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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022879
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ファンダクトおよび電子装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240214BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20240214BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H05K7/20 G
G06F1/20 B
G06F1/20 C
G06F1/16 312D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126309
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞田 強
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB03
5E322EA11
5E322FA09
(57)【要約】
【課題】放熱のための送風を行うファンの風下に障害物がある場合に、良好な放熱性能を得られるファンダクトおよび当該ファンダクトを備える電子装置を提供する。
【解決手段】ファンダクトは、電子部品に取り付けられるヒートシンクと当該ヒートシンクに送風するファンとを覆い、ファンの送風方向上流側の吸気口および下流側の排気口が設けられたものであって、分岐壁とリブとを備える。分岐壁は、ファンの送風方向上流側において互いの一辺が連続しファンの送風方向下流側へ向かって互いに離れるように送風方向に対して傾斜した2つの板状部を有し、排気口の縁の内側に配置される。リブは、分岐壁のヒートシンクに対向する側の面から、分岐壁とヒートシンクとの間隔よりも大きく突出し、最も突出した頂部が鋭角の山型の板状の形状を有し、ヒートシンクのフィンの間隔以下の厚さを有し、フィンの間に差し込まれる間隔で自身の厚さ方向に複数枚並んで設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品に取り付けられるヒートシンクと当該ヒートシンクに送風するファンとを覆い、前記ファンの送風方向上流側の吸気口および下流側の排気口が設けられたファンダクトであって、
前記ファンの送風方向上流側において互いの一辺が連続し前記ファンの送風方向下流側へ向かって互いに離れるように前記送風方向に対して傾斜した2つの板状部を有し、前記排気口の縁の内側に配置された分岐壁と、
前記分岐壁の前記ヒートシンクに対向する側の面から、前記分岐壁と前記ヒートシンクとの間隔よりも大きく突出し、最も突出した頂部が鋭角の山型の板状の形状を有し、前記ヒートシンクのフィンの間隔以下の厚さを有し、前記フィンの間に差し込まれる間隔で自身の厚さ方向に複数枚並んで設けられたリブと、
を備えるファンダクト。
【請求項2】
前記分岐壁が有する2つの前記板状部がなす角は直角或いは鈍角である
請求項1に記載のファンダクト。
【請求項3】
前記リブの山型の縁は、頂部から根元にかけて、前記ファンの送風方向に対する傾斜の角度が徐々に大きくなるよう湾曲または屈曲して形成されている
請求項1に記載のファンダクト。
【請求項4】
前記リブの山型の縁と前記ファンの送風方向とがなす角は、約20~45度の範囲である
請求項1に記載のファンダクト。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のファンダクトと、
前記ファンダクトに覆われるヒートシンクと、
前記ファンダクトに覆われるファンと、
前記ヒートシンクにより放熱される電子部品が実装された基板と、
前記基板および前記ファンダクトが収納されるものであって吸排気のための通風孔が設けられた筐体と、
を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ファンダクトおよび電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(Personal Computer、パーソナルコンピュータ)などの電子装置は、CPU(Central Processing Unit)等、高温になる部品を含んでいる。そのような部品には、一般に、放熱のためにヒートシンクが取り付けられ、さらには、ヒートシンクの周囲の気体(空気)が適切に流れるよう、ファンおよびファンダクトが設置され(例えば特許文献1)、ファンダクトの吸排気孔の位置が定められる。
【0003】
