(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022834
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】洋上作業設備の製造方法及び洋上風力発電設備の施工方法
(51)【国際特許分類】
B63B 27/10 20060101AFI20240214BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240214BHJP
B63B 77/10 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
B63B27/10 A
B63B35/00 M
B63B77/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126203
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599027312
【氏名又は名称】株式会社 吉田組
(71)【出願人】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】沖田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】西山 桂司
(72)【発明者】
【氏名】鷺島 英之
(72)【発明者】
【氏名】薗部 直人
(72)【発明者】
【氏名】枝光 桂資
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 訓
(72)【発明者】
【氏名】川上 正人
(72)【発明者】
【氏名】大森 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 脩
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山口 高典
(72)【発明者】
【氏名】安部 俊毅
(72)【発明者】
【氏名】前田 啓彰
(57)【要約】
【課題】既存のジャッキアップ式掘削リグを改造して洋上作業設備を製造するに当たって、大型クレーンの支持構造を見直すことにより、現状よりも更に大型のクレーンの搭載を可能にする。
【解決手段】既存のジャッキアップ式掘削リグ10を準備する第1ステップと、前記ジャッキアップ式掘削リグ10から少なくとも前記カンチレバー8と掘削設備9とを含む不要設備を撤去する第2ステップと、前記メインデッキ2の外縁部であって前記カンチレバー8を撤去した部位に、平面視で多角形状の切欠き凹部2aを形成する第3ステップと、前記切欠き凹部2aの空間を埋めるようにクレーン架台用デッキ4を前記メインデッキ2に一体的に設けることにより、前記クレーン架台用デッキ4が前記切欠き凹部2aの各辺によって多面的に支持された構造とする第4ステップと、前記クレーン架台用デッキ4に大型クレーン6を搭載する第5ステップとからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備を建設するための大型クレーンを搭載した洋上作業設備の製造方法であって、
メインデッキと、このメインデッキを上下方向に貫通して設けられるとともに、ジャッキ装置により昇降自在に支持された少なくとも3本以上の脚柱と、前記メインデッキの上面に外方に送り出し可能に支持されたカンチレバーと、このカンチレバーに設けられた掘削設備とを備えた既存のジャッキアップ式掘削リグを準備する第1ステップと、
前記ジャッキアップ式掘削リグから少なくとも前記カンチレバーと掘削設備とを含む不要設備を撤去する第2ステップと、
前記メインデッキの外縁部であって前記カンチレバーを撤去した部位に、平面視で多角形状の切欠き凹部を形成する第3ステップと、
前記多角形状の切欠き凹部の空間を埋めるようにクレーン架台用デッキを前記メインデッキに一体的に設けることにより、前記クレーン架台用デッキが前記切欠き凹部の各辺によって多面的に支持された構造とする第4ステップと、
前記クレーン架台用デッキ上に大型クレーンを搭載する第5ステップとからなることを特徴とする洋上作業設備の製造方法。
【請求項2】
前記大型クレーンを支持する支柱の中心点は、前記多角形状の切欠き凹部を形成する前のメインデッキの外縁線位置と同位置又はそれよりもメインデッキの内方側位置とする請求項1記載の洋上作業設備の製造方法。
【請求項3】
前記多角形状の切欠き凹部の形状は矩形状とし、前記クレーン架台用デッキは3辺支持による構造とする請求項1記載の洋上作業設備の製造方法。
【請求項4】
