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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022764
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ステントデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/844 20130101AFI20240214BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F2/844
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126089
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正宗
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C267AA45
4C267AA46
(57)【要約】
【課題】屈曲のある生体部位に好適に適合できるステントデバイス等を提供する。
【解決手段】ステントグラフト1は、軸方向に延びる筒状のステントと、軸方向におけるステントの第1端側の第1接点41と、軸方向におけるステントの第1端側と反対の第2端側の第2接点42でステントと接触する屈曲補助部材4であって、第1接点41および第2接点42の間の少なくとも一つの中間点は、筒状のステントの周方向の位置が当該第1接点41および当該第2接点42と異なる屈曲補助部材4と、を備える。屈曲補助部材4は、第1接点41が設けられる第1リング41Aと、第2接点42が設けられる第2リング42Aと、中間点を構成する第1リング41Aおよび第2リング42Aの接続点45と、を備える8の字形状に形成され、筒状のステントの外周面に沿って配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる筒状のステントと、
前記軸方向における前記ステントの第1端側の第1接点と、前記軸方向における前記ステントの前記第1端側と反対の第2端側の第2接点で前記ステントと接触する屈曲補助部材であって、前記第1接点および前記第2接点の間の少なくとも一つの中間点は、前記筒状のステントの周方向の位置が当該第1接点および当該第2接点と異なる屈曲補助部材と、
を備えるステントデバイス。
【請求項2】
前記屈曲補助部材の前記中間点は前記ステントに固定され、前記周方向の位置が前記第1接点および前記第2接点と異なる、請求項1に記載のステントデバイス。
【請求項3】
前記屈曲補助部材は、前記第1接点が設けられる第1リングと、前記第2接点が設けられる第2リングと、前記中間点を構成する前記第1リングおよび前記第2リングの接続点と、を備える8の字形状に形成され、前記筒状のステントの外周面に沿って配置される、請求項1または2に記載のステントデバイス。
【請求項4】
前記ステントは、前記屈曲補助部材の前記8の字形状における前記第1リングおよび前記第2リングを前記軸方向に挿通される、請求項3に記載のステントデバイス。
【請求項5】
前記屈曲補助部材の前記8の字形状における前記第1リングおよび前記第2リングの前記接続点が前記ステントに固定される、請求項4に記載のステントデバイス。
【請求項6】
前記屈曲補助部材は、前記筒状のステントの軸と、前記第1接点および前記第2接点の少なくともいずれかを含む一断面による断面視において、前記第1接点、前記中間点、前記第2接点を略一直線上に整列させようとする弾性を有する、請求項1または2に記載のステントデバイス。
【請求項7】
前記ステントが屈曲状態にある場合の前記屈曲補助部材では、前記弾性によって前記第1接点、前記中間点、前記第2接点が前記断面視において略一直線上に整列する、請求項6に記載のステントデバイス。
【請求項8】
前記ステントが伸展状態にある場合の前記屈曲補助部材では、前記断面視において前記第1接点および前記第2接点を結ぶ直線が前記中間点の近傍を通過しない、請求項7に記載のステントデバイス。
【請求項9】
前記屈曲補助部材は、前記第1接点、前記第2接点、前記中間点の少なくともいずれかで前記ステントの外周面に固定される、請求項1または2に記載のステントデバイス。
【請求項10】
前記ステントの少なくとも一部の内周および/または外周を被覆するグラフトを更に備え、
前記屈曲補助部材は、前記第1接点、前記第2接点、前記中間点の少なくともいずれかで前記グラフトに固定される、
請求項1または2に記載のステントデバイス。
【請求項11】
