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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022827
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ロボットアーム、及び、飛行ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20240214BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240214BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20240214BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240214BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B25J5/00 E
B25J13/08
B64C13/18 Z
B64C27/08
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126193
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 純
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典真
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 雅樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707BT14
3C707CS08
3C707CU02
3C707CX01
3C707HS27
3C707KS03
3C707KS20
3C707KS36
3C707KT03
3C707KT05
3C707KX10
3C707LT06
3C707WA26
(57)【要約】
【課題】飛行ロボット等への取付自由度を確保しつつ、正確且つ効率的な作業の実現に寄与することができるロボットアーム及びロボットアームを備えた飛行ロボットを提供する。
【解決手段】本発明のロボットアームでは、制御部が、飛行ロボットの姿勢を検出する第1のセンサの検出信号に基づいて、第2の駆動モジュールを制御することにより、飛行ロボットの姿勢変化を第2の駆動モジュールに吸収させる。また、制御部は、エンドエフェクタに対する作業対象の位置を検出する第2のセンサの検出信号に基づいて、第1の駆動モジュールを制御することにより、エンドエフェクタの位置変化を第1の駆動モジュールに吸収させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行ロボットに取り付けられるロボットアームであって、
先端部がエンドエフェクタに接続されるシャフトと、
前記シャフトを支持しつつ、前記シャフトの姿勢を変更する第1の駆動モジュールと、
前記第1の駆動モジュールを支持するように前記飛行ロボットに取り付けられ、前記飛行ロボットに対する前記第1の駆動モジュールの相対的な姿勢を変更する第2の駆動モジュールと、
前記飛行ロボットの姿勢を検出する第1のセンサと、
前記エンドエフェクタに対する作業対象の位置を検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサの検出信号に基づいて前記第2の駆動モジュールを制御することと、前記第2のセンサの検出信号に基づいて前記第1の駆動モジュールを制御することと、を実行する制御部と、
を備える、ロボットアーム。
【請求項2】
前記第2の駆動モジュールは、前記第1の駆動モジュールを前記飛行ロボットのロール軸と平行な軸周りに回転させる第1のアクチュエータと、前記第1の駆動モジュールを前記飛行ロボットのピッチ軸と平行な軸周りに回転させる第2のアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、ロール軸周りの前記飛行ロボットの回転方向と逆向きに前記第1の駆動モジュールが回転するように前記第1のアクチュエータを制御すること、およびまたは、ピッチ軸周りの前記飛行ロボットの回転方向と逆向きに前記第1の駆動モジュールが回転するように前記第2のアクチュエータを制御すること、を前記第1のセンサの検出信号に基づいて実行する、
請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項3】
前記第1の駆動モジュールは、前記シャフトを前記飛行ロボットのヨー軸と平行な軸周りに回転させる第3のアクチュエータと、前記シャフトを前記飛行ロボットのピッチ軸と平行な軸周りに回転させる第4のアクチュエータと、を含み、
前記制御部は、ヨー軸と平行な軸周りにおける前記エンドエフェクタの角度偏差をなくす方向に前記シャフトが回転するように前記第3のアクチュエータを制御すること、およびまたは、ピッチ軸と平行な軸周りにおける前記エンドエフェクタの角度偏差をなくす方向に前記シャフトが回転するように前記第4のアクチュエータを制御すること、を前記第2のセンサの検出信号に基づいて実行する、
請求項2に記載のロボットアーム。
【請求項4】
前記第1の駆動モジュールは、前記シャフトを軸方向に伸縮させる機構を含む、
請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項5】
前記シャフトは、
前記エンドエフェクタを、前記飛行ロボットのピッチ軸と平行な軸周りに回転させる第5のアクチュエータと、
前記エンドエフェクタを、前記飛行ロボットのヨー軸と平行な軸周りに回転させる第6のアクチュエータと、
を含み、
前記制御部は、前記作業対象に対する前記エンドエフェクタの相対的な姿勢が所定の姿勢となるように、前記第5のアクチュエータおよびまたは前記第6のアクチュエータを制御する、
請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のロボットアームが取り付けられる、飛行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム、及び、飛行ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高所等での作業に利用される、無人ヘリコプタ又はドローン等の無人飛行体の開発が進められている。このような無人飛行体には、先端部にエンドエフェクタを備えた作業用のロボットアームが取り付けられる場合がある。作業用のロボットアームとしては、無人飛行体のピッチ軸と平行な軸周りに回転する関節を複数備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6371959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業用のロボットアームを備えた無人飛行体(以下、「飛行ロボット」と記す場合もある。)を利用して、高所等に設置されている機器等の作業対象に対する点検や保守等の作業を行う場合、飛行ロボットをホバリングさせつつ、エンドエフェクタを作業対象に接触させる必要がある。
【0005】
