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特開2024-22788導電ペースト、導電ペーストの製造方法及び接続構造体
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  • 特開-導電ペースト、導電ペーストの製造方法及び接続構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022788
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】導電ペースト、導電ペーストの製造方法及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240214BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20240214BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240214BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B5/16
H05K3/34 512C
H01R11/01 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126132
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】國澤 主
【テーマコード(参考)】
5E319
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD26
5E319GG20
5G301DA13
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】保存安定性を高めることができ、スクリーン印刷性を高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子を効率的に配置することができる導電ペーストを提供する。
【解決手段】本発明に係る導電ペーストは、熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子とを含み、前記フラックス付きはんだ粒子が、はんだ粒子と、前記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備え、前記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下であり、前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子とを含み、
前記フラックス付きはんだ粒子が、はんだ粒子と、前記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備え、
前記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下であり、
前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である、導電ペースト。
【請求項2】
前記はんだ粒子に担持されたフラックスの平均粒子径の、前記はんだ粒子の平均粒子径に対する比が、0.001以上10.0以下である、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項3】
前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸アミン塩である、請求項1又は2に記載の導電ペースト。
【請求項4】
作製直後の前記導電ペーストを25℃及び50%RHの条件で24時間保管した後の前記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度の、作製直後の前記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度に対する比が、1.5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電ペースト。
【請求項5】
はんだ粒子と、前記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備えるフラックス付きはんだ粒子を得る工程と、
熱硬化性成分と、前記フラックス付きはんだ粒子とを混合して、導電ペーストを得る工程とを備え、
前記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下であり、
前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である、導電ペーストの製造方法。
【請求項6】
前記導電ペーストを得る工程において、フラックスをさらに混合する、請求項5に記載の導電ペーストの製造方法。
【請求項7】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電ペーストであり、
前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ粒子を含む導電ペーストに関する。また、本発明は、はんだ粒子を含む導電ペーストの製造方法及び上記導電ペーストを用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。上記異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために使用されている。上記異方性導電材料による接続としては、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
近年、はんだ粒子等の導電性粒子を含む導電材料では、プリント配線板等における配線及びコネクター等のファインピッチ化により、導電性粒子の小粒子径化が進行している。
【0005】
下記の特許文献1では、平均粒子径0.4μm~2.0μmの金属粒子を主成分として含む導電性ペーストが開示されている。上記導電性ペーストでは、上記金属粒子の全個数100%中、粒子径が0.2μm以下の金属粒子の個数が5%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-134637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
はんだ粒子を含む導電ペーストを用いて導電接続を行う際には、上方の複数の電極と下方の複数の電極とが電気的に接続されて、導電接続が行われる。はんだ粒子は、上下の電極間に配置されることが望ましく、隣接する横方向の電極間には配置されないことが望ましい。隣接する横方向の電極間は、電気的に接続されないことが望ましい。
【0008】
一般に、はんだ粒子を含む導電ペーストは、スクリーン印刷等により基板上の特定の位置に配置された後、リフロー等により加熱されて用いられる。導電ペーストがはんだ粒子の融点以上に加熱されることで、はんだ粒子が溶融し、電極間にはんだが凝集することで、上下の電極間が電気的に接続される。導電ペーストにおいて、はんだ粒子を電極上に効率的に配置するために、フラックスが用いられることがある。
【0009】
ここで、特許文献1の導電ペーストのように、粒子径の小さい導電性粒子を用いた場合には、導電ペースト中の導電性粒子の表面積の合計が大きくなるので、導電性粒子を電極上に効率的に配置するために、導電ペーストに大量のフラックスが配合されることがある。
【0010】
しかしながら、液体のフラックスを導電ペーストに大量に配合した場合には、導電ペーストの保存安定性(ポットライフ)が悪化することがある。導電ペーストの保存安定性(ポットライフ)が悪化すると、スクリーン印刷を行う場合に、印刷時の導電ペーストの粘度が低くなって、スクリーン透過量が多くなることで、にじみが発生したり、印刷時の導電ペーストの粘度が高くなって、導電ペーストがメッシュに目詰まりすることで、かすれが発生したりすることがある。
【0011】
一方、固体のフラックスを導電ペーストに大量に配合した場合にも、導電ペーストの保存安定性(ポットライフ)が悪化し、印刷時の導電ペーストの粘度が高くなって、導電ペーストがメッシュに目詰まりすることがある。結果として、導電ペーストのかすれが発生することがある。従来の導電ペーストでは、導電ペーストの保存安定性(ポットライフ)の悪化により、導電ペーストをプリント配線板等に均一に塗布することができないことがある。
【0012】
本発明の目的は、保存安定性を高めることができ、スクリーン印刷性を高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子を効率的に配置することができる導電ペーストを提供することである。また、本発明の目的は、上記導電ペーストの製造方法及び上記導電ペーストを用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子とを含み、前記フラックス付きはんだ粒子が、はんだ粒子と、前記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備え、前記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下であり、前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である、導電ペーストが提供される。
【0014】
本発明に係る導電ペーストのある特定の局面では、前記はんだ粒子に担持されたフラックスの平均粒子径の、前記はんだ粒子の平均粒子径に対する比が、0.001以上10.0以下である。
【0015】
本発明に係る導電ペーストのある特定の局面では、前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸アミン塩である。
【0016】
本発明に係る導電ペーストのある特定の局面では、作製直後の前記導電ペーストを25℃及び50%RHの条件で24時間保管した後の前記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度の、作製直後の前記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度に対する比が、1.5以下である。
【0017】
本発明の広い局面によれば、はんだ粒子と、前記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備えるフラックス付きはんだ粒子を得る工程と、熱硬化性成分と、前記フラックス付きはんだ粒子とを混合して、導電ペーストを得る工程とを備え、前記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下であり、前記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である、導電ペーストの製造方法が提供される。
【0018】
本発明に係る導電ペーストの製造方法のある特定の局面では、前記導電ペーストを得る工程において、フラックスをさらに混合する。
