(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022863
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両ルーフサイド構造
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20240214BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20240214BHJP
B60R 21/213 20110101ALI20240214BHJP
【FI】
B60J3/00 H
B60R21/232
B60R21/213
B60J3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126274
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱村 葉月
(72)【発明者】
【氏名】福井 一雄
(72)【発明者】
【氏名】森 南巳
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA18
3D054BB21
3D054CC04
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールとサンシェードモジュールを並走させて収容する車両ルーフサイド構造において、エアバッグの膨張展開性能を維持しつつ内装部材の意匠自由度を向上させるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】車両ルーフサイド構造101は、エアバッグモジュール10及びサンシェードモジュール20と内装部材4とを備え、サンシェードモジュール20は、エアバッグモジュール10と内装部材4との間に介装された荷重受け部23aを有し、エアバッグ11の膨張展開時にエアバッグモジュール10からの入力荷重Fを荷重受け部23aで受けるように構成されており、内装部材4は、サンシェードモジュール20に取り付けられており、サンシェードモジュール20が荷重受け部23aで入力荷重Fを受けたときにサンシェードモジュール20と一体で車外側へと動くように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフサイド部に収容されるエアバッグモジュールと、
上記ルーフサイド部に上記エアバッグモジュールと並走して上記エアバッグモジュールよりも車外側に収容されるサンシェードモジュールと、
上記サンシェードモジュールを車室側から覆う内装部材と、
を備え、
上記エアバッグモジュールは、上記車両の側方窓部に沿ってカーテン状に膨張展開するエアバッグを有し、
上記サンシェードモジュールは、上記エアバッグモジュールと上記内装部材との間に介装された荷重受け部を有し、上記エアバッグの膨張展開時に上記エアバッグモジュールからの入力荷重を上記荷重受け部で受けるように構成されており、
上記内装部材は、上記サンシェードモジュールに取り付けられており、上記サンシェードモジュールが上記荷重受け部で上記入力荷重を受けたときに上記サンシェードモジュールと一体で車外側へと動くように構成されている、車両ルーフサイド構造。
【請求項2】
上記サンシェードモジュールは、上記ルーフサイド部に対する固定部を有し、
上記内装部材は、上記固定部を支点として上記サンシェードモジュールと一体で車外側へ回動するように構成されている、請求項1に記載の車両ルーフサイド構造。
【請求項3】
上記サンシェードモジュールは、サンシェードを引き出し可能に収容するサンシェードケースを有し、
上記エアバッグモジュールは、上記エアバッグを折り畳み状態で収容するエアバッグケースを有し、上記エアバッグケースには上記サンシェードケースと対向するエアバッグ側壁部が設けられており、
上記荷重受け部は、上記サンシェードケースに上記エアバッグ側壁部と対向し且つ上記エアバッグ側壁部と平行に延びるように設けられたサンシェード側壁部であり、上記サンシェード側壁部が上記エアバッグ側壁部から上記入力荷重を受けるように構成されている、請求項1または2に記載の車両ルーフサイド構造。
【請求項4】
上記内装部材を第1内装部材としたとき、上記ルーフサイド部に固定されて上記第1内装部材よりも車外側に設けられる第2内装部材を備え、上記第1内装部材と上記第2内装部材との間には上記サンシェードの挿通用の隙間が設けられており、
上記第1内装部材は、上記サンシェードモジュールと一体で車外側に動くときに上記第2内装部材に向けて上記隙間を狭める方向に移動する、請求項3に記載の車両ルーフサイド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ルーフサイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カーテンシールドエアバッグ装置が開示されている。このエアバッグ装置は、車両のルーフサイド部に車長方向に延びるように収容されており、車室の側方窓部に沿ってカーテン状に膨張展開するエアバッグを備えている。