ところで、ホバリング状態の飛行ロボットに対しては、風や気流等の外乱が作用する。これにより、飛行ロボットの姿勢変化(例えば、ローリング又はピッチング等)が発生する可能性がある。また、エンドエフェクタの作業には、作業対象と飛行ロボットとの相対位置、及びロボットアームの2つの要素が複合的に作用する。よって、外乱による飛行ロボットの姿勢変化等が発生した場合には、飛行ロボットの操縦者に対し、飛行ロボットの機体操作とロボットアームの操作とを含む複雑な操作が求められる可能性がある。特に、鉄塔等の構造物近傍では、飛行ロボットの安定飛行に用いられるコンパスやGNSS(Global Navigation Satellite System)等の利用が困難な場合も多く、より一層高い技能が操縦者に求められる可能性がある。その結果、正確且つ効率的な作業を行うことが困難になったり、ロボットアームや飛行ロボットの普及が妨げられたりする可能性がある。
【0006】
これに対し、作業対象の周囲にある壁面等に吸着する機構を、飛行ロボットに取り付けることで、飛行ロボットの姿勢変化及び位置変化を抑制する方法が考えられる。或いは、作業対象の周囲にある壁面等に接触する機構を飛行ロボットに取り付けるとともに、当該機構を壁面等に押し付けるように飛行ロボットを制御する機構を飛行ロボットに取り付けることで、飛行ロボットの姿勢変化及び位置変化を抑制する方法も考えられる。これらの方法においては、飛行ロボットの姿勢変化及び位置変化を抑制するための機構を、飛行ロボットに追加する必要がある。その結果、ロボットアームを取り付けることができる飛行ロボットが限定される可能性がある。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛行ロボット等への取付自由度を確保しつつ、正確且つ効率的な作業の実現に寄与することができるロボットアーム及びロボットアームを備えた飛行ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様の一つは、飛行ロボットに取り付けられるロボットアームである。その場
合のロボットアームは、
先端部がエンドエフェクタに接続されるシャフトと、
前記シャフトを支持しつつ、前記シャフトの姿勢を変更する第1の駆動モジュールと、
前記第1の駆動モジュールを支持するように前記飛行ロボットに取り付けられ、前記飛行ロボットに対する前記第1の駆動モジュールの相対的な姿勢を変更する第2の駆動モジュールと、
前記飛行ロボットの姿勢を検出する第1のセンサと、
前記エンドエフェクタに対する該作業対象の位置を検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサの検出信号に基づいて前記第2の駆動モジュールを制御することと、前記第2のセンサの検出信号に基づいて前記第1の駆動モジュールを制御することと、を実行する制御部と、
を備えるようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明は、上記のロボットアームが取り付けられる飛行ロボットとして捉えることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飛行ロボット等への取付自由度を確保しつつ、正確且つ効率的な作業の実現に寄与することができるロボットアーム及びロボットアームを備えた飛行ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ドローンを用いて風力発電機の点検を行う態様の一例を示す図である。
図2】実施形態におけるドローンの概略構成の一例を示す図である。
図3】実施形態におけるロボットアームの構成の一例を示す左側面図である。
図4】実施形態におけるロボットアームに含まれる駆動モジュールの構成例を示す斜視図である。
図5】実施形態におけるプローブ機構の構成の一例を示す斜視図である。
図6】実施形態において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触していない状態で、ドローンのピッチングが発生した場合における、ロボットアームの動作例を示す模式図である。
図7】実施形態において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触している状態でのロボットアームの動作例を模式的に示す第1の図である。
図8】実施形態において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触している状態でのロボットアームの動作例を模式的に示す第2の図である。
図9】実施形態において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触している状態でのロボットアームの動作例を模式的に示す第3の図である。
図10】実施形態において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触している状態でのロボットアームの動作例を模式的に示す第4の図である。
図11】他の実施例におけるロボットアームの構成例を模式的に示す図である。
図12】他の実施例において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触している状態でのロボットアームの動作例を模式的に示す第1の図である。
図13】他の実施例において、プローブ機構の電極が風力発電機のレセプタに接触している状態でのロボットアームの動作例を模式的に示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様の1つであるロボットアームでは、制御部が、第1のセンサの検出信号に基づいて第2の駆動モジュールを制御する。第1のセンサは、飛行ロボットの姿勢を検出するセンサであり、例えば、ジャイロセンサ、角速度センサ、傾斜センサ、又は、地磁気センサ等である。第2の駆動モジュールは、第1の駆動モジュールを支持するように飛行
ロボットに取り付けられ、飛行ロボットに対する第1の駆動モジュールの相対的な姿勢を変更する。第1の駆動モジュールは、シャフトを支持しつつ、シャフトの姿勢を変更する。シャフトは、その先端部にエンドエフェクタが接続される部材である。エンドエフェクタは、例えば、高所等に設置されている作業対象の保守や点検等を行う機器である。
【0013】
制御部が第1のセンサの検出信号に基づいて第2の駆動モジュールを制御することにより、例えば、飛行ロボットの姿勢変化に起因する第1の駆動モジュールの姿勢変化を抑制することが可能になる。すなわち、飛行ロボットの姿勢変化を、第2の駆動モジュールによって吸収させることができる。ただし、飛行ロボットの姿勢変化およびまたは第2の駆動モジュールの動作に起因して、第1の駆動モジュールの位置が変化する可能性がある。その場合、第1の駆動モジュールにより支持されるシャフトの先端部(エンドエフェクタ)の位置が、エンドエフェクタの作業対象の位置からずれる可能性がある。これに対し、本発明の態様の1つであるロボットアームでは、制御部が、第2のセンサの検出信号に基づく第1の駆動モジュールの制御を行う。第2のセンサは、エンドエフェクタの作業対象の位置を検出するセンサであり、例えば、エンドエフェクタに取り付けられるカメラ等を含む。
【0014】
制御部が第2のセンサの検出信号に基づいて第1の駆動モジュールを制御することにより、例えば、エンドエフェクタの位置が作業対象の位置からずれないように、シャフトの姿勢を変化させることが可能になる。すなわち、飛行ロボットの姿勢変化およびまたは第2の駆動モジュールの動作に起因する、エンドエフェクタの位置変化を、第1の駆動モジュールによって吸収させることができる。
【0015】
