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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002282
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20231228BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101382
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 圭之郎
(72)【発明者】
【氏名】臣 直毅
(72)【発明者】
【氏名】下山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 葵
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD10
4J039AE06
4J039AF01
4J039BC16
4J039BC33
4J039EA06
4J039EA36
(57)【要約】
【課題】光重合開始剤を用いずとも重合可能なモノマーやオリゴマーを用いることで光重合開始剤の使用を削減しつつ、さらに、環境への配慮からジアリルフタレート樹脂の使用を削減しながらも、良好な流動性を備え、かつそれを用いて得た印刷物におけるドライダウンや耐スクラッチ性を良好とすることのできる活性エネルギー線硬化型インキ組成物を提供すること。
【解決手段】(A1)アリル系モノマーの重合体、(A2)ロジン変性樹脂及び(A3)テルペンモノマー骨格含有樹脂から選択される少なくとも1つの(A)成分と、(B1)アミン官能基を備えたモノマー及び/又はオリゴマー及び/又は(B2)アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーと、アミン官能基を備えたポリエーテルアクリレートとの両方の(B)成分とを含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1)、(A2)及び(A3)から選択される少なくとも1つであり、これらの選択の中から(A1)が単独で選択される場合にはさらに顔料分散剤を含むものである(A)成分と、
下記(B1)及び/又は(B2)からなる(B)成分と、
(A)成分及び(B)成分のいずれにも該当しないエチレン性不飽和結合を備えた化合物と、顔料と、を含み、前記(B)成分の含有量が全体の15質量%以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
(A1)下記一般式(1)で表すアリル系モノマーの重合体
(A2)ロジン変性樹脂
(A3)テルペンモノマー骨格含有樹脂
(B1)アミン官能基を備えたモノマー及び/又はオリゴマー
(B2)アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーと、アミン官能基を備えたポリエーテルアクリレートと、の両方
【化1】
(上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、4~8員環の脂肪環骨格からなるn価の基であり、nは、2又は3である。)
【請求項2】
前記一般式(1)のXが、下記のいずれかで表す2価の基である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【化2】
【請求項3】
前記(A2)及び(A3)の重量平均分子量が1000以上10万以下である請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量が全体の5質量%~40質量%である請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項5】
前記ロジン変性樹脂が、ロジン変性ポリエステル樹脂である請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)のXが、1,2-シクロヘキシレン基である請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキ組成物を用いて印刷を行う場合、印刷対象である被印刷物の材質や形状等に合わせて各種の印刷方式が適切に選択され、インキ組成物もその印刷方式に合わせて適切な性状を有するものが選択される。例えば、平らな印刷用紙に対しては、平版を用いたオフセット印刷方式が選択され、その印刷方式では植物油や鉱物油を含み粘度の高いオフセット印刷用インキ組成物が用いられ、段ボール用紙への印刷においては、ゴム凸版を用いたフレキソ印刷方式が選択され、その印刷方式では流動性の極めて高い水性のフレキソ印刷用インキ組成物が用いられること等が挙げられる。この他、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、インクジェット印刷等、様々な印刷方式が適宜選択されて印刷が行われていることは周知の通りである。
【0003】
ところで、印刷において、印刷対象へインキ組成物を付着させて画像を形成させることと併せて重要な要素の一つとして挙げられるのが、印刷後のインキ組成物の乾燥である。印刷された直後のインキ組成物は、被印刷体の表面で十分に固定されておらず、指などで触った際に指へインキ組成物が付着する、擦られた際に画像が乱れて汚れてしまう等の問題を生じる。このため、印刷後の被印刷体を後加工へ回す場合、被印刷体の表面でインキ組成物が十分に固定(すなわち乾燥)された状態であることが必要である。印刷後のインキ組成物の固定(すなわち乾燥)過程は、用いたインキ組成物の種類に応じて様々であり、例えば、被印刷体への溶剤の浸透、被印刷体からの溶剤の蒸発、インキ組成物に含まれる成分の酸化による高分子量化等が挙げられる。いずれの場合であっても、乾燥過程はそれなりの時間を要するものであり、技術の進歩によって印刷速度が向上している昨今では、乾燥過程に要する時間というのも無視できないものになっている。
【0004】
このような状況において、近年では活性エネルギー線硬化型のインキ組成物を用いた印刷も行われている。活性エネルギー線硬化型のインキ組成物は、紫外線や電子線の照射によりインキ組成物に含まれる成分が高分子量化し、乾燥を実現する。この乾燥に要する時間は極めて短く、このインキ組成物を用いた印刷は、印刷物を速やかに後加工へ回したい等といった要望に応えるものになっている。このような乾燥方式に対応したインキ組成物の一例が例えば特許文献1等で提案されている。
【0005】
ところで、活性エネルギー線硬化型インキ組成物では、活性エネルギー線の照射を受けた際にモノマーやオリゴマーを重合させるためのラジカル種を発生させるために、光重合開始剤がその成分の一部として用いられるのが一般的である。この光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けたときに低分子の分解生成物を生成するが、この分解生成物は、乾燥後の印刷物において特有の臭気を生じさせる原因ともなるので、印刷物の臭気を低減させるとの観点からは、こうした分解生成物の生成を極力低減させることが望ましいといえる。これに応える技術の一例として、特定のモノマーやオリゴマーを用いることで、光重合開始剤を用いずともインキ組成物に乾燥性を付与できることが特許文献2に開示されている。特許文献2に記載されたインキ組成物では、上記特定のモノマーやオリゴマーに加えて、ジアリルフタレート樹脂等といった樹脂を用いることにより、顔料分散性や乾燥性等といった性能を維持している。
【0006】
しかしながら、ジアリルフタレート樹脂を製造する際の原料となるフタル酸ジアリルは、フタル酸エステルであり、人体や環境に対する影響の懸念される化学物質の一つである。これを重合して得られるジアリルフタレート樹脂は無害であるものの、その原料に懸念のある以上は、その使用を低減することが好ましいと言える。
【0007】
他方、インキ組成物としても使用可能な光硬化性樹脂組成物において、シクロアルカンカルボン酸又はシクロアルケンカルボン酸とアリルアルコールとのエステルを重合して得た重合体(以下、アリル重合体とも呼ぶ。)を成分の一つとして用いることが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この文献で好ましい例の一つとされた、シクロヘキサンジカルボン酸のアリルアルコールエステルから得たアリル重合体は、ジアリルフタレート樹脂におけるベンゼン環をシクロヘキサンに置き換えたものに対応し、ジアリルフタレート樹脂と同様に活性エネルギー線硬化型インキ組成物のバインダー樹脂としての用途が期待される。そして、その原料は、人体や環境への懸念のあるフタル酸エステルでなく、シクロアルカン又はシクロアルケンのモノ又はポリカルボン酸エステルとなるので、こうした懸念がより低減されると期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-193677号公報