【0003】
下記特許文献2には、車両用サンシェード装置が開示されている。このサンシェード装置は、車両のルーフサイド部に車長方向に延びるように収容されており、側方窓部を遮蔽するための遮蔽部材であるシートと、シートを巻き取り可能なシート巻取部と、を備えている。シートは、シート巻取部から巻き出されて側方窓部の全体或いは一部を遮蔽するように使用される。一方で、シートで側方窓部を遮蔽しないときには、シートはシート巻取部に巻き取られて格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-196969号公報
【特許文献2】特開2021-172217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のルーフサイド部に上記のようなエアバッグモジュールとサンシェードモジュールの両方を並走させて収容すれば、ルーフサイド部の内部空間を両装置の設置スペースとして有効利用できるという利点がある。ところが、ルーフサイド部の限られた内部空間にエアバッグモジュールとサンシェードモジュールを隣接させて配置する場合には、エアバッグの膨張展開性能を維持するための工夫が必要になる。
【0006】
例えば、エアバッグの膨張範囲を考慮して、エアバッグモジュールとサンシェードモジュールを車室側から覆う内装部材との間の車幅方向の離間距離を大きく設定する構造を採用することができる。このような構造によれば、エアバッグが膨張展開時に内装部材に干渉するのを抑制できる。このため、エアバッグの膨張展開速度が低下したり内装部材が損傷したりするのを防ぐのに有効である。その反面、この構造を採用すると、エアバッグモジュールと内装部材との間の離間距離を大きく設定する必要があり、内装部材の意匠自由度が制限されることになる。したがって、エアバッグの膨張展開性能を維持することを前提としたときには内装部材の意匠自由度が犠牲になるという問題を抱えている。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールとサンシェードモジュールを並走させて収容する車両ルーフサイド構造において、エアバッグの膨張展開性能を維持しつつ内装部材の意匠自由度を向上させるのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
車両のルーフサイド部に収容されるエアバッグモジュールと、
上記ルーフサイド部に上記エアバッグモジュールと並走して上記エアバッグモジュールよりも車外側に収容されるサンシェードモジュールと、
上記サンシェードモジュールを車室側から覆う内装部材と、
を備え、
上記エアバッグモジュールは、上記車両の側方窓部に沿ってカーテン状に膨張展開するエアバッグを有し、
上記サンシェードモジュールは、上記エアバッグモジュールと上記内装部材との間に介装された荷重受け部を有し、上記エアバッグの膨張展開時に上記エアバッグモジュールからの入力荷重を上記荷重受け部で受けるように構成されており、
上記内装部材は、上記サンシェードモジュールに取り付けられており、上記サンシェードモジュールが上記荷重受け部で上記入力荷重を受けたときに上記サンシェードモジュールと一体で車外側へと動くように構成されている、車両ルーフサイド構造、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、エアバッグモジュールとサンシェードモジュールは、サンシェードモジュールがエアバッグモジュールよりも車外側に配置された状態で互いに並走するようにルーフサイド部に収容される。サンシェードモジュールには、エアバッグモジュールと、サンシェードモジュールを車室側から覆う内装部材と、の間に介装される荷重受け部が設けられている。このため、荷重受け部は、膨張展開時にエアバッグモジュールからサンシェードモジュールに作用する入力荷重を受けるように機能する。このとき、内装部材は、サンシェードモジュールに取り付けられて一体化されている。したがって、サンシェードモジュールが荷重受け部で入力荷重を受けたときには、内装部材はサンシェードモジュールと一体で車外側へと動く。
【0010】
ここで、内装部材がサンシェードモジュールと一体で車外側へと動くことによって、エアバッグが膨張展開時にこの内装部材に干渉するのを抑制できる。したがって、エアバッグの膨張展開速度が内装部材の影響で低下したり内装部材が損傷したりするのを防ぐのに有効である。また、内装部材がサンシェードモジュールと一体で車外側へと動く構造を採用すれば、エアバッグの膨張展開性能を維持する目的でエアバッグモジュールと内装部材との間の車幅方向の離間距離を大きく設定するような対策を要しない。したがって、エアバッグの膨張展開性能を維持することを前提としたうえで、内装部材の意匠自由度が制限されるのを防ぐことができる。
