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特開2024-22851鋼矢板の形状測定方法、及び、鋼矢板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022851
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】鋼矢板の形状測定方法、及び、鋼矢板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240214BHJP
   G01B 11/245 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/245 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126256
(22)【出願日】2022-08-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り JFE技報 No.48 2021年8月 ステンレス鋼・形鋼特集号 84頁~89頁
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 岳人
(72)【発明者】
【氏名】木川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】脇田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】有村 鶴和
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 貞則
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA22
2F065AA24
2F065AA30
2F065AA46
2F065AA53
2F065AA65
2F065BB05
2F065CC06
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH05
2F065HH14
2F065JJ03
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】寸法の測定精度を向上させることができる鋼矢板の形状測定方法、及び、鋼矢板の製造方法を提供すること。
【解決手段】鋼矢板の形状測定方法は、長手方向に平行な方向に搬送される鋼矢板の長手方向と直交する断面の形状を表した断面プロフィールを、光切断法によって測定する断面プロフィール測定工程と、断面プロフィールを用いて鋼矢板の形状を測定する形状測定工程と、を有し、形状測定工程は、断面プロフィールにおける寸法の測定基準位置を設定する基準位置設定工程と、測定基準位置を基準にして断面プロフィールにおける特定部位の寸法を演算する寸法演算工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に平行な方向に搬送される鋼矢板の長手方向と直交する断面の形状を表した断面プロフィールを、光切断法によって測定する断面プロフィール測定工程と、
前記断面プロフィールを用いて前記鋼矢板の形状を測定する形状測定工程と、
を有し、
前記形状測定工程は、
前記断面プロフィールにおける寸法の測定基準位置を設定する基準位置設定工程と、
前記測定基準位置を基準にして前記断面プロフィールにおける特定部位の寸法を演算する寸法演算工程と、
を有することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記特定部位の寸法として、全幅、全高さ、ウェブ厚さ、フランジ厚さ、ウェブ反り、及び、爪底傾きの中から選ばれる1種以上の測定を実施することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記断面プロフィールに対して、両側の継手部のそれぞれの最下点を通る直線である第1の基準線を、前記測定基準位置とすることを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記断面プロフィールに対して、ウェブ部における両側の肩部よりも内側で、任意の長さで引いた、ウェブ上面またはウェブ下面の近似直線のいずれか一方を第2の基準線と定めるか、あるいは、ウェブ上面及びウェブ下面のそれぞれの近似直線の中間を通る直線を第2の基準線として定めて、前記第2の基準線を、前記測定基準位置とすることを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項5】
請求項3に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記全幅の測定では、前記断面プロフィールに対して、
前記第1の基準線に垂直で、前記両側の継手部のそれぞれの最も外側の点を通過する二直線間の距離を前記全幅として算出することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記全高さの測定では、前記断面プロフィールに対して、
前記ウェブ部上におけるフランジ部側の任意の位置において、前記第2の基準線に対して垂直な第1の直線を引き、前記第1の直線と前記ウェブ上面とが交わる点を第1の交点とし、
前記第2の基準線と平行であって、継手部の最下点を通る第2の直線を引き、
前記第2の基準線と直交する方向で、前記第1の交点と前記第2の直線との間の距離を前記全高さとして算出することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項7】
請求項4に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記ウェブ厚さの測定では、前記断面プロフィールに対して、
前記ウェブ部の幅方向の任意の位置において、前記第2の基準線に対して垂直な第3の直線を引き、
前記第3の直線と前記ウェブ上面とが交わる点を第2の交点とし、
前記第3の直線と前記ウェブ下面とが交わる点を第3の交点とし、
前記第2の基準線と直交する方向で、前記第2の交点と前記第3の交点との間の距離を前記ウェブ厚さとして算出することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項8】