前記クレーン架台用デッキは、デッキの一部をメインデッキの外縁線位置よりも外方に張り出して形成するとともに、張り出したクレーン架台用デッキから側方に拡幅させた拡幅デッキ部を設け、この拡幅デッキ部を前記メインデッキに接合させてある請求項1記載の洋上作業設備の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載の洋上作業設備の製造方法によって製造された洋上作業設備を用いた洋上風力発電設備の施工方法であって、
前記メインデッキに対して、杭打ち打設のためのガイドとなるパイルグリッパーを設ける準備工程と、
前記洋上作業設備を曳航船によって風力発電設備の建設場所まで運搬したならば、脚柱を下降させてメインデッキを海面よりも上方に上昇させ、所定の高さ位置で固定を図る洋上作業設備の設置工程と、
大型起重機船によってモノパイルを吊り上げて、前記パイルグリッパに落とし込んで海底に着底させた状態とし、次いで前記大型クレーンによって吊り上げたバイブロハンマー及び/又は油圧ハンマーによって海底地盤への打込みを行うモノパイル打設工程と、
前記大型クレーンによって、前記モノパイルの頂部にトランジションピースを設置した後、その上部側に、長手方向に複数に分割されたタワー分割片を順に連結しながら設置することによりタワーを完成させ、次いでタワーの頂部にナセルを設置した後、複数枚のブレードを前記ナセルに連結する洋上風力発電設備の組立工程とからなることを特徴とする洋上風力発電設備の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電設備を建設(その後のメンテナンス、解体等含む)するための大型クレーンを搭載した洋上作業設備の製造方法及び洋上風力発電設備の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主として水力、火力及び原子力発電等の発電方式が専ら採用されてきたが、近年は環境や自然エネルギーの有効活用の点から自然風を利用して発電を行う風力発電が注目されている。この風力発電設備には、陸上設置方式と水上(主として海上)設置方式とがあるが、沿岸域から後背に山岳地帯をかかえる我が国の場合は、沿岸域に安定した風が見込める平野が少ない状況にある一方、日本は四方を海で囲まれており、海上は発電に適した風が容易に得られるとともに、設置上の制約が少ないなどの利点を有する。そこで、近年は多くの洋上風力発電設備が建設されている。
【0003】
洋上風力発電設備を建設するには、洋上風力発電設備を建設するための大型クレーンを搭載した洋上作業設備を用いる方法が多く採用されている。前記洋上作業設備としては、自己昇降装置付きの自航式クレーン船を用いる場合と、自己昇降装置付き台船を用いる場合がほとんどである。
【0004】
前者の自己昇降装置付きの自航式クレーン船は、自らの動力で航行する自航式船体の甲板上に、風車のタワー、ナセル、ブレードを積載可能とするとともに、これらを据え付けるための大型クレーンを設備したもので、クレーン船の3箇所又は4箇所に鉛直方向に延びる昇降自在の脚柱(以下、「昇降レグ」ともいう。)を設けるとともに、この昇降レグを上下動に駆動させる油圧ジャッキシステムを備え、風力発電設備を建設する場所まで自航したならば、前記昇降レグを下方向に降ろして下端を海底に支持させ、引き続き昇降レグを下降させることによりクレーン船を海面上まで持ち上げた状態とし、これを洋上作業設備として洋上風力発電設備を建設する方法である。
【0005】
後者の自己昇降装置付き台船は、自航できない台船に対して、鉛直方向に昇降自在の複数本の昇降レグを設けるとともに、この昇降レグを上下動させる油圧ジャッキシステムを備え、台船上に自走式のクローラクレーン又は固定式クレーンを搭載したものである。風力発電設備を建設する場所まで曳航船によって運搬したならば、前記昇降レグを下方向に降ろして下端を海底に支持させ、引き続き昇降レグを下降させることにより台船を海面上まで持ち上げた状態とし、これを洋上作業設備として洋上風力発電設備を建設する方法である。
【0006】
一方、本出願人等においても、下記特許文献1に示されるように、洋上作業設備を低コストで製造するために、海上での石油掘削や天然ガスの採掘を目的に製造された既存のジャッキアップ式掘削リグを改造して洋上風力発電設備のための洋上作業設備とする技術を提案した。具体的には、3本以上の脚柱、前記脚柱が配置され、前記脚柱に対して昇降可能に支持されたメインデッキ部、前記メインデッキ部に支持構造を介して支持されたカンチレバーおよび前記カンチレバーに配置された掘削設備を有するジャッキアップ式掘削リグを用意すること、前記ジャッキアップ式掘削リグから、前記カンチレバーおよび前記掘削設備を撤去すること、前記メインデッキ部から張り出して形成された張り出し部を、前記支持構造を利用して前記メインデッキ部に付加すること、および前記張り出し部にクレーンを搭載することを含む洋上作業設備の製造方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に係る洋上作業設備の場合は、概ね6MWクラスまでの洋上風力発電設備の建設を対象とするものであり、クレーン規模は比較的中型の800t吊りクラスを想定するものであった。
