(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022769
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】循環型水力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 17/06 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F03B17/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126099
(22)【出願日】2022-08-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】522316250
【氏名又は名称】児玉 隆晃
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 隆晃
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB09
3H074BB11
3H074CC11
3H074CC38
(57)【要約】
【課題】発電所の代替設備として汎用性及び拡張性が高い循環型水力発電システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る循環型水力発電システム(100)は、水を貯留するピット(1)と、ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置(10A,B,・・・,P)と、を備え、複数の発電装置のそれぞれは、バイオ燃料で駆動する第1エンジン(11)と、第1エンジンで駆動され、ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプ(12)と、第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管(21)と、第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管(24)と、降水管から落下した水の流れによって回転する水車(30)と、水車の回転によって発電する発電機(32)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留するピットと、
前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、を備え、
前記複数の発電装置のそれぞれは、
バイオ燃料で駆動する第1エンジンと、
前記第1エンジンで駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、
前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、
前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、
前記水車の回転によって発電する発電機と、を備える
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記複数の発電装置は、前記ピットを挟んで対向し、かつ、前記ピットに沿って並べて配置される
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の循環型水力発電システムにおいて、
隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第1揚水管は、立体交差するように配置される
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記降水管は、垂直方向に延在する
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記複数の発電装置のそれぞれは、さらに、
前記バイオ燃料で駆動する第2エンジンと、
前記第2エンジンで駆動され、前記第1揚水管にて上方へ導かれた水を吸入して吐出する第2ポンプと、
前記第2ポンプから吐出された水を上方へ導く第2揚水管と、を備え、
前記降水管は、前記第1揚水管にて上方に導かれ、かつ、前記第2揚水管にてさらに上方に導かれた水を下方に落下させる
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項6】
請求項5に記載の循環型水力発電システムにおいて、
隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第2揚水管は、立体交差するように配置される
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記各発電装置の前記第1揚水管と前記第2揚水管とは、傾斜する方向が互いに逆向きである
ことを特徴とする環型水力発電システム。
【請求項8】
水を貯留するピットと、
前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、
太陽光で発電する太陽光パネルと、を備え、
前記複数の発電装置は、それぞれ、
前記太陽光パネルから供給される電力で駆動するモータと、
前記モータにより駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、
前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、
前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、
前記水車の回転によって発電する発電機と、を備える
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の落差を利用して発電を行う循環型水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、例えば特許文献1には、貯留タンク内の水を吸入して吐出する複数の循環ポンプと、循環ポンプから吐出された水を上方へ導く複数の揚水管と、複数の揚水管の水を下方へ導くように湾曲する複数の湾曲管と、複数の湾曲管の水を集めて下方へ落下させる降水管と、降水管から落下する水の流れの勢いを強くするための複数段の絞り部を有する絞り管と、絞り管からの水の流れによって発電する発電装置とを備えた循環型マイクロ水力発電システムが記載されている。