請求項4に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記フランジ厚さの測定では、前記断面プロフィールに対して、
継手部の最下点を通り、且つ、前記第2の基準線に平行な第4の直線を引き、
フランジ部の高さ方向の任意の位置において、前記第4の直線と平行な第5の直線を引き、
前記第5の直線とフランジ外面とが交わる点を第4の交点とし、
前記第4の交点を通り、且つ、フランジ内面に対して垂直な第6の直線を引き、
前記第6の直線と前記フランジ内面とが交わる点を第5の交点とし、
前記第6の直線が延びる方向で前記第4の交点と前記第5の交点との間の距離をフランジ厚さとして算出することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項9】
請求項4に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記ウェブ反りの測定では、前記断面プロフィールに対して、
前記ウェブ部における両側の肩部よりも内側の任意の二か所の位置で、前記第2の基準線に垂直な第7の直線及び第8の直線を引き、
前記ウェブ上面または前記ウェブ下面と、前記第7の直線及び前記第8の直線がそれぞれ交わる点を第6の交点及び第7の交点とし、
前記第2の基準線の延びる方向で、前記第6の交点と前記第7の交点とを結ぶ第9の直線を引き、
前記第2の基準線と直交する方向で、前記ウェブ上面または前記ウェブ下面と前記第9の直線との間の距離の最大値を前記ウェブ反りとして算出することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項10】
請求項3に記載の鋼矢板の形状測定方法において、
前記爪底傾きの測定では、前記断面プロフィールに対して、
フランジ部のフランジ内面に沿って前記第1の基準線側に延びた第10の直線を引き、
前記継手部の継手下面に沿って前記第10の直線と交わる第11の直線を引き、
前記第10の直線と前記第11の直線とが交わる点を第8の交点とし、
前記第8の交点よりも前記継手下面における外側の任意の位置で、前記第1の基準線に対して垂直な第12の直線を引き、
前記第12の直線と前記継手下面とが交わる点を第9の交点とし、
前記第12の直線の延びる方向で、前記第9の交点と前記第1の基準線との間の距離を前記爪底傾きとして算出することを特徴とする鋼矢板の形状測定方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の鋼矢板の形状測定方法によって、前記鋼矢板の形状を測定する工程を備えることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板の形状測定方法、及び、鋼矢板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形鋼の寸法を自動測定する方法としては、複数のセンサを配置して被測定材が走間中に自動測定する方法と、被測定材を停止させた状態でセンサを走査させて自動測定する方法とが知られている。
【0003】
特許文献1には、H形鋼に対して所定の光を照射する光源部と、H形鋼からの反射光を入力する複数個のラインセンサと、各ラインセンサからの受光信号よりH形鋼のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部と、H形鋼の表面までの距離を測定する複数個の光波距離計と、エッジ位置検出部及び光波距離計からの測定信号を入力して、H形鋼の所定の外形寸法を演算する演算処理部とから構成した寸法測定装置を用いて、H形鋼の寸法を測定する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、上下左右に傾斜させた状態で配置されたレーザー距離計を走査して、レーザー距離計の距離データ、傾斜角、及び、走査中の位置データから溝形鋼の断面形状を求め、この断面形状に基づき溝形鋼の各部寸法を演算する方法と、その装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-281429号公報
【特許文献2】特開2007-240303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された方法では、寸法測定装置によってH形鋼の搬送方向と直交する方向の同一断面における表面形状を、H形鋼の全周にわたって、且つ、H形鋼の長手方向の全長にわたって検出することができず、寸法測定装置の校正時に、H形鋼の各寸法の測定方向となる基準面を設定していた。そのため、寸法測定装置によってH形鋼の寸法を測定する際に、H形鋼を搬送する搬送テーブルの摩耗や搬送中のH形鋼のバタツキなどによって、測定断面が傾いて測定方向がずれることにより、幅寸法が小さく測定されてしまうなどの寸法の測定精度が悪化するという問題があった。
【0007】
特許文献2に開示された方法は、溝形鋼に特化した寸法演算方法であり、鋼矢板の寸法測定には、そのままでは使えないという問題があった。また、特許文献2では、静止状態の溝形鋼に対してレーザー距離計を走査させて、距離データ、距離計の傾斜角、距離計の走査中の位置データなどから、溝形鋼の断面プロフィールを合成して求めている。この断面プロフィールから各部の寸法を演算するにあたり、溝形鋼の底面両端エッジを検出し、この両端エッジとなる二箇所を通る仮想線を引き、この仮想線の傾きθcに応じて、断面プロフィールの傾き補正を行い、演算の対象とする全ての寸法について、この傾き補正を前提にしている。このとき、両端エッジ部の検出が正確に行われないと、仮想線の傾きを正しく求めることができない。この結果、桁向き補正がうまく行われずに、各部の寸法演算に大きな誤差が生じる場合があった。また、測定においては、レーザー距離計を溝形鋼の幅方向に移動させていく必要があり、寸法計測に時間がかかるという問題や、移動時のレーザー距離計の振動や移動位置の測定誤差が溝形鋼の寸法測定誤差につながる、という問題もあった。
【0008】
