(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022901
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240214BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20240214BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240214BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K31/727
A61P17/16
A61P17/00
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K8/9789
A61K36/23
A61Q19/00
A61K9/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126346
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】399101201
【氏名又は名称】健栄製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】筒井 優
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA11
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(57)【要約】
【課題】ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物であって、従来よりも高い皮膚の保湿作用を有しつつ、好ましくは、敏感肌にも刺激が少ない皮膚外用組成物、好ましくは保湿剤を提供する。
【解決手段】ヘパリン類似物質と、ツボクサエキス抽出物と、水と、を含む皮膚外用組成物を提供する。前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005 質量%~5 質量%であることが好ましく、また、前記ツボクサエキス抽出物の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.0000001 (1×10-7) ~5 質量%であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質と、ツボクサエキス抽出物と、液状担体と、を含む皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005 質量%~5 質量%である、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記ツボクサエキス抽出物の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.0000001 (1×10-7) ~5 質量%である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
保湿剤である、請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物の保湿作用を増強する方法であって、
前記皮膚外用組成物に、ツボクサエキス抽出物を配合することを含む、保湿作用増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質を含む組成物は、外用剤として皮膚に適用されると、皮膚の保湿作用や、皮膚の抗炎症作用や、血行促進作用などが得られることが知られている(非特許文献1)。そのため、ヘパリン類似物質を含む外用組成物がいくつか提案されており、例えば、特許文献1には、ヘパリン類似物質とアミノ酸成分を含む外用組成物が記載されており、特許文献2には、ヘパリン類似物質と、トコフェロール、抗炎症剤及び鎮痒剤を含む皮膚外用剤が記載されている。
【0003】
また、シカ (CICA) と称されるツボクサエキス抽出物を含む組成物は、外用剤として皮膚に適用されると、肌荒れ改善効果などを示すことが知られており、例えば、特許文献3には、ツボクサエキス抽出物と、ビタミンとを含む皮膚外用剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-59524号公報
【特許文献2】特開2016―196419号公報
【特許文献3】特開昭63-79809号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】商品名ヒルマイルド添付文書 URL: https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J2001000156_02_A.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、ヘパリン類似物質を含む従来の皮膚外用組成物は、皮膚の保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用を有しているものの、これらの外用組成物には、さらなる高い作用、とりわけ、さらに高い保湿作用が求められることがあった。そこで本発明は、ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物であって、高い皮膚の保湿作用を有しつつ、好ましくは、敏感肌にも刺激が少ない皮膚外用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示す皮膚外用組成物に関する。
