(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022886
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用収容装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240214BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240214BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
B60R7/04 C
B60R7/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126325
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 実
(72)【発明者】
【氏名】向井 貴大
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022CA01
3D022CA07
3D022CC08
3D022CC18
(57)【要約】
【課題】収容部に円板状の金属片が進入した状態で無線給電器が出力した場合でも金属片が発熱することを抑制できる車両用収容装置を提供する。
【解決手段】車両用収容装置11は、底壁14及び右壁18を有するとともに右壁18の内側に電子機器19を収容する収容部12と、右壁18の外側から右壁18越しに電子機器19に無線給電を行う無線給電器13と、を備える。底壁14の内面20における右壁18側の端部には、右壁18に沿って延びる溝21が形成されている。溝21は、無線給電器13から離れるにつれて深さが深くなっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁及び側壁を有するとともに前記側壁の内側に電子機器を収容する収容部と、
前記側壁の外側から前記側壁越しに前記電子機器に無線給電を行う無線給電器と、
を備えた車両用収容装置であって、
前記底壁の内面における前記側壁側の端部には、前記側壁に沿って延びる溝が形成され、
前記溝は、前記無線給電器から離れるにつれて深さが深くなっていることを特徴とする車両用収容装置。
【請求項2】
前記無線給電器は、前記溝の中央部と対応する位置に配置され、
前記溝は、中央部から両端部に向かうにつれて深さが深くなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用収容装置。
【請求項3】
前記底壁は、前記溝側が低くなるように傾斜しており、
前記溝における最も深い部分には、液体を排出する排出孔が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容部に収容された電子機器に無線給電を行うことができる車両用収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用収容装置として、例えば特許文献1に示す収納構造が知られている。こうした収納構造は、電子機器を収納する凹部と、凹部の側面に設けられて凹部に収納された電子機器に対して無線給電を行う無線給電部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように収納構造では、無線給電部が電磁誘導方式の無線給電装置によって構成された場合には、次のような問題がある。すなわち、硬貨などの金属片が凹部に進入して無線給電部に立て掛けられた状態で無線給電部が出力されると、無線給電部のコイルで発生させた磁束が金属片を通過することで金属片に渦電流が流れるので、金属片が発熱してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための車両用収容装置の各態様を記載する。
[態様1]底壁及び側壁を有するとともに前記側壁の内側に電子機器を収容する収容部と、前記側壁の外側から前記側壁越しに前記電子機器に無線給電を行う無線給電器と、を備えた車両用収容装置であって、前記底壁の内面における前記側壁側の端部には、前記側壁に沿って延びる溝が形成され、前記溝は、前記無線給電器から離れるにつれて深さが深くなっていることを特徴とする車両用収容装置。
【0006】
無線給電器が電磁誘導方式のものである場合、収容部内の側壁における無線給電器と対応する位置に例えば硬貨などの円板状の金属片が立て掛けられた状態で、収容部内に電子機器を収容して無線給電器によって電子機器に給電を行うと次のような問題がある。すなわち、無線給電器側のコイルで発生させた磁束が金属片を通過することで金属片に渦電流が流れるので、金属片が発熱してしまうという問題がある。この点、上記構成によれば、収容部内の側壁における無線給電器と対応する位置に円板状の金属片が立て掛けられた場合には、金属片の周縁部の一部が溝に挿入される。すると、溝は無線給電器から離れるにつれて深さが深くなっているため、金属片は重力によって溝を転がって無線給電器から離れる。このため、収容部に円板状の金属片が進入した状態で無線給電器が出力した場合でも金属片が発熱することを抑制できる。
【0007】
[態様2]前記無線給電器は、前記溝の中央部と対応する位置に配置され、前記溝は、中央部から両端部に向かうにつれて深さが深くなっていることを特徴とする[態様1]に記載の車両用収容装置。
【0008】