なお、上述した各問題については、H形鋼や溝形鋼とは異なる他の形鋼である鋼矢板の寸法を測定する場合にも同様に生じ得る。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、寸法の測定精度を向上させることができる鋼矢板の形状測定方法、及び、鋼矢板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、長手方向と平行な方向に搬送される鋼矢板の長手方向と直交する断面の形状を表した断面プロフィールを、光切断法によって測定する断面プロフィール測定工程と、前記断面プロフィールを用いて前記鋼矢板の形状を測定する形状測定工程と、を有し、前記形状測定工程は、前記断面プロフィールにおける寸法の測定基準位置を設定する基準位置設定工程と、前記測定基準位置を基準にして前記断面プロフィールにおける特定部位の寸法を演算する寸法演算工程と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記特定部位の寸法として、全幅、全高さ、ウェブ厚さ、フランジ厚さ、ウェブ反り、及び、爪底傾きの中から選ばれる1種以上の測定を実施することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記断面プロフィールに対して、両側の継手部のそれぞれの最下点を通る直線である第1の基準線を、前記測定基準位置とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記断面プロフィールに対して、ウェブ部における両側の肩部よりも内側で、任意の長さで引いた、ウェブ上面またはウェブ下面の近似直線のいずれか一方を第2の基準線と定めるか、あるいは、ウェブ上面及びウェブ下面のそれぞれの近似直線の中間を通る直線を第2の基準線として定めて、前記第2の基準線を、前記測定基準位置とすることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記全幅の測定では、前記断面プロフィールに対して、前記第1の基準線に垂直で、前記両側の継手部のそれぞれの最も外側の点を通過する二直線間の距離を前記全幅として算出することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記全高さの測定では、前記断面プロフィールに対して、前記ウェブ部上におけるフランジ部側の任意の位置において、前記第2の基準線に対して垂直な第1の直線を引き、前記第1の直線と前記ウェブ上面とが交わる点を第1の交点とし、前記第2の基準線と平行であって、継手部の最下点を通る第2の直線を引き、前記第2の基準線と直交する方向で、前記第1の交点と前記第2の直線との間の距離を前記全高さとして算出することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記ウェブ厚さの測定では、前記断面プロフィールに対して、前記ウェブ部の幅方向の任意の位置において、前記第2の基準線に対して垂直な第3の直線を引き、前記第3の直線と前記ウェブ上面とが交わる点を第2の交点とし、前記第3の直線と前記ウェブ下面とが交わる点を第3の交点とし、前記第2の基準線と直交する方向で、前記第2の交点と前記第3の交点との間の距離を前記ウェブ厚さとして算出することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記フランジ厚さの測定では、前記断面プロフィールに対して、継手部の最下点を通り、且つ、前記第2の基準線に平行な第4の直線を引き、フランジ部の高さ方向の任意の位置において、前記第4の直線と平行な第5の直線を引き、前記第5の直線とフランジ外面とが交わる点を第4の交点とし、前記第4の交点を通り、且つ、フランジ内面に対して垂直な第6の直線を引き、前記第6の直線と前記フランジ内面とが交わる点を第5の交点とし、前記第6の直線が延びる方向で前記第4の交点と前記第5の交点との間の距離をフランジ厚さとして算出することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記ウェブ反りの測定では、前記断面プロフィールに対して、前記ウェブ部における両側の肩部よりも内側の任意の二か所の位置で、前記第2の基準線に垂直な第7の直線及び第8の直線を引き、前記ウェブ上面または前記ウェブ下面と、前記第7の直線及び前記第8の直線がそれぞれ交わる点を第6の交点及び第7の交点とし、前記第2の基準線の延びる方向で、前記第6の交点と前記第7の交点とを結ぶ第9の直線を引き、前記第2の基準線と直交する方向で、前記ウェブ上面または前記ウェブ下面と前記第9の直線との間の距離の最大値を前記ウェブ反りとして算出することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法は、上記の発明において、前記爪底傾きの測定では、前記断面プロフィールに対して、フランジ部のフランジ内面に沿って前記第1の基準線側に延びた第10の直線を引き、前記継手部の継手下面に沿って前記第10の直線と交わる第11の直線を引き、前記第10の直線と前記第11の直線とが交わる点を第8の交点とし、前記第8の交点よりも前記継手下面における外側の任意の位置で、前記第1の基準線に対して垂直な第12の直線を引き、前記第12の直線と前記継手下面とが交わる点を第9の交点とし、前記第12の直線の延びる方向で、前記第9の交点と前記第1の基準線との間の距離を前記爪底傾きとして算出することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る鋼矢板の製造方法は、上記の発明の鋼矢板の形状測定方法によって、前記鋼矢板の形状を測定する工程を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る鋼矢板の形状測定方法、及び、鋼矢板の製造方法は、寸法の測定精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係る形状測定装置を備えた形鋼の製造設備の要部の概略構成を示した図である。
図2図2は、実施形態に係る形状測定装置の概略構成の一例を示したブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る形状測定装置の8つの測定センサの配置位置の一例を示した図である。
図4図4は、実施形態に係る測定センサの概略構成の一例を示した図である。
図5図5は、鋼矢板の断面プロフィールの一例を示した図である。
図6図6は、鋼矢板の断面プロフィールにおいて第1の基準線の設定方法の一例を示した図である。
図7図7は、鋼矢板の断面プロフィールにおいて第2の基準線の設定方法の一例を示した図である。
図8図8は、鋼矢板の全幅の測定ロジックを示す図である。
図9図9は、鋼矢板の全高さの測定ロジックを示す図である。
図10図10は、鋼矢板のウェブ厚さの測定ロジックを示す図である。
