(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022887
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】荷物搬送装置、荷物搬送方法
(51)【国際特許分類】
B62D 51/06 20060101AFI20240214BHJP
B65G 67/04 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
B62D51/06 E
B62D51/06 B
B62D51/06 Z
B65G67/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126326
(22)【出願日】2022-08-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【テーマコード(参考)】
3F076
【Fターム(参考)】
3F076BA05
3F076CA03
3F076DB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、狭隘なスペースでの取扱いが容易で、軽量で、且つ、駆動輪と床面との摩擦力を調節可能な荷物搬送装置及び荷物搬送方法の提供を目的とする。
【解決手段】荷物搬送装置10は、フレーム32と、フレーム32に取り付けられ、荷物74の移動方向の前方又は後方の少なくとも一方向において荷物74に係合可能な係合部と、フレーム32に取り付けられ、駆動部から供給された駆動力によってフレーム32を自走させる駆動輪36と、フレーム32における、駆動輪36に対して支柱部40とは反対側に設けられ、錘52を載せることが可能とされた錘載せ部50と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、荷物の移動方向の前方又は後方の少なくとも一方向において前記荷物に係合可能な係合部と、
前記フレームに取り付けられ、駆動部から供給された駆動力によって前記フレームを自走させる駆動輪と、
前記フレームにおける、前記駆動輪に対して前記係合部とは反対側に設けられ、錘を載せることが可能とされた錘載せ部と、
を備える、荷物搬送装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記フレームが前記駆動輪を中心として傾動することで前記荷物に引っ掛かる爪部を有している、
請求項1に記載の荷物搬送装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記前方に対して直交する方向に延びる梁部を有し、前記梁部が、前記荷物を押圧して前記前方に荷物を搬送する、
請求項1に記載の荷物搬送装置。
【請求項4】
前記駆動部は、バッテリーをエネルギー源とするモータである、
請求項1に記載の荷物搬送装置。
【請求項5】
前記フレームにおける前記駆動輪より前記錘載せ部側に、前記フレームが傾動し前記錘載せ部が所定位置まで下がった場合に床面に接触可能な補助輪を備える、
請求項1~請求項4までのいずれか一項に記載の荷物搬送装置。
【請求項6】
フレームと、前記フレームに取り付けられ、荷物の移動方向の前方又は後方の少なくとも一方向において前記荷物に係合可能な係合部と、前記フレームに取り付けられ、駆動部から供給された駆動力によって前記フレームを自走させる駆動輪と、前記フレームにおける、前記駆動輪に対して前記係合部とは反対側に設けられ、錘を載せることが可能とされた錘載せ部と、を備えた荷物搬送装置を用い、
前記荷物搬送装置と錘を、荷物が配置された床面上に配置するステップと、
前記荷物の係合部位に前記係合部を近づけるステップと、
前記荷物と前記係合部とを係合させ、かつ、前記錘載せ部に錘を載せるステップと、
前記荷物搬送装置を操作して前記荷物を移動させるステップと、
を有する荷物搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物搬送装置及び荷物搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を搬送する搬送装置として、例えば特許文献1には、電動モータによって回転させる駆動輪を備え、車軸を車体に対してローリング自在に取付け、路面の傾斜または凹凸に追従して駆動輪を昇降させることができ、駆動輪を接地維持して空転(スリップ)を防止できるハンドリフトトラックが開示されている。
【0003】
また、特許文献1には、車軸フレームにアームを介してウエイトを固設させることで、テコ作用によってウエイト重量又はガススプリングの力を増幅させた圧力で駆動輪を接地維持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、物流業界における荷役作業の現場において、自動荷役設備やクレーン等が完備した物流センターなど大規模施設を除き、例えば、トラックの荷台に荷物を積み込む際に、荷台後端にフォークリフトなどで荷物を載せた後、荷台の奥部に荷物を移動させる作業、或いは、逆にトラックの荷台から荷物を卸す際に、荷台の奥部からフォークリフトなどで荷物を扱える荷台端部まで荷物を移動させる作業は、作業者の人力に多くを依存しているのが実情である。一方、このような人手による荷物運搬作業の負担を軽減する搬送機器として、例えば、ハンドリフターや台車などがあり、更に、特許文献1に開示されているような駆動輪を設けて労力軽減を図っているものもある。しかし、これら従来技術は、原理的に、荷物を一旦地面若しくは床面から持ち上げて機器荷台に載せた上で、機器の車輪によって移動することにより、労力軽減する形態のものである。このため、例えばハンドリフターであれば荷台としてのフォークを、台車であれば荷台を必然的に備える必要があり、機器による運搬効率を考えれば、フォークの長さや荷台のサイズがある程度大きくなることは避けられない。また、荷物を載せて運搬する以上、耐荷重性、安全性の観点から、一定の堅牢性が要求され、それに伴って、機器の全重量が重くなることも避けられない。このため、従来技術の搬送機器は、例えばトラック荷台上での荷物の移動に用いようとすれば、先ず、このような搬送機器をトラック荷台上に持ち上げること自体が、大きな労力を要し、且つ、安全性のリスクが大きい。また、荷台上に持ち上げた後でも、機器サイズに起因して、自在な荷物運搬活動が制約されるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の構成によれば、梃子作用に利用するウエイトが固設されており、床面、地面又は路面(以下、併せて「床面」と総称する。)の粗度や荷重等の使用状況に合わせたウエイト重量の調節が随時できない。従って、広範な使用状況に対応可能にするため、固設するウエイトも余裕を持たせて重くする必要があり、ハンドリフトトラック自体が大型化され、トラックの荷台の床面へのハンドリフトトラックの上げ下ろしが困難である等、使用可能な状況が限定されという問題を有していた。
