IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧 ▶ 日東精機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022853
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ワーク処理方法およびワーク処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126259
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】秋月 伸也
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡洋
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA04
5F131AA12
5F131BA03
5F131BA32
5F131BA35
5F131BA51
5F131CA07
5F131CA09
5F131CA12
5F131DA12
5F131DA32
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB37
5F131DB72
5F131DB86
5F131EA05
5F131EB02
5F131EB72
5F131EC34
5F131EC62
5F131HA21
(57)【要約】
【課題】ワークを支持体で支持した状態で各種処理を行う構成において、ワークに不良が発生することを防止しつつワークを容易に支持体から離脱できるワーク処理方法およびワーク処理装置を提供する。
【解決手段】
ワークWを保持する保持フィルム3がキャリア1の上に積層されたフィルム積層体5を支持テーブルに載置する過程と、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置して保持フィルム3にワークWを保持させる過程と、ワークWに対して所定の処理を行う過程と、ワークWをフィルム積層体5から離脱させる過程と、を備え、保持フィルム3は、シリコーン化合物、フッ素化合物、またはポリイミドを含む多孔質体で構成されている。
【選択図】図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持フィルムが支持体の上に積層されたフィルム積層体を支持テーブルに載置する積層体載置過程と、
前記フィルム積層体のうち前記保持フィルムの側に前記ワークを載置して前記保持フィルムに前記ワークを保持させるワーク保持過程と、
前記ワークに対して所定の処理を行うワーク処理過程と、
前記ワークを前記フィルム積層体から離脱させるワーク離脱過程と、
を備え、
前記保持フィルムは、シリコーン化合物、フッ素化合物、またはポリイミドを含む多孔質体で構成されている
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク処理方法において、
前記ワーク離脱過程は、
前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給することによって前記保持フィルムの保持力を低減させる気体供給過程と、
前記気体供給過程によって保持力が低減した前記保持フィルムから前記ワークを離間させるワーク離間過程と、
を備えることを特徴とするワーク処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク処理方法において、
前記フィルム積層体は、前記支持テーブルに載置される面から前記ワークを保持する面まで連通する1または2以上の通気孔を有しており、
前記気体供給過程は、
前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させる
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のワーク処理方法において、
前記ワーク離脱過程は、
ワーク抑止部材を、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させる近接過程を備え、
前記気体供給過程は、
前記近接過程の後、前記ワークを前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させる
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載のワーク処理方法において、
前記近接過程は、
中央部に凹部を有しているワーク抑止部材を、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させ、
前記気体供給過程は、
前記近接過程の後、前記ワークの外周部を前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させる
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載のワーク処理方法において、
前記ワーク離脱過程は、
前記保持フィルムが前記ワークを保持している面のうち一部の領域において前記ワークと前記保持フィルムとの間に間隙部を形成させ、前記一部の領域において前記ワークを前記保持フィルムから離脱させる第1離脱過程と、
前記間隙部を前記一部の領域から前記一部の領域以外の領域にわたって拡げることにより、前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる第2離脱過程と、
を備えることを特徴とするワーク処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載のワーク処理方法において、
前記支持テーブルは中央部に凹部を有しており前記フィルム積層体の外周部を支持するように構成されており、
前記第1離脱過程は、
前記支持テーブルの前記凹部に気体を供給して前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、
前記第2離脱過程は、
前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載のワーク処理方法において、
前記第1離脱過程は、
前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の一端側を吸着する部分吸着部材で前記ワークを吸着保持した状態で、前記部分吸着部材を前記フィルム積層体から離間させることによって前記ワークのうち前記一端側を前記保持フィルムから離脱させ、
前記第2離脱過程は、
前記間隙部を前記ワークのうち前記一端側から他端側へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項9】
請求項6に記載のワーク処理方法において、
前記第1離脱過程は、
前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、
前記第2離脱過程は、
前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる
ことを特徴とするワーク処理方法。
【請求項10】
ワークを保持する保持フィルムが支持体の上に積層されたフィルム積層体を支持する支持テーブルと、
前記フィルム積層体を前記支持テーブルに載置する積層体載置機構と、
前記フィルム積層体のうち前記保持フィルムの側に前記ワークを載置して前記保持フィルムに前記ワークを保持させるワーク載置機構と、
前記ワークに対して所定の処理を行うワーク処理機構と、
前記ワークを前記フィルム積層体から離脱させるワーク離脱機構と、
を備え、
前記保持フィルムはシリコーン化合物、フッ素化合物、またはポリイミドを含む多孔質体で構成されている
ことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載のワーク処理装置において、
前記ワーク離脱機構は、
前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給することによって前記保持フィルムの保持力を低減させる気体供給機構と、
前記気体供給機構によって保持力が低減した前記保持フィルムから前記ワークを離間させるワーク離間機構と、
を備えることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載のワーク処理装置において、
前記フィルム積層体は、前記支持テーブルに載置される面から前記ワークを保持する面まで連通する1または2以上の通気孔を有しており、
前記気体供給機構は、
前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させる
ことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載のワーク処理装置において、
前記ワーク離脱機構は、
ワーク抑止部材を、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させる近接機構を備え、
前記気体供給機構は、
前記ワークの外周部の浮き上がりを前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させる
ことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載のワーク処理装置において、
前記近接機構は、
中央部に凹部を有しており、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部の浮き上がりを抑止するワーク抑止部材を、前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させ、
前記気体供給機構は、
前記ワークの外周部の浮き上がりを前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させる
ことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項15】
請求項10に記載のワーク処理装置において、
前記ワーク離脱機構は、
前記保持フィルムが前記ワークを保持している面のうち一部の領域において前記ワークと前記保持フィルムとの間に間隙部を形成させ、前記一部の領域において前記ワークを前記保持フィルムから離脱させる第1離脱機構と、
前記間隙部を前記一部の領域から前記一部の領域以外の領域にわたって拡げることにより、前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる第2離脱機構と、
を備えることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載のワーク処理装置において、
前記支持テーブルは中央部に凹部を有しており前記フィルム積層体の外周部を支持するように構成されており、
前記第1離脱機構は、
前記支持テーブルの前記凹部に気体を供給して前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、
前記第2離脱機構は、
前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる
ことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項17】
請求項15に記載のワーク処理装置において、
前記第1離脱機構は、
前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の一端側を吸着する部分吸着部材と、
前記部分吸着部材が前記ワークの一端側を吸着した状態で、前記部分吸着部材を前記フィルム積層体から離間させることによって前記ワークのうち前記一端側を前記保持フィルムから離脱させる吸着部材離間機構と、
を備え、
前記第2離脱機構は、
前記間隙部を前記ワークのうち前記一端側から他端側へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる
ことを特徴とするワーク処理装置。
【請求項18】
請求項15に記載のワーク処理装置において、
前記第1離脱機構は、
前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、
前記第2離脱機構は、
前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる
ことを特徴とするワーク処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板または半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)を例とするワークに対して半導体素子の実装処理、金属蒸着処理、またはバックグラインド処理を例とする各種処理を実行ためのワーク処理方法およびワーク処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではスマートフォン、ICカードを例とする電子機器について薄型化および軽量化が急速に進められており、このような電子機器に組み込まれる半導体チップの小型化が求められている。半導体チップの小型化に伴い、ベースとなるウエハや基板(一例としてフレキシブル基板)について、より薄板化されたものが用いられる。
【0003】
薄板化されたウエハや基板は強度が低減するため、破損しやすくなり取り扱いが困難となる。そのため従来では薄板化の対象となるワークに対してサポートプレートと呼ばれる金属板または硬質プラスチック板などを貼り合わせた後にワークを研削する。ワークにサポートプレート(支持体)を貼り合わせることにより、研削過程後であってもワークの強度を保持できる。そのため、ダイシング処理や半導体パッケージ処理を例とする後の各種処理過程において、ワークを取り扱う際にワークの損傷が発生することを回避できる。
【0004】
サポートプレートにワークを貼り合わせてワークを支持させる過程は、熱等に起因するワークの反りを防止するという点でも重要である。すなわちワークに対して金属蒸着処理、洗浄処理、樹脂成形処理などを行う場合、ワークが熱によって変形し、基板に反りが発生するという問題が発生しやすい。サポートプレートにワークを貼り合わせることによりワークの平坦性が担保されるので、各種処理工程においてワークが熱などに起因して反ることを防止できる。よって、半導体チップを例とする半導体装置の製造不良を回避できる。
【0005】
従来ではワークとサポートプレートとの間に接着剤の層を形成させて両者を貼り合わせ、ワークに対して必要な処理が行われた後は接着剤層で貼り合わされているサポートプレートをワークから剥離させる。サポートプレートをワークから剥離させる従来の方法としては、サポートプレートに貫通孔を予め形成させておき、サポートプレートの貫通孔に溶剤を注入して接着剤層へ溶剤を到達させ、接着剤を溶剤で溶解させることによりサポートプレートをワークから剥離する方法が挙げられる(特許文献1を参照)。
【0006】
また従来の剥離方法の他の例として、貫通孔が形成されたサポートプレートのうち接着剤層が形成されていない側を板状の封鎖部材で封止した状態でサポートプレートを加熱する方法が挙げられる。当該方法では加熱によりサポートプレートの貫通孔内の空気が膨張し、膨張した空気が接着剤層に進入して接着剤層が変形するため、溶剤を用いることなくサポートプレートをワークから剥離できる(特許文献2を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2006-135272号公報