【0009】
近年は、洋上風力発電設備の大型化が予定されており、15MWクラス、将来的には20MWクラスのものが建設される予定である。このクラスの風力発電設備を建設するためのクレーンとしては、1200t~1600tクラスのクレーンが必要になる。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に係るクレーン搭載部の構造は、メインデッキ部の側面(後面)から側方(後方)に張り出して張り出し部を設け、その張り出し部の上面にクレーンを搭載する支持構造を採用するものであった。前記張り出し部はメインデッキに対して1辺の連結部にて支持される構造であり、その1辺の連結部に対して、クレーンの自重とそれによる曲げモーメント、更に吊り上げ荷重による重量とそれによる曲げモーメントが集中的に生じるため、支持構造としての強度が不十分になりやすいなどの問題が生じることが判明した。
【0011】
そこで本発明の第1の課題は、既存のジャッキアップ式掘削リグを改造することにより、洋上風力発電設備を建設するための大型クレーンを搭載した洋上作業設備を製造する方法において、前記大型クレーンの支持構造を見直すことにより、現状よりも更に大型のクレーンの搭載を可能にすることにある。
【0012】
第2の課題は、前記洋上作業設備を用いて、モノパイル基礎形式の洋上風力発電設備を施工する具体的手順を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第1課題を解決するために請求項1に係る本発明として、洋上風力発電設備を建設するための大型クレーンを搭載した洋上作業設備の製造方法であって、
メインデッキと、このメインデッキを上下方向に貫通して設けられるとともに、ジャッキ装置により昇降自在に支持された少なくとも3本以上の脚柱と、前記メインデッキの上面に外方に送り出し可能に支持されたカンチレバーと、このカンチレバーに設けられた掘削設備とを備えた既存のジャッキアップ式掘削リグを準備する第1ステップと、
前記ジャッキアップ式掘削リグから少なくとも前記カンチレバーと掘削設備とを含む不要設備を撤去する第2ステップと、
前記メインデッキの外縁部であって前記カンチレバーを撤去した部位に、平面視で多角形状の切欠き凹部を形成する第3ステップと、
前記多角形状の切欠き凹部の空間を埋めるようにクレーン架台用デッキを前記メインデッキに一体的に設けることにより、前記クレーン架台用デッキが前記切欠き凹部の各辺によって多面的に支持された構造とする第4ステップと、
前記クレーン架台用デッキ上に大型クレーンを搭載する第5ステップとからなることを特徴とする洋上作業設備の製造方法が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、先ず最初に、メインデッキと、このメインデッキを上下方向に貫通して設けられるとともに、ジャッキ装置により昇降自在に支持された少なくとも3本以上の脚柱と、前記メインデッキの上面に外方に送り出し可能に支持されたカンチレバーと、このカンチレバーに設けられた掘削設備とを備えた既存のジャッキアップ式掘削リグを準備する(第1ステップ)。次に、このジャッキアップ式掘削リグから少なくとも前記カンチレバーと掘削設備とを含む不要設備を撤去する(第2ステップ)。
【0015】
そして、前記メインデッキの外縁部であって前記カンチレバーを撤去した部位に、平面視で多角形状の切欠き凹部を形成したならば(第3ステップ)、前記多角形状の切欠き凹部の空間を埋めるようにクレーン架台用デッキを前記メインデッキに一体的に設けることにより、前記クレーン架台用デッキが前記切欠き凹部の各辺によって多面的に支持された構造とする(第4ステップ)。前記カンチレバーを撤去した部位は、カンチレバーからの荷重に耐え得るようにデッキ内部が十分に補強された部分となっており、ここに大型クレーンを据え付けるためのクレーン架台用デッキを設けるようにすることで大型クレーンからの荷重に耐え得る強度を持たせることが可能である。
【0016】
