(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022814
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】発信機の保護装置及び非常通報装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G08B17/00 H
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126171
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA02
5G405AD07
5G405CA21
5G405FA04
5G405FA05
5G405FA09
5G405FA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発信機の操作性を確保しつつ、除雪車の通行に伴う堆雪等の発信機への意図しない押圧による誤動作を防止する発信機の保護装置及び当該保護装置が設置された非常通報装置を提供する。
【解決手段】発信機18の保護装置である堆雪保護装置30は、取付面となる扉面17の発信機18の露出部の周辺に設置したカバー基台32と、カバー基台32に開閉可能に取り付けられ、閉鎖状態において発信機18の操作部1810を含む露出部を覆う堆雪保護カバー34と、を備える。堆雪保護カバー34は、閉鎖状態において下部側が上部側よりも扉面17側に位置するように傾斜してカバー基台32に取り付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
意図しない押圧による発信機の誤動作を防止する発信機の保護装置であって、
前記発信機の取付面の、前記発信機の露出部の周辺に設置したカバー基台と、
前記カバー基台に開閉可能に取り付けられ、閉鎖状態において前記発信機の露出部の内、少なくとも操作部を覆う保護カバーと、
を備え、
前記保護カバーは、少なくとも保護装置の設置状態における前記閉鎖状態において下部側が上部側よりも前記取付面側に位置するように傾斜して前記カバー基台に取り付けられたことを特徴とする発信機の保護装置。
【請求項2】
請求項1記載の発信機の保護装置において、
前記取付面の前記カバー基台が設置される位置に対応して、前記取付面から前記取付面に相対する面に向けて貫通孔が設けられ、
前記カバー基台の設置状態における前記取付面側に、前記貫通孔の位置に対応して固定受部が設けられ、
前記カバー基台は、前記取付面に相対する面側から前記貫通孔を介して前記取付面側に位置する前記固定受部に挿入される固定部材により前記取付面に固定設置されることを特徴とする発信機の保護装置。
【請求項3】
請求項1記載の発信機の保護装置において、
前記保護カバーの前記閉鎖状態において、前記発信機の少なくとも一部が外部から視認可能であることを特徴とする発信機の保護装置。
【請求項4】
請求項1記載の発信機の保護装置において、
前記カバー基台は、前記保護カバーの前記閉鎖状態において外部から前記保護カバー及び又は前記保護カバーにより覆われた内部にアクセス可能な開放部を有することを特徴とする発信機の保護装置。
【請求項5】
一面に露出させて取り付けられた発信機に、前記一面を前記取付面として請求項1乃至4何れかに記載の発信機の保護装置が設置されたことを特徴とする非常通報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機への意図しない押圧による誤動作を防止する発信機の保護装置及び当該保護装置が設置された非常通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネルは、道路法等の規定によりトンネル長さや想定通行量と相関関係にある事故発生率によってランク分けされ、ランクによって非常通報装置、消火器箱、消火栓装置、水噴霧装置、火災検知器等の装置・機器を非常用設備として設置することが義務づけられている。
【0003】
この内、非常通報装置と消火器箱の設置が義務付けられたランクのトンネル内には、非常用設備として非常通報装置を消火器箱と一体にして設置されているものがある。また、消火器箱は、消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば2本の消火器を収納し、非常通報装置は、例えば消火器箱の消火器収納部の上部に配置された通報装置扉に赤色表示灯、発信機、応答ランプ、電話ジャックを備えている。
【0004】
