(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022897
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】圧力センサ、密閉状態判別システム、密閉状態判別方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/40 20060101AFI20240214BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20240214BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20240214BHJP
G01M 3/32 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01M3/40 Z
H05K5/06 D
G06F1/16 312L
G01M3/32 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126339
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】大江 亮
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴大
【テーマコード(参考)】
2G067
4E360
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067AA40
2G067DD27
4E360AA02
4E360AB12
4E360AB33
4E360AB42
4E360BA02
4E360BC05
4E360CA02
4E360EA13
4E360EA14
4E360EA18
4E360ED02
4E360EE02
4E360GA29
4E360GA60
4E360GB01
4E360GB22
4E360GC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筐体の密閉状態を容易に判別することが可能な密閉状態判別システムを提供する。
【解決手段】外部接続端子の端子孔19の端子開閉蓋17を閉めた場合に、端子開閉蓋17の裏面に固着された防水キャップ18のパッキン18Pが圧入されて接触する下ケース12における端子孔19の外周を囲む段差部16aの内壁、又は防水キャップ18のパッキン取付け溝18cの底面に、面圧センサ20を貼り付けて設け、面圧センサ20によりパッキン18Pから段差部16aの内壁が受ける圧力、又はパッキン18P自体が受ける圧力をパッキン18Pの長さに対応する全領域の圧力分布として検出する。面圧センサ20により検出される圧力分布の状態に応じて、端子開閉蓋17は正常に閉まっている状態か、防水キャップ18が完全に閉まっていない状態か、パッキン18Pが捩れた状態か、パッキン18Pに損傷がある状態か、を判定しユーザに通知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体と、
前記開口を開閉可能であり、かつ、前記開口を閉じたときに、前記開口を密閉するためのパッキンに対して圧力を加える開閉部材と、
前記開口の周縁において、前記パッキンと、前記筐体または前記開閉部材とが接触する面の、前記接触に応じた圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより検出される前記面に対応する圧力分布に基づいて、前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する判定部と、
を備える密閉状態判別システム。
【請求項2】
前記パッキンは、前記筐体および前記開閉部材とは別の密閉部材、前記筐体の一部、および前記開閉部材の一部、のいずれかに設けられている、請求項1に記載の密閉状態判別システム。
【請求項3】
開口を有する筐体と、
前記開口を開閉可能な開閉部材と、
前記開口の縁部と前記開閉部材の縁部との一方の部位に設けられ、前記開閉部材により前記開口を閉じた状態において、前記開口の縁部と前記開閉部材の縁部との他方の部位に圧縮された状態で、前記開口を密閉するパッキンと、
前記他方の部位から前記パッキンに作用する圧力に応じた圧力であるパッキン圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより検出された前記パッキン圧力に基づいて、前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する判定部と、
を備える密閉状態判別システム。
【請求項4】
前記パッキンは、圧縮された状態において前記他方の部位と前記圧力センサの両方に接触し、
前記パッキンが前記他方の部位に加える圧力と、前記パッキンが前記圧力センサに加える圧力とが、対応する圧力になるような位置関係で、前記一方の部位、前記他方の部位、前記パッキン、および前記圧力センサが設けられている、請求項3に記載の密閉状態判別システム。
【請求項5】
前記圧力センサは、前記開口の周縁において、前記パッキンと、前記他方の部位とが接触する面の、前記接触に応じた圧力を検出し、
前記判定部は、前記圧力センサにより検出される前記面に対応する圧力分布に基づいて、前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する、請求項4に記載の密閉状態判別システム。
【請求項6】
前記圧力分布は、前記面に対応して検出される複数個所の圧力の状態であり、
前記判定部は、前記複数個所の圧力の状態に基づいて、前記開口が正常に密閉されている状態であるか否かを判定するとともに、前記開口が正常に密閉されていない場合においては、前記開口が正常に密閉されていない原因に係る複数の状態を判定する、請求項1、2、5のいずれか一項に記載の密閉状態判別システム。
【請求項7】
