(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022802
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/12 20060101AFI20240214BHJP
F04F 5/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F04D13/12 F
F04D13/12 E
F04F5/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126156
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 哲也
【テーマコード(参考)】
3H079
3H130
【Fターム(参考)】
3H079AA15
3H079BB08
3H079CC02
3H079CC12
3H079DD55
3H130AA03
3H130AB40
3H130AB46
3H130AC27
3H130BA14H
3H130BA72H
3H130BA77H
3H130DF03X
3H130DG09X
3H130EB01H
3H130EC07H
3H130ED04H
(57)【要約】
【課題】
水位に依存することなく、調整弁を常に最適な開度に自動で調整でき、使い勝手が向上するポンプ装置を提供すること
【解決手段】
本発明のポンプ装置は、上記課題を解決するために、ジェットポンプと組み合わせて揚水させるポンプ装置であって、前記ポンプ装置は、電動機で回転駆動される羽根車を備え、かつ、前記羽根車の外周を覆うように位置すると共にポンプ部を形成するケーシングを有し、前記ケーシングには、前記ポンプ部の内圧を検出するための圧力検出部と、前記ジェットポンプに循環させる水量を調整するための調整弁と、前記調整弁を可動するための駆動部と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットポンプと組み合わせて揚水させるポンプ装置であって、
前記ポンプ装置は、電動機で回転駆動される羽根車を備え、かつ、前記羽根車の外周を覆うように位置すると共にポンプ部を形成するケーシングを有し、
前記ケーシングには、前記ポンプ部の内圧を検出するための圧力検出部と、前記ジェットポンプに循環させる水量を調整するための調整弁と、前記調整弁を可動するための駆動部と、を備えていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ装置であって、
前記駆動部は、電圧に応じて硬度を変化させ、前記調整弁の開度を調整する電気粘性流体であることを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプ装置であって、
前記電気粘性流体は、前記電動機の回転数を変化させる速度制御装置が搭載された制御基板から供給される電圧に応じて硬度が変化し、前記調整弁の開度を調整するものであることを特徴とするポンプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のポンプ装置であって、
前記圧力検出部で前記ポンプ部の内圧を検出し、この内圧の検出値に基づいて予め定めた適正な内圧となるよう前記電気粘性流体に電圧を供給して、前記調整弁の開度を調整することを特徴とするポンプ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のポンプ装置であって、
前記電気粘性流体は、お椀状を成し、断面が略U字状の前記調整弁の内部に封入されていると共に、断面が略U字状の前記調整弁の開口部が蓋で塞がれ、かつ、断面が略U字状に形成された前記調整弁の両端部は前記蓋に固定されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のポンプ装置であって、
前記電気粘性流体は、絶縁流体に絶縁体の微粒子を混ぜたものであることを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ装置に係り、例えば、家庭用井戸に用いられ、ジェットポンプに循環させる水量を調整する調整弁を備えているものに好適なポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のジェットポンプと渦巻式ポンプを組み合わせて揚水させるポンプ装置においては、井戸の水位が深い場合、より多くの水をジェットポンプに循環させる必要があるが、ジェットポンプに循環させる循環水の量が少ないと、特に、渦巻式ポンプがキャビテーションの発生による騒音や揚水不能の原因になってしまう。
【0003】