赤色表示灯が常時点灯することで、消火器箱及び非常通報装置の設置場所が遠方から確認できるようになっている。例えば火災が発生し、発信機が押されて押釦スイッチがオンすると、非常通報装置から電気室に設置された防災受信盤へ火災通報信号が送信されて防災受信盤から火災警報が出力される。火災警報を出力した防災受信盤は非常通報装置へ応答信号を送信し、非常通報装置側では赤色表示灯が点滅し、応答ランプが点灯することで、防災受信盤側で火災通報信号が受信されたことを確認可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【特許文献2】特開2020-078429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、降雪地帯に設置されているトンネルにあっては、降雪が続いた場合に除雪車を出動させて除雪作業を行い、道路交通可能に維持している。このような除雪作業において、除雪車が道路の除雪を行いながらトンネルに進入してきた場合、トンネル入口からしばらく除雪車が進んだ付近までの道路の路肩からトンネル壁面にかけて除雪された雪が飛散して堆雪が起きている。
【0007】
このように除雪車の通行に伴い道路の路肩からトンネル壁面にかけて堆雪が起きた場合、トンネル入口側に設置されている非常通報装置に設けられた発信機が堆雪により押された状態となり誤動作し、防災受信盤から誤報が出力される事象が散発しており、誤報の対処に手間と時間が掛かる問題がある。
【0008】
本発明は、発信機の操作性を確保しつつ、除雪車の通行に伴う堆雪等の発信機への意図しない押圧による発信機の誤動作を防止する発信機の保護装置及び当該保護装置が設置された非常通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発信機の保護装置)
本発明は、意図しない押圧による発信機の誤動作を防止する発信機の保護装置であって、
発信機の取付面の、発信機の露出部の周辺に設置したカバー基台と、
カバー基台に開閉可能に取り付けられ、閉鎖状態において発信機の露出部の内、少なくとも操作部を覆う保護カバーと、
を備え、
保護カバーは、少なくとも保護装置の設置状態における閉鎖状態において下部側が上部側よりも取付面側に位置するように傾斜してカバー基台に取り付けられたことを特徴とする。
【0010】
(カバー基台の設置構造)
取付面のカバー基台が設置される位置に対応して、取付面から取付面に相対する面に向けて貫通孔が設けられ、
カバー基台の設置状態における取付面側に、貫通孔の位置に対応して固定受部が設けられ、
カバー基台は、取付面に相対する面側から貫通孔を介して取付面側に位置する前記固定受部に挿入される固定部材により取付面に固定設置される。
【0011】
(保護カバーの構造)
保護カバーは、閉鎖状態において、発信機の少なくとも一部が外部から視認可能である。
【0012】
(カバー基台の構造)
カバー基台は、保護カバーの閉鎖状態において外部から保護カバー及び又は保護カバーにより覆われた内部にアクセス可能な開放部を有する。
【0013】
(非常通報装置)
また、本発明は、一面に露出させて取り付けられた発信機に、一面を取付面として前述した発信機の保護装置が設置されたことを特徴とする非常通報装置である。
【発明の効果】
【0014】
(基本的な効果)
本発明は、意図しない押圧による発信機の誤動作を防止する発信機の保護装置であって、発信機の取付面の、発信機の露出部の周辺に設置したカバー基台と、カバー基台に開閉可能に取り付けられ、閉鎖状態において発信機の露出部の内、少なくとも操作部を覆う保護カバーと、を備え、保護カバーは、少なくとも保護装置の設置状態における閉鎖状態において下部側が上部側よりも取付面側に位置するように傾斜してカバー基台に取り付けられたため、保護カバーにより発信機の操作部が覆われていることで、除雪車の通行に伴う堆雪等の発信機への意図しない押圧が阻止され、操作部の誤動作を確実に防止すること可能とする。
【0015】
また、保護カバーは、少なくとも保護装置の設置状態における閉鎖状態において下部側が上部側よりも取付面側に位置するように傾斜してカバー基台に取り付けられたため、除雪車の通行に伴い飛散する雪が保護カバーに付着しても保護カバーから落下しやすくなり、保護カバーへの堆雪を抑制・防止することを可能とする。
【0016】
(カバー基台の設置構造の効果)
また、取付面のカバー基台が設置される位置に対応して、取付面から取付面に相対する面に向けて貫通孔が設けられ、カバー基台の設置状態における取付面側に、貫通孔の位置に対応して固定受部が設けられ、カバー基台は、取付面に相対する面側から貫通孔を介して取付面側に位置する前記固定受部に挿入される固定部材により取付面に固定設置されるため、固定部材が外部に露出することがなく、固定部材に、例えば金属製のねじを使用した場合であっても、塩化ナトリウム等の融雪剤を含む堆雪による固定部材の腐食を防止可能とし、保護装置の耐久性を確保可能とする。
【0017】