【特許文献2】特開2008-034644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来方法では次のような問題がある。すなわち、ワークをサポートプレートから剥離する際に接着剤層の少なくとも一部がワークに残存する、いわゆる糊残りの問題が懸念される。ワークに接着剤が残存すると、残存する接着剤によってワークにおいて接続不良などが発生するため、不良品が発生する頻度が高くなる。また接着剤を用いてワークをサポートプレートに貼り合わせる操作には接着剤液の塗布および乾燥など多数の工程が必要となるので、半導体製品の生産効率が低下する。
【0009】
また従来の方法のうち溶剤を用いてワークを剥離する場合、溶剤が接着剤層に浸透するために長時間を要するため半導体製品の生産効率がさらに低下する。また、封鎖部材でサポートプレートを封止して加熱することでワークを剥離する従来方法では、空気が膨張して接着剤層を剥離させる程度に加熱を制御することが難しく、また封鎖部材とサポートプレートとの密着性を担保することも困難である。そのため、加熱によってワークをサポートプレートから剥離させる効率を向上させることが困難である。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ワークを支持体で支持した状態で各種処理を行う構成において、ワークに不良が発生することを防止しつつワークを容易に支持体から離脱できるワーク処理方法およびワーク処理装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るワーク処理方法は、ワークを保持する保持フィルムが支持体の上に積層されたフィルム積層体を支持テーブルに載置する積層体載置過程と、
前記フィルム積層体のうち前記保持フィルムの側に前記ワークを載置して前記保持フィルムに前記ワークを保持させるワーク保持過程と、
前記ワークに対して所定の処理を行うワーク処理過程と、
前記ワークを前記フィルム積層体から離脱させるワーク離脱過程と、
を備え、
前記保持フィルムは、シリコーン化合物、フッ素化合物、またはポリイミドを含む多孔質体で構成されている
ことを特徴とするものである。
【0012】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク保持過程において、保持フィルムにワークを載置させることにより、多孔質体で構成されている保持フィルムがワークを保持する。
【0013】
保持フィルムはワークを保持するものであり、フィルム積層体のうち保持フィルムの側にワークを載置させることによってワークの平坦性が担保される。すなわちワークに半導体素子を実装させる過程を例とするワーク処理過程において、ワークに反りなどの変形が発生することを保持フィルムによって防止できる。よって、ワーク処理過程において不良品が発生することをより確実に防止できる。
【0014】
また保持フィルムは多孔質体で構成されている。そのため保持フィルムにワークを保持させる際に、保持フィルムは気泡を咬み込むことなく、ワーク表面における微細な凹凸に応じて精度良く変形し、ワークの広い範囲に保持フィルムが密着する。そのためワークに対する保持フィルムの保持力を向上できる。そしてワーク離脱過程においてワークをフィルム積層体から離脱させる際に、保持フィルムの一部が剥がれてワークの表面に残留することを回避できる。そのため、保持フィルムに起因する残留物によってワークの表面が汚染されて不良が発生するという事態を防止できる。
【0015】
そして、フィルム積層体の保持フィルムの側にワークを載置するという単純な操作によって、ワークの変形を防止する保持力がワークに対して作用する。すなわち、ワークの変形を防止する工程に要する時間を大きく短縮できる。よって、ワークの処理効率を向上させつつワークの変形を防止することができる。
【0016】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱過程は、前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給することによって前記保持フィルムの保持力を低減させる気体供給過程と、前記気体供給過程によって保持力が低減した前記保持フィルムから前記ワークを離間させるワーク離間過程と、を備えることが好ましい。
【0017】
(作用・効果)この構成によれば、ワークと保持フィルムとの間に気体を供給することにより、ワークと保持フィルムを構成する多孔質体とワークとの接触が気体によって妨げられるので、保持フィルムの保持力が低減される。すなわち気体供給過程を行った後にワーク離間過程を行うことにより、ワークを保持フィルムから離間させる動作が保持フィルムの保持力によって妨げられることを防止できるので、より好適にワークをフィルム積層体から離脱させることができる。
【0018】
また、上述した発明において、前記フィルム積層体は、前記支持テーブルに載置される面から前記ワークを保持する面まで連通する1または2以上の通気孔を有しており、
前記気体供給過程は、
前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、フィルム積層体を構成する支持体および保持フィルムの各々は、連通する1または2以上の通気孔を有している。そのため、支持テーブルに気体を供給されることにより、当該気体は通気孔を経由してワークと保持フィルムとの間の空間に供給される。従って、支持テーブルに気体供給機構を配設することにより、ワークと保持フィルムとの間へ確実に気体を供給するシステムを容易に実現することができる。
【0020】
また、上述した発明において、ワーク抑止部材を、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させる近接過程を備え、前記気体供給過程は、前記近接過程の後、前記ワークを前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させることが好ましい。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク抑止部材をワークの外周部に当接または近接させた状態で、気体供給過程によって保持力が低減した保持フィルムからワークを離間させる。ワーク抑止部材をワークに当接または近接させた状態とすることにより、気体供給過程においてワークが過度に浮き上がることをワーク抑止部材で抑止できる。すなわち気体供給によってワークが過度に浮き上がって水平方向におけるワークの位置がずれる事態などを回避できる。
【0022】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱過程は、中央部に凹部を有しているワーク抑止部材を、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させる近接過程を備え、 前記気体供給過程は、前記近接過程の後、前記ワークの外周部を前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させることが好ましい。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、中央部に凹部を有しているワーク抑止部材をワークの外周部に当接または近接させた状態で、気体供給過程によって保持力が低減した保持フィルムからワークを離間させる。ワーク抑止部材をワークに当接または近接させた状態とすることにより、気体供給過程においてワークが過度に浮き上がることをワーク抑止部材で抑止できる。すなわち気体供給によってワークが過度に浮き上がって水平方向におけるワークの位置がずれる事態などを回避できる。
【0024】
また、ワーク抑止部材はワークのうち外周部を抑止する。すなわちワークの中央部はワーク抑止部材による抑止を受けないので、ワークの中央部にデバイスなどが配設される場合、当該デバイスにワーク抑止部材が接触することを回避しつつワークを抑止することができる。
【0025】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱過程は、前記保持フィルムが前記ワークを保持している面のうち一部の領域において前記ワークと前記保持フィルムとの間に間隙部を形成させ、前記一部の領域において前記ワークを前記保持フィルムから離脱させる第1離脱過程と、前記間隙部を前記一部の領域から前記一部の領域以外の領域にわたって拡げることにより、前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる第2離脱過程と、を備えることが好ましい。
【0026】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク離脱過程は少なくとも2つの段階を経てワークを保持フィルムから離脱させる。すなわち、まずは第1離脱過程においてワークの一部において保持フィルムとの間に間隙部を形成させ、当該一部の領域においてワークを保持フィルムから離脱させる。そして第1離脱過程を行った後、第2離脱過程において間隙部を当該一部の領域から当該一部の領域以外の領域にわたって拡げることにより、ワークの全面を保持フィルムから離脱させる。
【0027】
この場合、第1離脱過程および第2離脱過程の各々において、ワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークWの一部に対する保持フィルムの保持力と対抗する。すなわちワークの全面にわたって同時に保持フィルムから離脱させる場合は比較的大きな力が必要になる一方、ワークの一部を保持フィルムから離脱させるために必要な力は比較的小さい。よって、より容易にワークWを保持フィルムから離脱できることができる。
【0028】
また、上述した発明において、前記支持テーブルは中央部に凹部を有しており前記フィルム積層体の外周部のみを支持するように構成されており、前記第1離脱過程は、前記支持テーブルの前記凹部に気体を供給して前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、前記第2離脱過程は、前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させることが好ましい。
【0029】
(作用・効果)この構成によれば、支持テーブルは中央部に凹部を有しておりフィルム積層体の外周部を支持するように構成されている。そして第1離脱過程において、当該支持テーブルの凹部に気体を供給してフィルム積層体の中央部を凸状に変形させる。当該凸状の変形によって、外周部におけるワークとフィルム積層体との距離は、中央部におけるワークとフィルム積層体との距離よりも離れることとなる。その結果、ワークの全面のうち外周部において保持フィルムとの間に間隙部が形成され、ワークの外周部が中央部より左記に保持フィルムから離脱される。このときワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークW全体のうち外周部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの外周部のみを保持フィルムから離脱できる。
【0030】
そして第2離脱過程では、第1離脱過程においてワークの外周部と保持フィルムとの間に形成された間隙部を、ワークの中央部と保持フィルムとの間へと拡げることによってワークの全面を保持フィルムから離脱させる。第2離脱過程では、ワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークW全体のうち中央部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの中央部を保持フィルムから離脱できる。従って、ワークに対する保持フィルムの保持力がワークを保持フィルムから離脱させるための力を上回って離脱エラーが発生する事態を回避できる。
【0031】
また、上述した発明において、前記第1離脱過程は、前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の一端側を吸着する部分吸着部材で前記ワークを吸着保持した状態で、前記部分吸着部材を前記フィルム積層体から離間させることによって前記ワークのうち前記一端側を前記保持フィルムから離脱させ、前記第2離脱過程は、前記間隙部を前記ワークのうち前記一端側から他端側へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させることが好ましい。
【0032】
(作用・効果)この構成によれば、まず第1離脱過程において、ワークのうち保持フィルムに保持されていない面の一端側を吸着する部分吸着部材で前記ワークを吸着保持した状態で、当該部分吸着部材をフィルム積層体から離間させることによってワークのうち一端側の部分を保持フィルムから離脱させる。このときワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークW全体のうち一端側の部分に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの一端側の部分を保持フィルムから離脱できる。
【0033】
そして第2離脱過程では、第1離脱過程においてワークの一端側と保持フィルムとの間に形成された間隙部を、ワークの他端側と保持フィルムとの間へと拡げることによってワークの全面を保持フィルムから離脱させる。第2離脱過程では、ワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークW全体のうち他端側の部分に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの他端側を保持フィルムから離脱できる。従って、ワークに対する保持フィルムの保持力がワークを保持フィルムから離脱させるための力を上回って離脱エラーが発生する事態を回避できる。
【0034】
また、上述した発明において、前記第1離脱過程は、前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、前記第2離脱過程は、前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させることが好ましい。
【0035】
(作用・効果)この構成によれば、まず第1離脱過程において、フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによってワーク全体のうち外周部を保持フィルムから離脱させる。このときワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワーク全体のうち外周部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの一端側の部分を保持フィルムから離脱できる。
【0036】
そして第2離脱過程では、第1離脱過程においてワークの外周部と保持フィルムとの間に形成された間隙部を、ワークの中央部と保持フィルムとの間へと拡げることによってワークの全面を保持フィルムから離脱させる。第2離脱過程では、ワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワーク全体のうち中央部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの中央部を保持フィルムから離脱できる。従って、ワークに対する保持フィルムの保持力がワークを保持フィルムから離脱させるための力を上回って離脱エラーが発生する事態を回避できる。
【0037】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るワーク処理装置は、ワークを保持する保持フィルムが支持体の上に積層されたフィルム積層体を支持する支持テーブルと、