【0007】
本発明は、狭隘なスペースでの取扱いが容易で、軽量で、且つ、駆動輪と床面とのスリップを抑制する摩擦力を調節可能な荷物搬送装置及び荷物搬送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様の荷物搬送装置は、フレームと、前記フレームに取り付けられ、荷物の移動方向の前方又は後方の少なくとも一方向において前記荷物に係合可能な係合部と、前記フレームに取り付けられ、駆動部から供給された駆動力によって前記フレームを自走させる駆動輪と、前記フレームにおける、前記駆動輪に対して前記係合部とは反対側に設けられ、錘を載せることが可能とされた錘載せ部と、を備える。
【0009】
この荷物搬送装置では、フレームは、駆動輪に対して係合部とは反対側に錘載せ部を備えており、係合部付近を支点、錘載せ部を力点、駆動輪を作用点とする梃子が構成されている。このため、錘載せ部に錘を載せた場合、錘の荷重を増幅させて駆動輪に作用させることができる。また、錘載せ部に載せる錘の重量によって、梃子作用による路面と駆動輪との摩擦力を調整することもできる。
【0010】
これにより、錘載せ部に載せる錘の重量を適宜選ぶことによって、床面と駆動輪との摩擦力を調整し、余分な錘を載せることなく比較的軽い錘によって駆動輪の空転を抑制することが可能となり、また、荷物搬送装置自体の重量増を抑制可能となる。つまり、荷物搬送装置と錘とを別々に構成することで、荷物搬送装置自体を軽量化できる。このため、トラックの荷台の床面への荷物搬送装置の上げ下ろし等、荷物搬送装置の取扱いが容易となる。
【0011】
第二態様の荷物搬送装置は、第一態様の荷物搬送装置において、前記係合部は、前記フレームが前記駆動輪を中心として傾動することで前記荷物に引っ掛かる爪部を有している。
【0012】
係合部は、フレームが駆動輪を中心として傾動することで荷物に引っ掛かる爪部を有しているため、簡易な構成で係合部と荷物との係合状態を切り替えることが可能な荷物搬送装置を得ることができる。
【0013】
第三態様の荷物搬送装置は、第一態様又は第二態様の荷物搬送装置において、前記係合部は、前記前方に対して直交する方向に延びる梁部を有している。
【0014】
係合部は、前方に対して直交する方向に延びる梁部を有しているため、簡易な構成で荷物側面を幅方向に亘って均等に押圧して荷物を前方に搬送することが可能な荷物搬送装置を得ることができる。
【0015】
第四態様の荷物搬送装置は、第一態様から第三態様までのいずれか一態様の荷物搬送装置において、前記駆動部は、バッテリーをエネルギー源とするモータである。
【0016】
駆動部は、バッテリーをエネルギー源とするモータであるため、ガソリン等をエネルギー源とする内燃機関に比べ、軽量化した荷物搬送装置を得ることができ、また、モータを用いる場合であっても、バッテリーを用いるため、外部電源をエネルギー源とする場合に比べ、外部電源が近くにない場所でも運用可能な荷物搬送装置を得ることができる。また、バッテリーとモータの接続は脱着が容易であるため、使用時以外には取り外しておけば、荷物搬送装置を人力で持ち運ぶことが容易になる。また、バッテリーとモータはケーブルで接続されるため、荷物搬送装置上のバッテリーの位置は任意に選べるので、バッテリーを錘載せ部に置いて錘としても利用することができ、用意する錘の量を節約できる。
【0017】
第五態様の荷物搬送装置は、第一態様から第四態様までのいずれか一態様の荷物搬送装置において、前記フレームにおける前記駆動輪より前記錘載せ部側に、前記フレームが傾動し前記錘載せ部が所定位置まで下がった場合に床面に接触可能な補助輪を備える。
【0018】
錘載せ部に錘を載せた状態で、補助輪が床面と接触してフレームを支えるため、錘を載せる場合に荷物搬送装置が荷物とは反対側に傾き過ぎてフレームが床面に接触し、操作に困難を来すことを防止できる。
【0019】
第六態様の荷物搬送方法は、フレームと、前記フレームに取り付けられ、荷物の移動方向の前方又は後方の少なくとも一方向において前記荷物に係合可能な係合部と、前記フレームに取り付けられ、駆動部から供給された駆動力によって前記フレームを自走させる駆動輪と、前記フレームにおける、前記駆動輪に対して前記係合部とは反対側に設けられ、錘を載せることが可能とされた錘載せ部と、を備えた荷物搬送装置を用い、前記荷物搬送装置と錘を、荷物が配置された床面上に配置するステップと、前記荷物の係合部位に前記係合部を近づけるステップと、前記荷物と前記係合部とを係合させ、かつ、前記錘載せ部に錘を載せるステップと、前記荷物搬送装置を操作して前記荷物を移動させるステップと、を有する。
【0020】
荷物搬送装置と錘とを別々に構成することで、駆動輪と床面との摩擦力を錘載せ部に載せる錘の重量による梃子作用によって調節可能とする荷物搬送装置を用いることにより、錘を除いた荷物搬送装置自体を軽量化できるため、トラックの荷台の床面への荷物搬送装置の上げ下ろし等、荷物搬送装置の取扱いが容易な荷物搬送方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、狭隘なスペースでの取扱いが容易で、軽量で、駆動輪と床面とのスリップを抑制する摩擦力を調節可能な荷物搬送装置及び荷物搬送方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一実施形態に係る荷物搬送装置を説明する側面図である。
【
図2】第一実施形態に係る荷物搬送装置を説明する平面図である。
【
図3】第一実施形態に係る荷物搬送装置を用いた荷物搬送方法を、一部を破断して説明する側面図である。
【
図4】第一実施形態に係る荷物搬送装置を荷物に近づけるステップを説明する側面図である。
【
図5】第一実施形態に係る荷物搬送装置を荷物に近づけるステップを説明する平面図である。
【
図6】第一実施形態に係る荷物搬送装置と荷物とを係合させるステップを説明する側面図である。
【
図7】第一実施形態に係る荷物搬送装置と荷物とを係合させるステップを説明する平面図である。
【
図8】第二実施形態に係る荷物搬送装置を説明する側面図である。
【
図9】第二実施形態に係る荷物搬送装置を説明する平面図である。
【
図10】第二実施形態に係る荷物搬送装置と荷物とを係合させるステップを説明する側面図である。
【
図11】第二実施形態に係る荷物搬送装置と荷物とを係合させるステップを説明する平面図である。
【
図12】第三実施形態に係る荷物搬送装置を説明する側面図である。
【
図13】第三実施形態に係る荷物搬送装置を説明する平面図である。
【
図14】第三実施形態に係る荷物搬送装置と荷物とを係合させるステップを説明する側面図である。
【
