コイル組立装置、単品コイル製造装置及び円筒状空芯コイルによれば、円筒状空芯コイルを構成する単品コイルを、精度良く簡単に形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る円筒状空芯コイルの一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る円筒状空芯コイルの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、円筒状空芯コイルの製造に用いる環状コイルの一例を示す斜視図である。
図3B図3Bは、環状コイルの一例を示す平面図である。
図3C図3Cは、環状コイルの一例を示す側面図である。
図4A図4Aは、段差部が形成された段差付きコイルの一例を示す斜視図である。
図4B図4Bは、段差付きコイルの一例を示す平面図である。
図4C図4Cは、段差付きコイルの一例を示す側面図である。
図5A図5Aは、湾曲加工が行われた単品コイルの一例を示す斜視図である。
図5B図5Bは、単品コイルの一例を示す平面図である。
図5C図5Cは、単品コイルの一例を示す側面図である。
図5D図5Dは、図5Bに示すVD-VD線の拡大断面図である。
図6図6は、単品コイルを組み立てる単品コイル組立工程を説明するための図である。
図7図7は、円筒状空芯コイルを軸方向から見た図である。
図8A図8Aは、実施形態に係る段曲げ装置の概略構成の一例を模式的に示す断面図である。
図8B図8Bは、図8Aに示す二点鎖線の枠内の拡大図であり、段曲げ装置による段曲げ加工を説明するための図である。
図8C図8Cは、図8Bに示す段曲げ装置の平面図である。
図9A】実施形態に係る単品コイル製造装置の概略構成の一例を模式的に示す側面図である。
図9B図9Bは、図9Aに示す矢印D25の方向から見た単品コイル製造装置の平面図である。
図9C図9Cは、単品コイル製造装置による湾曲加工の様子を模式的に示す側面図である。
図10A図10Aは、実施形態に係る円筒状空芯コイル組立装置の概略構成の一例を模式的に示す側面図である。
図10B図10Bは、円筒状空芯コイル組立装置に単品コイルを収容したときの一例を示す拡大平面図である。
図10C図10Cは、押圧時の円筒状空芯コイル組立装置の一例を示す側面図である。
図11A図11Aは、変形例に係る円筒状空芯コイル組立装置40の概略構成の一例を模式的に示す側面図である。
図11B図11Bは、円筒状空芯コイル組立装置による押圧の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0014】
なお、以下の説明では、円筒状空芯コイルの中心軸である軸線P1と平行な方向を「軸方向」、軸線P1に直交する方向を「径方向」、軸線P1を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ称する。また、周方向のうち、構成部材を所定の方向から見て時計回りの方向を「周方向一方側」、反時計周りの方向を「周方向他方側」と称する。ただし、この方向の定義により、本発明に係る円筒状空芯コイルの使用時の向きを限定する意図はない。
【0015】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0016】
[円筒状空芯コイルの構成]
図1は、実施形態に係る円筒状空芯コイル1の一例を示す図である。なお、図1に示す矢印D1は、円筒状空芯コイル1の上下方向を示す。図1に示す円筒状空芯コイル1は、回転子の鉄芯を有さないコアレスモータ又はスロットを有さないスロットレスモータに組み込まれるコイルである。
【0017】
図1に示すように、円筒状空芯コイル1は、6つの単品コイル70を有する。6つの単品コイル70は、円筒状空芯コイル1の軸方向に延びる軸線P1を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する。
【0018】
単品コイル70は、線状のコイルが巻回された巻回体である。詳しくは後述するように、単品コイル70は、第1部分71と、第2部分72と、一対の段差部73とを有する。
【0019】
第1部分71は、単品コイル70の周方向の一部であり、第2部分72は、単品コイル70の周方向の残部である。第1部分71及び第2部分72は、単品コイル70の厚み方向の一方に湾曲する。このため、単品コイル70は、軸線P1の放射方向外方に凸状である。
【0020】
一対の段差部73は、第1部分71と第2部分72との間に位置する。段差部73において、第1部分71及び第2部分72は厚み方向に相対変位している。一対の段差部73は、円筒状空芯コイル1の軸方向において、単品コイル70の両端部に位置する。
【0021】
6つの単品コイル70は、軸方向から見てそれぞれの凸側が軸線P1の放射方向外方に位置する姿勢で軸線P1を囲む周方向に並んで位置する。また、単品コイル70の第1部分71が、単品コイル70に対して周方向に隣り合う単品コイル70の第2部分72の外面上に重なっている。
【0022】
図1中の拡大図に示すように、単品コイル70は、巻線の一方端部75a及び他方端部75bを有する。巻線の一方端部75a及び他方端部75bは、それぞれ、他の単品コイル70の巻線の端部または電源等と電気的に接続されている。これにより、複数の単品コイル70が電気的に接続されているとともに、複数の単品コイル70が前記電源に電気的に接続されている。なお、他の図面では、説明の便宜のため、単品コイル70における巻線の一方端部75a及び他方端部75bの図示を省略する。
【0023】
[円筒状空芯コイルの製造方法]
図2図7を用いて、実施形態に係る円筒状空芯コイル1の製造方法を説明する。図2は、実施形態に係る円筒状空芯コイル1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3Aは、円筒状空芯コイル1の製造に用いる環状コイル50の一例を示す斜視図である。図3Bは、環状コイル50の一例を示す平面図である。図3Cは、環状コイル50の一例を示す側面図である。図4Aは、段差部63が形成された段差付きコイル60の一例を示す斜視図である。図4Bは、段差付きコイル60の一例を示す平面図である。図4Cは、段差付きコイル60の一例を示す側面図である。図5Aは、湾曲加工が行われた単品コイル70の一例を示す斜視図である。図5Bは、単品コイル70の一例を示す平面図である。図5Cは、単品コイル70の一例を示す側面図である。図5Dは、図5Bに示すVD-VD線の拡大断面図である。図6は、単品コイル70を組み立てる単品コイル組立工程を説明するための図である。図7は、円筒状空芯コイル1を軸方向から見た図である。