[1]ヘパリン類似物質と、ツボクサエキス抽出物と、液状担体と、を含む皮膚外用組成物。
[2]前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005 質量%~5 質量%である、前記[1]に記載の皮膚外用組成物。
[3]前記ツボクサエキス抽出物の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.0000001 (1×10-7) ~5 質量%である、前記[1]又は[2]に記載の皮膚外用組成物。
[4]保湿剤である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
【0008】
さらに、本発明は、以下に示す保湿作用を増強する方法に関する。
[5]ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物の保湿作用を増強する方法であって、前記皮膚外用組成物に、ツボクサエキス抽出物を配合することを含む、保湿作用増強方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用されることで、従来のヘパリン類似物質含有組成物と比較して、皮膚の保湿性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.皮膚外用組成物]
本発明の皮膚外用組成物は、1)ヘパリン類似物質と、2)ツボクサエキス抽出物と、液状担体と、を含有し、さらに、他の配合成分を含んでいてもよい。
【0011】
[1-1.ヘパリン類似物質]
ヘパリン類似物質とは、ムコ多糖類の多硫エステル体である。ムコ多糖類とは、動物組織や体液に広く分布するアミノ糖を含む複合多糖であり、例えば、コンドロイチン硫酸などである。ヘパリン類似物質は、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得てもよく、食用獣の組織(例えば、ウシの気管軟骨を含む肺臓)から抽出して得てもよい。また、本発明の皮膚外用組成物に含まれるヘパリン類似物質は、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質であってもよい。
【0012】
本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、組成物に対して 0.005 質量%以上、好ましくは 0.01 質量%以上、より好ましくは 0.05質量%以上、さらに好ましくは 0.1質量%以上含む。また、本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、組成物に対して 5 質量%以下、好ましくは3 質量%以下、より好ましくは 1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下含む。本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、例えば 0.1質量%、又は0.3質量%含む。なお、ヘパリン類似物質の含有量は、皮膚外用組成物が適切な保湿作用を有するように、適宜設定することができる。
【0013】
[1-2.ツボクサエキス抽出物]
ツボクサエキス抽出物とは、セリ科の植物であるツボクサ(別名:積雪草)の一部または全草から抽出された生薬エキスでありうる。ツボクサエキス抽出物は、アジアチコサイド、マデカシコサイドなどのトリテルペン誘導体の成分を含みうる。ツボクサの原産国はアジア、アフリカ、インド等であるが、その栽培方法や産地は特に限定されない。
【0014】
ツボクサエキス抽出物の調製法(抽出法)は特に限定されるものではないが、ツボクサの一部(好ましくは、葉及び茎)や全草をそのまま、あるいは乾燥物を、溶媒等で抽出して得ることができる。抽出に用いる溶媒は、例えば、低級1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられ、それらの一種又は二種以上を用いることができる。好ましい抽出法の例としては、濃度0~100 vol% の含水エチルアルコール、プロピレングリコール又は1,3-ブチレングリコールを用い、室温で、又は加温して1~10日間抽出を行った後濾過し、得られた濾液を更に1週間程放置して熟成させ、再び濾過を行う。ツボクサエキス抽出物として、抽出液をそのまま用いてもよいし、脱溶媒して乾燥固形物を用いてもよい。
【0015】
ツボクサエキス抽出物は、医薬部外品添加物として、医薬部外品原料規格2021の成分コード520774として登録されている。また、例えば、セキセツソウ抽出液BG70(丸善製薬)、T.E.C.A(SEPPIC S.A.)、センテリンCG(SAMI-SABINSA GROUP LIMITED)、CENTELLA ASIATICA BT(Bio Component Research)、CICA EX(BG)(Radiant, Inc)、CICAegg (登録商標)(株式会社ナノエッグ)、Neosome NE ダーマファーム(Nexthia USA LLC)、VEGETOL HYDROCOTYL GR 040 HYDRO(Gattefosse S.A.S.)として市場から入手可能である。
【0016】