前記フィルム積層体を前記支持テーブルに載置する積層体載置機構と、
前記フィルム積層体のうち前記保持フィルムの側に前記ワークを載置して前記保持フィルムに前記ワークを保持させるワーク載置機構と、
前記ワークに対して所定の処理を行うワーク処理機構と、
前記ワークを前記フィルム積層体から離脱させるワーク離脱機構と、
を備え、
前記保持フィルムはシリコーン化合物、フッ素化合物、またはポリイミドを含む多孔質体で構成されている、
ことを特徴とするものである。
【0038】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク載置機構によって保持フィルムにワークを載置させることにより、多孔質体で構成されている保持フィルムがワークを保持する。
【0039】
保持フィルムはワークを保持するものであり、フィルム積層体のうち保持フィルムの側にワークを載置させることによってワークの平坦性が担保される。すなわちワークに半導体素子を実装させる過程を例とするワーク処理過程において、ワークに反りなどの変形が発生することを保持フィルムによって防止できる。よって、ワーク処理過程において不良品が発生することをより確実に防止できる。
【0040】
また保持フィルムは多孔質体で構成されている。そのため保持フィルムにワークを保持させる際に、保持フィルムは気泡を咬み込むことなく、ワーク表面における微細な凹凸に応じて精度良く変形し、ワークの広い範囲に保持フィルムが密着する。そのためワークに対する保持フィルムの保持力を向上できる。そしてワーク離脱過程においてワークをフィルム積層体から離脱させる際に、保持フィルムの一部が剥がれてワークの表面に残留することを回避できる。そのため、保持フィルムに起因する残留物によってワークの表面が汚染されて不良が発生するという事態を防止できる。
【0041】
そして、フィルム積層体の保持フィルムの側にワークを載置するという単純な操作によって、ワークの変形を防止する保持力がワークに対して作用する。すなわち、ワークの変形を防止する工程に要する時間を大きく短縮できる。よって、ワークの処理効率を向上させつつワークの変形を防止することができる。
【0042】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱機構は、前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給することによって前記保持フィルムの保持力を低減させる気体供給機構と、前記気体供給機構によって保持力が低減した前記保持フィルムから前記ワークを離間させるワーク離間機構と、を備えることが好ましい。
【0043】
(作用・効果)この構成によれば、ワークと保持フィルムとの間に気体を供給することにより、ワークと保持フィルムを構成する多孔質体とワークとの接触が気体によって妨げられるので、保持フィルムの保持力が低減される。すなわち気体供給機構による気体供給処理を行った後にワーク離間機構を作動させることにより、ワークを保持フィルムから離間させる動作が保持フィルムの保持力によって妨げられることを防止できるので、より好適にワークをフィルム積層体から離脱させることができる。
【0044】
また、上述した発明において、前記フィルム積層体は、前記支持テーブルに載置される面から前記ワークを保持する面まで連通する1または2以上の通気孔を有しており、
前記気体供給機構は、
前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させることが好ましい。
【0045】
(作用・効果)この構成によれば、フィルム積層体を構成する支持体および保持フィルムの各々は、連通する1または2以上の通気孔を有している。そのため、支持テーブルに気体を供給されることにより、当該気体は通気孔を経由してワークと保持フィルムとの間の空間に供給される。従って、支持テーブルに気体供給機構を配設することにより、ワークと保持フィルムとの間へ確実に気体を供給するシステムを容易に実現することができる。
【0046】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱機構は、ワーク抑止部材を、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させる近接機構を備え、前記気体供給機構は、前記ワークの外周部の浮き上がりを前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させることが好ましい。
【0047】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク抑止部材をワークの外周部に当接または近接させた状態で、気体供給機構によって保持力が低減した保持フィルムからワークを離間させる。ワーク抑止部材をワークに当接または近接させた状態とすることにより、気体供給機構に起因してワークが過度に浮き上がることをワーク抑止部材で抑止できる。すなわち気体供給によってワークが過度に浮き上がって水平方向におけるワークの位置がずれる事態などを回避できる。
【0048】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱機構は、中央部に凹部を有しており、前記保持フィルムに保持されている前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部の浮き上がりを抑止するワーク抑止部材と、前記ワーク抑止部材を前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の外周部に当接または近接させる近接機構と、を備え、前記気体供給機構は、前記ワークの外周部の浮き上がりを前記ワーク抑止部材で抑止させつつ、前記支持テーブルから前記通気孔を介して前記ワークと前記保持フィルムとの間に気体を供給させることによって前記保持フィルムの保持力を低減させることが好ましい。
【0049】
(作用・効果)この構成によれば、中央部に凹部を有しているワーク抑止部材をワークの外周部に当接または近接させた状態で、気体供給機構によって保持力が低減した保持フィルムからワークを離間させる。ワーク抑止部材をワークに当接または近接させた状態とすることにより、気体供給機構に起因してワークが過度に浮き上がることをワーク抑止部材で抑止できる。すなわち気体供給によってワークが過度に浮き上がって水平方向におけるワークの位置がずれる事態などを回避できる。
【0050】
また、ワーク抑止部材はワークのうち外周部を抑止する。すなわちワークの中央部はワーク抑止部材による抑止を受けないので、ワークの中央部にデバイスなどが配設される場合、当該デバイスにワーク抑止部材が接触することを回避しつつワークを抑止することができる。
【0051】
また、上述した発明において、前記ワーク離脱機構は、前記保持フィルムが前記ワークを保持している面のうち一部の領域において前記ワークと前記保持フィルムとの間に間隙部を形成させ、前記一部の領域において前記ワークを前記保持フィルムから離脱させる第1離脱機構と、前記間隙部を前記一部の領域から前記一部の領域以外の領域にわたって拡げることにより、前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させる第2離脱機構と、を備えることが好ましい。
【0052】
(作用・効果)この構成によれば、ワーク離脱機構は少なくとも2つの機構を用いてワークを保持フィルムから離脱させる。すなわち、まずは第1離脱機構がワークの一部において保持フィルムとの間に間隙部を形成させ、当該一部の領域においてワークを保持フィルムから離脱させる。その後、第2離脱機構が間隙部を当該一部の領域から当該一部の領域以外の領域にわたって拡げることにより、ワークの全面を保持フィルムから離脱させる。
【0053】
この場合、第1離脱機構および第2離脱機構の各々において、ワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークWの一部に対する保持フィルムの保持力と対抗する。すなわちワークの全面にわたって同時に保持フィルムから離脱させる場合は比較的大きな力が必要になる一方、ワークの一部を保持フィルムから離脱させるために必要な力は比較的小さい。よって、より容易にワークWを保持フィルムから離脱できることができる。
【0054】
また、上述した発明において、前記支持テーブルは中央部に凹部を有しており前記フィルム積層体の外周部を支持するように構成されており、前記第1離脱機構は、前記支持テーブルの前記凹部に気体を供給して前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、前記第2離脱機構は、前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させることが好ましい。
【0055】
(作用・効果)この構成によれば、支持テーブルは中央部に凹部を有しておりフィルム積層体の外周部を支持するように構成されている。そして第1離脱機構は、当該支持テーブルの凹部に気体を供給してフィルム積層体の中央部を凸状に変形させる。当該凸状の変形によって、外周部におけるワークとフィルム積層体との距離は、中央部におけるワークとフィルム積層体との距離よりも離れることとなる。その結果、ワークの全面のうち外周部において保持フィルムとの間に間隙部が形成され、ワークの外周部が中央部より左記に保持フィルムから離脱される。このときワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークW全体のうち外周部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの外周部のみを保持フィルムから離脱できる。
【0056】
そして第2離脱機構は、第1離脱機構によってワークの外周部と保持フィルムとの間に形成された間隙部を、ワークの中央部と保持フィルムとの間へと拡げることによってワークの全面を保持フィルムから離脱させる。第2離脱機構がワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワーク全体のうち中央部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの中央部を保持フィルムから離脱できる。従って、ワークに対する保持フィルムの保持力がワークを保持フィルムから離脱させるための力を上回って離脱エラーが発生する事態を回避できる。
【0057】
また、上述した発明において、前記第1離脱機構は、前記ワークのうち前記保持フィルムに保持されていない面の一端側を吸着する部分吸着部材と、前記部分吸着部材が前記ワークの一端側を吸着した状態で、前記部分吸着部材を前記フィルム積層体から離間させることによって前記ワークのうち前記一端側を前記保持フィルムから離脱させる吸着部材離間機構と、を備え、前記第2離脱機構は、前記間隙部を前記ワークのうち前記一端側から他端側へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させることが好ましい。
【0058】
(作用・効果)この構成によれば、まず第1離脱機構が、ワークのうち保持フィルムに保持されていない面の一端側を吸着する部分吸着部材で前記ワークを吸着保持した状態で、当該部分吸着部材をフィルム積層体から離間させることによってワークのうち一端側の部分を保持フィルムから離脱させる。このときワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワーク全体のうち一端側の部分に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの一端側の部分を保持フィルムから離脱できる。
【0059】
そして第2離脱機構は、第1離脱機構によってワークの一端側と保持フィルムとの間に形成された間隙部を、ワークの他端側と保持フィルムとの間へと拡げることによってワークの全面を保持フィルムから離脱させる。第2離脱機構がワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワークW全体のうち他端側の部分に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの他端側を保持フィルムから離脱できる。従って、ワークに対する保持フィルムの保持力がワークを保持フィルムから離脱させるための力を上回って離脱エラーが発生する事態を回避できる。
【0060】
また、上述した発明において、前記第1離脱機構は、前記フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによって前記ワークのうち外周部を前記保持フィルムから離脱させ、前記第2離脱機構は、前記間隙部を外周部から中央部へと拡げることによって前記ワークの全面を前記保持フィルムから離脱させることが好ましい。
【0061】
(作用・効果)この構成によれば、まず第1離脱機構が、フィルム積層体の中央部を凸状に変形させることによってワーク全体のうち外周部を保持フィルムから離脱させる。このときワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワーク全体のうち外周部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの一端側の部分を保持フィルムから離脱できる。
【0062】
そして第2離脱機構は、第1離脱機構によってワークの外周部と保持フィルムとの間に形成された間隙部を、ワークの中央部と保持フィルムとの間へと拡げることによってワークの全面を保持フィルムから離脱させる。第2離脱機構がワークを保持フィルムから離脱させるための力は、ワーク全体のうち中央部に対する保持フィルムの保持力と対抗するので、ワーク全体に対する保持フィルムの保持力と対抗する場合と比べてより容易にワークの中央部を保持フィルムから離脱できる。従って、ワークに対する保持フィルムの保持力がワークを保持フィルムから離脱させるための力を上回って離脱エラーが発生する事態を回避できる。
【発明の効果】
【0063】
本発明に係るワーク処理方法およびワーク処理装置によれば、ワーク保持過程において、保持フィルムにワークを載置させることにより、多孔質体で構成されている保持フィルムがワークを保持する。
【0064】
保持フィルムはワークを保持するものであり、フィルム積層体のうち保持フィルムの側にワークを載置させることによってワークの平坦性が担保される。すなわちワークに半導体素子を実装させる過程を例とするワーク処理過程において、ワークに反りなどの変形が発生することを保持フィルムによって防止できる。よって、ワーク処理過程において不良品が発生することをより確実に防止できる。
【0065】
また保持フィルムは多孔質体で構成されている。そのため保持フィルムにワークを保持させる際に、保持フィルムは気泡を咬み込むことなく、ワーク表面における微細な凹凸に応じて精度良く変形し、ワークの広い範囲に保持フィルムが密着する。そのためワークに対する保持フィルムの保持力を向上できる。そしてワーク離脱過程においてワークをフィルム積層体から離脱させる際に、保持フィルムの一部が剥がれてワークの表面に残留することを回避できる。そのため、保持フィルムに起因する残留物によってワークの表面が汚染されて不良が発生するという事態を防止できる。
【0066】
そして、フィルム積層体の保持フィルムの側にワークを載置するという単純な操作によって、ワークの変形を防止する保持力がワークに対して作用する。すなわち、ワークの変形を防止する工程に要する時間を大きく短縮できる。よって、ワークの処理効率を向上させつつワークの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】実施例1に係るワーク処理装置における工程を説明するフローチャートである。