【0024】
(環状コイル形成工程)
まず、図2及び図3A図3Cに示すように、環状コイル形成工程S1において、線状のコイルを巻回することにより、環状の環状コイル50を形成する。環状コイル形成工程S1において、環状コイル50を6つ形成する。なお、本明細書において、環状は、円形及び楕円形だけでなく、矩形及びその他の多角形も含む。環状コイル50は、図3A図3Cに示すように、一例として、ひし形形状を有する。
【0025】
(環状コイル加工工程)
次に、図2に示すように、環状コイル形成工程S1で形成した環状コイル50を加工する環状コイル加工工程S2が行われる。具体的には、まず、図3A図3Cに示すように、環状コイル50における周方向の一部である第1部分51と環状コイル50における周方向の残部である第2部分52とを環状コイル50の厚み方向に相対変位させる段曲げ工程が行われる。すなわち、図3Cに示すように、第1部分51を厚み方向の一方である矢印D51の方向に相対変位させ、第2部分52を厚み方向の他方である矢印D52の方向に相対変位させる。
【0026】
これにより、図4A図4Cに示すように、段差付きコイル60において、第1部分61と第2部分62との間に段差部63が形成される。
【0027】
続いて、図4A図4Cに示すように、第1部分61及び第2部分62を厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる湾曲工程が行われる。すなわち、第1部分61を厚み方向である矢印D61の方向に湾曲させるとともに、第2部分62を、厚み方向である矢印D62の方向に湾曲させる。なお、環状コイル加工工程S2では、第1部分61及び第2部分62を湾曲させる際に、第1部分61の曲げ半径を第2部分62の曲げ半径よりも大きくする。
【0028】
これにより、図5A図5Dに示すように、厚み方向の一方に凸状である単品コイル70が形成される。特に図5Dに示すように、単品コイル70の第1部分71は、湾曲中心P70を基準に曲げ半径R1で湾曲されている。また、単品コイル70の第2部分72は、湾曲中心P70を基準に曲げ半径R2で湾曲されている。ここで、単品コイル70の第1部分71の曲げ半径R1は、第2部分72の曲げ半径R2よりも大きい。
【0029】
この構成によれば、単品コイル70の第1部分71を、前記単品コイル70に対して周方向に隣り合う単品コイル70の第2部分72の外面上に重ねた状態で、第1部分71及び第2部分72に生じる隙間の大きさを低減できる。よって、円筒状空芯コイル1の占積率が向上する。
【0030】
上述した6つの環状コイル50について、それぞれ、環状コイル加工工程S2を行って、厚み方向の一方に凸状である6つの単品コイル70を得る。
【0031】
(単品コイル組立工程)
次に、単品コイル組立工程S3において、環状コイル加工工程S2で得られた6つの単品コイル70を組み合わせる。
【0032】
具体的には、図6に示すように、まず、厚み方向の一方に凸状である6つの単品コイル70を、軸方向から見て、それぞれの凸側を軸線P1の放射方向外方に位置付けつつ軸線P1を囲む周方向に並べる。図6に二点鎖線の仮想線で示す円筒状空芯コイル1の外周面Tに沿って、単品コイル70A~70Fの第1部分71の外面を配置する。
【0033】
そして、6つの単品コイル70A~70Fを組み合わせて、単品コイル70Aの第1部分71を、単品コイル70Aに対して周方向に隣り合う単品コイル70Bの第2部分72の外面上に位置付ける。その後、単品コイル70Bの第2部分72が単品コイル70Aの第1部分71の内側に対して周方向に移動して、軸線P1を放射方向外方から見て、単品コイル70Bの第2部分72が単品コイル70Aの第1部分71に重なる位置に位置付けられる。これにより、図7及び図1に示すような円筒状空芯コイル1が形成される。円筒状空芯コイル1を構成する単品コイル70A~70Fにおけるそれぞれの第1部分71の外面が、円筒状空芯コイル1の外周面を構成する。
【0034】
以上で説明したように、本実施形態に係る円筒状空芯コイル1の製造方法は、軸方向に延びる軸線P1を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイル70を有する。円筒状空芯コイル1の製造方法は、環状コイル形成工程S1と、環状コイル加工工程S2と、単品コイル組立工程S3とを有する。環状コイル形成工程S1では、線状のコイルを巻回することにより、環状形状を有する複数の環状コイル50が形成される。環状コイル加工工程S2では、環状コイル50における周方向の一部である第1部分51と環状コイル50における周方向の残部である第2部分52とを環状コイル50の厚み方向に相対変位させる。これにより、第1部分61と第2部分62との間に段差部63を形成した段差付きコイル60が形成される。また、環状コイル加工工程S2では、第1部分61及び第2部分62を厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる加工を行う。これにより、厚み方向の一方に凸状である単品コイル70が形成される。単品コイル組立工程S3では、厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイル70を、軸方向から見てそれぞれの凸側を軸線P1の放射方向外方に位置付けつつ軸線P1を囲む周方向に並べるとともに、単品コイル70の第1部分71が前記単品コイル70に対して周方向に隣り合う単品コイル70の第2部分72の外面上に重なった状態で複数の単品コイル70を組み合わせる。これにより、円筒状空芯コイル1が形成される。
【0035】