【0011】
上述の態様によれば、車両のルーフサイド部にエアバッグモジュールとサンシェードモジュールを並走させて収容する車両ルーフサイド構造において、エアバッグの膨張展開性能を維持しつつ内装部材の意匠自由度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1の車両ルーフサイド構造及び側方窓部を車内側からみた側面図。
【
図2】
図1中のエアバッグモジュールをエアバッグの膨張展開完了状態にて示す側面図。
【
図3】
図1中のサンシェードモジュールをサンシェードの引き出し状態にて示す側面図。
【
図5】
図4をエアバッグが膨張展開初期の第1作動状態にあるときの様子について示す断面図。
【
図6】
図4をエアバッグが第2作動状態にあるときの様子について示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
なお、本明細書において、「膨張」とは、エアバッグの内部空間へのガス供給によって当該エアバッグが膨れてガス供給前の状態よりも大きくなる態様をいい、「展開」とは、予め所定の形状に折り畳まれたエアバッグが膨張する過程で折り畳み状態を解除するように拡張する態様をいう。このように、エアバッグの展開は実質的に膨張を伴うものであり、このときの態様を「膨張展開」という。
【0015】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記サンシェードモジュールは、上記ルーフサイド部に対する固定部を有し、
上記内装部材は、上記固定部を支点として上記サンシェードモジュールと一体で車外側へ回動するように構成されているのが好ましい。
【0016】
この車両ルーフサイド構造によれば、サンシェードモジュールがルーフサイド部に対する固定部を支点として回動する動作に連動させて内装部材も車外側へと回動させることができる。これにより、内装部材をエアバッグモジュールから遠ざかる方向に容易に動かすことが可能になる。
【0017】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記サンシェードモジュールは、サンシェードを引き出し可能に収容するサンシェードケースを有し、
上記エアバッグモジュールは、上記エアバッグを折り畳み状態で収容するエアバッグケースを有し、上記エアバッグケースには上記サンシェードケースと対向するエアバッグ側壁部が設けられており、
上記荷重受け部は、上記サンシェードケースに上記エアバッグ側壁部と対向し且つ上記エアバッグ側壁部と平行に延びるように設けられたサンシェード側壁部であり、上記サンシェード側壁部が上記エアバッグ側壁部から上記入力荷重を受けるように構成されているのが好ましい。
【0018】
この車両ルーフサイド構造によれば、サンシェードケースのうちエアバッグケースのエアバッグ側壁部と対向するサンシェード側壁部が荷重受け部として利用される。このとき、サンシェード側壁部がエアバッグ側壁部と平行に延びているため、エアバッグモジュールからの入力荷重をエアバッグ側壁部及びサンシェード側壁部を介してサンシェードケース側に効率良く伝達して、サンシェードケースと干渉部材を一体で車外側に動かす力に変換することができる。
【0019】
上述の態様の車両ルーフサイド構造において、上記内装部材を第1内装部材としたとき、上記ルーフサイド部に固定されて上記第1内装部材よりも車外側に設けられる第2内装部を備え、上記第1内装部材と上記第2内装部材との間には上記サンシェードのための挿通開口が設けられており、
上記第1内装部材は、上記サンシェードモジュールと一体で車外側に動くときに上記第2内装部材に向けて上記隙間を狭める方向に移動するのが好ましい。
【0020】
この車両ルーフサイド構造によれば、第1内装部材がサンシェードモジュールと一体で第2内装部材に向けて隙間を狭める方向に移動するため、この隙間分のスペースを第1内装部材の移動代に利用することができる。これにより、第1内装部材が第2内装部材に干渉して車外側への動きが阻害されるのを防ぐことができる。
【0021】
以下、車両ルーフサイド構造の実施形態の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、本実施形態の説明で用いる図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示している。また、特に断わらない限り、車長方向(前後方向)を矢印Xで示し、車幅方向(左右方向)を矢印Yで示し、車高方向(上下方向)を矢印Zで示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の車両ルーフサイド構造(以下、単に「ルーフサイド構造」という。)101は、車両1の上部左右のルーフサイド部2のそれぞれに搭載される構造である。左右のルーフサイド構造101は同一であるため、
