(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022845
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】スパウト及びそれを用いたチューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 35/12 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B65D35/12 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126239
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA02
3E065BA14
3E065BA25
3E065BA34
3E065BA40
3E065BB03
3E065DA04
3E065DA11
3E065DB06
(57)【要約】
【課題】チューブ容器のプラスチック材料からなるスパウトにおいて、スパウトのフランジ部分の容器本体への超音波による溶着が、溶融した樹脂の逃げ場がないことによるチューブ容器への穴あきなどの影響がなく安定して行なうことのできるスパウト及びそれを用いたチューブ容器を提供すること。
【解決手段】スパウトはプラスチック材料からなり、筒形の取り出し口と、フランジとから構成され、フランジは、スパウトの一方の端に位置して外側に広がっており、フランジには、エネルギーダイレクターが設けてあり、エネルギーダイレクターの外側には、エネルギーダイレクターを設けてある面と同じ面に、フランジを切り欠いた形状の肉薄部分が設けてあることを特徴とするスパウト及びそれを用いたチューブ容器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトはプラスチック材料からなり、筒形の取り出し口と、フランジとから構成され、
フランジは、スパウトの一方の端に位置して外側に広がっており、
フランジには、エネルギーダイレクターが設けてあり、
エネルギーダイレクターの外側には、エネルギーダイレクターを設けてある面と同じ面に、フランジを切り欠いた形状の肉薄部分が設けてあることを特徴とする、スパウト。
【請求項2】
前記フランジは、筒形の取り出し口に近い中央部と、外周部とからなり、
スパウトを上に向けたとき、フランジの外周部は、中央部に比べて下方に位置してエネルギーダイレクターが設けてあることを特徴とする、請求項1に記載のスパウト。
【請求項3】
請求項1に記載のスパウトを用いて、そのフランジを容器本体に溶着して一体化したものであることを特徴とする、チューブ容器。
【請求項4】
前記フランジの容器本体への溶着部分は、容器本体の内周面がたがいに接するように折り返されたプリーツ部であることを特徴とする、請求項3に記載のチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウト及びそれを用いたチューブ容器に係るものである。特にプラスチック材料からなり、超音波溶着によってスパウトを容器本体と接合することが可能な、スパウト及びそれを用いたチューブ容器に係るものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックを材料とするチューブ容器は、その利便性の高さから様々な用途展開がなされている。
【0003】
例えばチューブ容器は、例えばペースト状、半固形状のものを内部に収納し、搾り出すことのできる容器である。その形状は、多くが断面が円形あるいは楕円形の中空の筒状の構造で、内容物を搾り出す口部と蓋を一方の端部に有し、もう一方の端部であるエンド部は、ヒートシールなどで閉じられている。
【0004】
そのため近年はプラスチック材料を用いた、所謂成型チューブが主流になっている。またチューブ容器の用途は歯磨き、洗顔料などのトイレタリー用品やクリームなどの化粧品、塗り薬などの薬品類、ペースト状の食品や香辛料、接着剤など日常生活に密着して幅広い用途に広がっている。
【0005】
こういったチューブ容器においては、内容物の取り出しは、例えば容器本体を押圧して絞り出しとすることが可能であり、スパウトと呼ばれる口部を備え、スパウトは容器本体に溶着されてチューブ容器を構成することが行われている。
【0006】
チューブ容器に限らず、容器本体へのスパウトの溶着は、例えば超音波の振動エネルギーを用いて溶着させ、スパウトと容器本体を接合する方法が知られているが、生産性において優れる半面、溶融した樹脂のはみだしやそれに伴って、容器本体を突き破って穴が開く恐れもあって、解決が求められてきた。また例えば、溶着の条件のみで制御しようとしても、安定した生産を確保することは困難とされている。
【0007】
特許文献1には、スパウトの形状を改善して開閉方法を簡略化することが提案されているが、スパウトの容器本体への接合については考慮されておらず、スパウトのより溶着に適した形状が求められているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、チューブ容器のプラスチック材料からなるスパウトにおいて、スパウトのフランジ部分の容器本体への超音波による溶着が、溶融した樹脂の逃げ場がないことによるチューブ容器への穴あきなどの影響がなく安定して行なうことのできるスパウト及びそれを用いたチューブ容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
スパウトはプラスチック材料からなり、筒形の取り出し口と、フランジとから構成され、
フランジは、スパウトの一方の端に位置して外側に広がっており、
フランジには、エネルギーダイレクターが設けてあり、