前記判定部は、前記開口が正常に密閉されていないと判定された場合には、更に、前記パッキンが捩れている状態および前記パッキンが損傷している状態のうちの少なくとも1つの状態を判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記判定した前記開口の密閉に関する複数の状態を識別可能な情報として出力する、請求項1に記載の密閉状態判別システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記判定した前記開口の密閉に関する複数の状態を識別可能な情報として出力する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項10】
前記圧力センサは、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿った前記開閉部材の側または前記開口の周縁の側に設けられる面圧センサである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の密閉状態判別システム。
【請求項11】
前記圧力センサは、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿った前記開閉部材の側または前記開口の周縁の側に分散して設けられる複数の圧力センサである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の密閉状態判別システム。
【請求項12】
前記圧力センサは、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿って設けられている前記パッキンが受ける圧力または前記開口の周縁が前記パッキンから受ける圧力を検出する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の密閉状態判別システム。
【請求項13】
前記判定部は、前記圧力分布に基づいて判定用のパラメータを抽出し、抽出した前記判定用のパラメータが予め決められている複数の条件のいずれを満たすかに応じて、前記開口の密閉に関する状態を複数の状態の中から判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項14】
前記判定部は、前記圧力分布に基づいて、少なくとも平均圧力、最低圧力、最高圧力のうちの1つを含む複数の判定用のパラメータを抽出し、抽出した複数の前記判定用のパラメータを組み合わせた組み合わせ条件が、予め決められている複数の組み合わせ条件のいずれを満たすかに応じて、前記開口の密閉に関する状態を複数の状態の中から判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項15】
前記判定部は、前記開口の密閉に関する状態として、前記開口が正常に密閉されている第1状態、前記開閉部材が完全に閉まっていない第2状態、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿って設けられている前記パッキンが捩れている第3状態、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿って設けられている前記パッキンが損傷している第4状態、のうちの少なくとも2つの状態を判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項16】
前記判定部は、前記圧力センサにより検出される前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に対応する圧力分布が、少なくとも平均圧力が所定値未満である条件を含む第1の条件を満たす場合、前記開閉部材による前記開口の密閉状態を前記開閉部材が完全に閉まっていない状態と判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項17】
前記判定部は、前記圧力センサにより検出される前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に対応する圧力分布が、少なくとも最高圧力と最低圧力の差である高低圧力差が所定値以上である条件を含む第2の条件を満たす場合、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿って設けられているパッキンが捩れている状態と判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項18】
前記判定部は、前記圧力センサにより検出される前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に対応する圧力分布が、少なくとも最低圧力が所定値未満である条件を含む第3の条件を満たす場合、前記開閉部材の前記開口の周縁と接触する面に沿って設けられているパッキンが損傷している状態と判定する、請求項6に記載の密閉状態判別システム。
【請求項19】
筐体に設けられた開口を開閉可能な開閉部材が前記開口を閉じるのに応じて、前記開口を密閉するためのパッキンに対して加えられる圧力を検出する圧力センサであって、
前記開口の周縁において、前記パッキンと、前記筐体または前記開閉部材とが接触する面の、前記接触に応じた圧力分布を検出する、圧力センサ。
【請求項20】
前記開閉部材が前記開口を閉じたときに、
前記パッキンが前記筐体または前記開閉部材に接触し、かつ、前記圧力センサが前記パッキンに接触し、前記パッキンが前記筐体または前記開閉部材に加える圧力と、前記パッキンが前記圧力センサに加える圧力とが、対応する圧力になるように、前記パッキンおよび前記圧力センサが設けられている、請求項19に記載の圧力センサ。
【請求項21】
検出された前記圧力分布のデータを、前記圧力分布に基づいて前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する判定部に出力する、請求項19または20に記載の圧力センサ。
【請求項22】