図1では車両右側のルーフサイド構造101のみを例示的に示している。
【0024】
ルーフサイド構造101は、エアバッグモジュール10及びサンシェードモジュール20を備えている。これらのエアバッグモジュール10及びサンシェードモジュール20は、いずれも車両1に搭載された状態で、ルーフサイド部2に沿って設けられる。
【0025】
ルーフサイド部2の内部空間2aは、いずれも合成樹脂材料からなる複数の内装部材によって車室8側から覆われている。複数の内装部材には、天井パネルを車室8側から覆う内装部材3と、サンシェードモジュール20を車室8側から覆う内装部材4と、内装部材4よりも車外側に設けられる内装部材5(
図4を参照)と、が含まれている。内装部材4と内装部材5は、互いに平行な状態で車長方向Xに延びるように構成されている。一般的に、内装部材3は「ルーフヘッドライニング」と称される。また、内装部材4は「インナレールガーニッシュ」と称され、内装部材5は「アウタレールガーニッシュ」と称される。
【0026】
1.エアバッグモジュール10の構造
図1に示されるように、エアバッグモジュール10は、車両1のルーフサイド部2に収容されている。このエアバッグモジュール10は、ルーフサイド部2の内部空間2aにおいて、側方窓部7aの上方領域から側方窓部7cの上方領域までの間に車長方向Xに沿って延びるように配置されている。このエアバッグモジュール10は、車室8を側方窓部7に沿ってカーテン状に膨張展開するカーテンエアバッグであるエアバッグ11を備えている。
【0027】
エアバッグ11は、膨張展開が完了した状態で車両1の複数の側方窓部7をカーテン状に覆うように配置され、車両1の乗員の頭部を保護するのに使用される。このエアバッグ11は、車両前側の第1エアバッグ部11aと、第1エアバッグ部11aよりも車長方向Xの後方側に配置される車両後側の第2エアバッグ部11bと、を有する。第1エアバッグ部11aは、膨張展開が完了した状態で複数の側方窓部7のうちの前席に対応した1つの側方窓部7aを覆うように構成されている。これに対して、第2エアバッグ部11bは、膨張展開が完了した状態で複数の側方窓部7のうちの後席に対応した2つの側方窓部7b,7cを覆うように構成されている。
【0028】
図2に示されるように、エアバッグモジュール10は、衝撃発生時にエアバッグ11に膨張展開用のガスGを供給するガス供給部としてのインフレータ12と、エアバッグ11を折り畳み状態で収容するエアバッグケース13と、を備えている。インフレータ12及びエアバッグケース13は、エアバッグ11とともにルーフサイド部2の内部空間2aに収容されている。
【0029】
エアバッグ11は、シート状の複数のエアバッグ基布を重ね合わせて縫合や接着等の接合を利用して袋状に形成されてなるエアバッグ形成体である。エアバッグ11は、複数の固定部11cを有し、これら複数の固定部11cでルーフサイド部2の骨格部分に固定されている。
【0030】
エアバッグ11は、エアバッグケース13(
図4を参照)に収容された状態では予め定められた手順にしたがって折り畳まれた状態であり、インフレータ12からエアバッグ11の内部空間にガスGが供給されることによって、膨張しつつ折り畳みを解除するように展開していく。このとき、エアバッグ11は、エアバッグケース13から車室8に向けて突出する。最終的に、エアバッグ11は、
図2に示されるような膨張展開完了状態になる。
【0031】
2.サンシェードモジュール20の構造
図3に示されるように、サンシェードモジュール20は、ルーフサイド部2にエアバッグモジュール10と並走してエアバッグモジュール10よりも車幅方向Yの車外側に収容されている。このサンシェードモジュール20は、ルーフサイド部2の内部空間2aにおいて、側方窓部7cのみの上方領域に車長方向Xに沿って延びるように配置されている。
【0032】
図3に示されるように、サンシェードモジュール20は、サンシェード21と、巻き取り軸部22と、サンシェードケース23と、複数の固定部24と、を備えている。
【0033】
サンシェード21は、遮光性及び可撓性を有するシート状の遮蔽部材であり、サンシェードケース23から車室8に引き出されるように構成されている。このサンシェード21は、その遮光性により車外からの日差しを遮ることができる日除けとして使用される。また、このサンシェード21は、その可撓性により巻き取り軸部22の外周面への巻き取りが可能とされている。
【0034】
巻き取り軸部22は、サンシェード21を外周面にロール状に巻き取るために設けられている。この巻き取り軸部22は、車長方向Xに延びる支持軸22aを中心に回転可能であり、且つ、バネ部材のような付勢手段(図示省略)によってサンシェード21の巻き取り方向に常時に付勢されるように構成されている。なお、サンシェード21の巻き取り動作及び巻き出し動作を電動モータのようなアクチュエータで行うようにしてもよい。
【0035】