ここで、電子装置の筐体が内蔵するものの量や配置等によっては、ファンの風下に、気体の円滑な通り抜けを妨げる部品(障害物)が配置されることがある。この場合、放熱性能が低下してしまい、好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、放熱のための送風を行うファンの風下に障害物がある場合に、良好な放熱性能を得られるファンダクトおよび当該ファンダクトを備える電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のファンダクトは、電子部品に取り付けられるヒートシンクと当該ヒートシンクに送風するファンとを覆い、前記ファンの送風方向上流側の吸気口および下流側の排気口が設けられたものであって、分岐壁とリブとを備える。分岐壁は、前記ファンの送風方向上流側において互いの一辺が連続し前記ファンの送風方向下流側へ向かって互いに離れるように前記送風方向に対して傾斜した2つの板状部を有し、前記排気口の縁の内側に配置される。リブは、前記分岐壁の前記ヒートシンクに対向する側の面から、前記分岐壁と前記ヒートシンクとの間隔よりも大きく突出し、最も突出した頂部が鋭角の山型の板状の形状を有し、前記ヒートシンクのフィンの間隔以下の厚さを有し、前記フィンの間に差し込まれる間隔で自身の厚さ方向に複数枚並んで設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態のファンダクトの外観の一例を示す斜視図である。
図2図2は、ファンダクトが取り付けられる電子装置の構造の一例を概略的に示す斜視図である。
図3図3は、電子装置に設けられた通風孔の一例を示す斜視図である。
図4図4は、ファンダクトの形状を説明する平面図である。
図5図5は、ファンダクトの形状を説明する縦断側面図である。
図6図6は、ファンダクトと排気口付近の部品との位置関係を説明する縦断側面図である。
図7図7は、電子装置に取り付けられたファンダクトの排気口の配置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
実施形態について図面を用いて説明する。図1は、第1の実施形態のファンダクト1の外観の一例を示す斜視図である。図2は、ファンダクト1が取り付けられる電子装置100の構造の一例を概略的に示す斜視図である。ここで、説明の便宜のため、図面には三次元座標系を併せて示した。三次元座標系は、ファンダクト1および電子装置100の幅方向(左右方向)をX軸方向、奥行方向(前後方向)をY軸方向、高さ方向(上下方向)をZ軸方向とした。なお、Y軸の正方向は、電子装置100の背面側から正面側へ向かう方向であって、Y軸の正方向を「前方」とする。また、Z軸の正方向は下から上へ向かう方向である。
【0008】
まず図1に示すように、ファンダクト1は、略箱型の形状を有し、ヒートシンク2と当該ヒートシンク2に送風するファン3とを覆う。ファン3は、Y軸の負方向(後方)に送風する。ファンダクト1の、ファン3の送風方向上流側となる位置には吸気口11が設けられ、下流側となる位置には排気口12が設けられている。
【0009】
以降、単に上流側と記載したものは、ファン3の送風方向(Y軸の負方向)に基づいた上流側(或いは風上)を意図したものである。同様に、単に下流側と記載したものは、ファン3の送風方向に基づいた下流側(或いは風下)を意図したものである。
【0010】
ヒートシンク2は、発熱する電子部品に取り付けられる。この「発熱する電子部品」は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。CPUが発する熱はヒートシンク2に伝導し、ヒートシンク2の熱は周囲の気体(空気)に放散される。これにより、CPUの過熱による誤作動等が防止される。
【0011】
ヒートシンク2は、台座部21と複数枚のフィン22とで構成されている。フィン22は、台座部21の上に立てて設けられている。複数枚のフィン22は、互いに所定の間隔をあけて隣り合う。台座部21はCPUに接し、CPUの熱が伝導される。フィン22は、自身と連続している台座部21から伝導する熱を、空中に放散する。
【0012】
なお、ヒートシンク2は、所定間隔で層をなすフレーム41~43の上に、弦巻バネ44およびねじ45で固定される。フレーム41とフレーム42との間には、マザーボード101(図2参照)が挟まれる。
【0013】
ファン3は、回転する羽根で気体を連続的に一方向に送ることにより送風する。本実施形態においては、ファン3の送風方向上流側から下流側へ向かって、吸気口11、ファン3、ヒートシンク2、排気口12の順に、配置されている。ファン3が吸気口11から取り込んで送る気体(空気)は、ヒートシンク2の主にフィン22の周囲を流れてフィン22の熱を奪い、排気口12から排出される。
【0014】
