(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022854
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】セメント残量検出装置、セメント残量検出システム、セメントサイロおよびセメント発注システム
(51)【国際特許分類】
G01F 23/284 20060101AFI20240214BHJP
B28C 7/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01F23/284
B28C7/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126260
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】508182589
【氏名又は名称】エフティーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117558
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 和之
(72)【発明者】
【氏名】泉水 大輔
(72)【発明者】
【氏名】樋下 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】四塚 勝久
【テーマコード(参考)】
2F014
4G056
【Fターム(参考)】
2F014AA06
2F014AB01
2F014AC07
2F014FC01
2F014GA01
4G056CA01
4G056DA01
4G056DA05
4G056DA08
(57)【要約】
【課題】ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの残量を検出するセメント残量検出装置、セメント残量検出システム、残量を検出し得るセメントサイロ、セメントを発注するセメント発注システムにおいて、貯蔵されているセメントの残量を正確に検出する。
【解決手段】セメント残量検出装置30は、距離検出装置50によって検出されたセメント面までの距離を含むセメント面データを距離検出装置50から入力するセメント面データ入力手段と、セメント面データを用いて、すり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、初期状態におけるセメントの容積である初期容積から凹部容積を差し引いて、貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置であって、
前記セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出された該距離検出装置から前記セメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データを該距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、
該セメント面データ入力手段によって入力される前記セメント面データを用いて、前記ホッパーの内傾斜面に応じて前記セメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、
前記セメント面に前記すり鉢状凹部が形成される前の初期状態における前記セメントの容積である初期容積から、前記凹部容積算出手段によって算出される前記凹部容積を差し引いて、前記貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有するセメント残量検出装置。
【請求項2】
前記凹部容積算出手段は、前記セメント面データのうちの前記距離が最も大きな値を示す最大距離データと、最も小さな値を示す最小距離データとを用いて、前記凹部容積を算出する請求項1記載のセメント残量検出装置。
【請求項3】
前記セメント面のうちの前記初期状態にある初期セメント面と、前記セメント面のうちの前記距離検出装置から離れる方向に沿って移動した移動セメント面の最も外側に配置される最外部との距離である空隙距離を算出する空隙距離算出手段を更に有し、
該空隙距離算出手段によって算出された前記空隙距離を用いて、前記初期セメント面と前記移動セメント面との間の容積である空隙容積を算出する空隙容積算出手段とを更に有する請求項1または2記載のセメント残量検出装置。
【請求項4】
前記残容積算出手段は、前記初期容積から前記凹部容積とともに前記空隙容積を差し引いて前記残容積を算出する請求項3記載のセメント残量検出装置。
【請求項5】
前記凹部容積算出手段は、前記距離検出装置から前記セメント面のうちの前記初期状態にある初期セメント面までの最短距離である初期距離を前記最大距離データから差し引くことによって算出される凹部深さを用いて前記凹部容積を算出する請求項2記載のセメント残量検出装置。
【請求項6】
前記凹部容積算出手段は、前記距離検出装置から前記セメント面のうちの前記初期状態にある初期セメント面までの最短距離である初期距離および前記空隙距離を前記最大距離データから差し引くことによって算出される凹部深さを用いて前記凹部容積を算出する請求項3記載のセメント残量検出装置。
【請求項7】
前記残容積と前記セメントの比重との積を前記セメント残量として算出するセメント残量算出手段を更に有する請求項1または2記載のセメント残量検出装置。
【請求項8】
前記距離検出装置から、前記すり鉢状凹部の入り口を通り、前記セメントサイロの中心軸と直交する入り口直交面までの最短距離が、前記距離検出装置から前記初期セメント面までの最短距離と一致するか否かによって、前記セメント面が前記初期セメント面か否かを判定するセメント面判定手段と、
該セメント面判定手段によって、前記セメント面が前記初期セメント面ではないと判定されたときに前記空隙容積算出手段を作動させる容積算出制御手段とを更に有する請求項3記載のセメント残量検出装置。
【請求項9】
ホッパーを有する粉体サイロに貯蔵されている粉体の重量を粉体残量として検出する粉体残量検出装置であって、
前記粉体サイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出された該距離検出装置から前記粉体の上側表面である粉体面までの距離を示す表面距離データを含む粉体面データを該距離検出装置から入力する粉体面データ入力手段と、
該粉体面データ入力手段によって入力される前記粉体面データを用いて、前記ホッパーの内傾斜面に応じて前記粉体面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、
前記粉体面に前記すり鉢状凹部が形成される前の初期状態における前記粉体の容積である初期容積から、前記凹部容積算出手段によって算出される前記凹部容積を差し引いて、前記貯蔵されている粉体の容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有する粉体残量検出装置。
【請求項10】
ホッパーを有する液体サイロに貯蔵されている液体の残量を検出する液体残量検出装置であって、
前記液体サイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出された該距離検出装置から前記液体の上側表面である液体面までの距離を示す液面距離データを含む液体面データを該距離検出装置から入力する液体面データ入力手段と、
前記液体面が前記上蓋に接触しているときの前記液体の容積である液体初期容積から、前記液体面よりも上側の空隙部の容積であって、前記液面距離データを用いて算出される空隙容積を差し引いて、前記貯蔵されている液体の残量を算出する液体残量算出手段とを有する液体残量検出装置。
