(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022794
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ねじ、電子機器、および螺入用工具
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20240214BHJP
B25B 15/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F16B35/00 S
F16B35/00 J
B25B15/00 610A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126143
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】土井 良文
(57)【要約】
【課題】2以上の部材を柔軟に締結可能なねじ、ならびに、当該ねじを用いた電子機器および当該ねじをねじ孔に螺入するための螺入用工具を提供する。
【解決手段】ねじは、略円柱状の形状を有し、外周面にねじ溝が形成されたねじ部と、前記ねじ部の外径よりも大きい外径を有する頭部と、前記ねじ部よりも可撓性を有し、前記ねじ部の中心軸線に沿う軸方向において前記ねじ部と前記頭部との間に位置する可撓部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の形状を有し、外周面にねじ溝が形成されたねじ部と、
前記ねじ部の外径よりも大きい外径を有する頭部と、
前記ねじ部よりも可撓性を有し、前記ねじ部の中心軸線に沿う軸方向において前記ねじ部と前記頭部との間に位置する可撓部と、を備える、ねじ。
【請求項2】
前記可撓部は、前記軸方向において螺旋状に延びる少なくとも一つの柱状部を有する、請求項1に記載のねじ。
【請求項3】
前記可撓部は、複数の前記柱状部を有する、請求項2に記載のねじ。
【請求項4】
前記ねじ部は、螺入用工具が備える第1係合部と係合して前記中心軸線まわりに回転する第1被係合部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項5】
前記頭部は、前記螺入用工具が備える第2係合部と係合して前記中心軸線まわりに回転する第2被係合部を有する、請求項4に記載のねじ。
【請求項6】
前記頭部に開口して前記可撓部を前記軸方向に貫通し、前記第1被係合部まで延びる挿通孔が形成されている、請求項4に記載のねじ。
【請求項7】
導電性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項8】
ねじ受け部を有する筐体と、
前記筐体に収容される基板と、
前記基板に実装される電子モジュールと、を備え、
前記電子モジュールは、請求項1から3のいずれか一項に記載のねじによって前記ねじ受け部に固定されている、電子機器。
【請求項9】
ねじをねじ孔に螺入するための螺入用工具であって、
把手と、
前記ねじに係合して前記ねじを前記ねじおよび前記螺入用工具の中心軸線まわりに回転させる第1係合部と、
前記ねじに係合して前記ねじを前記中心軸線まわりに回転させる第2係合部と、を備え、
前記中心軸線に沿う軸方向において、前記把手、前記第2係合部、および前記第1係合部はこの順に並んでおり、
前記中心軸線に垂直な径方向において、前記第1係合部のうち前記径方向における外側に位置する端部と前記中心軸線との間の距離は、前記第2係合部のうち前記径方向における外側に位置する端部と前記中心軸線との間の距離よりも小さい、螺入用工具。
【請求項10】
小径部と、
前記軸方向において前記把手と前記小径部との間に位置し、前記小径部の外径よりも大きい外径を有する大径部と、をさらに備え、
前記第2係合部は、前記大径部に設けられ、
前記第1係合部は、前記小径部に設けられる、請求項9に記載の螺入用工具。
【請求項11】
前記第2係合部は、前記軸方向における前記大径部の端部から突出した突起であり、
前記第1係合部は、前記軸方向における前記小径部の端部から突出した突起である、請求項10に記載の螺入用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ、電子機器、および螺入用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2以上の部材を締結する方法として、ねじ止めが一般的に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、SSD等の電子モジュールを収容した筐体を備える電子機器が開示されている。SSDは、筐体に収容された基板に実装されるとともに、筐体に対してねじ止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2以上の部材をねじ止めした際に、不具合が生ずることがある。