ファンダクト1は、ファン3による送風を、ヒートシンク2の放熱に効率的に作用させ、放熱効果を向上させる。具体的には、ファンダクト1はヒートシンク2の周りを囲み、ファンダクト1内の気体は、ファン3の回転により吸気口11から取り込まれる気体と入れ替えられ、排気口12から押し出される。これにより、ヒートシンク2の周囲の気体が速やかに入れ替わる。
【0015】
上述のようなファンダクト1の働きの都合上、排気口12の風下には、排気を妨げる部品(障害物)は存在しないことが望ましい。しかしながら、ファンダクト1を備える電子装置100の大きさや内蔵物の配置等によっては、排気口12の下流側に障害物が配置されることがある。
【0016】
図2に示すように、電子装置100は、マザーボード101、CPU102、メモリー103、SSD(Solid State Drive)104、ライザーカード105、I/Oボードなどの拡張ボード106,107、筐体110を備えている。
【0017】
筐体110は、上記各部(マザーボード101、CPU102、メモリー103、SSD104、ライザーカード105、I/Oボードなどの拡張ボード106,107)を収納する。
【0018】
マザーボード101は、ヒートシンク2により放熱される電子部品(本実施形態ではCPU102)が実装された基板の一例である。また、メモリー103、SSD104も、動作に応じて発熱する。これらの熱も、ファン3の送風により作られる筐体110内の気体の流れで、放散される。
【0019】
拡張ボード106,107は、マザーボード101に直接接続することも可能であるが、その場合、拡張ボード106,107がマザーボード101に直立するため、筐体110の高さ方向の寸法を大きくする必要があり、電子装置100が大型化してしまう。これを防止するためにライザーカード105が用いられる。
【0020】
ライザーカード105は、拡張ボード106,107とマザーボード101との接続を仲介する。ライザーカード105は、拡張ボード106,107の差し込みを受け付ける1以上のスロットを備え、マザーボード101が備えるスロットに差し込まれる。ライザーカード105により、拡張ボード106,107は、マザーボード101に直立することなく、マザーボード101に略平行に位置し、接続される。これにより、筐体110の高さ寸法を抑えることが可能となる。
【0021】
しかしながら、上述のような配置により、拡張ボード106,107が、ファン3の送風方向において排気口12よりも下流側に位置している。この場合、仮に排気口12からの排気方向が後ろ向き(Y軸の負方向)であると、拡張ボード106,107が排気を妨げる障害物となってしまう。そこで本実施形態では、排気方向が拡張ボード106,107を避けるよう、構成している。
【0022】
図3は、電子装置100に設けられた通風孔151~157の一例を示す斜視図である。なお、この斜視図は電子装置100を背面側から見たものである。
【0023】
電子装置100は、ファンダクト1と、ファンダクト1に覆われるヒートシンク2およびファン3と、マザーボード101と、筐体110とを備える。筐体110は、マザーボード101およびファンダクト1が収納されるものであり、筐体110には、吸排気のための通風孔151~157が設けられている。
【0024】
筐体110は、前カバー111、後カバー112、I/Oパネル113を備えている。前カバー111は、筐体110の正面を構成するパーツである。前カバー111には、通風孔151~153が設けられている。後カバー112は、筐体110の背面を構成するパーツである。後カバー112には、通風孔154,155が設けられている。通風孔154は、筐体110の背面の上部に位置する。通風孔155は、筐体110の背面の下部に位置する。
【0025】
I/Oパネル113は、筐体110の背面の一部を構成するものである。I/Oパネル113には、通風孔156,157が設けられている。通風孔156,157は、筐体110の背面の下部に位置する。通風孔156は、I/Oボード(拡張ボード106,107)へのコネクタの差込みを受け付ける開口部である。
【0026】
各通風孔151~157は、気体(空気)を吸入または排出する。中でも、筐体110の背面側に設けられた通風孔154~156は、主に排気を担当する。
【0027】
本実施形態の電子装置100においては、CPU102の後方に拡張ボード106,107が配置されている。このため、ファンダクト1の排気口12は、排気が拡張ボード106,107を避けるよう、後ろ上方に向かって開口する排気口121と、後ろ下方に開口した排気口122とに、分けられている(図1参照)。排気口12は、分岐壁13およびリブ14によって、分かたれている。リブ14は、分岐壁13のヒートシンク2側の面に立てられている。また、リブ14は、複数枚が左右方向に並んで一定間隔で設けられている。より詳しくは、リブ14は、フィン22の間に差し込まれる間隔で、自身の厚さ方向に複数枚並んで、設けられている。そしてリブ14は、少なくとも先端部分が、フィン22の間に差し込まれる。