エネルギーダイレクターの外側には、エネルギーダイレクターを設けてある面と同じ面に、フランジを切り欠いた形状の肉薄部分が設けてあることを特徴とする、スパウトである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、
前記フランジは、筒形の取り出し口に近い中央部と、外周部とからなり、
スパウトを上に向けたとき、フランジの外周部は、中央部に比べて下方に位置してエネルギーダイレクターが設けてあることを特徴とする、請求項1に記載のスパウトである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載のスパウトを用いて、そのフランジを容器本体に溶着して一体化したものであることを特徴とする、チューブ容器である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、
前記フランジの容器本体への溶着部分は、容器本体の内周面がたがいに接するように折り返されたプリーツ部であることを特徴とする、請求項3に記載のチューブ容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チューブ容器のプラスチック材料からなるスパウトにおいて、スパウトのフランジ部分の容器本体への超音波による溶着が、溶融した樹脂の逃げ場がないことによるチューブ容器への穴あきなどの影響がなく、溶着を安定して行なうことのできるスパウトの提供が可能である。
【0015】
また、フランジの外周が、切り欠き形状の肉薄部分としてあるために、プラスチック材料の使用量を削減することが可能である。これは特に高価なプラスチック材料を用いる場合にコスト面でメリットが大きい。また、プラスチック材料の使用量の削減は、環境保護の面においても望ましいものである。
【0016】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、フランジは、筒形の取り出し口に近い中央部と、外周部とからなり、スパウトを上に向けたとき、フランジの外周部は、中央部に比べて下方に位置してエネルギーダイレクターが設けてあることによって、容器本体の厚さや剛性の影響を受けにくくなる利点を有する。
【0017】
また、特に請求項3に記載の発明によれば、
請求項1に記載のスパウトを用いて、容器本体に溶着して一体化したことを特徴とするチューブ容器の提供が可能である。
【0018】
すなわち、このスパウトを使用することによって、たとえば超音波溶着の場合にはその条件が安定し、溶着に伴う溶融樹脂のはみだしや、本体への穴あきのおそれがなくなり、チューブ容器の品質の安定化を図ることができる。
【0019】
そのため、容器本体を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体に厚さの薄いものを使用することが可能になり、その結果省資源、コスト削減に効果的であり環境保護にも資するものである。
【0020】
加えて、容器本体を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを
基材とする積層体に厚さの薄いものを使用することは、内容物の絞り出しが容易となり、最後まで使い切ることが可能となる利点を有する。
【0021】
また、特に請求項4に記載の発明によれば、
フランジの容器本体への溶着部分は、容器本体の内周面がたがいに接するように折り返されたプリーツ部であることによって、容器本体の厚さや剛性の影響を受けることが少なく、容易な工程によって、より安定した品質のチューブ容器の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係るスパウトの一実施態様を説明するための、断面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の一実施態様を説明するための、溶着前の部分断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の一実施態様を説明するための、溶着後の部分断面模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の他の実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の更に他の実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の更に他の、肩部が曲面で形成される実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の溶着部部分がプリーツ部である場合の説明をするための、平面模式図及び部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を
図1~
図7を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例によってのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0024】
図1は、本発明に係るスパウトの一実施態様を説明するための、断面模式図である。
【0025】
本発明は、スパウト(10)及びそれを用いたチューブ容器に関するものである。スパウト(10)はプラスチック材料からなり、容器本体と接着して一体化することができ、チューブ容器を構成する。
【0026】
スパウト(10)は取り出し口(1)と、フランジ(2)とから構成され、取り出し口(1)は中空の筒形状であって、内容物の充填口又は取り出し口として使用可能である。
【0027】
この筒形状は例えば円筒形であってもよい。