本発明の皮膚外用組成物は、組成物全体に対してツボクサエキス抽出物を、乾燥固形分として0.0000001 (1×10-7) 質量%以上、好ましくは0.000001 (1×10-6) 質量%以上、より好ましくは0.00001 (1×10-5) 質量%以上、さらに好ましくは0.0001 (1×10-4) 質量%以上、特に好ましくは0.001 (1×10-3) 質量%以上含む。また、本発明の皮膚外用組成物は、組成物全体に対してツボクサエキス抽出物を、乾燥固形分として5 質量%以下、好ましくは2 質量%以下、より好ましくは1 質量%以下、さらに好ましくは0.5 質量%以下、特に好ましくは0.1 質量%以下含む。ツボクサエキス抽出物として抽出液を用いる場合は、乾燥固形分に換算したときに上記範囲となるように配合すればよい。この範囲内であれば、抽出物を安定に配合することができ、かつ高い効果(ヘパリン類似物質の保湿作用を増強する効果など)を発揮することができる。乾燥固形分としてのツボクサエキス抽出物の含有量が、0.0000001 (1×10-7) 質量%以上であると、ヘパリン類似物質の保湿作用を増強することができ、5 質量%を超えても、それ以上に効果が上がりにくくなる。
【0017】
ツボクサエキス抽出物を含む皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を共配合されていない場合にも(つまり、単独でも)、保湿作用を示すことがあるが;本発明のように、ヘパリン類似物質とツボクサエキス抽出物とを共配合した皮膚外用組成物は、ツボクサエキス抽出物の濃度が単独では保湿作用を示さない低濃度であっても、ヘパリン類似物質の保湿作用を増強しうる。また、ヘパリン類似物質とツボクサエキス抽出物とを共配合した皮膚外用組成物は、ツボクサエキス抽出物によってヘパリン類似物質の保湿作用を増強するが、その保湿作用の増強は、ツボクサエキス抽出物が単独で示す保湿作用よりも高くなりうる。このように、ヘパリン類似物質は、ツボクサエキス抽出物によって、相乗的に保湿作用を高められ得る。この相乗効果については、本明細書の後述の実施例によっても示される。
【0018】
[1-3.液状担体]
本発明の皮膚外用組成物は、組成物の性状に応じて適切な液状担体を含むことができる。例えば、本発明の皮膚外用組成物が水溶液(例えば、化粧水や美容液)やジェルであれば主な担体を水とすることができるし、乳液であれば水とともに油分(例えば、ワセリンなど)を主な担体とすることができるし、軟膏や油性クリームであれば主な担体を油分とすることができる。
【0019】
本発明の皮膚外用組成物は、液状担体として、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールを含むことができる。さらに、本発明の皮膚外用組成物は、液状担体として、エタノールやプロパノールなどの低級アルコールを含んでもよい。ただし、本発明の皮膚外用組成物を敏感肌に適用したときの皮膚への刺激を少なくすることが望まれる場合には、皮膚外用組成物が低級アルコール、特にエタノールを含まないか、または実質的に含まないことが好ましい。
【0020】
[1-4.他の配合成分]
本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質、ツボクサエキス抽出物及び液状担体に加えて、皮膚外用組成物に求められる効果、あるいは、所望とする製剤の剤形に応じて、他の配合成分を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の皮膚外用組成物は、他の有効成分、例えば、アンチエイジング剤、抗炎症剤、アクネケア剤、抗ヒスタミン剤などを含んでいてもよい。アンチエイジング剤の例には、ナイアシンアミド(ニコチン酸アミドともいう)、アルブチン、トラネキサム酸、ビタミン類(例えば、トコフェロール誘導体、ビタミンC誘導体、パルミチン酸レチノール等)、エラグ酸、リノール酸などが含まれ;抗炎症剤の例には、アラントイン、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム)、ε-アミノカプロン酸などが含まれ;アクネケア剤の例には、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸などが含まれ;抗ヒスタミン剤の例には、ジフェンヒドラミンまたはその塩などが含まれる。
【0022】
本発明の皮膚外用組成物は、さらに湿潤剤を含んでいてもよい。前述のツボクサエキス抽出物も湿潤剤として機能し得るが;さらに、1)セラミド又はセラミド類似成分、2)リン脂質ポリマー、3)アロエエキス、4)アミノ酸系湿潤剤、5)スクワラン、または6)多価アルコールなどが含まれうる。これらは、皮膚外用組成物に求められる保湿作用などに応じて、その配合量を設定することができる。
【0023】
1)セラミドとはスフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴイドに脂肪酸がアミド結合した化合物である。セラミド類似成分は、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドのような糖セラミドであっても、ソフケア(登録商標)セラミドSL-E(花王株式会社製、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチルヘキサデカナミド))、CERACUTE(登録商標)-L(日油株式会社、グリセリル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバメート・メタクリル酸ステアリル共重合体)のような合成セラミドであってもよい。本発明の皮膚外用組成物におけるセラミド及び/又はセラミド類似成分の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0024】