本構成によれば、サンシェード21は、サンシェードケース23から車高方向Zの下向きに引き出されて適宜の位置に保持されることで、側方窓部7cの全部或いは一部を車内側から被覆することができる。これに対して、サンシェード21は、その保持が解除されると上向きに引き戻されて、側方窓部7cの被覆を解除する。
【0036】
本形態のサンシェードモジュール20は、ルーフサイド部2に収容されたサンシェードケース23からサンシェード21を引き下げて使用する構造であるため、以下のような作用効果を奏する。すなわち、サンシェード21によって日差しの量を調節しつつ車外の景色を見ることができる。乗員は車外からの日差しの量に応じてサンシェード21を途中で止めつつ景色を楽しむことが可能になる。
【0037】
図3に示されるように、サンシェードケース23は、サンシェード21を車高方向Zの下方へ引き出し可能に収容するとともに、巻き取り軸部22を収容する収容部材として構成されている。このサンシェードケース23の車長方向Xの両端部は、ボルト部材からなる固定部24によってルーフサイド部2の骨格部分に締結固定されている。このため、固定部24は、ルーフサイド部2に対するサンシェードモジュール20の固定部とされる。
【0038】
図4に示されるように、エアバッグケース13には、サンシェードケース23と対向するエアバッグ側壁部13aが設けられている。予め折り畳まれた初期状態C0のエアバッグ11とサンシェードケース23との間には、エアバッグ側壁部13aのみが介在しており別部材は介在していない。このエアバッグ側壁部13aの下端部13bは、内装部材3の近傍まで延びている。
【0039】
これに対して、サンシェードケース23には、サンシェード側壁部23aが設けられている。このサンシェード側壁部23aは、エアバッグケース13のエアバッグ側壁部13aと対向し且つエアバッグ側壁部13aと平行に延びるように構成されている。このサンシェード側壁部23aは、エアバッグモジュール10と内装部材4との間に介装されており、エアバッグモジュール10からの入力荷重を受ける荷重受け部を構成するものである。サンシェード側壁部23aがエアバッグ側壁部13aから入力荷重を受けるようになっている。このため、以下の説明では、このサンシェード側壁部23aを「荷重受け部23a」ともいう。
【0040】
3.内装部材4の構造
図3に示されるように、内装部材4は、サンシェードケース23の下方にサンシェードケース23に沿って車長方向Xに延びている。この内装部材4は、サンシェードモジュール20に取り付けられており、ルーフサイド部2の骨格部分には取り付けられていない。この内装部材4の取付構造について具体的に説明すると、内装部材4の上部には複数の取付部4aが設けられ、サンシェードケース23の下部にはそれぞれが複数の取付部4aのそれぞれに対応した複数の被取付部23bが設けられている。複数の取付部4aと複数の被取付部23bはいずれも、2つの固定部24よりも内側の領域に設けられている。そして、内装部材4の取付部4aとサンシェードケース23の被取付部23bとが、クリップ等の固定部材6(
図4を参照)によって互いに連結されている。これにより、内装部材4は、取付部4a及び被取付部23bを介して、サンシェードケース23に一体状に固定されている。
【0041】
図4に示されるように、サンシェードケース23の下方には、サンシェード21を挿通するための隙間5aが設けられている。サンシェードケース23から引き出されたサンシェード21は、この隙間5aを通じて車室8まで延びている。ここで、隙間5aは、内装部材4(第1内装部材)と内装部材5(内装部材)との間に設けられている。すなわち、内装部材4の車外側端面と内装部材5の車内側端面とによって隙間5aが区画形成されている。内装部材5は、ルーフサイド部2の骨格部分に固定されている。
【0042】
また、この内装部材4は、その内側端部4bが内装部材3の下端部と重なり合うように配置されている。このとき、内装部材4の意匠設計に応じて、その内側端部4bとエアバッグ側壁部13aの下端部13bとの間の車幅方向Yの離間距離Lを適宜に設定することができる。
【0043】
4.エアバッグ11の膨張展開動作
次に、
図2、
図4~
図6を参照しながら、衝撃発生時にエアバッグ11が膨張展開するときの膨張展開動作について説明する。
【0044】
図2に示されるように、車両1の衝突等の発生時に、車両1に配置されているセンサ(図示省略)に大きな衝撃が加わると、2つのインフレータ12が作動してほぼ同じタイミングでガスGが生成する。2つのインフレータ12で発生したガスGは、エアバッグ11の第1エアバッグ部11aと第2エアバッグ部11bのそれぞれの内部空間に供給される。
【0045】
このとき、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bは、インフレータ12の作動に伴って、初期状態C0(
図4を参照)から膨張展開初期の第1作動状態C1(
図5を参照)へと変化する。