開口を有する筐体と、
前記開口を開閉可能であり、かつ、前記開口を閉じたときに、前記開口を密閉するためのパッキンに対して圧力を加える開閉部材と、
前記開口の周縁において、前記パッキンと、前記筐体または前記開閉部材とが接触する面の、前記接触に応じた圧力を検出する圧力センサとを備える電子機器の制御部により、
前記圧力センサにより検出される前記面に対応する圧力分布に基づいて、前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する処理を実行する、密閉状態判別方法。
【請求項23】
開口を有する筐体と、
前記開口を開閉可能であり、かつ、前記開口を閉じたときに、前記開口を密閉するためのパッキンに対して圧力を加える開閉部材と、
前記開口の周縁において、前記パッキンと、前記筐体または前記開閉部材とが接触する面の、前記接触に応じた圧力を検出する圧力センサとを備える電子機器の制御部を、
前記圧力センサにより検出される前記面に対応する圧力分布に基づいて、前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する処理を実行するように機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧力センサ、密閉状態判別システム、密閉状態判別方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハンディターミナルやスマートフォンのように、ユーザが移動する多様な環境において使用される電子機器は、USB端子などの外部接続端子用に筐体に設けられた開口や電池交換用に筐体に設けられた開口などを開閉する蓋として、防水式の蓋(防水キャップとも言う)を備える。
【0003】
電子機器の防水性能が低下して筐体の内部に水などが浸入すると、電子回路が破損するなどの著しい問題が生じる。
【0004】
従来の携帯装置であって、防水性能の低下の有無および防水性能の低下の原因をユーザに通知することを可能とする防水性能通知方法が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
防水性能だけでなく、気密性能、防塵性能などに関しても同様である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、筐体の密閉状態を容易に判別することが可能になる圧力センサ、密閉状態判別システム、密閉状態判別方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る密閉状態判別システムは、
開口を有する筐体と、
前記開口を開閉可能であり、かつ、前記開口を閉じたときに、前記開口を密閉するためのパッキンに対して圧力を加える開閉部材と、
前記開口の周縁において、前記パッキンと、前記筐体または前記開閉部材とが接触する面の、前記接触に応じた圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサにより検出される前記面に対応する圧力分布に基づいて、前記パッキンによる前記開口の密閉状態を判定する判定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の密閉状態判別システムによれば、筐体の密閉状態を容易に判別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の圧力センサ、密閉状態判別システム、密閉状態判別方法およびプログラムの実施形態に係るハンディターミナル10(電子機器)の外観構成を示す図であり、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその正面図、同図(C)はその右側面図。
【
図2】
図1のハンディターミナル10の端子開閉蓋17を含む頭部Rを拡大して示す図であり、同図(A)はその斜視図、同図(B)は端子開閉蓋17の裏面斜視図、同図(C)は同図(A)のA-A線矢視部分断面図。
【
図3】
図2の(A)のハンディターミナル10の端子開閉蓋17を外した状態を示す図であり、同図(A)はその斜視図、同図(B)は
図2の(B)の端子開閉蓋17のパッキン18P(密閉部材)を外した状態を示す斜視図。
【
図4】下ケース12の段差部16aとキャップ本体部18aのパッキン18Pとの関係例を示す拡大断面図。
【
図5】端子開閉蓋17の防水キャップ18のパッキン18Pに対応して設けた面圧センサ20のある部分における圧力検出状態を示す図。
【
図6】端子開閉蓋17の防水キャップ18のパッキン(Oリング)18Pに対応して設けた面圧センサ20の全領域の圧力検出パターン(圧力分布)の例を示す図。
【
図7】ハンディターミナル10の電子回路の構成を示すブロック図。
【
図8】ハンディターミナル10の判定条件設定データ記憶領域32bに記憶される防水キャップ取付け状態の判定条件を示す図。
【
図9】ハンディターミナル10の防水状態判別処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(実施形態の構成)
図1は、本発明の圧力センサ、密閉状態判別システム、密閉状態判別方法およびプログラムの実施形態に係るハンディターミナル10(電子機器)の外観構成を示す図であり、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその正面図、同図(C)はその右側面図である。
【0013】
実施形態の電子機器は、以下に説明するハンディターミナル10として構成されるか、タブレット型のPDA(personal digital assistants)、携帯電話、携帯ゲーム機、電子ブック、カメラ、PC(personal computer)などとして構成される。
【0014】
ハンディターミナル10は、その上ケース11と下ケース12とを備えて構成される。上ケース11には、キー入力部(キーボード)13およびタッチパネル式表示部(ディスプレイ)14などが設けられる。
【0015】