【0019】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部の材料が、上述した導電ペーストであり、前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る導電ペーストは、熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子とを含み、フラックス付きはんだ粒子が、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備える。本発明に係る導電ペーストでは、上記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下である。本発明に係る導電ペーストでは、上記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である。本発明に係る導電ペーストでは、上記の構成が備えられているので、保存安定性を高めることができ、スクリーン印刷性を高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子を効率的に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る導電ペーストを用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
(導電ペースト)
本発明に係る導電ペーストは、熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子とを含み、フラックス付きはんだ粒子が、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備える。本発明に係る導電ペーストでは、上記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下である。本発明に係る導電ペーストでは、上記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である。
【0024】
本発明に係る導電ペーストでは、上記の構成が備えられているので、保存安定性を高めることができ、スクリーン印刷性を高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子を効率的に配置することができる。
【0025】
また、本発明に係る導電ペーストでは、電極間の導電接続時に、複数のはんだ粒子(フラックス付きはんだ粒子)が、上下の対向した電極間に集まりやすく、複数のはんだ粒子を電極(ライン)上に配置することができる。また、複数のはんだ粒子の一部が、接続されてはならない横方向の電極間に配置され難く、接続されてはならない横方向の電極間に配置されるはんだ粒子の量をかなり少なくすることができる。結果として、本発明では、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、接続されてはならない隣接する横方向の電極間の絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【0026】
さらに、本発明では、電極間の位置ずれを防ぐことができる。本発明では、導電ペーストを上面に配置した第1の接続対象部材に、第2の接続対象部材を重ね合わせる際に、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極とのアライメントがずれた状態でも、そのずれを補正して電極同士を接続させることができる(セルフアライメント効果)。
【0027】
保存安定性をより一層高め、スクリーン印刷性をより一層高める観点からは、作製直後の上記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度(η25)は、好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上であり、好ましくは250Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下である。上記粘度(η25)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0028】
上記粘度(η25)は、例えば、E型粘度計を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定することができる。上記E型粘度計としては、東機産業社製「TVE22L」等が挙げられる。
【0029】
作製直後の上記導電ペーストを25℃及び50%RHの条件で24時間保管した後の上記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度(ηA)は、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上であり、好ましくは400Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度(ηA)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、保存安定性をより一層高め、スクリーン印刷性をより一層高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記粘度(ηA)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0030】
上記粘度(ηA)は、例えば、E型粘度計を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定することができる。上記E型粘度計としては、東機産業社製「TVE22L」等が挙げられる。
【0031】
作製直後の上記導電ペーストを25℃及び50%RHの条件で24時間保管した後の上記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度(ηA)の、作製直後の上記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度(η25)に対する比を、比(ηA/η25)とする。上記比(ηA/η25)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上、最も好ましくは1.0以上である。上記比(ηA/η25)は、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。上記比(ηA/η25)が、上記下限以上及び上記上限以下であると、保存安定性をより一層高め、スクリーン印刷性をより一層高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0032】
はんだ粒子の融点での導電ペーストの粘度(ηmp)は、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上であり、好ましくは50a・s以下、より好ましくは30Pa・s以下、さらに好ましくは10Pa・s以下である。上記粘度(ηmp)が、上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記粘度(ηmp)が、上記下限以上であると、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制することができる。
【0033】
上記粘度(ηmp)は、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等を用いて、歪制御1rad、周波数1Hz、昇温速度20℃/分、測定温度範囲25℃~200℃(但し、はんだ粒子の融点が200℃を超える場合には温度上限をはんだ粒子の融点とする)の条件で測定可能である。測定結果から、はんだ粒子の融点での導電ペースト粘度が算出される。
【0034】
上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電ペーストは、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電ペーストは、回路接続ペーストであることが好ましい。
【0035】
上記導電ペーストの使用環境は、特に限定されない。上記導電ペーストは、25℃及び50%RHの環境で使用されてもよく、それ以外の環境で使用されてもよい。
【0036】
以下、上記導電ペーストに含まれる各成分を説明する。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味する。
【0037】
(熱硬化性成分)
本発明に係る導電ペーストは、熱硬化性成分を含む。上記導電ペーストは、熱硬化性成分として、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記導電ペーストは、熱硬化剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記導電ペーストは、熱硬化性成分として、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含んでいてもよい。上記導電ペーストが、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含む場合には、導電ペーストをより一層良好に硬化させることができる。
【0038】
(熱硬化性成分:熱硬化性化合物)
上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。導電ペーストの硬化性及び粘度をより一層良好にする観点、導通信頼性をより一層高める観点、及び絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましく、エポキシ化合物がより好ましい。導電ペーストの硬化性及び粘度をより一層良好にする観点、導通信頼性をより一層高める観点、及び絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物である。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。上記エポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記エポキシ化合物は、常温(25℃)で液状又は固体であり、上記エポキシ化合物が常温で固体である場合には、上記エポキシ化合物の溶融温度は、上記はんだ粒子の融点以下であることが好ましい。上記の好ましいエポキシ化合物を用いることで、接続対象部材を貼り合わせた段階では、粘度が高く、搬送等の衝撃により、加速度が付与された際に、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材との位置ずれを抑制することができる。さらに、硬化時の熱により、導電ペーストの粘度を大きく低下させることができ、はんだ粒子の凝集を効率よく進行させることができる。
【0041】
接続信頼性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、フェノールノボラック型エポキシ化合物、又は、ビスフェノールF型エポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0042】
導電ペースト100重量%中、上記熱硬化性成分の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記熱硬化性成分の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間の絶縁信頼性をより一層高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。耐衝撃性を効果的に高める観点からは、上記熱硬化性成分の含有量は多い方が好ましい。
【0043】