2)リン脂質ポリマーとは、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体であり、生体膜の主要な構成成分であるリン脂質に類似する生体適合性ポリマーである。リン脂質ポリマーの例には、リピジュア (登録商標)(日油株式会社、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、NIKKOL (登録商標) レシノール S-10(日光ケミカルズ株式会社、水素添加大豆リン脂質)などが含まれる。本発明の皮膚外用組成物におけるリン脂質ポリマーの含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0025】
3)アロエエキスとは、ユリ科の薬用植物であるアロエ(ケープアロエ、アロエベラ、キダチアロエなど)の葉肉などからの抽出成分である。アロエエキスには、ウロン酸、脂質、蛋白、アミノ酸、アントラキノン系化合物(アロイン、アロエエモジン等)が含有しているとされている。本発明の皮膚外用組成物におけるアロエエキスの含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0026】
4)アミノ酸系湿潤剤とは、グルタミン酸などのアミノ酸から導かれる湿潤剤である。アミノ酸系湿潤剤としては、ピロリドンカルボン酸又はその塩類(例えば、ナトリウム塩)、ピロリジンカルボン酸又はその塩類、アシルピロリジンカルボン酸又はその塩類などが挙げられる。アミノ酸系湿潤剤のアミノ酸は、ラセミ体であってもよいし、光学活性体であってもよい。アミノ酸系湿潤剤は、AJIDEW (登録商標)(味の素株式会社)、PRODEW (登録商標)(味の素株式会社)、アクアデュウ(登録商標) (味の素株式会社)などとして市場から入手可能である。本発明の皮膚外用組成物におけるアミノ酸系湿潤剤の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0027】
5)スクワランとは、アイザメなど深海に生息するサメ類の肝油から得られる炭化水素であるスクワレンを還元(水素添加)させて得られる飽和炭化水素であり、無色液体である。本発明の皮膚外用組成物におけるアミノ酸系湿潤剤の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0028】
湿潤剤としての6)多価アルコールの例には、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが含まれる。
【0029】
本発明の皮膚外用組成物は、粘稠剤を含んでいてもよい。粘稠剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の皮膚外用組成物は、組成物のpHを所望の値に調整するためのpH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤の例には、無機酸(リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、硫酸、硝酸、塩酸など)及びその塩;有機酸(モノカルボン酸(例えば、酢酸、ソルビン酸)、ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸)、オキシカルボン酸[例えば、ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、グルコン酸)、ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等)等]及びその塩;無機塩基(金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)等);有機塩基(アミン類[例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等)等]、アミノ酸(例えば、グリシン等)等)があげられる。本発明の皮膚外用組成物は、複数種のpH調整剤を組み合わせて含んでいてもよい。
【0031】
本発明の皮膚外用組成物は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤の例には、いわゆる「パラベン」と称されるパラオキシ安息香酸エステルが含まれる。具体的には、メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)、エチルパラベン(パラオキシ安息香酸エチル)、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン等、及びそれらの塩が防腐剤として例示される。本発明の皮膚外用組成物は、複数種のパラベンを組み合わせて含んでいてもよく、例えば、メチルパラベンと、エチルパラベンまたはプロピルパラベンとを組み合わせてもよい。本発明の皮膚外用組成物にパラベンが含まれる場合には、組成物に対するパラベンの含有量は、1w/v%以下、好ましくは 0.5 w/v%以下、さらに好ましくは0.25w/v%以下でありうる。
【0032】
本発明の皮膚外用組成物は、剤形が乳液である場合には乳化剤を含む。乳化剤は、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性界面活性剤のいずれかでありうる。乳化剤の例には、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル、ジステアリン酸グリコール、レシチン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステアレス-2、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルなどが含まれるが、特に限定されない。