例えば特許文献1に記載の電子機器においては、筐体とSSDとがねじによって強固に締結されているため、外力等に起因して筐体に歪みが生じた場合、当該歪みがねじを通じてSSDに伝わる。これにより、SSDが変形し、SSDが破損したり、SSDと基板との電気的接続が不安定になったりする可能性があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、2以上の部材を柔軟に締結可能なねじ、ならびに、当該ねじを用いた電子機器および当該ねじをねじ孔に螺入するための螺入用工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の態様1は、略円柱状の形状を有し、外周面にねじ溝が形成されたねじ部と、前記ねじ部の外径よりも大きい外径を有する頭部と、前記ねじ部よりも可撓性を有し、前記ねじ部の中心軸線に沿う軸方向において前記ねじ部と前記頭部との間に位置する可撓部と、を備える、ねじである。
【0008】
本発明の態様1によれば、ねじを用いて2つの部材を柔軟に締結することができる。
【0009】
また、本発明の態様2は、態様1のねじにおいて、前記可撓部は、前記軸方向において螺旋状に延びる少なくとも一つの柱状部を有する、ねじである。
【0010】
本発明の態様2によれば、可撓性を有する可撓部を容易に実現することができる。
【0011】
また、本発明の態様3は、態様2のねじにおいて、前記可撓部は、複数の前記柱状部を有する、ねじである。
【0012】
本発明の態様3によれば、可撓部の強度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つのねじにおいて、前記ねじ部は、螺入用工具が備える第1係合部と係合して前記中心軸線まわりに回転する第1被係合部を有する、ねじである。
【0014】
本発明の態様4によれば、ユーザは、螺入用工具の第1係合部を用いてねじ部を直接ねじることができる。これにより、ねじを確実に螺入することができる。
【0015】
また、本発明の態様5は、態様4のねじにおいて、前記頭部は、前記螺入用工具が備える第2係合部と係合して前記中心軸線まわりに回転する第2被係合部を有する、ねじである。
【0016】
本発明の態様5によれば、螺入用工具を用いてねじを螺入する際にねじ部と頭部とを同時にねじることができ、ねじをより確実に螺入することができる。
【0017】
また、本発明の態様6は、態様4または態様5のねじにおいて、前記頭部に開口して前記可撓部を前記軸方向に貫通し、前記第1被係合部まで延びる挿通孔が形成されている、ねじである。
【0018】
本発明の態様6によれば、ねじの第1被係合部および第2被係合部と螺入用工具の第1係合部および第2係合部とが各々同時に係合する構成を容易に実現することができる。
【0019】
また、本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つのねじにおいて、導電性を有する、ねじである。
【0020】
本発明の態様7によれば、ねじが締結する2つの部材を電気的に接続することができる。
【0021】
また、本発明の態様8は、ねじ受け部を有する筐体と、前記筐体に収容される基板と、前記基板に実装される電子モジュールと、を備え、前記電子モジュールは、態様1から態様7のいずれか一つのねじによって前記ねじ受け部に固定されている、電子機器である。
【0022】
本発明の態様8によれば、外力等に起因する筐体の歪みを可撓部によって吸収することができる。これにより、筐体の歪みに起因する電子モジュールの破損や、電子モジュールと基板との電気的接続の不安定化を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の態様9は、ねじをねじ孔に螺入するための螺入用工具であって、把手と、前記ねじに係合して前記ねじを前記ねじおよび前記螺入用工具の中心軸線まわりに回転させる第1係合部と、前記ねじに係合して前記ねじを前記中心軸線まわりに回転させる第2係合部と、を備え、前記中心軸線に沿う軸方向において、前記把手、前記第2係合部、および前記第1係合部はこの順に並んでおり、前記中心軸線に垂直な径方向において、前記第1係合部のうち前記径方向における外側に位置する端部と前記中心軸線との間の距離は、前記第2係合部のうち前記径方向における外側に位置する端部と前記中心軸線との間の距離よりも小さい、螺入用工具である。
【0024】
本発明の態様9によれば、ユーザは、螺入用工具を用いてねじ部と頭部とを同時にねじることができる。したがって、螺入作業の作業性を高めることができる。
【0025】