【特許文献2】特許第7062816号公報
【特許文献3】特開2019-026675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本発明者らの検討によれば、光重合開始剤を含まない活性エネルギー線硬化型インキ組成物を得るべく上記特定のモノマーやオリゴマーを用いた場合、特許文献3に記載されたアリル重合体をバインダー樹脂としたときに、インキ組成物の流動性が低下して印刷適性が低下するばかりか、これを用いた印刷で得た印刷物において、ドライダウンが大きくなったり、耐スクラッチ性が低下したりするといった問題を生じることが明らかとなった。すなわち、光重合開始剤を含まない活性エネルギー線硬化型インキ組成物では、ジアリルフタレート樹脂の代替品を用いたときに十分な性能が得られないことになる。
【0010】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、光重合開始剤を用いずとも重合可能なモノマーやオリゴマーを用いることで光重合開始剤の使用を削減しつつ、さらに、環境への配慮からジアリルフタレート樹脂の使用を削減しながらも、良好な流動性を備え、かつそれを用いて得た印刷物におけるドライダウンや耐スクラッチ性を良好とすることのできる活性エネルギー線硬化型インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の樹脂(下記の(A)成分)と特定のモノマー及び/又はオリゴマー(下記の(B)成分)とを組み合わせて用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)本発明は、下記(A1)、(A2)及び(A3)から選択される少なくとも1つであり、これらの選択の中から(A1)が単独で選択される場合にはさらに顔料分散剤を含むものである(A)成分と、下記(B1)及び/又は(B2)からなる(B)成分と、(A)成分及び(B)成分のいずれにも該当しないエチレン性不飽和結合を備えた化合物と、顔料と、を含み、上記(B)成分の含有量が全体の15質量%以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
(A1)下記一般式(1)で表すアリル系モノマーの重合体
(A2)ロジン変性樹脂
(A3)テルペンモノマー骨格含有樹脂
(B1)アミン官能基を備えたモノマー及び/又はオリゴマー
(B2)アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーと、アミン官能基を備えたポリエーテルアクリレートと、の両方
【化1】
(上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、4~8員環の脂肪環骨格からなるn価の基であり、nは、2又は3である。)
【0013】
(2)また本発明は、上記一般式(1)のXが、下記のいずれかで表す2価の基である(1)項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
【化2】
【0014】
(3)また本発明は、上記(A2)及び(A3)の重量平均分子量が1000以上10万以下である(1)項又は(2)項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
【0015】
(4)また本発明は、上記(A)成分の合計含有量が全体の5質量%~20質量%である(1)項~(3)項のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
【0016】
(5)また本発明は、上記ロジン変性樹脂が、ロジン変性ポリエステル樹脂である(1)項~(4)項のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
【0017】
(6)また本発明は、上記一般式(1)のXが、1,2-シクロヘキシレン基である(1)項~(5)項のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光重合開始剤を用いずとも重合可能なモノマーやオリゴマーを用いることで光重合開始剤の使用を削減しつつ、さらに、環境への配慮からジアリルフタレート樹脂の使用を削減しながらも、良好な流動性を備え、かつそれを用いて得た印刷物におけるドライダウンや耐スクラッチ性を良好とすることのできる活性エネルギー線硬化型インキ組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物(以下、「インキ組成物」と適宜省略する。)の一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射を受けて硬化する能力を備える。後述するように、本発明のインキ組成物は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物(モノマーやオリゴマー等)を含有し、活性エネルギー線の照射を受けた際にインキ組成物中に生じるラジカルがエチレン性不飽和結合を備えた化合物を高分子量化させることで硬化する。そのため、印刷直後に印刷物の表面でべたついているインキ組成物に活性エネルギー線が照射されると、瞬時にこのインキ組成物が硬化して皮膜となり、乾燥(タックフリー)状態となる。なお、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、後述する(B)成分が光重合開始剤の役割を果たし、この(B)成分が紫外線の照射によりラジカルを発生させたり、増感作用を発現したりしてインキ組成物を硬化させる。また、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、インキ組成物中に含まれる各種の成分が電子線の照射により分子内開裂を生じてラジカルを生じさせてインキ組成物を硬化させる。したがって、本発明のインキ組成物では、その構成成分として光重合開始剤を必ずしも含まなくてもよいが、必要に応じてこれを適宜用いてもよい。
【0021】
本発明のインキ組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が例示される。これらの中でも、装置のコストや扱いやすさという観点からは、活性エネルギー線として紫外線が好ましく例示されるが、近年では印刷装置への電子線発生装置の導入も進んでおり、このような観点からは活性エネルギー線として電子線も同様に好ましく例示される。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その波長としては、用いる光重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜決定されればよいが、400nm以下を挙げることができる。このような紫外線を発生させる紫外線照射装置としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、希ガスを封入したエキシマランプ、紫外線発光ダイオード(LED)等を挙げることができる。活性エネルギー線として電子線を用いる場合、電子線を照射する照射装置は特に限定されない。このような照射装置としては、コックロフトワルトシン型、バンデグラフ型又は共振変圧器型等の照射装置が挙げられる。電子線のエネルギーは、50~1000eVであることが好ましく、100~300eVであることがより好ましい。いずれの活性エネルギー線を用いる場合であっても、その照射量としては、インキ組成物の硬化具合を見ながら適宜調整されることになる。
【0022】
本発明のインキ組成物の適用される版式は、特に限定されない。このような版式としては、オフセット印刷、水なしオフセット印刷、活版印刷、ゴム凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。なお、インキ組成物の粘度等といった性状は、適用される版式に応じて適宜設定すればよい。これらの中でも、本発明の適用される版式として、オフセット印刷、水なしオフセット印刷等が好ましく挙げられる。
【0023】
本発明のインキ組成物は、後述する(A1)、(A2)及び(A3)から選択される少なくとも1つである(A)成分と、同じく後述する(B1)及び/又は(B2)からなる(B)成分と、(A)成分及び(B)成分のいずれにも該当しないエチレン性不飽和結合を備えた化合物と、顔料と、を含み、(B)成分の含有量が全体の15質量%以上であることを特徴とする。なお、本発明のインキ組成物は、必ずしも光重合開始剤を含む必要はないが、これを含むものであってもよい。以下、各成分について説明する。
【0024】
[(A)成分]
(A)成分は、次に述べる(A1)、(A2)及び(A3)から選択される少なくとも1つであり、これらの選択の中から(A1)が単独で選択される場合にはさらに顔料分散剤を含むものである。本発明のインキ組成物がこうした(A)成分を含有することにより、当該インキ組成物における光重合開始剤の使用を削減しつつ、さらに、環境への配慮からジアリルフタレート樹脂の使用を削減しながらも、良好な流動性を備え、かつそれを用いて得た印刷物におけるドライダウンや耐スクラッチ性が得られる。以下、これら(A)成分について説明する。