【0028】
ここで、分岐壁13およびリブ14の形状について、図4および図5を参照してさらに詳しく説明する。図4は、ファンダクト1の形状を説明する平面図である。図5は、ファンダクト1の形状を説明する縦断側面図である。
【0029】
分岐壁13は、排気口12の縁の内側に配置され、排気口12を排気口121と排気口122とに二分する。分岐壁13は、側面視において断面が略V字型の形状を有し、屈曲部分はヒートシンク2側に突出している。これにより、ヒートシンク2を経た気体の流れ方向が二分される。
【0030】
より詳しくは、分岐壁13は、2つの板状部131,132を有している。板状部131,132は、互いの上流側の辺で連続している。また、板状部131,132は、下流側ほど互いの距離があくよう、ファン3の送風方向に対して傾斜している。第1の板状部131は、気体の流れ方向を斜め上向きに導く。第2の板状部132は、気体の流れ方向を斜め下向きに導く。これにより、分岐壁13は、自身の下流側の一部範囲を避けるよう排気を導き、排気を分岐させる。
【0031】
分岐壁13が有する2つの板状部131,132とファン3の送風方向(Y軸の負方向)とがなす角の角度はそれぞれ45°以上であり、2つの板状部131,132がなす角の角度は、直角(90°)或いはそれよりやや大きい程度の鈍角である。この分岐壁13の角度設定等は、金型の寿命や作りやすさ等が考慮されて、定められる。
【0032】
リブ14は、分岐壁13のヒートシンク2に対向する側の面から、分岐壁13とヒートシンク2との間隔よりも大きく突出して設けられている。また、リブ14は、ヒートシンク2のフィン22の間隔以下の厚さを有し、山型の板状の形状を有している。なお、本実施形態のリブ14の山型の縁は、直線状に形成されている。
【0033】
リブ14の山型の縁は、送風方向に対して傾斜している。リブ14の山型の縁と、ファン3の送風方向(Y軸の負方向)とがなす角の角度は、20~45°の範囲であると効果的であり、さらに好ましくは30°程度である。また、最も突出した部分である頂部141における山型の角度は、鋭角である。
【0034】
上述のリブ14の角度設定等は、冷却効果をシミュレーションした結果(後述)に基づいて、所望の効果が得られ、且つ金型として設計可能であるよう、定められる。
【0035】
例えば、リブ14の山型の縁とファン3の送風方向とがなす角の角度は、大きすぎては所望の効果を得られず、所望の効果を得るためには少なくとも45°以下とすることが望ましい。
【0036】
また、リブ14の山型の縁とファン3の送風方向とがなす角の角度が小さすぎると(例えば20°未満であると)、リブ14の頂部141が鋭くなりすぎて金型成形時に充填不良が起こりやすくなってしまうので、好ましくない。さらにこの場合に、根元の高さ方向寸法を十分にとるためにリブ14を長く(頂部141から根元までの寸法が大きく)すると、リブ14が平面視(Z軸負方向視点)において排気口121内に収まらなくなり、金型の構造が複雑化する。
【0037】
上述のような不都合を回避して所望の効果を得つつ、充填不良が起こりにくく構造がシンプルな金型で成形可能とするためには、リブ14の山型の縁とファン3の送風方向とがなす角は、20°以上45°以下であることが望ましく、約30°前後であると好ましい。
【0038】
なお、リブ14の根元の厚さは、3mm以下であればヒケが起こりにくく、金型で肉盗みを施す必要がない。また、リブ14の上下は壁が無いので、通常のキャビコアで成形可能である。よって、リブ14の先端は、鋭利な形状とすることができる。
【0039】
図6は、ファンダクト1と排気口12(121,122)付近の部品(拡張ボード106,107)との位置関係を説明する縦断側面図である。また、図7は、電子装置100に取り付けられたファンダクト1の排気口121の配置状態を示す斜視図である。これらに示すように、排気口121,122の排気方向は、付近の部品(拡張ボード106,107)を避け、それらの周囲を排気が通るように設定される。
【0040】
このような構成において、電子装置100が通電され稼働すると、CPU102やSSD104等は発熱して、温度が上昇する。ファン3が稼働し送風することにより、ファンダクト1および筐体110内の気体が流れて換気されるので、CPU102等の熱が奪われ、それらの過熱が防止される。
【0041】
ここで仮に、ファンダクト1が、本実施形態のような分岐壁13およびリブ14を備えない場合、図2のような配置のシミュレーションでは、CPU102は79.7℃、2枚のSSD104はそれぞれ62.6℃と62.1℃になる(このシミュレーションを、以下「シミュレーションA」とする)。
【0042】