また、本発明の態様10は、態様9の螺入用工具において、小径部と、前記軸方向において前記把手と前記小径部との間に位置し、前記小径部の外径よりも大きい外径を有する大径部と、をさらに備え、前記第2係合部は、前記大径部に設けられ、前記第1係合部は、前記小径部に設けられる、螺入用工具である。
【0026】
本発明の態様10によれば、ねじ部と頭部とを同時にねじることが可能な螺入用工具を容易に実現できる。
【0027】
また、本発明の態様11は、態様10の螺入用工具において、前記第2係合部は、前記軸方向における前記大径部の端部から突出した突起であり、前記第1係合部は、前記軸方向における前記小径部の端部から突出した突起である、螺入用工具である。
【0028】
本発明の態様11によれば、ねじ部と頭部とを同時にねじることが可能な螺入用工具をより容易に実現できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の上記態様によれば、2つの部材を柔軟に締結可能なねじ、ならびに、当該ねじを用いた電子機器および当該ねじをねじ孔に螺入するための螺入用工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係るねじを示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るねじを示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すIII-III線に沿う断面を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るねじの一部を透過して示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るねじを示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る螺入用工具およびねじを示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る螺入用工具の一部を拡大して示す図である。
【
図8A】本発明の実施形態に係るねじの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(ねじ)
以下、本発明の実施形態に係るねじについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るねじ10は、ねじ部11と、頭部12と、可撓部13と、を備える。
【0032】
ねじ部11は、略円柱状の形状を有する(
図4も参照)。なお、本明細書において文言「略円柱状」には、製造誤差を取り除けば円柱状とみなせる場合も含まれる。ねじ部11はねじ孔に螺入される部分であり、ねじ部11の外周面には螺旋状のねじ溝11bが形成されている。
図1に示すように、頭部12、可撓部13、およびねじ部11は、ねじ部11の中心軸線Oに沿う方向(螺入方向)においてこの順に並んでいる。
【0033】
ここで、本実施形態では、ねじ部11の中心軸線Oと平行な方向をZ方向または軸方向Zと称する。軸方向Zに沿って、ねじ部11から頭部12に向かう向きを、+Zの向きまたは上方と称する。+Zの向きとは反対の向きを、-Zの向きまたは下方と称する。軸方向Zから見ることを、平面視という。軸方向Zに垂直な断面を、横断面と称する。軸方向Zから見て、ねじ部11の中心軸線Oに直交する方向を、径方向と称する。径方向に沿って、中心軸線Oに接近する向きを、径方向内側と称し、中心軸線Oから離反する向きを、径方向外側と称する。軸方向Zから見て、中心軸線Oまわりに周回する方向を、周方向と称する。
【0034】
頭部12は、ねじ部11の外径よりも大きい外径を有する。
図2に示すように、本実施形態に係る頭部12は、平面視において、六角形状の外形を有する。ただし、頭部12の形状は適宜変更可能である。例えば、頭部12は、平面視において円状の外形を有していてもよい。
【0035】
図1に示すように、可撓部13は、軸方向Zにおいてねじ部11と頭部12との間に位置する。言い換えれば、可撓部13は、ねじ部11と頭部12とを接続している。可撓部13は、ねじ部11よりも可撓性を有する。より具体的に、可撓部13は、軸方向Zにおいて弾性的に伸縮可能であり、かつ、径方向において弾性的に屈曲可能である。
【0036】
図1および
図3に示すように、本実施形態に係る可撓部13は、複数の柱状部13aを有する。複数の柱状部13aは、軸方向Zにおいて螺旋状に延びている。
図3に示すように、横断面視において、複数の柱状部13aは、周方向に間隔を空けて配されている。本実施形態に係る可撓部13は、螺旋状の複数の柱状部13aを有することにより、上述した可撓性を発揮している。このような複数の柱状部13aを有するねじ10は、例えば3Dプリンターや切削加工によって製造することができる。
【0037】