【0025】
(A1)は、下記一般式(1)で表す、アリル系モノマーの重合体である。
【0026】
【化3】
【0027】
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。なお、本明細書において「それぞれ独立に」とは、それぞれが互いに関係なく独立に決定されるとの意味であり、互いに同一であってもよいし、互いに異なってもよい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。好ましい態様として、R及びRがともに水素原子であることを挙げることができるが、特に限定されない。
【0028】
上記一般式(1)において、nは、2又は3であり、Xは、4~8員環の脂肪環骨格からなるn価の基である。「4~8員環の脂肪環骨格からなるn価の基」とは、炭素数4~8の脂肪環を構成する炭素原子のうち、n個の炭素原子から他の基への結合手が生じてなるn価の基という意味である。脂肪環としては、炭素数4~8のシクロアルカン又はシクロアルケンが好ましく挙げられる。なお、Xは、分子内で架橋されていてもよく、分子内で架橋されたXの例としては、アダマンタン、ノルボルネン、ノルボルナン等が挙げられる。
【0029】
より具体的な態様として、Xとして下記一般式のいずれかで表す2価の基を好ましく挙げることができる。なお、この場合、上記一般式(1)におけるnは2となる。
【0030】
【化4】
【0031】
上記一般式で表すXの中でも、1,2-シクロヘキシレン基が特に好ましく挙げられる。この場合、シクロヘキサンの1位と2位が、上記一般式(1)の括弧部分で表す基で置換されることになる。
【0032】
上記一般式(1)で表すアリル系モノマーの好ましい例としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジアリル、2-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジアリル等を挙げることができる。これらの中でも、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジアリル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルがより好ましく挙げられ、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルがさらに好ましく挙げられる。
【0033】
上記一般式(1)で表すアリル系モノマーは、2又は3個のカルボキシ基を有する炭素数4~8のシクロアルカン又はシクロアルケンと、置換基R及びRを有するアリルアルコールとを脱水縮合させてエステル化することで得られる。なお、置換基R及びRがともに水素原子であるのが好ましいことは既に述べた通りである。
【0034】
また、上記一般式(1)で表すアリル系モノマーを重合させて重合体を得るには、このアリル系モノマーをラジカル重合開始剤により重合させればよい。このようなラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ開始剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等のイオウ系、ベンジル、9,10-フェナントレンキノン等のベンジル系の光重合開始剤が挙げられる。これら重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
重合開始剤の量としては、一般式(1)で表されるアリル系モノマー100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく挙げられ、3質量部以下であることがより好ましく挙げられ、0.001~3質量部であることがさらに好ましく挙げられる。重合時の反応温度としては、60~240℃程度が挙げられる。また、反応時間としては、0.1~100時間程度が挙げられる。
【0036】
なお、上記一般式(1)で表すアリル系モノマーを重合させて重合体を得るに際しては、単一のアリル系モノマーを用いたホモポリマーとしてもよいし、複数種のアリル系モノマーや他のモノマーを組み合わせたコポリマーとしてもよい。最も好ましい態様としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルのホモポリマーを挙げることができるが、特に限定されない。
【0037】
重合体の重量平均分子量としては、30万以下であることが好ましく挙げられ、20万以下であることがより好ましく挙げられ、2000~15万程度であることがさらに好ましく挙げられ、5000~14万であることが特に好ましく挙げられる。
【0038】
なお、このような重合体としては、上記のように合成したものを用いてもよいし、市販されているものを入手して用いてもよい。このような市販品としては、例えば株式会社大阪ソーダ製のものを挙げることができる。
【0039】
(A1)が単独で(A)成分として選択される場合、(A)成分にはさらに顔料分散剤が含まれる。すなわち、上記の通り、(A)成分は、(A1)と後述する(A2)及び(A3)成分とから選択される少なくとも1つであるが、これらの中から(A1)が単独で選択される場合には、さらに顔料分散剤が(A)成分として含まれる。なお、(A1)と、(A2)及び/又は(A3)とを組み合わせて用いる場合には、(A)成分として顔料分散剤が必ずしも含まれなくてよい。なお、この場合であっても、(A)成分として顔料分散剤が含まれることを妨げない。(A)成分として(A1)が単独で用いられる場合、インキ組成物における流動性が不足しがちとなるので、この流動性を補うために顔料分散剤がこれと併用される。
【0040】
顔料分散剤は、インキ組成物の顔料分散性を向上させるために用いられる成分であり、このような成分としては、これまでインキ組成物の分野で用いられてきたものを特に制限無く挙げることができる。顔料分散剤の一例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアクリル酸の部分脂肪酸エステル、アルキルアミン脂肪酸塩、アルキルジアミン等が挙げられるが、顔料に対する分散能力をもつものであればよく、特にはこれらに限られるものではない。このような顔料分散剤は市販されており、例えば、Lubrizol社製のSolsperse(製品名)シリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK(製品名)シリーズ、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパー(製品名)シリーズ、BASF社製のEFKA(製品名)シリーズ等を挙げることができる。
【0041】
インキ組成物中における顔料分散剤の含有量としては、0.5~5質量%が好ましく挙げられ、0.5~3質量%がより好ましく挙げられ、0.5~1.5質量%がさらに好ましく挙げられる。また、インキ組成物に含まれる顔料に対する顔料分散剤の添加量としては、顔料に対して1~20質量%が好ましく挙げられ、2~10質量%がより好ましく挙げられる。
【0042】
(A2)は、ロジン変性樹脂である。ロジン変性樹脂は、ロジン類を変性して調製された樹脂である。このようなロジン類としては、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられ、さらには、これらのロジンを不均化することによって得られる不均化ロジン、二量化又はそれ以上に重合させることで得られる重合ロジン、水素添加することによって得られる水添ロジン、ロジンを部分的にマレイン化及び/又はフマル化することなどによって変性した変性ロジン等が挙げられる。なお、ロジンのマレイン化には無水マレイン酸が用いられ、またロジンのフマル化にはフマル酸が用いられる。ロジンへの無水マレイン酸及び/又はフマル酸の付加反応は公知の方法で行うことができる。例えば、原料ロジンを加熱溶融し、これに無水マレイン酸及び/又はフマル酸を添加することにより実施できる。また反応は加圧下又は常圧下のいずれで行ってもよい。
【0043】
ロジン変性樹脂としては、ロジンに基づく単量体構造を有するものであればよく、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂(マレイン化ロジンポリエステル)、ロジン変性フマル酸樹脂(フマル化ロジンポリエステル)、ロジン変性フタル酸樹脂(フタル化ロジンポリエスエル)、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性石油樹脂等が例示される。これらのロジン変性樹脂は、いずれも市販されており、容易に入手することが可能である。このような市販品の一例としては、ハリマ化成株式会社製のハートールR-WW、ハリタックAQ-90A、ハリマックT-80、荒川化学工業株式会社製中国ロジンWW、マルキード382等が挙げられる。ロジン変性樹脂としては、このような市販のものを用いてもよいし、公知の手段で合成したものを用いてもよい。
