(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022776
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】粒子分散用ゲル、粒子分散ゲルおよび粒子分散用ゲルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/075 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C08J3/075 CEP
C08J3/075 CER
C08J3/075 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126110
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千里
(72)【発明者】
【氏名】石田 怜司
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA01
4F070AA02
4F070AA32
4F070AA62
4F070AC06
4F070AC36
4F070AE10
4F070AE30
4F070CA03
4F070CB14
(57)【要約】
【課題】網目サイズを制御しやすい粒子分散用ゲル、それを用いた粒子分散ゲル、および、網目サイズを制御しやすい粒子分散用ゲルの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマー(A)および溶媒(B)を含み、かつ、内部に粒子を分散させることが可能な粒子分散用ゲルであって、前記粒子分散用ゲルは、前記ポリマー(A)により三次元の網目構造が形成され、かつ、前記網目構造内に前記溶媒(B)が含有されており、前記溶媒(B)はポリオール化合物(B1)を含む粒子分散用ゲル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)および溶媒(B)を含み、かつ、内部に粒子を分散させることが可能な粒子分散用ゲルであって、
前記粒子分散用ゲルは、前記ポリマー(A)により三次元の網目構造が形成され、かつ、前記網目構造内に前記溶媒(B)が含有されており、
前記溶媒(B)はポリオール化合物(B1)を含む粒子分散用ゲル。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(B1)の分子量が50以上300以下である、請求項1に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項3】
B型粘度計で25℃、回転数30rpmの条件で測定した前記溶媒(B)の粘度が、1mPa・s以上200mPa・s以下である、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項4】
前記溶媒(B)の沸点が180℃以上300℃以下である、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項5】
前記ポリオール化合物(B1)が炭素数2以上6以下のジオール化合物(B2)を含む、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項6】
前記ポリオール化合物(B1)がエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される一種または二種以上を含む、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項7】
コーンプレート粘度計で25℃、コーン2°/20mm、せん断速度15s-1の条件で測定した前記粒子分散用ゲルの粘度が、10mPa・s以上60000mPa・s以下である、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項8】
JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定される前記三次元網目構造のモード径(X1)が10nm以上である、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項9】
JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定される前記三次元網目構造のメジアン径(X2)が50nm以上である、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項10】
前記ポリマー(A)が、多糖類、タンパク質、ペプチド、(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される一種または二種以上を含む、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項11】
前記粒子分散用ゲル中の前記ポリマー(A)の含有量が0.01質量%以上20.0質量%以下である、請求項1または2に記載の粒子分散用ゲル。
【請求項12】
請求項1または2に記載の粒子分散用ゲルと、前記粒子分散用ゲル中に分散された粒子と、を含む粒子分散ゲル。
【請求項13】
前記粒子が、薬物、香料、抗菌剤、殺菌剤、細胞、金属粒子、無機物粒子、ポリマー粒子、触媒、抗ウイルス剤および抗カビ剤からなる群から選択される一種または二種以上を含む、請求項12に記載の粒子分散ゲル。
【請求項14】
レーザー回折・散乱法により測定される、前記粒子のメジアン径D50が0.01μm以上10μm以下である、請求項12に記載の粒子分散ゲル。