図1に示す例においては、取り出し口(1)は、円筒形であってねじ山(8)を有しており、例えばキャップを螺合するなどして、チューブ容器を密封することができる。また、内容物は、液状やペースト状のものであってもよく、あるいは粉体や顆粒、粒形状のものであってもよい。
【0028】
フランジ(2)は、スパウト(10)の一方の端に位置して接続しており、筒状の取り出し口(1)の外側に向かって広がっている。
図1に示すスパウト(10)の断面図においては、取り出し口(1)の円筒、及びフランジ(2)の円盤を、中心線で2分する形で縦に割った断面を示している。
【0029】
前述のように、
図1に示す例においては、取り出し口(1)の円筒の外側には、ねじ山(8)が設けてあり、例えばキャップなど別部材の蓋と螺合してチューブ容器を密封する
ことができる。この密封の方式には特段の限定を加えるものではなく、螺合に限定することなく、他の方式でも構わない。
【0030】
フランジ(2)と容器本体との接着は、フランジ(2)の容器本体の外側に向く面と、容器本体の胴部の内側の面とを、接着してチューブ容器として一体化することができる。この接着には、例えば溶着を用いることができる。特に溶着を、超音波溶着とすることが可能である。この超音波溶着の様子については、
図2及び
図3を用いて改めて詳細な説明を加える。
【0031】
図1に示す例において、フランジ(2)の、容器本体と溶着する面には、フランジ(2)の円周と同心円のエネルギーダイレクター(3)が設けてある。このエネルギーダイレクター(3)は、溶着が超音波溶着である場合に有効であって、その断面は
図1に示す通り、三角形の突起形状である。
【0032】
また、エネルギーダイレクター(3)の外側には、フランジ(2)の円周に沿って、エネルギーダイレクター(3)の突起を設けてある面と同じ面に、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)が設けてある。このフランジ(2)が肉薄部分(4)を有する形状は、本発明によるスパウト(10)の特徴である。
【0033】
すなわち、エネルギーダイレクター(3)は、超音波振動による樹脂の溶融の開始位置を一定化して、また均一な溶融状態を作ることができ、溶着安定性が増大する。その結果均一で安定した溶着強度を得ることが可能となる。
【0034】
また、この時溶融した樹脂の一部が流動し、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)に移動可能となる結果、溶着に伴う溶融樹脂のはみ出しを防止することができる。
【0035】
また、チューブ容器本体のプラスチックフィルム、あるいはプラスチックフィルムを基材とする積層体への、逃げ場を失った溶融樹脂のはみだしによる穴あき等のおそれをなくすことに効果的である。
【0036】
図2は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の一実施態様を説明するための、溶着前の部分断面模式図である。
【0037】
図2に示す例は、振動エネルギーを効率よく伝達させるための共振体である、ホーン(30)を用いた超音波溶着の例である。このようにして、請求項1に記載のスパウト(10)を用いて、容器本体(20)に超音波溶着して一体化し、チューブ容器(100)とすることができる。但し、
図2においてスパウト(10)は、
図1に示す例と同じ形状であり、容器本体(20)との溶着前の状態を示している。
【0038】
図2に示す例は、容器本体(20)は、プラスチックフィルムもしくはプラスチックフィルムを基材とした積層体からなる中空円筒であって、チューブ容器(100)の胴部を形成している。この容器本体(20)を、本発明によるスパウト(10)と、超音波溶着して一体化することが可能である。
【0039】
この超音波溶着のために、フランジ(2)の、容器本体(20)と超音波溶着しようとする面には、フランジ(2)の円周と同心円の、エネルギーダイレクター(3)が設けてある。
【0040】
その断面は、
図2に示すように三角形の突起形状であって、エネルギーダイレクター(
3)の外側には、フランジ(2)の外周に沿って、エネルギーダイレクター(3)の突起を設けてある面と同じ面に、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)が設けてある。スパウト(10)がこのような形状であることによって、溶融樹脂の流れが制御され、超音波溶着の条件を安定化させることに効果的である。
【0041】
すなわち、エネルギーダイレクター(3)は超音波振動による樹脂の溶融の開始位置を一定化して、また均一な溶融状態を作ることができ、その結果均一で安定した溶着強度を得ることが可能となる。
【0042】
この溶着においては、ホーン(30)からの超音波振動が、エネルギーダイレクター(3)の三角形の突起部分に集中し、樹脂の熱溶融温度まで発熱、溶融し、流動化した樹脂は図中矢印(5)の方向に流動し、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)に移動することが可能である。すなわち肉薄部分(4)は、溶融樹脂の逃げ場として作用し安定した溶着を実現することができる。
【0043】
すなわち、このチューブ容器(100)の溶着において、肉薄部分(4)を設けてあることによって、溶着に伴う溶融樹脂のはみ出しを防止することができる。また、容器本体のプラスチックフィルム、あるいはプラスチックフィルムを基材とする積層体への、逃げ場を失った溶融樹脂の、はみ出しによる穴あき等の欠陥発生のおそれをなくすことに効果的である。
【0044】
また、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)を設けることは、使用樹脂量の削減を可能とし、コストの削減につながり、スパウト(10)の成形サイクルの短縮にも効果的である。
【0045】