【請求項11】
ホッパーを有するセメントサイロ内に貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置と、前記セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置とを有するセメント残量検出システムであって、
前記セメント残量検出装置は、前記セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出された該距離検出装置から前記セメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データを該距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、
該セメント面データ入力手段によって入力される前記セメント面データを用いて、前記ホッパーの内傾斜面に応じて前記セメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、
前記セメント面に前記すり鉢状凹部が形成される前の初期状態における前記セメントの容積である初期容積から、前記凹部容積算出手段によって算出される前記凹部容積を差し引いて、前記貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有するセメント残量検出システム。
【請求項12】
前記凹部容積算出手段は、前記セメント面データのうちの前記距離が最も大きな値を示す最大距離データと、最も小さな値を示す最小距離データとを用いて、前記凹部容積を算出する請求項11記載のセメント残量検出システム。
【請求項13】
ホッパーを有するセメントサイロであって、該セメントサイロは、上蓋と、貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置と、該上蓋に固定されている距離検出装置とを有し、
該セメント残量検出装置は、前記セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出された該距離検出装置から前記セメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データを該距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、
該セメント面データ入力手段によって入力される前記セメント面データを用いて、前記ホッパーの内傾斜面に応じて前記セメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、
前記セメント面に前記すり鉢状凹部が形成される前の初期状態における前記セメントの容積である初期容積から、前記凹部容積算出手段によって算出される前記凹部容積を差し引いて、前記貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有するセメントサイロ。
【請求項14】
ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置と、該セメント残量検出装置によって検出された前記セメント残量に応じてセメント発注データを生成するセメント発注処理装置とを有するセメント発注システムであって、
前記セメント残量検出装置は、前記セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出された該距離検出装置から前記セメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データを該距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、
該セメント面データ入力手段によって入力される前記セメント面データを用いて、前記ホッパーの内傾斜面に応じて前記セメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、
前記セメント面に前記すり鉢状凹部が形成される前の初期状態における前記セメントの容積である初期容積から、前記凹部容積算出手段によって算出される前記凹部容積を差し引いて、前記貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段と、
該残容積算出手段によって算出された前記残容積と前記セメントの比重との積を前記セメント残量として算出するセメント残量算出手段とを有し、
前記セメント発注処理装置は、該セメント残量算出手段によって算出された前記セメント残量が前記セメントの在庫量の下限値として設定されている下限在庫量より少ないか否かを判定する在庫判定手段と、
該在庫判定手段によって、前記セメント残量が前記下限在庫量より少ないと判定されたときに前記セメント発注データを生成する発注データ生成手段とを有するセメント発注システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの残量を検出するセメント残量検出装置、セメント残量検出システム、貯蔵されているセメントの残量を検出し得るセメントサイロ、検出された残量に応じてセメントを発注するセメント発注システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生コンクリート製造工場、ビルや道路等の建設現場にセメントサイロが設置されている。セメントサイロは、生コンクリートが製造されるときの原料となるセメントが貯蔵される高さ数メートルに及ぶ塔型の建物である。セメントサイロには、通常、数トン程度のセメントが貯蔵されるが、貯蔵されているセメントはセメントサイロの外部から確認することができない。そのため、人がセメントサイロ上蓋の開閉ハッチを開いて目視で確認する、側面を叩いたときの反響音を調べるといった人手による手法で残量の確認および把握が行われていた。
【0003】
しかしながら、人手による手法では、作業員の安全性確保や作業の省力化という課題が未解決であったため、従来、貯蔵されているセメントの残量を人手によらない手法で把握できるようにした技術が知られていた。
【0004】
例えば、特許文献1には、セメントサイロの内部に残量検出用のレベル計を設け、そのレベル計の検出信号をセメント在庫量の監視装置に取り込んで残量を検出することが開示されている。また、特許文献2には、セメントサイロにおいて、セメントの納品量から使用量を差し引くことで在庫量を導き出すことが開示されている。さらに、特許文献3には、円筒形の外容器と、その内側に収容される内容器とを有する二重構造のセメントサイロにおいて、内容器の荷重を測定するロードセルを内容器と外容器との間の内容器底部に設け、そのロードセルによって、内容器に収容されているセメントの残量を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-318966号公報
【特許文献2】特開2008-19082号公報
【特許文献3】実開平5-30736号
【特許文献4】特開2003-141207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術によれば、貯蔵されているセメントの残量を人手によらない手法で把握することができる。
【0007】
しかしながら、上記いずれの従来技術でも、セメントの残量を正確に検出することができなかった。この点、特許文献1の従来技術では、セメントサイロ内にレベル計が高さ方向に沿って所定間隔で配置されているため、セメントの表面が飛び飛びにしか検出されず、セメントの表面がレベル計と一致していれば在庫量を検出できるものの、そうでなければ在庫量を正確に検出することができない。また、特許文献2の従来技術では、セメントサイロに貯蔵されているセメントが検出、計量されるのではなく、納品量から使用量を差し引くといった手法で在庫が把握されているので、実際に貯蔵されているセメントが在庫量に反映されないおそれがある。