前記屈曲補助部材はリング状に形成され、前記筒状のステントの外周面に沿って配置される、請求項1または2に記載のステントデバイス。
【請求項12】
前記屈曲補助部材は、前記軸方向に沿って複数設けられる、請求項1または2に記載のステントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステントやステントグラフト等のステントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自己拡張型のステントは、金属等の線材によって筒状に編まれた、もしくは金属等の筒材をレーザーなどによって一定のパターンで切り抜いた医療機器であり、血管、気管、消化管、総胆管、膵管等の体内の管状器官に挿入されて、目的部位を拡張する。また、ステントグラフトは、ステントの周囲(内周および/または外周)をグラフトによって被覆したものであり、目的部位に血液の流路を形成したり、管状器官の接続部(出入口)、診断や処置のために体内に形成される孔(例えば胃や十二指腸球部から総胆管に穿刺される孔)等を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-525108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステントまたはステントグラフトは人体の様々な生体部位に挿入されるが、例えば大動脈瘤や大動脈解離の処置のために屈曲のある大動脈内に挿入されることがある。特許文献1には予め湾曲したステントグラフトが開示されているが、屈曲の程度は生体部位毎および/または人毎に異なるため、目的部位の屈曲形状に適合するとは限らない。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、屈曲のある生体部位に好適に適合できるステントデバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のステントデバイスは、軸方向に延びる筒状のステントと、軸方向におけるステントの第1端側の第1接点と、軸方向におけるステントの第1端側と反対の第2端側の第2接点でステントと接触する屈曲補助部材であって、第1接点および第2接点の間の少なくとも一つの中間点は、筒状のステントの周方向の位置が当該第1接点および当該第2接点と異なる屈曲補助部材と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、屈曲のある生体部位に好適に適合できるステントデバイス等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】TEVARの概要を模式的に示す。
図2】第1実施形態に係るステントグラフトを模式的に示す。
図3】屈曲状態にある第1実施形態に係るステントグラフトを模式的に示す。
図4】第2実施形態に係るステントグラフトを模式的に示す。
図5】屈曲状態にある第2実施形態に係るステントグラフトを模式的に示す。
図6】屈曲状態にある第1変形例に係るステントグラフトを模式的に示す。
図7】屈曲状態にある第2変形例に係るステントグラフトを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
本開示は人体の任意の生体部位に挿入されるステントやステントグラフト(以下では総称してステントデバイスともいう)に適用できるが、本実施形態では大動脈瘤や大動脈解離の処置のために屈曲のある大動脈内に挿入されるステントグラフトを例に説明する。具体的には、TEVAR(Thoracic Endovascular Aortic Repair)と呼ばれる胸部大動脈におけるステントグラフト内挿術に使用されるステントグラフトについて説明する。
【0012】
図1は、TEVARの概要を模式的に示す。図1に示されるように、大動脈瘤AN(aneurysm)が形成された大動脈AO(aorta)内にデリバリシステムDSが挿入される(図1A参照)。デリバリシステムDSは、ステントグラフト1と、ステントグラフト1を収縮状態で内部に収納するためのアウターシースとを備える。
【0013】
図1Aに示す状態では、先に大動脈AO内に挿入されたガイドワイヤGWにガイドされるデリバリシステムDSの先端が、大動脈瘤ANの中枢側(心臓側)まで挿入されている。ステントグラフト1は、展開したときに大動脈瘤ANを跨げる位置に位置決めされている。
【0014】