【0003】
そして、この特許文献1に記載の水力発電システムによれば、水が落ちる落下エネルギーに、落下する水の圧縮エネルギーを加えることで、発電効率を高くし、発電量を大きくすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、国連が主導する持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが求められている。この点、特許文献1に記載の水力発電システムでは、現在稼働している発電所に置き換わる技術としては十分ではなく、SDGsの観点から見ても改良の余地がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、発電所の代替設備として汎用性及び拡張性が高い循環型水力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、水を貯留するピットと、前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、を備え、前記複数の発電装置のそれぞれは、バイオ燃料で駆動する第1エンジンと、前記第1エンジンで駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、前記水車の回転によって発電する発電機と、を備えることを特徴とする循環型水力発電システムである。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、水を貯留するピットと、前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、太陽光で発電する太陽光パネルと、を備え、前記複数の発電装置は、それぞれ、前記太陽光パネルから供給される電力で駆動するモータと、前記モータにより駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、前記水車の回転によって発電する発電機と、を備えることを特徴とする循環型水力発電システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発電所の代替設備として汎用性及び拡張性が高い循環型水力発電システムを提供できる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る循環型水力発電システムの全体構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る循環型水力発電システムの1階部分を模式的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る循環型水力発電システムを模式的に示す側面図である。
【
図4】第1実施形態に係る循環型水力発電システムを模式的に示す正面図である。
【
図5】第1実施形態に係る循環型水力発電システムの屋上部分を模式的に示す平面図である。
【
図6】変形例1に係る循環型水力発電システムの全体構成図である。
【
図7】第2実施形態に係る循環型水力発電システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る循環型水力発電システム100の全体構成図、
図2は循環型水力発電システム100の1階部分を模式的に示す平面図、
図3は循環型水力発電システム100を模式的に示す側面図、
図4は循環型水力発電システム100を模式的に示す正面図、
図5は循環型水力発電システム100の屋上部分を模式的に示す平面図である。
図1において、点線は電気配線を示す。また、説明の便宜のため、X軸、Y軸、及びZ軸をそれぞれ
図2~5の通り定義する。なお、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ循環型水力発電システム100の長手方向、短手方向、高さ方向に相当する。なお、
図2~5は、循環型水力発電システム100の主な構成要素を模式的に示したものであって、細かい構成要素(例えば、鉄骨や配管サポート類、メンテナンス用のステップや手摺、あるいはエレベータなど)の図示は省略している。
【0013】
図1~5に示すように、循環型水力発電システム100は、ピット1と、多数の発電装置10(10A、B,・・・,P)と、を備えている。循環型水力発電システム100は、例えば、X軸方向が80m、Y軸方向が15m、Z軸方向が40m程度の大きさの建屋6に、8基×2=16基の発電装置10が設置された屋内発電設備である。即ち、循環型水力発電システム100は、建屋6によって四方及び天井を覆われた完全屋内型の発電設備である。なお、発電装置10の出力は、1基当たり940kw/hである。
【0014】
ピット1は、水を貯留するための穴部であり、例えば、1階の床面2から掘り下げられている。床面2は、ピット1を挟んでY軸方向の両側に、かつ、X軸方向に延びるように形成されている。つまり、床面2はピット1の長手方向に沿って周囲を囲うように設けられている。そして、この床面2に複数(例えば、8基×2=16基)の発電装置10が配置されている。具体的には、ピット1を挟んで対向するように、かつ、ピット1のX軸方向に整列して、8基ずつ発電装置10が床面2に配置されている。各発電装置10は、同一の構成要素を備えている。以下、各発電装置10を区別して説明する場合には、発電装置10A,10B等と称し、それぞれの発電装置10の各構成にも符号の末尾にA,Bを付すことにする。一方、各発電装置10を区別する必要がない場合には、単に発電装置10とし、発電装置10の各構成の符号の末尾のA,Bも省略して説明する。
【0015】
発電装置10は、第1エンジン11と、第1ポンプ12と、第1揚水管21と、第2エンジン15と、第2ポンプ16と、第2揚水管22と、湾曲管23と、降水管24と、水車30と、増速機31と、発電機32と、を備えている。