【0008】
一方、セメントサイロは、セメント収集用のホッパーが下方に設けられているホッパー式と、ホッパーのない平底式とがあるが、特許文献3のように、内容器の底部にロードセルを設ける構造はホッパー式に適用することができない。
【0009】
そして、特許文献4には、タンクの天井部に超音波レベル計を設けてタンク内の混和剤の在庫レベルを連続的に検出することが開示されている。この点を特許文献1に適用すれば、セメントの表面の連続的な検出によって、在庫量が正確に検出されると考えられる。
【0010】
しかしながら、セメントサイロでは、貯蔵されているセメントの表面が平坦であるとは限らない。ホッパー式のセメントサイロでは、貯蔵されているセメントの減少に伴い、ホッパーの内傾斜面に沿ったすり鉢状の凹部がセメントの表面に形成される。そうすると、そのすり鉢状の凹部に応じた分のセメントが欠落していることになるため、たとえセメントの表面が連続的に算出されたとしても、検出される在庫量は正確ではない。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの残量を検出するセメント残量検出装置、セメント残量検出システム、貯蔵されているセメントの残量を検出し得るセメントサイロ、検出された残量に応じてセメントを発注するセメント発注システムにおいて、貯蔵されているセメントの残量を正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置であって、セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出されたその距離検出装置からセメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データをその距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、そのセメント面データ入力手段によって入力されるセメント面データを用いて、ホッパーの内傾斜面に応じてセメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、セメント面にすり鉢状凹部が形成される前の初期状態におけるセメントの容積である初期容積から、凹部容積算出手段によって算出される凹部容積を差し引いて、貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有するセメント残量検出装置を提供する。
【0013】
上記セメント残量検出装置の場合、凹部容積算出手段は、セメント面データのうちの距離が最も大きな値を示す最大距離データと、最も小さな値を示す最小距離データとを用いて、凹部容積を算出するようにすることができる。
【0014】
また、セメント面のうちの初期状態にある初期セメント面と、セメント面のうちの距離検出装置から離れる方向に沿って移動した移動セメント面の最も外側に配置される最外部との距離である空隙距離を算出する空隙距離算出手段を更に有し、その空隙距離算出手段によって算出された空隙距離を用いて、初期セメント面と移動セメント面との間の容積である空隙容積を算出する空隙容積算出手段とを更に有することが好ましい。
【0015】
さらに、残容積算出手段は、初期容積から凹部容積とともに空隙容積を差し引いて残容積を算出するようにすることができる。
【0016】
また、凹部容積算出手段は、距離検出装置からセメント面のうちの初期状態にある初期セメント面までの最短距離である初期距離を最大距離データから差し引くことによって算出される凹部深さを用いて凹部容積を算出するようにすることができる。
【0017】
また、凹部容積算出手段は、距離検出装置からセメント面のうちの初期状態にある初期セメント面までの最短距離である初期距離および空隙距離を最大距離データから差し引くことによって算出される凹部深さを用いて凹部容積を算出するようにすることができる。
【0018】
さらに、残容積とセメントの比重との積をセメント残量として算出するセメント残量算出手段を更に有することが好ましい。
【0019】
さらにまた、距離検出装置から、すり鉢状凹部の入り口を通り、セメントサイロの中心軸と直交する入り口直交面までの最短距離が、距離検出装置から初期セメント面までの最短距離と一致するか否かによって、セメント面が初期セメント面か否かを判定するセメント面判定手段と、そのセメント面判定手段によって、セメント面が初期セメント面ではないと判定されたときに空隙容積算出手段を作動させる容積算出制御手段とを更に有することが好ましい。
【0020】
さらに本発明は、ホッパーを有する粉体サイロに貯蔵されている粉体の重量を粉体残量として検出する粉体残量検出装置であって、粉体サイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出されたその距離検出装置から粉体の上側表面である粉体面までの距離を示す表面距離データを含む粉体面データをその距離検出装置から入力する粉体面データ入力手段と、その粉体面データ入力手段によって入力される粉体面データを用いて、ホッパーの内傾斜面に応じて粉体面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、粉体面にすり鉢状凹部が形成される前の初期状態における粉体の容積である初期容積から、凹部容積算出手段によって算出される凹部容積を差し引いて、貯蔵されている粉体の容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有する粉体残量検出装置を提供する。
【0021】
また、ホッパーを有する液体サイロに貯蔵されている液体の残量を検出する液体残量検出装置であって、液体サイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出されたその距離検出装置から液体の上側表面である液体面までの距離を示す液面距離データを含む液体面データをその距離検出装置から入力する液体面データ入力手段と、液体面が上蓋に接触しているときの液体の容積である液体初期容積から、液体面よりも上側の空隙部の容積であって、液面距離データを用いて算出される空隙容積を差し引いて、貯蔵されている液体の残量を算出する液体残量算出手段とを有する液体残量検出装置を提供する。
【0022】
そして、本発明は、ホッパーを有するセメントサイロ内に貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置と、セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置とを有するセメント残量検出システムであって、セメント残量検出装置は、セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出されたその距離検出装置からセメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データをその距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、そのセメント面データ入力手段によって入力されるセメント面データを用いて、ホッパーの内傾斜面に応じてセメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、セメント面にすり鉢状凹部が形成される初期状態におけるセメントの容積である初期容積から、凹部容積算出手段によって算出される凹部容積を差し引いて、貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有するセメント残量検出システムを提供する。