図2】実施例1に係るワーク処理方法の各ステップにおける半導体装置の構成を示す断面図である。 (a)はステップS1の完了後における状態を示しており、(b)はステップS2の完了後における状態を示しており、(c)はステップS3の完了後における状態を示しており、(d)はステップS4の完了後における状態を示しており、(e)はステップS5の完了後における状態を示している。
図3】実施例1に係るフィルム積層体の構成を説明する図である。(a)はキャリアの平面図であり、(b)は保持フィルムの平面図であり、(c)はフィルム積層体の縦断面図である。
図4】実施例1に係るワーク着装機構の縦断面図である。
図5】実施例1に係るチャンバの縦断面図である。
図6】実施例1に係る封止機構の縦断面図である。
図7】実施例1に係るワーク離脱機構の縦断面図である。
図8】実施例1に係る支持テーブルの平面図である。
図9】実施例1に係るステップS1を説明する図である。(a)は支持ピンが搬送アームからフィルム積層体を受け取る状態を示す図であり、(b)はフィルム積層体が支持テーブルに載置された状態を示す図である。
図10】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
図11】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
図12】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
図13】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
図14】実施例1に係るステップS2を説明する図である。
図15】実施例1に係るステップS3を説明する図である。
図16】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図17】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図18】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図19】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図20】実施例1に係るステップS4を説明する図である。
図21】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図22】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図23】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図24】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図25】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図26】実施例1に係るステップS5を説明する図である。
図27】実施例2に係るワーク離脱機構の縦断面図である。
図28】実施例2に係る支持テーブルの平面図である。
図29】実施例2に係るステップS5を説明する図である。
図30】実施例2に係るステップS5を説明する図である。
図31】実施例2に係るステップS5を説明する図である。
図32】実施例2に係るステップS5を説明する図である。
図33】実施例2に係るステップS5を説明する図である。
図34】実施例3に係るワーク離脱機構の縦断面図である。
図35】実施例3に係る支持テーブルの平面図である。
図36】実施例3に係るステップS5を説明する図である。
図37】実施例3に係るステップS5を説明する図である。
図38】実施例3に係るステップS5を説明する図である。
図39】実施例3に係るステップS5を説明する図である。
図40】実施例3に係るステップS5を説明する図である。
図41】変形例に係る吸着プレートを示す縦断面図である。
図42】実施例3に係るステップS5を説明する図である。
図43】実施例3に係るフィルム積層体を作成する工程を説明する図である。(a)はキャリアに保持フィルムを載置してフィルム積層体を作成する工程を示す図であり(b)は塗布部材を用いてキャリア上に保持フィルムの層を形成させてフィルム積層体を作成する工程を示す図であり、(c)は穿孔部材を用いてフィルム積層体に貫通孔を形成させる工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0068】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。まず、図1および図2を用いて実施例1に係るワーク処理装置1の概要を説明する。ワーク処理装置1は、ワークWに所定の処理を行うことを目的とする。実施例1ではワーク処理過程として、ワークWに半導体素子7を実装させて半導体装置11を製造する工程を説明する。図1は、本実施例に係るワーク処理装置1を用いてワークWを処理する一連の工程を説明するフローチャートであり、図2は各ステップにおける半導体装置の構成を示す断面図である。
【0069】
本発明に係るワーク処理装置1では、まず図2(a)に示されるキャリア1の上に保持フィルム3が積層された構成を有する、フィルム積層体5を支持テーブル21に載置させる(ステップS1)。次に、図2(b)に示すようにワークWを保持フィルム3に保持させる(ステップS2)。そして、ワークWの接続用導体部(図示しない)と半導体素子7のバンプ8とを接続し、図2(c)に示すようにワークWに半導体素子7を実装させる(ステップS3)。
【0070】
半導体素子7を実装させた後、図2(d)に示すように半導体素子7を封止体9によって封止する(ステップS4)。半導体素子7が封止体9によって封止された後、フィルム積層体5からワークWを離脱させることにより図2(e)に示される半導体装置11が製造される(ステップS5)。なお本実施例において、半導体装置11はワークWの上に実装された1または2以上の半導体素子7の各々が、封止体9によって封止された構造体を指す。
【0071】
ここで、フィルム積層体5を構成するキャリア1および保持フィルム3について説明する。キャリア1は金属または硬質プラスチックなどで構成される板状部材であり、ワークWを支持する。キャリア1の具体例として矩形状のステンレス鋼板またはガラス板が挙げられる。キャリア1の厚みは一例として100μm~1mm程度であり、500μm程度であることがより好ましい。キャリア1の厚みは、ワークWの厚みを例とする諸条件に応じて適宜変更してよい。キャリア1は本発明における支持体に相当する。
【0072】
実施例1において、キャリア1は図3(a)に示すように、表面側から裏面側に貫通する貫通孔81が分散形成されている。貫通孔81が形成されている位置は、後述する支持テーブル61において流通孔65が形成される位置と対応するように予め定められる。
【0073】
保持フィルム3は、キャリア1の上に形成される薄層状の部材であり、ワークWを平坦な状態で保持する。保持フィルム3は、多孔質体を主な構成材料としている。保持フィルム3を構成する材料の好ましい一例として、シリコーン化合物、フッ素化合物、またはポリイミドを含む多孔質体が挙げられる。また、保持フィルム3を構成する材料のさらに好ましい一例として、シリコーンを含んでおり連続気泡構造を有する多孔質体、フッ素化合物を含んでおり連続気泡構造を有する多孔質体、またはポリイミドを含んでおり連続気泡構造を有する多孔質体が挙げられる。すなわち当該構成材料は、隣接するセル間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。本発明において、シリコーンはケイ素を含む高分子化合物であるものとする。本発明において、フッ素化合物はフッ素を含む高分子化合物であるものとする。フッ素化合物の一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。本実施例ではシリコーンを含んでおり連続気泡構造を有する多孔質体を、保持フィルム3の材料(フィルム材)として用いるものとする。
【0074】
保持フィルム3が多孔質体であることにより、保持フィルム3の表面に配置されるワークWに対して、保持フィルム3は高い吸着性を発揮する。すなわち保持フィルム3の吸着性に起因して、ワークWに対する保持フィルム3の保持力を向上させることができる。特にワークWに微細な凹凸が形成されている場合、保持フィルム3が多孔質体であることによって、ワークWの凹凸が保持フィルム3の表面に形成されている孔部に入り込む。そのため、保持フィルム3とワークWとの密着性を向上させることができる。
【0075】
保持フィルム3が連続気泡構造を有する多孔質体であることにより、保持フィルム3の表面に配置されるワークWに対して、保持フィルム3はさらに高い吸着性を発揮する。すなわち連続気泡構造によって優れた気泡抜け性が発揮されるので、保持フィルム3は気泡を咬み込むことなくワークW表面の形状に応じてさらに精度よく変形する。そのため、保持フィルム3とワークWとの密着性をさらに向上させることができる。
【0076】
実施例1において、保持フィルム3は図3(b)に示すように、表面側から裏面側に貫通する貫通孔83が分散形成されている。保持フィルム3において貫通孔83が形成されている位置は、キャリア1に形成されている貫通孔81の位置および支持テーブル61において流通孔65が形成される位置と対応するように予め定められる。
【0077】
そのため、キャリア1に保持フィルム3を積層させてフィルム積層体5を形成させた場合、貫通孔81の各々と貫通孔83の各々とが連通され、図3(c)に示すようにキャリア1の下面から保持フィルム3の上面にわたって貫通する1または2以上の貫通孔85がフィルム積層体5に分散形成されることとなる。貫通孔85は本発明における通気孔に相当する。
【0078】
半導体素子7は、ワークWに実装されて配線回路を形成する素子である。図2(c)ではワークWに2個の半導体素子7が実装されているが、ワークWに実装する半導体素子7の数は適宜変更してよい。半導体素子7の例として、シリコーン半導体が用いられているIC、有機半導体が用いられた有機EL素子、種々の演算回路が集積されたプロセッサまたはメモリなどが挙げられる。半導体素子7の下面にはハンダボールを含むバンプ8が形成されている。半導体素子7はバンプ8を介してワークWに接続される。
【0079】
ワークWは一例として、ガラス基板、有機基板、回路基板、シリコンウエハなどが挙げられる。実施例1ではワークWは略矩形状のフレキシブル基板を用いるものとする。ワークWの形状は略矩形状に限ることはなく、矩形状、円形状、多角形状などを例とする任意の形状に適宜変更してよい。ワークWの厚みは適宜変更できるが、一例として厚みが100μm以下である。
【0080】
封止材9は半導体素子7を封止するものであり、構成材料の例としてはエポキシ樹脂またはフェノール樹脂などが挙げられるが、半導体素子7の封止に利用できる材料であれば特に限定されない。本実施例では封止材9として固形の熱硬化性樹脂を用いるものとする。
【0081】
<全体構成の説明>
ここで、実施例1に係るワーク処理装置1を構成する各機構について説明する。図5は、実施例1に係るワーク処理装置1の基本構成を示す正面図である。なおワーク処理装置1を示す図において、各種構成を支持する支持機構、および各種構成を駆動させる駆動機構などについては適宜図示を省略している。
【0082】
ワーク処理装置1は、積層体載置機構13と、ワーク着装機構15と、半導体実装機構17と、封止機構19と、ワーク離脱機構20とを備えている。積層体載置機構13は、図示しない積層体供給部と、馬蹄形の搬送アーム21とを備えている。積層体供給部には、キャリア1に保持フィルム3が積層された構成を有するフィルム積層体5が予め多段に収納されている。
【0083】
搬送アーム21は、フィルム積層体5を搬送するとともに、後述する支持テーブル31にフィルム積層体5を載置させる。搬送アーム21の保持面には、僅かに突出した複数個の吸着パッドが設けられており、当該吸着パッドを介してフィルム積層体5を吸着保持する。本実施例において、搬送アーム21は上面に吸着パッドが設けられており、フィルム積層体5のうちキャリア1の下面周縁部を吸着保持する構成であるものとする。
【0084】
ワーク着装機構15は図4に示すように、ワーク供給部25と、ワーク搬送機構27と、チャンバ29とを備えている。ワーク供給部25の内部には、半導体素子7を実装させる面を上向きにした状態のワークWが多段に収納されている。
【0085】
ワーク搬送機構27は、馬蹄形の保持アーム28を備えている。保持アーム28の保持面には、僅かに突出した複数個の吸着パッドが設けられており、当該吸着パッドを介してワークWを吸着保持する。また、保持アーム28は、その内部に形成された流路と、この流路の基端側で連接された接続流路を介して圧空装置に連通接続されている。本実施例において、保持アーム28は下面に吸着パッドが設けられており、ワークWの上面周縁部を吸着保持する構成であるものとする。ワーク搬送機構27には図示しない移動可動台が配設されており、当該移動可動台によってワーク搬送機構27はワークWを保持した状態で水平移動および昇降移動可能に構成される。上述したワーク搬送機構27の構成は一例であり、ワークWを搬送する構成であればこれに限ることはない。
【0086】
チャンバ29は、下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとによって構成される。下ハウジング29Aの内部には支持テーブル31が収納されている。支持テーブル31はフィルム積層体5を保持するものであり、一例として金属製のチャックテーブルである。支持テーブル31はフィルム積層体5を吸着保持する構成であることが好ましい。
【0087】
図4などに示すように、支持テーブル31の内部には支持ピン32が配設されている。支持ピン32は、シリンダを例とする図示しないアクチュエータによって支持テーブル31の支持面で出退昇降可能に構成されている。また支持テーブル31から突出した支持ピン32がフィルム積層体5を下方から支持できるように、支持ピン32の位置が調整される。
【0088】
下ハウジング29Aは支持テーブル31とともに、y方向に延びるレール30に沿ってセット位置P1と着装位置P2との間を往復移動可能に構成される。下ハウジング29Aの上面には接合部33が形成されている。
【0089】
上ハウジング29Bは着装位置P2の上方に配置されており、図示しない昇降台によって昇降移動可能に構成される。上ハウジング29Bの下面には接合部34が形成されている。すなわち下ハウジング29Aが着装位置P2へ移動した状態で上ハウジング29Bが下降することにより、接合部33と接合部34を介して下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとが接合されてチャンバ29が形成される。接合部33および接合部34の接合面は、フッ素加工を一例とする離型処理が施されていることが好ましい。接合部33および接合部34が接合されることにより、チャンバ29は内部空間が密閉状態となるように構成されている。
【0090】
上ハウジング29Bの内部には、押圧部材35が設けられている。押圧部材35の上部にはシリンダ37が連結されており、シリンダ37の動作によって押圧部材35はチャンバ29の内部で昇降できる。押圧部材35の下面は扁平状であり、当該下面のサイズはワークWのサイズより大きくなるように構成されている。押圧部材35がチャンバ29の内部で下降することにより、支持テーブル31に積層載置されているフィルム積層体5およびワークWが押圧される。当該押圧により、ワークWはフィルム積層体5の保持フィルム3に密着し、保持フィルム3によってワークWが保持される。