【0016】
第1エンジン11は、バイオ燃料で駆動するバイオディーゼルエンジンである。第2エンジン15も同様にバイオディーゼルエンジンである。水車30は、例えばクロスフロー水車であるが、その他の形式の水車を用いても良い。水車30は増速機31を介して発電機32と接続されており、水車30の回転により発電機32が発電する。また、第1ポンプ12は、第1エンジン11より駆動されて、例えば3600rpmで回転し、1秒間に3立方メートルの流量を吐出する。第2ポンプ16も第1ポンプ12と同様の構成から成り、第2エンジン15により駆動される。
【0017】
第1ポンプ12の吸入口には、吸入管13が取り付けられている。また、吸入管13にはフィルタ14が設けられている。このフィルタ14により、第1ポンプ12への異物の吸入が防止される。
【0018】
第1ポンプ12から水車30までの間は、これらの上方の空間に引き回された配管によって接続されている。例えば、発電装置10Aの配管について主に
図4を参照して説明すると、第1ポンプ12Aと第2ポンプ16Aとの間は第1揚水管21Aで接続され、第2ポンプ16Aと水車30Aとの間は第2揚水管22A、湾曲管23A、及び降水管24Aで接続されている。そして、
図4に示すように、第1揚水管21A及び第2揚水管22Aは斜め上方に延在するが、延在する方向(傾斜する方向)が逆向きである。具体的には、第1揚水管21AはX軸正方向に向かって上方に延在する一方で、第2揚水管22AはX軸負方向に向かって上方に延在している。また、降水管24は、第2揚水管22Aと湾曲管23Aを介して接続され、Z軸方向に沿って垂直に延在している。
【0019】
次に、発電装置10と隣り合う発電装置10Cの配管について、主に
図4を参照して説明すると、第1ポンプ12Cと第2ポンプ16Cとの間は第1揚水管21Cで接続され、第2ポンプ16Cと水車30Cとの間は第2揚水管22C、湾曲管23C、及び降水管24Cで接続されている。そして、
図4に示すように、第1揚水管21C及び第2揚水管22Cは斜め上方に延在するが、延在する方向(傾斜する方向)が逆向きである。具体的には、第1揚水管21CはX軸負方向に向かって上方に延在する一方で、第2揚水管22CはX軸正方向に向かって上方に延在している。また、降水管24Cは、第2揚水管22Cと湾曲管23Cを介して接続され、Z軸方向に沿って垂直に延在している。
【0020】
そして、隣り合う1組の発電装置10Aと発電装置10Cにおいて、第1揚水管21Aと第1揚水管21Cとは、延在する方向(傾斜する方向)が互いに逆向きとなっており、かつ、立体交差している(
図3参照)。また、同様に、発電装置10Aの第2揚水管22Aと発電装置10Cの第2揚水管22Cとは、延在する方向(傾斜する方向)が互いに逆向きとなっており、かつ、立体交差している。その他の隣り合う1組の発電装置(例えば符号10Bと10D)における第1揚水管21同士(例えば符号21Bと21D)及び第2揚水管22同士(例えば符号22Bと22D)も同様に、傾斜する方向が互いに逆向き、かつ、立体交差している(
図3参照)。
【0021】
また、
図5に示すように、建屋6の屋上5には、多数の太陽光パネル40が設置されている。図示しないが、建屋6の南面にも多数の太陽光パネル40が設置されている。そして、太陽光パネル40で発電した電力は、同じく屋上5に設置された蓄電装置42に蓄えられる。なお、蓄電装置42は建屋6内に設置しても良い。
【0022】
(使用方法)
次に、循環型水力発電システム100の使用方法について説明する。オペレータが循環型水力発電システム100の電源をオンすると、蓄電装置42に蓄えられた電力で第1エンジン11及び第2エンジン15のセルモータ(スタータ)が回り、バイオ燃料が供給されて第1エンジン11及び第2エンジン15が駆動する。すると、第1ポンプ12及び第2ポンプ16が駆動し、ピット1内の水を吸入する。そして、吸入された水は、第1揚水管21、第2揚水管22、湾曲管23、降水管24の順に流れて、水車30に向かって落下する。落下した水によって水車30が回転し、水車30を回転させた水は、ピット1に戻される。水車30の回転速度は増速機31により増速されて発電機32に伝達される。こうして、発電機32が駆動し、発電が行われる。このように、ピット1内の水が循環することにより、発電が行われる。そして、発電機32で発電した電力は、需要先70に適宜、供給される。
【0023】
以上説明したように、第1実施形態に係る循環型水力発電システム100によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
【0024】
水をピット1に貯留し、その水を循環して発電を行うことができる。しかも、第1エンジン11及び第2エンジン15はバイオ燃料により駆動するバイオディーゼルエンジンであるため、CO2を排出することなく、循環型水力発電システム100を運転できる。そのため、火力発電所のように化石燃料を使用することなく、クリーンな環境で電力を供給できる。さらに言えば、火力発電所の代替設備として、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを可能とすることができる。また、太陽光パネル40により発電した電力を蓄電装置42に蓄え、その電力により第1エンジン11及び第2エンジン15のセルモータを回すことができるため、循環型水力発電システム100のシステム稼働時においても、CO2の排出をなくすことができる。つまり、循環型水力発電システム100は、CO2を一切排出することなく、発電できる。
【0025】
また、建屋6内にピット1及び発電装置10を設置できるため、外部環境を汚染する心配もない。さらに、電力供給量を増やしたい場合には、発電装置10の数を増やすだけで対応できるため、発電所の代替設備として汎用性及び拡張性が高い。
【0026】
また、例えば、隣り合う1組の発電装置10A,10Cにおいて、第1揚水管21Aと第1揚水管21Cとの傾斜する方向が逆向きであり、かつ、立体交差して配置されているため、空間の有効利用が図られ、コンパクトな配管の引き回しが可能である。特に、第1揚水管21Aと第1揚水管21Cとを