【請求項15】
請求項1または2に記載の粒子分散用ゲルを製造するための製造方法であって、
前記ポリマー(A)および前記溶媒(B)を混合することによりゲル状物を得る工程と、前記ゲル状物を混錬することにより、三次元の網目構造を有する粒子分散用ゲルを得る工程と、を含む、粒子分散用ゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分散用ゲル、粒子分散ゲルおよび粒子分散用ゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元網目構造を有するゲルは、内部に様々な粒子を内包することができる。
このような粒子分散用ゲルに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2018-115140号)に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、水酸化カルシウムを主成分とするカルシウム化合物の微粉末を含むヒドロゲルであって、前記ヒドロゲルは、ゲルを構成する分散質が物理的架橋により三次元の網目構造状に構築され、かつ、前記水酸化カルシウムを主成分とするカルシウム化合物の微粉末は、当該三次元の網目構造内に内包されたゲルの分散媒中に含有され、前記ヒドロゲルを構成する親水性高分子樹脂100重量部に対し、前記水酸化カルシウムを主成分とするカルシウム化合物の微粉末の含有量が5乃至300重量部であることを特徴とする抗菌・消臭用ヒドロゲルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内包する粒子の分散性および保持性のバランスを向上させるために、内包する粒子のサイズに応じて、網目サイズを制御することが可能な粒子分散用ゲルが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、網目サイズを制御しやすい粒子分散用ゲル、それを用いた粒子分散ゲル、および、網目サイズを制御しやすい粒子分散用ゲルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、ポリマー(A)および溶媒(B)を含む粒子分散用ゲルにおいて、溶媒(B)としてポリオール化合物(B1)を含むことにより、網目サイズを制御しやすくなることを見出して、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、以下に示す粒子分散用ゲル、粒子分散ゲルおよび粒子分散用ゲルの製造方法が提供される。
【0008】
[1]
ポリマー(A)および溶媒(B)を含み、かつ、内部に粒子を分散させることが可能な粒子分散用ゲルであって、
前記粒子分散用ゲルは、前記ポリマー(A)により三次元の網目構造が形成され、かつ、前記網目構造内に前記溶媒(B)が含有されており、
前記溶媒(B)はポリオール化合物(B1)を含む粒子分散用ゲル。
[2]
前記ポリオール化合物(B1)の分子量が50以上300以下である、前記[1]に記載の粒子分散用ゲル。
[3]
B型粘度計で25℃、回転数30rpmの条件で測定した前記溶媒(B)の粘度が、1mPa・s以上200mPa・s以下である、前記[1]または[2]に記載の粒子分散用ゲル。
[4]
前記溶媒(B)の沸点が180℃以上300℃以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[5]
前記ポリオール化合物(B1)が炭素数2以上6以下のジオール化合物(B2)を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[6]
前記ポリオール化合物(B1)がエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される一種または二種以上を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[7]
コーンプレート粘度計で25℃、コーン2°/20mm、せん断速度15s-1の条件で測定した前記粒子分散用ゲルの粘度が、10mPa・s以上60000mPa・s以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[8]
JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定される前記三次元網目構造のモード径(X1)が10nm以上である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[9]
JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定される前記三次元網目構造のメジアン径(X2)が50nm以上である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[10]
前記ポリマー(A)が、多糖類、タンパク質、ペプチド、(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマーおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される一種または二種以上を含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[11]
前記粒子分散用ゲル中の前記ポリマー(A)の含有量が0.01質量%以上20.0質量%以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の粒子分散用ゲル。