図11図11(a)は、鋼矢板のフランジ厚さの測定ロジックを示す図である。図11(b)は、鋼矢板の継手部近傍の拡大図である。
図12図12は、鋼矢板のウェブ反りの測定ロジックを示す図である。
図13図13は、鋼矢板の継手部における爪底傾きの測定ロジックの第一の例を示す継手部近傍の拡大図である。
図14図14は、鋼矢板の継手部における爪底傾きの測定ロジックの第二の例を示す継手部近傍の拡大図である。
図15図15は、サンプル試験片の各寸法について、実施形態に係る形状測定装置1によって測定された寸法と、5回手動測定した寸法の平均値との差(寸法差)をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る鋼矢板の形状測定方法及び鋼矢板の製造方法の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
図1は、実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10の要部の概略構成を示した図である。実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10に適用される鋼矢板2の製造方法においては、形鋼である鋼矢板2の形状を測定する工程を備えている。実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10では、形鋼圧延工程などによって目的とする形状に成形された鋼矢板2が、形状測定装置1などを用いた検査工程で形状や寸法などの検査が行われる。本実施形態の検査工程では、形鋼搬送装置3で検査対象の鋼矢板2を、鋼矢板2の長手方向に搬送中に、形状測定装置1によって鋼矢板2の形状や寸法を測定する。また、実施形態における鋼矢板2の製造設備10では、形状測定装置1による鋼矢板2の測定の後工程に検査床があり、形状測定装置1の測定結果を基にして、作業者が鋼矢板2の形状や寸法などの最終判定を行っている。
【0025】
図1に示すように、形鋼搬送装置3は、鋼矢板2を長手方向に沿って搬送するための装置である。本実施形態の形鋼搬送装置3には、搬送方向に沿って配列した複数の搬送ローラ31が設けられており、複数の搬送ローラ31によって鋼矢板2を下側から支持して、鋼矢板2を長手方向に向けて搬送可能となっている。
【0026】
また、図1に示すように、形鋼搬送装置3には、形状測定装置1の入口側(搬送方向上流側)と出口側(搬送方向下流側)とのそれぞれに、鋼矢板2の幅方向で対向する一対の入口側可変ガイド32a,32b及び一対の出口側可変ガイド33a,33bが配置されている。すなわち、一対の入口側可変ガイド32a,32b及び一対の出口側可変ガイド33a,33bは、搬送ローラ31上に配置された鋼矢板2を挟んで対向配置している。一対の入口側可変ガイド32a,32b及び一対の出口側可変ガイド33a,33bは、鋼矢板2の搬送方向と直交する幅方向で位置を変更可能に設けられている。そして、一対の入口側可変ガイド32a,32b及び1対の出口側可変ガイド33a,33bの前記幅方向の位置を、形鋼搬送装置3で搬送される鋼矢板2の種類やサイズに応じて変更する。これにより、一対の入口側可変ガイド32a,32bによって鋼矢板2の搬送をガイドして、鋼矢板2の斜行を低減し、形状測定装置1に鋼矢板2が衝突することを抑制するとともに、形状測定装置1の測定領域F(図3参照)内に鋼矢板2を通過させることができる。また、一対の出口側可変ガイド33a,33bによって、形状測定装置1の測定領域F内を通過した後の鋼矢板2の搬送をガイドして、鋼矢板2の斜行を低減しつつ、後工程に鋼矢板2を搬送することができる。本願発明においては、このような設備構成とすることによって、搬送移動中の鋼矢板に対しても、短時間で精度よく寸法を測定することができる。
【0027】
実施形態に係る形状測定装置1に適用される鋼矢板2の形状測定方法は、搬送される鋼矢板2の搬送方向と直交する断面の表面形状を表した断面プロフィールを、光切断法によって測定する断面プロフィール測定工程と、前記断面プロフィールを用いて鋼矢板2の形状を測定する形状測定工程と、を有する。さらに、形状測定工程は、前記断面プロフィールにおける寸法の測定基準位置を設定する基準位置設定工程と、測定基準位置を基準にして前記断面プロフィールにおける特定部位の寸法を演算する寸法演算工程とを有する。
【0028】
図2は、実施形態に係る形状測定装置1の概略構成の一例を示したブロック図である。図2に示すように、実施形態に係る形状測定装置1は、複数の第1のセンサである8つの測定センサ100A~100H、入力装置110、制御装置120、寸法演算装置である演算処理装置130、表示装置140、及び、回転装置であるチルト装置160などを備えている。なお、本明細書においては、複数の第1のセンサである測定センサ100が8つの例にについて説明するが、複数の第1のセンサである測定センサの個数は8に限定されない。
【0029】
図3は、実施形態に係る形状測定装置1の8つの測定センサ100A~100Hの配置位置の一例を示した図である。なお、図3は、鋼矢板2の搬送方向で上流側から見た図である。図3に示すように、8つの測定センサ100A~100Hは、搬送される鋼矢板2の周りを囲むように支持部材11に支持されて配置されている。本実施形態では、形状測定装置1における鋼矢板2の搬送方向と直交する断面で左右対称となるように、支持部材11の内周に環状で配置されている。また、本実施形態では、形状測定装置1に搬送された鋼矢板2に対して、鋼矢板2の上方に3つの測定センサ100A,100B,100Hが配置され、鋼矢板2の幅方向で2つの測定センサ100C,100Gが鋼矢板2を挟むように対向配置され、鋼矢板2の下方に3つの測定センサ100D,100E,100Fが配置されている。なお、8つの測定センサ100A~100Hが、初期位置であるホームポジションに位置するときに、測定センサ100Aは最上位置に位置しており、測定センサ100Eが最下位置に位置している。
【0030】
8つの測定センサ100A~100Hは、鋼矢板2の搬送方向で位置を揃えて配置されており、光切断法を用いて、鋼矢板2の搬送方向と直交する方向の同一断面における表面形状を、鋼矢板2の全周にわたって測定する。実施形態に係る形状測定装置1では、8つの測定センサ100A~100Hに囲まれた所定の測定領域F内を鋼矢板2が通過する際に、鋼矢板2の所定の断面における表面形状の測定が行われる。