【0023】
上記セメント残量検出システムの場合、凹部容積算出手段は、セメント面データのうちの距離が最も大きな値を示す最大距離データと、最も小さな値を示す最小距離データとを用いて、凹部容積を算出することが好ましい。
【0024】
また、本発明は、ホッパーを有するセメントサイロであって、そのセメントサイロは、上蓋と、貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置と、その上蓋に固定されている距離検出装置とを有し、そのセメント残量検出装置は、セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出されたその距離検出装置からセメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データをその距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、そのセメント面データ入力手段によって入力されるセメント面データを用いて、ホッパーの内傾斜面に応じてセメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、セメント面にすり鉢状凹部が形成される前の初期状態におけるセメントの容積である初期容積から、凹部容積算出手段によって算出される凹部容積を差し引いて、貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段とを有するセメントサイロを提供する。
【0025】
さらに本発明は、ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの重量をセメント残量として検出するセメント残量検出装置と、そのセメント残量検出装置によって検出されたセメント残量に応じてセメント発注データを生成するセメント発注処理装置とを有するセメント発注システムであって、セメント残量検出装置は、セメントサイロの上蓋に固定されている距離検出装置によって検出されたその距離検出装置からセメントの上側表面であるセメント面までの距離を示す表面距離データを含むセメント面データをその距離検出装置から入力するセメント面データ入力手段と、そのセメント面データ入力手段によって入力されるセメント面データを用いて、ホッパーの内傾斜面に応じてセメント面に形成されるすり鉢状凹部の容積である凹部容積を算出する凹部容積算出手段と、セメント面にすり鉢状凹部が形成される前の初期状態におけるセメントの容積である初期容積から、凹部容積算出手段によって算出される凹部容積を差し引いて、貯蔵されているセメントの容積である残容積を算出する残容積算出手段と、その残容積算出手段によって算出された残容積とセメントの比重との積をセメント残量として算出するセメント残量算出手段とを有し、セメント発注処理装置は、そのセメント残量算出手段によって算出されたセメント残量がセメントの在庫量の下限値として設定されている下限在庫量より少ないか否かを判定する在庫判定手段と、その在庫判定手段によって、セメント残量が下限在庫量より少ないと判定されたときにセメント発注データを生成する発注データ生成手段とを有するセメント発注システムを提供する。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの残量を検出するセメント残量検出装置、セメント残量検出システム、貯蔵されているセメントの残量を検出し得るセメントサイロ、検出された残量に応じてセメントを発注するセメント発注システムにおいて、貯蔵されているセメントの残量を正確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係るセメントサイロと、ミキサー設備の一例を示す斜視図である。
【
図3】セメント発注システムが備えられている設備の一例を模式的に示した図である。
【
図4】セメント発注システムのシステム構成図である。
【
図5】セメント残量検出システムおよびセメント残量検出装置の内部構成並びにセメント発注処理装置を示したブロック図である。
【
図6】セメント発注処理装置の内部構成を示したブロック図である。
【
図7】距離検出装置の内部構成を示したブロック図である。
【
図8】残量管理処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図9】残量算出処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図10】貯蔵されているセメントが一部使用されたときのセメントサイロ内部の中心軸に沿った断面を模式的に示した図である。
【
図11】(A)は
図10よりもセメントが使用されたときの
図10同様の断面の要部を示した図、(B)は更にセメントが使用されたときの
図10同様の断面の要部を示した図である。
【
図12】
図10(A)の状態における断面の要部とともにセメント残量の算出式を示した図である。
【
図13】
図11(B)よりも更にセメントが使用されたときの
図10同様の断面を示した図である。
【
図14】セメント発注処理の動作手順を示したフローチャートである。
【
図15】変形例にかかる液体サイロの
図10と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0029】
まず、
図1~
図2を参照して、本発明の実施の形態に係るセメントサイロ1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るセメントサイロ1と、ミキサー設備2の一例を示す斜視図である。
図2はセメントサイロ1の斜視図である。
【0030】
(セメントサイロ1の構成、セメント発注システム101の構成)
本発明の実施の形態に係るセメントサイロ1は、セメントが貯蔵される高さ数メートルに及ぶ塔型の建物であって、有底円筒状の本体2と、上蓋3と、ホッパー5とを有している。
【0031】
図2に示すように、上蓋3には、点検用の開閉ハッチ4と、周縁部に形成された防護柵6とが設けられている。また、上蓋3には、後述する距離検出装置50が固定されている。距離検出装置50は、後述する排出口5bとともに、セメントサイロ1の中心軸Ax上に沿った位置に固定されている。本体2の外側表面の下側(地面から高さ1m程度)に後述するセメント残量検出装置30が固定されている。そのセメント残量検出装置30と距離検出装置50とが有線の接続コード(例えばUSBケーブル)9によって接続されている。セメント残量検出装置30と距離検出装置50とが有線の接続コード9によって接続されることによって、本発明に係るセメント残量検出システム99が構成されている(
図5参照)。ホッパー5は、本体2の内側の下方に設けられている。ホッパー5は、上側から下側に向かって窄まったすり鉢状(逆円錐状)の内傾斜面5aを有し、その下端部の中心軸Ax上に排出口5bが設けられている。排出口5bは図示しないセメント排出管に接続されている。セメント排出管はミキサー設備21に接続されている(図示せず)。
【0032】
そして、
図1に示すように、ミキサー設備21がセメントサイロ1に併設されている。ミキサー設備21は、セメントサイロ1に応じた高さの建屋であって、バッチャープラントとしての設備、すなわち骨材、セメント、水混和剤の計量器21a、それらの骨材、セメント、水混和剤のミキサー21b、積み込みホッパー21cが備えられている。また、ミキサー設備21には、ミキサー車の搬入部22が複数備えられている。その各搬入部22に搬入された図示しないミキサー車に、製造された生コンクリートが積み込みホッパー21cの動作によって積み込まれる。
【0033】
続いて、
図3~