(保護カバーの構造の効果)
また、保護カバーは、閉鎖状態において、発信機の少なくとも一部が外部から視認可能であるため、保護カバーが設置された発信機であっても、発信機の場所を容易に認識することを可能とする。
【0018】
(カバー基台の構造の効果)
また、カバー基台は、保護カバーの閉鎖状態において外部から保護カバー及び又は保護カバーにより覆われた内部にアクセス可能な開放部を有するため、保護カバーに対して堆雪している状態等により保護カバーの開操作が行いづらい場合にも、カバー基台の開放部を介して保護カバーにアクセスして開操作することや保護カバーを開放せずに発信機を操作することを可能とし、状況に依存せずに発信機を確実に操作することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】非常通報装置が一体に設置された消火器箱を示した説明図である。
【
図2】
図1の消火器箱の設置状態をトンネル横断面から見て示した説明図である。
【
図3】発信機の堆雪保護装置を取り出して示した説明図である。
【
図4】堆雪保護カバーの閉鎖状態と堆雪保護カバーの開操作を示した説明図である。
【
図5】カバー基台を取り出して示した説明図である。
【
図6】堆雪保護カバーを取り出して示した説明図である。
【
図7】カバー基台の固定構造を組立分解状態で示した説明図である。
【
図8】発信機の操作部より下側を開放した堆雪保護装置を示した説明図である。
【
図9】
図7の堆雪保護装置の堆雪保護カバーの閉鎖状態と堆雪保護カバーの開操作を示した説明図である。
【
図10】開放部が形成されたカバー基台を備えた堆雪保護装置を示した説明図である。
【
図11】スライド開閉する堆雪保護カバーを備えた堆雪保護装置を示した説明図である。
【
図12】堆雪保護カバーのスライド開閉動作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る発信機の保護装置及び当該保護装置が設置された非常通報装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0021】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に意図しない押圧による発信機の誤動作を防止する発信機の保護装置に関するものであり、より具体的にはトンネルの非常通報装置に露出して取り付けられた発信機の除雪車の通行に伴う堆雪による誤動作を防止するための堆雪保護装置に関するものである。
【0022】
ここで、「非常通報装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、例えば電装扉に赤色表示灯や発信機等の電装機器が設けられるものである。また、「発信機」とは、火災等が発生した場合に、道路利用者が操作部を操作することで通報信号を防災受信盤に送信して防災受信盤から火災警報を出力させるものである。
【0023】
そして、本発明における発信機の保護装置は、カバー基台と保護カバーを備えるものである。ここで、「カバー基台」とは、発信機の取付面の、発信機の露出部の周辺に設置される基台であり、「保護カバー」とは、カバー基台に開閉可能に取付けられ、閉鎖状態において発信機の露出部の内、少なくとも操作部を覆うカバーであり、少なくとも保護装置の設置状態における閉鎖状態において下部側が上部側よりも取付面側に位置するように傾斜してカバー基台に取り付けられたことを特徴とするものである。
【0024】
また、「カバー基台」及び「保護カバー」は、任意の材料により製造されるが、除雪車の通行に伴う堆雪による誤動作を防止することを目的とする場合には、除雪車の通行に伴い飛散してくる雪には塩化ナトリウム等の融雪剤を含まれることから、腐食する懸念がある金属製よりも樹脂製とする方が望ましい。
【0025】
また、保護カバーは、傾斜してカバー基台に取り付けられるが、その傾斜角度は保護カバーに付着した液体や固体が落下し易くなる角度であれば任意であり、例えば5°~20°の傾斜角度とする。
【0026】
また、「カバー基台の設置構造」として、取付面のカバー基台が設置される位置に対応して、取付面から取付面に相対する面に向けて設けられた貫通孔と、カバー基台の設置状態における取付面側に、貫通孔の位置に対応して設けられた固定受部と、取付面に相対する面側から貫通孔を介して取付面側に位置する固定受部に挿入することでカバー基台を取付面に固定設置する固定部材を備える。
【0027】
また、「保護カバー」は、閉鎖状態において、発信機の少なくとも一部が外部から視認可能であるものである。ここで、「閉鎖状態において発信機の少なくとも一部が外部から視認可能」とは、保護カバーが透明の材料により製造されている等により保護カバーを介して視認可能であるもの、露出部の一部が保護カバーにより覆われていなく、保護カバーを介さずに覆われていない一部が視認可能であるものを含むものである。