また、下ケース12には、撮像部(カメラ)15、外部接続端子(USB端子など)用の端子開閉蓋17(開閉部材)およびバッテリカバーBTなどが設けられる。
【0016】
端子開閉蓋17は、例えばゴム製であり、ハンディターミナル10(下ケース12)の右側面に形成された開閉蓋嵌め込み凹部16に寸法精度よく嵌まり込んでネジ17nにより下ケース12に取り付けられる。
【0017】
図2は、
図1のハンディターミナル10の端子開閉蓋17を含む頭部Rを拡大して示す図であり、同図(A)はその斜視図、同図(B)は端子開閉蓋17の裏面斜視図、同図(C)は同図(A)のA-A線矢視部分断面図である。
【0018】
図3は、
図2の(A)のハンディターミナル10の端子開閉蓋17を外した状態を示す図であり、同図(A)はその斜視図、同図(B)は
図2の(B)の端子開閉蓋17のパッキン18Pを外した状態を示す斜視図である。
【0019】
開閉蓋嵌め込み凹部16の底面には、
図3の(A)に示すように、下ケース12の後方寄りに、端子開閉蓋17のネジ17nを螺合するネジ穴16nが形成され、下ケース12の前方寄りに、外部接続端子(図示せず)へ通ずる矩形の端子孔19が形成されている。
【0020】
端子開閉蓋17は、
図2の(A)(B)に示すように、ネジ17nの先端を貫通させた取付け基部17Bに対し、開閉部17Mが、肉薄のヒンジ部17Hの柔軟性により開閉可能であり、開閉部17Mの先端に設けられた位置決め突起17Tを、開閉蓋嵌め込み凹部16の内周壁の一部を成す上ケース11の周縁部11aに形成された位置決め凹部(図示せず)に嵌め込むことで、開閉蓋嵌め込み凹部16に嵌った状態を保持する。
【0021】
端子開閉蓋17の開閉部17Mの裏面には、端子孔19を閉塞するための例えば硬質プラスチック製の防水キャップ18(開閉部材)が固着される。
【0022】
防水キャップ18は、開閉蓋嵌め込み凹部16の底面において端子孔19の外周を囲んで形成された段差部16aに沿って嵌まり込む矩形のキャップ本体部18aと、当該キャップ本体部18aの中央に突出して形成された端子孔19に沿って嵌まり込む矩形のフランジ部18bとを有する。
【0023】
段差部16aの内壁に面するキャップ本体部18aの外周面には、例えば断面U字形のパッキン取付け溝18cが形成され、当該パッキン取付け溝18cにはOリングを用いたパッキン18Pが取り付けられる。
【0024】
端子開閉蓋17は、下ケース12の開閉蓋嵌め込み凹部16に寸法精度よく嵌まり込んで端子孔19を広く塞ぐと共に、キャップ本体部18aのパッキン取付け溝18cに取り付けられたパッキン18Pが、端子孔19の外周を囲んだ段差部16aの内壁に沿って圧入され圧縮されることで当該段差部16aの内壁に強く当接し、端子孔19を介したハンディターミナル10の内部空間に対する防水性能を確保する。
【0025】
実施形態のハンディターミナル10は、端子開閉蓋17および防水キャップ18のパッキン18Pによる防水性能を監視するための面圧センサ20を備える。
【0026】
面圧センサ20は、例えば
図2の(C)および
図3の(A)に示すように、端子開閉蓋17を閉めた場合に、防水キャップ18のパッキン18Pが当接する下ケース12の段差部16aの内壁の全周に渡り貼り付けられて設けられ、パッキン18Pから受ける圧力を検出する。または、例えば
図2の(B)(C)および
図3の(B)に示すように、防水キャップ18のパッキン取付け溝18cの底面にその全周に渡り貼り付けられて設けられ、端子開閉蓋17を閉めた場合に、パッキン18Pが下ケース12の段差部16aの内壁に当接してパッキン18Pが受ける圧力を検出する。
【0027】
図4は、下ケース12の段差部16aと防水キャップ18(キャップ本体部18a)のパッキン18Pとの関係の例を示す拡大断面図である。
【0028】
なお
図4では、図示説明の便宜上、部材間に隙間を設けて示している。
【0029】
パッキン18Pと下ケース12の段差部16aの内壁16a1とが当接して防水性(密閉性)を確保し、かつ、パッキン18Pと下ケース12の内壁16a1との接触に応じた圧力(密閉力に応じた圧力)を面圧センサ20が検出するための構造としては、例えば
図4の(A)に示す<例1>から
図4の(E1)(E2)に示す<例5>のようにしてもよい。
【0030】
図4の(A)に示す<例1>は、面圧センサ20が下ケース12の内壁16a1側に設けられ、パッキン18Pとして断面が円形のOリングを使用している例であり、防水キャップ18(キャップ本体部18a)と段差部16aの内壁16a1とに挟まれてパッキン18Pが潰れることにより、パッキン18Pの一部(A部)が段差部16aの内壁16a1の一部に当接するとともに、パッキン18Pの一部(B部)が面圧センサ20の一部に当接する。このパッキン18Pの2つの部分(A部とB部)は隣接しており圧力がかかる方向も同じであるため、この2つの部分はほぼ同じ圧力P1,P2がかかる。
【0031】
また、防水キャップ18(キャップ本体部18a)を取り付ける方向xとパッキン18Pの圧力P1,P2が加わる方向とが直交する方向となっているが、面圧センサ20を、防水キャップ18が正常に取り付けられた位置での圧力が最大になるような位置に設けることで、防水キャップ18が正常な位置まで取り付けられているか否かを確認することができる。
【0032】
図4の(B)に示す<例2>は、
図4の(A)で示した<例1>に対して、面圧センサ20が防水キャップ18(キャップ本体部18a)側に設けられている例であり、防水キャップ18が正常に取り付けられた位置での圧力が最大になるように、段差部16aの内壁16a1をテーパー形状としたものである。
【0033】
図4の(C)に示す<例3>は、防水キャップ18(キャップ本体部18a)を取り付ける方向xとパッキン18Pの圧力P2が加わる方向とが同じ方向となるようにしたものであり、防水キャップ18を奥に押し込むほど、段差部16aの内壁16a2に固定した面圧センサ20で検出される圧力P2が大きくなる。
【0034】
図4の(D)に示す<例4>は、