本開示に係るロボットアームによれば、エンドエフェクタが作業対象に接近又は接触している途中で飛行ロボットの姿勢変化が発生した場合に、作業対象に対するエンドエフェクタの相対的な位置変化を抑制することが可能になる。さらに、第1の駆動モジュール及び第2の駆動モジュールの動作については、制御部によって自動的に行われるため、飛行ロボットの操縦者が複雑な操作を行う必要がなくなる。また、ロボットアームの制御を、飛行ロボットの姿勢変化を吸収する制御(第2の駆動モジュールの制御)と、エンドエフェクタの位置変化を吸収する制御(第1の駆動モジュール)と、に分けることで、それらの制御を個別に設計することが可能になる。
【0016】
したがって、対象機器に対する作業を正確且つ効率的に行うことが可能になる。また、本発明に係るロボットアームを、飛行ロボットの姿勢変化や位置変化を抑制する機構を備えていない飛行ロボットに取り付けることも可能になる。
【0017】
ここで、第2の駆動モジュールは、例えば、第1の駆動モジュールを飛行ロボットのロール軸と平行な軸周りに回転させる第1のアクチュエータと、第1の駆動モジュールを前記飛行ロボットのピッチ軸と平行な軸周りに回転させる第2のアクチュエータと、を含むようにしてもよい。その場合、制御部は、例えば、ロール軸周りの飛行ロボットの回転方向と逆向きに第1の駆動モジュールが回転するように第1のアクチュエータを制御すること、およびまたは、ピッチ軸周りの飛行ロボットの回転方向と逆向きに第1の駆動モジュールが回転するように第2のアクチュエータを制御すること、を第1のセンサの検出信号に基づいて実行するようにしてもよい。
【0018】
上記したように第2の駆動モジュール及び制御部が構成される場合において、飛行ロボットのローリングが発生したときには、制御部が、ロール軸周りの飛行ロボットの回転方向(以下、「ローリング方向」と記す場合もある。)とは逆向きに第1の駆動モジュールが回転するように第1のアクチュエータを制御する。その際の回転方向及び回転角度は、第1のセンサの検出信号(例えば、飛行ロボットのローリング方向及びロール角等)に基
づいて決定される。これにより、飛行ロボットのローリングに起因する第1の駆動モジュールの姿勢変化を抑制することができる。また、飛行ロボットのピッチングが発生したときには、制御部が、ピッチ軸周りの飛行ロボットの回転方向(以下、「ピッチング方向」と記す場合もある。)とは逆向きに第1の駆動モジュールが回転するように第2のアクチュエータを制御する。その際の回転方向及び回転角度は、第1のセンサの検出信号(例えば、飛行ロボットのピッチング方向及びピッチ角等)に基づいて決定される。これにより、飛行ロボットのピッチングに起因する第1の駆動モジュールの姿勢変化を抑制することができる。なお、飛行ロボットのローリング及びピッチングが併発した場合には、制御部は、上記した第1のアクチュエータの制御及び第2のアクチュエータの制御の双方を行えばよい。これにより、飛行ロボットのローリング及びピッチングが併発した場合においても、第1の駆動モジュールの姿勢変化を抑制することができる。
【0019】
また、第1の駆動モジュールは、例えば、シャフトを飛行ロボットのヨー軸と平行な軸周りに回転させる第3のアクチュエータと、シャフトを飛行ロボットのピッチ軸と平行な軸周りに回転させる第4のアクチュエータと、を含むようにしてもよい。その場合、制御部は、例えば、ヨー軸周りの飛行ロボットの回転方向と逆向きにシャフトが回転するように第3のアクチュエータを制御すること、およびまたは、ピッチ軸周りの飛行ロボットの回転方向と逆向きにシャフトが回転するように第4のアクチュエータを制御すること、を第2のセンサの検出信号に基づいて実行するようにしてもよい。
【0020】
上記したように第1の駆動モジュール及び制御部が構成される場合において、ヨー軸と平行な軸周りにおけるエンドエフェクタの角度偏差が発生したときは、制御部が、当該角度偏差をなくす方向にシャフトが回転するように第3のアクチュエータを制御する。ここでいう「角度偏差」とは、例えば、作業対象が位置する方向とエンドエフェクタが向いている方向との相対角度に相当する。なお、第3のアクチュエータによるシャフトの回転方向及び回転角度は、第2のセンサ検出信号(例えば、エンドエフェクタに対する作業対象の位置等)に基づいて決定されてもよい。なお、第3のアクチュエータによるシャフトの回転角度及び回転角度は、第1のセンサの検出信号(例えば、飛行ロボットのヨー軸周りの回転角度又は回転角速度等)により決定されてもよく、或いは、第1のセンサの検出信号と第2のセンサの検出信号の双方に基づいて決定されてもよい。これにより、飛行ロボットのヨーイング、飛行ロボットの左右方向の位置変化、又は作業対象の左右方向の位置変化等に起因するエンドエフェクタの位置のズレや、作業対象が第2のセンサの検出範囲から外れてしまうこと等を抑制することができる。
【0021】
また、ピッチ軸と平行な軸周りにおけるエンドエフェクタの角度偏差が発生したときは、制御部が、当該角度偏差をなくす方向にシャフトが回転するように第4のアクチュエータを制御する。その際の回転方向及び回転角度は、第2のセンサの検出信号(例えば、エンドエフェクタに対する作業対象の位置等)に基づいて決定されてもよい。なお、第4のアクチュエータによるシャフトの回転角度及び回転角度は、第1のセンサの検出信号(例えば、飛行ロボットのピッチ軸周りの回転角度又は回転角速度等)により決定されてもよく、或いは、第1のセンサの検出信号と第2のセンサの検出信号の双方に基づいて決定されてもよい。これにより、飛行ロボットのピッチング、飛行ロボットの高度変化、第1の駆動モジュールの動作、又は作業対象の上下方向における位置変化等に起因する、エンドエフェクタの位置のズレや、作業対象が第2のセンサの検出範囲から外れてしまうこと等を抑制することができる。
【0022】
なお、飛行ロボットのヨーイング及びピッチングが併発した場合や、飛行ロボット及び作業対象の左右方向の位置変化及び高度変化が併発した場合等には、制御部は、上記した第3のアクチュエータの制御及び第4のアクチュエータの制御の双方を行えばよい。これにより、左右方向におけるエンドエフェクタと作業対象との位置偏差、及び、上下方向に
おけるエンドエフェクタと作業対象との位置偏差が併発し得る場合においても、エンドエフェクタの位置のズレや、作業対象が第2のセンサの検出範囲から外れてしまうこと等を抑制することができる。
【0023】
ここで、本発明における第1の駆動モジュールは、シャフトを軸方向に伸縮させる機構を含むようにしてもよい。これにより、飛行ロボットの姿勢変化、第1の駆動モジュールの動作、及び、第2の駆動モジュールの動作に起因して、シャフトの基端部と作業対象との相対距離が変化しても、シャフトの先端部(エンドエフェクタ)と作業対象との相対距離の変化を抑制することができる。その結果、エンドエフェクタと作業対象との接触状態を維持することができる。また、エンドエフェクタを作業対象に接触させる際における、飛行ロボットをホバリングさせる位置の自由度を高めることも可能になる。
【0024】
また、本発明におけるシャフトは、エンドエフェクタを、飛行ロボットのピッチ軸と平行な軸周りに回転させる第5のアクチュエータと、エンドエフェクタを、飛行ロボットのヨー軸と平行な軸周りに回転させる第6のアクチュエータと、を含むように構成されてもよい。その場合、制御部は、作業対象に対するエンドエフェクタの相対的な姿勢が所定の姿勢となるように、第5のアクチュエータおよびまたは第6のアクチュエータを制御するようにしてもよい。これにより、飛行ロボットの姿勢変化が発生した場合であっても、作業対象に対するエンドエフェクタの相対的な姿勢を所定の姿勢に維持することができる。