上述の製造方法では、環状コイル形成工程S1において、段差のない平坦な環状のコイル50が形成される。このような段差のない平坦な環状コイル50は、単純な巻線工程によって容易に製作できる。
【0036】
また、環状コイル加工工程S2において、環状コイル50に段差部63を形成するとともに湾曲加工を行う。段差部63の形成加工及び環状コイル50の湾曲加工は公知の加工機械によって実現できる。環状コイル加工工程S2によって得られる単品コイル70は、それぞれ、円筒状空芯コイル1の外周面の一部を構成する。
【0037】
以上で説明したように、単品コイル組立工程S3において、段差部73を有し且つ厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイル70Aを組み立てることにより、円筒状空芯コイル1の組み立てが完了する。
【0038】
よって、本実施形態の円筒状空芯コイル1の製造方法によって、円筒状空芯コイルを組み立てるための単品コイル70を、精度良く簡単に形成可能である。すなわち、湾曲した三次元的な巻線を避けることができるため、環状コイルの形成工程は、簡易な巻線工程によって実現できる。このため、量産に適した円筒状空芯コイルの製造方法が得られる。また、上述した構成の円筒状空芯コイル1は、上記円筒状空芯コイルの製造方法によって効率良く製造できる。
【0039】
また、環状コイル加工工程S2は、環状コイル50の第1部分51と第2部分52との間に段差部63を形成する段曲げ工程と、前記段曲げ工程の後、段差付きコイル60の第1部分61及び第2部分62を厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる湾曲工程と、を有する。
【0040】
この構成によれば、環状コイル加工工程S2では、環状コイル50に対する段曲げ工程の後、段差付きコイル60の第1部分61及び第2部分62を厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる湾曲工程が行われる。よって、これらの段曲げ工程及び湾曲工程の組み合わせによって、環状コイル50を加工できる。
【0041】
このため、段差部73を有し、且つ、厚み方向の一方に凸状である単品コイル70を巻き線によって形成する場合に比べて、単品コイル70を容易に製造することができる。
【0042】
よって、円筒状空芯コイル1を製造する際のタクトタイムを短縮できる。
【0043】
[段曲げ装置]
次に、図8A~8Cを用いて、円筒状空芯コイル1の製造方法における段曲げ加工を行うための段曲げ装置について説明する。
【0044】
図8Aは、実施形態に係る段曲げ装置10の概略構成の一例を模式的に示す断面図である。図8Bは、図8Aに示す二点鎖線の枠内の拡大図であり、段曲げ装置10による段曲げ加工を説明するための図である。図8Cは、図8Bに示す段曲げ装置10の平面図である。なお、図8Aに示す矢印D12は、段曲げ装置10の上下方向を示す。
【0045】
段曲げ装置10は、未加工の環状コイル50に対して段曲げ加工を行う。
【0046】
図8Aに示すように、段曲げ装置10は、土台部11と、押圧部12と、ワーク浮き押さえ部13と、ストッパ部14と、当て部15と、固定ピン16と、固定ピンハンドル17とを有する。
【0047】
土台部11は、上端面に、ストッパ部14及び当て部15を有する。また、土台部11の上方には、押圧部12及びワーク浮き押さえ部13が位置する。
【0048】
押圧部12は、矢印D12の上方向に上昇及び下方向に下降し、ワークとしての環状コイル50をプレスする。
【0049】
ワーク浮き押さえ部13は、押圧部12が下降して環状コイル50をプレス加工する際に下降し、環状コイル50の浮きを押さえる。
【0050】
ストッパ部14は、押圧部12の下降時に、押圧部12の下降動作を規制する。これにより、押圧部12が下降しすぎて、環状コイル50がつぶれるのを防ぐことができる。
【0051】
当て部15は、段曲げ加工時に、環状コイル50の第1部分51を所定の位置で支持する。すなわち、段曲げ加工時において、当て部15の上端面上には、環状コイル50の第1部分51が位置する。
【0052】
固定ピン16は、段曲げ加工時に、環状コイル50を固定する。固定ピン16は、固定ピンハンドル17の操作により、矢印D16で示す水平方向に移動して、環状コイル50の内方から外方に向かう方向に、第1部分51を押圧する。これにより、環状コイル50を土台部11に固定する。
【0053】
押圧部12が矢印D12の下方向に降下すると、押圧部12の下端面によって、環状コイル50の第2部分52が押し下げられる一方、第1部分51は、当て部15によって支持されている。これにより、第1部分51は、第2部分52に対し、当て部15の厚み分、土台部11から矢印D12の上下方向に離間して位置する。
【0054】
前記段曲げ加工は、押圧部12の下端面が、ストッパ部14の上端面まで下降することにより、完了する。これにより、図8B及び図8Cに示すように、段差付きコイル60の第1部分61に対して、第2部分62は、相対的に厚み方向の一方に位置する。よって、第1部分61と第2部分62との間に段差部63が形成される。
【0055】
[単品コイル製造装置]
次に、図9A及び図9Bを用いて、円筒状空芯コイルの製造方法における湾曲加工を行うための単品コイル製造装置20について説明する。
【0056】
図9Aは、実施形態に係る単品コイル製造装置20の概略構成の一例を模式的に示す側面図である。図9Bは、図9Aに示す矢印D25の方向から見た単品コイル製造装置20の平面図である。図9Cは、単品コイル製造装置20による湾曲加工の様子を模式的に示す側面図である。
【0057】
図9A及び図9Bに示す単品コイル製造装置20は、段差部63を有する段差付きコイル60に湾曲加工を行って、円筒状空芯コイル1を組み立てるための単品コイル70を製造するための装置である。
【0058】
図9A及び図9Bに示すように単品コイル製造装置20は、ワーク支持治具21と、ワーク押さえ部25と、第1プレス部26と、第2プレス部27と、第3プレス部28と、第4プレス部29とを有する。