図15】第三実施形態に係る荷物搬送装置と荷物とを係合させるステップを説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本開示の各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
また、本開示における各図に示す矢印UPは、鉛直方向であって荷物搬送装置10の上方向を示し、矢印LHは、水平方向であって荷物搬送装置10の幅方向左方向を示し、矢印RHは、水平方向であって荷物搬送装置10の幅方向右方向を示し、矢印FRは、水平方向であって荷物搬送装置10の前方向を示し、矢印RRは、水平方向であって荷物搬送装置10の後方向を示す。
【0025】
また、本開示における説明では、「上下方向」を、「上方向及び下方向の両方向」又は「上方向及び下方向のいずれか一方向」という意味で用いる場合がある。「左右方向」を、「右方向及び左方向の両方向」又は「右方向及び左方向のいずれか一方向」という意味で用いる場合がある。なお、「左右方向」は、横方向、水平方向ともいえる。「前後方向」を、「前方向及び後方向の両方向」又は「前方向及び後方向のいずれか一方向」という意味で用いる場合がある。なお、「前後方向」は、横方向、水平方向ともいえる。また、上下方向、左右方向、前後方向は、互いに交差する方向(具体的には、直交する方向)である。
【0026】
なお、本開示において、本発明に係る荷物搬送装置の「前方」とは、荷物の移動方向における水平方向のいずれか一方向を示し、「後方」とは、荷物の移動方向における前方とは反対方向を示す。また、本発明の実施形態の説明では、
図1に示すように、荷物搬送装置の主たる進行方向と、前後方向とが一致し、荷物搬送装置における係合部を有する方向を「前方」としている。
【0027】
なお、本開示における説明において、「作業者」は、特定の人物に限定されない。すなわち、「作業者」は、一人で荷物搬送作業を行ってもよく、複数人で荷物搬送作業を行ってもよい。
【0028】
<第一実施形態>
図1から
図7は、本発明に係る荷物搬送装置の第一実施形態を示す図である。
【0029】
(構成)
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る荷物搬送装置10は、フレーム32と、係合部としての支柱部40及びその先端部に設けた爪部42と、モータ34と、駆動輪36と、補助輪38と、操作部44と、錘載せ部50と、を有している。
【0030】
本実施形態に係るフレーム32は、支柱部40、モータ34、駆動輪36、補助輪38及び錘載せ部50を取り付け可能な、上下方向、前後方向及び左右方向に所要の長さを有する筐体である。
【0031】
本実施形態に係る支柱部40は、フレーム32から前方に延出するように設けられた部分であり、本発明における「係合部」の一例である。
【0032】
なお、支柱部40は、後述する荷物74のパレット76と係合が可能とされていればどのような形状でもよい。また、本実施形態では、支柱部40が延出する長さは、パレット76の脚柱82の前後方向の幅よりも長く、支柱部40をパレット76の差込口84に差し込んだ際、爪部42がパレット76のメッシュ領域80に届くようになっている。
【0033】
また、本実施形態に係る支柱部40は、フレーム32の前方において左右に一対設けられている。また、左右それぞれの支柱部40は、フレーム32に対する支柱部40の取り付け位置において、作業者が間隔を任意に調節することが可能とされている(間隔調節手段の図示省略)。
【0034】
また、本実施形態では、左右一対の支柱部40は、それぞれ前方の先端に、上方に向かって突出する爪部42を有している。
【0035】
本実施形態に係る爪部42は、支柱部40よりも上方に向かって突き出す突起状の部分であり、後述するように、荷物搬送装置10が傾動した状態で、パレット76のメッシュ領域80に内側から引っ掛かることが可能とされている。なお、本発明では、爪部の形状は、パレットのメッシュ領域に引っ掛かることが可能とされていればどのような形状でもよい。
【0036】
本実施形態に係るモータ34は、フレーム32の内部に取り付けられ、駆動輪36に駆動力を供給する部品であり、本発明における「駆動部」の一例である。なお、本発明に係るモータは、駆動輪に駆動力を供給することができればどのような物でもよいが、本実施形態では、左右方向に軸が延出した軸貫通式モータであり、フレーム32の内部で、左右方向の中央に取り付けられている。また、モータ34から延出した軸の左右のそれぞれの端部には、駆動輪36が接続されている。
【0037】
本実施形態に係る駆動輪36は、フレーム32の下方で左右の端に取り付けられると共に上述のモータ34から延出する軸の左右の端に接続され、軸を介してモータ34から供給された駆動力によってフレーム32を自走させることが可能とされた車輪である。なお、本発明では、駆動輪は、フレームを自走可能とすればどのような種類の物でもよく、例えば、ノーパンクタイヤが採用されてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、
図1及び
図2に示されるように、モータ34の個数が一つとされ、左右一対の駆動輪36がモータ34から延出する軸に取り付けられているが、本発明では、モータの数及び駆動輪の数は、これに限られず適宜設定されてよく、また、モータの軸と駆動輪はギア等の動力伝達機構を介して接続されてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、駆動輪36は、モータ34から左右に延出する軸に直接に接続されることで、駆動輪36の軸心がフレーム32に固定された、いわゆる固定輪とされているが、本発明では、これに限らず、例えば、軸心がフレーム32に対して水平方向に向きを変えることが可能とされた、いわゆる操舵輪を兼ねていてもよい。
【0040】
本実施形態に係る補助輪38は、フレーム32の下方で左右方向の中央、かつ、駆動輪36よりも後方に取り付けられた、駆動輪36よりも小径の車輪である。また、本実施形態では、
図1に示されるように、補助輪38は、フレーム32の上面が水平となった状態で、床面72に接触しないようになっている。
【0041】
なお、本実施形態では、補助輪38は、
図2に示されるように、左右方向の中央に一つだけ設けられているが、本発明では、補助輪の数は、これに限られず適宜設定されてよい。
【0042】
なお、本実施形態では、補助輪38は、軸心が水平方向における左右方向以外を向くことが可能とされた、いわゆる自在輪とされているが、本発明では、これに限らず、いわゆる固定輪とされていてもよく、また、駆動輪と同様に、例えば、モータから動力伝達機構を介して駆動力を供給されることによって、フレームを自走させることが可能な補助駆動輪とされていてもよい。
【0043】