【0025】
本発明の他の態様は、上記したように構成されるロボットアームを備えた飛行ロボットである。飛行ロボットは、高所等に設置されている作業対象に対し、上記ロボットアームを利用することができる。これにより、飛行ロボットは、飛行ロボットの姿勢変化を抑制するための機構を備えていなくても、エンドエフェクタの位置変化を抑制することができる。
【0026】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0027】
<実施形態>
本実施形態では、本発明に係るロボットアームを、風力発電機20を点検するドローン1に適用する例について説明する。図1は、ドローン1を用いて風力発電機20を点検する態様の一例を示す図である。
【0028】
風力発電機20は、地上に直立するタワー21と、タワー21の上部に備わり風を受けて回転するブレード22を備える。ブレード22には、レセプタ23が設けられる。レセプタ23は、受雷時の雷電流を接地させるための機器であり、接地電極と電線等を介して接続されている。
【0029】
ドローン1は、風力発電機20の避雷機能を点検するための飛行ロボットである。本実施形態では、ドローン1は、レセプタ23と接地電極とが導通しているかを点検するために使用される。斯様な点検は、例えば、ドローン1によりレセプタ23に電圧を印加したときに接地電極に流れる電流値を検出する方法で行われる。そのため、ドローン1には、点検装置31からドローン1へ点検用の電力を供給するためのワイヤ30が接続される。点検装置31は、ドローン1を用いてレセプタ23に電圧を印加し、接地電極を流れる電流値を検出する。
【0030】
本実施形態のドローン1には、ロボットアーム100が取り付けられ、ロボットアーム
100の先端部にはプローブ機構40が取り付けられる。プローブ機構40は、風力発電機20のレセプタ23と接触して、レセプタ23に電圧を印加するための機器である。そのため、プローブ機構40には、上記のワイヤ30が接続される。本実施形態におけるプローブ機構40は、本発明に係るエンドエフェクタの一例である。ロボットアーム100は、ドローン1がレセプタ23の近傍でホバリングしているときに、プローブ機構40をレセプタ23に接触させる機能と、プローブ機構40とレセプタ23との接触状態を維持する機能と、を有する。
【0031】
(ドローン)
ここで、本実施形態におけるドローン1の構成について図2に基づいて説明する。図2は、ロボットアーム100が取り付けられた状態のドローン1の概略構成例を示す図である。本実施形態におけるドローン1は、本体部11と、複数のブリッジ12と、複数のアクチュエータ13と、複数のプロペラ14と、を含んで構成される。
【0032】
ブリッジ12は、本体部11を中心にして放射状に延在するように形成される。各ブリッジ12の先端部には、アクチュエータ13とプロペラ14とが取り付けられる。プロペラ14は、アクチュエータ13により回転駆動されて、ドローン1の推進力と揚力とを発生させる。ブリッジ12は、複数のアクチュエータ13及びプロペラ14が本体部11の周囲に適切に配置されるように、構成される。
【0033】
図2に例示するドローン1は、ブリッジ12とアクチュエータ13とプロペラ14とを各々4つ備えているが、3つ以下でもよく又は5つ以上でもよい。また、図2に示す例では、複数のアクチュエータ13及びプロペラ14が等間隔に配置されているが、複数のアクチュエータ13及びプロペラ14が等間隔に配置される構成に限定されない。例えば、本体部11を作業対象であるレセプタ23により一層接近させるために、本体部11の前方に配置されるアクチュエータ13及びプロペラ14の位置を後方にシフトさせてもよい。4つのアクチュエータ13及びプロペラ14は、全て同種類の機器でなくてもよい。4つのアクチュエータ13は、互いに独立して制御可能である。これにより、4つのアクチュエータ13及びプロペラ14により得られる推進力を、互いに独立して制御することが可能である。その結果、ドローン1の飛行姿勢や飛行速度等を適宜制御することが可能となる。
【0034】
なお、ドローン1がホバリング状態にあるときに、4つのプロペラ14の推進力が働く方向(鉛直方向における上向き(図2中における上方向))をドローン1の上方向と定義し、推進力が働く方向とは逆方向(鉛直方向における下向き(図2中における下方向))をドローン1の下方向と定義する。
【0035】
ドローン1の本体部11は、各アクチュエータ13に対して駆動電力を供給するためのバッテリ、バッテリから各アクチュエータ13への電力供給を制御する制御装置50、及び各種センサ等を内蔵して構成される。制御装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EP
ROM(Erasable Programmable ROM)を備えるコンピュータ、及び、ドローン1の姿勢
や動作を制御するフライトコントローラ等を含む。コンピュータは、EPROMに格納されているプロセッサの実行を通じて、フライトコントローラへ指令を出力する。フライトコントローラは、コンピュータからの指令に従って、各アクチュエータ13を制御する。
【0036】
また、制御装置50のコンピュータは、外部と有線又は無線によって通信を行う通信部を備え、通信部を介して制御指令を受信して、その制御指令に応じて動作の内容を切り替えてもよい。例えば、制御装置50のコンピュータは、通常のドローンと同じように操作者が手動でコントローラーを操作することによる制御入力に従ってフライトコントローラ
に対する指令を出力したり、又は、EPROM等に予め格納されている飛行計画に従ってフライトコントローラに対する指令を出力したりしてもよい。また、制御装置50のコンピュータは、後述するロボットアーム100の制御も行う。
【0037】
本体部11に内蔵されるセンサとしては、例えば、ドローン1の向きを検出するセンサ、水平方向に対するドローン1の傾きを検出するセンサ、ドローン1の高度を検出するセンサ、及び、水平方向におけるドローン1と作業対象であるレセプタ23との相対位置を検出するセンサ等が挙げられる。
【0038】
本実施形態におけるドローン1には、ロボットアーム100が取り付けられる。ロボットアーム100は、ブラケット15を介してブリッジ12に固定される。その際、ブラケット15及びロボットアーム100は、4つのプロペラ14よりも上方に取り付けられる。また、ロボットアーム100は、4つのプロペラ14のうちの隣接する2つのプロペラ14の回転軸を結ぶ仮想直線に対して垂直に延在するように、ブリッジ12に取り付けられる。
【0039】
なお、以下の説明では、ドローン1がホバリング状態にあるときに、ロボットアーム100が取り付けられる側(図2中の斜め左下へ向かう方向)をドローン1の前方向と定義し、その逆側(図2中の斜め右上へ向かう方向)をドローン1の後方向と定義する。これにともない、図2中の斜め左上へ向かう方向をドローン1の右方向と定義し、図2中の斜め右下へ向かう方向をドローン1の左方向と定義する。
【0040】
(ロボットアーム)
本実施形態におけるロボットアーム100の構成について図3及び図4に基づいて説明する。図3は、プローブ機構40が取り付けられた状態のロボットアーム100の左側面図である。図4は、ロボットアーム100に含まれる駆動モジュール101の構成例を示す斜視図である。
【0041】