【0044】
ロジン変性樹脂の重量平均分子量としては1000以上10万以下が好ましく挙げられる。ロジン変性樹脂の重量平均分子量が1000以上であることにより、顔料の分散性に優れ、インキ組成物に良好な粘弾性を付与することができるので好ましく、10万以下であることにより、溶解性が良好でハンドリングに優れるので好ましい。より好ましいロジン変性樹脂の重量平均分子量としては5000以上7万以下程度を挙げることができる。
【0045】
これらの中で、好ましく用いられるロジン変性ポリエステル樹脂としては、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体を好ましく挙げられる。ロジン変性ポリエステル樹脂の酸価としては、1~50mgKOH/g程度が好ましく挙げられる。酸価が50mgKOH以下であることにより、このロジン変性ポリエステル樹脂を適用したオフセット印刷用インキ組成物における異常乳化等のトラブルの発生を抑制することができる。この酸価は、1~25mgKOHであることが好ましく、1~10mgKOHであることがより好ましい。
【0046】
上記のようにロジン変性ポリエステル樹脂としては、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体を好ましく挙げられる。次に、これらの成分について説明する。
【0047】
樹脂酸は、ロジン類に含まれるアビエチン酸及びその異性体、並びにそれらの誘導体を指す。ロジン類は、松科の植物から採集される松脂の不揮発性の成分であり、アビエチン酸及びその異性体を主成分とする。アビエチン酸及びその異性体としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられ、これらはいずれもカルボキシ基を有し、後述する多価アルコールとエステルを形成することができる。ロジン変性ポリエステル樹脂にこうした樹脂酸が導入されることにより、顔料に対する親和性を向上させることができるとともに、得られるロジン変性ポリエステル樹脂におけるバイオマス由来の成分比率を高めることができる。
【0048】
上記のアビエチン酸及びその異性体にはカルボキシル基が一つしか含まれないが、これを変性することにより複数のカルボキシル基を導入することができる。例えば、アビエチン酸はtrans-ジエン化合物であるが、これを加熱するとcis-ジエン化合物へ異性化させることができる。こうして得られたcis-ジエン化合物と、マレイン酸や1,2-シクロヘキセンジカルボン酸等のような複数のカルボキシル基を有するジエノフィル化合物とをディールスアルダー反応させることによって、アビエチン酸骨格に複数のカルボキシル基を導入することができる。また、複数分子のアビエチン酸又はその異性体を重合させることにより重合ロジンが合成されるが、こうした化合物も複数のカルボキシル基を有するものである。上記アビエチン酸及びその異性体の誘導体とはこうした化合物を指すものである。
【0049】
ロジン類は樹脂酸を主成分とするものであるので、上記樹脂酸に代えてロジン類そのものを用いてもよい。ロジン類は、製造方法やその後の化学処理等の違いから複数の種類が知られているが、いずれのロジン類を用いてもよい。このようなロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン等が挙げられる。また、ロジン類に対して、上記のようなディールスアルダー反応により変性を行ってもよい。なお、保存安定性の観点からは、共役二重結合を化学的に有さないか少ないロジン類を用いることが好ましい。このようなロジン類としては不均化ロジン、水添ロジンを挙げることができる。もっとも、共役二重結合を有するロジン類も合成された樹脂の保存安定性の面でやや劣るものの、問題無く使用することが可能である。
【0050】
脂肪酸は、植物油や動物油のような天然油脂を加水分解することにより得られるものであり、1個のカルボキシル基を有するので、後述する多価アルコールとエステルを形成することができる。ロジン変性ポリエステル樹脂にこうした脂肪酸が導入されることにより、得られるロジン変性ポリエステル樹脂におけるバイオマス由来の成分比率を高めることができる。このような観点から、樹脂全体の質量に対する脂肪酸部分の質量の割合(質量%)である油長が30~85程度になるような量の脂肪酸を用いることが好ましく、50~85程度になるような量の脂肪酸を用いることがより好ましい。
【0051】
脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸等を挙げることができる。ところで、脂肪酸はカルボキシル基を有し、比較的sp値の高い化合物ということができる。それら脂肪酸の中でも炭素数が少ないほどsp値が高くなる傾向があり、そのような観点から本発明では、炭素数が8~16である脂肪酸を好ましく用いることができ、炭素数が8~14である脂肪酸をより好ましく用いることができる。また、脂肪酸は、不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であってもよいが、変質による着色等を避ける観点からは、分子内に含まれる不飽和結合の数が1以下のものが好ましく用いられる。なお、オレイン酸、リノール酸、エレオステアリンサン酸等のような不飽和結合の数が2以上の脂肪酸については、酸化処理により二重結合部分がエポキシ化されて消去されたものを使用することが望ましい。このような変性脂肪酸も本発明における脂肪酸として用いることができる。これら脂肪酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
多塩基酸は、複数のカルボキシル基を有する化合物であり、後述する多価アルコールと縮重合して高分子量化させるための成分である。複数のカルボキシル基を有する化合物としては、アルキッド樹脂の合成に用いられてきたものを制限なく用いることができ、2又は3以上のカルボキシル基を備え、又はこれらの酸無水物であってもよい。
【0053】
このような化合物としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキセンジカルボン酸、1,4-シクロヘキセンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5-ソディオスルホイソフタル酸、フマル酸、安息香酸、tert-ブチル安息香酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、セバシン酸、アゼライン酸、テトラブロム無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラクロロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
多価アルコールは、既に説明した、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分とエステルを形成させ、これらの成分を高分子量化するものである。多価アルコールとしては、これまでアルキッド樹脂の合成に用いられてきたものを制限なく用いることができ、2又は3以上の水酸基を備える化合物が挙げられる。
【0055】
このような化合物としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-メチルプロパンジオール1,3、3-メチルペンタンジオール1,5、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9-ノナンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、アダマンタンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
ロジン変性ポリエステル樹脂の分子量を調節するために、脂肪酸以外の一塩基酸を酸成分として加えてもよい。このような一塩基酸としては、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。
【0057】