なお、可撓部13が有する柱状部13aの数は1以上であれば適宜変更可能である。ただし、可撓部13が複数の柱状部13aを有する構成は、可撓部13の強度を確保しやすいという点で好適である。
【0038】
図2に示すように、本実施形態に係る頭部12は、第2被係合部12aを有する。第2被係合部12aは、後述する螺入用工具20が備える第2係合部22aと係合する。本実施形態においてより具体的に、第2被係合部12aは、頭部12の上面に開口した溝である。以下、第2被係合部12aを「第2係合溝12a」と称する場合がある。本実施形態に係る第2係合溝12aは、径方向において頭部12を貫通する直線状の形状を有する。
【0039】
図4に示すように、本実施形態に係るねじ部11は、第1被係合部11aを有する。第1被係合部11aは、後述する螺入用工具20が備える第1係合部23aと係合する。本実施形態においてより具体的に、第1被係合部11aは、ねじ部11の上面に開口した溝である。以下、第1被係合部11aを「第1係合溝11a」と称する場合がある。本実施形態に係る第1係合溝11aは、径方向に延びる直線状の形状を有する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態に係るねじ10には、頭部12の上面に開口する挿通孔Hが形成されている。
図5に示すように、挿通孔Hは、可撓部13を軸方向Zに貫通し、第1係合溝11aまで延びている。これにより、第1係合溝11aは、挿通孔Hを通じて頭部12の上面からアクセス可能となっている。
【0041】
(螺入用工具)
次に、本実施形態に係る螺入用工具20について説明する。
螺入用工具20は、上述したねじ10をねじ孔に螺入するための工具である。
図6に示すように、本実施形態に係る螺入用工具20は、把手21と、大径部22と、小径部23と、を備える。把手21、大径部22、および小径部23は、共通の中心軸線O´を有する。
【0042】
ここで、本実施形態では、螺入用工具20の中心軸線O´と平行な方向をZ´方向と称する。螺入用工具20を用いてねじ10を螺入する際、ねじ10の中心軸線Oと螺入用工具20の中心軸線O´とは略一致する。すなわち、Z方向とZ´方向とは略一致する。このため、Z´方向についてもZ方向と同様に「軸方向Z」と称する。
【0043】
図6に示すように、本実施形態に係る把手21は、基部21aおよびテーパ部21bを有する。把手21は、螺入用工具20を用いてねじ10を螺入する際に、ユーザが把持する部分である。テーパ部21bは、基部21aの下端に位置する。テーパ部21bの外径は、下方に向かうにしたがって漸次小さくなっている。
【0044】
大径部22は、軸方向Zにおいて、把手21と小径部23との間に位置している。言い換えれば、把手21、大径部22、および小径部23は、軸方向Zにおいてこの順に並んでいる。本実施形態に係る大径部22は、把手21(テーパ部21b)の下端から下方に向けて延びている。具体的に、大径部22は、軸方向Zに延びており、把手21の下端に接続される第1端E1と、第1端E1とは反対側に位置する第2端E2と、を有する。第1端E1および第2端E2の各々は、大径部22の軸方向Zにおける端部である。つまり、第1端E1は大径部22の上端であり、第2端E2は大径部22の下端である。小径部23は、大径部22の下端から下方に向けて延びている。具体的に、小径部23は、軸方向Zに延びており、大径部22の下端に接続される第3端E3と、第3端E3とは反対側に位置する第4端E4と、を有する。第3端E3および第4端E4の各々は、小径部23の軸方向Zにおける端部である。つまり、第3端E3は小径部23の上端であり、第4端E4は小径部23の下端である。
図7に示すように、大径部22および小径部23は、各々略円柱状の形状を有する。
図6に示すように、大径部22の外径R2は、小径部23の外径R1よりも大きい。小径部23は、大径部22(第2端E2)の平面視における中央部から下方に向けて延びている。
【0045】
図7に示すように、小径部23には、第1係合部23aが設けられている。第1係合部23aは、ねじ10の第1係合溝11aと係合する。本実施形態において、第1係合部23aは、小径部23の第4端E4に設けられる。より具体的に、本実施形態に係る第1係合部23aは、小径部23の第4端E4(下面)から下方に向けて突出した突起であり、第1係合溝11aに挿入される(詳細は後述)。以下、第1係合部23aを「第1係合突起23a」と称する場合がある。本実施形態に係る第1係合突起23aは、径方向に延びる直線状の形状を有する。第1係合突起23aの形状は、第1係合溝11aの形状と対応している。
【0046】