図3に示す例では、ロボットアーム100は、基端部から先端部にかけて配列される、駆動モジュール101、シャフト102、及び、伸縮機構103を含んで構成される。
【0042】
駆動モジュール101は、ドローン1のブラケット15に固定される。駆動モジュール101は、図4に示すように、第1のアクチュエータ110、第1のブラケット111、第2のアクチュエータ112、第2のブラケット113、第3のアクチュエータ114、第3のブラケット115、第4のアクチュエータ116、及び、第4のブラケット117を含んで構成される。
【0043】
第1のアクチュエータ110は、ドローン1のブラケット15に固定される電動モータであり、第1のブラケット111をドローン1のロール軸と平行な軸周りに回転させる。第1のブラケット111には、第2のアクチュエータ112が固定される。第2のアクチュエータ112は、第2のブラケット113をドローン1のピッチ軸と平行な軸周りに回転させる電動モータである。ここでいう「ピッチ軸と平行な軸」とは、ドローン1が水平姿勢にあり、且つ、第1のアクチュエータ110による第1のブラケット111の回転角度が“0°CA”であるとき(第2のアクチュエータ112の回転軸がドローン1の左右方向に延びる仮想直線と平行になるとき)のピッチ軸と平行な軸を示すものとする。
【0044】
第2のブラケット113には、第3のアクチュエータ114が固定される。第3のアクチュエータ114は、第3のブラケット115を、ドローン1のヨー軸と平行な軸周りに回転させる電動モータである。ここでいう「ヨー軸と平行な軸周り」とは、ドローン1が水平状態にあり、且つ、第1のアクチュエータ110による第1のブラケット111の回
転角度と第2のアクチュエータ112による第2のブラケット113の回転角度との各々が“0°CA”であるとき(第3のアクチュエータ114の回転軸がドローン1の上下方向(鉛直方向)に延びる仮想直線と平行になるとき)のヨー軸と平行な軸を示すものとする。
【0045】
第3のブラケット115には、第4のアクチュエータ116が固定される。第4のアクチュエータ116は、第4のブラケット117を、ドローン1のピッチ軸と平行な軸周りに回転させる電動モータである。ここでいう「ピッチ軸と平行な軸」とは、ドローン1が水平姿勢にあり、且つ、第1のアクチュエータ110による第1のブラケット111の回転角度と第2のアクチュエータ112による第2のブラケット113の回転角度と第3のアクチュエータ114による第3のブラケット115の回転角度との各々が“0°CA”であるとき(第4のアクチュエータ116の回転軸がドローン1の左右方向に延びる仮想直線と平行になるとき)のヨー軸と平行な軸を示すものとする。
【0046】
第4のブラケット117には、シャフト102の基端部が固定される。シャフト102は、図3及び図4に示すように、棒状の部材で構成され、その先端部に伸縮機構103が設けられる。伸縮機構103は、シャフト102の軸方向における長さを変更する機構である。伸縮機構103の構成は、特に限定されず、既知の構成を採用することができる。例えば、シャフト102を内筒と外筒との二重構造とし、外筒の軸方向に沿って内筒を案内する直動案内機構と、内筒をシャフト102の基端部側から先端部側へ向かって付勢するバネと、を含んで構成されるようにしてもよい。また、伸縮機構103は、電動式のアクチュエータ等によってシャフト102を伸縮させる機構でもよい。なお、図3及び図4に示す例では、シャフト102の断面形状が円形に形成されているが、これに限定されない。例えば、シャフト102の回転留めのために断面形状が多角形に形成されてもよく、又はシャフト102に溝が設けられるようにしてもよい。また、ロボットアーム100には、ピッチ軸周りのシャフト102のモーメントを軽減するためのカウンタウェイト等が取り付けられるようにしてもよい。その際のカウンタウェイトとして、例えば、ロボットアーム100の電源(バッテリ)や制御装置50等の機器を用いることで、ロボットアーム100の重量の増加を抑制するようにしてもよい。
【0047】
また、ブラケット15には、水平方向に対する駆動モジュール101の傾斜角度(ロール角、及び、ピッチ角等)を検出する第1のセンサ104が取り付けられる。第1のセンサ104は、ドローン1のローリング方向(ロール軸周りのドローン1のの回転方向)、ドローン1のピッチング方向(ピッチング軸周りのドローン1の回転方向)、ロール角、及び、ピッチ角等を検出する。このような第1のセンサ104としては、例えば、ジャイロセンサ、角速度センサ、又は、傾斜センサ等を用いることができる。
【0048】
なお、ドローン1のローリング方向、ドローン1のピッチング方向、ロール角、及び、ピッチ角等を検出するセンサがドローン1の本体部11に搭載されている場合は、当該センサを第1のセンサ104の代わりに利用することも可能である。
【0049】
駆動モジュール101の第1のアクチュエータ110と第2のアクチュエータ112と第3のアクチュエータ114と第4のアクチュエータ116とは、ドローン1の制御装置50によって互いに独立して制御される。なお、伸縮機構103がアクチュエータによって動作するように構成される場合は、伸縮機構103のアクチュエータも、制御装置50によって制御される。
【0050】
本実施形態における第1のアクチュエータ110と第1のブラケット111と第2のアクチュエータ112と第2のブラケット113とは、本発明に係る第2の駆動モジュールに相当する。本実施形態における第3のアクチュエータ114と第3のブラケット115
と第4のアクチュエータ116と第4のブラケット117とは、本発明に係る第1の駆動モジュールに相当する。本実施形態における制御装置50は、本発明に係る制御部に相当する。
【0051】
(プローブ機構)
次に、本実施形態におけるプローブ機構40の構成例について、図5に基づいて説明する。図5は、本実施形態におけるプローブ機構40の構成の一例を示す斜視図である。本実施形態におけるプローブ機構40は、固定部材401と、ロッド402と、プローブヘッド403と、を含んで構成される。
【0052】
固定部材401は、ロボットアーム100のシャフト102の先端部に取り付けられ、ロッド402の基端部を支持する。ロッド402は、棒状に形成され、その先端部にプローブヘッド403が取り付けられる。プローブヘッド403の先端部には、電極431が取り付けられる。電極431は、風力発電機20の避雷機能を点検する際にレセプタ23に接触されて、点検用の電圧をレセプタ23に印加する。そのため、プローブヘッド403の電極431には、前述したワイヤ30が接続される。なお、プローブヘッド403における電極431の周囲には、滑り止めの加工が施されてもよい。また、ロッド402の断面形状は円形に限定されず、例えば、ロッド402の回転留めのために断面形状が多角形に形成されてもよく、又はロッド402に溝が設けられるようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態におけるプローブ機構40の固定部材401には、第2のセンサ410が搭載される。第2のセンサ410は、作業対象であるレセプタ23を検出するためのセンサである。本実施形態における第2のセンサ410は、レセプタ23までの距離を測定する距離センサ411と、レセプタ23の位置を特定するためのカメラ412とを、を含む。距離センサ411は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)、R