【0028】
また、「カバー基台」は、保護カバーの閉鎖状態において外部から保護カバー及び又は保護カバーにより覆われた内部にアクセス可能な開放部を有するものである。ここで、「開放部」の構造・位置は目的に合わせて任意の構造・位置として良く、例えば保護カバーにアクセス可能とするのであれば、その開放部の位置を保護装置の設置状態におけるカバー基台の下部側とし、構造を開口や開放段部とするものを含む。また、例えば発信機の操作部にアクセス可能とするのであれば、その開放部の位置を操作部の位置に対応させ、構造を開口とするものを含む。
【0029】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「保護装置」が「除雪車の通行に伴う堆雪による誤動作の防止を目的とし、消火器箱と一体に設置された非常通報装置に取り付けられた発信機の堆雪保護装置」であり、「カバー基台」が「透明樹脂製のカバー基台」であり、「保護カバー」が「透明樹脂製の堆雪保護カバー」であり、「固定部材」が「金属製のねじ」であり、「固定受部」が「ねじ穴が形成された固定受部」である場合について、具体的内容を説明する。
【0030】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の具体的内容について、以下のように分けて説明する。
a.非常通報装置が一体に設置された消火器箱
b.堆雪保護装置の構造
b1.カバー基台
b2.堆雪保護カバー
b3.カバー基台の固定構造
b4.堆雪保護装置の構造と開閉機能
c.堆雪保護カバーから発信機の操作部より下側を露出させた堆雪保護装置
d.開放部が形成されたカバー基台を備えた堆雪保護装置
e.スライド開閉する堆雪保護カバーを備えた堆雪保護装置
f.本発明の変形例
【0031】
[a.非常通報装置が一体に設置された消火器箱]
まず、消火器箱と一体に設置された非常通報装置について説明する。当該説明にあっては、非常通報装置が一体に設置された消火器箱を示した
図1及び消火器箱の設置状態をトンネル横断面から見て示した
図2を参照する。
【0032】
ここで、
図1及び
図2の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、発信機が露出している一面となる非常通報装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は
図3~
図12においてもX-Y-Z方向は同様となる。
【0033】
図1に示すように、トンネル非常用設備として設置される装置・機器の一種である消火器箱10は、筐体下側の消火器収納部に、例えば2本の消火器を収納しており、前面開口に消火器扉12がヒンジ14により開閉自在に設けられる。道路利用者はハンドル13の操作により消火器扉12のロックを解除して消火器扉12を開き、筐体内に収納されている消火器を取り出して消火活動を行う。
【0034】
消火器箱10の筐体上側にはトンネル非常用設備として設置される装置・機器の一種である非常通報装置16が設けられている。非常通報装置16は前面開口に電装扉を設け、その一面となる扉面17には、電装機器として、発信機18、赤色表示灯20、応答ランプ22、電話ジャック24が設けられ、扉面17の上側には銘板21が設けられている。
【0035】
発信機18は、扉面17から前側に露出して取り付けられ、操作部1810には押釦スイッチが設けられている。赤色表示灯20は常時点灯し、消火器箱10及び非常通報装置16の設置場所を遠方から確認可能としている。例えば火災が発生した場合に道路利用者が発信機18の操作部1810を押込み操作して押釦スイッチがオンすると、非常通報装置16から電気室等に設置された防災受信盤へ火災通報信号が送信されて防災受信盤から火災警報が出力される。火災警報を出力した防災受信盤は非常通報装置16へ応答信号を送信し、非常通報装置16側では赤色表示灯20が点滅し、応答ランプ22が点灯することで、防災受信盤側で火災通報信号が受信されたことが確認可能となる。
【0036】
扉面17から前側に露出して取り付けられた発信機18に対して、堆雪保護装置30が固定設置される。堆雪保護装置30は、カバー基台32と堆雪保護カバー34を備える。
【0037】
カバー基台32は、扉面17から前側に露出して取り付けられた発信機18の露出部の周辺に配置され扉面17に固定設置される。堆雪保護カバー34は、カバー基台32に対し上端部を軸に開閉可能に取り付けられ、通常状態では発信機18の操作部1810を含む前面を覆う位置で閉鎖状態にある。
【0038】