次に、これらを用いてロジン変性ポリエステル樹脂を調製する方法について説明する。ロジン変性ポリエステル樹脂は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとを反応させることで調製される。反応手順としては、これらの原料を仕込んだ反応釜に、窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態でキシレン等の溶剤を少量加えて加熱を行い、縮合水と共沸させて水を除きながら縮重合させる方法を挙げることができる。反応温度としては170~250℃程度を挙げることができ、反応時間としては5~25時間程度を挙げることができるが特に限定されない。反応終了の判断は、反応時間の経過に応じて反応混合物の酸価をモニターすることで行うことができる。すなわち、縮重合に伴う反応混合物の酸価の低下が止まった時点で反応終了とすればよい。縮重合反応は、縮重合によって生じた水を系外に留出させるか反応触媒を用いることで、より短時間で行うことができる。反応触媒としては、テトラブチルジルコネート、モノブチルチンオキサイド(モノブチルすずオキサイド)、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート等を挙げることができる。
【0058】
(A3)は、テルペンモノマー骨格含有樹脂である。テルペンモノマー骨格含有樹脂は、その構造中にテルペン由来の構造を備えた樹脂であり、そのような樹脂としては、テルペンモノマーのみを重合して調製されたテルペン樹脂や、テルペンモノマーに他のモノマー成分を組み合わせて重合した各種の樹脂等が挙げられる。
【0059】
テルペンモノマーは、テルペン化合物とも呼ばれるものであり、分子中に不飽和結合を備えるので、それ自身単独で又は他のモノマーとともに重合してポリマーを形成することができる。このようなテルペンモノマーとしては、α-ピネン、β-ピネン、カレン、α-テルピネン、ν-テルピネン、d-リモネン、ジペンテン、ターピノーレン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、パラメンタジエン類、ピロネン、カンフェン、アロオシメン、ミルセンなどを用いることができる。好ましくはd-リモネン、ジペンテン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、α-テルピネン等が挙げられる。テルペンモノマーは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
テルペンモノマーに組み合わせて用いることのできる他のモノマー成分としては、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、及び不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、フェノール類、アクリレート類、スチレン等のビニル化合物等が挙げられる。これらのモノマー成分は、ディールスアルダー反応等のような環化付加反応や、ラジカル重合反応、カチオン重合反応等によりテルペンモノマーとともに重合する。なお、上記不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0061】
テルペンモノマー骨格含有樹脂の一例としては、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。これらは、各種のものが市販されており、例えばヤスハラケミカル株式会社製のものや荒川化学工業株式会社製のもの等が入手できる。
【0062】
テルペンモノマー骨格含有樹脂の重量平均分子量としては、1000以上10万以下が好ましく挙げられる。テルペンモノマー骨格含有樹脂の重量平均分子量が1000以上であることにより、顔料の分散性に優れ、インキ組成物に良好な粘弾性を付与することができるので好ましく、10万以下であることにより、溶解性が良好でハンドリングに優れるので好ましい。より好ましいテルペンモノマー骨格含有樹脂の重量平均分子量としては5000以上7万以下程度を挙げることができる。
【0063】
インキ組成物中における(A)成分の含有量としては、5~40質量%が好ましく挙げられ、5~30質量%がより好ましく挙げられ、5~20質量%がさらに好ましく挙げられ、5~15質量%が特に好ましく挙げられる。
【0064】
[(B)成分]
(B)成分は、次に述べる(B1)及び/又は(B2)からなる。(B)成分は、活性エネルギー線の照射により増感作用やラジカル生成能を備えるとともに、それ自体がエチレン性不飽和結合を備えて重合性を有する化合物又は化合物群である。通常の光重合開始剤を用いた場合、この分子が開裂してラジカルを生成した際に生じる開裂断片(低分子化合物)がインキ組成物の硬化した硬化皮膜の中に残留しつつ徐々に皮膜中から外部へ放出されるので、臭気発生やマイグレーションの原因となる。一方、本発明で用いる(B)成分では、ラジカルを生成した後に残る開裂断片がエチレン性不飽和結合を備えるので、モノマーやオリゴマー等の成分とともに高分子量化されてポリマー化する。この場合、開裂断片はポリマー中に存在することになるので硬化皮膜中から外部に放出されることがなく、臭気の発生やマイグレーションが抑制されることになる。以下、これら(B)成分について説明する。
【0065】
(B1)は、アミン官能基を備えたモノマー及び/又はオリゴマーである。ここでいうアミン官能基とは、1~3級のアミノ基であり、好ましくは3級アミノ基である。すなわち、アミン官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、1~3級のアミノ基が付加されたモノマー又はオリゴマーである。アミン官能基を有するモノマー又はオリゴマーとしては、アミン変性モノマー又はオリゴマーが挙げられ、具体的には、アミノアクリレートモノマー、アミノメタクリレートモノマー、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミン変性ポリエステルメタクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性ポリエーテルメタクリレート、ポリウレタンアクリレート等が挙げられる。アミン変性オリゴマーは、例えば、1級アミンとアクリレートとのマイケル付加反応によって得られる。アミン官能基を備えたモノマー及び/又はオリゴマーは、活性エネルギー線の照射を受けた際にラジカルを生成させる。
【0066】
アミン変性オリゴマーとしては、例えばダイセル・オルネクス社製のEBECRYL LEO10101、EBECRYL80、EBECRYL81、EBECRYL83、EBECRYL7100、エターナル社製のETERCURE63922、SARTOMER社製のCN549NS、CN550、CN551NS、MIWON社製のPHOTOCRYL A104、Miramer AS1000、DSM社製のAgiSyn701、AgiSyn701P、AgiSyn703、AgiSyn703TF等が挙げられる。
【0067】
(B2)は、アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーと、アミン官能基を備えたポリエーテルアクリレートと、の両方である。すなわち、(B2)には、これら両方が含まれる。
【0068】
アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーは、光重合開始剤としての性質とモノマー又はオリゴマーとしての性質とを併せ持つので、活性エネルギー線の照射に伴う自己硬化性を備える。なお、自己硬化性を備えるとは、光重合開始剤無しで硬化できる性質を備えるとの意味である。
【0069】
アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーとしては、アリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備える限りにおいて特に限定されるものではないが、これらの骨格を分子中に備えたポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート又はポリウレタンアクリレートが挙げられる。
【0070】
アリールケトン骨格としては、下記一般式(2)で表す骨格が挙げられる。Rがアリール基であるアリールケトン骨格には、ベンゾフェノン骨格、ベンゾフェノン誘導体骨格、チオキサントン骨格、チオキサントン誘導体骨格、アントラキノン骨格又はアントラキノン誘導体骨格が含まれる。アルキルアリールケトン骨格は、下記一般式(2)で表す骨格において、Rがアルキル基である骨格である。
【0071】
【化5】
【0072】
ベンゾフェノン骨格は、置換基を有してもよい。このような置換基は、ベンゾフェノン骨格のベンゼン環の炭素原子に結合している水素原子が、他の置換基に置換されたものとなる。置換基としては、限定されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子を含む炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子(例えば、=O)が挙げられる。ベンゾフェノン誘導体骨格としては、例えばベンゼン環の1又は2の炭素原子がヘテロ分子に置換されたものが挙げられる。ヘテロ分子としては、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子が挙げられる。
【0073】