上記構成によれば、溝は中央部から両端部に向かうにつれて深さが深くなっているため、円板状の金属片が溝の中央部に挿入された場合には、金属片が重力によって溝を転がって溝の両端部のうちのいずれかの端部へ移動される。したがって、金属片が無線給電器から離れるので、収容部に円板状の金属片が収容された状態で収容部に電子機器を収容して無線給電器による電子機器への給電を行っても金属片が発熱することを抑制できる。
【0009】
[態様3]前記底壁は、前記溝側が低くなるように傾斜しており、前記溝における最も深い部分には、液体を排出する排出孔が形成されていることを特徴とする[態様1]または[態様2]に記載の車両用収容装置。
【0010】
上記構成によれば、収容部内に水などの液体が入ってしまった場合、収容部内の液体は、底壁上を重力によって溝へ流れた後、溝を排出孔に向かって流れて排出孔から排出される。したがって、収容部内に液体が入ってしまっても、収容部内に液体が溜まったままになることを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、収容部に円板状の金属片が進入した状態で無線給電器が出力した場合でも金属片が発熱することを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の車両用収容装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、車両用収容装置の一実施形態を図面に従って説明する。以下の記載に関しては、車両の前進方向を前方とするとともに後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味するとともに、車幅方向は車両の左右方向を意味するものとする。
【0014】
<車両用収容装置11>
図1及び
図2に示すように、車両用収容装置11は、例えば、車室内において運転席と助手席との間に配置されたセンターコンソールに組み込まれるようにして設けられている。車両用収容装置11は、収容部12と、無線給電器13とを備えている。
【0015】
<収容部12>
図1及び
図2に示すように、収容部12は、樹脂によって構成されるとともに、上端が開口した前後方向に延びる有底矩形箱状をなしている。つまり、収容部12は、底壁14と、前壁15と、後壁16と、左壁17と、側壁の一例としての右壁18とを有している。底壁14、前壁15、後壁16、左壁17、及び右壁18は、全て矩形状をなしている。
【0016】
底壁14、前壁15、後壁16、左壁17、及び右壁18の内側の空間、すなわち収容部12の内部には、例えばスマートフォンなどの矩形板状の電子機器19が収容される。この場合、電子機器19は、長辺方向が前後方向となる横向きにした姿勢で上端の開口から収容部12内に挿入される。電子機器19は、無線給電に対応している。
【0017】
底壁14の内面20(上面)における右壁18側の端部には、右壁18に沿って前後方向に延びる溝21が形成されている。溝21は、断面視で矩形状をなしている。溝21は、底壁14の内面20における前端から後端にわたって延びている。溝21の底面及び溝21における右壁18側とは反対側の側面は、底壁14によって構成されている。溝21における右壁18側の側面は、右壁18によって構成されている。
【0018】
図1~
図3に示すように、溝21の幅は、例えば500円硬貨などの円板状の金属片22が挿入される程度に設定されている。溝21の深さは、金属片22の周縁部の一部が収容される程度に設定されている。溝21は、前後方向の中央部から両端部に向かうにつれて徐々に深さが深くなっている。
【0019】
溝21における最も深い部分には、収容部12内に入った水などの液体を排出する排出孔23が形成されている。この場合、溝21における最も深い部分は、溝21の前後方向の両端部である。このため、溝21には、前後方向の両端部に1つずつ(合計2つ)の排出孔23が形成されている。
【0020】
図2に示すように、収容部12は、右側へ20°程度傾斜した状態で配置されている。このため、底壁14は、溝21側が低くなるように傾斜した姿勢になっている。そして、電子機器19を収容部12内に収容して右壁18に立て掛けた状態にすると、その状態が重力によって維持される。すなわち、この場合、電子機器19は、重力により一方の面が右壁18の内面に接触した状態で維持される。
【0021】
<無線給電器13及び溝21>
図1~
図3に示すように、無線給電器13は、右壁18における前後方向の中央部の右側(外側)に配置されている。すなわち、無線給電器13は、溝21の前後方向の中央部と対応する位置に配置されている。この場合、上述したように、溝21は、前後方向の中央部から両端部に向かうにつれて徐々に深さが深くなっている。したがって、溝21は、無線給電器13から離れるにつれて深さが徐々に深くなっていると言える。
【0022】
無線給電器13は、右壁18の右側(外側)から右壁18越しに右壁18の内側に収容された電子機器19に対して電磁誘導方式で無線給電を行う。つまり、無線給電器13は、その送信コイル(図示略)と電子機器19の受信コイル(図示略)との間の電磁誘導を利用して電子機器19に対して給電を行う。
【0023】
<車両用収容装置11の作用>
次に、車両用収容装置11の作用について説明する。
図1~