本実施形態に係る操作部44は、フレーム32の上面から上方に延出する部分であり、後述する荷物搬送作業を行う際に、作業者によって操作される。また、操作部44は、制御部(図示省略)を有しており、荷物搬送作業を行う際に制御部が荷物搬送装置10の前進及び後退や、荷物搬送装置10の停止等の動作を制御する。
【0044】
なお、本実施形態では、
図1及び
図2に示されるように、操作部44は、フレーム32の上面から延出しているが、本発明では、これに限らず、例えば、作業者が無線通信することで荷物搬送装置の制御を行うことも可能で、その場合、操作部は、フレームとは別体とされていてもよい。
【0045】
本実施形態に係る錘載せ部50は、フレーム32の上面において、フレーム32に対して駆動輪36よりも後方に設けられた、後述する錘52及びバッテリー54を載せる部分である(
図3、
図6、
図7も参照)。また、本実施形態では、錘載せ部50にはバッテリー54の接続部(図示省略)が設けられており、バッテリー54を錘載せ部50に載せた状態では、バッテリー54からモータ34にエネルギーが供給される。なお、バッテリー54と接続部とは、ケーブルで接続可能とされており、フレーム32の上面においてバッテリー54は、接続部と接続したまま位置を任意に選ぶことが可能とされている。
【0046】
なお、本発明では、錘載せ部は、フレームに対して、駆動部よりも後方とされ、錘及びバッテリーを載せることが可能であれば、その形状を特に限定されない。すなわち、本実施形態を示す
図1及び
図2においては、フレーム32の上面が平面とされているが、本発明では、これに限らず、錘及びバッテリーの形状に合わせて適宜設計されてもよい。
【0047】
また、本発明では、錘は、錘載せ部に載せることが可能であればどのような形状でもよいが、本実施形態では、錘52は、
図3に示されるように、略直方体状とされている。
【0048】
なお、本実施形態における荷物搬送装置10は、錘52及びバッテリー54が錘載せ部50に載せられていない放置状態では、重心が駆動輪の軸心より前方にあり、駆動輪36の軸心を中心として前傾する方向に回転し、支柱部40が床面72と接触するようになっている。また、錘52及びバッテリー54が錘載せ部50に載せられた放置状態では、重心が後方に移動しているため、後傾する方向に回転し、補助輪38が床面と接触するようになっている。すなわち、荷物搬送装置10の支柱部40は、このような前傾及び後傾の動きを利用して爪部42を下方から上方に動かし、パレット76に対して爪部42を係合する(
図3、
図6、
図7も参照)。
【0049】
また、本実施形態における荷物搬送装置10は、錘載せ部50に錘52及びバッテリー54を載せることで、駆動輪36の軸心を中心にして後傾方向に回転する回転力が与えられる。すなわち、本実施形態における錘載せ部50は、錘52を載せること及び降ろすことにより、荷物搬送装置10の後傾及び前傾の両方の動作を可能とする働きがある。なお、本発明では、荷物搬送装置の前傾及び後傾の動作について、このような錘の重量バランスによることに加え、作業者が力を添えて前傾又は後傾の動きを調整することを妨げられない。
【0050】
次に本実施形態における荷物搬送装置10が使用される様子及び、荷物搬送装置10を用いた荷物搬送方法を、
図3から
図7を適宜参照しながら説明する。なお、
図5及び
図7では、積載物86の図示を省略している。
【0051】
(荷物搬送装置が使用される様子)
図3に示されるように、本実施形態に係る荷物搬送装置10は、トラック70の荷台71の狭隘な箇所に配置された荷物74の搬送に用いられている。なお、本実施形態におけるトラック70の荷台71は、本発明における「床面」の一例である。
【0052】
図3に示されるように、本実施形態において、荷物74は、パレット76と、パレット76の上に載置された積載物86と、パレット76とトラック70の荷台71との間に配置されたスライダーボード90と、を有している。
【0053】
本実施形態におけるパレット76は、
図3及び
図4に示されるように、フォークリフトのフォークが挿入される差込口84が四方に形成された、上面視で略正方形の上板78を有する樹脂製の枠体である。
【0054】
また、
図5に示されるように、本実施形態におけるパレット76は、上方から視て、四方の辺、角、及び中央の計9カ所に脚柱82を有している。脚柱82は、上板78に載せられる積載物86の荷重を支えるための十分な強度を有している。また、パレット76の上板78において、上方から視て脚柱82及び差込口84と重ならない部分は、パレット76自体の重量を低減させるため、網状にリブが形成され、爪部42を差し込んで引っ掛けることができる網目(図示省略)を有するメッシュ領域80とされている。なお、本発明では、これに限らず、例えば、パレットにおける差込口の周壁の厚さよりメッシュ領域の厚さを薄くし、差込口とメッシュ領域との境目に段差を設け、その段差に爪部を引っ掛けることで荷物搬送装置と荷物を係合できるようにし、必ずしもメッシュ領域に網目を設けなくてもよいようにしてもよい。
【0055】
本実施形態における積載物86は、
図3及び
図4に示されるように、複数の箱より成り、パレット76の上板78に積み重ねて載置されている。なお、本発明では、これに限らず、積載物の荷姿は、パレットの上板に載置可能な形状及び重量であれば、どのような物が載置されていてもよい。
【0056】
本実施形態におけるスライダーボード90は、下面に床面72との摩擦力が低下するように凹凸が形成され、上面にパレット76との摩擦力が増加するように滑り止め部が形成された、合成樹脂製の板状の部品である。すなわち、パレット76は、スライダーボード90を介して床面72に接しているため、スライダーボード90を有していない場合と比して床面72との摩擦力が低減する。なお、本発明における荷物搬送方法においては、これに限らず、例えば、床面の状態に応じてスライダーボードを有していない構成としてもよく、或いは、荷物の搬送経路に沿って予めスライダーボードを全面敷設しておいてもよい。
【0057】
続いて、本実施形態の荷物搬送装置10を用いた荷物搬送方法を説明する。本実施形態に係る荷物搬送方法では、荷物搬送装置10と錘52を、荷物74が配置された床面72上に配置するステップと、荷物74の係合部位に係合部としての支柱部40を近づけるステップと、錘載せ部50に錘52を載せ、荷物74の係合部位と支柱部40の先端の爪部42とを係合させるステップと、荷物搬送装置10を操作して荷物74を移動させるステップと、を有する。
【0058】
(荷物搬送装置と錘を、荷物が配置された床面上に配置するステップ)
まず、荷物搬送装置10と錘52を、荷物74が配置された床面72上に配置するステップでは、作業者は、予め搬送開始位置の床面72に置かれている荷物74と同じ高さの床面72上に、荷物搬送装置10と、錘52と、錘としても用いられるバッテリー54とを配置する。より具体的には、