[12]
前記[1]~[11]のいずれかに記載の粒子分散用ゲルと、前記粒子分散用ゲル中に分散された粒子と、を含む粒子分散ゲル。
[13]
前記粒子が、薬物、香料、抗菌剤、殺菌剤、細胞、金属粒子、無機物粒子、ポリマー粒子、触媒、抗ウイルス剤および抗カビ剤からなる群から選択される一種または二種以上を含む、前記[12]に記載の粒子分散ゲル。
[14]
レーザー回折・散乱法により測定される、前記粒子のメジアン径D50が0.01μm以上10μm以下である、前記[12]または[13]に記載の粒子分散ゲル。
[15]
前記[1]~[11]のいずれかに記載の粒子分散用ゲルを製造するための製造方法であって、
前記ポリマー(A)および前記溶媒(B)を混合することによりゲル状物を得る工程と、前記ゲル状物を混錬することにより、三次元の網目構造を有する粒子分散用ゲルを得る工程と、を含む、粒子分散用ゲルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、網目サイズを制御しやすい粒子分散用ゲル、それを用いた粒子分散ゲル、および、網目サイズを制御しやすい粒子分散用ゲルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
[粒子分散用ゲル]
本実施形態の粒子分散用ゲルは、ポリマー(A)および溶媒(B)を含み、かつ、内部に粒子を分散させることが可能な粒子分散用ゲルであって、前記粒子分散用ゲルは、ポリマー(A)により三次元の網目構造が形成され、かつ、前記網目構造内に溶媒(B)が含有されており、溶媒(B)はポリオール化合物(B1)を含む。
【0012】
前述したように、内包する粒子の分散性および保持性のバランスを向上させるために、内包する粒子のサイズに応じて、網目サイズを制御することが可能な粒子分散用ゲルが求められている。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、ポリマー(A)および溶媒(B)を含む粒子分散用ゲルにおいて、溶媒(B)としてポリオール化合物(B1)を含むことにより、網目サイズを制御しやすくなることを見出した。具体的には、本実施形態の粒子分散用ゲルは、ポリマー(A)の濃度やポリオール化合物(B1)の種類を変化させることにより、粒子分散用ゲルの三次元の網目構造の網目サイズを容易に制御することが可能である。
【0013】
以下、本実施形態の粒子分散用ゲルを構成する各成分について詳細に説明する。
【0014】
(ポリマー(A))
本実施形態の粒子分散用ゲルは、ポリマー(A)を含む。ポリマー(A)は本実施形態の粒子分散用ゲルにおける三次元の網目構造を形成するものである。
ポリマー(A)は溶媒(B)を含むことによりゲル化して三次元の網目構造を形成できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、多糖類、タンパク質、ペプチド、(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、およびポリビニルピロリドン等からなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは多糖類、(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、およびポリビニルピロリドン等からなる群から選択される一種または二種以上を含み、さらに好ましくは多糖類、ポリビニルアルコール系ポリマー、およびポリビニルピロリドン等からなる群から選択される一種または二種以上を含み、さらに好ましくは多糖類を含み、さらに好ましくは水溶性多糖類を含み、さらに好ましくはシロキクラゲ多糖体、ヒアルロン酸、キサンタンガム、アルギン酸、グアーガム、カチオン化グアーガム、カラギーナン、ジェランガム、アガロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびセルロースナノファイバー等からなる群から選択される一種または二種以上の水溶性多糖類を含み、さらに好ましくはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロース等からなる群から選択される一種または二種以上の水溶性セルロース類を含み、さらに好ましくはヒドロキシプロピルセルロースを含む。ヒドロキシプロピルセルロースとは、水溶性のセルロース誘導体であり、通常、セルロースを水酸化ナトリウムなどの塩基で処理した後、プロピレンオキサイドなどのエーテル化剤と反応させて得られる。ヒドロキシプロピルセルロースは、例えば富士フイルム和光純薬社から購入することができる。
【0015】
ポリマー(A)は、ゲル中に内包する粒子の移動性をより向上させる観点から、ヒドロキシプロピルセルロースを好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含み、そして、好ましくは100質量%以下含むことができる。
【0016】
本実施形態の粒子分散用ゲル中のポリマー(A)の含有量は、ゲル粘度を向上させつつ網目サイズをより小さくする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、網目サイズをより大きくする観点から、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。
【0017】
(溶媒(B))
本実施形態の粒子分散用ゲルは、溶媒(B)としてポリオール化合物(B1)を含む。