図7に示すように、大径部22には、第2係合部22aが設けられている。第2係合部22aは、ねじ10の第2係合溝12aと係合する。本実施形態において、第2係合部22aは、大径部22の第2端E2に設けられる。より具体的に、本実施形態に係る第2係合部22aは、大径部22の第2端E2(下面)から下方に向けて突出した突起であり、第2係合溝12aに挿入される(詳細は後述)。以下、第2係合部22aを「第2係合突起22a」と称する場合がある。本実施形態に係る第2係合突起22aは、一対の突起22aA、22aBを含んでいる。各突起22aA、22aBは、径方向に延びる直線状の形状を有する。また、一対の突起22aA、22aBは、小径部23を径方向において挟んでいる。第2係合突起22a(突起22aA、22aB)の形状は、第2係合溝12aの形状と対応している。また、把手21、第2係合突起22a、および第1係合突起23aは、軸方向Zにおいてこの順に並んでいる。また、径方向において、第1係合突起23aのうち径方向外側に位置する端部と中心軸線Oとの間の距離L1は、第2係合突起22aのうち径方向外側に位置する端部と中心軸線Oとの間の距離L2よりも、小さい。
【0047】
螺入用工具20を用いてねじ10をねじ孔に螺入する際、ユーザは、まず、
図6に示すように、螺入用工具20の中心軸線O´とねじ10の中心軸線Oとを合わせた状態で、螺入用工具20の小径部23をねじ10のねじ部11に近づける。次に、小径部23(第1係合突起23a)を挿通孔Hに挿通させることで、第1係合突起23aを第1係合溝11aに挿入しつつ、第2係合突起22aを第2係合溝12aに挿入する(
図5および
図7も参照)。最後に、ユーザは、例えば把手21を把持して螺入用工具20を中心軸線Oまわりに回転させる。これにより、第1係合突起23aが第1係合溝11aを中心軸線Oまわりに回転させ、同時に、第2係合突起22aが第2係合溝12aを中心軸線Oまわりに回転させる。つまり、第1係合突起23aは第1係合溝11aに対してマイナスドライバーとして作用し、第2係合突起22aは第2係合溝12aに対してマイナスドライバーとして作用する。これにより、ねじ部11および頭部12が回転し、ねじ10全体がねじ孔に螺入される。
【0048】
なお、上記のように係合溝11a、12aと係合突起23a、22aとが各々同時に係合するよう、小径部23の長さ(軸方向Zにおける寸法)と挿通孔Hの長さ(軸方向Zにおける寸法)とが調整されてもよい。具体的には、小径部23の長さと挿通孔Hの長さとが略等しくてもよい。ただし、文言「略等しい」には、係合溝11a、12aと係合突起23a、22aとが各々係合可能な程度に小径部23の長さと挿通孔Hの長さとが異なっている場合も含まれる。
【0049】
また、第1係合突起23aを第1係合溝11aに挿入可能であれば第1係合突起23aの形状および第1係合溝11aの形状は適宜変更可能である。例えば、第1係合突起23aおよび第1係合溝11aは平面視においてX字状に延びていてもよい。この場合、第1係合突起23aは第1係合溝11aに対してプラスドライバーとして作用する。同様に、第2係合突起22aを第2係合溝12aに挿入可能であれば第2係合突起22aの形状および第2係合溝12aの形状は適宜変更可能である。例えば、第2係合突起22aおよび第2係合溝12aは平面視においてX字状に延びていてもよい。この場合、第2係合突起22aは第2係合溝12aに対してプラスドライバーとして作用する。
【0050】
(使用例)
次に、上述したねじ10の使用例について説明する。
【0051】
図8Aに示すように、電子機器30は、基板31と、電子モジュール32と、筐体34と、を備える。筐体34は、基板31および電子モジュール32を収容している。電子モジュール32は、端子33を介して基板31に実装されている。筐体34は、筐体34の内周面から突出し、ねじ孔35aが形成されたねじ受け部35を有する。電子モジュール32は、ねじ受け部35にねじ10によってねじ止めされている。より具体的に、電子モジュール32が有する貫通孔32aに可撓部13が挿通された状態で、ねじ部11のねじ溝11bとねじ孔35aとが螺合している。これにより、電子モジュール32が、ねじ受け部35と頭部12との間に挟み込まれ、固定されている。
【0052】
電子機器30は、例えば、いわゆるクラムシェル型のノートパソコンであってもよい。ただし、電子機器30の種類はこれに限られない。例えば、電子機器30は、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機等であってもよい。電子モジュール32は、例えば、SSD(Solid State Drive)やWLAN(Wireless Local Area Network)モジュールであってもよい。ただし、基板31に実装する電子モジュールであれば電子モジュール32の種類はこれらに限られず、適宜変更可能である。
【0053】
可撓部13を有するねじ10を用いて電子モジュール32をねじ受け部35に対して柔軟に締結することにより、次の効果が得られる。すなわち、外力等に起因して筐体34に歪みが生じても、