図5に示されるように、内装部材3は、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bが第1作動状態C1に変化する過程で、この第2エアバッグ部11bから受ける荷重によって車室8側へ押し開かれる。これにより、内装部材3による被覆状態が部分的に解除され、第2エアバッグ部11bが車室8に向けて突出可能な状態になる。
【0046】
図5に示されるように、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bが第1作動状態C1になると、エアバッグケース13のエアバッグ側壁部13aは、サンシェードケース23のサンシェード側壁部23aに接触するまで車外側に動く。このとき、サンシェードケース23のサンシェード側壁部23aは、エアバッグモジュール10からの入力荷重Fをエアバッグケース13のエアバッグ側壁部13aを介して受け始める。その後、エアバッグ側壁部13aは、エアバッグ11の膨張展開動作が進行することに伴い、サンシェード側壁部23aから受ける反力に抗して車外側へと移動する。そして、サンシェード側壁部23aが受ける入力荷重Fは、エアバッグ11の膨張展開動作が進行するにつれて強まる。
【0047】
なお、本形態では、サンシェード側壁部23aは、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bに直に接触するのではなく、この第2エアバッグ部11bによって押圧されるエアバッグ側壁部13aに直に接触するような構造になっている。一方で、この構造に代えて、サンシェード側壁部23aが第2エアバッグ部11bに直に接触するような構造を採用してもよい。
【0048】
図6に示されるように、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bは、第1作動状態C1からさらに膨張展開動作が進行することによって第2作動状態C2になる。このとき、サンシェードケース23は、固定部24でルーフサイド部2の骨格部分に固定されている。したがって、サンシェードケース23は、エアバッグモジュール10からの入力荷重Fにしたがって、固定部24を支点として車外側である回動方向Rに回動する。このとき、サンシェードケース23の位置は、第1位置P1(
図6中の二点鎖線で示される位置を参照)から第2位置P2(
図6中の実線で示される位置を参照)へと変化する。
【0049】
ここで、本形態では、内装部材4がサンシェードモジュール20のサンシェードケース23に取り付けられて一体化されている。したがって、内装部材4は、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bの膨張展開時にサンシェードケース23がサンシェード側壁部23aで入力荷重Fを受けたときにサンシェードケース23と一体で車外側へと動く。このとき、内装部材4は、サンシェードモジュール20と同様に、固定部24を支点として上記サンシェードモジュールと一体で回動方向Rに回動する。このとき、内装部材4の位置は、第1位置Q1(
図6中の二点鎖線で示される位置を参照)から第2位置Q2(
図6中の実線で示される位置を参照)へと変化する。
【0050】
ここで、内装部材4がサンシェードケース23に固定されているのに対して、内装部材5はルーフサイド部2に固定されている。このため、内装部材4がサンシェードモジュール20と一体で動いて、その位置が第1位置Q1から第2位置Q2へと変化するときに、この可動側の内装部材4は、固定側の内装部材5に向けて隙間5aを狭める方向に移動する。内装部材4は、隙間5aが無くなって内装部材5に干渉するまでの間は別部材と干渉することなく車外側へ移動することができる。このため、隙間5aを内装部材4の車外側への移動代として利用できる。
【0051】
内装部材4が第1位置Q1から第2位置Q2まで移動することで、その内側端部4bは、エアバッグモジュール10から遠ざかる方向ないし逃げる方向に移動する。これにより、エアバッグ11の膨張展開時にその第2エアバッグ部11bが内装部材4の内側端部4bに干渉するのを防ぐことができる。したがって、第2エアバッグ部11bが内装部材4の内側端部4bに引っ掛かってその膨張展開動作が邪魔されるのを防ぐことが可能になる。
【0052】
その後、エアバッグ11の第2エアバッグ部11bは、
図6に示される第2作動状態C2からさらに膨張展開動作が進行することによって、最終的に
図2に示されるような膨張展開完了状態を形成する。
【0053】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0054】