【0091】
チャンバ29は図5に示すように、減圧用の流路38を介して真空装置39と連通接続されている。流路38には電磁バルブ40が配設されている。またチャンバ29には、大気開放用の電磁バルブ41を備えた流路42が連通接続されている。真空装置39が作動することにより、チャンバ29の内部空間は脱気されて減圧する。すなわち、ワーク着装機構15は、チャンバ29の内部において真空減圧状態でワークWをフィルム積層体5に向けて押圧するように構成される。なお、電磁バルブ40および電磁バルブ41の開閉操作、並びに真空装置39の動作は制御部43によって制御されている。
【0092】
半導体実装機構17は、載置テーブル45と、図示しないフラックス塗布機構、半導体搬送機構、および加熱機構とを備えている。載置テーブル45は、フィルム積層体5に吸着保持されているワークWを載置させる。フラックス塗布機構は、図13に示すようにワークWにフラックスFSを塗布する。半導体搬送機構は、フラックスFSが塗布されたワークWに半導体素子7を搬送して載置させる。加熱機構は一例としてリフロー炉であり、半導体素子7が載置されたワークWを加熱することにより半導体素子7をワークWに実装させる。
【0093】
封止機構19は図6に示すように、上部金型47と下部金型49とを備えている。上部金型47は流路51を介して封止材供給部53と連通接続されている。封止材供給部53は、流路51を介して上部金型47の内部空間に封止材9を供給する。上部金型47は図示しない昇降台によって昇降移動可能に構成される。上部金型47が下降することにより、上部金型47および下部金型49は図18に示すように、ワークWのうちフィルム積層体5から外側にはみ出た部分(外周部WS)を挟み込んで金型50を形成する。
【0094】
下部金型49の内部には保持テーブル55が収納されている。保持テーブル55は、半導体素子7が実装されたワークWをフィルム積層体5とともに載置保持するものであり、一例として金属製のチャックテーブルである。保持テーブル55は、下部金型49を貫通するロッド57と連結されている。ロッド57の他端はモータなどを備えるアクチュエータ59に駆動連結されている。そのため、保持テーブル55は下部金型49の内部で昇降移動が可能となっている。
【0095】
ワーク離脱機構20は図7に示すように、支持テーブル61と吸着プレート63とを備えている。支持テーブル61の中央部には、図7および図8に示すように、フィルム積層体5に保持されている状態のワークWを支持するワーク支持部64が設けられている。図8に示すように、ワーク支持部64の上面には複数の流通孔65および吸着孔67が分散形成されている。流通孔65の各々は、ワーク支持部64の内部に形成された流路68に接続されており、電磁バルブ69を介して気体供給装置70に連通されている。流路68は気体供給用の通路として機能する。
【0096】
平面視において流通孔65が配設される位置は、フィルム積層体5に形成されている貫通孔85の位置と対応するように予め定められる。そのため図21に示すように、ワークWを保持しているフィルム積層体5を支持テーブル61に支持させた場合、貫通孔85の各々と流路68の各々とが連通される。すなわち気体供給装置70から供給される気体は、流路68および貫通孔85を経由してワークWと保持フィルム3との間に放出される。
【0097】
またワーク支持部64に設けられている吸着孔67の各々は、ワーク支持部64の内部に形成された流路71に接続されており、電磁バルブ72を介して真空装置73に連通されている。流路71は、気体排出用の通路として機能する。真空装置73の作動によりワーク支持部64の上面でフィルム積層体5とともにワークWを吸着保持することができるようになっている。
【0098】
電磁バルブ69はその開閉により流路68の内部の圧力を調整する。電磁バルブ72はその開閉により流路71の内部の圧力を調整する。気体供給装置70および真空装置73の作動、並びに電磁バルブ69および電磁バルブ72の開閉は、制御部79によってそれぞれ制御される。気体供給装置70は本発明における気体供給機構に相当する。
【0099】
吸着プレート63は、可動台75と接続されており昇降移動および水平移動可能に構成される。吸着プレート63の下面には複数の吸着孔76が分散形成されており、流通孔76の各々は吸着プレート63の内部に形成された流路77に接続されている。流路77は電磁バルブ78を介して真空装置80に連通されており、気体排出用の通路として機能する。真空装置80の作動により、吸着プレート63はワークWを吸着保持できるようになっている。真空装置80の作動は、制御部79によって制御される。
【0100】
また吸着プレート63は全体として扁平であり、ワーク処理過程が完了した後のワークWを保持するように構成される。実施例1では実装過程および封止過程の完了後、半導体装置11において半導体素子7を封止している封止材9の層を吸着プレート63が吸着保持するように構成されている。すなわち、吸着プレート63は封止材9の層を吸着することによって半導体装置11を吸着保持し、保持した半導体装置11を図示しない半導体装置収納部へと搬送するように構成される。
【0101】
<動作の概要>
ここで、実施例1に係るワーク処理装置1の動作について、図1に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
【0102】
ステップS1(フィルム積層体の載置)
半導体装置の製造指令が出されると、まずは積層体載置機構13によってフィルム積層体5が載置される。すなわち、図示しないフィルム積層体供給部に搬送アーム21が差し込まれ、搬送アーム21によってフィルム積層体5が吸着保持される。フィルム積層体5は、保持フィルム3を下向きにした姿勢でワーク着装機構15に搬入される。なおこのときワーク着装機構15において、下ハウジング29Aはセット位置P1に予め移動している。
【0103】
搬送アーム21によってフィルム積層体5がワーク着装機構15に搬入されると、図9(a)に示すように支持ピン32を支持テーブル31から突出させる。フィルム積層体5を保持している搬送アーム21が支持テーブル31の上方から下降することにより、フィルム積層体5は支持ピン32に受け取られる。その後、図9(b)に示すように、支持ピン32が下降し、フィルム積層体5は支持テーブル31の支持面に載置される。支持テーブル31は図示しない真空装置などを作動させることによりフィルム積層体5のキャリア1側を吸着保持する。
【0104】
ステップS2(ワークをフィルムに保持)
フィルム積層体5が支持テーブル31に載置された後、ワークWを保持フィルム3に保持させる工程を開始する。すなわち、ワーク搬送機構27はワーク供給部25の内部で多段に収納されているワークW同士の間に保持アーム28を挿入する。保持アーム28はワークWの上面外周部を吸着保持して搬出し、ワーク搬送機構27は支持テーブル31の上方へと移動する。その後、ワーク搬送機構27が下降するとともに保持アーム28によるワークWの吸着が解除され、図10に示すように、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWが載置される。なお説明の便宜上、図10ないし図20においてフィルム積層体5における貫通孔85の記載を省略している。
【0105】
保持フィルム3にワークWが載置されると、図11に示すように下ハウジング29Aはレール30に沿ってセット位置P1から着装位置P2へと移動する。下ハウジング29Aが着装位置P2へ移動すると、図12に示すように上ハウジング29Bが下降を開始する。上ハウジング29Bが下降することによって下ハウジング29Aと上ハウジング29Bとが接合されてチャンバ29が形成される。
【0106】
チャンバ29を形成させた後、リーク用の電磁バルブ41を閉じるとともに電磁バルブ40を開いて真空装置39を作動させ、チャンバ29の内部空間の減圧を行う。チャンバ29の内部が所定の気圧(一例として、真空状態または100Pa程度の減圧状態)に減圧されると、制御部43は電磁バルブ40を閉じるとともに真空装置39の作動を停止させる。チャンバ29の内部が減圧されることにより、ワークWと保持フィルム3との間に存在している空気はチャンバ29の外部へと脱気される。
【0107】
チャンバ29の内部を減圧させた後、制御部43はシリンダ37を作動させて押圧部材35を下降させる。図13に示されるように押圧部材35が下降することによって、支持テーブル31に支持されているフィルム積層体5へとワークWは押圧される。
【0108】
ワークWがフィルム積層体5へと押圧(加圧)されることにより、ワークWと保持フィルム3との密着性が高くなりワークWがフィルム積層体5に着装される。すなわち、多孔質体である保持フィルム3にワークWが押圧されることによって、ワークWの下面の凹凸に応じて保持フィルム3の上面が精度よく変形し、ワークWの下面と保持フィルム3の上面とがより広い範囲で接触する。ワークWと保持フィルム3とが接触することによってファンデルワールス力が発生する。そして当該ファンデルワールス力に起因してワークWに対する保持フィルム3の吸着力が発生し、当該吸着力によってワークWは保持フィルム3に吸着保持される。なお、ワークWが保持フィルム3に吸着保持されることによってワークWがフィルム積層体5に着装された構造体については「ワーク着装体WF」とする。
【0109】
減圧下で押圧部材35が押圧することによってワーク着装体WFが作成された後、チャンバ29の減圧を解除する。すなわち制御部43は真空装置39の作動を停止させるとともに、リーク用の電磁バルブ41を開いてチャンバ29の内部の気圧を大気圧に戻す。その後、図14に示すように上ハウジング29Bを上昇させてチャンバ29を大気開放する。チャンバ29が大気開放されると、下ハウジング29Aはレール30Aに沿って着装位置P2からセット位置P1へと復帰する。下ハウジング29Aがセット位置P1へ復帰することにより、ワーク着装体WFは搬出可能となる。
【0110】
ステップS3(半導体素子の装着)
ワークWが保持フィルム3に着装されてワーク着装体WFが作成された後、半導体素子7を装着させる工程を開始する。まず、図示しない搬送機構によってワーク着装体WFが支持テーブル31から搬出され、半導体実装機構17の載置テーブル45へと搬送される。ワーク着装体WFは載置テーブル45に載置され、載置テーブル45はワーク着装体WFを吸着保持する。そして図示しないフラックス塗布機構によってワークWの上面にフラックスが塗布される。
【0111】
フラックスの塗布を行う間、半導体搬送機構は半導体素子7をワーク着装体WFの上方へ搬送する。そして、図示しないワークWの接続用導体部と半導体素子7のバンプ8とが対向するように、半導体素子7の位置合わせを行う。位置合わせが完了すると、半導体搬送機構は半導体素子7を下降させ、図15に示すようにフラックスを介して半導体素子7とワークWとを接触させる。
【0112】
半導体素子7とワークWとを接触させた後、加熱機構はワークWおよび半導体素子7を加熱する。当該加熱によってバンプ8に含まれているハンダボールが加熱溶融されるので、半導体素子7はバンプ8を介してワークWに固着される。加熱溶融が完了すると、半導体実装機構17は溶剤をワークWの上面に供給してフラックスを除去する。フラックス除去用の溶剤としては一例としてグリコールエーテル系の溶剤が用いられる。
【0113】
半導体素子7がワークWに実装されると、半導体素子7が実装されたワーク着装体WFをプラズマ処理装置へと搬送する。そしてプラズマ処理装置が備えるプラズマ洗浄室の内部において、半導体素子7が実装されているワークWの上面に対してプラズマ放電を行う。ワークWに対してプラズマ放電による処理を行うことにより、ワークWの上面において有機系汚染物およびフラックス残渣などが除去される。プラズマ処理が行われることによりステップS3に係る半導体素子7の実装工程が完了する。
【0114】
ステップS4(半導体素子の封止)
半導体素子7がワークWに実装されると、ワークWに実装された半導体素子7を封止する工程が開始される。まず、封止機構19に配設されている保持テーブル55を上昇させ、半導体素子7が実装されたワーク着装体WFを載置テーブル45から保持テーブル55に搬送する。このとき、図16に示すように保持テーブル55は下部金型49の上面より高い位置へと上昇移動している。
【0115】
半導体素子7が実装されたワーク着装体WFを保持テーブル55に載置させた後、制御部43はアクチュエータ59を作動させて保持テーブル55を下降させる。このとき図17に示すように、保持フィルム3の上面と下部金型49の上面とが面一になるように保持テーブル55の高さが調整される。言い換えると、ワークWの下面が下部金型49の上面に当接または近接する程度に保持テーブル55の高さが調整される。
【0116】
保持テーブル55を下降させて高さを調整した後、図18に示すように上部金型47を下降させる。上部金型47の下降により、ワークWのうちフィルム積層体5から外側にはみ出ている部分、すなわちワークWの外周部WSが上部金型47と下部金型49とによって挟み込まれて金型50が形成される。すなわち金型50の内部空間は、ワークWを境界として上部金型47側の上空間H1と下部金型49側の下空間H2とに分画される。
【0117】
ワークWの外周部WSを上下から挟み込んで金型50を形成させた後、制御部43は封止材供給部53を作動させ、図19に示すように、上部金型47に配設されている流路51を介して封止材9を金型50の内部に供給する。金型50の内部空間はワークWによって分画されているため、供給された封止材9は、半導体素子7が配置されている上空間H1に充填される。
【0118】
上空間H1に封止材9が充填されると、図示しない加熱機構が作動して封止材9を加熱させる。半導体素子7の周囲を覆う封止材9が加熱されることにより、ワークWに実装されている半導体素子7の各々は封止材9によって封止される。すなわち、加熱によって固形の封止材9が加熱溶融して流動性が高い状態となる。流動性が高い状態となっている封止材9が、半導体素子7が実装されたワークWの凹凸に追従するように変形し、半導体素子7の周囲は精度よく封止材9によって充填される。そして熱硬化性樹脂である封止材9はさらなる加熱によって硬化され、当該硬化によって半導体素子7の周囲が封止材9によって封止される。なお図1ないし図33では説明の便宜上、半導体素子7を実際より大きく図示するとともに封止材9の層を実際より厚く図示している。
【0119】
半導体素子7が封止されることにより、ワークWに実装された半導体素子7が封止材9によって封止された構成を有する半導体装置11が、フィルム積層体5の上に形成される。その後、図20に示すように、上部金型47を上昇させて上部金型47と下部金型49とを分離させる。上部金型47を上昇させることによってワークWから上部金型47が分離され、半導体装置11における封止材9の層が外部に露出される。所定時間加熱して封止材9を熱硬化させることによりステップS4の過程は完了する。実施例1において、ステップS3に係る半導体素子7をワークWに実装させる過程およびステップS4に係る封止材9で半導体素子7を封止する過程は、本発明に係るワーク処理過程に相当する。すなわち実施例1において、半導体装置11は所定の処理が行われたワークWに相当する。
【0120】
ステップS5(ワークの離脱)
半導体素子7が封止されて半導体装置11の作成が完了した後、ワークWをフィルム積層体5から離脱させる工程を開始する。実施例1に係るワーク離脱過程の詳細について、以下に説明する。
【0121】