【0059】
ワーク支持治具21は、ワークとしての段差付きコイル60を支持する。ワーク支持治具21は、湾曲加工の曲げ径を決める外周面を有する。より具体的には、ワーク支持治具21は、第1外周面22、第2外周面23及び支持部24を有する。
【0060】
第1外周面22は、中心P61を基準として所定の半径R22を有する円弧状の形状を有する。
【0061】
第2外周面23は、中心P61を基準とし且つ所定の半径R22よりも小さい径R23を有する円弧状の形状を有する。
【0062】
支持部24は、第1外周面22と第2外周面23との境界に位置し且つ線状のコイルが巻回された巻回体としての段差付きコイル60を支持する。段差付きコイル60は、段差部63で支持部24によって支持される。
【0063】
ワーク押さえ部25は、ワーク支持治具21の支持部24に支持される巻回体としての段差付きコイル60を挟んで、ワーク支持治具21と反対側に位置する。また、ワーク押さえ部25は、ワーク支持治具21に対して矢印D25の方向に移動して段差付きコイル60をワーク支持治具21との間に挟み込む。
【0064】
第1プレス部26及び第3プレス部28は、第1外周面22に対して径方向外方に位置する。
【0065】
第1プレス部26は、第1外周面22に近づく方向である矢印D26の方向に移動してワーク支持治具21によって支持された段差付きコイル60の一部をプレスする。また、第3プレス部28は、第1外周面22に近づく方向である矢印D28の方向に移動してワーク支持治具21によって支持された段差付きコイル60の別の一部をプレスする。第1プレス部26及び第3プレス部28は、それぞれ、径方向内側に、第1外周面22の一部に沿った形状の曲面26a及び曲面28aを有する。
【0066】
第1プレス部26によるプレス時には、第1プレス部26の曲面26aと第1外周面22の一部とにより、段差付きコイル60における第1部分61の一部が挟み込まれる。また、第3プレス部28の曲面28aと、第1外周面22の一部とにより、段差付きコイル60における第1部分61の別の一部が挟み込まれる。
【0067】
第2プレス部27及び第4プレス部29は、第2外周面23に対して径方向外方に位置する。
【0068】
第2プレス部27は、第2外周面23に近づく方向である矢印D27の方向に移動してワーク支持治具21によって支持された段差付きコイル60における第2部分62の一部をプレスする。また、第4プレス部29は、第2外周面23に近づく方向である矢印D29の方向に移動してワーク支持治具21によって支持された段差付きコイル60における第2部分62の別の一部をプレスする。第2プレス部27及び第4プレス部29は、それぞれ、径方向内側に、第2外周面23の一部に沿った形状の曲面27a及び曲面29aを有する。
【0069】
第2プレス部27によるプレス時には、第2プレス部27の曲面27aと第2外周面23の一部とにより、段差付きコイル60の第2部分62の一部が挟み込まれる。また、第4プレス部29の曲面29aと、第2外周面23の一部とにより、段差付きコイル60の第2部分62の別の一部が挟み込まれる。
【0070】
以上のように、ワーク押さえ部25とワーク支持治具21との間に挟み込まれた段差付きコイル60が、第1プレス部26、第2プレス部27、第3プレス部28及び第4プレス部29によってプレスされることにより、前記湾曲加工が完了する。これにより、図9Cに示すように、単品コイル70が形成される。
【0071】
以上に説明したように、単品コイル製造装置20は、軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置して、それぞれが円筒状空芯コイルの一部を構成する複数の単品コイル70を製造する装置である。単品コイル製造装置20は、ワーク支持治具21と、ワーク押さえ部25と、第1プレス部26と、第2プレス部27と、第3プレス部28と、第4プレス部29とを有する。ワーク支持治具21は、所定の径を有する円弧状の第1外周面22と、前記所定の径よりも小さい径を有する円弧状の第2外周面23と、第1外周面22と第2外周面23との境界に位置し且つ線状のコイルが巻回された巻回体としての段差付きコイル60を支持する支持部24とを有する。ワーク押さえ部25は、ワーク支持治具21の支持部24に支持される段差付きコイル60を挟んで、ワーク支持治具21と反対側に位置し、段差付きコイル60をワーク支持治具21との間に挟み込む。第1プレス部26及び第3プレス部28は、第1外周面22に対して径方向外方に位置し、第1外周面22に近づく方向に移動してワーク支持治具21によって支持された段差付きコイル60の一部をプレスする。第2プレス部27及び第4プレス部29は、第2外周面23に対して径方向外方に位置し、第2外周面23に近づく方向に移動してワーク支持治具21によって支持された段差付きコイル60の一部をプレスする。
【0072】
この構成によれば、ワーク支持治具21とワーク押さえ部25とによって、線状のコイルが巻回された段差付きコイル60を挟み込んで固定できる。また、固定された段差付きコイル60に対し、第1外周面22側では、第1プレス部26が段差付きコイル60の一部をプレスし、第2外周面23側では、第2プレス部27が段差付きコイル60の一部をプレスする。
【0073】
すなわち、単品コイル製造装置20によれば、巻回体としての段差付きコイル60を安定して固定した状態で、第1プレス部26及び第2プレス部27のプレス動作により、段差部63を有する段差付きコイル60に曲率半径が異なる複数の湾曲部を形成できる。
【0074】
このようにして、曲率半径が異なる複数の湾曲部が形成された単品コイル70は、円筒状空芯コイル1の組み立てに用いられる。
【0075】
よって、円筒状空芯コイル1の組み立てに用いられる単品コイル70を精度よく製造できる。
【0076】
[円筒状空芯コイル組立装置]
次に、図10A図10Cを用いて、単品コイル70を用いて円筒状空芯コイルを組み立てる円筒状空芯コイル組立装置30について説明する。
【0077】