本発明では特に、大型クレーンを支持するためのクレーン架台用デッキを設ける際に、敢えてメインデッキに、平面視で多角形状の切欠き凹部を形成するようにした上で、この切欠き空間にクレーン架台用デッキを設けるようにしている。その結果、前記クレーン架台用デッキは前記多角形状の切欠き凹部の各辺(各面)によって支持された多面支持構造となるため、クレーンの大型化に耐え得る強度を確保することが容易に可能になる。最後に、クレーン架台用デッキに大型クレーンを搭載する(第5ステップ)。以上の手順によって洋上作業設備を製造することにより、現状よりも更に大型のクレーンが搭載可能になる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記大型クレーンを支持する支柱の中心点は、前記多角形状の切欠き凹部を形成する前のメインデッキの外縁線位置と同位置又はそれよりもメインデッキの内方側位置とする請求項1記載の洋上作業設備の製造方法が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、大型クレーンを支持する支柱の位置を規定することにより、大型クレーンからの荷重の低減化を図ったものである。すなわち、前記大型クレーンを支持する支柱の中心点は、大型クレーンの自重作用点となる位置であるが、この自重作用点の位置がメインデッキの外縁線から外方に張り出した位置にした場合は、張出距離と鉛直力の積に相当する曲げモーメントが発生することになるが、自重作用点の位置(支柱中心点)がメインデッキの外縁線から外方に張り出さない位置とすることにより、自重による曲げモーメントの発生を無くすことが可能になるためクレーン架台用デッキに加わる荷重の軽減化を図ることが可能になる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記多角形状の切欠き凹部の形状は矩形状とし、前記クレーン架台用デッキは3辺支持による構造とする請求項1記載の洋上作業設備の製造方法が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、前記多角形状の切欠き凹部の好ましい形状例を示したものである。具体的には、前記多角形状の切欠き凹部の形状は矩形状とし、前記クレーン架台用デッキは3辺支持による構造とすることが望ましい。製造上の理由からも前記切欠き凹部の形状は矩形状とするのが望ましい。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記クレーン架台用デッキは、デッキの一部をメインデッキの外縁線位置よりも外方に張り出して形成するとともに、張り出したクレーン架台用デッキから側方に拡幅させた拡幅デッキ部を設け、この拡幅デッキ部を前記メインデッキに接合させてある請求項1記載の洋上作業設備の製造方法が提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明は、クレーン架台用デッキの他の好ましい形成態様例を示したものである。具体的には前記クレーン架台用デッキは、デッキの一部をメインデッキの外縁線位置よりも外方に張り出して形成した上で、この張り出したクレーン架台用デッキから側方に拡幅させた拡幅デッキ部を設け、この拡幅デッキ部を前記メインデッキに接合させるようにするものである。この場合は、前記クレーン架台用デッキが多角形状の切欠き凹部で多辺支持されている構造に加えて、前記拡幅デッキがメインデッキに2辺で支持されていることによって、より多くの辺で支持された形態とすることができる。
【0023】
次いで、上記第2課題を解決するために請求項5に係る本発明として、請求項1~4いずれかに記載の洋上作業設備の製造方法によって製造された洋上作業設備を用いた洋上風力発電設備の施工方法であって、
前記メインデッキに対して、杭打ち打設のためのガイドとなるパイルグリッパーを設ける準備工程と、
前記洋上作業設備を曳航船によって風力発電設備の建設場所まで運搬したならば、脚柱を下降させてメインデッキを海面よりも上方に上昇させ、所定の高さ位置で固定を図る洋上作業設備の設置工程と、
大型起重機船によってモノパイルを吊り上げて、前記パイルグリッパに落とし込んで海底に着底させた状態とし、次いで前記大型クレーンによって吊り上げたバイブロハンマー及び/又は油圧ハンマーによって海底地盤への打込みを行うモノパイル打設工程と、
前記大型クレーンによって、前記モノパイルの頂部にトランジションピースを設置した後、その上部側に、長手方向に複数に分割されたタワー分割片を順に連結しながら設置することによりタワーを完成させ、次いでタワーの頂部にナセルを設置した後、複数枚のブレードを前記ナセルに連結する洋上風力発電設備の組立工程とからなることを特徴とする洋上風力発電設備の施工方法が提供される。