まず、図示しない搬送機構によって半導体装置11をワーク離脱機構20へ搬送する。すなわち図21に示すように、半導体装置11はワーク離脱機構20が備える支持テーブル61のワーク支持部64に載置される。このとき図21に示すように、ワーク支持部64に配備されている流通孔65の各々が、フィルム積層体5に配設されている貫通孔85の各々と連通するように、ワーク支持部64上における半導体装置11の位置が調整される。またこのとき、吸着プレート63は支持テーブル61の上方に配置されている。
【0122】
半導体装置11がワーク支持部64に載置されると、制御部79は電磁バルブ72を開いて真空装置73を作動させ、吸着孔67を介して半導体装置11のキャリア1側を吸着保持する。半導体装置11を吸着保持することにより、ワークWは支持テーブル61によって支持される。
【0123】
半導体装置11を吸着保持した後、実施例1ではワークWと保持フィルム3との接触面に気体を供給する工程を行う。すなわち制御部79は電磁バルブ69を開いて気体供給装置70を作動させ、気体の供給を開始する。フィルム積層体5をキャリア1側から保持フィルム3側まで貫通している貫通孔85と、支持テーブル61に設けられている流通孔65の各々とは連通するように位置合わせが行われているので、気体供給装置70から供給された気体Arは図22に示すように、流路68および流通孔65を経由して貫通孔85の外部へ排出される。
【0124】
流通孔65から排出される気体Arは、保持フィルム3に密着保持されているワークWを支持テーブル61の上方へ押し上げる。そのため図23に示すように、流通孔65の近傍において保持フィルム3とワークWとの間に間隙部Hbが形成される。気体供給装置70から気体Arの供給を続けていくと、図24に示すように当該間隙部Hbは保持フィルム3とワークWとの接触面に沿って拡がっていく。その結果、保持フィルム3とワークWとが密着している領域の面積は気体Arの供給によって減少していく。すなわち、気体供給装置70から気体Arを供給させることによって、ワークWに対する保持フィルム3の保持力が低減する。
【0125】
気体供給装置70からワークWと保持フィルム3との間に気体Arを供給させて保持フィルム3の保持力を低減させた後、吸着プレート63を用いて半導体装置11を搬送させる。すなわち図25に示すように、吸着プレート63を下降させて半導体装置11に接触させる。そして、制御部79は電磁バルブ78を開放するとともに真空装置80を作動させ、流路77の内部を排気させる。流路77の内部が排気されると、吸着プレート63は吸着孔76を介して封止材9の上面を吸着する。このように、真空装置80が作動することによって吸着プレート63は半導体装置11を吸着保持する。言い換えると、真空装置80の作動によって吸着プレート63はワークWを吸着保持する。
【0126】
吸着プレート63で半導体装置11を保持した後、図26に示すように吸着プレート63を上昇させる。すなわち吸着プレート63は、保持フィルム3の保持面に垂直な方向へワークWを移動させる。気体供給装置70から気体Arを供給させることによってワークWに対する保持フィルム3の保持力は低減されているので、ワークWに対する吸着プレート63の保持力(吸着力)は確実にワークWに対する保持フィルム3の保持力より大きくなる。そのため、ワークWは全面にわたって保持フィルム3から容易に離脱され、半導体装置11は吸着プレート63とともに上昇する。
【0127】
フィルム積層体5から離脱された半導体装置11は吸着プレート63によってワーク離脱機構20から搬出され、図示しない半導体装置収納部へと収納される。ワークWがフィルム積層体5から離脱されて半導体装置11が半導体装置収納部へと収納されることにより、ステップS5の工程は完了する。
【0128】
このように、ステップS1からステップS5までの一連の工程により、半導体装置11が作成される。その後、規定枚数の半導体装置11が作成されたか否かによって工程が分岐される。規定枚数の半導体装置11が作成された場合は半導体装置の製造装置の動作は完了する。一方、さらに半導体装置11を作成する必要がある場合、ステップS6へと進む。
【0129】
ステップS6(フィルム積層体の再利用)
さらに半導体装置11を作成する場合、ステップS5において用いられたフィルム積層体5を封止機構19からワーク着装機構15へと搬送する。すなわち図22に示すように、封止機構19の保持テーブル55に載置されていたフィルム積層体5は、図示しない搬送機構によってワーク着装機構15へと搬送され、支持テーブル31に再び載置される。
【0130】
フィルム積層体5が支持テーブル31に再び載置された後、再びステップS2ないしS5の工程を行うことによって半導体装置11が再び作成される。以後、ステップS6を経由してステップS2ないしS5の工程を規定回数繰り返し行うことにより、所定の枚数の半導体装置11が作成される。すなわち本発明に係る半導体装置の製造工程では、1枚目の半導体装置11を作成する際に形成されたフィルム積層体5を、2枚目以降の半導体装置11を作成する際に再利用することができる。言い換えると、半導体装置11の作成に用いられたフィルム積層体5を、次回に行われるステップS2の工程に再利用できる。
【0131】
<実施例1の構成による効果>
実施例1に係るワーク処理装置1によれば、ワークWをフィルム積層体5に積層させた状態で、ワークを処理する工程すなわち半導体素子7をワークWに実装させる工程と半導体素子7を封止材9で封止して半導体装置11を製造する工程とを行う(ステップS3、S4)。すなわちワークWに対して所定の処理を行う前段階として、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置させる工程を行う(ステップS2)。
【0132】
保持フィルム3はワークWを保持するものであり、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置して密着させることによってワークWの平坦性が担保される。すなわち半導体素子7を実装させる工程などにおいてワークWが加熱される際に、ワークWが変形してワークWの一部がフィルム積層体5から浮き上がることを保持フィルム3によって防止できる。また保持フィルム3は強い剪断接着力を有する材料で構成されているので、保持フィルム3の表面(ここではxy平面)に沿う方向へワークWがずれることを確実に防止できる。
【0133】
また保持フィルム3はワークWの略全面に対して接触する。言い換えると、保持フィルムはワークWの略全面を保持する。よって、保持フィルム3はワークWの略全面に対して平坦性を維持する力を作用させるので、ワークWの変形をより確実に防止できる。特にワークWのうち、半導体素子7を実装させる領域は確実にフィルム積層体5の保持フィルム3に接触して保持される。すなわち、半導体素子7を実装させる領域(ワークWの処理を行う領域)において特にワークWの変形を防止する効果が発生するので、半導体素子7の実装不良すなわちワークWの処理不良が発生することをより確実に防止できる。
【0134】
本実施例では、フィルム積層体5の保持フィルム3の側にワークWを載置するという単純な操作によって、ワークWの変形を防止する保持力がワークに対して作用する。すなわち従来の構成とは異なり、実施例に係る半導体装置11の製造工程ではワークWの変形を防止する工程に要する時間を大きく短縮できる。よって、ワークWの処理効率を向上させつつワークWの変形を防止することができる。
【0135】
そして保持フィルム3の構成材料は連続気泡構造を備える多孔質体であるので、保持フィルム3の内部に含まれている気体は連続気泡構造によって好適に保持フィルム3の外部へ抜けることができる。言い換えると、保持フィルム3は優れた気泡抜け性を有している。そのため保持フィルム3にワークWを着装させる際に、保持フィルム3は気泡を咬み込むことなく柔軟に変形する。よって、保持フィルム3の表面はワークWの表面の形状に応じて精度よく変形し、保持フィルム3とワークWとはより広い範囲で接触する。そのため、保持フィルム3をワークWとの間に発生するファンデルワールス力がより大きくなるので、ワークWに対する保持フィルム3の保持力を向上できる。
【0136】
また、保持フィルム3を用いてワークWを保持する実施例1の構成では、ワークWに残渣が発生することを好適に回避できる。従来のように接着剤を用いて支持体にワークを保持させた場合、エポキシ系樹脂を例とする接着剤は過度に強い垂直接着力を有するので、ワークを支持体から剥離するためには非常に大きな剥離力を必要とするので、過度な剥離力を作用させることによってワークなどが損傷する事態が懸念される。そして接着力を低減すべく接着剤を溶剤または加熱などで軟化または液状化させた場合、軟化または液状化した接着剤の層は容易に剪断されて一部の接着剤がワークに残留する。このような糊残りに起因する接着剤の残渣はワークに対して悪影響を及ぼすので、ワーク処理効率およびワーク処理精度を大きく低下させる。
【0137】
一方、保持フィルム3を構成するシリコーンまたはフッ素化合物を含む連続気泡構造の多孔質体は、面方向に作用する剪断接着力と比べて面と垂直な方向に作用する保持力は小さい。そのため、吸着プレート63などを用いてワークWを保持した状態でワークWを保持フィルム3の面に垂直な方向へ移動させることにより、ワークWに対する吸着プレート63の保持力および引っ張り力を過度に大きくすることなく、容易にワークWを保持フィルム3から離脱させることができる。すなわちワークWを保持フィルム3から離脱させる際にワークWまたは保持フィルム3などに損傷が発生することをより確実に回避できる。
【0138】
また、ワークWを保持フィルム3から離脱させるために必要な引っ張り力は小さいので、保持フィルム3の層の一部が剪断されてワークWに残留する事態を好適に回避できる。さらに保持フィルム3は固体状であり、保持力を低下させるために保持フィルム3を軟化させる必要がないので、保持フィルム3が剪断させることをより確実に回避できる。
【0139】
そして実施例1では保持フィルム3とワークWとの間に気体を供給する工程を行った後にワークWを保持フィルム3から離脱させる。保持フィルム3とワークWとの間に気体を供給することによって保持フィルム3とワークWとの間に間隙部Hbが形成されて保持フィルム3とワークWとの間に作用するファンデルワールス力が低下し、結果としてワークWに対する保持フィルム3の保持力が低減される。保持フィルム3の保持力を低減させる工程を行った後に、ワークWを保持フィルム3の面に垂直な方向へ移動させてワークWを保持フィルム3から離脱させるので、保持フィルム3の保持力に起因して離脱エラーや残渣が発生する事態をより確実に回避できる。
【0140】
また本発明に係るワーク処理装置1では、ワークWを保持フィルム3から離脱させる際に保持フィルム3の構成材料の一部が剥がれてワークWに残渣として付着する事態を回避できる。そのため、1回目の半導体装置11の製造工程(ワーク処理工程)において使用されたフィルム積層体5を、2回目以降の半導体装置11の製造工程に再度利用することが可能となる。すなわち2回目以降の半導体装置11の製造工程ではステップS1に係るフィルム積層体5の生成工程を省略できるので、半導体装置11の大量生産に要する時間を短縮できるとともにコストを大きく低減できる。また、キャリア1および保持フィルム3の廃棄量を削減できるので環境に対する負荷も低減できる。
【0141】
そして実施例1では気体供給装置70によって気体Arを供給する工程とワークWを保持フィルム3から離反させる工程とによって容易かつ確実にワークWを保持フィルム3から離脱できる。すなわち接着剤を用いる従来の構成と異なり接着剤の塗布乾燥、接着剤の溶解、封鎖部材による封止および加熱といった多数かつ複雑な工程を行う必要がないので、ワーク処理効率を大きく向上させることができる。
【0142】
また実施例1において、フィルム積層体5にワークWを密着させる工程はチャンバ29を用いて減圧状態で行われる。すなわち保持フィルム3とワークWとの間の空間を抜気させた状態でフィルム積層体5にワークWを密着させるので、保持フィルム3とワークWとの間に巻き込まれた空気に起因してワークWに対する保持フィルム3の保持力が低下することを回避できる。
【0143】
また本実施例では、フィルム積層体5は平面視においてワークWより小さくなるように構成されており、ワークWの外周部がフィルム積層体5の外側に突出するように、ワークWがフィルム積層体5に載置される。この場合、ステップS5において半導体素子7を封止材9で封止する際に、フィルム積層体5の外側に突出したワークWの外周部WSを上下から上部金型47および下部金型49などで挟み込むことで、半導体素子7の周囲を密閉状態とすることができる。そのため、半導体素子7またはワークWの中央部に圧力を加えることなく半導体素子7の周囲に封止材9を充填できる。よって、半導体装置11を製造する際に、半導体素子7またはワークW上の回路において、圧力の作用に起因して損傷が発生することを確実に回避できる。
【0144】
また、ワークWの外周部WSを把持することで、半導体素子7またはワーク上の回路に圧力を加えることなく半導体装置11を搬送できる。よって、半導体装置11の搬送を行う際に半導体素子7またはワークW上の回路に損傷が発生することも回避できる。
【実施例0145】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1で説明したワーク処理装置1と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。
【0146】
実施例1と実施例2は、主にフィルム積層体5およびワーク離脱機構20の構成が相違する。実施例1ではフィルム積層体5に貫通孔85が形成されている。すなわち貫通孔81が形成されているキャリア1と貫通孔83が形成されている保持フィルム3とを積層させることにより、下面から上面にわたって貫通する貫通孔85を備えるフィルム積層体5が形成される。また実施例1に係るワーク離脱機構20は支持テーブル61に気体供給装置70が設けられている。気体供給装置70から支持テーブル61および貫通孔85を経由してワークWと保持フィルム3との間に気体を供給した後、ワークWの全面にわたってワークWを保持フィルム3から離脱させる。
【0147】
一方、実施例2に係るワーク離脱装置20Aは吸着プレート63と支持テーブル61Aを備えている。支持テーブル61Aは図27および図28に示すように、中央部に凹部91が形成されており全体として中空となっている。すなわち支持テーブル61Aは外周部93が凸状となっている。凹部91の大きさは、ワークWよりやや小さくなるように構成されている。すなわち図27に示すように、外周部93のうち凹部91の近傍であり凹部91を囲繞する領域が、ワーク支持部64AとしてワークWの外周部を支持する。
【0148】
ワーク支持部64Aの上面には吸着孔67Aが分散形成されている。吸着孔67Aは図27に示すように、支持テーブル61Aに設けられている流路71に接続されており、電磁バルブ72を介して真空装置73に連通されている。流路71は、気体排出用の通路として機能する。真空装置73の作動により、ワーク支持部64Aの上面でフィルム積層体5の外周部とともにワークWの外周部を吸着保持することができるようになっている。
【0149】
凹部91の底面には気体流通孔95が形成されている。気体流通孔95は支持テーブル61Aに設けられている気体供給用の流路96に接続されており、電磁バルブ97を介して気体供給装置98に連通されている。気体供給装置98は、流路96および気体流通孔95を介して凹部91の内部空間Rへ気体を供給する。電磁バルブ97の開閉および気体供給装置98の動作は、制御部79によって制御される。また図29などに示すように、実施例2はフィルム積層体5に貫通孔85を要しない構成となっている点で実施例1と相違する。
【0150】
ここで、実施例2に係るワーク処理装置1Aを用いてワークWの処理を行う一連の工程を説明する。なおステップS1ないしステップS4の工程については実施例1と実施例2は共通するため説明を省略し、実施例2に係るステップS5の工程について説明する。