ポリオール化合物(B1)はポリマー(A)とともにゲル化して三次元の網目構造を形成できるものであれば特に限定されないが、粒子分散用ゲルの網目サイズの制御性をより向上させる観点から、好ましくは、炭素数2以上6以下のジオール化合物(B2)を含み、より好ましくは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0018】
本実施形態の粒子分散用ゲルは、溶媒(B)としてポリオール化合物(B1)以外の溶媒を含んでもよい。
ポリオール化合物(B1)以外の溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)、水等が挙げられ、これらの一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
溶媒(B)は、粒子分散用ゲルの網目サイズの制御性をより向上させる観点から、ポリオール化合物(B1)を好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含み、そして、好ましくは100質量%以下含むことができる。
【0020】
溶媒(B)の沸点は、網目サイズをより大きくする観点やゲル強度をより向上させる観点、ゲル中に内包する粒子の移動性をより向上させる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは195℃以上、さらに好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上、さらに好ましくは230℃以上、さらに好ましくは235℃以上であり、網目サイズをより小さくする観点やゲル中に内包する粒子の分散性・保持性をより向上させる観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下、さらに好ましくは255℃以下、さらに好ましくは245℃以下である。
【0021】
B型粘度計で25℃、回転数30rpmの条件で測定した溶媒(B)の粘度は、網目サイズをより大きくする観点やゲル強度をより向上させる観点、ゲル中に内包する粒子の移動性をより向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは10mPa・s以上、さらに好ましくは15mPa・s以上、さらに好ましくは20mPa・s以上であり、網目サイズをより小さくする観点やゲル中に内包する粒子の分散性・保持性をより向上させる観点から、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは150mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは80mPa・s以下である。
【0022】
ポリオール化合物(B1)の分子量は、網目サイズをより大きくする観点やゲル強度をより向上させる観点、ゲル中に内包する粒子の移動性をより向上させる観点から、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上、さらに好ましくは75以上、さらに好ましくは80以上、さらに好ましくは85以上であり、網目サイズをより小さくする観点やゲル中に内包する粒子の分散性・保持性をより向上させる観点から、好ましくは300以下、より好ましくは250以下、さらに好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、さらに好ましくは130以下、さらに好ましくは110以下である。
【0023】
コーンプレート粘度計で25℃、コーン2°/20mm、せん断速度15s-1の条件で測定した、本実施形態の粒子分散用ゲルの粘度は、ゲル中に内包する粒子の移動性をより向上させる観点やゲルの安定性をより向上させる観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上、さらに好ましくは300mPa・s以上、さらに好ましくは400mPa・s以上であり、そして、好ましくは60000mPa・s以下、より好ましくは30000mPa・s以下、さらに好ましくは5000mPa・s以下、さらに好ましくは2000mPa・s以下、さらに好ましくは1500mPa・s以下、さらに好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは800mPa・s以下である。
【0024】
JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定される、本実施形態の粒子分散用ゲルにおける三次元網目構造のモード径(X1)は、ゲル中に内包する粒子の移動性および分散性をより向上させる観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上、さらに好ましくは100nm以上、さらに好ましくは200nm以上、さらに好ましくは300nm以上、さらに好ましくは400nm以上であり、ゲル中に内包する粒子の保持性およびゲル強度をより向上させる観点から、好ましくは10000nm以下、より好ましくは5000nm以下、さらに好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1500nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。
【0025】
JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定される、本実施形態の粒子分散用ゲルにおける三次元網目構造のメジアン径(X2)は、ゲル中に内包する粒子の移動性および分散性をより向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上、さらに好ましくは200nm以上、さらに好ましくは300nm以上、さらに好ましくは400nm以上、さらに好ましくは500nm以上であり、ゲル中に内包する粒子の保持性およびゲル強度をより向上させる観点から、好ましくは10000nm以下、より好ましくは5000nm以下、さらに好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1500nm以下、さらに好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。
【0026】
本実施形態の粒子分散用ゲルの用途としては、例えば、配線修復材、人工組織用材料、再生足場用材料、シーリング材、癒着防止材、ドラッグデリバリー用材料、コンタクトレンズ用材料、センサー材料、表面コーティング材、分離材料、抗菌材、消臭材、創傷被覆材、触媒、抗ウイルス剤および抗カビ剤等からなる群から選択される一種または二種以上に用いられるゲルが挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の粒子分散用ゲルは配線修復材を構成するゲルとして用いることが好ましい。
【0027】
本実施形態の粒子分散用ゲルに内包する粒子としては、粒子分散用ゲルの用途に応じて適宜選択できるため特に限定されないが、例えば、薬物、香料、抗菌剤、殺菌剤、細胞、金属粒子、無機物粒子、ポリマー粒子、触媒、抗ウイルス剤および抗カビ剤等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の粒子分散用ゲルに内包する粒子としては金属粒子が好ましく、導電性金属微粒子がより好ましく、銅、金、銀およびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上を含む導電性金属微粒子がさらに好ましく、銅微粒子がさらに好ましい。また、上記金属粒子は、その表面のみが上記金属で構成されていてもよい。
【0028】
前記配線修復材とは、例えば、電気配線に断線部が生じた場合に、自己修復を可能とする自己修復型配線に用いられるものであり、例えば、粒子分散用ゲルおよび導電性金属微粒子を含む。導電性金属微粒子は、粒子分散用ゲルの中に分散している。自己修復型配線は、配線に断線部が生じた場合に、配線修復材によってそれが修復される。断線部を配線修復材で覆った場合、一部の導電性金属微粒子が断線部を短絡することにより、断線部は通電する。
【0029】
[粒子分散用ゲルの製造方法]
本実施形態の粒子分散用ゲルは、例えば、ポリマー(A)および溶媒(B)を混合することによりゲル状物を得る工程と、前記ゲル状物を混錬することにより、三次元の網目構造を有する粒子分散用ゲルを得る工程と、を含む製造方法により得ることができる。
【0030】
(ゲル状物を得る工程)
本実施形態の粒子分散用ゲルにおいて、ゲル状物を得る工程では、ポリマー(A)および溶媒(B)を混合することによりゲル状物を得る。例えば、以下の手順によりゲル状物を得ることができる。
まず、ポリマー(A)と溶媒(B)とを混合する。ポリマー(A)および溶媒(B)としては前述したものを用いることができる。次いで、得られた混合物を、攪拌しながら、40~100℃程度に加熱する。加熱時間は、混合物が適度にゲル化する限り特に限定されず、例えば1~60分程度である。なお、加熱なし(室温)であっても、十分な時間をかければ混合物はゲル化する。次いで、加熱および攪拌を停止し、静置することによりゲル状物を得ることができる。
【0031】
(粒子分散用ゲルを得る工程)
次いで、前記ゲル状物を混錬することにより、三次元の網目構造を有する粒子分散用ゲルを得る。
前記ゲル状物の混錬方法としては、本実施形態の粒子分散用ゲルにおける三次元網目構造の均一性をより向上させる観点から、ロールミルおよびボールミルからなる群から選択される少なくとも一種を用いた混錬が好ましく、ロールミルを用いた混錬がより好ましい。
【0032】
本実施形態のロールミルは3本以上のロールにより構成されていることが好ましい。これにより前記ゲル状物の混錬を連続的におこなうことができるため、得られる粒子分散用ゲルの生産性をより向上させることができる。
【0033】
[粒子分散ゲル]
本実施形態の粒子分散ゲルは、本実施形態の粒子分散用ゲルと、前記粒子分散用ゲル中に分散された粒子と、を含む。
本実施形態の粒子分散ゲル中の前記粒子の含有量は粒子分散ゲルの用途や内包する粒子の種類に応じて適宜選択できるため特に限定されないが、粒子分散ゲルの全体を100質量%としたとき、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、そして、例えば30質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0034】
本実施形態の粒子分散ゲルの用途としては、例えば、配線修復材、人工組織用材料、再生足場用材料、シーリング材、癒着防止材、ドラッグデリバリー用材料、コンタクトレンズ用材料、センサー材料、表面コーティング材、分離材料、抗菌材、消臭材、創傷被覆材、触媒、抗ウイルス剤および抗カビ剤等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の粒子分散ゲルは配線修復材として用いることが好ましい。
【0035】