図10Aは、実施形態に係る円筒状空芯コイル組立装置30の概略構成の一例を模式的に示す側面図である。図10Bは、円筒状空芯コイル組立装置30に単品コイルを収容したときの一例を示す拡大平面図である。図10Cは、押圧時の円筒状空芯コイル組立装置30の一例を示す側面図である。なお、図10A及び図10Cに示す矢印D30は、円筒状空芯コイル組立装置30の上下方向を示す。また、図10A及び図10Cに示す矢印D31は、ピン31の上下方向を示す。
【0078】
円筒状空芯コイル組立装置30は、段差部73を有すると共に単品コイル70の厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイル70を用いて、円筒状空芯コイルを組み立てる。すなわち、円筒状空芯コイル組立装置30は、軸方向に延びる軸線P1を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイル70を有する円筒状空芯コイル1を製造する装置である。
【0079】
図10Aに示すように、円筒状空芯コイル組立装置30は、ピン31と、収容部としての受け台32と、複数の押圧部33と、シューター34とを有する。
【0080】
ピン31は、軸方向である矢印D30に示す上下方向に延びる軸線P30の方向に延びる。ピン31の軸線P30は、円筒状空芯コイルの軸線P1と一致する。また、ピン31は、矢印D31に示す上下方向に移動可能である。矢印D31に示すピン31の上下方向は、矢印D30に示す円筒状空芯コイル組立装置30の上下方向と平行な方向である。
【0081】
受け台32は、厚み方向の一方に凸状である6つの単品コイル70の下部を、ピン31の径方向外方の所定位置で収容する収容部32aを有する。収容部32aは、受け台32の上部中央に位置する凹部である。受け台32は、収容部32aの側面に、底部に向かうほど平面視で受け台32の内周側に位置する斜面を含む傾斜部32bを有する。これにより、受け台32は、収容部32a内に、6つの単品コイル70を、軸方向に延びる軸線P30を囲んで周方向に並び且つ互いに厚み方向に重なる位置に配置することができる。すなわち、受け台32の傾斜部32bは、複数の単品コイル70を、軸方向の一方側端部75が他方側端部76よりもピン31に対して径方向外方に離間している傾斜状態で支持する。この構成によれば、収容部32aに複数の単品コイル70を安定した姿勢で配置できる。よって、複数の単品コイル70の組立精度が向上できる。
【0082】
複数の押圧部33は、受け台32よりも上方に位置し、黒塗り矢印D33で示す方向である径方向内方に移動可能である。複数の押圧部33は、前記径方向内方に移動することにより、受け台32の収容部32aに収容された6つの単品コイル70を、前記径方向内方にそれぞれ押圧する。なお、本実施形態では、複数の押圧部33は、6つの部品を含む。以下において、複数の押圧部33をそれぞれ区別する必要がある場合は、押圧部33A~33Fと表記する。
【0083】
シューター34は、単品コイル70を、軸方向の一端側が軸方向の他端側よりも径方向外方に位置する傾斜状態で、受け台32の収容部32aに対して上方から供給する。
【0084】
更に図10Aを用いて、円筒状空芯コイル組立装置30における円筒状空芯コイルの組み立て動作について説明する。
【0085】
まず、シューター34が、単品コイル70を受け台32の収容部32aに対して上方から供給する。収容部32a内に供給された単品コイル70は、ピン31によって、収容部32aに対する径方向内側の位置が決められる。シューター34は、押圧部33が単品コイル70を押圧する際には、受け台32によって支持された単品コイル70よりも上方に退避する。
【0086】
図10Bに示すように、所定位置まで移動した押圧部33A~33Fは、受け台32に前記傾斜状態で収容された単品コイル70を径方向内方にそれぞれ押圧する。これにより、図10Aに示すように、押圧部33A~33Fは、複数の単品コイル70一方側端部75の位置を、ピン31に近づけることができる。
【0087】
ピン31は、複数の押圧部33A~33Fのそれぞれの複数の単品コイル70に対する押圧に応じて上下する。
【0088】
図10Cを用いて、ピン31の動作についてより具体的に説明する。なお、図10Cでは、説明の便宜上、単品コイル70A、70Bだけを示し、その他の単品コイルの記載を省略している。
【0089】
上述のような押圧部33A~33Fによる複数の単品コイル70に対する径方向内方への押圧によって、単品コイル70A、70Bが径方向内方に移動して単品コイル70A、70Bの一方側端部75がピン31の軸線P30に近づくと、単品コイル70Bの第2部分72が、単品コイル70Aの第1部分71に対して径方向内方に移動する。このとき、単品コイル70Bの第2部分72において軸方向の中央に位置する中間部72aは、一時的に、円筒状空芯コイル1における径方向位置よりも径方向内方に突出する。
【0090】
上述のように単品コイル70Bの中間部72aが円筒状空芯コイル1における径方向位置よりも径方向内方に突出する際に、ピン31は、単品コイル70Bの中間部72aよりも下方に下降する。これにより、複数の単品コイル70を組み立てる際に、単品コイル70がピン31と干渉するのを防止できる。
【0091】
押圧部33A~33Fによって複数の単品コイル70をさらに径方向内方に押圧すると、単品コイル70Bの第2部分72の中間部72aは、径方向外方に移動して、単品コイル70Aの第1部分71の径方向内側に近づく。この状態では、ピン31は元の位置まで上昇する。
【0092】
これにより、押圧部33A~33Fによって、単品コイル70Bの第2部分72を単品コイル70Aの第1部分71と重なる領域が増える方向に移動させる際に、ピン31は、複数の単品コイル70の径方向内方に位置する。そのため、ピン31によって、円筒状空芯コイル1の内径が決まる。
【0093】
この構成によれば、複数の単品コイル70が押圧に応じて径方向内方に移動する際に、複数の単品コイル70A、70Bの中間部72aが径方向内方に一時的に突出してピン31が干渉することを防止しつつ、ピン31によって円筒状空芯コイル1の内径の寸法精度を確保できる。よって、円筒状空芯コイル1の組立精度が向上できる。