図8Bに示すように可撓部13が伸縮したり屈曲したりすることで、当該歪みが電子モジュール32に伝達しにくくなる。言い換えれば、筐体34の歪みを可撓部13によって吸収することができる。これにより、筐体34の歪みに起因する電子モジュール32の破損や、端子33における電気的接続の不安定化を抑制することができる。
【0054】
なお、可撓部13を有さない従来のねじにおいても、電子モジュール32を筐体34ではなく基板31に対してねじ止めすることにより、筐体34の歪みを電子モジュール32に伝達しにくくすることは可能である。しかしながら、この場合においては基板31上にねじ受け部を設ける必要があり、筐体34の厚みが増大しやすい。これに対し、本実施形態に係るねじ10によれば、基板31上にねじ受け部を設けなくてもよいため、筐体34の薄型化を実現しやすくなる。
【0055】
また、ねじ10が導電性を有する場合、筐体34を電子モジュール32のフレームGNDとして用いることができる。ここで、ねじ10が可撓部13を有していることにより、筐体34に歪みが生じてもねじ10(ねじ部11)と電子モジュール32との接触を確保することができる。これにより、電子モジュール32のGNDを安定させることができる。なお、導電性を有するねじ10は、例えば金属材料を切削加工することによって製造することができる。あるいは、3Dプリンター等によって製造した樹脂製のねじ10を金属等の導電性材料でコーティングしてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るねじ10は、略円柱状の形状を有し、外周面にねじ溝11bが形成されたねじ部11と、ねじ部11の外径よりも大きい外径を有する頭部12と、ねじ部11よりも可撓性を有し、軸方向Zにおいてねじ部11と頭部12との間に位置する可撓部13と、を備える。
【0057】
この構成により、ねじ10を用いて2つの部材を柔軟に締結することができる。
【0058】
また、可撓部13は、軸方向Zにおいて螺旋状に延びる少なくとも一つの柱状部13aを有する。この構成により、可撓性を有する可撓部13を容易に実現することができる。
【0059】
また、可撓部13は、複数の柱状部13aを有する。この構成により、可撓部13の強度を向上させることができる。
【0060】
また、ねじ部11は、螺入用工具20が備える第1係合突起23a(第1係合部)と係合して中心軸線Oまわりに回転する第1係合溝11a(第1被係合部)を有する。ねじ10を螺入する際に螺入用工具20が頭部12のみと係合する場合、ユーザが螺入用工具20をねじる力の全部または一部が可撓部13に吸収され、当該ねじる力がねじ部11に十分伝達されない可能性がある。ねじ部11に第1係合溝11aが設けられていることにより、ユーザは、螺入用工具20の第1係合突起23aを用いてねじ部11を直接ねじることができる。これにより、ねじ10を確実に螺入することができる。
【0061】
また、頭部12は、螺入用工具20が備える第2係合突起22a(第2係合部)と係合して中心軸線Oまわりに回転する第2係合溝12a(第2被係合部)を有する。この構成により、螺入用工具20を用いてねじ10を螺入する際にねじ部11と頭部12とを同時にねじることができ、ねじ10をより確実に螺入することができる。
【0062】
また、ねじ10には、頭部12に開口して可撓部13を軸方向Zに貫通し、第1係合溝11aまで延びる挿通孔Hが形成されている。この構成により、ねじ10の係合溝11a、12aと螺入用工具20の係合突起23a、22aとが各々同時に係合する構成を容易に実現することができる。
【0063】
また、ねじ10は導電性を有していてもよい。この場合、ねじ10が締結する2つの部材(例えば、筐体34と電子モジュール32)を電気的に接続することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る電子機器30は、ねじ受け部35を有する筐体34と、筐体34に収容される基板31と、基板31に実装される電子モジュール32と、を備え、電子モジュール32は、ねじ10によってねじ受け部35に固定されている。この構成により、筐体34の歪みに起因する電子モジュール32の破損や、電子モジュール32と基板31との電気的接続の不安定化を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る螺入用工具20は、ねじ10をねじ孔に螺入するための螺入用工具であって、把手21と、ねじ10に係合してねじ10を中心軸線Oまわりに回転させる第1係合部23aと、ねじ10に係合してねじ10を中心軸線Oまわりに回転させる第2係合部22aと、を備え、把手21、第2係合部22a、および第1係合部23aは、軸方向Zにおいてこの順に並んでおり、径方向において、第1係合部23aのうち径方向外側に位置する端部と中心軸線Oとの間の距離L1は、第2係合部22aのうち径方向外側に位置する端部と中心軸線Oとの間の距離L2よりも、小さい。