図4を参照して、セメントサイロ1のセメント残量検出装置30によって構成されるセメント発注システム(以下、「発注システム」ともいう)101について説明する。
図3は、発注システム101が備えられている設備の一例を模式的に示した図、
図4は発注システム101のシステム構成図である。
【0034】
発注システム101には、前述したセメントサイロ1に備えられたセメント残量検出装置30と、セメント発注処理装置(以下、「発注処理装置」ともいう)10(10A,10B)とが含まれている。発注処理装置10A、10Bが共通する構成を有し、それぞれ管理事務所25,詰所26に備えられている。その発注処理装置10A、10Bがそれぞれセメント残量検出装置30との間で無線LANによるデータ通信を行う。
【0035】
また、
図4に示すように、発注システム101には、発注処理装置10A,10Bおよびセメント残量検出装置30とともに、セメント受注サーバ100が含まれている。セメント受注サーバ100は、インターネットN1を介して発注処理装置10(10A,10B)と接続されている。セメント受注サーバ100は、発注処理装置10Aからセメント発注データを受信するなどしてセメント受注処理を実行する。
【0036】
次に、
図5、
図6、
図7を参照して、セメント残量検出装置30、発注処理装置10(10A,10B)、距離検出装置50について説明する。ここで、
図5は、セメント残量検出システム99およびセメント残量検出装置30の内部構成並びに発注処理装置10(10A)を示したブロック図、
図6は発注処理装置10(10A,10B)の内部の構成を中心に示すブロック図である。
図7は、距離検出装置50の内部構成を示したブロック図である。
【0037】
(セメント残量検出装置)
セメント残量検出装置30は、セメントサイロ1に貯蔵されているセメント70の重量をセメント残量として検出する。セメント残量検出装置30は、貯蔵されているセメント70の重量ではなく、その容積(体積)を検出し、その容積にセメントの比重を掛け合わせた数値を算出することで、セメント残量の検出を行う。
【0038】
図5に示すように、セメント残量検出装置30は、無線LANによって発注処理装置10(10A,10B)と通信を行うことができる。なお、以下の説明では、セメント残量検出装置30として、タブレット型の端末装置が想定されているが、ノート型のパーソナルコンピュータでもよい。
【0039】
セメント残量検出装置30は、
図5に示すように、CPU31、ROM32、RAM33、データ記憶部34、液晶表示部35を有している。また、セメント残量検出装置30は、音声変換処理部36、通信制御部37、通信処理部38a、無線通信部38b、スピーカ39およびマイク40を有している。
【0040】
CPU31は、ROM32に記憶されているプログラムにしたがい作動してセメント残量検出装置30全体の動作制御を司る。ROM32はCPU31が実行する制御プログラムが記憶されている。RAM33には、データ通信を行うための通信制御プログラムや、CPU31によるプログラムの実行に必要なデータ等が記憶される。
【0041】
データ記憶部34には種々のデータや、後述するセメント残量管理プログラムや、そのほかのアプリケーションプログラム、検出された残量データなどが記憶されている。データ記憶部34は、例えば、SSD(Solid State Drive)によって構成される。液晶表示部35は、LCD(Liquid Crystal Display)とその駆動部を有し、文字、図形、記号などの画像表示を行う画像表示手段である。
【0042】
液晶表示部35は、他の部品(CPU31、ROM32、データ記憶部34など)の収容されている本体部から着脱自在に構成されている。液晶表示部35は、タッチパネル機能を有しており、手指の操作入力によって入力されるデータをCPU31に入力する一方、CPU31の指示にしたがい、後述する残量検出処理で検出された残量データ等を表示する表示機能を有している。
【0043】
音声変換処理部36は、音声データを伸張してスピーカ39に出力する一方、マイク40から入力するアナログ音声信号をデジタルの音声データに変換および圧縮して、通信処理部38aに入力する。通信制御部37はCPU31の指示を受けて作動し、データ通信を行うための回線の接続および切断を制御する。通信処理部38aは、通信制御部37の指示にしたがい作動して、図示しない有線のLANケーブルを介して行われるデータの送受信を実行する。無線通信部38bは通信制御部37の制御にしたがい、無線によるデータの送受信を実行する無線通信手段であって、発注処理装置10(10A,10B)と無線LANによるデータ通信を実行する。スピーカ39は、音声を出力する音声出力手段であり、マイク40はユーザの会話内容等の音声を入力し、電気信号に変換する。さらに、接続コネクタ41には、接続コード9が接続される。
【0044】
(発注処理装置)
発注処理装置10(10A,10B)は、
図6に示すように、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13とを有している。CPU11は、ROM12に記憶されているプログラムにしたがい作動して、KBC(Key board controller)17を介してキーボード19やマウス20の操作入力で得られる入力データをメインバス19Aを介して入力する一方、他の構成要素との信号の入出力を行い、発注処理装置10全体の動作制御を行う。CPU11は、後述する発注処理プログラムにしたがったセメント発注処理を実行する。ROM12には、BIOS(Basic Input/Output System)や制御プログラム、恒久的なデータが記憶されている。RAM13には、CPU11が作動する際に用いるデータや、ププログラムが記憶される。
【0045】
その他、発注処理装置10(10A,10B)は、ハードディスク装置(Hard disk drive,HDD)14と、通信制御部15と、通信処理部16と、ビデオコントローラ18とを有している。
【0046】
ハードディスク装置14には、OS(Operating System)、DBMS(database management system)、Webサーバプログラム等のミドルウェアが記憶されている。また、ハードディスク装置14には、発注処理プログラム等のプログラム、その実行に必要な各種記憶部またはDB(database)と、その他の記憶部、DB、ファイルが形成されている。
【0047】
通信制御部15は、CPU11の指示にしたがい作動して、セメント残量検出装置30等との通信を行うための回線の接続および切断を制御する。通信処理部16は、通信制御部15の指示にしたがい作動して、インターネットN1を介して行われるセメント受注サーバ100へのセメント発注データの送信等の通信処理を実行する。
【0048】
ビデオコントローラ18は、図示しないディスプレイ装置における画像表示を制御して、各種の設定に用いられる画面等を表示させる。
【0049】
(距離検出装置)
図7に示すように、距離検出装置50は、ユニットボックス51と、その内部に収容されているミリ波レーダモジュール52とを有している。ユニットボックス51はミリ波レーダモジュール52が収容される金属または樹脂製の箱型部材で、セメントサイロ1の上蓋3(外側または内側の表面)に固定されている。
【0050】
距離検出装置50では、ミリ波レーダモジュール52によって、ミリ波(波長:1mm~10mm)の電波を用いて、検査対象物の距離および角度を検出する。ミリ波レーダは、雨や霧の影響を受けないため、セメントサイロ1の内部に浮遊するセメント70の粉塵の影響を受けることなく、距離および角度を検出することができる。
【0051】