導電ペースト100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記熱硬化性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間の絶縁信頼性をより一層高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。耐衝撃性を効果的に高める観点からは、上記熱硬化性化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0044】
導電ペースト100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間の絶縁信頼性をより一層高めることができ、電極間の導通信頼性をより一層高めることができる。耐衝撃性を効果的に高める観点からは、上記エポキシ化合物の含有量は多い方が好ましい。
【0045】
(熱硬化性成分:熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を熱硬化させる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤等のチオール硬化剤、酸無水物硬化剤、熱カチオン開始剤(熱カチオン硬化剤)及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
導電ペーストを低温でより一層速やかに硬化可能とする観点からは、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、チオール硬化剤、又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときの保存安定性を高める観点からは、上記熱硬化剤は、潜在性の硬化剤であることが好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性チオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0047】
上記イミダゾール硬化剤は、特に限定されない。上記イミダゾール硬化剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、及び2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-パラトルイル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メタトルイル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メタトルイル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-パラトルイル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等における1H-イミダゾールの5位の水素をヒドロキシメチル基で、かつ、2位の水素をフェニル基またはトルイル基で置換したイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0048】
上記チオール硬化剤は、特に限定されない。上記チオール硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、及びジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0049】
上記アミン硬化剤は特に限定されない。上記アミン硬化剤としては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0050】
上記酸無水物硬化剤は、特に限定されない。上記酸無水物硬化剤としては、エポキシ化合物等の熱硬化性化合物の硬化剤として用いられる酸無水物を広く用いることができる。上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、グリセリンビス無水トリメリット酸モノアセテート、及びエチレングリコールビス無水トリメリット酸等の2官能の酸無水物硬化剤、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物硬化剤、並びに、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、及びポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物硬化剤等が挙げられる。
【0051】
上記熱カチオン開始剤は、特に限定されない。上記熱カチオン開始剤としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0052】
上記熱ラジカル発生剤は、特に限定されない。上記熱ラジカル発生剤としては、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ジ-tert-ブチルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。
【0053】
上記熱硬化剤の反応開始温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは175℃以下、特に好ましくは150℃以下である。上記熱硬化剤の反応開始温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記熱硬化剤の反応開始温度は、70℃以上150℃以下であることが特に好ましい。
【0054】
上記熱硬化剤の反応開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)での発熱ピークの立ち上がり開始の温度を意味する。
【0055】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは75重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が、上記下限以上であると、導電ペーストを十分に硬化させることが容易である。上記熱硬化剤の含有量が、上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0056】
(フラックス付きはんだ粒子)
上記導電ペーストは、フラックス付きはんだ粒子を含む。上記フラックス付きはんだ粒子は、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備える。
【0057】
上記フラックス付きはんだ粒子では、上記フラックスが、上記はんだ粒子(担体)に担持されている。ここで、担持とは、担体の上に、担持される物質が固定されている状態のことを意味する。上記担持される物質は、上記担体の表面上に配置されていてもよい。上記担持される物質は、上記担体の表面上に点在していてもよく、上記担体の表面上に密集していてもよく、上記担体の表面上を被覆していてもよい。上記フラックス付きはんだ粒子では、上記フラックスは、上記はんだ粒子の表面上に、化学結合を介して配置されていてもよく、化学結合を介さずに配置されていてもよい。上記フラックス付きはんだ粒子では、上記フラックスは、上記はんだ粒子の表面上に、化学結合を介さずに配置されていることが好ましい。
【0058】
上記導電ペースト100重量%中、上記フラックス付きはんだ粒子の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましく55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。上記フラックス付きはんだ粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性をより一層高めることができる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フラックス付きはんだ粒子の含有量は多い方が好ましい。
【0059】
上記熱硬化性成分100重量部に対して、上記フラックス付きはんだ粒子の含有量は、好ましくは100重量部以上、より好ましくは150重量部以上、さらに好ましくは200重量部以上であり、好ましくは400重量部以下、より好ましくは350重量部以下、さらに好ましくは300重量部以下である。上記フラックス付きはんだ粒子の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性をより一層高めることができる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記フラックス付きはんだ粒子の含有量は多い方が好ましい。
【0060】
[はんだ粒子]
上記はんだ粒子は、上記フラックス付きはんだ粒子における担体である。上記はんだ粒子には、上記フラックスが担持されている。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記はんだ粒子には、複数の上記フラックスが担持されていることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、複数の上記フラックスが、上記はんだ粒子に担持されていることが好ましい。上記はんだ粒子の表面は、複数の上記フラックスにより被覆されていることが好ましい。
【0061】
上記はんだ粒子は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだにより形成されている。上記はんだ粒子は、中心部分及び外表面のいずれもがはんだである粒子である。上記はんだ粒子の代わりに、はんだ以外の材料から形成された基材粒子と該基材粒子の表面上に配置されたはんだ部とを備える導電性粒子を用いた場合には、電極上に導電性粒子が集まり難くなる。また、上記導電性粒子では、導電性粒子同士のはんだ接合性が低いために、電極上に移動した導電性粒子が電極外に移動しやすくなる傾向があり、電極間の位置ずれの抑制効果も低くなる傾向がある。
【0062】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、5.0μm以下である。上記はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは4.9μm以下、より好ましくは4.5μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下である。上記はんだ粒子の平均粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記はんだ粒子の平均粒子径が、上記上限以下であると、ファインピッチ化した基材等に対するスクリーン印刷性をより一層高めることができる。本発明に係る導電ペーストでは、上記はんだ粒子の平均粒子径が小さいほど、本発明の上記の効果がより一層効果的に発揮される。即ち、本発明に係る導電ペーストでは、上記はんだ粒子の平均粒子径が小さいほど、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、接続されてはならない隣接する横方向の電極間の絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【0063】
上記はんだ粒子の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記はんだ粒子の平均粒子径は、例えば、任意のはんだ粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各はんだ粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりのはんだ粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個のはんだ粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりのはんだ粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記はんだ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0064】