【0024】
上記請求項5記載の発明は、前記洋上作業設備を用いて行う、モノパイル基礎形式の洋上風力発電設備の施工手順を示したものである。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり、本発明によれば、既存のジャッキアップ式掘削リグを改造することにより、洋上風力発電設備を建設するための大型クレーンを搭載した洋上作業設備を製造する方法において、前記大型クレーンの支持構造を見直すことにより、現状よりも更に大型のクレーンの搭載が可能になる。
【0026】
また、前記洋上作業設備を用いて、モノパイル基礎形式の洋上風力発電設備を施工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る洋上作業設備1の全体斜視図である。
【
図4】洋上作業設備1の製造手順図(その1)であり、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図5】洋上作業設備1の製造手順図(その2)であり、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図6】洋上作業設備1の製造手順図(その3)であり、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図7】クレーン架台用デッキの取付部を示す、(A)は縦断面図、(B)は平面図である。
【
図8】洋上作業設備1の他の支持構造例を示す、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
【
図9】ジャッキアップ式掘削リグ50を示す、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【
図10】洋上作業設備1に杭打ち打設のためのガイドとなるパイルグリッパー13を設けた状態を示す側面図である。
【
図11】洋上風力発電設備の施工要領図(その1)である。
【
図12】洋上風力発電設備の施工要領図(その2)である。
【
図13】洋上風力発電設備の施工要領図(その3)である。
【
図14】洋上風力発電設備の施工要領図(その4)である。
【
図15】洋上風力発電設備の施工要領図(その5)である。
【
図16】洋上風力発電設備の施工要領図(その6)である。
【
図17】洋上風力発電設備の施工要領図(その7)である。
【
図18】洋上風力発電設備の施工要領図(その8)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
本発明に係る洋上作業設備1は、洋上風力発電設備を建設するための大型クレーンを搭載したものであり、その製造手法は既存のジャッキアップ式掘削リグを改造することにより得られるものである。本発明では特に、前記大型クレーンの支持構造を見直すことにより、現状よりも更に大型のクレーンの搭載が可能としたものである。具体的に想定されるクレーンは1200t~1600tクラスの大型クレーンであり、これらの大型クレーンを支持し得る支持構造とするものである。
【0030】
本発明によって製造された洋上作業設備1は、
図1~
図3に示されるように、メインデッキ2と、このメインデッキ2を上下方向に貫通して設けられるとともに、ジャッキ装置(図示せず)により昇降自在に支持された少なくとも3本以上の脚柱3、3…と、前記メインデッキ2に形成された切欠き凹部2aの空間を埋めるように設けられたクレーン架台用デッキ4と、このクレーン架台用デッキ4の上面に支柱5を介して搭載された大型クレーン6とから構成されている。
【0031】
前記洋上作業設備1では、特に前記大型クレーン6が1200t~1600tクラスの大型クレーンであっても搭載可能なように、メインデッキ2に対して多辺支持によって支持されたクレーン架台用デッキ4を追加的に設けて、このクレーン架台用デッキ4に前記大型クレーン6を搭載するようにしている。
【0032】
以下、その製造方法について、手順に従いながら詳述する。
<第1ステップ>
先ず最初に、
図9に示されるように、メインデッキ2と、このメインデッキ2を上下方向に貫通して設けられるとともに、ジャッキ装置(図示せず)により昇降自在に支持された少なくとも3本以上の脚柱3、3…と、前記メインデッキ2の上面に外方に送り出し可能に支持されたカンチレバー8と、このカンチレバー8に設けられた掘削設備9とを備えた既存のジャッキアップ式掘削リグ10を準備する。
【0033】