ミリ波レーダモジュール52は、送信電波を処理するシンセサイザおよび受信信号を処理するCPUを有する信号処理部53と、送信アンテナ、受信アンテナを備えたアンテナ部54と、インターフェース(I/F)55とを有している。
【0052】
そして、距離検出装置50では、ミリ波レーダモジュール52において、信号処理部53のシンセサイザによって処理した電波(ミリ波)をアンテナ部54の送信アンテナから送信して、セメントサイロ1に貯蔵されている検査対象物のセメント(
図10参照、後述するセメント70)に照射し、そのセメント70(詳しくは、その上側表面であるセメント面70a,70b)から反射された電波(ミリ波)をアンテナ部54の受信アンテナで受信したあと、信号処理部53のCPUで処理することで検査対象物であるセメント70までの距離および角度を検出する。また、検出した距離を示すデータおよび角度を示すデータを本発明に係るセメント面データとして、インターフェース(I/F)55、接続コード9を介してセメント残量検出装置30に出力する。アンテナ部54には複数の受信アンテナが設けられており、その各アンテナ間における位相差を検出することで角度検出が行われる。なお、セメント面70aはセメント70がセメントサイロ1に所定の位置まで満杯(「満杯」については後述する)に貯蔵されて、使用に伴う減少の無い初期状態におけるセメント面、なお、セメント面70bは、セメント70が使用されたことによって、セメント面70aから下方に移動したあとのセメント面(移動セメント面)をそれぞれ示している。
【0053】
距離検出装置50は定期的またはセメント残量検出装置30からの指示を受けて、検出処理を実行する。距離検出装置50は検出処理を開始すると、セメントサイロ1に貯蔵されているセメント70に向けてミリ波を照射して、距離検出装置50からセメント70の上側表面であるセメント面70aの各点(ミリ波が照射される部分で、照射点ともいう)までの距離(距離検出装置50からセメント面までの距離を「セメント面距離」ともいう)および各照射点への照射角度(その点へのミリ波の照射ラインと、セメントサイロ1の中心軸Axとのなす角度で、「セメント面角度」ともいう)を検出し、その検出結果をセメント面データとして、セメント残量検出装置30に出力する。セメント面データには、各照射点までのセメント面距離を示す表面距離データと、各照射点へのセメント面角度を示す表面角度データとが含まれている。なお、例えば、距離検出装置50が79GHz帯のミリ波レーダモジュール52を搭載している場合、その距離分解能が3.75cm程度なので、距離検出装置50が照射点を数センチ単位に設定することができる。
【0054】
続いて、
図8,
図9を参照して、セメント残量検出装置30によって実行されるセメント残量管理処理(以下「残量管理処理」ともいう)について説明する。セメント残量検出装置30はセメント残量管理プログラムにしたがい残量管理処理を実行する。そのセメント残量管理プログラムにセメント残量検出処理が含まれている。そのため、残量管理処理が実行されるときにセメントサイロ1に貯蔵されているセメントの残量が検出される。
【0055】
そして、残量管理処理が実行されるときは、CPU31がデータ記憶部34等にアクセスしながら、
図8に示すフローチャートにしたがい作動して、後述するセメント面データ入力手段、凹部容積算出手段、残容積算出手段等としての動作を実行する。なお、
図8、
図9等において"S"とはステップを略記したものである。
【0056】
CPU31が残量管理処理を開始すると、
図8において、ステップ1に動作を進め、残量検出条件が成立しているか(例えば、システムで提供される時刻が所定の時刻になっているか、残量検出を指示する指示データが液晶表示部35を通じて入力されたなど)否かを判定し、残量検出条件が成立していればステップ2に動作を進めるが、そうでなければステップ1に戻り、残量検出条件が成立するまで待機する。
【0057】
ステップ2に動作が進むと、CPU31が
図9に示すフローチャートにしたがい後述する残量検出処理を実行し、その後、CPU31がステップ3に動作を進める。ステップ3では、CPU31がステップ2の実行によって得られた後述する残量データを液晶表示部35に表示させたうえで、データ記憶部34に記憶させて保存する。それからCPU31はステップ4に動作を進めて、ステップ2の実行によって得られた残量データを発注処理装置10(10A,10B)に送信する。その後、CPU31はステップ5に動作を進めて、終了条件が成立している(例えば、セメントサイロ1にセメントが満杯に貯蔵されている場合など)か否かを判定し、終了条件が成立していなければステップ1に戻るが、終了条件が成立していれば残量管理処理が終了する。
【0058】
(残量検出処理)
そして、ステップ2の残量検出処理について説明すると、次のとおりである。CPU31は、残量検出処理を開始すると、
図9において、ステップ10に処理を進めて、距離検出装置50から出力されるデータであって、表面距離データと表面角度データを含むセメント面データを入力し、入力したセメント面データをデータ記憶部34のセメント面データ記憶部(各照射点の距離および角度のデータを検出日時とともに記憶するデータベース)に記憶させる。ステップ2では、CPU31が本発明に係るセメント面データ入力手段としての動作を行う。
【0059】
次に、CPU31は、ステップ11に処理を進めて、セメント面データの表面距離データのうち、セメント面距離を示す数値が最も大きい表面距離データ(最大距離データ、"Dmax"ともいう)と、セメント面距離を示す数値が最も小さい表面距離データ(最小距離データ、"Dmin"ともいう)を検出する。この場合、例えば、
図10に示すように、貯蔵されているセメントがセメントサイロ1から取り出されていると、セメント面70aには、すり鉢状凹部71が形成されている。すり鉢状凹部71は、セメントサイロ1のホッパー5の内傾斜面5aに応じてすり鉢状に窪んだ形状を有している。
図10に示されている場合は、"Dmax"はすり鉢状凹部71の底部Btまでの距離を示し、"Dmin"はすり鉢状凹部71の入り口Buまでの距離を示す。ただし、使用されたセメントが少なく、すり鉢状凹部71が小さい(底が浅い)ときは、底部Btまでの距離が"Dmax"にならない場合もある。そのため、セメント面角度θが0を示す(距離検出装置50から垂直方向)照射点までの表面距離データを"Dmax"としてもよい。
【0060】
続くステップ12では、セメント面データから、"Dmin"を与えた入り口Buについて、セメント面角度θを検出する。次のステップ13では、"Dmin"と、そのセメント面角度θの余弦との積を示すDc(=Dmin×Cosθ)を算出し、次のステップ14に処理が進む。ここで算出されるDcは、距離検出装置50から、入り口直交面(
図10では、セメント面70a)までの最短距離に相当する。その入り口直交面とは、セメント面の最上部であって、すり鉢状凹部71の入り口Buを通り、セメントサイロ1の中心軸Axと直交する平面を意味している。
図10では、セメント70がセメントサイロ1に所定量貯蔵されていた初期状態から、ある程度セメントが使用されているが、すり鉢状凹部71がセメント面70aの一部にとどまっている場合が示されている。セメント70がセメントサイロ1に所定量貯蔵されている(すり鉢状凹部71が形成される前の)初期状態にあるセメント面を初期セメント面といい、
図10のセメント面70aが初期セメント面に相当する。なお、セメント70が、すり鉢状凹部71が形成されることなくセメント面70aまで貯蔵されている状態を満杯ともいう。セメントサイロ1の内壁面にセメント面70aに応じたライン表示が形成されていることが好ましい。
【0061】
次にステップ14に処理が進むと、最短距離DcがD
0に一致するか否かが判定され、最短距離DcがD