図3の実線で示される様に、トラック70の荷台71に荷物74が予め配置された状態において、荷物搬送装置10、錘52及びバッテリー54をトラック70の荷台71に載せる。なお、本実施形態では、荷物搬送装置10は、トラック70の荷台71において、荷物74の後方に配置されているが、本発明では、荷物の前方に荷物搬送装置を配置するスペースがある場合、荷物搬送装置を荷物の前方に配置して荷物を搬送することを妨げられない。
【0059】
(荷物の係合部位に係合部を近づけるステップ)
次に、荷物74の係合部位に係合部としての支柱部40を近づけるステップでは、
図4及び
図5に示されるように、作業者は、荷物搬送装置10の支柱部40を、荷物74に近づける。より具体的には、
図4及び
図5に示されるように、荷物搬送装置10の左右一対の支柱部40を、パレット76の後方側の差込口84にそれぞれ差込む。
【0060】
なお、本実施形態では、
図5に示されるように、パレット76の差込口84に支柱部40を差込んだ状態では、上面視ではメッシュ領域80と爪部42とが重なり、メッシュ領域80の網目(図示省略)に爪部42を引っ掛けることができる状態となる。
【0061】
(錘載せ部に錘を載せ、荷物の係合部位と係合部とを係合させるステップ)
次に、錘載せ部50に錘52を載せ、荷物74の係合部位と係合部とを爪部42により係合させるステップでは、作業者は、
図6及び
図7に示されるように、荷物搬送装置10の錘載せ部50に、錘52とバッテリー54とを載せる。
【0062】
図6に示されるように、錘載せ部50に錘52とバッテリー54が載せられた状態では、荷物搬送装置10は、駆動輪36の軸心を中心として矢印R方向に後傾する。
【0063】
また、本実施形態では、この段階で、
図6に示されるように、メッシュ領域80の網目(図示省略)に爪部42が入り込んで引っ掛かることにより、パレット76と支柱部40とが係合する。また、この状態では、メッシュ領域80の網目(図示省略)に爪部42が引っ掛かって固定されるため、爪部42を支点、錘載せ部50を力点、駆動輪36を作用点とする第二種の梃子が形成され、この梃子作用により、錘載せ部50に錘52を載せると、荷物搬送装置10及び錘52の自重以上の力で駆動輪36が床面72に押し付けられる。
【0064】
なお、本実施形態において、錘52は、錘載せ部50に載せた状態で駆動輪36に鉛直方向下方に向かう荷重を十分に与え、駆動輪36と床面72とのスリップを抑制する摩擦力を生じることができる程度に質量を有している。なお、本発明では、錘の質量は、係合部と駆動輪と錘載せ部とで形成される梃子の作用により荷物の係合部位に加わる上向きの力で荷物が床面から浮き上がらず、かつ、駆動輪と床面とのスリップを抑制することができる範囲である限り、特に制限はないが、必要以上の質量の錘を載せるとモータの負荷が増えるので、駆動輪の空転の状態に応じて必要最低限の質量とすることが望ましい。
【0065】
また、本実施形態では、
図7に示すように、錘載せ部50には1つのバッテリー54と2つの錘52が載せられているが、本発明では、錘載せ部に載せるバッテリー及び錘の個数は、特に限定されない。
【0066】
また、
図6及び
図7に示すように、本実施要形態ではバッテリー54と錘52とが別体とされているが、本発明では、これに限らず、バッテリーと錘とが一体に組み合わされていてもよい。また、錘載せ部には、錘を用いずにバッテリーのみを載せることで荷物搬送装置を後傾させ、梃子を形成してもよい。すなわち、本実施形態におけるバッテリー54は、本発明に係る「錘」の一例とされていてもよい。また、本発明では、錘載せ部に作業者が体重を加えることにより、体重を「錘」として用いてもよい。
【0067】
(荷物搬送装置を操作して荷物を移動させるステップ)
次に、荷物搬送装置10を操作して荷物74を移動させるステップでは、作業者は、錘載せ部50に錘52が載せられた状態で、荷物搬送装置10を操作し、荷物搬送装置10を移動させることによって、係合されている荷物74を移動させる。より具体的には、錘載せ部50に錘52が載せられた状態で、作業者が荷物搬送装置10を操作して後方に移動させ、係合されている荷物74を、
図3における実線で示された位置から後方に向けて牽引することにより、荷物74は、床面72上を摺動させられて、
図3における二点鎖線で示された位置へと搬送される。
【0068】
なお、荷物74の搬送が完了した後、作業者は、荷物搬送装置10の載せ部から錘52及びバッテリー54を床面上に降ろすことによって、爪部42のメッシュ領域80への係合、及び梃子の形成が解除させる。そして、作業者は、荷物搬送装置10、錘52及びバッテリー54をトラック70の荷台71から降ろし、次の荷物74の搬送に備える。なお、本発明では、これに限らず、荷物搬送完了後に、必ずしも錘及びバッテリーを全て錘載せ部から降ろす必要はなく、作業者が人力を加えることにより爪部の係合を解除できる範囲で錘及びバッテリーの一部を錘載せ部に残し、次回作業における作業者の手間を省くことを妨げられない。
【0069】
(作用及び効果)
本実施形態の荷物搬送装置10では、次に示す作用及び効果を得ることができる。
【0070】
一般に、
図3に示すように、床面上の摺動によって荷物を移動させる場合、荷物の下面と床面との摩擦力が一定以上大きいときには、荷物搬送装置を操作して荷物を牽引しようとしても、荷物搬送装置の駆動輪が床面上で空転し、荷物を牽引することができない。
【0071】
ここで、本実施形態の荷物搬送装置10は、フレーム32と、フレーム32に取り付けられ、荷物74の後方から荷物74に係合可能な支柱部40と、フレーム32に取り付けられ、モータ34から供給された駆動力によってフレーム32を自走させる駆動輪36と、フレーム32における、駆動輪36に対して支柱部40とは反対側に設けられ、錘52を載せることが可能とされた錘載せ部50と、を備える。
【0072】
この荷物搬送装置10では、フレーム32は、駆動輪36に対して支柱部40とは反対側に錘載せ部50を備えており、支柱部40付近を支点、錘載せ部50を力点、駆動輪36を作用点とする梃子が構成されている。錘載せ部50に錘52を載せた場合、この錘52の荷重を増幅させて駆動輪36に作用させることができる。また、錘載せ部50に載せられる錘52の重量によって、梃子作用による床面72と駆動輪36との摩擦力を調整する。
【0073】
荷物搬送装置10の支柱部40付近、駆動輪36及び錘載せ部50により形成される梃子作用により、錘載せ部50に載せる錘52の重量によって床面72と駆動輪36とのスリップを抑制する摩擦力が調整可能となり、これにより、荷物搬送装置10の自重によってスリップ抑制の摩擦力を得る場合に比べ、荷物搬送装置10自体の重量増を抑制可能となる。つまり、荷物搬送装置10と錘52とを別々に構成することで、荷物搬送装置10自体を軽量化できる。このため、トラック70の荷台71の床面72への荷物搬送装置10の上げ下ろし等、荷物搬送装置10の取扱いが容易となる。