より具体的に、本実施形態に係る螺入用工具20は、略円柱状の形状を有し、第1被係合部11aが形成され、外周面にねじ溝11bが形成されたねじ部11と、ねじ部11の外径よりも大きい外径を有し、第2被係合部12aが形成された頭部12と、ねじ部11よりも可撓性を有し、軸方向Zにおいてねじ部11と頭部12との間に位置する可撓部13と、を備えるねじ10をねじ孔に螺入するための螺入用工具である。第2係合部22aは、第2被係合部12aに係合して第2被係合部12aを中心軸線Oまわりに回転させる。第1係合部23aは、第1被係合部11aに係合して第1被係合部11aを中心軸線Oまわりに回転させる。
【0066】
螺入用工具20がねじ部11をねじるための第1係合部23aを有さず、頭部12をねじるための第2係合部22aのみを有している場合、ユーザが螺入用工具20をねじる力の全部または一部が可撓部13に吸収され、当該ねじる力がねじ部11に十分伝達されない可能性がある。螺入用工具20が第1係合部23aと第2係合部22aとの双方を有していることにより、ユーザは、ねじ部11と頭部12とを同時にねじることができる。したがって、螺入作業の作業性をより高めることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る螺入用工具20は、小径部23と、軸方向Zにおいて把手21と小径部23との間に位置し、小径部23の外径R1よりも大きい外径R2を有する大径部22と、をさらに備え、第2係合部22aは、大径部22に設けられ、第1係合部23aは、小径部23に設けられる。この構成により、ねじ部11と頭部12とを同時にねじることが可能な螺入用工具20を容易に実現することができる。
【0068】
また、第2係合部22aは、軸方向Zにおける大径部22の端部(第2端E2)から突出した突起(第2係合突起22a)であり、第1係合部23aは、軸方向Zにおける小径部23の端部(第4端E4)から突出した突起(第1係合突起23a)である。この構成により、ねじ部11と頭部12とを同時にねじることが可能な螺入用工具20をより容易に実現することができる。
【0069】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0070】
例えば、前記実施形態において可撓部13は1つまたは複数の柱状部13aを有すると説明したが、可撓部13の構造はこれに限られず、可撓部13が可撓性を発揮できれば適宜変更可能である。例えば、可撓部13はばね状、パンタグラフ状、または蛇腹状等の構造を有していてもよい。
【0071】
また、前記実施形態において第2被係合部12aは溝(第2係合溝12a)であり、第2係合部22aは突起(第2係合突起22a)であると説明したが、第2被係合部12aおよび第2係合部22aの構成はこれに限られない。第2被係合部12aと第2係合部22aとが互いに係合し、ユーザが螺入用工具20をねじる力を第2係合部22aから第2被係合部12aに伝達可能であればこれらの構成は適宜変更可能である。例えば、第2係合部22aは、頭部12の外周面が嵌合される六角形状の凹部であってもよい。この場合、頭部12全体を第2被係合部12aとみなすことができる。同様に、第1被係合部11aと第1係合部23aとが互いに係合し、ユーザが螺入用工具20をねじる力を第1係合部23aから第1被係合部11aに伝達可能であればこれらの構成も適宜変更可能である。
【0072】
また、前記実施形態ではねじ10の製造方法として切削加工や3Dプリンターによる加工を例に挙げたが、これら以外の方法でねじ10を製造してもよい。例えば、ねじ10を鋳造によって製造してもよい。あるいは、ねじ部11、頭部12、可撓部13を別々に製造したあとでこれらを接合してもよい。
【0073】
また、ねじ10の用途は電子機器30における電子モジュール32の固定に限られない。例えば、ねじ10を家具等の固定に用いてもよい。この場合、ねじ10の大きさが適宜変更されてもよい。
【0074】
また、前記実施形態において大径部22は把手21に対して直接的に接続されていたが、大径部22と把手21との間に別の中間部材が設けられ、大径部22は把手21に対して当該中間部材を介して間接的に接続されていてもよい。
【0075】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…ねじ 11…ねじ部 11a…第1係合溝(第1被係合部) 11b…ねじ溝 12…頭部 12a…第2係合溝(第2被係合部) 13…可撓部 13a…柱状部 20…螺入用工具 21…把手 22a…第2係合突起(第2係合部) 23a…第1係合突起(第1係合部) 30…電子機器 31…基板 32…電子モジュール 34…筐体 35…ねじ受け部 Z…軸方向