【0151】
ステップS5(ワークの離脱)
実施例2においてステップS5の工程が開始されると、図示しない搬送機構によって半導体装置11をワーク離脱機構20へ搬送する。すなわち図29に示すように、半導体装置11は支持テーブル61Aのワーク支持部64Aに載置される。このとき、支持テーブル61Aはワーク支持部64Aを介して半導体装置11の外周部を支持する一方、中空となっている支持テーブル61Aは半導体装置11の中央部を支持しない状態となっている。
【0152】
半導体装置11がワーク支持部64に載置されると、制御部79は電磁バルブ72を開いて真空装置73を作動させ、吸着孔67Aを介して半導体装置11の外周部(具体的にはキャリア1の外周部)を吸着保持する。半導体装置11を吸着保持することにより、ワークWの外周部は支持テーブル61によって支持される。
【0153】
支持テーブル61Aが半導体装置11を吸着保持した後、吸着プレート63で半導体装置11を保持する操作を行う。すなわち図30に示すように吸着プレート63を下降させて半導体装置11に接触させる。そして、制御部79は電磁バルブ78を開放するとともに真空装置80を作動させ、流路77の内部を排気させる。流路77の内部が排気されると、吸着プレート63は吸着孔76を介して封止材9の上面を吸着する。このように、真空装置80が作動することによって吸着プレート63は半導体装置11を吸着保持する。
【0154】
真空装置73および真空装置80を作動させた後、実施例2では気体供給装置98を用いることにより、まずはワークWのうち一部をフィルム積層体5から離脱させる。すなわち図31に示すように、制御部79は電磁バルブ97を開いて気体供給装置98を作動させ、気体Arの供給を開始する。気体Arは流路96および気体流通孔95を経由し、中空となっている支持テーブル61Aの内部の空間Rに供給される。
【0155】
支持テーブル61Aは半導体装置11の外周部を吸着保持しているので、凹部91の内部の空間Rは支持テーブル61Aとキャリア1とによって密閉状態となっている。そのため、空間Rに供給された気体Arは外部へ逃げることなくキャリア1を上方へ押圧する。キャリア1の外周部は支持テーブル61Aによって吸着保持されている一方、キャリア1の中央部は支持テーブル61による支持を受けていない。そのため図32に示すように、気体Arの圧力によってキャリア1は保持フィルム3とともに中央部が上向き凸状に湾曲していく。
【0156】
このとき、キャリア1および保持フィルム3の中央部が上向きに突出する長さLに応じて吸着プレート63を僅かに上昇させる。すなわち、ワークWは全面にわたって、吸着プレート63とともに僅かに上昇する。吸着プレート63を上昇させることにより、フィルム積層体5のうち上方へ突出する中央部においてはワークWと保持フィルム3とが密着している状態が維持される。
【0157】
一方、キャリア1の外周部は支持テーブル61Aによって吸着保持されており上方へ移動しないので、フィルム積層体5のうち外周部においてはワークWから剥離される力が作用する。その結果、ワークWのうち中央部は保持フィルム3と密着している状態が維持される一方、ワークWの外周部は保持フィルム3から離脱する。言い換えると、空間Rに気体を供給させつつ吸着プレート63を上昇させることにより、図32に示すようにワークWの一部(ここでは外周部)において、保持フィルム3との間に間隙部Hcが形成される。間隙部Hcは、ワークWが保持フィルム3から離脱する切っ掛け(離脱切っ掛け)となる部分である。ワークW全面のうち一部を保持フィルム3から離脱させる過程は、本発明における第1離脱過程に相当する。
【0158】
ワークWのうち外周部を保持フィルム3から離脱させた後、図33に示すように吸着プレート63をさらに上昇させる。吸着プレート63をさらに上昇させることによって、吸着プレート63が保持しているワークWは、保持フィルム3との距離が大きくなる。そしてワークWおよび保持フィルム3に対してさらに剥離力が作用する。そのため、間隙部Hcが形成される領域はワークWの外周部から中央部に向かって徐々に拡がっていき、最終的にワークWは全面にわたって保持フィルム3から離脱される。ワークWが全面にわたって保持フィルム3から離脱されることにより、半導体装置11は吸着プレート63とともに支持テーブル61Aから完全に離脱される。
【0159】
ワークWの全面にわたって保持フィルム3から離脱されると、フィルム積層体5から離脱された半導体装置11は吸着プレート63によってワーク離脱機構20から搬出され、図示しない半導体装置収納部へと収納される。ワークWがフィルム積層体5から離脱されて半導体装置11が半導体装置収納部へと収納されることにより、ステップS5の工程は完了する。なおステップS6の工程は実施例1と共通するので説明を省略する。
【0160】
<実施例2の構成による効果>
実施例2に係るワーク処理装置1Aでは実施例1と同様に、ワークWに対して所定の処理を行う前段階として、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置させる工程を行う。保持フィルム3はワークWを平坦な状態で保持するので、半導体素子7を実装させる工程を例とするワークを処理する工程においてワークWの変形またはワークWの位置ズレが発生することを防止できる。
【0161】
保持フィルム3はワークWを保持するものであり、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置して密着させることによってワークWの平坦性が担保される。すなわち半導体素子7を実装させる工程などにおいてワークWが加熱される際に、ワークWが変形してワークWの一部がフィルム積層体5から浮き上がることを保持フィルム3によって防止できる。また保持フィルム3は強い剪断接着力を有する材料で構成されているので、保持フィルム3の表面(ここではxy平面)に沿う方向へワークWがずれることを確実に防止できる。
【0162】
そして保持フィルム3の構成材料は連続気泡構造を備える多孔質体であるので、保持フィルム3にワークWを着装させる際に、保持フィルム3は気泡を咬み込むことなく柔軟に変形する。よって、保持フィルム3の表面はワークWの表面の形状に応じて精度よく変形し、保持フィルム3とワークWとはより広い範囲で接触するので、ワークWに対する保持フィルム3の保持力を向上できる。また、保持フィルム3の構成材料は連続気泡構造を備える多孔質体であるので、ワークWを保持フィルム3から離脱させる際に保持フィルム3の一部がワークWに残留することを好適に回避できる。そして保持フィルム3の一部がワークW上に残渣となることを防止できるので、フィルム積層体5の再利用が可能となりワークの処理効率向上および処理コスト低下が可能となる。
【0163】
そして実施例2では気体供給装置98を用いて保持フィルム3を変形させ、まずはワークWの一部において保持フィルム3との間に間隙部Hcを形成させる。そして間隙部HcをワークWの他の部分へと拡げていく。言い換えると、ワークWのうち一部を保持フィルム3から離脱させた後、徐々にワークWの残りの部分を保持フィルム3から離脱させていくことによってワークWの全面を保持フィルム3から離脱させる。
【0164】
この場合、ワークWを保持フィルム3から離脱させるための力(一例としてワークWを保持した吸着プレート63を上昇させる力)は、ワークWの一部に対する保持フィルム3の保持力と対抗する。すなわちワークWの全面にわたって同時に保持フィルム3から離脱させる場合は比較的大きな力が必要になる一方、ワークWの一部を保持フィルム3から離脱させるために必要な力は比較的小さい。よって、ワークWに作用させる力を低減させつつ容易にワークWを保持フィルム3から離脱できるとともに、保持フィルム3の保持力に起因してワークに損傷が発生する事態やワークに残渣が発生する事態をより確実に回避できる。
【0165】
また、実施例2ではワークWと保持フィルム3との間に気体を供給させる必要がないので、フィルム積層体5に貫通孔85を形成させる必要がない。そのため、ワークWをフィルム積層体5から離脱させる工程をより単純化および短縮化させることができる。
【実施例0166】
次に、本発明の実施例3を説明する。なお実施例3は実施例2と同様に、フィルム積層体5に貫通孔85を要しない構成となっている。実施例3は、ワーク離脱装置20の構成が他の実施例と相違する。実施例3に係るワーク離脱装置20Bは図34および図35に示すように、支持テーブル61Bと吸着プレート63Bとを備えている。
【0167】
支持テーブル61Bは中央部にワーク支持部64Bを備えており、ワーク支持部64Bはフィルム積層体5とともにワークWを保持するための吸着孔67を備えている。すなわち支持テーブル61Bは気体を供給する機構を備えていないという点において実施例1および実施例2と相違する。よって実施例3では流通孔65、流路68、電磁バルブ69、および気体供給装置70を例とする、気体の供給に要する構成を省略できる。
【0168】
吸着プレート63Bは、回転軸99を備えている。回転軸99は可動台75と接続されており、水平軸の軸周りに回転可能に構成される。実施例3において、回転軸99はy方向の軸周りに回動する。回転軸99が回転することにより、水平面(xy平面)に対する吸着プレート63Bの角度を適宜調整できる。図34は、吸着プレート63Bが水平である状態を示している。
【0169】
吸着プレート63Bの下面101は、全体として凸状に湾曲している。当該下面101には、他の実施例と同様に吸着孔76が分散配置されている。ここで吸着孔76のうち、x方向について吸着プレート63Bの一端側(図34では左側)に配置されているものを吸着孔76aとする。また吸着プレート63Bの中央側に配置されている吸着孔76を吸着孔76bとし、吸着プレート63Bの他端側(図34では右側)に配置されている吸着孔76を吸着孔76cとして各々を区別する。
【0170】
実施例3では吸着プレート63Bが湾曲した下面101を備えることにより、吸着プレート63BはワークWのうち一部に接触できるように構成されている。そして吸着プレート63Bを傾斜させる回転軸99を備えることにより、吸着プレート63BがワークWに接触する領域をワークWの一端側から他端側へと順次変更できるように構成される。
【0171】
すなわち図37に示すように吸着プレート63Bの一端側が他端側より低くなるように傾斜している状態(以下、「左傾斜状態」とする)では、下面101のうち一端側がワークWに接触できるようになる。当該左傾斜状態では吸着孔76のうち吸着孔76aがワークW(半導体装置11)の一端側を吸着保持することができる。そして図34に示すように吸着プレート63Bが水平状態である場合、下面101の中央部がワークWに接触できるようになる。また図39に示すように吸着プレート63Bの他端側が一端側より低くなるように傾斜している状態(以下、「右傾斜状態」とする)では、下面101のうち他端側がワークWに接触できるようになる。当該右傾斜状態では吸着孔76のうち吸着孔76cがワークW(半導体装置11)の他端側を吸着保持することができる。
【0172】
ここで、実施例3に係るワーク処理装置1Bを用いてワークWの処理を行う一連の工程を説明する。なおステップS1ないしステップS4の工程について、実施例3は実施例1と共通するため説明を省略し、実施例3に係るステップS5の工程について説明する。なお説明の便宜上、半導体装置11において半導体素子7およびバンプ8の記載を省略している。
【0173】
ステップS5(ワークの離脱)
実施例3においてステップS5の工程が開始されると、図示しない搬送機構によって半導体装置11をワーク離脱機構20Bへ搬送する。すなわち図36に示すように、半導体装置11は支持テーブル61Bのワーク支持部64Bに載置される。 半導体装置11がワーク支持部64Bに載置されると、制御部79は電磁バルブ72を開いて真空装置73を作動させ、吸着孔67を介して半導体装置11の外周部(具体的にはキャリア1の外周部)を吸着保持する。半導体装置11を吸着保持することにより、ワークWは支持テーブル61Bによって支持される。
【0174】
半導体装置11を吸着保持した後、実施例3では吸着プレート63Bを用いてワークWの一部を保持フィルム3から離脱させる操作を行う。まずは図37に示すように、回転軸99を左回りに回転させて吸着プレート63Bを左傾斜状態となるように変更させつつ、吸着プレート63Bを下降させて半導体装置11に接触させる。このとき、半導体装置11のうち一端側が吸着プレート63Bと接触する。すなわち吸着孔76のうち、下面101の一端側に配置されている吸着孔76aが半導体装置11の一端側に接触する。
【0175】
左傾斜状態となっている吸着プレート63Bを半導体装置11に接触させた後、制御部79は電磁バルブ78を開放するとともに真空装置80を作動させ、流路77の内部を排気させる。流路77の内部が排気されると、吸着プレート63Bは吸着孔76aを介して半導体装置11の上面のうち一端側の部分を吸着保持する。
【0176】
吸着プレート63Bが半導体装置11の一端側を吸着保持した後、制御部79は真空装置80を作動させつつ回転軸99を右回りに回転させる。回転軸99の回転により、図38に示すように吸着プレート63Bの姿勢は左傾斜状態から水平状態へ変更される。水平状態となることにより、吸着プレート63Bの中央部分に配置されている吸着孔76bが半導体装置11の中央部に接触して吸着する。すなわち吸着プレート63Bの姿勢を水平状態にすることで、新たにワークWの中央部分が吸着プレート63Bによって保持される。
【0177】
ここで回転軸99を回転させて吸着プレート63Bの姿勢を左傾斜状態から水平状態へ変更することにより、下面101の一端側は上昇する。このとき、下面101の一端側に設けられている吸着孔76aが半導体装置11の一端側を吸引保持している状態で下面101の一端側が上昇されるため、ワークWの一端側において保持フィルム3から離反させる力が作用する。
【0178】
保持フィルム3がワークWを保持する力は当該離反させる力と比べて弱いため、ワークW全面のうち一端側の部分は吸着プレート63Bの吸引力によって引き上げられ、保持フィルム3から離脱する。すなわちワークWのうち一端側の部分において保持フィルム3との間に間隙部Hcが形成される。実施例3において、間隙部Hcは実施例2と同様に離脱切っ掛けとなる。実施例3においてワークW全面のうち一端側を保持フィルム3から離脱させる過程は、本発明における第1離脱過程に相当する。実施例3において、吸着プレート63Bは本発明における部分吸着部材に相当する。
【0179】
このとき、吸着プレート63BがワークWを保持フィルム3から離脱させる力は、ワークWの一部(ワークWの一端側部分)に対する保持フィルム3の保持力と対抗する。すなわちワークWの全面を同時に保持フィルム3から離脱させる構成に比べて、ワークWを保持フィルム3から離脱させる力が対抗する力の大きさは小さくなる。よって、ワークWに作用させる力を低減させつつ容易にワークWを保持フィルム3から離脱できるとともに、保持フィルム3の保持力に起因してワークに損傷が発生する事態やワークに残渣が発生する事態をより確実に回避できる。
【0180】
吸着プレート63BがワークWの一端側を保持フィルム3から離脱させた後、制御部79はさらに回転軸99を右回りに回転させる。回転軸99の回転により、図39に示すように吸着プレート63Bの姿勢は水平状態から右傾斜状態へ変更される。右傾斜状態となることにより、吸着プレート63Bの他端側に配置されている吸着孔76cが半導体装置11の他端側に接触して吸着する。すなわち吸着プレート63Bの姿勢を右傾斜状態にすることで新たにワークWの他端側が吸着プレート63Bによって保持される。すなわち、ワークWの全面が吸着プレート63Bによって保持される。