【0031】
また、実施形態に係る形状測定装置1では、チルト装置160(図2参照)によって、8つの測定センサ100A~100Hが配置された支持部材11を、鋼矢板2の搬送方向に延びる回転軸線AXを中心に回転させて傾けることが可能なように構成されている。そして、実施形態に係る形状測定装置1では、ホームポジションで最上位置にある測定センサ100Aが、鋼矢板2のウェブに対して垂直となる位置に位置するように、チルト装置160によって回転軸線AXを中心に支持部材11(8つの測定センサ100A~100H)を回転させて傾けることができる。すなわち、鋼矢板を搬送する搬送ローラ31の偏摩耗や形状測定を行う鋼矢板の形状不良などに起因して、鋼矢板のウェブ面が水平面から傾いた状態で測定を行う場合においても、チルト装置160の回転調整によって、測定センサのうちの一部についてウェブ面に対して、垂直となる方向から計測を行うことができる。これによって、鋼矢板のウェブ厚さ、全幅、及び、全高さなどの測定を最も精度よく行うことができるのである。
【0032】
ここで、実施形態に係る形状測定装置1においては、8つの測定センサ100A~100Hの構成が同じであり、8つの測定センサ100A~100Hを特に区別しない場合には、単に測定センサ100と記載する。
【0033】
図4は、実施形態に係る測定センサ100の概略構成の一例を示した図である。図4に示すように、光切断法を用いて鋼矢板2の形状を測定する測定センサ100は、第1の光源であるスリット光源101、第1の撮像手段である撮像装置102、及び、筐体103などによって構成されている。
【0034】
スリット光源101は、例えば、半導体レーザー素子及びレンズを一体化したスリットレーザー光源を用いて実現され、所定の波長帯域の二次元レーザー光であるスリット光Li1を鋼矢板2の表面2aに照射する。実施形態に係る形状測定装置1では、8つの測定センサ100A~100Hのそれぞれに設けられたスリット光源101から、鋼矢板2の表面2aとして鋼矢板2の同一断面の外周面に、スリット光Li1を照射するように設定されている。
【0035】
撮像装置102は、スリット光源101に対して鋼矢板2の搬送方向で上流側に配置されており、鋼矢板2の表面2aで反射したスリット光Li1の反射光Li2を、スリット光Li1の照射方向とは別の方向から撮像する。また、撮像装置102は、撮影した反射光Li2に関する信号を、後述する演算処理装置130に出力する。
【0036】
筐体103は、スリット光源101及び撮像装置102を収容する収容部材であって、スリット光Li1及び反射光Li2が遮られないように、鋼矢板2と対向する側の面が開口した箱形状であり、支持部材11(図3参照)に固定されている。
【0037】
図2に戻って、入力装置110は、物理スイッチやタッチパネルなどを用いて構成されており、作業者の入力操作に対応して、測定開始を指示する開始指示信号、測定終了を指示する終了指示信号、及び、測定対象の鋼矢板2の種類やサイズに関する信号などの各種信号を制御装置120に出力する。
【0038】
制御装置120は、入力装置110からの各種信号をもとに、8つの測定センサ100A~100H、及び、チルト装置160の動作などを制御する。
【0039】
演算処理装置130は、断面プロフィール生成部131と、基準設定部132と、寸法演算部133とを備えている。断面プロフィール生成部131は、8つの測定センサ100A~100Hのそれぞれの撮像装置102から出力されたデータをもとに、三角測量によって鋼矢板2の表面上における反射光Li2の反射位置(スリット光Li1の照射位置)と撮像装置102との間の距離を、8つの測定センサ100A~100H毎に演算して求めて、8つの二次元プロフィールとして取得する。そして、演算処理装置130は、鋼矢板2の同一断面における8つの二次元プロフィールを合成し、鋼矢板2の同一断面における全周の表面形状の情報として、1つの断面プロフィールを生成する。基準設定部132は、断面プロフィールにおける寸法の測定基準位置(基準線)を設定する。寸法演算部133は、前記測定基準位置(基準線)を基準にして断面プロフィールにおける特定部位の寸法を演算する。
【0040】
なお、演算処理装置130は、生成した断面プロフィールの鋼矢板2における長手方向の位置を、形状測定装置1の入口側(搬送方向上流側)に配置されたレーザードップラー式速度計4(図1参照)が測定した、鋼矢板2の搬送速度(移動速度)などを用いて導出している。演算処理装置130は、生成した断面プロフィールに基づいて、基準設定部132と寸法演算部133とにより、鋼矢板2の寸法を演算して導出する。また、演算処理装置130は、生成した断面プロフィールに関する信号や、導出した鋼矢板2の寸法に関する信号などの各種信号を、表示装置140に出力する。
【0041】
なお、実施形態に係る形状測定装置1は、鋼矢板2の搬送中に鋼矢板2の表面形状の測定を行うため、鋼矢板2の長手方向で連続的に複数の断面プロフィールを生成し、この生成した複数の断面プロフィールを鋼矢板2の長手方向で結合することによって、鋼矢板2の長手方向にわたる表面形状の情報である三次元プロフィールを生成することができる。
【0042】
表示装置140は、演算処理装置130から出力された各種信号に基づいて、鋼矢板2の断面プロフィール(表面形状)や寸法などをディスプレイに表示する。
【0043】
図1に戻って、実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10では、製造ライン上で鋼矢板2の形状を測定するオンライン位置と、形状測定装置1のメンテナンスを行う、製造ラインから外れたオフライン位置との間を、リトラクト装置5によって形状測定装置1が移動可能に構成されている。
【0044】
図1に示すように、実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10には、形状測定装置1のオフライン位置に対応させてサンプル測定用装置6が設置されている。サンプル測定用装置6は、例えば、アルミニウム合金で作製されたサンプル試験片を備えている。そして、オフライン位置で形状測定装置1にサンプル試験片の形状を測定させて、作業者が形状測定装置1の動作確認や測定精度の確認などを行う。
【0045】