チオキサントン骨格は、置換基を有してもよい。このような置換基は、チオキサントン骨格のベンゼン環の炭素原子に結合している水素原子が、他の置換基に置換されたものとなる。置換基としては、限定されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子を含む炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子(例えば、=O)が挙げられる。チオキサントン誘導体骨格としては、例えばベンゼン環の1又は2の炭素原子がヘテロ原子に置換されたものが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子が挙げられる。
【0074】
アントラキノン骨格は、置換基を有してもよい。このような置換基は、アントラキノン骨格のベンゼン環の炭素原子に結合している水素原子が、他の置換基に置換されたものとなる。置換基としては、限定されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子を含む炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子(例えば、=O)が挙げられる。アントラキノン誘導体骨格としては、例えばベンゼン環の1又は2の炭素原子がヘテロ原子に置換されたものが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子が挙げられる。
【0075】
アルキルアリールケトン骨格におけるアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数3~8のシクロアルキル基が挙げられる。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。炭素数3~8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基が挙げられる。アルキルアリールケトン骨格は、置換基を有してもよい。このような置換基は、アルキルアリールケトン骨格のベンゼン環基の炭素原子に結合している水素原子が、他の置換基に置換されたものとなる。置換基としては、限定されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子を含む炭素数1~6のアルキル基、ヘテロ原子(例えば、=O)が挙げられる。
【0076】
アミン官能基を持たずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を備えたモノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えばダイセル・オルネクス社製のEBECRYL LEO10103等が挙げられる。
【0077】
アミン官能基を備えたポリエーテルアクリレートは、上述のアミン官能基を備えたポリエーテルアクリレートである。このようなポリエーテルアクリレートとしては、例えばダイセル・オルネクス社製のEBECRYL LEO10551等が挙げられる。
【0078】
インキ組成物中における(B)成分の含有量は、15質量%以上である。この含有量としては、15~40質量%が好ましく挙げられ、15~30質量%がより好ましく挙げられ、15~20質量%がさらに好ましく挙げられる。
【0079】
[エチレン性不飽和結合を備えた化合物]
本発明のインキ組成物は、上記(A)成分及び(B)成分のいずれにも該当しないエチレン性不飽和結合を含む。上記(A)成分及び(B)成分として選択されるものの中にもエチレン性不飽和結合を持つものが存在するが、ここで用いられるエチレン性不飽和結合を備えた化合物としては、(A)成分及び(B)成分として選択されるものとは異なるものが用いられる。
【0080】
エチレン性不飽和結合を備えた化合物は、インキ組成物中に生じたラジカルによって重合して高分子量化する成分であり、モノマーやオリゴマー等と呼ばれる成分である。また、オリゴマーよりもさらに高分子量であるポリマーについてもエチレン性不飽和結合を備えたものが各種市販されている。このようなポリマーも上記モノマーやオリゴマーによって、又は当該ポリマー同士によって架橋されて高分子量化することができる。そこで、こうしたポリマーを、上記モノマーやオリゴマーとともにエチレン性不飽和結合を備えた化合物として用いてもよい。なお、既に述べたように、このようなラジカルは、活性エネルギー線の照射を受けた際に上記(B)成分より生じるものである。
【0081】
モノマーは、エチレン性不飽和結合を有し、上記のように重合して高分子量化する成分であるが、重合する前の状態では比較的低分子量の液体成分であることが多く、樹脂成分を溶解させてワニスとする際の溶媒とされたり、インキ組成物の粘度を調節したりする目的にも用いられる。モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ備える単官能モノマーや、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上備える2官能以上のモノマーが挙げられる。2官能以上のモノマーは、インキ組成物が硬化するのに際して分子と分子とを架橋することができるので、硬化速度を速めたり、強固な皮膜を形成させたりするのに寄与する。単官能のモノマーは、上記のような架橋能力を持たない反面、架橋に伴う硬化収縮を低減させるのに寄与する。これらのモノマーは、必要に応じて各種のものを組み合わせて用いることができる。
【0082】
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキルアクリレート、(メタ)アクリル酸、エチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、アクリオロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等を挙げることができる。これらの単官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0083】
2官能以上のモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;3官能)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Di-TMPTA;4官能)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;6官能)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA;3官能)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA;2官能)等を好ましく挙げることができる。これらの2官能以上のモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
また、モノマーの一種として、エポキシ化植物油をアクリル変性することにより得られるエポキシ化植物油アクリレートがある。これは、不飽和植物油の二重結合に過酢酸、過安息香酸等の酸化剤でエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を開環付加させた化合物である。不飽和植物油とは、少なくとも1つの脂肪酸が炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するトリグリセリドのことであり、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等が例示される。この種のモノマーは、植物油を由来とするものなので、インキ組成物におけるバイオマス成分量を増加させるのに役立つ。エポキシ化植物油アクリレートは、各種のものが市販されているのでそれを用いてもよい。
【0085】
オリゴマーは、上記のように重合して高分子量化する成分であるが、もともとが比較的高分子量の成分であるので、インキ組成物に適度な粘性や弾性を付与する目的にも用いられる。オリゴマーとしては、エポキシ樹脂等といったエポキシ化合物に含まれるエポキシ基を酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるエポキシ変性(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシアクリレート、二塩基酸とジオールとの縮重合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル化合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエーテル変性(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合物における末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるウレタン変性(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このようなオリゴマーは市販されており、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYLシリーズ、SARTOMER社製のCN、SRシリーズ、東亜合成株式会社製のアロニックスM-6000シリーズ、7000シリーズ、8000シリーズ、アロニックスM-1100、アロニックスM-1200、アロニックスM-1600、新中村化学工業株式会社製のNKオリゴ等の製品名で入手することができる。これらのオリゴマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