図3,4のように立体交差させると、X軸方向の寸法をコンパクトにすることができる。そして、隣り合う1組の発電装置10,10毎に上記したように第1揚水管21,21及び第2揚水管22,22を立体交差させることで、建屋6全体のX軸方向の寸法をコンパクトにできる。
【0027】
また、本実施形態では、降水管24をZ軸に沿って垂直に配置しており、水を垂直に落下させた後、水の流れの向きを水平方向に変えて、水車30に導入することにより、水車30を効率良く回転させることができる。よって、発電効率の高い設備を提供できる。
【0028】
このように、本実施形態に係る循環型水力発電システム100は、SDGsの開発目標に貢献できる優れたシステムであり、化石燃料を使用する既存の火力発電所の代替設備として大変有効である。また、必要な数の発電装置10と水があれば、都市部、地方部、沿岸部、内陸部など、場所を問わずどこでも電力を供給できるため、電力設備のない地域や緊急災害時にも容易に適用可能である。
【0029】
(変形例1)
次に、第1実施形態に係る循環型水力発電システム100の変形例について説明する。
図6は、変形例1に係る循環型水力発電システムの全体構成図である。変形例1では、第1揚水管21から第2揚水管及び湾曲管23を迂回して、直接、降水管24に水を流すためのバイパス流路25を設け、このバイパス流路25に電磁開閉弁35を設けた点に特徴がある。
【0030】
この構成によれば、例えば、電力需要が低く、循環型水力発電システム100を50%負荷で運転したい場合に、図示しない制御室から電磁開閉弁35を開けるよう指令を出力すると共に、第2エンジン15を停止させるようにする。そうすると、第1ポンプ12によりピット1から吸入され吐出した水は、第1揚水管21を流れた後、バイパス流路25を流れて降水管24から落下し、水車30を回転させることになる。これにより、水車30の回転速度を通常運転に比べて減速できるため、発電量を抑えた運転が可能となる。つまり、変形例1では、需要先70の要求に応じた効率の良い運転を行うことができる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る循環型水力発電システム200について説明する。
図7は、第2実施形態に係る循環型水力発電システム200の全体構成図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る循環型水力発電システム200は、第1実施形態に係る循環型水力発電システム100の各構成のうち第1エンジン11及び第2エンジン15の代わりに第1モータ51及び第2モータ52を用いている点と、ピット1の水を汲み上げて湾曲管23に合流させる水合流装置60を備えている点とに特徴がある。以下、これらの特徴について主に説明し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0032】
水合流装置60は、斜流ポンプ54と、斜流ポンプ54を駆動するバイオディーゼルエンジン(以下、エンジン)53と、揚水管61と、ヘッダ62と、分岐管63と、を備える。斜流ポンプ54の吸入口には吸入管64が設けられている。なお、本実施形態において、水合流装置60は、循環型水力発電システム200の長手方向の両端部に1組ずつ、合計2組設けられているが、その組数は2組に限定されない。
【0033】
次に、循環型水力発電システム200の使用方法について説明する。循環型水力発電システム200の電源をオンすると、まず、蓄電装置42に蓄えられている電力で第1モータ51及び第2モータ52を駆動し、各発電装置10にて発電が行われる。発電装置10にて発電した電力も一部は蓄電装置42に蓄えられる。こうして、太陽光パネル40で発電した電力と発電装置10により発電した電力とにより、循環型水力発電システム200の稼働を開始させる。
【0034】
所定の電力を供給できる状態となったら、発電装置10の第1モータ51及び第2モータ52を停止し、水合流装置60を駆動させる。即ち、エンジン53を起動し、斜流ポンプ54を駆動させる。そして、斜流ポンプ54によりピット1内の水を汲み上げて、揚水管61を介してヘッダ62に水を送る。そして、分岐管63から各湾曲管23に水を分流し、各降水管24を介して水を落下させ、各水車30を回転させて発電を行う。このような構成であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。しかも、第2実施形態によれば、第1ポンプ12及び第2ポンプ16を電動の第1モータ51及び第2モータ52で駆動できるため、バイオ燃料の消費を抑えることができるといった利点もある。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0036】
例えば、水量(第1ポンプ12及び/又は第2ポンプ16の流量)や水車30の能力等に応じて、建屋6を2階建てにすることもできるし、反対に建屋6を4階以上にすることもできる。何れにしても、必要な電力需要と設備規模とに応じて、建屋6を設計し、適した発電装置10を設置するだけで良いため、本発明に係る循環型水力発電システムは汎用性及び拡張性が高い。
【0037】
なお、第1ポンプ12から吐出された水は、第1揚水管21を流れて第2ポンプ16に直接吸入される構成としたが、第1揚水管21と第2ポンプ16との間に、トレイなどの貯留部を設けて置き、貯留部に溜まった水を第2ポンプ16が吸入する構成としても良い。
【0038】
また、ピット1を設ける代わりに、貯留槽を多数設置する構成としても良い。さらに、
図3に示すように、ピット1内の水を貯留可能なサブピット80を設ける構成としても良い。具体的には、ピット1とサブピット80とを配管81で接続し、配管81に仕切弁82を取り付けた構成とすることもできる。この構成の場合、通常運転時、仕切弁82は閉じられているが、循環型水力発電システム100のメンテナンス時には、仕切弁82を開けることで、ピット1内の水をサブピット80に一時的に貯留させることができる。この構成によれば、ピット1内の水を捨てることなく有効利用できるため、より一層ランニングコストを抑えることができる。
【0039】