上記はんだ粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。上記はんだ粒子の粒子径の変動係数が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。但し、上記はんだ粒子の粒子径のCV値は、5%未満であってもよい。
【0065】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0066】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:はんだ粒子の粒子径の標準偏差
Dn:はんだ粒子の粒子径の平均値
【0067】
上記はんだ粒子の形状は特に限定されない。上記はんだ粒子の形状は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状等の形状であってもよい。
【0068】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記はんだ粒子の比重は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。
【0069】
上記はんだ粒子の比重は、例えば、島津製作所社製「アキュピックII 1340」により求められる。
【0070】
上記はんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。上記はんだ粒子は、融点が450℃以下である金属粒子(低融点金属粒子)であることが好ましい。上記低融点金属粒子は、低融点金属を含む粒子である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは260℃以下である。上記はんだは、融点が250℃未満の低融点はんだであることが好ましい。
【0071】
接続信頼性をより一層高める観点からは、上記はんだ粒子の融点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。
【0072】
上記はんだ粒子の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0073】
また、上記はんだ粒子は錫を含むことが好ましい。上記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記はんだ粒子における錫の含有量が、上記下限以上であると、はんだ部と電極との導通信頼性及び接続信頼性がより一層高くなる。
【0074】
なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えば、堀場製作所社製「ICP-AES」)、又は蛍光X線分析装置(例えば、島津製作所社製「EDX-800HS」)等を用いて測定することができる。
【0075】
上記はんだ粒子を用いることで、はんだが溶融して電極に接合し、はんだ部が電極間を導通させる。例えば、はんだ部と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、上記はんだ粒子の使用により、はんだ部と電極との接合強度が高くなる結果、はんだ部と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性及び接続信頼性がより一層高くなる。
【0076】
上記はんだ粒子を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-亜鉛合金、錫-インジウム合金、及び錫-アンチモン合金等が挙げられる。電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫-銀合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-インジウム合金、及び錫-アンチモン合金であることが好ましく、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-インジウム合金、又は錫―アンチモン合金であることがより好ましい。
【0077】
上記はんだ粒子は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだ粒子の組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、及びインジウム等を含む金属組成が挙げられる。低融点で鉛フリーである錫-インジウム系(117℃共晶)、又は錫-ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、上記はんだ粒子は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むか、又は錫とビスマスとを含むことが好ましい。
【0078】
はんだ部と電極との接合強度をより一層高めるために、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、及びパラジウム等の金属を含んでいてもよい。また、はんだ部と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記はんだ粒子は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。はんだ部と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0079】
[フラックス]
上記フラックス付きはんだ粒子は、上記はんだ粒子に担持されたフラックス(以下、「フラックスX」とすることがある)を備える。上記フラックスXは、上記はんだ粒子に担持されている。
【0080】
上記導電ペーストでは、上記はんだ粒子に担持されたフラックス(フラックスX)が、カルボン酸又はカルボン酸塩である。上記フラックスXは、カルボン酸であってもよく、カルボン酸塩であってもよい。
【0081】
カルボン酸とは、1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物である。上記カルボン酸は、1個のカルボキシル基を有していてもよく、2個のカルボキシル基を有していてもよく、2個以上のカルボキシル基を有していてもよく、3個のカルボキシル基を有していてもよく、3個以上のカルボキシル基を有していてもよい。上記カルボン酸は、10個以下のカルボキシル基を有していてもよく、8個以下のカルボキシル基を有していてもよく、5個以下のカルボキシル基を有していてもよい。
【0082】
上記カルボン酸としては、脂肪族系カルボン酸、脂環式カルボン酸、及び芳香族カルボン酸等が挙げられる。上記脂肪族系カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、及びリンゴ酸等が挙げられる。上記脂環式カルボン酸としては、シクロヘキシルカルボン酸、及び1,4-シクロヘキシルジカルボン酸等が挙げられる。上記芳香族カルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、及びエチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記カルボン酸は、グルタル酸、シクロヘキシルカルボン酸、又はアジピン酸であることが好ましい。
【0083】
上記カルボン酸塩としては、上述したカルボン酸と塩基化合物との中和反応物(塩)が挙げられる。上記カルボン酸塩は、カルボン酸と塩基化合物との中和反応により生じた塩であることが好ましい。上記中和反応の条件としては、25℃~60℃の加熱温度及び5分間~30分間の加熱時間の条件であることが好ましい。上記カルボン酸は、金属の表面を洗浄する効果を有することが好ましく、上記塩基化合物は、上記カルボン酸を中和する作用を有することが好ましい。
【0084】
上記塩基化合物は、アミノ基を有する有機化合物(アミン化合物)であることが好ましい。上記塩基化合物としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、2-メチルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、4-tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、N-エチルベンジルアミン、N-フェニルベンジルアミン、N-tert-ブチルベンジルアミン、N-イソプロピルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、イミダゾール化合物、及びトリアゾール化合物が挙げられる。電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記塩基化合物は、ベンジルアミンであることが好ましい。
【0085】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記カルボン酸塩は、カルボン酸アミン塩であることが好ましい。上記カルボン酸アミン塩としては、グルタル酸ベンジルアミン塩、アジピン酸ベンジルアミン塩、及びリンゴ酸ベンジルアミン塩等が挙げられる。
【0086】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスXは、カルボン酸塩であることが好ましく、カルボン酸アミン塩であることがより好ましく、グルタル酸ベンジルアミン塩、又はアジピン酸ベンジルアミン塩であることがさらに好ましい。
【0087】
上記フラックスXは、25℃で固体であることが好ましい。具体的には、上記はんだ粒子に担持され、かつ、上記熱硬化性成分と混合されていない状態(フラックス付きはんだ粒子単体の状態)で、上記フラックスXが、25℃で固体であることが好ましい。
【0088】
また、上記フラックスXは、はんだ粒子に担持される前の状態で、25℃で固体であることが好ましい。上記はんだ粒子に担持される前のフラックスが、25℃で固体であることが好ましい。すなわち、フラックス単体が、25℃で固体であることが好ましい。
【0089】
なお、上記フラックス付きはんだ粒子単体の状態で、上記フラックスXが25℃で固体であるか否かについては、示差走査熱量測定(DSC)により判断することができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0090】
なお、上記はんだ粒子に担持される前の状態で、フラックス(フラックス単体)が25℃で固体であるか否かについては、以下のように判断することができる。本明細書において、25℃で液体ではないフラックスに関しては、25℃及び50%RHでフラックス単体を5分間静置したときに形状を保つフラックスを、25℃で固体のフラックスと定義し、25℃及び50%RHでフラックス単体を5分間静置したときに形状を保たないフラックスを、25℃で半固体のフラックスと定義する。また、25℃で半固体のフラックスは、25℃で固体のフラックスに含まれない。
【0091】
上記フラックスXの形状は、特に限定されない。上記フラックスXは、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状等の形状であってもよい。スクリーン印刷性をより一層高める観点からは、上記フラックスXの形状は、球状であることが好ましい。