前記ジャッキアップ式掘削リグ10は、海上での石油掘削や天然ガスの採掘を目的に製造された移動式海洋掘削設備であり、海域の水深により、ジャッキアップ型と、セミサブマーシブル型と、ドリルシップ型とが存在する。これらの内、本発明ではジャッキアップ型と呼ばれる掘削設備を使用する。このジャッキアップ型は、甲板昇降型と言われプラットホーム(メインデッキ2)に対して、ジャッキ装置によって上下方向に可動する脚柱3(レグ)を設けたものである。前記脚柱は安定を確保するために少なくとも3本以上とされるが、近年のものは3脚柱式が主流となっている。前記脚柱3の駆動構造は、ラックアンドピニオン式、油圧式、空気圧式などのジャッキ装置によって上下方向に移動可能とされる。前記メインデッキ2の上面には、レールによる送り出し装置によってメインデッキ2の外側まで移動可能とされるカンチレバー8が設けられているとともに、このカンチレバー8の先端部分に掘削装置9が設けられている構造となっている。ジャッキアップの稼働限界水深は、通常は90~100m、最大で130m程度となっている。
【0034】
また、ここで働く職員や作業員の移動や緊急搬送のためにヘリポート7が設備されているとともに、宿泊施設も設備されている。また、メインデッキ2上には物資や掘削用器具類などの移動のために比較的小型のクレーン11も設備されている。
【0035】
<第2ステップ>
前記ジャッキアップ式掘削リグ10から少なくとも前記カンチレバー8と掘削設備9とを含む不要設備を撤去する。前記カンチレバー8を設置しているメインデッキ部分は、カンチレバー8及び掘削設備9を含めた全体の荷重に耐え得るように強固な補強(肉厚の増大、デッキ内部における小間隔での隔壁の設置、補剛部材の設置等)が成されている部位である。このカンチレバー8を設置した箇所に、新たに洋上風力発電設備の建設するための大型クレーン6を設置することにより、大型クレーン6からの荷重を支持し得るデッキ強度を有することが可能になる。
【0036】
前記ジャッキアップ式掘削リグ10には、他に小型のクレーン11が搭載される場合があるが、このクレーン11についても撤去するのが望ましいが、残置して洋上風力発電設備の建設資材・機材等を移動させるためのクレーンとして使用することも可能である。また、ヘリポート7については、撤去することも可能であるが、人員の輸送や緊急搬送などのためにヘリコプターが使用するのが都合が良いため残置することが望ましい。
【0037】
図4は、ジャッキアップ式掘削リグ10から前記カンチレバー8と掘削設備9とを撤去するとともに、小型クレーン11及びヘリポート7を撤去した状態を示したものである。なお、宿泊施設などや各種の付帯設備は図示を省略してある。
【0038】
<第3ステップ>
次に、
図5に示されるように、前記メインデッキ2の外縁部であって前記カンチレバー8を撤去した部位に、平面視で多角形状の切欠き凹部2aを形成する。前記多角形状の切欠き凹部2aの形状としては、例えば三角形状、四角形状(矩形状)、五角形状、六角形状とするのが望ましい。これらの内、特には図示されるように、四角形状(矩形状)の切欠き凹部2aとするのが望ましい。矩形状の切欠き凹部2aとする場合には、後述するように、クレーン架台用デッキ4を3辺支持による構造とすることができる。
【0039】
なお、前記メインデッキ2の内部は、隔壁によって多数のセルに分割された構造となっており、デッキ全体として十分に強度を有するように製作されている。従って、前記切欠き凹部2aの切断面には多数の隔壁が露出することになる(図示せず)。前記切欠き凹部2aの形成方法としては、ガス切断、プラズマ切断、レーザー切断等の熱切断による方法等を採用することができる。
【0040】
<第4ステップ>
図6に示されるように、前記多角形状の切欠き凹部2aの空間を埋めるようにクレーン架台用デッキ4をメインデッキ2に対して一体的に設けることにより、前記クレーン架台用デッキ4が前記切欠き凹部2aの各辺によって多面的に支持された構造とする。具体的には、矩形状に形成された切欠き凹部2aの部分に、四角柱体状のクレーン架台用デッキ4を設けるようにする。前記クレーン架台用デッキ4は、メインデッキ2に対して切欠き凹部2aの3辺で接合されることになり、これら3辺で支持された多辺支持構造となる。
【0041】
詳細には
図7に示されるように、前記クレーン架台用デッキ4は、大型クレーン6を設置するための支柱5が一体的に設けられた構造となっており、その天端高H1は前記メインデッキ2の上面よりも高く形成されるとともに、メインデッキ2の外縁よりも外方に突出し(突出量:D)、前記クレーン架台用デッキ4の下面はメインデッキ2の下面と一致する大きさで形成されている。前記クレーン架台用デッキ4の厚み(高さ)をメインデッキ2の厚みより大きく形成することによりクレーン架台用デッキ4自体の高強度化が図られている。また、前記クレーン架台用デッキ4の内部構造は、多数の補強部材群が縦及び横方向に配設されることにより大型クレーン6からの荷重に耐え得るように十分な補強が成されている(図示省略)。