図4の(C)で示した<例3>に対して、Oリングではなく平面状のパッキン18Phを使用した例である。
【0035】
図4の(E1)(E2)に示す<例5>は、パッキン18Pの内部に圧力センサ20Sを設けるようにした例である。
【0036】
なお、<例1>(
図4の(A))~<例3>(
図4の(C))では、パッキン18Pと下ケース12の内壁16a1(16a2)とが直接的に接触することにより密閉性を確保しているが、面圧センサ20が下ケース12の内壁16a1(16a2)やキャップ本体部18aに対して接着剤などで隙間なく固定されており、パッキン18Pと接触する面圧センサ20の表面が平らであり、面圧センサ20に切れ目が無いのであれば、パッキン18Pと下ケース12の内壁16a1(16a2)とが直接的に接触することなく、面圧センサ20を介して接触することで密閉性を確保するようにしてもよい。
【0037】
また、<例2>(
図4の(B))において、段差部16aの内壁16a1をテーパー形状にするのではなく、内壁16a1に段差を設けて防水キャップ18(キャップ本体部18a)の取り付けに応じて圧力P2が変化するようにしてもよい。
【0038】
このように、パッキン18Pの形状や位置、防水キャップ18(キャップ本体部18a)を取り付ける方向とパッキン18Pの圧力が加わる方向との関係、面圧センサ20(圧力センサ)の位置、などは下ケース12や防水キャップ18の形状や、密閉が必要な部位などに応じて適宜設定すればよい。
【0039】
また、上記の例では、パッキン18Pを、キャップ本体部18aおよびキャップ本体部18aとは別部材(密閉部材)として構成しているが、パッキン18Pを、キャップ本体部18aの縁にキャップ本体部18aと一体で設けたり、下ケース12の内壁16a1に下ケース12と一体で設けたりするようにしてもよい。
【0040】
このように、パッキン18Pをキャップ本体部18aや下ケース12に一体で設ける場合には、二色成形などにより、密閉のために接触する部分だけに柔らかく密閉性の高い材質を用いるようにしてもよい。また、キャップ本体部18aや下ケース12そのものが柔らかく密閉性の高い材質で構成されている場合には、二色成形によって部分的に材質を変えることなく、キャップ本体部18aや下ケース12において、密閉のために接触する部分をパッキン18Pとして機能させるようにしてもよい。
【0041】
なお、
図3の(B)や
図4の(B)に示すように、面圧センサ20を防水キャップ18のパッキン取付け溝18cに設けた場合、あるいは
図4の(E1)に示すように、圧力センサ20Sをパッキン18Pの内部に設けた場合、面圧センサ20(圧力センサ20S)による圧力検出信号は、端子開閉蓋17の取付け基部17Bの裏面に露出させた信号導出端子21a1,21b1と、当該端子開閉蓋17の信号導出端子21a1,21b1に対応する位置であって、
図3の(A)に示すように、下ケース12の開閉蓋嵌め込み凹部16の底面に露出させた接触端子21a2,21b2とを介して、ハンディターミナル10内部の後述する電子回路(
図7参照)に入力される。
【0042】
図5は、端子開閉蓋17の防水キャップ18のパッキン18Pに対応して設けた面圧センサ20のある部分における圧力検出状態の時間変化(密閉状態の監視状態)を示す図である。
【0043】
ここで、パッキン18Pによる防水性能の保持に必要な圧力の閾値をPn(正常圧力閾値)とする。図示の単位は一例である。
【0044】
例えばハンディターミナル10の端子開閉蓋17を開けている状態(t1)では、面圧センサ20により検出される圧力は略ゼロになる。また、端子開閉蓋17を閉じて且つパッキン18Pを含む防水キャップ18の端子孔19に対する閉塞状態(パッキンによる密閉状態)が正常な状態(t2)では、面圧センサ20により検出される圧力は正常圧力閾値Pn以上になる。また、例えば端子開閉蓋17が正しく閉じられていない異常な状態(t3)では、面圧センサ20により検出される圧力は正常圧力閾値Pnを大きく下回る。また、例えば端子開閉蓋17が閉じられていても防水キャップ18のパッキン18Pに何らかの異常が生じている状態(t4)では、面圧センサ20により検出される圧力は正常圧力閾値Pn未満になる。
【0045】
図6は、例えば
図4の(B)、(D)に示すように、パッキン18Pと面圧センサ20との接触位置が端子開閉蓋17の開閉により変化しないように構成した場合において、端子開閉蓋17の防水キャップ18のパッキン(Oリング)18Pに対応して設けた面圧センサ20の全領域の圧力検出パターン(圧力分布)の例を示す図である。
【0046】
例えば
図4の(A)に示すように、パッキン18Pと面圧センサ20との接触位置が端子開閉蓋17の開閉により変化する場合においては、
図6とは異なる圧力検出パターン(圧力分布)となる。
【0047】
面圧センサ20は、例えばその圧力検出面をマトリクス状に細分化した多数の領域の各々にて検出される圧力を、当該領域の位置座標に対応付けて取得することが可能であり、
図6では、同図(A)に示すように、検出される圧力の高低を色の濃淡にして示す。
【0048】
図6の(B1)に示す圧力検出パターン(第1例)は、例えば端子開閉蓋17およびパッキン18Pを含む防水キャップ18の端子孔19に対する閉塞状態が正常な状態に対応し、パッキン(Oリング)18Pに接触する面圧センサ20の全領域において略均一に正常圧力閾値Pn以上の圧力が検出される。
【0049】
図6の(B2)に示す圧力検出パターン(第2例)は、例えば端子開閉蓋17が正しく閉じられず、パッキン18Pを含む防水キャップ18により端子孔19がしっかり閉塞されていない(完全に閉まっていない)状態に対応し、パッキン(Oリング)18Pに対する面圧センサ20の全領域において多少の強弱はあるが正常圧力閾値Pnを大きく下回る圧力しか検出されない。
【0050】