エチレン性不飽和結合を備えたポリマーは、上述のモノマーやオリゴマーとともに高分子量化する成分であり、活性エネルギー線が照射される前から大きな分子量を備えているので、インキ組成物の粘弾性の向上に役立つ成分である。このようなポリマーは、例えば、低粘度の液体であるモノマー中に溶解又は分散された状態で用いられる。エチレン性不飽和結合を備えたポリマーとしては、未反応の不飽和基を備えたアクリル樹脂、アクリル変性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0087】
インキ組成物中における、上記(A)成分及び(B)成分のいずれにも該当しないエチレン性不飽和結合を備えた化合物の含有量は、5~40質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。上記(A)成分及び(B)成分のいずれにも該当しないエチレン性不飽和結合を備えた化合物の含有量が上記の範囲であることにより、良好な硬化性と良好な印刷適性とを両立できる。また、エチレン性不飽和結合を備えたポリマーの含有量としては、0~50質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~20質量%がさらに好ましい。ポリマーの含有量が上記の範囲であることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与してミスチング等の発生を抑制できるとともに、インキ組成物の良好な硬化性を確保することができるので好ましい。
【0088】
[顔料]
顔料は、本発明のインキ組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり、着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような顔料としては、従来からインキ組成物に使用されている有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
【0089】
顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が例示される。
【0090】
顔料の含有量としては、インキ組成物の全体に対して1~30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、着色されたインキ組成物を調製する場合、補色として他の色の着色成分を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
【0091】
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、上記の各成分に加えて、必要に応じて他の成分を添加することができる。そのような成分としては、体質顔料、重合禁止剤、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類等が挙げられる。
【0092】
体質顔料は、インキ組成物に適度な印刷適性や粘弾性等の特性を付与するための成分であり、インキ組成物の調製において通常用いられる各種のものを用いることができる。このような体質顔料としては、クレー、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、ベントナイト、タルク、マイカ、酸化チタン等が例示される。こうした体質顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0~33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
【0093】
重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等を好ましく例示することができ、中でもブチルヒドロキシトルエンをより好ましく例示することができる。インキ組成物にこのような重合禁止剤が添加されることにより、保存時に重合反応が進行してインキ組成物が増粘するのを抑制できる。インキ組成物中の重合禁止剤の含有量としては、0.01~1質量%程度を例示することができる。
【0094】
上記の各成分を用いて本発明のインキ組成物を製造するには、従来公知の方法を適用できる。このような方法としては、上記の各成分を混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉して顔料(すなわち着色成分及び体質顔料)を分散させた後、必要に応じて添加剤(重合禁止剤、アルコール類、ワックス類等)を加え、さらに上記モノマー成分や油成分の添加により粘度調整することが例示される。インキ組成物における粘度としては、例えばオフセット印刷用である場合には、ラレー粘度計による25℃での値が10~70Pa・sであることを例示できるが、特に限定されない。
【実施例0095】
以下、実施例を示すことでさらに具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
[ロジン変性ポリエステル樹脂Aの調製]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、エポキシ化大豆油125質量部、不均化ロジン(富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名:「デヒドロアビエチン酸」、酸価136mgKOH/g)375質量部、トリフェニルホスフィン1.5質量部、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸25質量部、及びグリセリン25質量部を入れ、窒素雰囲気下で、200℃で5時間反応させ縮重合(脱水縮合)反応を行うことで、ロジン変性ポリエステル樹脂Aを調製した。得られたロジン変性ポリエステル樹脂Aは、重量平均分子量が35000であり、酸価が3.5mgKOH/gだった。
【0097】
[ロジン変性ポリエステル樹脂Bの調製]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油脂肪酸125質量部、不均化ロジン(富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名:「デヒドロアビエチン酸」、酸価136mgKOH/g)375質量部、トリフェニルホスフィン1.5質量部、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸25質量部、及びグリセリン25質量部を入れ、窒素雰囲気下で、200℃で5時間反応させ縮重合(脱水縮合)反応を行うことで、ロジン変性ポリエステル樹脂Bを調製した。得られたロジン変性ポリエステル樹脂Bは、重量平均分子量が25000であり、酸価が3.0mgKOH/gだった。
【0098】
[ワニス1の調製]
冷却管、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルの重合体(株式会社大阪ソーダ製、製品名:RADPAR-AD032)30質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)69.4質量部、及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.2質量部を仕込んだ後、内容物を140℃に昇温し、その温度を50分間維持することにより樹脂を溶解させた。次いで、反応容器内へアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート(ALCH、川研ファインケミカル株式会社製)0.4質量部を仕込み、内容物を170℃に昇温し、その温度を60分間維持することでゲル化させ、ワニス1を得た。ワニス1は、上記一般式(1)で表すアリル系モノマーの重合体、すなわち上記(A1)を含むワニスである。
【0099】
[ワニス2の調製]
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルの重合体に代えてイソフタル酸ジアリルの重合体(株式会社大阪ソーダ製、製品名:ダイソーイソダップ)を用いたことを除き、ワニス1と同様の手順にてワニス2を得た。ワニス2は、ジアリルフタレート樹脂を含むワニスである。