この状態から、図1Bに示されるように、内部のステントグラフト1の位置をずらさないようにして、アウターシースのみが基端側(図1における下側)に引き抜かれる。ステントグラフト1から外側のアウターシースが取り除かれると、ステンレスやニッケルチタン合金等の金属製または非金属製の線材によって形成されたステント2と、それを被覆するPET(ポリエチレンテレフタラート)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂製のグラフト3が共に展開し、大動脈AO内に留置される。図1Cに示されるように、大動脈AO内に留置されたステントグラフト1は大動脈瘤ANを跨ぎ、その両側を直接的に繋ぐ血液の流路がグラフト3によって形成される。この結果、大動脈AO内の血液が大動脈瘤ANに流れ込まずにグラフト3内を流れるため、大動脈瘤ANの拡大や破裂を防止できる。
【0015】
以下の各図では、ステント2およびグラフト3を区別せずに、一つの筒状のステントグラフト1として示す。但し、以下のステントグラフト1に関する記述は、文脈が許す限り、ステント2およびグラフト3のいずれにも当てはまるものとする。例えば「屈曲補助部材がステントグラフト1の外周に固定される」との記述は、「屈曲補助部材がステント2の外周に固定される」と解釈してもよいし、「屈曲補助部材がグラフト3の外周に固定される」と解釈してもよい。また、本開示をグラフト3が設けられないステントデバイスに適用する場合には、以下の記述における「ステントグラフト1」を「ステント2」と読み替えればよい(この場合、グラフト3のみに当てはまる記述は無視される)。
【0016】
図2は、第1実施形態に係るステントグラフト1を模式的に示す。図2Aはステントグラフト1の略側面視の斜視図であり、図2Bはステントグラフト1の上面図であり、図2Cは筒状のステントグラフト1の軸方向(図2Aおよび図2Bにおける左右方向)を法線方向とする平面による断面図である。図2Aおよび図2Bにおける左右方向である軸方向は、筒状または管状のステントグラフト1が延びる方向である。ステントグラフト1の径方向は、図2Cにおけるステントグラフト1の略円形の断面の中心を通る半径や直径の方向である。ステントグラフト1の周方向は、図2Cにおけるステントグラフト1の略円形の断面の周の方向である。
【0017】
第1実施形態に係るステントグラフト1には、上面視(図2B)においてリング状の屈曲補助部材4が設けられる。屈曲補助部材4は、弾性を有する金属製または非金属製の線材によってリング状に形成されている。屈曲補助部材4を構成する材料は、ステント2を構成する材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。リング状の屈曲補助部材4は、軸方向におけるステントグラフト1の第1端側(図2Aおよび図2Bにおける左側又は軸方向一端側)の第1接点41と、軸方向におけるステントグラフト1の第1端側と反対の第2端側(図2Aおよび図2Bにおける右側又は軸方向他端側)の第2接点42でステントグラフト1に固定される。屈曲補助部材4をステントグラフト1に固定する方法は任意であるが、例えば、ステント2に縫合や接着によって屈曲補助部材4を固定してもよいし、グラフト3に縫合や接着によって屈曲補助部材4を固定してもよいし、ステント2とグラフト3の間に屈曲補助部材4を挟み込んで固定してもよい。なお、ステントグラフト1の軸方向の各端部においてグラフト3が設けられない領域(ベアステントと呼ばれることもある)をそれぞれ第1接点41および第2接点42として、屈曲補助部材4がステントグラフト1(ベアステント)に固定されてもよい。
【0018】
屈曲補助部材4を含むステントグラフト1の組立性を高める上では、ステント2およびグラフト3のうち、径方向の外側に設けられる方に屈曲補助部材4を固定するのが好ましい。すなわち、径方向の内側にステント2が設けられ外側にグラフト3が設けられる場合には、グラフト3に屈曲補助部材4を固定するのが好ましく、径方向の内側にグラフト3が設けられ外側にステント2が設けられる場合には、ステント2に屈曲補助部材4を固定するのが好ましい(但し、外側のステント2の編目から内側のグラフト3が露出している場合には、屈曲補助部材4をグラフト3にも容易に固定できる)。このことは、後述する屈曲補助部材4の中間点43、44等をステントグラフト1に固定する場合にも当てはまる。
【0019】
図示の例では、リング状の屈曲補助部材4の左端(第1接点41)および右端(第2接点42)がステントグラフト1に固定されているが、ステントグラフト1に対する固定点である第1接点41および/または第2接点42は、必ずしも屈曲補助部材4の軸方向の左端および/または右端と一致しなくてもよい。例えば、図示は省略するが、屈曲補助部材4の左端より右側の第1接点41と右端より左側の第2接点42が、ステントグラフト1に対する固定点となってもよい。以下で記述する本実施形態の作用および/または効果を得るためには、第1接点41が第2接点42より第1端側(左側)にあり、第2接点42が第1接点41より第2端側(右側)にあり、後述する中間点43、44が軸方向において第1接点41と第2接点42の間にあればよい。