【0074】
また、本実施形態の荷物搬送装置10の支柱部40は、フレーム32が駆動輪36を中心として傾動することで荷物74の係合部位に引っ掛かる爪部42を有している。
【0075】
爪部42は、フレーム32が駆動輪36を中心として後傾するだけで荷物74の係合部位に引っ掛かるため、簡易な構成で支柱部40と荷物74との係合状態を切り替えることが可能となっている。
【0076】
また、本実施形態の荷物搬送装置10の駆動部は、バッテリー54をエネルギー源とするモータ34である。
【0077】
モータ34は、バッテリー54をエネルギー源とするため、ガソリン等をエネルギー源とする内燃機関に比べ、軽量化した荷物搬送装置10を得ることができ、また、モータ34を用いる場合であっても、バッテリー54を用いるため、外部電源をエネルギー源とする場合に比べ、外部電源が近くにない場所でも運用可能となる。
【0078】
また、バッテリー54とモータ34の接続は脱着が容易であるため、使用時以外には取り外しておけば、荷物搬送装置10を人力で持ち運ぶことが容易になる。また、バッテリー54とモータ34はケーブルで接続されるため、荷物搬送装置10上のバッテリー54の位置は任意に選べるので、バッテリー54を錘載せ部50に置いて錘52としても利用することができ、用意する錘52の量を節約できる。
【0079】
また、本実施形態の荷物搬送装置10は、フレーム32における駆動輪36より錘載せ部50側に、フレーム32が後傾し錘載せ部50が所定位置まで下がった場合に床面72に接触する補助輪38を備える。また言い換えれば、補助輪38は、床面72に接触可能であるといえる。
【0080】
錘載せ部50に錘52を載せた状態で、補助輪38が床面72と接触してフレーム32を支えるため、錘52を載せる場合に荷物搬送装置10が荷物74とは反対側に傾き過ぎてフレームが床面に接触し、操作に困難を来すことを防止できる。
【0081】
また、本実施形態の荷物搬送方法は、フレーム32と、フレーム32に取り付けられ、荷物74の後方において荷物74に係合可能な支柱部40と、フレーム32に取り付けられ、モータ34から供給された駆動力によってフレーム32を自走させる駆動輪36と、フレーム32における、駆動輪36に対して支柱部40とは反対側に設けられ、錘52を載せることが可能とされた錘載せ部50と、を備えた荷物搬送装置10を用い、荷物搬送装置10と錘52を、荷物74が配置された床面72上に配置するステップと、錘載せ部50に錘52を載せ、荷物74の係合部位に係合部としての支柱部40を近づけるステップと、錘載せ部50に錘52を載せ、荷物74の係合部位と支柱部40先端の爪部42とを係合させるステップと、荷物搬送装置10を操作して荷物74を移動させるステップと、を有する。
【0082】
荷物搬送装置10と錘52とを別々に構成することで、駆動輪36と床面72との摩擦力を錘載せ部50に載せる錘52の重量による梃子作用によって調節可能とする荷物搬送装置10を用いることにより、錘52を除いた荷物搬送装置10自体を軽量化できる。これにより、トラック70の荷台71の床面72への荷物搬送装置10の上げ下ろし等、荷物搬送装置10の取扱いが容易な荷物搬送方法を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態の荷物搬送方法では、錘載せ部50に錘52を載せ、荷物74の係合部位と支柱部40の先端の爪部42とを係合させるステップにおいて、作業者は、駆動輪36と床面72との摩擦力不足に起因するスリップの有無を確認しながら、錘載せ部50に載せる錘52の個数及び総重量を適宜設定することができる。なお、本発明によれば、駆動輪の空転を略抑制する錘を載せた後の微調整は、錘載せ部に載せた錘の位置を前後に移動させることで、梃子作用により錘の増減と同じ効果を得られるので、駆動輪の空転抑制が更に容易である。
【0084】
(変形例)
なお、本実施形態に係る上述の説明において、駆動部は、バッテリー54をエネルギー源とするモータ34とされているが、本発明では、駆動部は、駆動輪に駆動力を付与可能であればどのような物でもよいので、本実施形態の変形例として、例えば、モータ34に代えて、原動機等を用いて、駆動輪36を駆動させてもよい。
【0085】
また、本実施形態に係る上述の説明において、錘載せ部50には、バッテリー54及び錘52を作業時に載せるとされているが、本発明では、バッテリーを荷物搬送装置に取り付ける方法に制約はないので、本実施形態の変形例として、バッテリー54が錘載せ部等に固定されて取り外せない態様とされていてもよい。
【0086】
また、本実施形態に係る上述の説明において、荷物搬送装置10は、補助輪38を有しているが、本発明では、補助輪は必須ではないので、本実施形態の変形例として、荷物搬送装置10は、補助輪38を有していない構成とされていてもよい。補助輪38を有していない構成とした変形例の場合においても、爪部42を支点、錘載せ部を力点、駆動輪を作用点とする梃子が同様に形成されるため、錘によって駆動輪36と床面72との摩擦力を調整することが依然として可能である。
【0087】
また、本実施形態に係る上述の説明において、係合部としての支柱部40は、爪部42を有しているが、本発明では、荷物と係合可能であれば、どのような形態の係合部でもよいので、本実施形態の変形例として、爪部42を有していない構成とされていてもよく、例えば、爪部42が無い支柱部40をパレット76の差込口84に差込み、錘載せ部50にバッテリー54及び錘52を載せ、梃子作用により差し込んだ支柱部をパレット76の内部上面に強く押し付けた状態で、パレット76と差し込んだ支柱部40との摩擦力が十分にあって滑らなければ、この状態で荷物搬送装置10を移動させることにより、荷物74を搬送することができる。
【0088】
(その他の変形例)
なお、本実施形態に係る上述の説明において、荷物74は、トラック70の荷台71における前方から後方に向かって搬送されるが、本発明では、荷物搬送装置による搬送方向は、前後いずれの方向でも可能である。本実施形態の変形例として、例えば、荷物搬送装置10の爪部42が荷物74の係合部位に係合した状態で、作業者が荷物搬送装置10を前進させることにより、荷物74を押圧し、前方に向かって搬送してもよい。
【0089】
また、本実施形態に係る上述の説明において、荷物搬送装置10が荷物74におけるパレット76後方の差込口84から係合しているが、本発明では、荷物搬送装置と荷物はどのように係合されてもよいので、本実施形態の変形例として、荷物74におけるパレット76のいずれの差込口84向から係合させてもよい。
【0090】