【0092】
上記フラックスXの粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0093】
上記フラックスXの粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることがより好ましい。上記フラックスXの平均粒子径は、例えば、任意のフラックスX50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各フラックスXの粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりのフラックスXの粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個のフラックスXの円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりのフラックスXの粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記フラックスXの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定により算出することが好ましい。
【0094】
上記フラックス付きはんだ粒子において、上記フラックスXの粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。
【0095】
フラックス付きはんだ粒子を含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、フラックス付きはんだ粒子検査用埋め込み樹脂体を作製する。その検査用埋め込み樹脂体中の分散したフラックス付きはんだ粒子におけるフラックスXの中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、フラックス付きはんだ粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率5万倍に設定し、50個のフラックスXを無作為に選択し、各フラックスXの粒子径を計測し、それらを算術平均してフラックスXの粒子径とする。
【0096】
上記はんだ粒子に担持されたフラックス(フラックスX)の平均粒子径の、上記はんだ粒子の平均粒子径に対する比は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。上記比(フラックスXの平均粒子径/はんだ粒子の平均粒子径)が上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックスXをはんだ粒子に対して効果的に接触させることができ、加熱時のフラックス性能をより一層高めることができる。
【0097】
上記フラックスXの融点(活性温度)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。上記フラックスXの融点が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0098】
上記フラックスXの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0099】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスXの融点は、上記はんだ粒子の融点よりも、低いことが好ましい。電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスXの融点は、上記はんだ粒子の融点よりも、5℃以上低いことがより好ましく、10℃以上低いことがさらに好ましい。
【0100】
フラックスを上記はんだ粒子に担持させる方法(フラックス付きはんだ粒子の作製方法)としては、例えば、以下の方法が挙げられる。フラックスを溶解させた溶媒に、はんだ粒子を浸漬させる方法。溶媒中にはんだ粒子を浸漬し、該溶媒中でフラックスを化学反応により生成する方法。はんだ粒子とフラックスとを固相混合する方法。
【0101】
上記フラックス付きはんだ粒子が上記フラックスXを担持していることを確認する方法としては、例えば、フラックス付きはんだ粒子について、示差走査熱量測定(DSC)を行い、はんだ粒子の融点と、フラックスXの融点とにおいてそれぞれピークが発現していることを確認する方法等がある。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0102】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記はんだ粒子の表面積100%中、上記フラックスXが担持されている表面積の割合(フラックスXによる被覆率)は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0103】
上記フラックスXによる被覆率は、以下の方法で測定することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)での観察により、20個のフラックス付きはんだ粒子を観察し、はんだ粒子の表面積100%中、上記フラックスXが担持されている部分の合計の面積(投影面積)の割合を計算する。
【0104】
上記フラックス付きはんだ粒子1個において、上記はんだ粒子100重量部に対して、上記フラックスXの含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。上記フラックスXの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができ、電極間にはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0105】
上記導電ペーストは、上記フラックス付きはんだ粒子における上記フラックスXとは異なるフラックス(以下、「フラックスY」とすることがある)を含んでいてもよい。上記導電ペーストは、上記フラックスX以外のフラックス(フラックスY)を含んでいてもよい。電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記導電ペーストは、熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子と、フラックス(フラックスY)とを含むことが好ましい。上記フラックスYは、上記導電ペースト中で、上記はんだ粒子に担持されていないことが好ましい。上記フラックスYは、上記フラックスXと同一であってもよく、異なっていてもよい。上記フラックスYは、固体であってもよく、液体であってもよい。
【0106】
上記フラックスYとしては、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、有機リン化合物、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、アミン化合物、有機酸、有機酸の塩、及び松脂等が挙げられる。上記フラックスYは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0107】
上記溶融塩としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0108】
上記有機リン化合物としては、有機ホスホニウム塩、有機リン酸、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸、有機ホスホン酸エステル、有機ホスフィン酸、及び有機ホスフィン酸エステル等が挙げられる。
【0109】
上記アミン化合物としては、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ベンズヒドリルアミン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、フェニルイミダゾール、カルボキシベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、及びカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0110】
上記松脂は、アビエチン酸を主成分とするロジン類である。上記ロジン類としては、アビエチン酸、及びアクリル変性ロジン等が挙げられる。
【0111】
上記有機酸及び上記有機酸の塩としては、上述したカルボン酸及びカルボン酸塩が挙げられる。
【0112】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記フラックスYは、上記フラックスXと同一であることが好ましい。
【0113】
上記フラックスX100重量部に対して、上記フラックスYの含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは50重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは800重量部以下、さらに好ましくは500重量部以下である。上記フラックスYの含有量が、上記下限以上であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記フラックスYの含有量が、上記上限以下であると、保存安定性及びスクリーン印刷性をより一層高めることができる。
【0114】
上記導電ペースト100重量%中、上記フラックスYの含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。フラックスYの含有量が、上記下限以上であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記フラックスYの含有量が、上記上限以下であると、保存安定性及びスクリーン印刷性をより一層高めることができる。
【0115】
上記熱硬化性成分100重量部に対して、上記フラックスYの含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上であり、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは25重量部以下である。上記フラックスYの含有量が、上記下限以上であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記フラックスYの含有量が、上記上限以下であると、保存安定性及びスクリーン印刷性をより一層高めることができる。
【0116】
上記フラックス付きはんだ粒子100重量部に対して、上記フラックスYの含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、さらに好ましくは5重量部以上であり、好ましくは35重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは25重量部以下である。上記フラックスYの含有量が、上記下限以上であると、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記フラックスYの含有量が、上記上限以下であると、保存安定性及びスクリーン印刷性をより一層高めることができる。
【0117】
(他の成分)
上記導電ペーストは、必要に応じて、例えば、チキソトロピック剤、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、レベリング剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0118】
フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記導電ペーストは、チキソトロピック剤を含むことが好ましい。上記チキソトロピック剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記導電ペースト100重量%中、上記チキソトロピック剤の含有量は、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。上記チキソトロピック剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0120】
上記フラックス付きはんだ粒子100重量部に対して、上記チキソトロピック剤の含有量は、好ましくは0.003重量部以上、より好ましくは0.005重量部以上、さらに好ましくは0.01重量部以上であり、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下、さらに好ましくは0.7重量部以下である。上記チキソトロピック剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0121】
上記熱硬化性成分100重量部に対して、上記チキソトロピック剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。上記チキソトロピック剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0122】
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記チキソトロピック剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。上記チキソトロピック剤の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0123】
上記チキソトロピック剤は、(A)25℃で液体であり、かつ水酸基を有するチキソトロピック剤であるか、又は、(B)25℃で固体であり、かつ上記チキソトロピック剤を25℃及び50%RHで24時間放置したときの、下記の重量増加率が0.2重量%以上であるチキソトロピック剤であることが好ましい。上記チキソトロピック剤が上記の好ましい態様である場合には、フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。
【0124】
重量増加率(重量%)=(W2-W1)×100/W1
W1:放置前の上記チキソトロピック剤の重量
W2:放置後の上記チキソトロピック剤の重量
【0125】
上記チキソトロピック剤は、(A)25℃で液体であり、かつ水酸基を有するチキソトロピック剤(以下、「チキソトロピック剤A」とすることがある)であってもよい。また、上記チキソトロピック剤は、(B)25℃で固体であり、かつ上記重量増加率が0.2重量%以上であるチキソトロピック剤(以下、「チキソトロピック剤B」とすることがある)であってもよい。上記チキソトロピック剤は、上記チキソトロピック剤A又は上記チキソトロピック剤Bであることが好ましい。
【0126】
上記チキソトロピック剤Aは、25℃で液体であり、かつ水酸基(-OH基)を有する。
【0127】
上記チキソトロピック剤Aは、25℃で液体である。具体的には、上記熱硬化性成分、及び上記フラックス付きはんだ粒子と混合されていない状態で、上記チキソトロピック剤A(チキソトロピック剤A単体)が、25℃で液体である。
【0128】
上記導電ペーストでは、25℃の導電ペースト中で、上記チキソトロピック剤Aが液体であることが好ましい。上記導電ペーストでは、25℃の導電ペースト中で、上記チキソトロピック剤Aが液体で存在することが好ましい。
【0129】
上記チキソトロピック剤Aは、水酸基を少なくとも1個有する。上記チキソトロピック剤Aは、水酸基を1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個有していてもよく、3個以上有していてもよく、4個以上有していてもよい。上記チキソトロピック剤Aは、1価アルコールであってもよく、多価アルコールであってもよい。上記チキソトロピック剤Aは、2価アルコールであってもよく、3価アルコールであってもよく、4価アルコールであってもよい。導電ペーストの揮発を防ぎ、スクリーン印刷性をより一層高める観点からは、上記チキソトロピック剤Aは、水酸基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。導電ペーストの揮発を防ぎ、スクリーン印刷性をより一層高める観点からは、上記チキソトロピック剤Aは、ポリオール化合物(多価アルコール)であることが好ましい。上記チキソトロピック剤Aは、水酸基を10個以下で有していてもよく、7個以下で有していてもよい。
【0130】
上記チキソトロピック剤Aとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、N-オレオイルサルコシン、プリピレングリコール、プロパンジオール、ジエチレングリコール、グリセロール(グリセリン)、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ジグリセリン、及びポリグリセリン等が挙げられる。
【0131】
導電ペーストの揮発を防ぎ、スクリーン印刷性をより一層高める観点からは、上記チキソトロピック剤Aは、グリセロール(グリセリン)、N-オレオイルサルコシン、又は1,2,4-ブタントリオールであることが好ましく、グリセロール(グリセリン)であることがより好ましい。
【0132】
上記チキソトロピック剤Bは、25℃で固体であり、かつ上記チキソトロピック剤を25℃及び50%RHで24時間放置したときの、下記の重量増加率が0.2重量%以上である。
【0133】
重量増加率(重量%)=(W2-W1)×100/W1
W1:放置前の上記チキソトロピック剤の重量
W2:放置後の上記チキソトロピック剤の重量
【0134】
上記チキソトロピック剤Bは、25℃で固体である。具体的には、上記熱硬化性成分、及び上記フラックス付きはんだ粒子と混合されていない状態で、上記チキソトロピック剤B(チキソトロピック剤B単体)が、25℃で固体である。
【0135】
上記導電ペーストでは、25℃の導電ペースト中で、上記チキソトロピック剤Bが固体であることが好ましい。上記導電ペーストでは、25℃の導電ペースト中で、上記チキソトロピック剤Bが固体で存在することが好ましい。
【0136】
なお、上記チキソトロピック剤B(チキソトロピック剤B単体)が25℃で固体であるか否かについては、以下のように判断することができる。本明細書において、25℃で液体ではないチキソトロピック剤Bに関しては、25℃及び50%RHでチキソトロピック剤B単体を5分間静置したときに形状を保つチキソトロピック剤Bを、25℃で固体のチキソトロピック剤Bと定義する。また、25℃及び50%RHでチキソトロピック剤B単体を5分間静置したときに形状を保たないチキソトロピック剤Bを、25℃で半固体のチキソトロピック剤Bと定義する。なお、25℃で半固体のチキソトロピック剤Bは、25℃で固体のチキソトロピック剤Bに含まれない。
【0137】
なお、上記チキソトロピック剤Bが25℃の導電ペースト中で固体であるか否かについては、以下のように判断することができる。本明細書において、25℃で液体ではないチキソトロピック剤Bに関しては、25℃及び50%RHでチキソトロピック剤Bを含む導電ペーストを5分間静置したときに形状を保つチキソトロピック剤Bを、25℃で固体のチキソトロピック剤Bと定義する。また、25℃及び50%RHでチキソトロピック剤Bを含む導電ペーストを5分間静置したときに形状を保たないチキソトロピック剤Bを、25℃で半固体のチキソトロピック剤Bと定義する。なお、25℃で半固体のチキソトロピック剤Bは、25℃で固体のチキソトロピック剤Bに含まれない。
【0138】
上記チキソトロピック剤Bは、25℃及び50%RHで24時間放置したときに、重量が増加する。上記チキソトロピック剤Bを25℃及び50%RHで24時間放置したときに、放置後の上記チキソトロピック剤Bの重量は、放置前の上記チキソトロピック剤Bの重量よりも大きい。
【0139】
フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記チキソトロピック剤Bは、吸水性又は吸湿性を有することが好ましく、吸湿性を有することがより好ましい。フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記チキソトロピック剤Bは、25℃及び50%RHで吸湿性を有することがさらに好ましい。
【0140】
上記チキソトロピック剤Bの上記重量増加率は、0.2重量%以上である。上記チキソトロピック剤Bの上記重量増加率は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であり、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。上記チキソトロピック剤Bの重量増加率が、上記下限以上であると、フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置することができる。上記チキソトロピック剤Bの重量増加率が、上記上限以下又は上記上限未満であると、スクリーン印刷性をより一層高めることができる。フラックス性能を良好に補助し、電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記チキソトロピック剤Bが、25℃で固体であり、かつ上記重量増加率が1重量%以上であるチキソトロピック剤であることが特に好ましい。
【0141】
上記チキソトロピック剤Bの重量増加率は、以下の方法で測定することができる。チキソトロピック剤B10g(W1)を25℃及び0%RHのデシケータから取り出し、25℃及び50%RHで24時間放置したときの、放置後のチキソトロピック剤Bの重量(W2)を測定する。
【0142】
上記チキソトロピック剤Bとしては、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、及びメチルグルコシド等が挙げられる。
【0143】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記チキソトロピック剤Bは、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体、又はグルコースであることが好ましく、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体であることがより好ましい。
【0144】
(導電ペーストの製造方法)
本発明に係る導電ペーストの製造方法は、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備えるフラックス付きはんだ粒子を得る工程と、熱硬化性成分と、上記フラックス付きはんだ粒子とを混合して、導電ペーストを得る工程とを備える。本発明に係る導電ペーストの製造方法では、上記はんだ粒子の平均粒子径が、5.0μm以下である。本発明に係る導電ペーストの製造方法では、上記はんだ粒子に担持されたフラックスが、カルボン酸又はカルボン酸塩である。
【0145】
本発明に係る導電ペーストの製造方法では、上記の構成が備えられているので、得られる導電ペーストの保存安定性を高めることができ、スクリーン印刷性を高めることができ、かつ、電極上にはんだ粒子を効率的に配置することができる。
【0146】