【0020】
リング状の屈曲補助部材4は、筒状のステントグラフト1の外周面に沿って配置される。屈曲補助部材4上の図示の第1中間点43および第2中間点44は、それぞれ第1接点41および第2接点42の軸方向における中点である。但し、第1中間点43および/または第2中間点44は、軸方向において第1接点41と第2接点42の間にあればよく、必ずしもこれらの中点でなくてもよい。図示の例では、第1中間点43および第2中間点44のうち、第1中間点43のみがステントグラフト1に固定される(第2中間点44はステントグラフト1に固定されないため点線で示されている)。このように、リング状の屈曲補助部材4は、第1端側の第1接点41、第2端側の第2接点42、その間の第1中間点43、の少なくとも三つの固定点においてステントグラフト1に固定される。これらの固定点に加えて、第2中間点44をステントグラフト1に対する固定点としてもよい。
【0021】
図2Cに示されるように、屈曲補助部材4の第1中間点43および第2中間点44は、周方向の位置が第1接点41および第2接点42と異なる。なお、図示の例では第1接点41および第2接点42の周方向(および径方向)の位置が一致しているが、互いに異なっていてもよい。この場合でも、第1中間点43および/または第2中間点44は、第1接点41および第2接点42のそれぞれと異なる周方向の位置に設けられる。また、図示の例では、第1接点41および/または第2接点42を地球の北極点に見立てた場合に、第1中間点43および第2中間点44が北半球に配置されているが、第1中間点43および第2中間点44は南半球または赤道上に配置されてもよい。
【0022】
以上のようなステントグラフト1が図2に示される伸展状態にある場合の屈曲補助部材4では、筒状のステントグラフト1の軸と、第1接点41および第2接点42の少なくともいずれかを含む一断面による側断面視において、第1接点41および第2接点42を結ぶ軸方向の直線が第1中間点43および第2中間点44の近傍を通過しない。すなわち、略側面視の図2Aにも現れているように、第1中間点43(および第2中間点44)は、第1接点41および第2接点42を結ぶ軸方向の直線から有意に外れた位置にある。換言すれば、リング状の屈曲補助部材4は、伸展状態にあるステントグラフト1に対して、第1中間点43等において湾曲または屈曲した状態で取り付けられる。
【0023】
このように湾曲または屈曲した屈曲補助部材4は、図2Aの略側面視において第1接点41、第1中間点43(および第2中間点44)、第2接点42を略一直線上に整列させようとする弾性力を発生させる。このように図2Aにおける湾曲状態または屈曲状態から「伸展」しようとする弾性を有する屈曲補助部材4によって、大動脈AO等の屈曲のある生体部位に挿入されたステントグラフト1が容易に屈曲できる。
【0024】
図3は、屈曲状態にある第1実施形態に係るステントグラフト1を模式的に示す。この場合の屈曲補助部材4では、弾性によって第1接点41、第1中間点43(および第2中間点44)、第2接点42が、略側面視(ステントグラフト1の軸と、第1接点41および第2接点42を含む断面による側断面視)の図3において略一直線上に整列する(換言すれば、略同一平面上に配置される)。このように、図2Aにおいて伸展状態にあったステントグラフト1が大動脈AO等の屈曲のある生体部位に挿入されて図3のように屈曲状態になる際、図2Aにおいて屈曲状態にあった屈曲補助部材4が弾性によって図3のように能動的または自発的に伸展状態に復元する。従って、ステントグラフト1は、屈曲補助部材4が伸展状態(図3)に戻ろうとする弾性によって、大動脈AO等の屈曲のある生体部位に追従または密着するように自然に屈曲または湾曲できる。この結果、図1Cにおいてステントグラフト1の曲率の大きい内側(図1Cにおける左側)と、大動脈AOまたは動脈瘤ANの壁面の間に形成されやすい隙間(バードビーク(鳥のくちばし)とも呼ばれる)を効果的に抑制できる。
【0025】
また、リング状の弾性部材である屈曲補助部材4を設けることで、ステントグラフト1が図3の紙面に垂直な側方からの力にも強くなる。すなわち、ステントグラフト1に側方から押しつぶす力が加わったとしても、それに抗する弾性力をリング状の屈曲補助部材4が発生させるため、ステントグラフト1が押しつぶされにくくなる。このため、例えば、グラフト3によって形成された流路内の血流を正常に維持できる。