また、本実施形態に係る上述の説明では、荷物搬送装置10は、トラック70の荷台71に載置された荷物74を床面上を摺動して搬送するとしており、このように、本発明の荷物搬送装置は、基本的には、「摺動搬送装置」であるともいえる。ただし、本発明に係る荷物搬送装置は、荷物を摺動させて搬送するだけでなく、荷物を載せた台車等に係合して荷物の搬送を行うのに用いることを妨げられない。
【0091】
<第二実施形態>
続いて、本発明に係る荷物搬送装置の第二実施形態を、
図8から
図11を適宜参照しながら説明する。なお、本実施形態の荷物搬送装置20において、第一実施形態の荷物搬送装置10と同等の構成には、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0092】
(構成)
本実施形態における荷物搬送装置20は、
図8及び
図9に示されるように、支柱部40における爪部42よりも後方に、左右方向に延びる梁部46を有している。
【0093】
本実施形態における梁部46は、左右一対の支柱部40に跨がって一体的に形成され、前後方向に押圧しても容易に変形しない材質、形状とされている。なお、本発明では、梁部は、左右一対の支柱部とは別体として形成され、ボルト等により支柱部に脱着可能に取り付けられていてもよく、また、左右一対の支柱部に完全に跨がらず、途中部分に隙間を有して形成されていてもよく、また、一対の支柱部の左右方向の外側及び/又は上下方向に延出して荷物との当接面を広くするよう形成されていてもよい。
【0094】
その他の構成は、第一実施形態と同様である。続いて、本実施形態における荷物搬送方法を説明する。なお、本実施形態の荷物搬送装置20を使用した荷物搬送方法のうち、第一実施形態の荷物搬送装置10を使用した荷物搬送方法と同等の箇所については、詳細な説明を省略する。
【0095】
(荷物搬送方法)
図10及び
図11に示されるように、本実施形態の荷物搬送装置20を使用した荷物搬送方法では、荷物74の係合部位に係合部を近づけるステップにおいて、作業者は、左右一対の支柱部40をパレット76の後部差込口から挿入し、係合手段としての梁部46をパレット76の後方から脚柱82に近づける。
【0096】
続いて、錘載せ部に錘を載せ、荷物74の係合部位と係合部とを係合させるステップでは、梁部46と脚柱82の後方側面とを当接させることで係合する。なお、この際、第一実施形態と同様に、メッシュ領域80の網目(図示省略)に爪部42を挿入してもよいが、この段階では必ずしも挿入を確実にする必要はない。更に続いて、荷物搬送装置20を操作して荷物74を移動させるステップでは、作業者は、荷物搬送装置20を前方に移動させることにより、梁部46が脚柱82の後側面を押圧して、荷物74を前方に搬送する。なお、本発明では、梁部が荷物との当接面を広くするよう支柱部の左右上下方向に延出するように形成されてもよく、この場合には、梁部の外形寸法増大を招くものの、梁部は、脚柱後側面に加え、パレットの差込口外縁も含めた後側面に広く当接し、パレットをバランスよく押圧して前方に移動させることができる。
【0097】
なお、本実施形態においても、作業者は、第一実施形態と同様に、爪部42をパレット76のメッシュ領域80の網目(図示省略)に挿入して引掛けることによって係合させれば、荷物搬送装置20を後方に移動させることにより、荷物74を牽引し、後方に搬送することができる。
【0098】
その他の荷物搬送方法の手順は、第一実施形態と同様である。
【0099】
(作用及び効果)
本実施形態における荷物搬送装置20では、次に示す作用及び効果を得ることができる。
【0100】
本実施形態の荷物搬送装置20は、支柱部40は、前方に対して直交する方向に延びる梁部46を有し、梁部46が、荷物74を押圧して前方に荷物74を搬送する。
【0101】
支柱部40は、前方に対して直交する方向に延びる梁部46を有しているため、簡易な構成で荷物74の後側面を幅方向に亘って均等に押圧して荷物74を前方に搬送することが可能である。これにより、押圧時に荷物74の破損の可能性を低減することができる。
【0102】
その他の作用及び効果は、第一実施形態と同様である。
【0103】
(変形例)
なお、本実施形態に係る上述の説明において、梁部46は、脚柱82に対して外側、すなわち後方側面に当接し、後方から前方に向けてパレット76を押しているが、本発明に係る荷物搬送装置による搬送方向は、前後いずれの方向でも可能である。本実施形態の変形例として、例えば、梁部46を支柱部40と別体とし、パレット76の差込口84に左右一対の支柱部40を後部脚柱82を挟んで差込んだ状態で、後部脚柱82より奥側の支柱部40の位置において、梁部46を左右一対の支柱部40に掛け渡すように取り付けてもよい。この場合、荷物搬送装置20を後方に移動させ、梁部46が脚柱82前面を内側から押圧することにより、荷物74を後方に牽引して移動させることができる。
【0104】
なお、第一実施形態の荷物搬送装置10及びその変形例のうち、本実施形態の荷物搬送装置20及びその変形例においても同等の構成の部分においては、本実施形態の荷物搬送装置20及びその変形例においても採用することを妨げられない。
【0105】
<第三実施形態>
続いて、本発明に係る荷物搬送装置の第三実施形態を、
図12から
図15を適宜参照しながら説明する。なお、本実施形態の荷物搬送装置30において、第一実施形態の荷物搬送装置10と同等の構成には、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0106】
(構成)
本実施形態における荷物搬送装置30は、
図12及び
図13に示されるように、第一実施形態の荷物搬送装置10の係合部としての支柱部40先端部の爪部42に代えて、支柱部40の先端部に電磁石56を有している。なお、本発明では、これに限らず、荷物搬送時に荷物搬送装置と荷物との係合が外れないだけの磁気吸着力があればどのような物でもよく、例えば、電磁石に代えて、永久磁石を用いてもよい。
【0107】
本実施形態に係る電磁石56は、左右一対の支柱部40の先端部に跨がるように形成されており、前後方向に押圧又は牽引することが可能とされている。また、電磁石56は、作業者が起動した状態(磁力を有している状態)と停止した状態(磁力が消失した状態)とを任意に切り替えることが可能とされている。なお、本発明では、これに限らず、荷物と荷物搬送装置とを電磁吸着力により係合可能であればどのような磁石でもよく、例えば、電磁石に代えて、永久磁石を用いてもよい。
【0108】
また、
図12に示されるように、電磁石56の前方の面である吸着面Cは、補助輪38が床面72と接触した状態で、鉛直となるように形成されている。すなわち、
図12に示されるように、吸着面Cは、側方から視て、やや俯くように前傾して形成されている。
【0109】
また、本実施形態では、
図14及び