図2に示すように、消火器箱10はトンネル内の道路25に沿った路肩通路(監視員通路)26からのトンネル壁面27に構築したくり抜き部29に設置されている。このため、除雪車が除雪を行いながらトンネルを通行する場合、トンネル入口に近く、除雪車が通行する車線の近く位置する消火器箱10付近には除雪車の通行に伴い堆雪28が生ずる。
【0039】
このように除雪車の通行に伴う消火器箱10に対する堆雪28は、堆雪量が増加すると消火器箱10の上側に位置している非常通報装置16の発信機18に対しても影響を与えることになるが、実施形態にあっては、発信機18に堆雪保護装置30が設置されているため、堆雪28による押圧は堆雪保護装置30が受け、発信機18の操作部1810が押圧されることがなく、堆雪28による発信機18の誤動作が確実に防止される。
【0040】
また、道路利用者が発信機18を操作する場合には、
図2に示すように、堆雪保護措置30の堆雪保護カバー34を上向き開いて操作部1810の押込み操作を行うことになり、堆雪保護カバー34を開くことで発信機18の操作を可能とするものであるから、堆雪保護装置30が取り付けられていても、発信機18の操作は簡単且つ容易であり、堆雪28の有無に関わらず、発信機18の操作性は確保されている。
【0041】
[b.堆雪保護装置の構造]
次に、堆雪保護装置の構造について説明する。当該説明にあっては、発信機の堆雪保護装置を取り出して示した
図3、堆雪保護カバーの閉鎖状態と堆雪保護カバーの開操作を示した
図4を参照する。尚、
図3(A)は正面(前面)を示し、
図3(B)は
図3(A)の切断線a-aの断面を示す。また、
図4(A)は堆雪保護カバーの閉鎖状態を示し、
図4(A)は堆雪保護カバーが開き始めた状態を示す。
【0042】
ここで、
図3に示すように、堆雪保護装置30はカバー基台32と堆雪保護カバー34を備えるものであり、まずカバー基台32と堆雪保護カバー34の各々について説明する。
【0043】
(b1.カバー基台)
堆雪保護装置のカバー基台について説明する。当該説明にあっては、カバー基台を取り出して示した
図5を参照する。尚、
図5(A)は正面(前面)を一部断面で示し、
図5(B)は
図5(A)の切断線c-cの断面を示し、
図5(C)は平面(上面)を示す。
【0044】
図5に示すように、カバー基台32は、例えば透明樹脂製であり、発信機18の扉面17から前側に露出した露出部を対応した十分なサイズを有する基台平面部3220を有し、基台平面部3220には発信機18の露出部を挿通するための開口穴3230が形成されている。
【0045】
基台平面部3220の左右両側には基台壁面部3210が前側に向かって起立している。左右の基台壁面部3210の上部内側には内側を開放した軸穴3240が形成されている。尚、軸穴3240は外側を閉鎖しているが、外側も開放して通し穴としても良い。また、左右の基台壁面部3210の上下方向における中央付近の内側には球状の窪みとなる係合凹部3250が形成されている。
【0046】
基台平面部3220の基台壁面部3210の内側となるコーナー部4箇所にはブロック形状の固定受部3260が形成されている。固定受部3260の各々には裏面(後面)からねじ穴3270が形成され、ねじ穴3270は固定受部3260の前面側では閉鎖されている。尚、基台カバー32の各部の符号は、
図3及び
図4にも併せて示している。
【0047】
(b2.堆雪保護カバー)
続いて、堆雪保護装置の堆雪保護カバーについて説明する。当該説明にあっては、堆雪保護カバーを取り出して示した
図6を参照する。尚、
図6(A)は正面(前面)を示し、
図6(B)は側面(左面)を示す。
【0048】
図6に示すように、堆雪保護カバー34は、例えば透明樹脂製であり、
図5のカバー基台32の基台平面部3220に対応したサイズのカバー平面部3410を有し、カバー平面部3410の上端部には後方に折り返した上面部3412が形成されている。カバー平面部3410の上部の左右両側には軸部3420が形成されている。軸部3420は
図5に示したカバー基台32の軸穴3240に嵌合され、カバー基台32に対し堆雪保護カバー34を開閉可能に軸支するものである。
【0049】
堆雪保護カバー34のカバー平面部3410は、
図6(B)に示すように、
図5のカバー基台32に開閉可能に軸支された場合に、下部側が上部側よりもカバー基台32の基台平面部3220に近い位置となるように所定の傾斜角θで下部側が後方に傾斜している。カバー平面部3410の傾斜角θは、外側(前側)から雪が当たった場合にカバー平面部3410の外面(前面)に雪を付着させずに落下させることを可能とする角度であれば任意であるが、例えば10°程度の傾斜角としている。
【0050】
また、カバー平面部3410の左右両側の上下方向における中央付近には、球状の突起となる係合凸部3430が形成されている。係合凸部3430は堆雪保護カバー34を