ADAR(Radio Detection and Ranging)、ステレオカメラ、又は、レーザスキャナ等
である。
【0054】
(実施形態の作用効果)
ここで、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態では、風力発電機20の避雷機能を点検する際に、プローブヘッド403の先端部に取り付けられた電極431をレセプタ23に接触させるように、ドローン1を飛行させる。例えば、カメラ412がレセプタ23を撮像可能になるまでは、ユーザによる目視でのドローン1の操縦が行われ、カメラ412がレセプタ23を撮像可能になると、カメラ412によって撮像される画像及び距離センサ411によって測定されるレセプタ23までの距離に基づいて、制御装置50がドローン1を自律飛行させる。そして、プローブヘッド403の電極431をレセプタ23に接触させることができる位置にドローン1が到達すると、制御装置50が、ドローン1をホバリングさせつつ、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触するように、ロボットアーム100の第1のアクチュエータ110と第2のアクチュエータ112と第3のアクチュエータ114と第4のアクチュエータ116とを制御する。
【0055】
プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触してから、点検装置31による点検作業が終了するまでの間は、制御装置50が、プローブヘッド403の電極431とレセプタ23との接触状態が維持されるように、第1のアクチュエータ110、第2のアクチュエータ112、第3のアクチュエータ114、及び、第4のアクチュエータ116を制御する。
【0056】
ここで、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触してから、点検装置31による点検作業が終了するまでの間における、ロボットアーム100の動作例につい
図6から図11に基づいて説明する。
【0057】
図6は、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触していない状態(例えば、ドローン1がレセプタ23に接近している状態)で、気流若しくは風等の外乱、又は、ドローン1の前進若しくは後退等によるドローン1のピッチングが発生した場合における、ロボットアーム100の動作例を示す模式図である。
【0058】
プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触していない状態で、ドローン1のピッチングが発生した場合には、制御装置50は、図6に示すように、ドローン1のピッチングが第2のアクチュエータ112の回転によって吸収(相殺)されるように、第2のアクチュエータ112を制御する。その際、制御装置50は、第2のアクチュエータ112の回転方向が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のピッチング方向(ピッチ軸周りにおけるドローン1の回転方向)とは逆向きとなり、且つ、第2のアクチュエータ112の回転角度(回転量)が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のピッチ角と同じになるように、第2のアクチュエータ112を制御する。これにより、第2のアクチュエータ112より先端側に配置される構成要素(第2のブラケット113、第3のアクチュエータ114、第3のブラケット115、第4のアクチュエータ116、第4のブラケット117、及び、シャフト102)の姿勢変化が抑制される。
【0059】
なお、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触していない状態で、ドローン1のローリングが発生した場合には、制御装置50は、ドローン1のローリングが第1のアクチュエータ110の回転によって吸収(相殺)されるように、第1のアクチュエータ110を制御すればよい。その際、制御装置50は、第1のアクチュエータ110の回転方向が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のローリング方向(ロール軸周りにおけるドローン1の回転方向)とは逆向きとなり、且つ、第1のアクチュエータ110の回転角度(回転量)が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のロール角と同じになるように、第1のアクチュエータ110を制御すればよい。これにより、第1のアクチュエータ110より先端側に配置される構成要素(第1のブラケット111、第2のアクチュエータ112、第2のブラケット113、第3のアクチュエータ114、第3のブラケット115、第4のアクチュエータ116、第4のブラケット117、及び、シャフト102)の姿勢変化が抑制される。
【0060】
図7は、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態で、気流若しくは風等の外乱、又は、ドローン1の位置変化を修正するためのドローン1の前進若しくは後退等によるドローン1のピッチングが発生した場合における、ロボットアーム100の動作例を示す模式図である。
【0061】
プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態でドローン1のピッチングが発生した場合には、制御装置50は、図7に示すように、ドローン1のピッチングが第2のアクチュエータ112の回転によって吸収(相殺)されるように、第2のアクチュエータ112を制御する。その際、制御装置50は、第2のアクチュエータ112の回転方向が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のピッチング方向(ピッチ軸周りにおけるドローン1の回転方向)とは逆向きとなり、且つ、第2のアクチュエータ112の回転角度(回転量)が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のピッチ角と同じになるように、第2のアクチュエータ112を制御する。これにより、第2のアクチュエータ112より先端側に配置される構成要素(第2のブラケット113、第3のアクチュエータ114、第3のブラケット115、第4のアクチュエータ116、第4のブラケット117、及び、シャフト102)の姿勢変化が抑制される。
【0062】
また、制御装置50は、第2のセンサ410のカメラ412によって検出されるレセプ
タ23の位置に基づいて、ドローン1のピッチング及び第2のアクチュエータ112の動作に起因するシャフト102の先端部(プローブヘッド403)の位置変化が第4のアクチュエータ116の回転によって吸収(相殺)されるように、第4のアクチュエータ116を制御する。具体的には、制御装置50は、シャフト102の先端部(プローブヘッド403)の向いている方向がレセプタ23の位置する方向となるように、第4のアクチュエータ116を回転させる。その際、制御装置50は、カメラ412により撮像された画像に対する画像認識処理を用いて、第4のアクチュエータ116の回転角度を決定する。
【0063】
なお、ドローン1のピッチング、第2のアクチュエータ112の回転、及び、第4のアクチュエータ116の回転に伴って、シャフト102の基端部とレセプタ23との相対距離が変化する可能性があるが、伸縮機構103によってシャフト102が伸縮されることで、プローブヘッド403とレセプタ23との相対距離の変化が抑制される。よって、上記したように第4のアクチュエータ116が制御されることで、プローブヘッド403の位置変化が抑制されることになる。