また、本発明に係る導電ペーストでは、電極間の導電接続時に、複数のはんだ粒子(フラックス付きはんだ粒子)が、上下の対向した電極間に集まりやすく、複数のはんだ粒子を電極(ライン)上に配置することができる。また、複数のはんだ粒子の一部が、接続されてはならない横方向の電極間に配置され難く、接続されてはならない横方向の電極間に配置されるはんだ粒子の量をかなり少なくすることができる。結果として、本発明では、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、接続されてはならない隣接する横方向の電極間の絶縁信頼性を効果的に高めることができる。
【0147】
さらに、本発明では、電極間の位置ずれを防ぐことができる。本発明では、導電ペーストを上面に配置した第1の接続対象部材に、第2の接続対象部材を重ね合わせる際に、第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極とのアライメントがずれた状態でも、そのずれを補正して電極同士を接続させることができる(セルフアライメント効果)。
【0148】
本発明に係る導電ペーストの製造方法では、上記フラックス付きはんだ粒子、及び上記熱硬化性成分は、上述したフラックス付きはんだ粒子、及び上述した熱硬化性成分であることが好ましい。
【0149】
フラックスを上記はんだ粒子に担持させる方法(フラックス付きはんだ粒子の作製方法)としては、例えば、以下の方法が挙げられる。フラックスを溶解させた溶媒に、はんだ粒子を浸漬させる方法。溶媒中にはんだ粒子を浸漬し、該溶媒中でフラックスを化学反応により生成する方法。はんだ粒子とフラックスとを固相混合する方法。
【0150】
上記熱硬化性成分と、上記フラックス付きはんだ粒子とを混合して、導電ペーストを得る工程において、上記熱硬化性成分と、上記フラックス付きはんだ粒子とを混合する方法は、特に限定されない。上記熱硬化性成分に上記フラックス付きはんだ粒子を分散させる方法としては、以下の方法が挙げられる。上記熱硬化性成分中に上記フラックス付きはんだ粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。上記フラックス付きはんだ粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記熱硬化性成分中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。上記熱硬化性成分を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記フラックス付きはんだ粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法。
【0151】
電極上にはんだ粒子をより一層効率的に配置する観点からは、上記導電ペーストを得る工程において、フラックスをさらに混合することが好ましい。すなわち、導電ペーストを得る工程において、上記熱硬化性成分と、上記フラックス付きはんだ粒子と、上記フラックスとを混合することが好ましい。上記熱硬化性成分と上記フラックス付きはんだ粒子と混合される上記フラックスは、上記フラックス付きはんだ粒子に含まれるフラックスとは別に混合されるフラックスである。上記フラックスは、上述したフラックスYであることが好ましい。上記熱硬化性成分と上記フラックス付きはんだ粒子と上記フラックスとの混合順序は特に限定されない。上記フラックスは、上記熱硬化性成分と、上記フラックス付きはんだ粒子とを混合する際に混合して用いられてもよく、上記熱硬化性成分と、上記フラックス付きはんだ粒子とを混合して得られた混合物に混合して用いられてもよい。上記フラックス付きはんだ粒子は、上記熱硬化性成分(及び必要に応じて上記フラックス)と混合される前に、作製されることが好ましい。
【0152】
(接続構造体)
本発明に係る接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備える。本発明に係る接続構造体では、上記接続部の材料が、上述した導電ペーストである。本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている。
【0153】
電極間でのはんだ部の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。電極の表面上のはんだ濡れ面積(電極の露出した面積100%中のはんだが接している面積)は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であり、好ましくは100%以下である。
【0154】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電ペーストを配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱する方法等が挙げられる。上記加熱の温度は、好ましくは230℃以上、より好ましくは250℃以上であり、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。上記加熱の温度が、上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性及び絶縁信頼性をより一層高めることができる。上記加熱時には、加圧を行ってもよく、加圧を行わなくてもよい。
【0155】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0156】
図1は、本発明の一実施形態に係る導電ペーストを用いて得られる接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0157】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材3と、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とを接続している接続部4とを備える。接続部4は、上述した導電ペーストにより形成されている。本実施形態では、上記導電ペーストは、熱硬化性成分と、フラックス付きはんだ粒子とを含む。上記フラックス付きはんだ粒子は、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスとを備える。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含む。
【0158】
接続部4は、複数のはんだ粒子(フラックス付きはんだ粒子)が集まり互いに接合したはんだ部4Aと、熱硬化性化合物が熱硬化された硬化物部4Bとを有する。
【0159】
第1の接続対象部材2は表面(上面)に、複数の第1の電極2aを有する。第2の接続対象部材3は表面(下面)に、複数の第2の電極3aを有する。第1の電極2aと第2の電極3aとが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。従って、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材3とが、はんだ部4Aにより電気的に接続されている。なお、接続部4において、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)には、はんだ粒子は存在しない。はんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)には、はんだ部4Aと離れたはんだ粒子は存在しない。なお、少量であれば、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に集まったはんだ部4Aとは異なる領域(硬化物部4B部分)に、はんだ粒子が存在していてもよい。
【0160】
図1に示すように、接続構造体1では、第1の電極2aと第2の電極3aとの間に、複数のはんだ粒子(フラックス付きはんだ粒子)が集まり、複数のはんだ粒子が溶融した後、はんだ粒子の溶融物が電極の表面を濡れ拡がった後に固化して、はんだ部4Aが形成されている。このため、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。すなわち、はんだ粒子を用いることにより、外表面がニッケル、金又は銅等の金属である導電性粒子を用いた場合と比較して、はんだ部4Aと第1の電極2a、並びにはんだ部4Aと第2の電極3aとの接触面積が大きくなる。このことによっても、接続構造体1における導通信頼性及び接続信頼性が高くなる。なお、上記フラックスは、一般に、加熱により次第に失活する。
【0161】
接続構造体1では、第1の電極2aと接続部4と第2の電極3aとの積層方向に第1の電極2aと第2の電極3aとの対向し合う部分をみたときに、第1の電極2aと第2の電極3aとの対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、接続部4中のはんだ部4Aが配置されていることが好ましい。接続部4中のはんだ部4Aが、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0162】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の60%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の70%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の80%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の90%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが最も好ましい。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0163】
上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の60%以上が配置されていることが好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の70%以上が配置されていることがより好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の90%以上が配置されていることがさらに好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の95%以上が配置されていることが特に好ましい。上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向と直交する方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分に、上記接続部中のはんだ部の99%以上が配置されていることが最も好ましい。上記接続部中のはんだ部が、上記の好ましい態様を満足することで、導通信頼性をより一層高めることができる。
【0164】
上記第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。上記第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、半導体パッケージ、LEDチップ、LEDパッケージ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びに樹脂フィルム、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル、リジッドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板等の電子部品等が挙げられる。上記第1,第2の接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