また、実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10では、形状測定装置1の8つの測定センサ100A~100Hの校正を行う校正装置を、形状測定装置1に搭載することができる。校正装置は、形状測定装置1がオフライン位置に位置するときに、形状測定装置1の内部に格納された校正専用の試験片を用いて、形状測定装置1の8つの測定センサ100A~100Hの校正を自動的に行うことが可能となっている。
【0046】
また、実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10には、形状測定装置1によって鋼矢板2の形状の測定が行われる前に、鋼矢板2の表面に付着した水滴を、鋼矢板2の表面に空気を吹き付けて除去するためのエアパージを設置することができる。実施形態に係る鋼矢板2の製造設備10では、エアパージによって鋼矢板2の表面から水滴を除去して、形状測定装置1によって鋼矢板2の形状の測定を行うことにより、水滴による疵の過検出や水濡れによる断面プロフィールの欠損を抑制することができる。
【0047】
次に、実施形態に係る形状測定装置1による鋼矢板2の寸法の測定方法の一例について説明する。実施形態に係る形状測定装置1では、例えば、鋼矢板2の長手方向に1[mm]ピッチで、8つの測定センサ100A~100Hによって測定した断面プロフィールのうち、25[mm]毎の断面プロフィールを用いて、鋼矢板2の断面における特定部位の寸法の測定を行う。このような処理が、断面プロフィール測定工程に相当する。また、実施形態に係る形状測定装置1では、鋼矢板2の種類やサイズごとに作成した寸法測定プログラムに、各寸法の測定ロジックが組み込まれている。本実施形態においては、一例として、鋼矢板2の断面における特定部位の寸法を測定する際の測定ロジックについて説明する。すなわち、以下、形状測定工程について、そして、基準位置設定工程及び寸法演算工程という形状測定工程に含まれる工程についても説明する。
【0048】
図5は、鋼矢板2の断面プロフィール20の一例を示した図である。なお、図5に示した断面プロフィール20は、鋼矢板2を搬送方向で下流側から見た断面に相当する。図5中、符号21はウェブ部、符号211はウェブ上面、符号212はウェブ下面、符号22a,22bはフランジ部、符号221a,221bはフランジ外面、符号222a,222bはフランジ内面、符号23a,23bは継手部、及び、符号231a,231bは継手下面である。
【0049】
鋼矢板2の寸法の測定ロジックでは、まず、X軸とY軸を備える2次元座標平面上における鋼矢板2の断面プロフィール20の座標(座標位置)を決定する。例えば、ウェブの厚み方向をY軸方向として、このY軸と直交する方向をX軸方向とするX軸とY軸との2次元座標表面上における断面プロフィール20の座標を決める。
【0050】
図6は、鋼矢板2の断面プロフィール20において第1の基準線BL1の設定方法の一例を示した図である。実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法においては、鋼矢板2の断面プロフィール20に対して、両側の継手部23a,23bにおける継手下面231a,231bのそれぞれの2つの最下点Pa1,Pb1の位置データと、図面上の形状が直線となる部分のプロフィールデータから、近似直線を引き、これを寸法測定の基準となる第1の基準線BL1とする。この第1の基準線BL1の延びる方向が、断面プロフィール20における鋼矢板2の幅方向となり、第1の基準線BL1は断面プロフィール20における寸法の方向を決める役割を有する。なお、近似直線を得るには一般的な直線近似の手法を用いることができ、例えば、最小二乗法や最小絶対値法を採用することができるほか、直交回帰直線(最小距離二乗法)を用いることもできる。また、ここでいう「図面上の形状が直線となる部分」とは、製造目標としている製品目標形状が直線状となる部分であり、実際には、製造のばらつきなどにより、直線形状とはならずに湾曲形状となる部分や凹凸を有する部分が含まれる場合もある。このように、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、鋼矢板2の断面プロフィール20の最下面(継手下面231a,231b)を基準とした第1の基準線BL1を設定することができる。
【0051】
図7は、鋼矢板2の断面プロフィール20において第2の基準線BL2の設定方法の一例を示した図である。実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法においては、鋼矢板2の断面プロフィール20に対して、ウェブ部21における両側の肩部(コーナー部分)210a,210bよりも内側で、両側の肩部(コーナー部分)210a,210b近傍の丸みが付与された部分を十分に除去できる範囲において、ウェブ上面211及びウェブ下面212のそれぞれの図面上の形状が直線となる部分211a,211bを直線近似した近似直線L11,L12を引く。ウェブ上面211及びウェブ下面212のそれぞれの図面上の形状が直線となる部分211a,211bから近似直線L11,L12を得るには、一般的な直線近似の手法を用いることができ、例えば、最小二乗法や最小絶対値法を採用することができるほか、直交回帰直線(最小距離二乗法)を用いることもできる。また、ここでいう「図面上の形状が直線となる部分」とは、製造目標としている製品目標形状が直線状となる部分であり、実際には、製造のばらつきなどにより、直線形状とはならずに湾曲形状となる部分や凹凸を有する部分が含まれる場合もある。
【0052】
そして、「(1)近似直線L11を第2の基準線BL2とする。」、「(2)近似直線L12を第2の基準線BL2とする。」、及び、「(3)近似直線L11と近似直線L12との間の中心を通る直線を第2の基準線BL2とする。」という3つの方法から選択して第2の基準線BL2を設定することができる。なお、(1)または(2)の方法を選択する場合は、使用しない近似直線は算出する必要はない。図7では(3)の方法を示している。
【0053】
また、この第2の基準線BL2の延びる方向が、断面プロフィール20における鋼矢板2の幅方向となり、第2の基準線BL2は断面プロフィール20における寸法の方向を決める役割を有する。この第2の基準線BL2の設定にあたり、鋼矢板の断面プロフィールデータ中の、ウェブを構成する部分の多数のデータを用いているため、正確な基準線として設定できるのである。このように、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、ウェブ部21を基準とした第2の基準線BL2を設定することができる。さらには、上述のように、ウェブ上面211及びウェブ下面212のそれぞれの図面上の形状が直線となる部分211a,211bの近似化の範囲からウェブ部21の非直線部分である肩部(コーナー部分)210a,210bを除くことによって、ウェブ上面211及びウェブ下面212のそれぞれの図面上の形状が直線となる部分211a,211bに対して、より正確な第2の基準線BL2を設定することができる。