図5のカバー基台32に開閉可能に軸支させる場合に、カバー基台32の係合凹部3250に係合させ、堆雪保護装置30の閉鎖状態のときに、カバー平面部3410を傾斜角θとなる傾斜状態に保持するものである。尚、堆雪保護カバー34の各部の符号は、
図3及び
図4にも併せて示している。
【0051】
(b3.カバー基台の固定構造)
続いて、堆雪保護装置のカバー基台を非常通報装置の扉面に固定設置する固定構造について説明する。当該説明にあっては、扉面、カバー基台及び固定構造を組立分解状態で示した
図7を参照する。尚、
図7は
図3(A)の切断線d-dの断面を示す。
【0052】
図7に示すように、堆雪保護装置30のカバー基台32を非常通報装置16の扉面17に固定設置するために、カバー基台32の固定受部3260の裏側(後面側)に形成されたねじ穴3270に対応して扉面17には貫通穴37が形成されている。このため、金属製のねじ36を扉面17の裏側(後面側)から貫通穴38に挿通してねじ36をねじ穴3270に螺合することで、扉面17にカバー基台32を固定設置する。
【0053】
このカバー基台32の固定構造にあっては、貫通穴38に挿通して扉面17の裏側(後面側)からカバー基台32のねじ穴3270に螺合したねじ36は、堆雪を受ける堆雪保護装置30の前面側に露出しておらず、金属製のねじ36であっても堆雪に含まれる融雪剤と接触して腐食することがなく、堆雪保護装置30として高い耐久性の確保を可能としている。
【0054】
(b4.堆雪保護装置の構造と開閉機能)
続いて、開閉機能と合わせて堆雪保護装置の構造について説明する。当該説明にあっては
図3及び
図4を参照する。
【0055】
図3に示すように、堆雪保護装置30は、
図5に示したカバー基台32と
図6に示した堆雪保護カバー34を備えるものであり、また、
図7に示した固定構造により非常通報装置16の扉面17に固定設置されるものである。
【0056】
また、堆雪保護装置30は、カバー基台32の左右両側に起立された基台壁面部3210の上部内側の軸穴3240に、堆雪保護カバー34の上部の左右両側に形成された軸部3420を嵌合することで、カバー基台32に対し堆雪保護カバー34を軸部3420を中心軸として上下回りに開閉可能に取り付けられている。
【0057】
また、堆雪保護カバー34は、その閉鎖状態で左右両側の上下方向における中央付近に形成された球状の係合凸部3430がカバー基台32側の球状の係合凹部3250に係合し、
図4(A)に示すように、堆雪保護カバー34のカバー平面部3410の下部側が傾斜角θで後方に位置するように傾斜した状態に保持される。
【0058】
このように構成された堆雪保護装置30は、例えば降雪地帯にあるトンネルに設置され、除雪車のトンネル通行に伴う堆雪の影響が予想されるトンネル入口に近い1~2台の既設の消火器箱10を対象として、その対象の非常通報装置16の発信機18に対して設置される。
【0059】
堆雪保護装置30の設置作業は、対象とする既設の消火器箱10と一体に設置された非常通報装置16の電装扉を開いて
図7に示したように、電装扉の扉面17に相対する裏面側(後面側)から貫通穴37を穴開け加工し、ねじ36を裏面側(後面側)から貫通穴38に挿通して、扉面17側(前面側)に発信機18の露出部を開口穴3230に挿通して配置したベース基台32のねじ穴3270にねじ36を螺合することで、発信機18の露出部を覆う位置に堆雪保護装置30を固定設置する。勿論、新設する消火器箱を対象とする場合には、製造段階で堆雪保護装置30の設置作業が行われる。
【0060】
非常通報装置16の扉面17に固定設置が完了した堆雪保護装置30は、堆雪保護カバー34の閉鎖状態で、
図3に示すように、非常通報装置16の扉面17から前側に露出している発信機18の操作部1810を含む前面側を覆っており、除雪車のトンネル通行に伴い飛散した雪は堆雪保護カバー34で受け止められ、発信機18の操作部1810が堆雪で押圧される誤動作を確実に防止可能とする。
【0061】
また、堆雪保護装置30は、
図4(A)に示すように、堆雪保護カバー34の閉鎖状態で、係合凸部3430と係合凹部3250の係合により、カバー平面部3410の下部側を後方に所定角度θで傾斜した状態で保持しており、除雪車のトンネル通行に伴い飛散した雪がカバー平面部3410に当たってもその外面(前面)に雪を留めることなく落下させることを可能としている。
【0062】
また、道路利用者が発信機18を操作する場合には、
図4(A)に示す閉鎖状態にある堆雪保護カバー34のカバー平面部3410の下端に手を掛け、
図4(B)に示すように、堆雪保護カバー34を上回りに開くことで、発信機18の操作部1810の操作を簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0063】