【0064】
図7に示すようにロボットアーム100が動作することで、点検装置31による点検作業の途中で、ドローン1のピッチングが発生しても、プローブヘッド403の位置変化を抑制することができる。よって、ドローン1のピッチングに起因して電極431とレセプタ23との接触不良が生じることを抑制することができる。
【0065】
図8は、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態で、気流等の外乱によるドローン1の高度変化(鉛直方向における位置変化)が発生した場合における、ロボットアーム100の動作例を示す模式図である。
【0066】
ドローン1の高度が変化した場合は、制御装置50は、図8に示すように、第2のセンサ410のカメラ412によって検出されるレセプタ23の位置に基づいて、ドローン1の高度変化に起因するプローブヘッド403の位置変化が第4のアクチュエータ116の回転によって吸収(相殺)されるように、第4のアクチュエータ116を制御する。具体的には、制御装置50は、ドローン1の高度の変化方向とは逆向きに、シャフト102の先端部の高度が変化するように、第4のアクチュエータ116を回転させる。すなわち、図8に例示されるように、ドローン1が上昇する場合には、制御装置50は、シャフト102の先端部が下降する方向へ第4のアクチュエータ116を回転させる。また、ドローン1が下降する場合には、制御装置50は、シャフト102の先端部が上昇する方向へ第4のアクチュエータ116を回転させる。なお、制御装置50は、カメラ412により撮像された画像に対する画像認識処理を用いて、第4のアクチュエータ116の回転角度を決定する。
【0067】
また、ドローン1の高度変化、及び、第4のアクチュエータ116の回転に伴って、シャフト102の基端部とレセプタ23との相対距離が変化する可能性があるが、伸縮機構103によってシャフト102が伸縮されることで、プローブヘッド403とレセプタ23との相対距離の変化が抑制される。よって、上記したように第4のアクチュエータ116が制御されることで、プローブヘッド403の位置変化が抑制されることになる。
【0068】
図8に示すようにロボットアーム100が動作することで、点検装置31による点検作業の途中で、ドローン1の高度変化が発生しても、プローブヘッド403の位置変化を抑制することができる。よって、ドローン1の高度変化に起因して電極431とレセプタ23との接触不良が生じることを抑制することができる。
【0069】
図9は、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態で、風等の外乱によるドローン1の前後方向における水平位置の変化が発生した場合における、
ロボットアーム100の動作例を示す図である。
【0070】
プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態でドローン1の前後方向における水平位置の変化が発生した場合には、図9に示すように、伸縮機構103の働きによってシャフト102が自動的に伸縮することで、電極431とレセプタ23との相対位置の変化が抑制される。これにより、点検装置31による点検作業の途中で、ドローン1の前後方向における水平位置の変化が発生しても、電極431とレセプタ23との接触不良が生じることを抑制することができる。
【0071】
図10は、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態で、風等の外乱によるドローン1のヨーイングが発生した場合における、ロボットアーム100の動作例を示す模式図である。
【0072】
プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態でドローン1のヨーイングが発生した場合には、制御装置50は、図10に示すように、第2のセンサ410のカメラ412によって検出されるレセプタ23の位置に基づいて、ドローン1のヨーイングに起因するプローブヘッド403の位置変化が第3のアクチュエータ114の回転によって吸収(相殺)されるように、第3のアクチュエータ114を制御する。具体的には、制御装置50は、第3のアクチュエータ114を、ドローン1のヨーイング方向とは逆向きに回転させる。その際、制御装置50は、カメラ412により撮像された画像に対する画像認識処理を用いて、第3のアクチュエータ114の回転角度を決定する。
【0073】
また、ドローン1のヨーイング、及び、第3のアクチュエータ114の回転に伴って、シャフト102の基端部とレセプタ23との相対距離が変化する可能性があるが、伸縮機構103によってシャフト102が伸縮されることで、プローブヘッド403とレセプタ23との相対距離の変化が抑制される。よって、上記したように第3のアクチュエータ114が制御されることで、プローブヘッド403の位置変化が抑制されることになる。
【0074】
図10に示すようにロボットアーム100が動作することで、点検装置31による点検作業の途中で、ドローン1のヨーイングが発生しても、プローブヘッド403の位置変化を抑制することができる。よって、ドローン1のヨーイングに起因して電極431とレセプタ23との接触不良が生じることを抑制することができる。
【0075】
また、プローブヘッド403の電極431がレセプタ23に接触している状態で、気流又は風等の外乱によるドローン1のローリングが発生した場合には、制御装置50は、ドローン1のローリングが第1のアクチュエータ110の回転によって吸収(相殺)されるように、第1のアクチュエータ110を制御すればよい。その際、制御装置50は、第1のアクチュエータ110の回転方向が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のローリング方向とは逆向きとなり、且つ、第1のアクチュエータ110の回転角度が第1のセンサ104によって検出されるドローン1のロール角と同じになるように、第1のアクチュエータ110を制御すればよい。これにより、第1のアクチュエータ110より先端側に配置される構成要素(第1のブラケット111、第2のアクチュエータ112、第2のブラケット113、第3のアクチュエータ114、第3のブラケット115、第4のアクチュエータ116、第4のブラケット117、及び、シャフト102)の姿勢変化が抑制される。
【0076】
また、制御装置50は、第2のセンサ410のカメラ412によって検出されるレセプタ23の位置に基づいて、ドローン1のローリング及び第1のアクチュエータ110の動作に起因するプローブヘッド403の位置変化が第3のアクチュエータ114およびまたは第4のアクチュエータ116の回転によって吸収(相殺)されるように、第3のアクチ
ュエータ114およびまたは第4のアクチュエータ116を制御する。その際、制御装置50は、カメラ412により撮像された画像に対する画像認識処理を用いて、第3のアクチュエータ114およびまたは第4のアクチュエータ116の回転方向及び回転角度を決定すればよい。
【0077】
また、ドローン1のローリング、第1のアクチュエータ110の回転、第3のアクチュエータ114の回転、及び、第4のアクチュエータ116の回転に伴って、シャフト102の基端部とレセプタ23との相対距離が変化する可能性があるが、伸縮機構103によってシャフト102が伸縮されることで、プローブヘッド403とレセプタ23との相対距離の変化が抑制される。よって、上記したように第3のアクチュエータ114およびまたは第4のアクチュエータ116が制御されることで、プローブヘッド403の位置変化が抑制されることになる。