【0054】
このように、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法においては、8つの測定センサ100A~100Hにより、光切断法によって取得した断面プロフィール20上に、鋼矢板2の形状及び姿勢に基づいた、寸法測定の基準となる第1の基準線BL1または第2の基準線BL2を設定することによって、寸法の測定精度を向上させることができる。
【0055】
図8は、鋼矢板2の全幅Wの測定ロジックを示す図である。鋼矢板2の全幅Wの測定では、断面プロフィール20に対して、第1の基準線BL1を引き、第1の基準線BL1に対して垂直で、両側の継手部23a,23bのそれぞれの最も外側の点である最端点Pa2,Pb2を通る垂線La2,Lb2を引く。そして、断面プロフィール20における鋼矢板2の幅方向(第1の基準線BL1の延びる方向)で、垂線La2と垂線Lb2との間の距離を鋼矢板2の全幅Wとして算出する。これにより、断面プロフィール20から鋼矢板2の幅方向の最大の寸法を算出することができ、より精度の高い鋼矢板2の全幅Wの測定結果を得ることができる。なお、全幅Wの測定においては、第1の基準線BL1を用いる場合と同様の方法で、第2の基準線BL2を用いて全幅Wを算出することもできる。
【0056】
図9は、鋼矢板2の全高さH1,H2の測定ロジックを示す図である。まず、鋼矢板2の幅方向でフランジ部22a側における鋼矢板2の全高さH1の測定では、断面プロフィール20に対して、第2の基準線BL2を引き、ウェブ部21上におけるフランジ部22a側であって、肩部(コーナー部分)210a近傍の非直線部を十分に除外できる範囲における任意の位置において、第2の基準線BL2に対して垂直な垂線La4を引き、この垂線La4とウェブ上面211とが交わる点を交点Pa3とする。次に、第2の基準線BL2と平行であって、継手部23aの継手下面231aにおける最下点Pa1を通る直線La3を引く。そして、第2の基準線BL2と直交する方向、すなわち、断面プロフィール20における鋼矢板2の高さ方向で、交点Pa3と直線La3との間の距離をフランジ部22a側における全高さH1として算出する。なお、全高さHの測定においては、第2の基準線BL2を用いる場合と同様の方法で、第1の基準線BL1を用いて全高さHを算出することもできる。
【0057】
同様に、鋼矢板2の幅方向でフランジ部22b側における鋼矢板2の全高さH2の測定では、ウェブ部21上におけるフランジ部22b側であって、肩部(コーナー部分)210b近傍の非直線部を十分に除外できる範囲における任意の位置において、第2の基準線BL2に対して垂直な垂線Lb4を引き、この垂線Lb4とウェブ上面211とが交わる点を交点Pb3とする。次に、第2の基準線BL2と平行であって、継手部23bの継手下面231bにおける最下点Pb1を通る直線Lb3を引く。そして、第2の基準線BL2と直交する方向(鋼矢板2の高さ方向)で、交点Pb3と直線Lb3との間の距離をフランジ部22b側における鋼矢板2の全高さH2として算出する。
【0058】
これにより、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、より精度の高い鋼矢板2の全高さH1,H2の測定結果を得ることができる。
【0059】
図10は、鋼矢板2のウェブ厚さTwの測定ロジックを示す図である。鋼矢板2のウェブ厚さTwの測定では、断面プロフィール20に対して、第2の基準線BL2を引き、ウェブ部21の幅方向の任意の位置において、第2の基準線BL2に対して垂直な垂線L5を引く。次に、垂線L5とウェブ上面211とが交わる点を交点P41とする。同様に、垂線L5とウェブ下面212とが交わる点を交点P42とする。そして、第2の基準線BL2と直交する方向(鋼矢板2の高さ方向)で、交点P41と交点P42との間の距離をウェブ厚さTwとして算出する。なお、垂線L5を引く位置は、製品仕様や規格などに従って決定することができる。これにより、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、より精度の高い鋼矢板2のウェブ厚さTwの測定結果を得ることができる。
【0060】
図11(a)は、鋼矢板2のフランジ厚さTfの測定ロジックを示す図である。図11(b)は、鋼矢板2の継手部23b近傍の拡大図である。鋼矢板2のフランジ厚さTfの測定では、断面プロフィール20に対して、第2の基準線BL2を引き、継手部23bの継手下面231bにおける最下点Pb1を通り、且つ、第2の基準線BL2に平行な直線Lb3を引く。次に、直線Lb3から所定の高さにおいて、直線Lb3と平行な直線Lb6を引く。なお、直線Lb6を引く所定の高さは、製品仕様や規格などに従って決定することができる。次に、直線Lb6とフランジ外面221bとが交わる点を交点Pb5とする。次に、交点Pb5を通り、フランジ内面222bに対して垂直な垂線Lb7を引く。次に、垂線Lb7とフランジ内面222bとが交わる点を交点Pb6とする。そして、垂線Lb7が延びる方向で交点Pb5と交点Pb6との間の距離をフランジ厚さTfとして算出する。これにより、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、より精度の高い鋼矢板2のフランジ厚さTfの測定結果を得ることができる。
【0061】
図12は、鋼矢板2のウェブ反りWaの測定ロジックを示す図である。鋼矢板2のウェブ反りWaの測定では、断面プロフィール20に対して、第2の基準線BL2を引き、ウェブ部21における両側の肩部(コーナー部分)210a,210bよりも内側であって、肩部(コーナー部分)210a,210b近傍の非直線部を十分に除外できる範囲における任意の二か所の位置で、第2の基準線BL2に垂直な垂線La8,Lb8を引く。次に、垂線La8とウェブ上面211とが交わる点を交点Pa7とし、垂線Lb8とウェブ上面211とが交わる点を交点Pb7とする。次に、第2の基準線BL2の延びる方向(断面プロフィール20における鋼矢板2の幅方向)で、交点Pa7と交点Pb7とを結ぶ直線L9を引く。そして、第2の基準線BL2と直交する方向(鋼矢板2の高さ方向)で、直線L9とウェブ上面211との間の距離の最大値をウェブ反りWaとして算出する。これにより、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、且つ、ウェブ部21の肩部(コーナー部分)210a,210bの影響を受けずに、より精度の高い鋼矢板2のウェブ反りWaの測定結果を得ることができる。