【0181】
回転軸99を回転させて吸着プレート63Bの姿勢を水平状態から右傾斜状態へ変更することにより、下面101の中央部は上昇する。このとき、下面101の中央部に設けられている吸着孔76bが半導体装置11の中央部を吸引保持している状態で下面101の中央部が上昇されるため、新たにワークWの中央部において保持フィルム3から離反させる力が作用する。その結果、ワークWの一端側に加えて新たにワークWの中央部が保持フィルム3から離脱される。すなわち間隙部Hcが形成される領域はワークWの一端側から中央部へと拡がっていく。
【0182】
吸着プレート63BがワークWの一端側および中央部を保持フィルム3から離脱させた後、図40に示すように吸着プレート63Bを上昇させる。吸着プレート63Bを上昇させることにより、ワークWの他端側部分も新たに保持フィルム3から離脱される。すなわち間隙部Hcが形成される領域はワークWの一端側から他端側まで拡がっていき、ワークWの全面が保持フィルム3から離脱される。
【0183】
このとき、吸着プレート63Bの上昇によってワークWを保持フィルム3から離脱させる力は、ワークWの一部(ワークWの他端側部分)に対する保持フィルム3の保持力と対抗する。すなわちワークWの全面を同時に保持フィルム3から離脱させる構成に比べて、ワークWを保持フィルム3から離脱させる力が対抗する力の大きさは小さくなるので、容易にワークWを保持フィルム3から離脱できる。
【0184】
ワークWの全面にわたって保持フィルム3から離脱されると、フィルム積層体5から離脱された半導体装置11は吸着プレート63Bによってワーク離脱機構20から搬出され、図示しない半導体装置収納部へと収納される。ワークWがフィルム積層体5から離脱されて半導体装置11が半導体装置収納部へと収納されることにより、ステップS5の工程は完了する。なおステップS6の工程は実施例1と共通するので説明を省略する。
【0185】
<実施例3の構成による効果>
実施例3に係るワーク処理装置1Bでは実施例1と同様に、ワークWに対して所定の処理を行う前段階として、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置させる工程を行う。保持フィルム3はワークWを平坦な状態で保持するので、半導体素子7を実装させる工程を例とするワークを処理する工程においてワークWの変形またはワークWの位置ズレが発生することを防止できる。
【0186】
保持フィルム3はワークWを保持するものであり、フィルム積層体5のうち保持フィルム3の側にワークWを載置して密着させることによってワークWの平坦性が担保される。すなわち半導体素子7を実装させる工程などにおいてワークWが加熱される際に、ワークWが変形してワークWの一部がフィルム積層体5から浮き上がることを保持フィルム3によって防止できる。また保持フィルム3は強い剪断接着力を有する材料で構成されているので、保持フィルム3の表面(ここではxy平面)に沿う方向へワークWがずれることを確実に防止できる。
【0187】
そして保持フィルム3の構成材料は連続気泡構造を備える多孔質体であるので、保持フィルム3にワークWを着装させる際に、保持フィルム3は気泡を咬み込むことなく柔軟に変形する。よって、保持フィルム3の表面はワークWの表面の形状に応じて精度よく変形し、保持フィルム3とワークWとはより広い範囲で接触するので、ワークWに対する保持フィルム3の保持力を向上できる。また、保持フィルム3の構成材料は連続気泡構造を備える多孔質体であるので、ワークWを保持フィルム3から離脱させる際に保持フィルム3の一部がワークWに残留することを好適に回避できる。そして保持フィルム3の一部がワークW上に残渣となることを防止できるので、フィルム積層体5の再利用が可能となりワークの処理効率向上および処理コスト低下が可能となる。
【0188】
そして実施例3では実施例2と同様に、まずはワークWの一部において保持フィルム3との間に間隙部Hcを形成させる。そして間隙部HcをワークWの他の部分へと拡げていく。すなわち回転軸99および湾曲した下面101を備える吸着プレート63Bを用いることにより、ワークWの全面のうち吸着プレート63Bによって保持される部分を適宜変更できる。当該構成により、ワークWのうち一端側の部分を保持フィルム3から離脱させた後、一端側から他端側に向かって徐々にワークWを保持フィルム3から離脱させていくことによってワークWの全面を保持フィルム3から離脱させる。
【0189】
この場合、ワークWを保持フィルム3から離脱させるための力は、ワークWの一部に対する保持フィルム3の保持力と対抗する。すなわちワークWの全面にわたって同時に保持フィルム3から離脱させる場合と比べて、ワークWの一部を保持フィルム3から離脱させるために必要な力を小さくできる。よって、ワークWに作用させる力を低減させつつ容易にワークWを保持フィルム3から離脱できるとともに、保持フィルム3の保持力に起因してワークに損傷が発生する事態やワークに残渣が発生する事態をより確実に回避できる。
【0190】
また、実施例3では実施例2と同様にワークWと保持フィルム3との間に気体を供給させる必要がないので、フィルム積層体5に貫通孔85を形成させる必要がない。そのため、ワークWをフィルム積層体5から離脱させる工程をより単純化および短縮化させることができる。そして実施例3では支持テーブル61Bに気体を供給する必要もないので、気体を供給する機構を省略できる。そのため、支持テーブル61Bなどの構成をより単純化できる。
【0191】
<他の実施形態>
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0192】
(1)実施例1において、ステップS5において気体供給装置70を作動させてワークWと保持フィルム3との間に気体Arを供給する前に、吸着プレート63を下降させて半導体装置11の上面に当接または近接させてもよい。ステップS5において気体供給装置70を作動させることにより、気体ArがワークWと保持フィルム3との間に供給されて半導体装置11が過度に浮き上がって水平方向における位置がずれる場合がある。また、半導体装置11のうち流通孔65の周囲の部分が他の部分に比べて大きく浮き上がり、半導体装置11が変形する事態も懸念される。
【0193】
そこで吸着プレート63を半導体装置11に当接または近接させた状態で気体供給装置70を作動させることにより、下方から供給される気体Arによって半導体装置11の全部または一部が一定以上浮き上がることを吸着プレート63によって抑止できる。そのため、気体を供給する過程において半導体装置11の位置ズレまたは変形が発生する事態を好適に回避できる。
【0194】
(2)実施例1において、吸着プレート63は下面が扁平である構成に限られない。すなわち図41に示すように、吸着プレート63は中央部に凹部103を備えるとともに外周部に環状の凸部105を備える構成であってもよい。この場合、吸着プレート63は凸部105に吸着孔76を備えており、当該吸着孔76を介して半導体装置11の外周部を吸着保持する。一方、半導体装置11の中央部は吸着プレート63によって保持されない。
【0195】
このように凹部103を備える吸着プレート63を用いる変形例では、ステップS5において図42に示すように、吸着プレート63を下降させて半導体装置11の外周部に凸部105を当接または近接させた状態で気体供給装置70を作動させる。この場合、貫通孔85を経由してワークWと保持フィルム3との間に気体Arが供給されることによって、ワークWと保持フィルム3との間に間隙部Hbが形成される。
【0196】
このとき半導体装置11の外周部は、吸着プレート63の凸部105によって一定以上に浮き上がることを抑止される。一方、吸着プレート63の凹部103は半導体装置11から離れた位置にあるので、半導体装置11の中央部は吸着プレート63による抑止を受けない。このような凹部103を備える吸着プレート63を用いる場合、気体の供給によって半導体装置11(すなわちワークW)が過度に浮き上がることを抑止しつつ、半導体装置11の中央部に過度なストレスが加わることを防止できる。
【0197】
すなわち流通孔65の配置によっては、気体供給装置70によって供給される気体Arが半導体装置11の全面のうち特に中央部に集中しやすいことがある。そのため、半導体装置11の外周部に比べて中央部は浮き上がりやすい場合がある。この場合に扁平な下面を有する吸着プレート63で半導体装置11の浮き上がりを抑止した場合、外周部と比べて比較的浮き上がりやすい中央部は吸着プレート63によって速やかに抑止される一方で気体Arによって比較的大きい上向きの力を受け続けることとなる。その結果、半導体装置11の中央部に強いストレスが加わることが懸念される。
【0198】
これに対し、中央部に凹部103を有する吸着プレート63を用いることにより、半導体装置11の外周部は好適に浮き上がりを抑止できる一方、中央部については浮き上がりを抑止させないためストレスが発生することを回避できる。そしてワークWの外周部は吸着プレート63による抑止を受けて浮き上がりが防止されるので、ワークWの位置が水平方向にずれることも回避できる。当該変形例において、吸着プレート63は本発明におけるワーク抑止部材に相当する。
【0199】
(3)各実施例において、すでにフィルム積層体供給部にフィルム積層体5が収納されている状態でワークWの処理を行う構成を例示したがこれに限られない。すなわちワーク処理装置1において、キャリア1と保持フィルム3とを積層させてフィルム積層体5を作成してもよい。
【0200】
このような変形例では、ワーク処理装置1はフィルム積層機構111をさらに備えている。フィルム積層機構111は図43(a)などに示すようにキャリア1を支持する載置テーブル113を備えており、キャリア1と保持フィルム3とを積層させてフィルム積層体5を作成する。載置テーブル113は図示しない真空装置と接続されており、キャリア1を吸着保持する構成であることが好ましい。
【0201】
フィルム積層機構111を備える変形例では、ステップS1の前工程として、フィルム積層体5を作成する工程を実行する。フィルム積層機構111を用いてフィルム積層体5を作成する工程の一例を図43(a)に示す。当該工程では、図示しないキャリア供給部からキャリア1がフィルム積層機構111へ搬送され、キャリア1が載置テーブル113に載置される。載置テーブル113は真空装置によってキャリア1を吸着保持する。その後、図示しないフィルム供給部から保持フィルム3がフィルム積層機構111へ搬送され、キャリア1の上に保持フィルム3を積層させることによってフィルム積層体5が形成される。
【0202】
フィルム積層体5は、液状のフィルム材をキャリア1の表面に塗布して保持フィルム3の層を形成させることで作成してもよい。当該別の変形例において、フィルム積層機構111は図43(b)に示すように、載置テーブル113に加えて塗布部材115を備えている。塗布部材115は一例としてダイコーターまたはハケなどを用いることができるが、キャリア1の上面に保持フィルム3の層を形成させるものであれば特に限定されない。
【0203】
塗布部材115を備えるフィルム積層機構111を用いてフィルム積層体5を作成する工程は図43(b)に示す通りである。すなわちキャリア1を載置テーブル113に吸着保持させた後、塗布部材115はキャリア1の上面に液状のフィルム材(一例として液状のシリコーン多孔質体)を塗布する。液状のフィルム材が塗布されることにより、キャリア1の層の上に保持フィルム3の層が形成される。液状のフィルム材が塗布された後、当該フィルム材を乾燥させことにより当該フィルム材は固形のシート状となり、キャリア1の層と固形のシート状になっている保持フィルム3の層とが積層されたフィルム積層体5が作成される。
【0204】
また、フィルム積層機構111はフィルム積層体5に貫通孔85を形成させることにより、実施例1などに用いられるフィルム積層体5を作成してもよい。フィルム積層体5に貫通孔85を形成させる変形例では図43(c)に示すように、フィルム積層機構111は穿孔部材117をさらに備えている。またフィルム積層体5に貫通孔85を形成させる数および位置に応じて、載置テーブル113の上面に凹部119が設けられている。
【0205】
穿孔部材117を備えるフィルム積層機構111を用いて、貫通孔85を有するフィルム積層体5を作成する場合、図43(a)または図43(b)に示されるような工程でキャリア1に保持フィルム3を積層させた後、穿孔部材117を用いて貫通孔85を形成させる。すなわち図43(c)に示すように、穿孔部材117をz方向の軸周りに回転させつつフィルム積層体5に向けて下降させる。穿孔部材117は保持フィルム3の層に貫通孔83を形成させるとともにキャリア1の層に貫通孔81を形成させる。その結果、フィルム積層体5にはキャリア1の下面から保持フィルム3の上面にわたって貫通する貫通孔85が形成される。フィルム積層機構111において所望の構成を有するフィルム積層体5が作成されると、フィルム積層体5は積層体載置機構13へ搬送されてステップS1の工程が行われる。
【0206】
(4)各実施例において、ステップS3に係る半導体素子7をワークWに実装させる過程、およびステップS4に係る封止材9で封止する過程をワークW処理過程として例示したが、ワークWを処理する過程はこれに限られない。ワークWを処理する過程の他の例として、支持用の粘着テープ(ダイシングテープ)または回路保護用の粘着テープを例とするシート材をワークWに貼り付ける過程、ワークWに対して金属など蒸着させる過程、ワークWを研削する過程などが挙げられる。
【0207】
(5)各実施例において、ワーク処理過程としてワークWに半導体素子7を実装させて半導体装置11を製造する過程を用いたため、ステップS1においてフィルム積層体5を載置させる際に用いられる支持テーブル21とステップS5においてワークWを離脱させる際に用いられる支持テーブル61とは別のテーブルである構成を例示したがこれに限られない。すなわちワークWを処理する過程によっては、ステップS1の過程とステップS5の過程とを同一の支持テーブル(一例として支持テーブル61)の上で行ってもよい。
【符号の説明】
【0208】
1 … キャリア
3 … 保持フィルム
5 … フィルム積層体
7 … 半導体素子
8 … バンプ
9 … 封止材
11 … 半導体装置
13 … 積層体載置機構
15 … ワーク着装機構
17 … 半導体実装機構
19 … 封止機構
20 … ワーク離脱機構
21 … 搬送アーム
25 … ワーク供給部
27 … ワーク搬送機構
29 … チャンバ
30 … レール
31 … 支持テーブル
35 … 押圧部材
37 … シリンダ
39 … 真空装置
40 … 電磁バルブ
41 … 電磁バルブ
43 … 制御部
47 … 上部金型
49 … 上部金型
50 … 金型
53 … 封止材供給部
55 … 保持テーブル
59 … アクチュエータ
61 … 支持テーブル
63 … 吸着プレート
64 … ワーク支持部
65 … 流通孔
67 … 吸着孔
68 … 流路
69 … 電磁バルブ
70 … 気体供給装置
71 … 流路
72 … 電磁バルブ
73 … 真空装置
75 … 可動台
76 … 吸着孔
77 … 流路
78 … 電磁バルブ
79 … 制御部
80 … 真空装置
81 … 貫通孔
83 … 貫通孔
85 … 貫通孔
91 … 凹部
93 … 外周部
95 … 気体流通孔
96 … 流路
97 … 電磁バルブ
98 … 気体供給装置
99 … 回転軸
101 … 下面
103 … 凹部
105 … 凸部
107 … 下面
111 … フィルム積層機構
113 … 載置テーブル
115 … 塗布部材
117 … 穿孔部材
W … ワーク
Hb … 間隙部
Hc … 間隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43