図3に示すように、車両用収容装置11における無線給電器13は、電磁誘導方式のものである。このため、収容部12内の右壁18における無線給電器13と対応する位置に例えば硬貨などの円板状の金属片22が立て掛けられた状態で、収容部12内に電子機器19を収容して無線給電器13によって電子機器19に給電を行うと次のような問題がある。すなわち、無線給電器13側の送信コイルで発生させた磁束が金属片22を通過することで金属片22に渦電流が流れるので、金属片22が発熱してしまうという問題がある。
【0024】
この点、本実施形態の車両用収容装置11では、収容部12内の右壁18における無線給電器13と対応する位置に円板状の金属片22が立て掛けられた場合、金属片22の周縁部の一部が溝21に挿入される。すると、溝21は無線給電器13から離れるにつれて深さが深くなっているため、金属片22は重力によって溝21を転がって無線給電器13から離れる。
【0025】
すなわち、金属片22は、
図3に実線で示す溝21の中央部から
図3に二点鎖線で示す溝21の両端部へ転がるので、無線給電器13から外れた位置へ移動する。このため、収容部12に円板状の金属片22が進入した状態で無線給電器13が出力した場合でも金属片22の発熱が抑制される。
【0026】
また、収容部12内に水などの液体が入ってしまった場合、収容部12内の液体は、重力により底壁14の内面20上を溝21へ向かって流れる。そして、底壁14の内面20上から溝21へ流れ込んだ液体は、重力によって溝21の両端部の排出孔23に向かって流れて排出孔23から排出される。すなわち、収容部12内に液体が入ってしまっても、収容部12内に入った液体は排出孔23から速やかに排出される。このため、収容部12内に液体が溜まったままになることが抑制される。したがって、収容部12内に収容した物品が水などの液体に濡れることが抑制される。
【0027】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)車両用収容装置11は、底壁14及び右壁18を有するとともに右壁18の内側に電子機器19を収容する収容部12と、右壁18の外側から右壁18越しに電子機器19に無線給電を行う無線給電器13と、を備える。底壁14の内面20における右壁18側の端部には、右壁18に沿って延びる溝21が形成されている。溝21は、無線給電器13から離れるにつれて深さが深くなっている。
【0028】
上記構成によれば、収容部12内の右壁18における無線給電器13と対応する位置に円板状の金属片22が立て掛けられた場合には、金属片22の周縁部の一部が溝21に挿入される。すると、溝21は無線給電器13から離れるにつれて深さが深くなっているため、金属片22は重力によって溝21を転がって無線給電器13から離れる。このため、収容部12に円板状の金属片22が進入した状態で無線給電器13が出力した場合でも金属片22が発熱することを抑制できる。
【0029】
(2)車両用収容装置11において、無線給電器13は、溝21の中央部と対応する位置に配置されている。溝21は、中央部から両端部に向かうにつれて深さが深くなっている。
【0030】
上記構成によれば、溝21は中央部から両端部に向かうにつれて深さが深くなっているため、円板状の金属片22が溝21の中央部に挿入された場合には、金属片22が重力によって溝21を転がって溝21の両端部のうちのいずれかの端部へ移動される。したがって、金属片22が無線給電器13から離れるので、収容部12に円板状の金属片22が収容された状態で収容部12に電子機器19を収容して無線給電器13による電子機器19への給電を行っても金属片22が発熱することを抑制できる。
【0031】
(3)車両用収容装置11において、底壁14は、溝21側が低くなるように傾斜している。溝21における最も深い部分には、液体を排出する排出孔23が形成されている。
上記構成によれば、収容部12内に水などの液体が入ってしまった場合、収容部12内の液体は、底壁14の内面20上を重力によって溝21へ流れた後、溝21を排出孔23に向かって流れて排出孔23から排出される。したがって、収容部12内に液体が入ってしまっても、収容部12内に液体が溜まったままになることを抑制できる。
【0032】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0033】
・
図4に示すように、車両用収容装置11は、以下のように変更してもよい。すなわち、溝21を前端から後端に向かうほど徐々に深くなるように構成する。無線給電器13を溝21における前後方向の中央部よりも前寄りの位置と対応する位置に配置する。溝21には最も深い部分となる後端部に液体を排出する排出孔23を1つだけ形成する。このように構成しても、上記(1)及び上記(3)と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
・上記
図4の車両用収容装置11において排出孔23を省略してもよい。
・底壁14は、必ずしも溝21側が低くなるように傾斜させる必要はない。
・2つの排出孔23のうち少なくとも一方を省略してもよい。
【0035】
・溝21に形成する排出孔23の数及び位置は、適宜変更してもよい。
・車両用収容装置11は、センターコンソールに限らず、ドアトリムやインストルメントパネルなどに設けてもよい。
【符号の説明】
【0036】
11…車両用収容装置
12…収容部
13…無線給電器
14…底壁
15…前壁
16…後壁
17…左壁
18…側壁の一例としての右壁
19…電子機器
20…内面
21…溝
22…金属片
23…排出孔