【0094】
以上に説明したように、円筒状空芯コイル組立装置30は、ピン31と、受け台32の収容部32aと、複数の押圧部33A~33Fと、を有する。ピン31は、軸方向に延びている。収容部32aは、厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイル70を、ピン31に対して径方向外方の所定位置で収容して、軸方向に延びる軸線P30を囲んで周方向に並び且つ互いに厚み方向に重なる位置に配置する。複数の押圧部33A~33Fは、収容部32aに収容された複数の単品コイル70を径方向内方にそれぞれ押圧して円筒状空芯コイル1を形成する。
【0095】
この構成によれば、収容部32aに収容される複数の単品コイル70を径方向内方に押圧することにより、ピン31と複数の押圧部33A~33Fとの間に複数の単品コイル70が挟み込まれる。このため、ピン31によって、円筒状空芯コイル1の内径の寸法精度を確保できるとともに、複数の押圧部33A~33Fによって、円筒状空芯コイル1の外径の寸法精度を確保できる。
【0096】
このようにして、円筒状空芯コイル組立装置30によって、複数の単品コイル70を用いて円筒状空芯コイル1を組み立て可能である。このため、段差部73を有し、且つ、厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイル70を、互いに重ね合わせた状態で周方向に並べて、円筒状空芯コイルを容易に組み立てることができる。
【0097】
(円筒状空芯コイル組立装置の変形例)
次に、図11A及び図11Bを用いて、円筒状空芯コイルを組み立てる円筒状空芯コイル組立装置40の変形例について説明する。図11Aは、変形例に係る円筒状空芯コイル組立装置40の概略構成の一例を模式的に示す側面図である。図11Bは、円筒状空芯コイル組立装置による押圧の様子を示す側面図である。なお、図11Aに示す矢印D40は、円筒状空芯コイル組立装置40の上下方向を示す。
【0098】
図11Aに示すように、変形例に係る円筒状空芯コイル組立装置40は、クランプ構造の押圧部43A,43Bを有する点で、上述の実施形態に係る円筒状空芯コイル組立装置30と異なる。以下では、実施形態と同一の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0099】
押圧部43A,43Bは、側方から見てL字状の部材である。押圧部43A,43Bの端部は、土台41に対して、回転軸P43A、P43Bを中心として回転可能に支持されている。押圧部43A,43Bの回転動作は、図示しないリンク機構などの同期部によって同期される。図11A及び図11Bでは、押圧部43Aの回転方向を矢印R43Aで示し、押圧部43Bの回転方向を矢印R43Bで示す。
【0100】
押圧部43A,43Bは、回転軸P43A、P43Bに接続される部分の径方向内側に、側面部44A,44Bを有する。側面部44A,44Bは、押圧部43A,43Bにおいて上下方向に延びる面を有する。側面部44A,44Bは、押圧部43A,43Bが回転軸P43A,P43Bを中心として回転した際に、軸線P40に対する傾斜角度が変化する。すなわち、側面部44A,44Bの位置は、押圧部43A,43Bの回転によって、軸線P40に対して上端部が下端部よりも離間している傾斜位置と、軸線Pに対して平行な起立位置とに変化する。
【0101】
側面部44A,44Bは、前記傾斜位置に位置している場合、単品コイル70を支持する。すなわち、押圧部43A,43Bは、収容部の一部として機能する。
【0102】
なお、円筒状空芯コイル組立装置40は、円筒状空芯コイル組立装置30と同様、6つの押圧部を有するが、その他の押圧部の構成については、押圧部43A,43Bと同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0103】
円筒状空芯コイル組立装置40は、土台41の上端面であって、ピン31に対して径方向外方の位置に、収容部の一部としての載置部42を有する。
【0104】
押圧時には、円筒状空芯コイル組立装置40は、図11Bに示すように、複数の押圧部43A,43Bが、同期して回転軸P43A、P43Bを中心として矢印R43A、R43Bの上方向に回転する。同期部によって、複数の押圧部43A,43Bは、複数の単品コイル70に対して同期して押圧を行う。
【0105】
この構成によれば、上述のような複数の押圧部43A,43Bの同期した押圧により、複数の押圧部43A,43Bが、複数の単品コイル70に対する押圧を同時に行う。このため、例えば、押圧部43A及び43Bによって押圧された単品コイル70同士が干渉することを防止できる。
【0106】
また、押圧部43A,43Bの回転によって、押圧部43A,43Bの側面部44A,44Bは、軸線P40に対して平行な起立位置に位置付けられる。これにより、複数の単品コイル70の上側端部を、ピン31に近づけることができる。
【0107】
また、ピン31は、上述した円筒状空芯コイル組立装置30と同様、押圧部43A,43Bの側面部44A,44Bの立ち上がり動作に応じて、矢印D40で示す上下方向に移動する。これにより、複数の単品コイル70が押圧されて径方向内方に移動する際に、複数の単品コイル70がピン31に干渉することを防止できる。
【0108】
また、押圧部43A,43Bは、上部に、径方向内方に突出する上部規制部45A、45Bを有する。図11Bに例示するように、押圧部43A,43Bによる押圧の完了時に、ピン31は、上部規制部45A、45Bと接触する位置に位置付けられている。
【0109】
以上のような押圧部43A,43Bの動作により、単品コイル70が、押圧部43A,43Bの側面部44A,44B及びピン31に挟み込まれて、円筒状空芯コイル1が形成される。
【0110】
以上に説明したように、円筒状空芯コイル組立装置40では、前記収容部の少なくとも一部が、前記押圧部として機能する。
【0111】
この構成によれば、押圧部43A,43Bとして機能する収容部の少なくとも一部が、収容部に収容される複数の単品コイル70を径方向内方に押圧する。このため、円筒状空芯コイル組立装置40を構成する部品点数を削減できる。