また、第1実施形態に係る循環型水力発電システム100において、バイオ燃料で駆動する第1エンジン11及び第2エンジン15に替えてモータを使用することもできる。この場合、モータへの電力は、蓄電装置42から供給すれば良い。この構成によれば、バイオ燃料が不要となるため、コスト削減効果が見込める。また、同様に、第2実施形態に係る循環型水力発電システム200において、バイオ燃料で駆動するエンジン53に替えてモータを使用しても良い。
【0040】
また、屋上5に溜まった雨水をピット1に導入する管路を設けておくと、雨水を有効活用できるので好ましい。
【0041】
また、変形例1に係るバイパス流路25と電磁開閉弁35の構成を第2実施形態に係る循環型水力発電システム200に適用しても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 ピット
2 床面(1階)
3 床面(2階)
4 床面(3階)
5 屋上
6 建屋
10 発電装置
11 第1エンジン
12 第1ポンプ
13 吸入管
14 フィルタ
15 第2エンジン
16 第2ポンプ
21 第1揚水管
22 第2揚水管
23 湾曲管
24 降水管
25 バイパス流路
30 水車
31 増速機
32 発電機
40 太陽光パネル
42 蓄電装置
51 第1モータ
52 第2モータ
53 エンジン
54 斜流ポンプ
60 水合流装置
61 揚水管
62 ヘッダ
63 分岐管
64 吸入管
70 需要先
80 サブピット
81 配管
82 仕切弁
100,200 循環型水力発電システム。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、水を貯留するピットと、前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、を備え、前記複数の発電装置のそれぞれは、バイオ燃料で駆動する第1エンジンと、前記第1エンジンで駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、前記水車の回転によって発電する発電機と、を備え、隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第1揚水管は、立体交差するように配置されることを特徴とする循環型水力発電システムである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の別の態様は、水を貯留するピットと、前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、太陽光で発電する太陽光パネルと、を備え、前記複数の発電装置は、それぞれ、前記太陽光パネルから供給される電力で駆動するモータと、前記モータにより駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、前記水車の回転によって発電する発電機と、を備え、隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第1揚水管は、立体交差するように配置されることを特徴とする循環型水力発電システムである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留するピットと、
前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、を備え、
前記複数の発電装置のそれぞれは、
バイオ燃料で駆動する第1エンジンと、
前記第1エンジンで駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、
前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、
前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、
前記水車の回転によって発電する発電機と、を備え、
隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第1揚水管は、立体交差するように配置される
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記降水管は、垂直方向に延在する
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記複数の発電装置のそれぞれは、さらに、
前記バイオ燃料で駆動する第2エンジンと、
前記第2エンジンで駆動され、前記第1揚水管にて上方へ導かれた水を吸入して吐出する第2ポンプと、
前記第2ポンプから吐出された水を上方へ導く第2揚水管と、を備え、
前記降水管は、前記第1揚水管にて上方に導かれ、かつ、前記第2揚水管にてさらに上方に導かれた水を下方に落下させる
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の循環型水力発電システムにおいて、
隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第2揚水管は、立体交差するように配置される
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の循環型水力発電システムにおいて、
前記各発電装置の前記第1揚水管と前記第2揚水管とは、傾斜する方向が互いに逆向きである
ことを特徴とする循環型水力発電システム。
【請求項6】
水を貯留するピットと、
前記ピットの周囲に配置され、それぞれが水の落差を利用して発電を行う複数の発電装置と、
太陽光で発電する太陽光パネルと、を備え、
前記複数の発電装置は、それぞれ、
前記太陽光パネルから供給される電力で駆動するモータと、
前記モータにより駆動され、前記ピットの水を吸入して吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプから吐出された水を上方へ導く第1揚水管と、
前記第1揚水管にて上方に導かれた水を下方へ落下させる降水管と、
前記降水管から落下した水の流れによって回転する水車と、
前記水車の回転によって発電する発電機と、を備え、
隣り合う1組の前記発電装置のそれぞれの前記第1揚水管は、立体交差するように配置される
ことを特徴とする循環型水力発電システム。