【0026】
更に、本実施形態のような屈曲補助部材4は、既存のステントグラフト1の特性に悪影響を及ぼすことなく容易に追加できる。また、追加対象のステントグラフト1の種類や仕様も問わないため、屈曲補助部材4は極めて汎用性が高い共通部品として用意できる。
【0027】
図4は、第2実施形態に係るステントグラフト1を模式的に示す。第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図4Aはステントグラフト1の略側面視の斜視図であり、図4Bはステントグラフト1の上面図であり、図4Cは筒状のステントグラフト1の軸方向(図4Aおよび図4Bにおける左右方向)を法線方向とする平面による断面図である。
【0028】
第2実施形態に係るステントグラフト1には、上面視(図4B)において8の字形状(または「∞」状)の屈曲補助部材4が設けられる。8の字形状の屈曲補助部材4は、第1接点41が設けられる第1リング41Aと、第2接点42が設けられる第2リング42Aと、中間点を構成する第1リング41Aおよび第2リング42Aの接続点45を備え、筒状のステントグラフト1の外周面に沿って配置される。図4Aに示されるように、屈曲補助部材4をステントグラフト1に取り付ける際には、筒状または管状のステントグラフト1が8の字形状の屈曲補助部材4における第1リング41Aおよび第2リング42Aを軸方向に挿通される。そして、少なくとも屈曲補助部材4の8の字形状における第1リング41Aおよび第2リング42Aの接続点45がステントグラフト1に固定される。接続点45に加えてまたは代えて、図2の第1実施形態と同様に、第1接点41および/または第2接点42で屈曲補助部材4がステントグラフト1に固定されてもよい。8の字形状の屈曲補助部材4は、例えば、第1実施形態(図2および図3)と同様のリング状の屈曲補助部材4をねじることで形成されてもよいし、最初から8の字形状となるように第1リング41Aおよび第2リング42Bが一体的に形成されてもよいし、別体的に形成された第1リング41Aおよび第2リング42Bが組み合わされて形成されてもよい。
【0029】
第1接点41、第2接点42、接続点45の三点を固定点とすれば、8の字形状の略両端(第1接点41および第2接点42)および略中央(接続点45)において、屈曲補助部材4をステントグラフト1に確実に固定できる。この結果、図5に関して後述するステントグラフト1の屈曲を促進する屈曲補助部材4の弾性力を、ステントグラフト1に対して効果的に付与できる。一方、固定点の数を最小化したい場合には、接続点45の一点のみを固定点としてもよい。接続点45の軸方向の両側において第1リング41Aおよび第2リング42Aが筒状のステントグラフト1の外周面を取り囲んでいるため、第1接点41および/または第2接点42を固定点としなくても、屈曲補助部材4をステントグラフト1の外周面に固定できる。以上のように、本開示に係る屈曲補助部材4は、第1接点41、第2接点42、中間点(接続点45等)の少なくともいずれかでステントグラフト1の外周面に固定されればよい。
【0030】
図4Cに示されるように、8の字形状の屈曲補助部材4の中間点としての接続点45は、周方向の位置が第1接点41および第2接点42と異なる。図示の例では、第1接点41および/または第2接点42を地球の北極点に見立てた場合に、接続点45が南極点に配置されているが、接続点45は北極点および南極点以外の南半球、赤道上、北半球に配置されてもよい。
【0031】
以上のようなステントグラフト1が図4に示される伸展状態にある場合の屈曲補助部材4では、筒状のステントグラフト1の軸と、第1接点41および第2接点42の少なくともいずれかを含む一断面による側断面視において、第1接点41および第2接点42を結ぶ軸方向の直線が接続点45の近傍を通過しない。すなわち、略側面視の図4Aにも現れているように、接続点45は、第1接点41および第2接点42を結ぶ軸方向の直線から有意に外れた位置にある。換言すれば、8の字形状の屈曲補助部材4は、伸展状態にあるステントグラフト1に対して、接続点45等において湾曲または屈曲した状態で取り付けられる。
【0032】
このように湾曲または屈曲した屈曲補助部材4は、図4Aの略側面視において第1接点41、接続点45、第2接点42を略一直線上に整列させようとする弾性力を発生させる。このように図4Aにおける湾曲状態または屈曲状態から「伸展」しようとする弾性を有する屈曲補助部材4によって、大動脈AO等の屈曲のある生体部位に挿入されたステントグラフト1が容易に屈曲できる。特に、本実施形態に係る8の字形状の屈曲補助部材4では、軸方向の略中央の接続点45が支点となって両側の第1リング41Aおよび第2リング42Aが効果的に伸展状態に戻される。