実施形態1のルーフサイド構造101において、エアバッグモジュール10とサンシェードモジュール20は、サンシェードモジュール20がエアバッグモジュール10よりも車外側に配置された状態で互いに並走するようにルーフサイド部2に収容されている。サンシェードモジュール20には、エアバッグモジュール10と、サンシェードモジュール20を車室8側から覆う内装部材4と、の間に介装される荷重受け部23aが設けられている。このため、荷重受け部23aは、膨張展開時にエアバッグモジュール10からサンシェードモジュール20に作用する入力荷重Fを受けるように機能する。このとき、内装部材4は、サンシェードモジュール20に取り付けられて一体化されている。したがって、サンシェードモジュール20が荷重受け部23aで入力荷重Fを受けたときには、内装部材4はサンシェードモジュール20と一体で車外側へと動く。
【0055】
ここで、内装部材4がサンシェードモジュール20と一体で車外側へと動くことによって、エアバッグ11が膨張展開時にこの内装部材4に干渉するのを抑制できる。したがって、エアバッグ11の膨張展開速度が内装部材4の影響で低下したり内装部材4が損傷したりするのを防ぐのに有効である。また、内装部材4がサンシェードモジュール20と一体で車外側へと動く構造を採用すれば、エアバッグ11の膨張展開性能を維持する目的でエアバッグモジュール10と内装部材4との間の車幅方向Yの離間距離L(
図4を参照)を大きく設定するような対策を要しない。したがって、エアバッグ11の膨張展開性能を維持することを前提としたうえで、内装部材4の意匠自由度が制限されるのを防ぐことができる。
【0056】
従って、上述の実施形態1によれば、車両1のルーフサイド部2にエアバッグモジュール10とサンシェードモジュール20を並走させて収容する車両ルーフサイド構造101において、エアバッグ11の膨張展開性能を維持しつつ内装部材4の意匠自由度を向上させることが可能になる。
【0057】
実施形態1のルーフサイド構造101によれば、内装部材4を車外側に動かすのに、この内装部材4をサンシェードケース23に取り付ける構造を採用すればよいため、構造が複雑化するのを防ぐことができ、また既存部品以外の専用部品が必要になったりするのを防ぐのに有効である。
【0058】
実施形態1のルーフサイド構造101によれば、サンシェードモジュール20がルーフサイド部2に対する固定部24を支点として回動する動作に連動させて内装部材4も車外側へと回動させることができる。これにより、内装部材4をエアバッグモジュール10から遠ざかる方向に容易に動かすことが可能になる。
【0059】
実施形態1のルーフサイド構造101によれば、サンシェードケース23のうちエアバッグケース13のエアバッグ側壁部13aと対向するサンシェード側壁部23aが荷重受け部として利用される。このとき、サンシェード側壁部23aがエアバッグ側壁部13aと平行に延びているため、エアバッグモジュール10からの入力荷重Fをエアバッグ側壁部13a及びサンシェード側壁部23aを介してサンシェードケース23側に効率良く伝達して、サンシェードケース23と内装部材4を一体で車外側に動かす力に変換することができる。
【0060】
実施形態1のルーフサイド構造101によれば、内装部材4がサンシェードモジュール20と一体で内装部材5に向けて隙間5aを狭める方向に移動するため、この隙間5a分のスペースを内装部材4の移動代に利用することができる。これにより、内装部材4が内装部材5に干渉して車外側への動きが阻害されるのを防ぐことができる。
【0061】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0062】
上述の形態では、サンシェードモジュール20が荷重受け部23aで入力荷重Fを受けたときに内装部材4とサンシェードモジュール20が一体で車外側へ回動する場合について例示したが、内装部材4とサンシェードモジュール20が一体で車外側へ動く動作は回動に限定されるものでなく、例えば直線的にスライドするように動いてもよい。
【0063】
上述の形態では、サンシェードモジュール20のサンシェードケース23の一部であるサンシェード側壁部23aを荷重受け部とする場合について例示したが、これに代えて、サンシェードモジュール20のうちのサンシェードケース23以外の要素(例えば、サンシェードケース23に取り付けた別部材など)によって荷重受け部を構成するようにしてもよい。
【0064】
上述の形態では、車両1の側方窓部7cの上方領域のみにサンシェードモジュール20を設ける構造について例示したが、この構造に加えて或いは代えて、側方窓部7aの上方領域や側方窓部7bの上方領域にサンシェードモジュール20と同様の構造のものを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
2 ルーフサイド部
4 内装部材(第1内装部材)
5 内装部材(第2内装部材)
5a 隙間
7 側方窓部
8 車室
10 エアバッグモジュール
11 エアバッグ
13 エアバッグケース
13a エアバッグ側壁部
20 サンシェードモジュール
21 サンシェード
23 サンシェードケース
23a サンシェード側壁部(荷重受け部)
24 固定部
101 車両ルーフサイド構造(ルーフサイド構造)
F 入力荷重
Y 車幅方向