【0042】
前記クレーン架台用デッキ4を前記切欠き凹部2aに対して一体的に設けるには、溶接によって両者を接合することが望ましい。クレーン架台用デッキ4の切欠き凹部2aへの接合面では、メインデッキ2の内部に存在する隔壁がすべてクレーン架台用デッキ4に連結するように溶接によって接合されることが望ましい。これらの溶接作業はメインデッキ2の内部に作業員が入って行われる。
【0043】
前記大型クレーン6の支柱5の中心点Cの位置は、切欠き凹部2aを形成する前のメインデッキ2の外縁線Kの位置と同位置又はそれよりもメインデッキ2の内方側位置とするのが望ましい。本形態例では
図7に示されるように、メインデッキ2の外縁線Kの位置と同位置となっている。すなわち、支柱5の中心点Cは大型クレーン6からの自重Pの作用点となる箇所であるが、この中心点Cがメインデッキ2の外縁線Kの位置から外方に突出している場合は、その際の離隔距離をLとすると、P×Lに相当する曲げモーメントが発生することになるが、その離隔距離Lを0(ゼロ)とすることにより曲げモーメントの発生を無くすことが可能になり、自重Pに対する荷重としては剪断力に耐え得るようにすれば良いことになる。なお、大型クレーン6が荷吊りすることにより発生する曲げモーメントは支柱5を介してメインデッキ2に伝達されることになるが、前記鉛直荷重Pに基づく曲げモーメント分の荷重を軽減できることにより荷重負荷を低減できるようになる。
【0044】
前記クレーン架台用デッキ4のメインデッキ2の外縁線Kの位置からの外方への突出量Dは、支柱5の半径Rよりも大きい寸法とされ、支柱5の全体がクレーン架台用デッキ4の内部に収容されるようになっている。
<第5ステップ>
最後に、
図1~
図3に示されるように、前記クレーン架台用デッキ4上に大型クレーン6を搭載する。本発明で対象とする洋上風力発電設備は15MW又は20MWクラスである。このクラスの場合は、タワー重量が1200t~1500t、ブレード重量が180t~250t、ナセル重量が650t~850t程度となるため、前記大型クレーン6としては1200t~1600tクラスの大型クレーンを想定することになる。この大型クレーン6は、旋回部本体が前記支柱5の頂部に固定されることにより設置される。
【0045】
本形態例では、前記支柱5は前記クレーン架台用デッキ4と一体的に製作されているが、前記支柱5と前記クレーン架台用デッキ4とを別体とし、クレーン架台用デッキ4を設置した後に、別途支柱5を設置するようにしてもよい。
【0046】
〔第2形態例〕
上記第1形態例では、前記クレーン架台用デッキ4は、メインデッキ2に矩形状に切り欠かれた切欠き凹部2aの空間を埋めるように設置することによって、3辺支持による支持構造となるようにしたが、第2形態例は更に支持構造の高強度化を図ったものである。
【0047】
本第2形態例では、
図8に示されるように、前記クレーン架台用デッキ4は、デッキの一部をメインデッキ2の外縁線よりも外方に張り出して形成するとともに、張り出したクレーン架台用デッキ4から側方に拡幅させた拡幅デッキ部12A、12Bを設け、この拡幅デッキ部12A,12Bを前記メインデッキ2に接合させてある構造とするものである。
【0048】
前記クレーン架台用デッキ4と、前記拡幅デッキ12A、12Bとは一体的構造を成し、大型クレーン6からの荷重はクレーン架台用デッキ4及び拡幅デッキ12A、12Bに伝達され、これらを介してメインデッキ2に伝達されることになる。
【0049】
本第2形態例では、前記クレーン架台用デッキ4が3辺で支持されていることに加えて、前記拡幅デッキ12A、12Bがそれぞれメインデッキ2に対して1辺ずつで支持されていることによって、合計5辺でメインデッキ2に支持されていることになり、より強固な支持構造とすることが可能になる。
【0050】
なお、前記第2形態例では、前記拡幅デッキ12A、12Bの外側端部がメインデッキ2の角部(出隅部)まで延在されているが、その途中までの任意長さまでとすることも可能である。
【0051】
〔洋上風力発電設備の施工方法〕
次に、前記洋上作業設備1を用いた洋上風力発電設備の施工方法について説明する。
【0052】
洋上風力発電設備の基礎形式は、着床式の中でも比較的浅い水深に適用されるモノパイル形式を対象としている。なお、着床式の基礎形式としては、他にジャケット式やTLP式などがあるが、過去の実績では洋上風力発電設備の基礎形式としてはモノパイル形式のシェアが群を抜いている。