【0078】
上記したようにロボットアーム100が動作することで、点検装置31による点検作業の途中で、ドローン1のローリングが発生した場合であっても、プローブヘッド403の位置変化を抑制することができる。よって、ドローン1のローリングに起因して電極431とレセプタ23との接触不良が生じることを抑制することができる。
【0079】
以上述べた実施形態によれば、ドローン1の姿勢変化や位置変化を、操縦者の操作入力無しで、自動的にロボットアーム100に吸収(相殺)させることができる。これにより、ドローン1の操縦における操作入力や要求される技能等を大きく変えることなく、レセプタ23と電極431との接触状態を維持することが可能になる。また、ロボットアーム100の制御を、ドローン1の姿勢変化(ピッチング及びローリング)を吸収する制御(第1のアクチュエータ110及び第2のアクチュエータ112の制御)と、プローブヘッド403の位置変化を吸収する制御(第3のアクチュエータ114及び第4のアクチュエータ116の制御)と、に分けることで、それらの制御を個別に設計することが可能になる。そのため、ドローン1の種類や作業の種類等に応じた柔軟な設計が可能になり、実装が容易になる。
【0080】
また、例えば、レセプタ23のダミー画像等を用いたドローン1の飛行実験等において、制御装置50の機能を働かせることにより、第1のアクチュエータ110及び第2のアクチュエータ112の動作と、第3のアクチュエータ114及び第4のアクチュエータ116の動作と、を個別に確認及び検証することも可能になる。すなわち、ドローン1を実際の環境で飛行させることなく、第1のアクチュエータ110及び第2のアクチュエータ112の動作と、第3のアクチュエータ114及び第4のアクチュエータ116の動作と、を個別に確認及び検証することも可能になる。これにより、ロボットアーム100の点検や調整、及び、ロボットアーム100の不具合が発生した際の原因箇所の特定等の作業が容易になる。
【0081】
したがって、点検装置31による点検作業を正確且つ効率的に行うことが可能になる。また、本実施形態におけるロボットアーム100は、ドローン1の姿勢変化や位置変化を抑制する機構を備えていないドローン1に対しても取り付けることが可能になる。その結果、ロボットアーム100の取付自由度を高めることが可能になる。
【0082】
<変形例>
前述した実施形態では、シャフト102が伸縮機構103のみを備える例について述べたが、シャフト102が伸縮機構103に加え、複数の関節を備えるようにしてもよい。
【0083】
図10は、本変形例におけるロボットアーム100の構成を模式的に示す図である。本変形例におけるロボットアーム100は、シャフト102の先端部と伸縮機構103との
間には、第1の関節部105と第2の関節部106とが設けられる。第1の関節部105は、ドローン1のピッチ軸と平行な軸周りに回転自在に構成され、第5のアクチュエータ151により駆動される。第2の関節部106は、ドローン1のヨー軸と平行な軸周りに回転自在に構成され、第6のアクチュエータ161により駆動される。第5のアクチュエータ151と第6のアクチュエータ161とは、制御装置50により制御される。
【0084】
本変形例におけるロボットアーム100によれば、ドローン1の姿勢変化が発生した場合に、プローブヘッド403の姿勢変化を抑制することも可能になる。例えば、図11に示すように、ドローン1のピッチングが発生した場合に、制御装置50が、前述した実施形態と同様の手順で第2のアクチュエータ112及び第4のアクチュエータ116を制御することに加え、第5のアクチュエータ151を制御することにより、レセプタ23に対してプローブヘッド403を垂直な姿勢にすることもできる。その際、制御装置50は、例えば、カメラ412により撮像された画像に対する画像認識処理を用いて特定されるレセプタ23の位置、距離センサ411により検出されるレセプタ23までの距離、又は、第1から第4のアクチュエータ110、112、114、116の回転角度等に基づいて、第5のアクチュエータ151の回転角度を決定してもよい。これにより、ドローン1のピッチングが発生した場合における電極431とレセプタ23との接触状態をより安定させることも可能になる。
【0085】
また、ドローン1のヨーイングが発生した場合には、制御装置50が、図12に示すように、前述した実施形態と同様の手順で第3のアクチュエータ114を制御することに加え、第6のアクチュエータ161を制御することにより、レセプタ23に対してプローブヘッド403を垂直な姿勢にすることもできる。その際、制御装置50は、例えば、カメラ412により撮像された画像に対する画像認識処理を用いて特定されるレセプタ23の位置、距離センサ411により検出されるレセプタ23までの距離、又は、第1から第4のアクチュエータ110、112、114、116の回転角度等に基づいて、第6のアクチュエータ161の回転角度を決定してもよい。これにより、ドローン1のヨーイングが発生した場合における電極431とレセプタ23との接触状態をより安定させることも可能になる。
【0086】
<他の実施形態>
前述した実施形態及び変形例では、シャフトの先端部に導通検査用のプローブ機構が取り付けられるロボットアームを例示したが、シャフトの先端部に取り付けられるエンドエフェクタは、導通検査用のプローブ機構に限定されない。例えば、ロボットアームの先端部に取り付けられるエンドエフェクタは、導通検査以外の検査を目的としたプローブ機構でもよく、又は、マニピュレータ等でもよい。
【0087】
また、前述した実施形態及び変形例では、本発明に係る飛行ロボットの一例としてドローンを挙げたが、飛行可能な移動体であれば、ドローンに限定されない。
【0088】
また、前述した実施形態及び変形例では、4つのアクチュエータを備える駆動モジュールを例示したが、駆動モジュールのアクチュエータは5つ以上でもよい。
【0089】
また、前述した変形例では、2つの関節部を備えるシャフトを例示したが、3つ以上の関節部がシャフトに設けられてもよい。例えば、第1の関節部と第2の関節部とに加え、ドローンのロール軸と平行な軸周りに回転自在な関節部が設けられてもよい。このような構成は、エンドエフェクタがロボットハンド等のようにロール軸と平行な軸周りに回転しながら作業対象に対する作業を行う機器である場合に有効である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・ドローン、20・・・風力発電機、23・・・レセプタ、40・・・プローブ機構、50・・・制御装置、100・・・ロボットアーム、101・・・駆動モジュール、102・・・シャフト、103・・・伸縮機構、104・・・第1のセンサ、110・・・第1のアクチュエータ、112・・・第2のアクチュエータ、114・・・第3のアクチュエータ、116・・・第4のアクチュエータ、410・・・第2のセンサ、411・・・距離センサ、412・・・カメラ、403・・・プローブヘッド、431・・・電極431、105・・・第1の関節部、106・・・第2の関節部、151・・・第5のアクチュエータ、161・・・第6のアクチュエータ
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