更には安定した溶着が実現できる結果、容器本体(20)を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体の厚さを薄くすることも可能である。
【0046】
容器本体(20)の厚さを薄いものにできることは、コスト面のメリットにとどまらず、省資源、環境適合の面においても極めて好ましいものである。
【0047】
加えて、容器本体を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体に厚さの薄いものを使用することは、内容物の絞り出しが容易となり、最後まで使い切ることが可能となる利点を有する。
【0048】
図3は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の一実施態様を説明するための、溶着後の部分断面模式図である。
【0049】
前述のように、スパウト(10)と容器本体(20)との接着は、溶着とすることができ、例えば超音波溶着を用いることができる。ホーン(30)からの超音波振動によって発熱し、流動化した溶融樹脂(6)は、フランジ(2)と、容器本体(20)との間隙に広がって両者を溶着させ、一体化させることができる。
【0050】
このとき、溶融樹脂(6)の一部はフランジ(2)に設けられた肉薄部分(4)を逃げ場として移動し、樹脂のはみだし、或いは容器本体(20)への穴あき等の欠陥発生を回避することができる。
【0051】
図3に示す例においては、超音波溶着後の状態であり、ホーン(30)はすでに離れて、溶融樹脂(6)も温度が下がって固化して、スパウト(10)と容器本体(20)が一体化して、チューブ容器(100)が完成した状態を示している。
【0052】
図4は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の他の実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0053】
図4に示すスパウト(10)の例において、フランジ(2)は、筒形の取り出し口(1)に近い中央部(11)と、外周部(12)とからなる。
【0054】
図4に示すように、スパウトを上に向けたとき、フランジの外周部(12)は、中央部(11)に比べて下方に位置してエネルギーダイレクター(3)が設けてある。エネルギーダイレクター(3)の外側には、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)が設けてある。
【0055】
フランジ(2)の外周部(12)が、中央部(11)に比べて下方に位置してエネルギーダイレクター(3)が設けてあることによって、この段差によって、容器本体(20)を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体の厚さの影響を受けにくくなる利点を有する。
【0056】
図5は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の更に他の実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0057】
図5に示すスパウト(10)の例においても、
図4で示す例と同様に、フランジ(2)は、筒形の取り出し口(1)に近い中央部(11)と、外周部(12)とからなる。
【0058】
図5に示すように、スパウト(10)を上に向けたとき、フランジの外周部(12)は、中央部(11)に比べて下方に位置してエネルギーダイレクター(3)が設けてある。加えて、
図5において見て取れるように、外周部(12)は、水平より下方に向かって傾斜がついている。エネルギーダイレクター(3)の外側には、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)が設けてある。
【0059】
フランジ(2)の外周部(12)が、中央部(11)に比べて下方に位置してエネルギーダイレクター(3)が設けてあることによって、この段差と、下方に向かった角度によって、容器本体(20)を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体の、厚さと剛性の影響を受けにくくなる利点を有する。
【0060】
すなわち、容器本体(20)の剛性が高い材質の場合においても、直角以下の折り曲げで溶着が可能となり、安定した溶着に効果的である。
【0061】
図6は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の更に他の、肩部が曲面で形成される実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0062】
図6に示すスパウト(10)の例においても、
図4及び
図5に示す例と同様に、フランジ(2)は、筒形の取り出し口(1)に近い中央部(11)と、外周部(12)とからなる。
【0063】
図6に示すように、スパウト(2)を上に向けたとき、フランジの外周部(12)は、中央部(11)に比べて下方に位置してエネルギーダイレクター(3)が設けてある。加えて、
図6において見て取れるように、外周部(12)は、水平より下方に向かって曲面となっている。エネルギーダイレクター(3)の外側には、フランジ(2)を切り欠いた形状の肉薄部分(4)が設けてある。
【0064】
フランジ(2)の外周部(12)が、中央部(11)に比べて下方に位置してエネルギーダイレクター(3)が設けてあることによって、この段差と、下方に向かった曲面によって、容器本体(20)を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体の厚さと剛性の影響を受けにくくなる利点を有する。
【0065】