【0100】
[ワニス3の調製]
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルの重合体に代えてフタル酸ジアリルの重合体(株式会社大阪ソーダ製、製品名:ダイソーダップA)を用いたことを除き、ワニス1と同様の手順にてワニス3を得た。ワニス3は、ジアリルフタレート樹脂を含むワニスである。
【0101】
[ワニスAの調製]
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルの重合体に代えてロジン変性ポリエステル樹脂Aを用いたことを除き、ワニス1と同様の手順にてワニスAを得た。ワニスAは、ロジン変性樹脂、すなわち上記(A2)を含むワニスである。
【0102】
[ワニスBの調製]
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルの重合体に代えてロジン変性ポリエステル樹脂Bを用いたことを除き、ワニス1と同様の手順にてワニスBを得た。ワニスBは、ロジン変性樹脂、すなわち上記(A2)を含むワニスである。
【0103】
[ワニスCの調製]
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルの重合体に代えてテルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、製品名:YSレジン PX1000)を用いたことを除き、ワニス1と同様の手順にてワニスCを得た。ワニスCは、テルペンモノマー骨格含有樹脂、すなわち上記(A3)を含むワニスである。
【0104】
表1~3に記載の配合にて各成分を混合し、ロール温度40℃の3本ロールミルを用いて粒度が5.0μm以下になるまで練肉し、必要に応じてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)5質量部を添加して粘度が40Pa・s付近となるように調節して、実施例1~19及び比較例1~7のインキ組成物のそれぞれを調製した。なお、表1~3における配合量は、質量部である。
【0105】
なお、表1~3に記載した各材料についての説明は、次の通りである。
黒色顔料:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、製品名:MA-70)
黄色顔料:ピグメントイエロー13(クラリアントケミカルズ株式会社製,製品名:BHS)
紅色顔料:ピグメントレッド57:1(クラリアントケミカルズ株式会社製,製品名:L5B)
藍色顔料:銅フタロシアニン顔料(DIC株式会社製、製品名:FASTOGEN Blue FDB13)
(B1):アミン官能基を有するオリゴマー(ダイセル・オルネクス株式会社製、製品名:EBECRYL LEO10101;上記(B1)に相当する)
(B2a):アミン官能基を有さずアリールケトン骨格又はアルキルアリールケトン骨格を有する自己硬化性光重合性オリゴマー(ダイセル・オルネクス株式会社製、製品名:EBECRYL LEO10103;下記(B2b)と組み合わせたものが上記(B2)に相当する)
(B2b):アミン官能基を有するポリエーテルアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製、製品名:EBECRYL LEO10551;上記(B2a)と組み合わせたものが上記(B2)に相当する)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
顔料分散剤:くし型構造の塩基性分散剤(Lubrizol社製、製品名:Solsperse39000)
ワックス:ポリエチレンワックス(森村ケミカル株式会社製、製品名:NJ-100)
【0106】
[流動性評価]
各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、スプレッドメーターにてフロー値を測定し、フロー傾斜(スロープ)値として流動性を調べた。なお、フロー傾斜値とは、スプレッドメーターで100秒後の広がり直径をmm単位で計った数値から、10秒後の広がり直径をmm単位で計った数値を差し引いた数値であり、この値が大きいほど流動性が良好となる。評価基準は下記の通りとし、その結果を表1~3の「流動性」欄に示した。
○:フロー傾斜値が4.0以上である
△:フロー傾斜値が2.0以上4.0未満である
×:フロー傾斜値が2.0未満である
【0107】
[ドライダウン評価1]
オゾンレス紫外線ランプを使用して乾燥させたときのドライダウン評価を行った。まず、各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、インキ組成物の試料0.1ccをとりRI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いてオーロラコート紙に展色し、直ちに紫外線照射(アイグラフィックス社製オゾンレスUVランプ、120W/cm、ランプ直下通過速度及び回数:130m/分、1パス)を行い、印刷物を作製した。この印刷物の作製直後の濃度を測定した後に、室内で24時間放置してから再度濃度を測定した。そして、展色直後の濃度値から24時間経過後の濃度値を差し引いたものをドライダウン値とした。評価基準は下記の通りとし、その結果を表1~3の「ドライダウン1」欄に記載した。なお、印刷物の濃度の測定には、Gretagmacbeth社製のSpectroeye濃度計を用いた。
○:ドライダウン値が-0.2以上である(濃度低下が0.2以下である)
×:ドライダウン値が-0.2未満である(濃度低下が0.2よりも大きい)
【0108】
[ドライダウン評価2]
高圧水銀ランプを使用して乾燥させたときのドライダウン評価を行った。まず、各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、インキ組成物の試料0.1ccをとりRI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いてオーロラコート紙に展色し、直ちに紫外線照射(アイグラフィックス社製高圧水銀ランプ、120W/cm、ランプ直下通過速度及び回数:130m/分、3パス)を行い、印刷物を作製した。この印刷物の作製直後の濃度を測定した後に、室内で24時間放置してから再度濃度を測定した。そして、展色直後の濃度値から24時間経過後の濃度値を差し引いたものをドライダウン値とした。評価基準は下記の通りとし、その結果を表1~3の「ドライダウン2」欄に記載した。なお、印刷物の濃度の測定には、Gretagmacbeth社製のSpectroeye濃度計を用いた。
○:ドライダウン値が-0.2以上である(濃度低下が0.2以下である)
×:ドライダウン値が-0.2未満である(濃度低下が0.2よりも大きい)
【0109】
[耐スクラッチ評価1]
オゾンレス紫外線ランプを使用して乾燥させたときの耐スクラッチ評価を行った。まず、各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、インキ組成物の試料0.1ccをとりRI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いてオーロラコート紙に展色し、直ちに紫外線照射(アイグラフィックス社製オゾンレスUVランプ、120W/cm、ランプ直下通過速度及び回数:130m/分、1パス)を行い、印刷物を作製した。この印刷物の塗膜を爪で擦ることで塗膜が剥がれるまでに要した擦り回数を調べた。評価基準は下記の通りとし、その結果を表1~3の「耐スクラッチ1」欄に記載した。
○:10回擦っても塗膜が剥がれない
△:6~9回擦ると塗膜が剥がれた
×:1~5回擦ると塗膜が剥がれた
【0110】
[耐スクラッチ評価2]
高圧水銀ランプを使用して乾燥させたときの耐スクラッチ評価を行った。まず、各実施例及び比較例のインキ組成物のそれぞれについて、インキ組成物の試料0.1ccをとりRI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いてオーロラコート紙に展色し、直ちに紫外線照射(アイグラフィックス社製高圧水銀ランプ、120W/cm、ランプ直下通過速度及び回数:130m/分、3パス)を行い、印刷物を作製した。この印刷物の塗膜を爪で擦ることで塗膜が剥がれるまでに要した擦り回数を調べた。評価基準は下記の通りとし、その結果を表1~3の「耐スクラッチ2」欄に記載した。
○:10回擦っても塗膜が剥がれない
△:6~9回擦ると塗膜が剥がれた
×:1~5回擦ると塗膜が剥がれた
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
表1~3に記載した各実施例及び比較例を対比すると、本発明のインキ組成物が、ジアリルフタレート樹脂を用いずとも、また光重合開始剤を使用せずとも良好な特性を備えることが理解できる。