図6の(B3)に示す圧力検出パターン(第3例)は、例えば端子開閉蓋17が閉じられていても、防水キャップ18のパッキン18Pに捩れが生じている(パッキン18Pの捩れはパッキン18Pの長さ方向に波状的に生じる)状態に対応し、パッキン(Oリング)18Pに対する面圧センサ20の全領域に強弱がばらついた圧力が検出される。すなわち、パッキン18Pに捩れがある部分に接触する面圧センサ20の領域では正常圧力閾値Pnを大きく上回る圧力が検出される一方で、パッキン18Pに捩れがない部分に接触する面圧センサ20の領域では正常圧力閾値Pnを大きく下回る圧力しか検出されない。
【0051】
図6の(B4)に示す圧力検出パターン(第4例)は、例えば端子開閉蓋17が閉じられていても、防水キャップ18のパッキン18Pに欠けや劣化に伴う部分的損傷が生じている状態に対応し、パッキン(Oリング)18Pに対する面圧センサ20の広い領域で正常圧力閾値Pn以上の圧力が検出される一方で、パッキン18Pに損傷が生じている特定の部分に接触する面圧センサ20の領域では極端に低い圧力しか検出されない。
【0052】
実施形態のハンディターミナル10では、
図6の(B1)~(B4)で示したような、パッキン(Oリング)18Pに対する面圧センサ20の圧力検出パターン(第1例~第4例)を判定し、判定した圧力検出パターンに応じた端子開閉蓋17ないしは防水キャップ18のパッキン18Pの状態をユーザに通知する機能(防水状態監視機能)を搭載し、防水性能の低下による悪影響の発生を未然に防止する。
【0053】
図7は、ハンディターミナル10の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0054】
ハンディターミナル10の電子回路は、コンピュータである制御部(CPU:Processor)(判定部)31と、記憶部32と、面圧センサ20と、記録媒体読取部34と、通信部(Wi-Fi(登録商標)通信/移動体通信)35と、キー入力部13と、タッチパネル式表示部14と、撮像部(カメラ)15とを備えている。
【0055】
なお、記録媒体読取部34により読み取りの対象となる外部記録媒体33は、例えばUSBメモリやメモリカードであり、前述の端子開閉蓋17を開くことで端子孔19に露出する外部接続端子EXTに接続することで、記録媒体33に記録されているデータが読み取られる。外部接続端子EXTの用途は、記録媒体読取部34に対する外部記録媒体33との接続に限らないのは勿論である。
【0056】
制御部31は、記憶部32に記憶された電子機器制御プログラム32aに従い回路各部の動作を制御する。電子機器制御プログラム32aは、記憶部32に予め記憶されるか、外部記録媒体33から記録媒体読取部34により読み取って記憶部32に記憶させるか、通信ネットワークN上のWebサーバ(ここではプログラムサーバ)40から通信部35を介してダウンロードして記憶部32に記憶させるか、の何れであってもよい。
【0057】
電子機器制御プログラム32aは、ハンディターミナル10の全体を制御するシステムプログラムのほか、通信ネットワークN上のWebサーバ40を含む外部の通信機器と随時通信接続するためのプログラム、ハンディターミナル10の使用目的に応じた各種のアプリケーションプログラム、面圧センサ20により検出される端子開閉蓋17の防水キャップ18のパッキン18Pから受ける圧力またはパッキン18Pが受ける圧力の状態に基づいて、端子開閉蓋17ないしは防水キャップ18のパッキン18Pによる防水性能の状態を判定し、判定した状態をユーザに通知するための防水状態監視プログラムを含む。
【0058】
制御部31には、システムおよびデータバスを介して、記憶部32、面圧センサ20、記録媒体読取部34、通信部35、キー入力部13、タッチパネル式表示部14、撮像部15などが接続される。撮像部15は、任意の被写体の撮影に使用されるほか、バーコードやQRコード(登録商標)などの二次元コードの読み取りに使用される。
【0059】
記憶部32には、電子機器制御プログラム32aを記憶するプログラム記憶領域のほか、判定条件設定データ記憶領域32b、表示データ記憶領域32c、作業データ記憶領域32dなどが確保される。
【0060】
図8は、ハンディターミナル10の判定条件設定データ記憶領域32bに記憶される防水キャップ取付け状態の判定条件を示す図である。
【0061】
ここでは、面圧センサ20により検出される圧力分布に基づく判定用のパラメータ(特徴量)として、「平均圧力」、「最低圧力」、「最高圧力」、「高低圧力差」、「圧力凹部の面積(割合)」を用い、判定すべき取付け状態として、「正常」、「完全に閉まっていない」、「パッキンの捩れ」、「パッキンの損傷」の4つの状態を判定するものとする。
【0062】
これらの判定用のパラメータの種類や判定すべき取付け状態の種類、および判定条件である図示の数値や単位は一例であってこれに限らない。
【0063】
防水キャップ18の取付け状態が[状態1:正常]であると判定するための第1条件は、例えば
図6の(B1)で示した面圧センサ20の圧力検出パターン(第1例)に基づいて、面圧センサ20による圧力検出状態が、平均圧力50kPa以上、最低圧力40kPa以上、最高圧力60kPa未満、高低圧力差20kPa未満として記憶する。
【0064】
防水キャップ18の取付け状態が[状態2:完全に閉まっていない]であると判定するための第2条件は、
図6の(B2)で示した面圧センサ20の圧力検出パターン(第2例)に基づいて、面圧センサ20による圧力検出状態が、平均圧力50kPa未満、最高圧力60kPa未満、高低圧力差20kPa未満として記憶する。
【0065】
防水キャップ18の取付け状態が[状態3:パッキンの捩れ]であると判定するための第3条件は、
図6の(B3)で示した面圧センサ20の圧力検出パターン(第3例)に基づいて、面圧センサ20による圧力検出状態が、最高圧力60kPa以上、高低圧力差20kPa以上、圧力凹部の面積の割合25%以上として記憶する。
【0066】
圧力凹部とは、例えば、規定圧力以上(例えば60kPa以上)の圧力部分に囲まれた規定圧力未満(例えば40kPa未満)の圧力部分とする。
【0067】
防水キャップ18の取付け状態が[状態4:パッキンの損傷]であると判定するための第4条件は、