0に一致するときはステップ15に処理が進み、一致していなければステップ17に処理が進む。ここで、D
0は、初期セメント面までの最短距離(以下「初期距離」ともいう)に相当する。最短距離Dcが初期距離D
0に一致しているということは、
図10に示すように、初期状態からある程度セメントが使用されたものの、すり鉢状凹部71がセメント面70aの全体にまでは広がらず一部にとどまっているため、部分的なセメント面70aが満杯当初の位置に残されている場合を意味している。この場合は、すり鉢状凹部71の容積(以下「凹部容積」ともいう)を算出し、それをセメントが満杯に貯蔵されている初期状態のセメントの容積(以下「初期容積」ともいう)から差し引くことで、貯蔵されているセメントの容積(以下「残容積」ともいう)を算出することができる(詳しくは後述する)。ステップ14では、最短距離Dcが初期距離D
0に一致しているか否かによって、セメント面が初期セメント面(セメント面70a)か否かが判定されており、ステップ14では、CPU31がセメント面判定手段としての動作を行う。
【0062】
ステップ15では、空隙容積V
2に"0"がセットされ、凹部深さD
1にDmaxと、初期距離D
0との差(=Dmax-D
0)がセットされる。空隙容積とは、詳しくは後述するが、
図10に示した場合からセメントの使用が進み、セメント面が初期セメント面70aから離れたときにすり鉢状凹部71の外側に形成される空隙部分(上蓋3までの空隙部分)の容積である。ステップ15は、最短距離Dcが初期距離D
0に一致している場合、すなわち、空隙部分が形成されていない場合に実行されるので、空隙容積に"0"がセットされる。また、凹部深さD
1は、すり鉢状凹部71の深さであるが、最短距離Dcが初期距離D
0に一致している場合は、
図12に示すように、"Dmax"と、初期距離D
0との差がD
1に相当する。
【0063】
ステップ15に続いてステップ16に処理が進むと、凹部容積V1が算出される。凹部容積とは、前述したように、すり鉢状凹部71の容積(すり鉢状に形成されている部分で、セメントが存在していない空隙部分の容積)を意味している。すり鉢状凹部71は、セメントがホッパー5から外部に取り出されることによって、ホッパー5の内傾斜面5aに沿ったすり鉢状(逆さ円錐状)に形成されるので、その円錐の体積を算出することで、凹部容積V1が求められる。ステップ16では、CPU31が凹部容積算出手段としての動作を行う。
【0064】
この場合、すり鉢状凹部71の入り口部分は円形に形成されるが、その半径(すり鉢状凹部71に相当する円錐の底面の半径)Rは、Dminとセメント面角度θの正弦との積(=Dmin×Sinθ)に相当する。したがって、V1は以下の式1によって算出される。
式1:V1=π×R2×D1×(1/3) (R=Dmin×Sinθ)
【0065】
そして、ステップ17に処理が進むと、空隙距離が算出される。続くステップ18では、空隙容積が算出されて、凹部深さD1にDmaxと、初期距離D0および空隙距離D2との差(=Dmax-(D0+D2))がセットされる。ステップ17では、CPU31が空隙距離算出手段としての動作を行い、ステップ18では、CPU31が空隙容積算出手段としての動作を行う。ステップ17,18に関して、ステップ14において、最短距離Dcが初期距離D0に一致していないと判定されたとき、すなわち、セメント面が初期セメント面ではないと判定されたときにステップ17,18が実行される(空隙容積算出手段を作動させる)ように、CPU31が容積算出制御手段としての動作を行っている。
【0066】
図10に示した状態からセメントが使用されていくにしたがい、
図11(A)に示すように、すり鉢状凹部71の深さが次第に深くなって、それに応じて底部Btが深くなり、"Dmax"が大きくなっていく。さらに、セメントが使用されていくと、
図11(B)に示すように、すり鉢状凹部71が大きくなって、底部Btが更に深くなり、入り口Buが更に外側に広がってセメントサイロ1の内側側面に到達する。その後、更にセメントが使用され続けると、すり鉢状凹部71がセメントサイロ1の全体に広がったままセメント面が初期セメント面70aから離れて下方に向かって移動し、セメント面(下方に移動したセメント面で、移動セメント面70bともいう)70bとなる。
【0067】
このとき、
図13に示すように、移動セメント面70bの上端にある最外部70beと、初期セメント面70aとの間に空隙が形成される。この空隙の容積が空隙容積V
2であり、初期セメント面70aと最外部70beとの最短距離が空隙距離D
2に相当する。空隙容積V
2は、初期セメント面70aの半径(セメントサイロ1の内側半径、サイロ半径R
0)と、空隙距離D
2を用いて以下の式2によって算出される。
式2:V
2=π×R
0
2×D
2
【0068】
また、移動セメント面70bが形成されているときは、移動セメント面70bが形成される前に比べて空隙距離D2に応じた大きさで初期セメント面70aが移動しているので、Dmaxから初期距離および空隙距離を差し引くことで凹部深さD1が算出される。ステップ18では、こうして算出される値が凹部深さD1にセットされる。
【0069】
ステップ16に続くステップ19では、残容積が算出される。残容積は、セメントサイロ1に貯蔵されているセメントの容積であるが、これは、初期容積から凹部容積(移動セメント面70bが形成されている場合は凹部容積および空隙容積)を差し引くことで求められる。すなわち、初期容積をV0とすると、残容積Vrは以下の式3によって求められる。
式3:Vr=V0-(V1+V2)
【0070】
ここで、移動セメント面70bが形成されていないときは、ステップ15において、空隙容積V2に0がセットされているので、式3はV0-V1に一致する。ステップ19では、CPU31が残容積算出手段としての動作を行う。
【0071】
そして、
図20に処理が進むと、CPU31がセメント残量算出処理を実行する。すると、貯蔵されているセメントの重量としてのセメント残量が算出される。セメントの重量はセメントの容積とセメントの比重(Sg)との積によって求められるので、セメント残量Wrは以下の式4によって求められる。また、算出されたセメント残量を示す残量データが生成される。ステップ20が終了すると、残量検出処理が終了し、
図8においてステップ3に処理が進む。ステップ20では、CPU31がセメント残量算出手段としての動作を行う。
式4:Wr=Vr×Sg
【0072】
(セメント発注処理)
一方、発注処理装置10Aでは、
図14に示すフローチャートにしたがい、セメント発注処理が実行される。発注処理装置10AのCPU11が発注処理プログラムにしたがい作動することで、セメント発注処理が実行される。発注処理プログラムでは、セメント残量検出装置30によって生成される残量データが用いられる。
【0073】
CPU11がセメント発注処理を開始すると、ステップ30に動作を進め、セメント残量検出装置30から残量データを受信したか否かを判定し、残量データを受信したらステップ31に処理を進めるが、残量データを受信していなければステップ30に戻り、残量データを受信するまで待機する。
【0074】
ステップ31では、ステップ30で受信した残量データの示すセメント残量が下限在庫量より少ないか否かを判定し、セメント残量が下限在庫量より少ないと判定されたときはステップ32に処理を進めるが、そうでなければステップ34に処理を進める。発注処理装置10Aでは、セメントサイロ1に貯蔵されているセメントの残量が在庫量として把握され、その下限値として設定されている在庫量が下限在庫量に相当する。セメントサイロ1に貯蔵されているセメントの残量が下限在庫量を下回ると、その後のセメント製造に影響が出るおそれがある。そのため、発注処理装置10Aでは、セメントを補充するべく、セメント発注データが生成される。ステップ30では、CPU11が在庫判定手段としての動作を行う。