【0033】
図5は、屈曲状態にある第2実施形態に係るステントグラフト1を模式的に示す。この場合の屈曲補助部材4では、弾性によって第1接点41、接続点45、第2接点42が、略側面視(ステントグラフト1の軸と、第1接点41および第2接点42を含む断面による側断面視)の図5において略一直線上に整列する(換言すれば、略同一平面上に配置される)。このように、図4Aにおいて伸展状態にあったステントグラフト1が大動脈AO等の屈曲のある生体部位に挿入されて図5のように屈曲状態になる際、図4Aにおいて屈曲状態にあった屈曲補助部材4が弾性によって図5のように能動的または自発的に伸展状態に復元する。従って、ステントグラフト1は、屈曲補助部材4が伸展状態(図5)に戻ろうとする弾性によって、大動脈AO等の屈曲のある生体部位に追従または密着するように自然に屈曲または湾曲できる。
【0034】
また、第1リング41Aおよび第2リング42Aを有する8の字形状の弾性部材である屈曲補助部材4を設けることで、ステントグラフト1が図5の紙面に垂直な側方からの力にも強くなる。すなわち、ステントグラフト1に側方から押しつぶす力が加わったとしても、それに抗する弾性力を屈曲補助部材4における第1リング41Aおよび第2リング42Aが発生させるため、ステントグラフト1が押しつぶされにくくなる。
【0035】
更に、本実施形態のような屈曲補助部材4は、既存のステントグラフト1の特性に悪影響を及ぼすことなく容易に追加できる。また、追加対象のステントグラフト1の種類や仕様も問わないため、屈曲補助部材4は極めて汎用性が高い共通部品として用意できる。
【0036】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0037】
第1実施形態、第2実施形態では、屈曲補助部材4がリング状または8の字形状に形成されていたが、屈曲補助部材4は板状、C字形状またはS字形状等の他の形状に形成されてもよい。例えば、第1実施形態(図2および図3)におけるリング状の屈曲補助部材4が、一または複数の箇所で破断または断線していてもよい。この場合の屈曲補助部材4は、一または複数のC字形状のサブ屈曲補助部材によって構成される。それぞれがC字形状の各サブ屈曲補助部材の両端は、ステント2および/またはグラフト3に固定されるのが好ましい。また、第2実施形態(図4および図5)における8の字形状の屈曲補助部材4の一部が省略されることで、S字形状に形成されてもよい。S字形状の屈曲補助部材4の両端は、ステント2および/またはグラフト3に固定されるのが好ましい。
【0038】
図6は、屈曲状態にある第1変形例に係るステントグラフト1を模式的に示す。このステントグラフト1には、上面視においてリング状の複数(図6の例では三つ)の屈曲補助部材4A、4B、4Cが軸方向に沿って設けられる。図示の例のように、軸方向に隣接する各屈曲補助部材4A、4B、4Cは、軸方向の少なくとも一部が重複していてもよいし、軸方向に互いに離れていてもよい。
【0039】
図示は省略するが、第1実施形態における図2と同様に、リング状の各屈曲補助部材4A、4B、4Cは、伸展状態にあるステントグラフト1に対して湾曲または屈曲した状態で取り付けられる。このような各屈曲補助部材4A、4B、4Cは、図6に示されるステントグラフト1の屈曲状態では弾性によって略平面状となる。従って、ステントグラフト1は、各屈曲補助部材4A、4B、4Cが伸展状態(図6)に戻ろうとする弾性によって、大動脈AO等の屈曲のある生体部位に追従または密着するように自然に屈曲または湾曲できる。特に本変形例では、軸方向に沿って複数の屈曲補助部材4A、4B、4Cを設けることで、ステントグラフト1の軸方向の各位置および/または各範囲における屈曲性を柔軟に調整できる。また、図示は省略するが、周方向に沿って複数の屈曲補助部材4を設けることで、ステントグラフト1の周方向の各位置および/または各範囲における屈曲性を調整してもよい。
【0040】
図7は、屈曲状態にある第2変形例に係るステントグラフト1を模式的に示す。この変形例にあるように、リング状の屈曲補助部材4は、蛇行部4Dを含んでもよいし、ジグザグ部4Eを含んでもよい。
【0041】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 ステントグラフト、2 ステント、3 グラフト、4 屈曲補助部材、41 第1接点、41A 第1リング、42 第2接点、42A 第2リング、43 中間点、45 接続点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7