【0165】
上記第1の接続対象部材及び上記第2の接続対象部材の内の少なくとも一方が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。上記第2の接続対象部材が、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板であることが好ましい。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル及びリジッドフレキシブル基板は、柔軟性が高く、比較的軽量であるという性質を有する。このような接続対象部材の接続に導電フィルムを用いた場合には、はんだ粒子が電極上に集まりにくい傾向がある。これに対して、導電ペーストを用いることで、樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いたとしても、はんだ粒子を電極上に効率的に集めることで、電極間の導通信頼性を十分に高めることができる。樹脂フィルム、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブル又はリジッドフレキシブル基板を用いる場合に、半導体チップ等の他の接続対象部材を用いた場合と比べて、加圧を行わないことによる電極間の導通信頼性の向上効果がより一層効果的に得られる。
【0166】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極、銀電極、SUS電極、及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、錫電極、銀電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極は銅電極、又は銀電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0167】
本発明に係る接続構造体では、上記第1の電極及び上記第2の電極は、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されていることが好ましい。上記第1の電極及び上記第2の電極が、エリアアレイ又はペリフェラルにて配置されている場合において、本発明の効果がより一層効果的に発揮される。上記エリアアレイとは、接続対象部材の電極が配置されている面にて、格子状に電極が配置されている構造のことである。上記ペリフェラルとは、接続対象部材の外周部に電極が配置されている構造のことである。電極が櫛型に並んでいる構造の場合は、櫛に垂直な方向に沿ってはんだ粒子が凝集すればよいのに対して、上記エリアアレイ又はペリフェラル構造では電極が配置されている面において、全面にて均一にはんだ粒子が凝集する必要がある。そのため、従来の方法では、はんだ量が不均一になりやすいのに対して、本発明の方法では、全面にて均一にはんだ粒子を凝集させることができる。
【0168】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0169】
熱硬化性成分(熱硬化性化合物):
フェノールノボラック型エポキシ化合物(DOW社製「DEN431」)
ビスフェノールF型エポキシ化合物(DOW社製「DER354」)
【0170】
フラックス付きはんだ粒子:
フラックス付きはんだ粒子1(以下の合成例1に従って作製)
フラックス付きはんだ粒子2(以下の合成例2に従って作製)
フラックス付きはんだ粒子3(以下の合成例3に従って作製)
【0171】
(合成例1)
SnAgCuはんだ粒子(三井金属社製「Sn96.5Ag3.0Cu0.5 ST-3」、平均粒子径:3.0μm、融点:220℃、比重:7.4)と、フラックス(昭和化学工業社製「アジピン酸ベンジルアミン塩」、25℃で固体、平均粒子径:10μm、融点:180℃)とを用意した。アジピン酸ベンジルアミン塩を溶解させた溶液にSnAgCuはんだ粒子を浸漬させることで、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスXとを備えるフラックス付きはんだ粒子1を得た。フラックス付きはんだ粒子1における比(フラックスXの平均粒子径/はんだ粒子の平均粒子径)は、3.3であった。
【0172】
(合成例2)
SnBiはんだ粒子(三井金属社製「Sn42Bi58 ST-3」、平均粒子径:3.0μm、融点:138℃、比重:8.6)と、フラックス(昭和化学工業社製「アジピン酸ベンジルアミン塩」、25℃で固体、平均粒子径:10μm、融点:180℃)とを用意した。アジピン酸ベンジルアミン塩を溶解させた溶液にSnBiはんだ粒子を浸漬させることで、はんだ粒子と、上記はんだ粒子に担持されたフラックスXとを備えるフラックス付きはんだ粒子2を得た。フラックス付きはんだ粒子2における比(フラックスXの平均粒子径/はんだ粒子の平均粒子径)は、3.3であった。
【0173】
(合成例3)
SnAgCuはんだ粒子(三井金属社製「Sn96.5Ag3.0Cu0.5 ST-3」、平均粒子径:3.0μm、融点:220℃、比重:7.4)と、フラックス(Wako社製「グルタル酸」、25℃で固体、平均粒子径:10μm、融点:98℃)とを用意した。グルタル酸を溶解させた溶液にSnAgCuはんだ粒子を浸漬させることで、はんだ粒子と、はんだ粒子に担持されたフラックスXとを備えるフラックス付きはんだ粒子3を得た。フラックス付きはんだ粒子3における比(フラックスXの平均粒子径/はんだ粒子の平均粒子径)は、3.3であった。
【0174】
はんだ粒子:
はんだ粒子1(SnAgCuはんだ粒子、(三井金属社製「Sn96.5Ag3.0Cu0.5 ST-3」、平均粒子径:3.0μm、融点:220℃、比重:7.4)
はんだ粒子2(SnAgCuはんだ粒子、三井金属社製「Sn96.5Ag3.0Cu0.5 DS10」、平均粒子径:10.0μm、融点:220℃、比重:7.4)
【0175】
フラックス(はんだ粒子に担持されていないフラックス):
アジピン酸ベンジルアミン塩(昭和化学工業社製「アジピン酸ベンジルアミン塩」、25℃で固体、平均粒子径:10μm、融点:180℃)
オレイン酸(富士フイルム和光純薬社製「オレイン酸」、25℃で液体、沸点:223℃)
【0176】
他の成分:
グリセロール(ナカライテスク社製「グリセロール」、25℃で液体、水酸基の数:3、沸点:290℃)
N-オレオイルサルコシン(TCI社製「N-オレオイルサルコシン」、25℃で液体、水酸基の数:1、沸点:197℃)
三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体(TCI社製「三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体」、25℃固体、25℃及び50%RHで吸湿性を有する、融点:85℃)
【0177】
(重量増加率の測定)
TCI社製「三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体」について、25℃及び50%RHで24時間放置したときに、放置後の三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体の重量の、放置前の三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体の重量に対する重量増加率を、上述した方法で測定した。三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体の重量増加率は、1.0重量%~2.0重量%であった。
【0178】
(実施例1~8及び比較例1~4)
(1)導電ペースト(異方性導電ペースト)の作製
下記の表1~3に示す成分を下記の表1~3に示す配合量で配合して、導電ペースト(異方性導電ペースト)を得た。
【0179】
(2)接続構造体の作製
第1の接続対象部材として、L/S=50μm/50μmの銅電極(電極長さ:3mm、電極厚み:12μm)を表面に有するガラスエポキシ基板(材質:FR-4、厚み:0.6mm)を用意した。
【0180】
第2の接続対象部材として、L/S=50μm/50μmの銅電極(電極長さ:3mm、電極厚み:12μm)を表面に有するフレキシブルプリント基板(材質:ポリイミド、厚み:0.1mm)を用意した。
【0181】
上記ガラスエポキシ基板の上面に、作製直後の導電ペースト(異方性導電ペースト)を厚み100μmとなるように塗工し、導電ペースト(異方性導電ペースト)層を形成した。次に、導電ペースト(異方性導電ペースト)層の上面にフレキシブルプリント基板を電極同士が対向するように積層した。導電ペースト(異方性導電ペースト)層には、上記フレキシブルプリント基板の重量が加わる。その状態から、導電ペースト(異方性導電ペースト)層の温度が、昇温開始から10秒後にはんだ粒子の融点となるように加熱した。さらに、昇温開始から15秒後に、導電ペースト(異方性導電ペースト)層の温度が250℃となるように加熱し、導電ペースト(異方性導電ペースト)層を硬化させ、接続構造体を得た。加熱時には、加圧を行わなかった。
【0182】
(評価)
(1)保存安定性
作製直後の上記導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度(η25)と、作製直後の上記導電ペーストを25℃及び50%RHの条件で24時間保管した後の導電ペーストの25℃及び5rpmでの粘度(ηA)とを、上述した方法で測定し、比(ηA/η25)を計算した。保存安定性を、以下の基準で判定した。
【0183】
[保存安定性の判定基準]
○○:比(ηA/η25)が、1.2以下
○:比(ηA/η25)が、1.2を超え1.5以下
×:比(ηA/η25)が、1.5を超える
【0184】
(2)スクリーン印刷性
得られた導電ペースト(異方性導電ペースト)について、開口部1箇所当たりの寸法が20μm×50μm、厚みが20μmのメタルマスクを用いて、スライドガラス上にスクリーン印刷を行った。印刷されたパターン50箇所について、印刷直後の印刷面をレーザー顕微鏡で観察し、スライドガラスに塗布された導電ペーストの体積を計算し、スライドガラスに塗布された導電ペーストの体積の、メタルマスクの開口部1箇所当たりの容積に対する割合X(%)を計算した。スクリーン印刷性を、以下の基準で判定した。
【0185】
[スクリーン印刷性の判定基準]
○○:割合Xが、50%以上
○:割合Xが、30%以上50%未満
×:割合Xが、30%未満
【0186】
(3)はんだ粒子の配置精度
得られた接続構造体において、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に第1の電極と第2の電極との対向し合う部分をみたときに、第1の電極と第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の、接続部中のはんだ部が配置されている面積の割合Yを評価した。はんだ粒子の配置精度を以下の基準で判定した。
【0187】
[はんだ粒子の配置精度の判定基準]
○○:割合Yが70%以上
○:割合Yが50%以上70%未満
×:割合Yが50%未満
【0188】
結果を下記の表1~3に示す。
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【符号の説明】
【0192】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…第1の電極
3…第2の接続対象部材
3a…第2の電極
4…接続部
4A…はんだ部
4B…硬化物部
図1