上述のシミュレーションに対し、本実施形態のような分岐壁13およびリブ14があると、同様のシミュレーションでは、CPU102は68.9℃、2枚のSSD104はそれぞれ54.2℃と52.3℃になる(このシミュレーションを、以下「シミュレーションB」とする)。
【0043】
ちなみに、分岐壁13のみでリブ14を備えないファンダクト1のシミュレーションでは、CPU102は69.5℃、2枚のSSD104はそれぞれ54.2℃と52.5℃である(このシミュレーションを、以下「シミュレーションC」とする)。つまり、リブ14が設けられている方が、そうでない場合に比べて、放熱効果が高まると言える。
【0044】
上述のシミュレーションA~Cにあたっては、ファン3の風量-静圧特性グラフと電子装置100の通風抵抗グラフとの交点(動作点)が適切な位置になるスペックのファン3を選択し、その上で、リブ14の形状や寸法、分岐壁13の板状部131,132の傾斜角度などを調整した。また、調整にあたっては、ファンダクト1の金型が製作不可能あるいは寿命の短いものとならないよう、現実的な値とした。
【0045】
シミュレーションによれば、シミュレーションA(分岐壁13もリブ14もない)に比べてシミュレーションC(分岐壁13のみでリブ14なし)では、動作点が、風量の多い側に移動した。また、シミュレーションCに比べてシミュレーションB(分岐壁13およびリブ14あり)では、動作点はほぼ変化しないが、最大風速が上昇した。したがって、シミュレーションによれば、分岐壁13を適切に設けることにより少なくとも風量が増加し、また、リブ14を適切に設けることにより少なくとも最大風速が上昇すると言える。これらにより、放熱性能を向上させることができる。
【0046】
このように、第1の実施形態のファンダクト1によれば、ファンダクト1の風下に障害物があってもそれを避けて排気させることができるので、電子装置100の内部に発生する熱を適切に放散することができる。
【0047】
また、本実施形態のように、リブ14の少なくとも先端を含む所定範囲がフィン22の間に差し込まれていると、隣り合うフィン22の間を流れる気体の多くは、フィン22の間から出ないうちに、上下に向けて案内され、分岐する。この場合、リブ14がフィン22の間に差し込まれなくフィン22の下流側に間隔をあけて配置されている場合に比べて、良好な放熱性能を得ることができる。
【0048】
ここで、仮に、リブ14がフィン22の間に差し込まれなくフィン22の下流側に間隔をあけて配置されていると、フィン22の下流側で隣の隙間の気体と合流する。この場合、フィン22の後端で巻き込み渦が生じる等の原因によりロスが出ると考えられる。
【0049】
これに対し、フィン22の下流側で隣の隙間の気体と合流しないうちに分岐させるのであると、ロスの発生を抑え、風速を保ちやすい。これにより、本実施形態のファンダクト1は、リブ14の先端がフィン22の間に至らないものに比べて、放熱性能を向上させることができる。
【0050】
以上、本実施形態によれば、放熱のための送風を行うファン3の風下に障害物(本実施形態では拡張ボード106,107)がある場合に、良好な放熱性能を得られるファンダクト1および当該ファンダクト1を備える電子装置100を提供することができる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、上述した各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のリブ14の山型の縁は、直線状に形成されているが、実施にあたってはこの限りではなく、例えば、頂部141から根元にかけて、ファン3の送風方向に対する傾斜の角度が徐々に大きくなるよう、湾曲または屈曲して形成されていてもよい。そのように構成することにより、リブ14の頂部141が気体の流れに与える抵抗を減らし、放熱性能をさらに向上できる可能性がある。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 …ファンダクト、
11…吸気口、
12,121,122…排気口、
13…分岐壁、131…第1の板状部、132…第2の板状部、
14…リブ、141…頂部、
2 …ヒートシンク、21…台座部、22…フィン、
3 …ファン、
41~43…フレーム、44…弦巻バネ、45…ねじ、
100…電子装置、
101…マザーボード、102…CPU、
103…メモリー、104…SSD、105…ライザーカード、
106,107…拡張ボード、
110…筐体、111…前カバー、112…後カバー、113…I/Oパネル、
151~157…通風孔。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2003-283171号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7