【0112】
また、円筒状空芯コイル組立装置40では、収容部の一部として機能する複数の押圧部43A,43Bには、それぞれ、複数の単品コイル70が、軸方向の一方側端部75が他方側端部76よりもピン31に対して径方向外方に離間している傾斜状態で収容される。また、複数の押圧部43A,43Bは、複数の単品コイル70の一方側端部75を、径方向内方にそれぞれ押圧して、複数の単品コイル70の一方側端部75を、ピン31に近づける。
【0113】
この構成によれば、複数の押圧部43A,43Bが、複数の単品コイル70を傾斜状態で支持する。このため、複数の単品コイル70を安定した状態で支持できる。また、上述の構成では、複数の押圧部43A,43Bの押圧によって、複数の単品コイル70の一方側端部75の位置を、ピン31に近づける。
【0114】
すなわち、複数の押圧部43A,43Bが複数の単品コイル70を押圧すると、複数の単品コイル70がそれぞれ円筒状空芯コイル組立装置40の上下方向に沿う位置に位置付けられる。これにより、複数の単品コイル70が周方向に配置された円筒状空芯コイル1を容易に組み立てることが可能である。
【0115】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0116】
前記実施の形態では、円筒状空芯コイル1は、6つの単品コイル70を有する。これに限られず、円筒状空芯コイルは、5つ以下または7つ以上の複数の単品コイルを有していてもよい。
【0117】
前記実施形態では、環状コイル加工工程S2において、段曲げ工程及び湾曲工程が順番に行われる。これに限られず、環状コイル加工工程において、段差部を形成するのと同時に、第1部分及び第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させてもよい。この構成によれば、前記段差部を有し、且つ、前記厚み方向の一方に凸状である前記複数の単品コイルの形状を巻き線によって形成する場合に比べて、単品コイルを容易に製造できる。また、段曲げ工程及び湾曲工程の2段階の工程に比べて、工程を削減できる。よって、円筒状空芯コイル1を製造するタクトタイムが短縮できる。
【0118】
前記実施形態では、環状コイル加工工程S2では、第1部分61及び第2部分62を湾曲させる際に、第1部分61の曲げ半径を、第2部分62の曲げ半径よりも大きくする。これに限られず、第1部分の曲げ半径は、第2部分の曲げ半径よりも小さくてもよい。また、第1部分の曲げ半径は、第2部分の曲げ半径と同じであってもよい。
【0119】
前記実施形態では、単品コイル70Aの第1部分71が、単品コイル70Aに対して周方向に隣り合う単品コイル70Bの第2部分72の外面上に重なった状態で、6つの単品コイル70A~70Fを組み合わせる。以上では特に説明していなかったが、単品コイル70Aの第1部分71は、単品コイル70Aに対して周方向に隣り合う単品コイル70B以外の単品コイル70C~70Fの少なくとも1つの第2部分72の外面上に重なっていてもよい。
【0120】
前記実施形態では、受け台32の傾斜部32bは、複数の単品コイル70を、軸方向の一方側端部75が他方側端部76よりもピン31に対して径方向外方に離間している傾斜状態で支持する。これに限られず、受け台は、収容する複数の単品コイルが直立した状態で、複数の単品コイルを支持してもよい。
【0121】
前記実施形態における円筒状空芯コイル組立装置の変形例では、同期部が、押圧部43A,43Bのそれぞれの複数の単品コイル70に対する押圧を、同期させる。これに限られず、押圧部43A,43Bは、互いに同期せずにそれぞれ独立して上記押圧を行ってもよい。
【0122】
前記実施形態における円筒状空芯コイル組立装置の変形例では、押圧部43A,43Bが収容部の一部である。これに限られず、押圧部と収容部とは独立した部材であってもよい。
【0123】
前記実施形態では、ピン31は、押圧部33A~33F,43A,43Bの動作に応じて、上下方向に移動する。これに限られず、ピンの位置は、押圧部による押圧動作の過程で一定であってもよい。
【0124】
前記実施形態では、円筒状空芯コイル組立装置30において、シューター34が単品コイル70を受け台32に供給する。これに限られず、単品コイルはロボットアームを用いて供給してもよいし、手作業で供給してもよい。
【0125】
前記実施形態では、単品コイル製造装置20において、ワーク押さえ部25とワーク支持治具21との間に挟み込まれた段差付きコイル60が、第1プレス部26、第2プレス部27、第3プレス部28及び第4プレス部29によってプレスされる。これに限られず、第1プレス部26及び第3プレス部28を単一の部材によって構成してもよいし、第2プレス部27及び第4プレス部29を単一の部材によって構成してもよい。
【0126】
(構成例)
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
【0127】
(1)軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルの製造方法であって、円筒状空芯コイルの製造方法は、線状のコイルを巻回することにより、環状形状を有する複数の環状コイルを形成する環状コイル形成工程と、前記環状コイルにおける周方向の一部である第1部分と前記環状コイルにおける周方向の残部である第2部分とを前記環状コイルの厚み方向に相対変位させることにより、前記環状コイルにおいて前記第1部分と前記第2部分との間に段差部を形成するとともに、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる加工を行って、前記厚み方向の一方に凸状である単品コイルを形成する環状コイル加工工程と、前記厚み方向の一方に凸状である複数の前記単品コイルを、前記軸方向から見てそれぞれの凸側を前記軸線の放射方向外方に位置付けつつ前記軸線を囲む周方向に並べるとともに、単品コイルの第1部分が前記単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なった状態で前記複数の単品コイルを組み合わせることにより、円筒状空芯コイルを形成する単品コイル組立工程と、を有する。