図15に示されるように、パレット76の後方の面には、強磁性体88が固定して取付けられている。なお、本発明では、この強磁性体は、荷物搬送時に荷物搬送装置の磁石と係合し、押圧又は引張荷重を受けても容易に破損しなければどのような材質でもよいが、荷物搬送装置の磁石と切り離された際に速やかに消磁する軟磁性体であることが望ましい。また、荷物への取付方法も、荷物搬送装置による荷物搬送時に荷物から脱落しなければどのような方法でもよく、例えば、強磁性体を一部に縫い込んだベルトを荷物に掛け回して締め付け、バックル等で固定することでもよい。
【0110】
本実施形態に係るその他の構成は、第一実施形態と同様である。続いて、本実施形態における荷物搬送方法を説明する。なお、本実施形態の荷物搬送装置30を使用した荷物搬送方法のうち、第一実施形態の荷物搬送装置10を使用した荷物搬送方法と同等の構成については、詳細な説明を省略する。
【0111】
(荷物搬送方法)
本実施形態の荷物搬送装置30を使用した荷物搬送方法では、荷物74に係合部を近づけるステップにおいて、作業者は、電磁石56の作動を停止した状態で、電磁石56の吸着面Cをパレット76の後方から強磁性体88に近づける。
【0112】
そして、
図14及び
図15に示されるように、強磁性体88と電磁石56の吸着面Cとが接触した状態で、作業者は、錘載せ部50に錘52及びバッテリー54を載せることによって、荷物搬送装置30を後傾させる。
【0113】
続いて、作業者は、この状態で、電磁石56の作動を開始させ、電磁石56と強磁性体88とを吸着させることによって、係合させる。
【0114】
また、荷物搬送装置30を操作して荷物74を移動させるステップにおいて、作業者は、荷物搬送装置30を前方に移動させることにより、電磁石56の吸着面Cが強磁性体88を押圧して、荷物74を前方に搬送する。
【0115】
また、荷物搬送装置30を操作して荷物74を移動させるステップにおいて、作業者は、荷物搬送装置30を後方に移動させることにより、電磁石56の吸着面Cが強磁性体88を牽引して、荷物74を後方に搬送する。
【0116】
本実施形態に係るその他の荷物搬送方法の手順は、第一実施形態と同様である。
【0117】
(作用及び効果)
本実施形態における荷物搬送装置30では、次に示す作用及び効果を得ることができる。
【0118】
本実施形態の荷物搬送装置30の支柱部40は、荷物74の後方に設けられた強磁性体88に係合する電磁石56を有している。
【0119】
本実施形態の荷物搬送装置30は、支柱部40が荷物74の強磁性体88と磁気的に係合することができる電磁石56を有しているため、第一実施形態に比べ、より簡易な構成で荷物74を牽引又は押圧して搬送することができる。
【0120】
本実施形態に係るその他の作用及び効果は、第一実施形態と同様である。
【0121】
(変形例)
なお、本実施形態に係る上述の説明では、荷物搬送装置30における係合部としての支柱部40の先端部に電磁石56を備えているが、本発明における係合部の構成は、これに限らず、荷物搬送時に荷物搬送装置と荷物との係合が外れないだけの係合力があればどのような構成であってもよいので、本実施形態の変形例として、例えば、電磁石56に代えて荷物74の側面に真空吸着する吸盤(図示省略)を支柱部40の先端部に備えていてもよい。この場合、荷物搬送装置30における支柱部40先端部の吸盤は、例えば真空ポンプ等を用いて吸盤内の空気を排出することによって荷物74の後部側面に吸着する。また、本発明では、荷物搬送装置における係合部としての支柱部先端部に係合手段として設ける磁石と吸盤とを適宜交換して用いること、また、磁石又は吸盤の個数を増やして係合力を強めることを妨げられない。
【0122】
なお、第一実施形態の荷物搬送装置10及びその変形例又は第二実施形態の荷物搬送装置20及びその変形例のうち、本実施形態及びその変形例においても同等の構成の部分は、本実施形態及びその変形例においても、採用することを妨げられない。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0124】
10、20、30 荷物搬送装置
32 フレーム
34 モータ(駆動部の一例)
36 駆動輪
38 補助輪
40 支柱部(係合部の一例)
42 爪部(係合手段の一例)
44 操作部
46 梁部(係合手段の一例)
50 錘載せ部
52 錘
54 バッテリー(駆動部エネルギー源の一例)
56 電磁石(係合手段の一例)
70 トラック
71 荷台
72 床面
74 荷物
76 パレット
78 上板
80 メッシュ領域
82 脚柱
84 差込口
86 積載物
88 強磁性体(係合手段の一例)
90 スライダーボード
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームを支え駆動部から供給された駆動力によって前記フレームを移動させる左右一対の駆動輪と、
前記フレームから延出され、荷物が積載されたパレットと係合する係合部と、
前記駆動輪を間において、前記係合部とは反対側に位置する前記フレームに設けられ、前記係合部が前記パレットに係合した状態で錘が載せられ、前記駆動輪を作用点として前記フレームを傾動させる錘載せ部と、
を有する荷物搬送装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記パレットに引っ掛かる爪部を有している、
請求項1に記載の荷物搬送装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記係合部に対して直交する方向に延びる梁部を有し、前記梁部が、前記パレットを押圧して前方に荷物を搬送する、
請求項1に記載の荷物搬送装置。
【請求項4】
前記駆動部は、バッテリーをエネルギー源とするモータである、
請求項1に記載の荷物搬送装置。
【請求項5】
前記フレームにおける前記駆動輪より前記錘載せ部側に、前記フレームが傾動し前記錘載せ部が所定位置まで下がった場合に床面に接触可能な補助輪を備える、
請求項1~請求項4までのいずれか一項に記載の荷物搬送装置。
【請求項6】
フレームと、前記フレームを支え駆動部から供給された駆動力によって前記フレームを移動させる左右一対の駆動輪と、前記フレームから延出され、荷物が積載されたパレットと係合する係合部と、前記駆動輪を間において、前記係合部とは反対側に位置する前記フレームに設けられ、前記係合部が前記パレットに係合した状態で錘が載せられ、前記駆動輪を作用点として前記フレームを傾動させる錘載せ部と、を備えた荷物搬送装置を用い、
前記荷物搬送装置と錘を、前記パレットが配置された床面上に配置するステップと、
前記パレットの係合部位に前記係合部を近づけるステップと、
前記パレットと前記係合部とを係合させ、かつ、前記錘載せ部に錘を載せ、前記フレームを傾動させるステップと、
前記荷物搬送装置を操作して前記パレットを移動させるステップと、
を有する荷物搬送方法。