本実施形態の粒子分散ゲルに用いる粒子としては、粒子分散ゲルの用途に応じて適宜選択できるため特に限定されないが、例えば、薬物、香料、抗菌剤、殺菌剤、細胞、金属粒子、無機物粒子、ポリマー粒子、触媒、抗ウイルス剤および抗カビ剤等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の粒子分散ゲルに用いる粒子としては金属粒子が好ましく、導電性金属微粒子がより好ましく、銅、金、銀およびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上を含む導電性金属微粒子がさらに好ましく、銅微粒子がさらに好ましい。また、上記の金属粒子は、その表面のみが上記金属で構成されていてもよい。
【0036】
レーザー回折・散乱法により測定される、前記粒子のメジアン径D50は、粒子の移動性および分散性をより向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、粒子の保持性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0037】
[粒子分散ゲルの製造方法]
本実施形態の粒子分散ゲルは、例えば、本実施形態の粒子分散用ゲルと、前記粒子とを混錬することにより得ることができる。
本実施形態の粒子分散用ゲルと、前記粒子とを混錬する方法としては、本実施形態の粒子分散ゲルにおける粒子の分散性をより向上させる観点から、ロールミルおよびボールミルからなる群から選択される少なくとも一種を用いた混錬が好ましく、ロールミルを用いた混錬がより好ましい。
【0038】
本実施形態のロールミルは3本以上のロールにより構成されていることが好ましく、3本ロールミルであることがより好ましい。これにより本実施形態の粒子分散用ゲルと前記粒子との混錬を連続的におこなうことができるため、得られる粒子分散ゲルの生産性をより向上させることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【0040】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0041】
以下、本発明について実施例および比較例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例および比較例の記載に何ら限定されるものではない。
【0042】
[材料]
粒子分散用ゲルの製造に用いた材料の詳細は以下の通りである。
(ポリマー(A))
・ヒドロキシプロピルセルロース(富士フイルム和光純薬社製)
【0043】
(溶媒(B))
・エチレングリコール(分子量:62.07、沸点:198℃、富士フイルム和光純薬社製)
・1,3-プロパンジオール(分子量:76.09、沸点:214℃、富士フイルム和光純薬社製)
・1,4-ブタンジオール(分子量:90.12、沸点:230℃、富士フイルム和光純薬社製)
・1,5-ペンタンジオール(分子量:104.15、沸点:242℃、富士フイルム和光純薬社製)
・1,6-ヘキサンジオール(分子量:118.17、沸点:250℃、富士フイルム和光純薬社製)
【0044】
[測定]
本実施例において、各種測定は以下の方法により行った。
【0045】
(溶媒(B)の粘度)
B型粘度計(東機産業社製、製品名:TVB-10M、ロータNo.1)を用いて、25℃、回転数30rpm、溶媒(B)200mLの条件で、溶媒(B)の粘度を測定した。ここで、溶媒(B)として2種類以上の混合溶媒を用いる場合は、混合溶媒の粘度を測定した。
【0046】
(粒子分散用ゲルの粘度)
コーンプレート粘度計(スペクトリス社製、製品名:キネクサスpro+)を用いて、25℃、コーン2°/20mm、せん断速度15s-1の条件でゲルの粘度を測定した。
【0047】
(粒子分散用ゲルの三次元網目構造のモード径(X1)およびメジアン径(X2))
粒子分散用ゲルの三次元網目構造のモード径(X1)およびメジアン径(X2)は、JIS Z 8826に準拠した光子相関法により測定した。測定装置としては、HORIBA社製のナノ粒子解析装置SZ-100V2ゲルユニットを用いた。測定条件としては、測定レンジを0.3nm~10μmとし、分布形態を多分散・ブロードとし、レーザー照射位置を100μmステップで10ポイント(0~900μm)とした。測定セルにサンプルを投入した際に気泡が混入した場合は脱泡処理を行った。
【0048】
実施例1
まず、ポリマー(A)としてヒドロキシプロピルセルロースと溶媒(B)としてエチレングリコールとを十分に混合して混合物を得た。ポリマー(A)および溶媒(B)の配合量は、表1に記載の通りとした。得られた混合物を、攪拌しながら、50℃で2分間加熱した。これにより混合物はゲルとなった。
加熱停止後、得られたゲルを室温(23℃)になるまで静置した。そして、室温になったゲル100gを、3本ロールミル(アイメックス社製BR-150V)に4回通し、粒子分散用ゲルを得た。ここで、3本ロールミルの第一のロール~第三のロールの通過を1回とした。各ロールは直径が63.5mmのものを用い、ロール間の距離は10μmとした。また、第一のロールの回転速度:第二のロールの回転速度:第三のロールの回転速度=1.0:2.4:6.0とし、第三のロールの回転速度を80rpmとした。得られた粒子分散用ゲルについて上記測定をそれぞれおこなった。結果を表1に示す。
【0049】
実施例2~10
ポリマー(A)および溶媒(B)の配合を表1に示す配合に変更した以外は実施例1と同様にして粒子分散用ゲルをそれぞれ得た。得られた粒子分散用ゲルについて上記測定をそれぞれおこなった。結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
表1より、ポリオール化合物(B1)の種類やポリマー(A)の濃度を変化させることにより、粒子分散用ゲルの網目サイズを変化させることができることが理解できる。すなわち、本実施形態の粒子分散用ゲルは、網目サイズを制御しやすいことが分かった。