図6の(B4)で示した面圧センサ20の圧力検出パターン(第4例)に基づいて、面圧センサ20による圧力検出状態が、最低圧力40kPa未満、最高圧力60kPa未満、圧力凹部の面積の割合25%未満として記憶する。
【0068】
なお、
図8に示すパラメータの種類や条件は一例であり任意に設定してよい。また、判定用のパラメータを説明変数とし、判定すべき取付け状態を目的変数として、機械学習の結果に基づいて設定してもよい。また、機械学習を用いる場合には、
図6の圧力検出パターンを2次元分布データ(例えば画像でもよい)として、2次元分布データの認識(例えば画像認識と同様の認識方法)により取付け状態を判定するように学習させてもよい。
【0069】
表示データ記憶領域32cには、制御部31による各部の動作の制御に応じて生成または取得される表示部14に表示すべき被表示データが、例えばビットマップデータとして記憶される。
【0070】
作業データ記憶領域32dには、制御部31による各部の動作の制御に応じて生成または取得される各種のデータが必要に応じて一時的に記憶される。
【0071】
このように構成されたハンディターミナル10は、制御部31が電子機器制御プログラム32aに記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、後述の動作説明で述べるような防水状態監視機能を含む各種の機能を実現する。
【0072】
(実施形態の動作)
次に、実施形態のハンディターミナル10の動作について説明する。
【0073】
図9は、ハンディターミナル10の防水状態判別処理を示すフローチャートである。
【0074】
ハンディターミナル10の防水状態判別処理は、例えば、ハンディターミナル10の電源が投入される度に実行するか、電源投入後の予め設定された時間間隔毎に実行してよい(防水状態の定期的な監視処理)。また、ユーザの指示操作に応じて実行するようにしてもよい。
【0075】
ここでは、面圧センサ20は、端子開閉蓋17の防水キャップ18のパッキン18Pが当接する下ケース12の段差部16aの内壁の全周に渡り貼り付けられて設けられ、パッキン18Pから受ける圧力を検出する構成であると仮定する。
【0076】
また判定条件設定データ記憶領域32bには、
図8を参照して説明した第1条件~第4条件が設定されていると仮定する。
【0077】
制御部31は、防水状態監視処理を開始すると、面圧センサ20により検出される圧力の分布を取得する(ステップS1)。
【0078】
そして、面圧センサ20により検出される圧力分布に基づいて、上述した各種の判定用のパラメータ(特徴量)を抽出する。
【0079】
制御部31は、抽出された判定用のパラメータが判定条件設定データ記憶領域32bに記憶されている第1条件を満たすか否かを判定する(ステップS2)。
【0080】
ここで、面圧センサ20による圧力検出状態が、第1条件を満たす、すなわち平均圧力50kPa以上、最低圧力40kPa以上、最高圧力60kPa未満、高低圧力差20kPa未満(例えば
図6(B1)に示す状態)[状態1:正常]であると判定すると(ステップS2(Yes))、制御部31は、例えば表示部14の一部に設けた防水インジケータを青色に表示させてハンディターミナル10の防水性能が正常に保持されていることをユーザに通知(出力)する(ステップS3)。
【0081】
制御部31は、ステップS2において、面圧センサ20による圧力検出状態が、第1条件を満たしていないと判定すると(ステップS2(No))、面圧センサ20から取得される圧力分布の状態が第2条件を満たすか否かを判定する(ステップS4)。
【0082】
ここで、面圧センサ20による圧力検出状態が、第2条件を満たす、すなわち平均圧力50kPa未満、最高圧力60kPa未満、高低圧力差20kPa未満(例えば
図6(B2)に示す状態)[状態2:完全に閉まっていない]であると判定すると(ステップS4(Yes))、制御部31は、例えば防水インジケータを赤色に表示させると共に、端子開閉蓋17(防水キャップ18)(開閉部材)の閉め直しを促すメッセージを表示部14に表示させユーザに通知(出力)する(ステップS5)。
【0083】
また制御部31は、ステップS4において、面圧センサ20による圧力検出状態が、第2条件を満たしていないと判定すると(ステップS4(No))、面圧センサ20から取得される圧力分布の状態が第3条件を満たすか否かを判定する(ステップS6)。
【0084】
ここで、面圧センサ20による圧力検出状態が、第3条件を満たす、すなわち最高圧力60kPa以上、高低圧力差20kPa以上、圧力凹部の面積の割合25%以上(例えば
図6(B3)に示す状態)[状態3:パッキンの捩れ]であると判定すると(ステップS6(Yes))、制御部31は、例えば防水インジケータを赤色に表示させると共に、パッキン18Pの捩れの直しおよび端子開閉蓋17(防水キャップ18)(開閉部材)の閉め直しを促すメッセージを表示部14に表示させユーザに通知(出力)する(ステップS7)。
【0085】
また制御部31は、ステップS6において、面圧センサ20による圧力検出状態が、第3条件を満たしていないと判定すると(ステップS6(No))、面圧センサ20から取得される圧力分布の状態が第4条件を満たすか否かを判定する(ステップS8)。
【0086】
ここで、面圧センサ20による圧力検出状態が、第4条件を満たす、すなわち最低圧力40kPa未満、最高圧力60kPa未満、圧力凹部の面積の割合25%未満(例えば
図6(B4)に示す状態)[状態4:パッキンの損傷]であると判定すると(ステップS8(Yes))、制御部31は、例えば防水インジケータを赤色に表示させると共に、パッキン18Pの損傷および交換を促すメッセージを表示部14に表示させユーザに通知(出力)する(ステップS9)。
【0087】
また制御部31は、ステップS8において、面圧センサ20による圧力検出状態が、第4条件を満たしていないと判定すると(ステップS8(No))、端子開閉蓋17(防水キャップ18)ないしパッキン18Pについて、例えば[状態2:完全に閉まっていない][状態3:パッキンの捩れ][状態4:パッキンの損傷]以外の他の状態を原因とする防水性能の低下が生じている可能性があるとして、例えば防水インジケータを赤色に表示させると共に、端子開閉蓋17(防水キャップ18)およびパッキン18Pの再確認を促すメッセージを表示部14に表示させユーザに通知(出力)する(ステップS10)。