[c.堆雪保護カバーから発信機の操作部より下側を露出させた堆雪保護装置]
次に、堆雪保護装置の他の実施形態として、堆雪保護カバーから発信機の操作部より下側を露出させた堆雪保護装置について説明する。当該説明にあっては、発信機の操作部より下側を開放した堆雪保護装置を示した
図8、及び
図8の堆雪保護装置の堆雪保護カバーの閉鎖状態と堆雪保護カバーの開操作を示した
図9を参照する。尚、
図9(A)は堆雪保護カバーの閉鎖状態を示し、
図9(B)は堆雪保護カバーを開き始めた状態を示す。
【0064】
図8及び
図9に示すように、本実施形態の堆雪保護装置30の堆雪保護カバー34は、
図3及び
図4に示した実施形態と比べてカバー平面部3410の下端3440が上側に位置するようにカバー平面部3410の高さ(上下方向の長さ)を短くすることで、堆雪保護カバー34の閉鎖状態において扉面17の前面に露出している発信機18の操作部1810より下側の一部が外部に開放されている。このため、堆雪保護カバー34を設けていても、カバー平面部3410下側の開放領域から手を入れるか、又は堆雪保護カバー34を開くことで発信機18の操作部1810の操作を簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0065】
また、カバー平面部3410下側に開放領域を有することから、除雪車のトンネル通行に伴い飛散した雪が発信機18に付着する可能性はあるものの、発信機18の操作部1810の前面は堆雪保護カバー34のカバー平面部3410により保護されているため、発信機18の操作部1810が堆雪で押圧される誤動作を防止できる。また、カバー平面部3410の下部側を後側に所定角度θで傾斜した状態で保持していることから、カバー平面部3410下側の開放領域から堆雪保護カバー34の内部に雪が侵入しにくい構造となっている。
【0066】
また、堆雪保護カバー34が不透明である場合には、
図3及び
図4の実施形態では、堆雪保護装置30のカバー閉鎖状態で発信機18を外部から視認することは困難であるが、本実施形態では、堆雪保護カバー34の閉鎖状態であってもカバー平面部3410下側の開放領域から発信機18が視認可能であり、道路利用者が容易に発信機18の位置を認識することを可能とする。
【0067】
尚、堆雪保護カバー34の閉鎖状態において発信機18の操作部1810より下側を露出させる堆雪保護カバー34の構成は、カバー平面部3410の高さ(上下方向の長さ)を短くする以外に、堆雪保護カバー34の下部側に、矩形、半円形、三角形等の任意の形状の切欠きや開口を形成するようにしても良い。
【0068】
[d.開放部が形成されたカバー基台を備えた堆雪保護装置]
次に、堆雪保護装置の他の実施形態として、開放部が形成されたカバー基台を備える堆雪保護装置について説明する。当該説明にあっては、開放部が形成されたカバー基台を備えた堆雪保護装置を示した
図10を参照する。
【0069】
本実施形態の堆雪保護装置30は、カバー基台32に開放部が形成されたものであり、その開放部の構造・目的は任意であるが、例えば
図10(A)に示すように、カバー基台32の左右両側に起立した基台壁面部3210の下側に矩形の開口部3280が形成され、堆雪保護カバー34の開放操作を容易とするものである。このため、開口部3280が全て埋もれない程度に堆雪保護装置30の下側の一部が堆雪により埋もれて、堆雪保護装置30の前面からでは堆雪保護カバー34の開放操作が行いづらい場合にも、道路利用者はカバー基台32の開口部3280を介して堆雪保護カバー34にアクセスして開放操作することを可能とし、堆雪量が多い場合にも発信機18をより確実に操作することを可能とする。
【0070】
また、本実施形態の堆雪保護装置30は、
図10(B)に示すように、開放部をカバー基台32の左右両側に起立した基台壁面部3210の下側を矩形に切欠いて開放段部3290として形成しても良い。
【0071】
また、開放部をカバー基台32の左右両側に起立した基台壁面部3210の発信機18の操作部1810に対応した位置に形成するようにしても良い。これにより、開放部から手を入れて、直接発信機18の操作部1810を操作することを可能とし、堆雪保護カバー34が開放できない場合であっても発信機18の操作を可能とする。また、この場合には、カバー平面部3410の傾斜角度θは開放部から手を入れて発信機18の操作が可能となるように調整される。
【0072】
また、除雪車が進入している側に起立した基台壁面部3210には開放部を形成せずに、その相対する側に起立した基台壁面部3210に開放部を形成するようにしても良い。これにより、飛散する可能性が高い除雪車が進入している側から堆雪保護装置30に向かう方向の雪が堆雪保護装置30内に侵入することを防止し、基台壁面部3210に開放部を形成したカバー基台32を採用した場合であっても、堆雪保護装置30として高い信頼性を確保することを可能とする。