【0075】
ステップ32に処理が進むと、CPU11がセメント発注データを生成して次のステップ33に処理を進める。そのステップ33では、CPU11が通信制御部15に指示して通信処理部16を作動させて、セメント発注データを受注サーバ100に送信する。ステップ32では、CPU11が発注データ生成手段としての動作を行う。
【0076】
次のステップ34では、CPU11が終了条件が成立しているか否かを判定し、終了条件が成立していればセメント発注処理を終了させるが、そうでなければステップ30に処理を戻す。
【0077】
以上のように、本発明によれば、セメントサイロ1の上蓋3に固定された距離検出装置50によって、セメント面までの距離(セメント面距離)を検出し、その結果を用いてセメント残量が検出されている。距離検出装置50によって検出されるセメント面距離は、所定間隔で配置されたレベル計を用いた場合のような飛び飛びではなく、セメント面までの距離を連続的に検出できるので、セメント残量検出装置30によってセメント残量が連続的に検出される。
【0078】
また、セメントサイロ1は、ホッパー5を有するので、セメント面にホッパー5に応じたすり鉢状凹部71が形成される。従来のレベル計を用いた検出では、すり鉢状凹部71が形成されていても、その外側(またはすり鉢状凹部71の最も外側)のセメント面は、すり鉢状凹部71の内側よりも高い位置にある(セメント面距離が短い)がために、その高い位置に応じた在庫量には、すり鉢状凹部71に応じたセメントの欠落が反映されてなく、それ故、在庫量は正確ではない。その結果、現場での施工途中にセメント不足が生じ、現場の作業を中断せざるを得ない場合もあった。
【0079】
この点、セメントサイロ1では、すり鉢状凹部71の容積を算出してそれを反映させた形でセメント残量が検出されるので、検出されるセメント残量が(すり鉢状凹部71による欠落が反映された)正確なものとなる。したがって、施工途中にセメント不足が発生するようなことがなくなり、セメント不足による作業中断も発生しない。
【0080】
また、すり鉢状凹部71の容積を算出することに加え、セメント面が移動セメント面となって空隙部分が発生しているときの容積を算出し、それがセメント残量に反映されているので、セメントサイロ1に空隙部分が発生しているときでも、セメント残量が正確に検出される。しかも、セメント面が初期セメント面か否か(最短距離DcがD0に一致しているか否か)が判定され(ステップ14)、その結果に応じて、処理を分岐させて、そのそれぞれに応じた算出処理を行っている(ステップ15~19)。そのため、セメントの減り具合がどのような状況になっても、セメント残量を正確な検出が行える。
【0081】
セメント残量検出装置30と、距離検出装置50とを有するセメント残量検出システム99によって、セメント残量の検出が自動的に行われるので、施工現場での作業が省力化される。しかも、セメント発注システム101の発注処理装置10(10A)により、その検出された正確なセメント残量に応じて、セメント発注データが(人手を要することなく)自動的に生成される。そのため、セメントの在庫管理に要する負担が軽減され、作業の効率化がより一層促進される。
【0082】
(変形例1)
以上の説明では、セメントサイロ1にセメントが貯蔵されていたが、サイロ1にセメントとは異なる粉体が貯蔵されていてもよい。このとき、セメントサイロ1は粉体サイロ(図示せず)とすることができる。また、セメントサイロ1の本体2にセメント残量検出装置30が固定されていたが、そのセメント残量検出装置30を粉体残量検出装置(図示せず)とすることができる。そして、セメント残量検出装置30では、CPU31がセメント面データ入力手段、凹部容積算出手段、残容積算出手段等としての動作を実行するが、粉体残量検出装置では、CPU31がそれぞれ粉体面データ入力手段、凹部容積算出手段、残容積算出手段等としての動作を実行する。このとき、CPU31は、上述したステップ10において、粉体面までの距離を示す表面距離データと表面角度データとを含む粉体面データを入力して粉体面データ入力手段としての動作を実行する。また、CPU31は、上述したステップ16において、粉体面データを用いて凹部容積を算出することで凹部容積算出手段としての動作を実行する。さらに、CPU31は、上述したステップ19において、初期状態における粉体の容積である初期容積から凹部容積を差し引いて、貯蔵されている粉体の容積である残容積を算出することで残容積算出手段としての動作を実行する。
【0083】
(変形例2)
図15は、変形例にかかる液体サイロ111の
図10と同様の断面図である。液体サイロ111は、水その他の液体が貯蔵される。液体サイロ111は、セメントサイロ1と比較して、セメント70の代わりに液体170が貯蔵される点と、セメント残量検出装置30の代わりに液体残量検出装置30Aを有し、その液体残量検出装置30Aがセメント面データ入力手段、凹部容積算出手段および残容積算出手段の代わりに、液体面データ入力手段と液体残量算出手段を有する点とで相違している。
【0084】
液体面データ入力手段は、距離検出装置50から液体170の上側表面である液体面170aまでの距離を示す液面距離データを含む液体面データを距離検出装置50から入力する。液体面データ入力手段は、セメント面データ入力手段と同様、CPU31によって実現される。
【0085】
液体残量算出手段は、液体初期容積から、空隙容積Vgを差し引いて、貯蔵されている液体の残量を算出する。液体初期容積は、液体面170aが上蓋3に接触しているときの液体170の容積であって、液体サイロ111に満杯に貯蔵されているときの液体170の容積である。空隙容積Vgは、液面距離データの中で最も小さい値を示す最小距離データ(
図15の最短距離Dcのデータ)と、液体サイロ111の断面積(中心軸Ax(
図15には図示せず)と直交状に交差する方向の断面積)との積によって算出される。液体サイロ111では、液体が貯蔵されているため、液体面170aには、セメントサイロ1のようなすり鉢状凹部71が(液体170が排出中であるときを除いて)形成されない。そのため、液体残量算出手段は、液体初期容積から、空隙容積Vgを差し引くことによって、貯蔵されている液体の残量を算出する。液体残量算出手段は、残容積算出手段と同様、CPU31によって実現される。
【0086】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明を適用することにより、ホッパーを有するセメントサイロにおいて、貯蔵されているセメントの残量を正確に検出することができ、また、正確に検出された残量に応じてセメントを発注することができる。本発明は、ホッパーを有するセメントサイロに貯蔵されているセメントの残量を検出するセメント残量検出装置、セメント残量検出システム、貯蔵されているセメントの残量を検出し得るセメントサイロ、検出された残量に応じてセメントを発注するセメント発注システムの分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…セメントサイロ、2,112…内側チャンバー、3…上蓋、5…ホッパー、5a…内傾斜面、10,10A,10B…発注処理装置、11,31…CPU、30…セメント残量検出装置、30A…液体残量検出装置、50…距離検出装置、70…セメント、70a…(初期)セメント面、70b…移動セメント面、71…すり鉢状凹部、99…セメント残量検出システム、101…セメント発注システム、111…液体サイロ、V0…初期容積、V1…凹部容積、V2…空隙容積、Vr…残容積、Wr…セメント残量、D0…初期距離、Dc…最短距離、D1…凹部深さ、D2…空隙距離、Dmax…最大距離データ、Dmin…最小距離データ。