【0053】
<準備工程>
先ず、洋上風力発電設備を施工するための準備工程として、
図10に示されるように、メインデッキ2に対して、杭打ち打設のためのガイドとなるパイルグリッパー13を設けるようにする。前記パイルグリッパー13は、モノパイル挿通部を有し、モノパイル14を鉛直方向に移動可能に保持するものである。前記パイルグリッパー13は、モノパイル14の垂直性を保つために必要であり、バイブロハンマーや油圧ハンマーのセンサーと併せて使用することで垂直性を正確かつ容易に制御することが可能になる。
【0054】
前記パイルグリッパー13は、前後進自在に設置されており、使用時は前進してメインデッキ2の側縁よりも突出した位置に設定されるが、使用しない時には後方位置に待避することで他の作業の邪魔にならないようになっている。
【0055】
<洋上作業設備の設置工程>
前記洋上作業設備1は、洋上風力発電設備の建設箇所の海上位置に設置される。前記洋上作業設備1を岸壁ヤードから建設現場まで移動させる場合は、海面に浮かばせた状態ですべての脚柱3、3…を上方向に移動させた状態とし、曳航船によって建設場所まで運搬する。そして、建設現場に到着したならば、脚柱3、3…を下降させて脚柱3、3…の先端部(着底支持部3a)を海底に着底させ、引き続き脚柱3、3…を下降させることにより、メインデッキ2を海面よりも上方に上昇させるようにする。そして、所定の高さ位置まで上昇させたならばロックを掛けて固定を図る。
【0056】
<モノパイル打設工程>
岸壁ヤード(バックヤード)において、
図11に示されるように、大型起重機船15によってモノパイル14を建て起こし、
図12に示されるように、モノパイル14を吊り上げた状態のまま曳航船16によって洋上風力発電設備の建設場所まで運搬する。
【0057】
次いで、
図13に示されるように、大型起重機船15によって吊持したモノパイル14を前記パイルグリッパ13のモノパイル挿通部に落とし込んで海底に着底させた状態とする。そして、
図14に示されるように、大型クレーン6によって吊持したバイブロハンマー16及び/又は油圧ハンマー17によって海底地盤への打込みを行うようにする。
【0058】
前記モノパイル14の建て起こしは、岸壁ヤードで行いそのまま大型起重機船15によって運搬するようにしたが、洋上風力発電設備の建設場所までモノパイル14を大型台船で運搬し、そこで大型起重機船15によって建て起こしを行うようにしてもよい。また、前記モノパイル14の打込み作業は、バイブロハンマー16又は油圧ハンマー17によって行うことができるが、鉛直精度を確保するには、バイブロハンマー16を地盤挿入時に用い、最終打ち止めを油圧ハンマー17によって行う併用方式とするのが望ましい。
【0059】
<洋上風力発電設備の組立工程>
前記モノパイル14の打設が完了したならば、次に洋上風力発電設備の組立作業に入る。通常は、
図15に示されるように、前記モノパイル14の頂部にトラジションピース19を設置し、このトラジションピース19の上部にタワーを立てるようにする。前記トラジションピース19は、予め内部に組み込まれたジャッキ群によりレベル調整を可能とした円筒状の接続ピースであり、レベル調整を行った後に、モノパイル14とトラジションピース19との隙間にグラウトを充填して一体化を図るようにする。
【0060】
次に、
図16に示されるように、前記トラジションピース19の上部に、長手方向に複数に分割されたタワー分割片18
1~18
4を順に連結しながら設置しタワー18を完成させ、次いで
図17に示されるように、タワー18の頂部にナセル20を設置した後、
図18に示されるように、3枚のブレード21(21
1~21
3)を前記ナセル20に連結することにより洋上風力発電設備を完成させる。
【0061】
〔他の形態例〕
(1)前記メインデッキ2の側部には、洋上作業設備1が海上に浮かんだ状態で、横方向への移動など操船のために用いられる推進器(スラスター)を複数設けるようにすることが望ましい。
(2)本発明に係る洋上作業設備1は、洋上風力発電設備を建設するために用いられるものであるが、その後に洋上風力発電設備のメンテナンスや解体等にも用いることができるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…洋上作業設備、2…メインデッキ、2a…多角形状の切欠き凹部、3…脚柱、3a…着底支持部、4…クレーン架台用デッキ、5…支柱、6…大型クレーン、7…ヘリポート、8…カンチレバー、9…掘削装置、10…ジャッキアップ式掘削リグ