これらを解決する手段として、渦巻式ポンプのポンプ部に調整弁を設け、井戸の水位に応じて調整弁の開度を調整することで、ジェットポンプに循環させる水量を調節し、キャビテーションの発生による騒音や揚水不能の原因を防ぐ技術があり、これに関連する先行技術文献として非特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】取扱説明書:日立浅深両用ポンプ(発行日:2021年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した非特許文献1に代表する家庭用井戸ポンプは、ジェットポンプと組み合わせて使用することで、井戸ポンプ単独では揚水できない水位からの揚水が可能となっているが、井戸の水位に合せて調整弁によりジェットポンプに循環させる水の量を調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、井戸の水位は、使用中や季節によって変動してしまうため、調整弁を常に最適に調整することが困難であり、井戸の水位が浅い場合にジェットポンプに循環させる水量が多すぎると、水栓から出る水の量が減ってしまい使い勝手が悪くなり、また、井戸の水位が深い場合にジェットポンプに循環させる水量が少なすぎると、騒音や揚水不能の原因になってしまう。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、水位に依存することなく、調整弁を常に最適な開度に自動で調整でき、使い勝手が向上するポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポンプ装置は、上記目的を達成するために、ジェットポンプと組み合わせて揚水させるポンプ装置であって、前記ポンプ装置は、電動機で回転駆動される羽根車を備え、かつ、前記羽根車の外周を覆うように位置すると共にポンプ部を形成するケーシングを有し、前記ケーシングには、前記ポンプ部の内圧を検出するための圧力検出部と、前記ジェットポンプに循環させる水量を調整するための調整弁と、前記調整弁を可動するための駆動部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水位に依存することなく、調整弁を常に最適な開度に自動で調整でき、使い勝手が向上するポンプ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】本発明のポンプ装置の実施例1を示し、
図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のポンプ装置を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【0012】
図1、
図2及び
図3に、従来のポンプ装置100の概略構成を示す。
図1は、従来のポンプ装置100を示す縦断面図であり、
図2は、
図1の上面図、
図3は、
図1の左側面図である。
【0013】
該図に示すように、従来のポンプ装置100は、圧力タンク1と、この圧力タンク1の上に配置されたモータ(電動機)2と、モータ2の回転数を変化させる速度制御装置が搭載された制御基板3と、モータ2の上に配置され、ポンプ装置100の吐出圧力値の表示や運転圧力等の設定を切替操作できる操作基板4とを備え、操作基板4が通信線で制御基板3(制御手段)と接続され、それらがポンプカバー8で覆われて概略構成されている。
【0014】
圧力タンク1の側面には、揚水されて加圧された水を水栓に送水するために設けられた配管接続用の吐出フランジ14が接続されている。吐出フランジ14と圧力タンク1は、ボルト22により固定されている。
【0015】
ポンプ部9は、羽根車10と、案内羽根15と、羽根車10及び案内羽根15を内置するケーシング11と、ケーシング11の全面を閉じるケーシングカバー12とを備えている。
【0016】
従来のポンプ装置100は渦巻式ポンプと称するもので、ケーシング11に吸込口20と圧力口21を有しており、それぞれ配管接続用の吸込フランジ7と圧力フランジ6を備えている。
【0017】
なお、本実施例の説明は、代表的なポンプである渦巻式ポンプを例にして説明するが、本発明は渦巻式ポンプに限定されるものではない。
【0018】
また、ポンプ部9の上部には、調整弁13が設置されている。この調整弁13は、調整ねじ16と、調整ねじ16の操作により伸縮する調整ばね17と、調整ばね17を受けるばね受け18と、断面が略U字状に形成された調整弁13の両端部が固定され、調整弁13のU字状内に調整ばね17及びばね受け18が収納されると共に、中央部を調整ねじ16が貫通して略U字状の調整弁13の開口部を塞ぐ蓋23aと、により構成され、調整ねじ16を締め込むことで調整ばね17が下方に伸びて調整弁13が水路を閉じ、調整ねじ16を緩めることで調整ばね17が上方に縮んで調整弁13が水路を開放するようになっている(
図2は調整弁13が水路を開放している状態=
図4の(b)の状態)。
【0019】
更に、ケーシング11には、圧力センサ(圧力検出部)5が具備されている。この圧力センサ5は、ポンプ装置100の内圧を検出する手段であり、検出結果は電気信号として制御基板3に入力され、モータ2の起動、停止を制御している。即ち、制御基板3は、予め定められた規定の内圧より大きいときにはモータ2を停止し、規定の内圧より小さいときにモータ2を起動するように制御する。