【0088】
(実施形態のまとめ)
実施形態のハンディターミナル(電子機器)10によれば、外部接続端子の端子孔19を開閉する端子開閉蓋17を閉めた場合に、当該端子開閉蓋17の裏面に固着された防水キャップ18のパッキン18P(密閉部材)が圧入されて接触する下ケース12における端子孔19の外周を囲む段差部16aの内壁16a1(16a2)、または防水キャップ18のパッキン取付け溝18cの底面に、面圧センサ20を設け、面圧センサ20により、パッキン18Pから段差部16aの内壁16a1(16a2)が受ける圧力、またはパッキン18P自体が受ける圧力を、パッキン(Oリング)18Pの長さに対応する全領域の圧力分布として検出する。
【0089】
そして、面圧センサ20により検出される圧力分布の状態に応じて、例えば全領域に渡って圧力が所定の圧力以上に平均的に高い(第1条件を満たす)場合には、端子開閉蓋17(防水キャップ18)は正常に閉まっている状態と判定する。また例えば全領域に渡って圧力が所定の圧力未満に平均的に低い(第2条件を満たす)場合には、防水キャップ18が完全に閉まっていない状態と判定し、端子開閉蓋17(防水キャップ18)の閉め直しをユーザに通知する。また例えば所定の圧力以上に圧力の高い領域とそれより一定の圧力差以上に圧力の低い領域とが波状時に繰り返されている(第3条件を満たす)場合には、パッキン18Pが捩れた状態と判定し、パッキン18Pの捩れの直しおよび端子開閉蓋17(防水キャップ18)の閉め直しをユーザに通知する。また例えば所定の圧力未満に圧力の低い一部の領域がある(第4条件を満たす)場合には、パッキン18Pに損傷がある状態と判定し、パッキン18Pの損傷および交換をユーザに通知する。
【0090】
これにより、ハンディターミナル(電子機器)10の防水性能が低下して筐体の内部に水などが浸入し、電子回路が破損するなどの問題が生じる恐れを未然に防止できる。
【0091】
なお、前述の実施形態では、防水性能を監視する対象が、筐体(下ケース12)に設けられた外部接続端子用の開口(端子孔19)を開閉する端子開閉蓋17(防水キャップ18)である場合について説明したが、これに限らず、筐体(下ケース12)に設けられた充電池交換用のバッテリカバーBTと下ケース12との接触部分、上ケース11と下ケース12との接触部分など、他の開口部分であっても同様の手法により防水性能を監視できるのは勿論である。
【0092】
また、前述の実施形態では、筐体の開口(端子孔19)を開閉する部材(防水キャップ18)との接触部分である開口の周縁の長さ方向の全領域に渡って面圧センサ20を設け、その全領域における圧力分布の状態を検出することで防水性能を監視する構成としたが、複数の圧力センサを開口の周縁の長さ方向に例えば等間隔に分散して設け、複数の圧力センサにより得られる圧力分布の状態に応じて、前述の実施形態と同様に防水性能を監視する構成としてもよい。
【0093】
さらに、前述の実施形態では、防水性能を監視する場合について説明したが、気密性能、防塵性能を監視する場合にも同様に適用できるのは勿論である。
【0094】
よって、実施形態のハンディターミナル(電子機器)10によれば、筐体の密閉状態を簡単な構成で容易に監視(判別)することが可能になる。
【0095】
以上の実施形態において記載したハンディターミナル(電子機器)10による各処理の手法、すなわち、
図9のフローチャートに示す防水状態監視処理などの各手法は、何れもコンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカードなど)、磁気ディスク(フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの外部記録装置の媒体に格納して配布することができる。そして、電子機器の制御部(CPU)は、この外部記録装置の媒体に記録されたプログラムを記憶装置に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、実施形態において説明した各種の機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0096】
また、各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク(N)上を伝送させることができ、この通信ネットワーク(N)に接続されたコンピュータ装置(プログラムサーバ)から、前記プログラムのデータを電子機器に取り込んで記憶装置に記憶させ、前述した各種の機能を実現することもできる。
【0097】
また、以上の実施形態においては、ハンディターミナル(電子機器)10の筐体の密閉状態を、ハンディターミナル(電子機器)10の制御部(判別部)が判別しているが、ハンディターミナル(電子機器)10の圧力センサの情報を他の機器に送信することにより、他の機器がハンディターミナル(電子機器)10の筐体の密閉状態を判別するシステムとして構成してもよい。
【0098】
なお、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0099】
10 …ハンディターミナル(電子機器)
11 …上ケース
12 …下ケース
16 …開閉蓋嵌め込み凹部
16a…段差部
16a1,16a2…段差部の内壁
17 …端子開閉蓋
17n…ネジ
BT …バッテリカバー
17B…取付け基部
17H…ヒンジ部
17M…開閉部
18 …防水キャップ
18a…キャップ本体部
18b…フランジ部
18c…パッキン取付け溝
18P…パッキン(Oリング)
19 …端子孔
20 …面圧センサ(圧力センサ)
31 …制御部(CPU)(判定部)
32 …記憶部
32a…電子機器制御プログラム
32b…判定条件設定データ記憶領域
EXT…外部接続端子