すなわち、容器本体(20)の剛性が高い材質の場合において、直角以下の折り曲げで溶着が可能となり、安定した溶着に効果的である。
【0066】
また意匠性の面においても、スパウト(10)と容器本体(20)の肩部分の曲面を生かしたデザインとすることができる。
【0067】
図7は、本発明に係るスパウト及びそれを用いたチューブ容器の溶着部部分がプリーツ部である場合の説明をするための、平面模式図及び部分断面模式図である。
【0068】
図7に示す例において、この平面図はチューブ容器(100)のスパウト(10)の先端部から見降ろした平面模式図であって、スパウト(10)の円筒形の取り出し口(1)と、円形のフランジ(2)を覆う容器本体(20)の肩部のプリーツ部(21)が可視となっている。
【0069】
プリーツ部(21)は、容器本体(20)の肩部を覆っており、容器本体(20)の胴部の上部端部が規則正しく折り返されて形成されており、図中A-B線で切った部分断面模式図は、
図7中の下方に示してある。
【0070】
すなわち、容器本体(20)の内周面がたがいに接するように折り返されてプリーツ部(21)が形成されている。プリーツの幅については特段の制約を設けるものではないが、チューブ容器(100)としての意匠性のほか、フランジ(2)の外周の曲率や、容器本体(20)を構成するプラスチックフィルム、もしくはプラスチックフィルムを基材とする積層体の厚さ、剛性等を考慮して適宜決定することができる。
【0071】
プリーツ部(21)がフランジ(2)の容器本体(20)への溶着部分であることによって、容器本体(20)の厚さや剛性の影響を受けることが少なく、容易な工程によって、より安定した品質のチューブ容器(100)の提供が可能である。また意匠性の点で、プリーツ部(21)の規則的なデザインを生かしたものとすることも可能である。
【0072】
このようにして、本発明によればチューブ容器(100)のプラスチック材料からなるスパウト(10)において、スパウト(10)のフランジ(2)の容器本体への超音波による溶着が、溶融した樹脂の逃げ場がないことによるチューブ容器(100)の穴あきなどの影響がなく溶着を安定して行なうことのできるスパウト(10)、及びそれを用いたチューブ容器(100)を提供することが可能である。
【0073】
このチューブ容器(100)に収納される内容物は、液状やペースト状のものであってもよく、あるいは粉体や顆粒、粒形状のものであってもよい。
【0074】
また、プラスチック材料層を有する容器本体(20)の積層体は必要な性能を有する層を設けて要求される性能を具備することができる。例えば容器本体(20)を構成する積層体中にガスバリア層を設けて、包装材料として内容物を保護し、環境による変化や劣化を抑えることが可能である。
【0075】
またチューブ容器(100)が長期にわたって保管される場合においても、内容物の液
体の成分のうち、例えば揮発成分やにおい成分などが、包装袋外部に散逸することを抑制することができるチューブ容器(100)とすることができる。
【0076】
ガスバリア層には例えばアルミニウム箔などの金属箔を用いることはガスバリア性能において効果的であり、あるいは無機化合物の層をガスバリア層とした、ガスバリアフィルムを用いることも可能である。
【0077】
例えば、酸化ケイ素などの無機化合物を用いる場合には、ガスバリア層を設けてもチューブ容器は透明なものとすることができ、内容物の状態や残量が、チューブ容器(100)の外部から視認可能であり利便性が高い。
【0078】
ガスバリアフィルムの場合には、用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム基材とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0079】
ガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は例えば無機化合物の蒸着層、コーティング層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設ける。
【0080】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0081】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。
【0082】
コーティング層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0083】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0084】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0085】
そのため、ガスバリアフィルムとしてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も
具備することができる。
【0086】
このようにして本発明によれば、チューブ容器(100)のプラスチック材料からなるスパウト(10)に関して、スパウト(10)のフランジ(2)部分の容器本体への超音波による溶着が、溶融した樹脂の逃げ場がないことによるチューブ容器への穴あきなどの影響がなく安定して行なうことのできるスパウト(10)及びそれを用いたチューブ容器(100)を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1・・・取り出し口
2・・・フランジ
3・・・エネルギーダイレクター
4・・・肉薄部分
5・・・矢印
6・・・溶融樹脂
8・・・ねじ山
10・・・スパウト
11・・・中央部
12・・・外周部
20・・・容器本体
21・・・プリーツ部
30・・・ホーン
100・・・チューブ容器