【0020】
次に、
図4を用いて従来のポンプ装置100における調整弁13の動作及び問題点を説明する。
図4は、従来のポンプ装置100を施工した際の図である。
【0021】
図4の(a)に示すように、地上にはポンプ装置100が設置され、水中にはジェットポンプ101が配置されており、ポンプ装置100は、揚水した水の一部をジェットポンプ101に戻し、水を循環させることで深い水位からの揚水が可能となっている。
【0022】
このとき、ジェットポンプ101に循環させる水の量が少ないと、ポンプ装置100及びジェットポンプ101内の内圧が下がるのでキャビテーションが発生してしまい、このため、運転音の増加や揚水不能の原因となっている。
【0023】
そこで、従来のポンプ装置100では、
図4の(b)に示すように、調整ねじ16を締め込むことで調整弁13を閉じる方向(
図4の(b)の下方向)に移動させて水路を狭くし、水栓から出る水の量を少なくする代わりに、循環水の増加及びポンプ装置100の内圧を上昇させ、キャビテーションの発生を抑制することで、より深い水位からの揚水を可能としている。
【0024】
上述したように、本発明が解決しようとしている課題は、井戸の水位が使用中や季節によって変動してしまうこと、即ち、水を長時間使用した場合や乾季に起こる井戸の水位が低下するため、調整弁13を常に最適に調整することが困難になることである。
【0025】
例えば、雨季に調整弁13を適正に調整した場合、乾季に起こる井戸の水位の低下により、キャビテーションが発生し、騒音の原因や揚水不能の原因となる。
【0026】
また、乾季に調整弁13を適正に調整した場合、雨季に井戸の水位が上昇するため、キャビテーションの発生や揚水不能となることはないが、水栓から出る水の量は、本来揚水可能な水量よりも少なくなるため、使い勝手の悪さを招く恐れがある。
【実施例0027】
そこで、本実施例では、
図5に示すように、調整弁13を可動するためのポンプ部とは異なる駆動部として、電圧に応じて硬度が変化して調整弁13の開度を調整する電気粘性流体(絶縁流体に絶縁体の微粒子を混ぜたもの)19を用いたポンプ装置100Aとしたものである。
【0028】
以下に、
図5を用いて本実施例のポンプ装置100Aにおける調整弁13の構造及びその動作について説明する。
【0029】
なお、本実施例は、調整弁13の駆動部として電気粘性流体19を用いているが、調整弁13の駆動部としては、電気粘性流体19に限定されるものではなく、他にモータやソレノイドが考えられる。
【0030】
図5に示すように、本実施例のポンプ装置100Aに用いられる調整弁13は、お椀状を成し、断面が略U字状の調整弁13の内部には、上記した電圧に応じて硬度が変化して調整弁13の開度を調整する電気粘性流体19が封入されており、この状態で、断面が略U字状に形成された調整弁13の両端部が固定されていると共に、略U字状の調整弁13の開口部を蓋23bで塞ぐようにして構成されている。
【0031】
これにより、調整弁13には、電圧に応じて硬度が変化して電気粘性流体19が封入されていることから、電気粘性流体19を制御基板3から供給される電圧に応じて硬度が変化することで、調整弁13の開度を調整できる。
【0032】
即ち、井戸の水位が深い場合、ポンプ部9の内圧が低下するため、圧力センサ5で内圧を検出し、この検出された予め定めた適正な内圧となるよう電気粘性流体19に電圧を供給して、調整弁13の開度を自動的に調整するものである。
【0033】
これにより、井戸の水位に応じて常に適正に調整弁13の開度が調整可能となり、井戸の水位が低下した場合は、電気粘性流体19の硬度が変化して調整弁13が自動的に水路を閉じる方向に動作し、反対に井戸の水位が上昇した場合は、電気粘性流体19の硬度が変化して調整弁13が自動的に水路を開かれる方向に動作するので、井戸の水位に応じて常に適正に調整弁13の開度が調整可能となり、使い勝手を維持することが可能となる。即ち、
図5は、調整弁13が水路を開放している状態であるが、井戸の水位が上昇した場合は、電気粘性流体19の硬度が変化して調整弁13が水路を徐々に閉じた方向に移動する。
【0034】
このような本実施例によれば、使用中の井戸の水位変動や雨季や換気など季節による水位変化に依存せず、調整弁13にポンプ部9とは異なる電気粘性流体19を備えることで、独立して動作し、調整弁13を常に最適な開度に自動的に調整することで、使い勝手を向上させたポンプ装置を得ることができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
1…圧力タンク、2…モータ、3…制御基板、4…操作基板、5…圧力センサ、6…圧力フランジ、7…吸込フランジ、8…ポンプカバー、9…ポンプ部、10…羽根車、11…ケーシング、12…ケーシングカバー、13…調整弁、14…吐出フランジ、15…案内羽根、16…調整ねじ、17…調整ばね、18…ばね受け、19…電気粘性流体、20…吸込口、21…圧力口、22…ボルト、23a、23b…蓋、100、100A…ポンプ装置、101…ジェットポンプ。