【0128】
(2)(1)に記載の円筒状空芯コイル製造方法において、前記環状コイル加工工程は、前記環状コイルの前記第1部分と前記第2部分との間に段差部を形成する段曲げ工程と、前記段曲げ工程の後、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる湾曲工程と、を有する。
【0129】
(3)(1)に記載の円筒状空芯コイル製造方法において、前記環状コイル加工工程では、前記段差部の形成と同時に、前記第1部分及び前記第2部分を前記厚み方向の同一方向にそれぞれ湾曲させる。
【0130】
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の円筒状空芯コイル製造方法において、前記環状コイル加工工程では、前記第1部分及び前記第2部分を湾曲させて、前記第1部分の曲げ半径を前記第2部分の曲げ半径よりも大きくする。
【0131】
(5)円筒状空芯コイル組立装置であって、軸方向に延びるピンと、厚み方向の一方に凸状である複数の単品コイルを、前記ピンに対して径方向外方の所定位置で収容して、前記軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並び且つ互いに厚み方向に重なる位置に配置する収容部と、前記収容部に収容された前記複数の単品コイルを径方向内方にそれぞれ押圧して円筒状空芯コイルを形成する複数の押圧部と、を有する。
【0132】
(6)(5)に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、前記収容部の少なくとも一部が、前記押圧部として機能する。
【0133】
(7)(6)に記載の円筒状空芯コイル組立装置において、前記複数の押圧部は、それぞれ、前記軸方向の一方側端部が他方側端部よりも前記ピンに対して径方向外方に離間している傾斜状態で前記収容部に収容された前記複数の単品コイルの前記一方側端部を、径方向内方にそれぞれ押圧して、前記複数の単品コイルの前記一方側端部を、前記ピンに近づける。
【0134】
(8)(5)から(7)のいずれか1つに記載の円筒状空芯コイル組立装置において、前記複数の押圧部を、前記複数の単品コイルに対して同期して押圧させる同期部を、さらに有する。
【0135】
(9)(5)から(8)のいずれか1つに記載の円筒状空芯コイル組立装置において、前記収容部は、前記複数の単品コイルを、前記軸方向の一方側端部が他方側端部よりも前記ピンに対して径方向外方に離間している傾斜状態で支持する傾斜部を有する。
【0136】
(10)(5)から(9)のいずれか1つに記載の円筒状空芯コイル組立装置において、前記ピンは、前記複数の押圧部のそれぞれの前記複数の単品コイルに対する押圧に応じて上下する。
【0137】
(11)軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置して、それぞれが円筒状空芯コイルの一部を構成する複数の単品コイルを製造するための単品コイル製造装置であって、単品コイル製造装置は、所定の径を有する円弧状の第1外周面と、前記所定の径よりも小さい径を有する円弧状の第2外周面と、前記第1外周面と前記第2外周面との境界に位置し且つ線状のコイルが巻回された巻回体を支持する支持部とを有するワーク支持治具と、前記ワーク支持治具の前記支持部に支持される前記巻回体を挟んで、前記ワーク支持治具と反対側に位置し、前記巻回体を前記ワーク支持治具との間に挟み込むワーク押さえ部と、前記第1外周面に対して径方向外方に位置し、前記第1外周面に近づく方向に移動して前記ワーク支持治具によって支持された前記巻回体の一部をプレスする第1プレス部と、前記第2外周面に対して径方向外方に位置し、前記第2外周面に近づく方向に移動して前記ワーク支持治具によって支持された前記巻回体の一部をプレスする第2プレス部と、を有する。
【0138】
(12)軸方向に延びる軸線を囲んで周方向に並ぶとともに一部が互いに厚み方向に重なる位置に位置する複数の単品コイルを有する円筒状空芯コイルであって、前記単品コイルは、前記単品コイルの周方向の一部であり且つ径方向内方に湾曲する第1部分と、前記単品コイルの周方向の残部であり且つ前記径方向内方に湾曲する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する一対の段差部と、を有し、前記一対の段差部は、前記第1部分と前記第2部分との間を前記単品コイルの前記厚み方向に相対変位しており、前記複数の前記単品コイルは、前記軸線の放射方向外方に凸状であり、前記軸方向から見てそれぞれの凸側が前記軸線の放射方向外方に位置する姿勢で前記軸線を囲む周方向に並んで位置し、前記単品コイルの第1部分が前記単品コイルに対して周方向に隣り合う単品コイルの第2部分の外面上に重なる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、円筒状空芯コイルの製造方法、円筒状空芯コイル組立装置、単品コイル製造装置並びにこの円筒状空芯コイルの製造方法及び円筒状空芯コイル組立装置によって製造された円筒状空芯コイルに利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 円筒状空芯コイル
20 単品コイル製造装置
21 ワーク支持治具
22 第1外周面
23 第2外周面
24 支持部
25 ワーク押さえ部
26 第1プレス部
27 第2プレス部
30、40 円筒状空芯コイル組立装置
31 ピン
32 受け台
32b 傾斜部
33、33A~33F、43A、43B 押圧部
42 載置部
44A、44B 側面部
50 環状コイル
60 段差付きコイル
70 単品コイル
51、61、71 第1部分
52、62、72 第2部分
63、73 段差部
75a 一方端部
75b 他方端部
S1 環状コイル形成工程
S2 環状コイル加工工程
S3 単品コイル組立工程
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B