【0062】
図13は、鋼矢板2の継手部23aにおける爪底傾きmの測定ロジックの第一の例を示す継手部23a近傍の拡大図である。鋼矢板2の継手部23aにおける爪底傾きmの測定では、まず、第1の基準線BL1を引く。次に、フランジ部22aのフランジ内面222aに沿って第1の基準線BL1側に延びた直線である直線La10を引く。次に、継手部23aの継手下面231aに沿って直線La10と交わる直線La11を引く。次に、直線La10と直線La11とが交わる点を交点Pa8とする。次に、交点Pa8よりも継手下面231a上で外側で、フランジ内面222aから継手下面231aへの接続部分の曲面形状の直線La11上の起点である交点Pa9を通り、第1の基準線BL1に対して垂直な垂線La12を引く。そして、垂線La12の延びる方向で、交点Pa9と第1の基準線BL1との間の距離を爪底傾きmとして算出する。これにより、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、より精度の高い鋼矢板2の継手部23aにおける爪底傾きmの測定結果を得ることができる。
【0063】
図14は、鋼矢板2の継手部23aにおける爪底傾きmの測定ロジックの第二の例を示す継手部23a近傍の拡大図である。鋼矢板2の継手部23aにおける爪底傾きmの測定では、まず、第1の基準線BL1を引く。次に、継手部23aの最も外側に位置する最端点Pa2を通り、第1の基準線BL1に対して垂直な垂線La2を引く。次に、最端点Pa2よりも継手下面231a上で内側で、継手先端部から継手下面231aへの接続部分の曲面形状の継手下面231a上の起点である交点Pa10を通り、垂線La2に平行な直線La13を引く。そして、直線La13の延びる方向で、交点Pa10と第1の基準線BL1との間の距離を爪底傾きmとして算出する。これにより、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法では、8つの測定センサ100A~100Hによる測定時の鋼矢板2の姿勢によらず、より精度の高い鋼矢板2の継手部23aにおける爪底傾きmの測定結果を得ることができる。
【0064】
以上のように、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法においては、断面プロフィール20に対して第1の基準線BL1または第2の基準線BL2を設定し、第1の基準線BL1または第2の基準線BL2を基準にして各寸法を測定するため、寸法の測定精度を向上させることができる。
【0065】
なお、本明細書では、鋼矢板としていわゆるU形鋼矢板について説明したが、このほかの鋼矢板として、直線形鋼矢板やハット形鋼矢板についても本発明を適用することができる。
【実施例0066】
本実施例では、鋼矢板2のサンプル試験片の各寸法(全高さ、ウェブ厚さ、フランジ厚さ、ウェブ反り、爪傾き)を、実施形態に係る鋼矢板2の形状測定方法を用いた形状測定装置1によって測定した。なお、本実施形態では、オンラインで形鋼搬送装置3によって搬送されている搬送中のサンプル試験片の測定を5回繰り返して行った。このとき、形状測定装置1の入口側と出口側のそれぞれについて、入口側可変ガイド32a,32bと、出口側可変ガイド33a,33bとによって、測定中の鋼矢板の搬送時の左右位置を決め、斜行を防止するガイドを行った。また、比較のために、本実施形態での測定を行った鋼矢板の測定部位から断面形状を確認できるカットサンプルを切り出した。そして、従来から行っている、ノギス、マイクロメータ、直定規、及び、隙見ゲージを用いた手動の測定方法でも各寸法を測定した。この手動測定も5回繰り返して行い、5回手動測定した寸法の平均値を本実施例での寸法精度を評価するための「真値」とした。
【0067】
図15は、サンプル試験片の各寸法について、実施形態に係る形状測定装置1によって測定された寸法と、5回手動測定した寸法の平均値との差(寸法差)をプロットした図である。図15では、第1の基準線BL1を図6に示した方法で決定し、第2の基準線BL2を図7に示した方法で決定し、寸法を演算した場合を適合例1として、白塗りの丸の記号で示している。また、特許文献2に開示された方法を模倣して、継手下面231a及び継手下面231b上から代表点を1点ずつ選択し、この2点から第1の基準線BL1を決定し、全幅と爪傾きを演算した場合を適合例2として、白塗りの三角形の記号で示している。また、図15中の「3σ」は、適合例1について、5回繰り返した寸法測定のばらつきの標準偏差をσとしたときのσの3倍の値であって、ばらつきの程度を示している。
【0068】
本実施例では、全幅と全高さは寸法差-1.0~+1.0[mm]以内、その他の寸法は寸法差-0.5~+0.5[mm]以内を目標としている。図15から、サンプル試験片の各寸法のいずれにおいても、実施形態に係る形状測定装置1によって測定された各寸法を繰り返し精度よく測定できていることがわかる。また、第1の基準線BL1を図6に示した方法で決定し、寸法を演算した適合例1で、全幅と爪傾きの測定精度がさらによくなっていることもわかる。
【符号の説明】
【0069】
1 形状測定装置
2 鋼矢板
3 形鋼搬送装置
4 レーザードップラー式速度計
5 リトラクト装置
6 サンプル測定用装置
10 製造設備
20 断面プロフィール
21 ウェブ部
22a,22b フランジ部
23a,23b 継手部
31 搬送ローラ
32a,32b 入口側可変ガイド
33a,33b 出口側可変ガイド
100 測定センサ
110 入力装置
120 制御装置
130 演算処理装置
140 表示装置
160 チルト装置
211 ウェブ上面
212 ウェブ下面
221a,221b フランジ外面
222a,222b フランジ内面
231a,231b 継手下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15