【0073】
[e.スライド開閉する堆雪保護カバーを備えた堆雪保護装置]
次に、堆雪保護装置の他の実施形態として、スライド開閉する堆雪保護カバーを備えた堆雪保護装置について説明する。当該説明にあっては、スライド開閉する堆雪保護カバーを備えた堆雪保護装置を示した
図11、及び堆雪保護カバーのスライド開閉動作を示した
図12を参照する。尚、
図11(A)は側面(左面)を示し、
図11(B)は正面(前面)を示す。また、
図12(A)は堆雪保護カバーの閉鎖状態を示し、
図12(B)は堆雪保護カバーの開放状態を示す。
【0074】
本実施形態の堆雪保護装置30は、
図11に示すように、カバー基台32の左右両側に起立した基台壁面部3210には、ガイド溝38が形成され、ガイド溝38には堆雪保護カバー34の下部の左右両側に設けられたガイドピン40が移動可能に嵌合されている。
【0075】
また、ガイド溝38は、そのガイド軸3810の下部側が上部側よりも扉面17に近い位置となるように傾斜して形成されている。このため、
図12(A)に示すように、堆雪保護カバー34は閉鎖状態で下部側を後側に傾斜角θで傾斜させた状態に保持され、除雪車のトンネル通行に伴い飛散した雪が堆雪保護カバー34の前面側に当たっても付着せず、雪を堆雪保護カバー34の前面に留めることなく落下させることを可能としている。
【0076】
また、
図11(B)に示すように、カバー基台32の左右両端に起立された基台壁面部3210の上部には後側に向かって張り出して張出部3820が形成されており、堆雪保護カバー34を張出部3820に当接させながらスライド開閉するようになっている。このため、堆雪保護カバー34は、ガイドピン40と張出部3820の2点で支持されることになり、ガイドピン40を中心とする回動が起きない。
【0077】
また、道路利用者が発信機18を操作する場合には、
図12(A)に示す閉鎖状態にある堆雪保護カバー34の下端に手を掛け上方に持ち上げて、
図12(B)に示すように、ガイド溝38に沿ったガイドピン40の移動によって堆雪保護カバー34を開放することで、発信機18の操作を簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0078】
また、開放した堆雪保護カバー34を閉じる場合には、開放している堆雪保護カバー34から手を離すことで、堆雪保護カバー34が自重によりガイド溝28に沿って落下し、
図12(A)の閉鎖状態に戻る。
【0079】
尚、
図11、
図12では、ガイド溝38からガイドピン40が確認できる構造としているが、ガイド溝38とガイドピン40の構造は任意であり、左右方向から飛散してくる雪がガイド溝38から侵入することを防止するのであればガイド溝38を外部に対して開放した構造とするのでなく、外部に対して閉鎖した構造としても良い。
【0080】
[f.本発明の変形例]
本発明による発信機の保護装置の変形例について説明する。本発明による発信機の保護装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0081】
上記の実施形態は、消火器箱と一体に設置される非常通報装置を例にとっているが、単独で設置される非常通報装置についても同様に適用できるものである。また、本発明は、発信機単独に保護装置を設ける場合も含まれるものである。
【0082】
上記の実施形態は、発信機への意図しない押圧が除雪車の通行に伴う堆雪の場合を例に取っているが、その他の要因による発信機への意図しない押圧についても防止可能である。例えば、人が誤って非常通報装置に寄り掛かる等により発信機に掛かる押圧等も発信機の保護装置でその押圧を受け、発信機の誤動作を防止することが可能である。
【0083】
(その他)
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0084】
10:消火器箱
12:消火器扉
13:ハンドル
14:ヒンジ
16:非常通報装置
17:扉面
18:発信機
1810:操作部
20:赤色表示灯
22:応答ランプ
24:電話ジャック
25:道路
26:路肩通路
28:堆雪
29:くり抜き部
30:堆雪保護装置
32:カバー基台
3210:基台側壁部
3220:基台平面部
3230:開口穴
3240:軸穴
3250:係合凹部
3260:固定受部
3270:ねじ穴
3280:開口部
3290:開放段部
34:堆雪保護カバー
3410:カバー平面部
3412:上面部
3420:軸部
3430:係合凸部
3440:下端部
36:ねじ
37:貫通穴
38:ガイド溝
3820:張出部
40:ガイドピン