【0033】
本発明の皮膚外用組成物は、軟化剤、着色剤や香料などを含有してもよい。
【0034】
[1-5. 皮膚外用組成物の剤形]
本発明の皮膚外用組成物は液状製剤であることが好ましいが、水性製剤、油性製剤、エマルション製剤(水中油型エマルション、油中水型エマルションのいずれもよい)、サスペンション製剤、エアゾール製剤、ゲル製剤など、剤形は特に限定されない。また、本発明の皮膚外用組成物は、化粧品の剤形として、固型(ソリッド)、プレスト、オイル(油)、液状(リキッド)、ジェル、練り(バーム)、マッド、クリーム、乳液、ローション、フォーム(バブル)、フィルム、パウダー(粉)、水、ペンシル、スプレー(ミスト)、スティック、シート等であり得る。
【0035】
本発明の皮膚外用組成物のpHは5~7の範囲に調整されていることが好ましい。皮膚外用組成物の皮膚への浸透性を高めやすいからである。
【0036】
本発明の皮膚外用組成物の粘度は、製剤の剤形、及び組成物を皮膚に適用するときに求められる使用感に応じて、適宜調整されうる。例えば、組成物の粘度が低い方が、皮膚に適用されたときに濡れ広がりやすさを有しやすく;組成物の粘度が高い方が、皮膚に適用されたときに馴染みやすさを有しやすい。例えば目安として、本発明の皮膚外用組成物が水溶液であれば粘度400~1300mPa・sの範囲にあり、乳液であれば粘度2000~12000mPa・sの範囲にあり得る。粘度は、レオメーター条件:25℃、0.33rpm 90秒後の粘度として測定される。
【0037】
本発明の皮膚外用組成物は、容器に充填されているが、例えば、遮光容器に充填されている。また、本発明の皮膚外用組成物はポンプ又はスプレータイプの容器に充填されることで、皮膚への適用を簡便にすることができる。
【0038】
[2.皮膚外用組成物の用途]
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用、例えば、皮膚に塗布されることで使用される。例えば、皮膚外用組成物を直接皮膚にすりこんだり、皮膚外用組成物を染み込ませたガーゼなどを皮膚に貼ったりすることができる。本発明の皮膚外用組成物を適用する患部は、皮膚である限り特に限定されず、例えば、特に保湿が求められる患部、例えば、顔、粉ふきがあるひざやかかと、背中、などが例示されるが、特に限定されない。皮膚に適用する頻度は、特に限定されないが、1日1~数回程度でありうる。
【0039】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用されることで、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用などを発揮することが期待され;それにより、肌荒れやあれ性の改善、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防いだり、肌を整えて皮膚をすこやかに保つ、皮膚にうるおいを与える、皮膚を保護する、皮膚の乾燥を防ぐ、などの効果が得られうる。
【0040】
本発明の皮膚外用組成物は、特に、皮膚への保湿作用が高いため、皮膚の保湿剤として用いられることが好ましい。
【0041】
[3.皮膚外用組成物の製造方法]
本発明の皮膚外用組成物の製法は、特に限定されず、剤形に応じて常法にしたがって製造することができる。例えば、所定量の各配合成分(少なくとも、ヘパリン類似物質及びツボクサエキス抽出物を含む)を、液状担体に順次、添加・混合することで得ることができる。各剤形の組成物の製造方法は、例えば、「エマルションの調製技術事例集(出版社:技術情報協会、著者:水野朝子, 寺田千春 企画編集)」に記載がされており、参照することができる。
【実施例0042】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これら実施例によって本発明は限定されない。
【0043】
[実施例1]及び[実施例2]:精製水に、表1に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)とツボクサエキス抽出物(セキセツソウ抽出液BG70(丸善製薬)、1%溶液)とを添加して常温で溶解させた。
[比較例1]:精製水に、表1に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)を添加して常温で溶解させた。
[比較例2]及び[比較例3]:精製水に、表1に示す通りの配合量のツボクサエキス抽出物(セキセツソウ抽出液BG70(丸善製薬)、1%溶液)を添加して常温で溶解させた。
【0044】
実施例1及び2並びに比較例1~3で調製した検体、及び水(対照検体)について、被験者(ヒト2名)の皮膚における保湿作用を確認した。まず、各検体の塗布前に、被験者の皮膚塗布部位(前腕内側)の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布前水分量Xとした。そして、当該部位の直径約0.8 cm の円領域に、各検体5μLを塗布した。塗布後30分経過した時点で、皮膚塗布部位の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布後水分量Yとした。
【0045】
各検体ついて、「(塗布後水分量Y-塗布前水分量X)/塗布前水分量X×100」を算出して水分上昇率Z(%)とした。各検体での水分上昇率Z(%)から、対照検体である水での水分上昇率(%)を差し引いた値を、表1の水分上昇率として示した。
【0046】
皮膚水分量の測定は、皮表角層水分量測定装置 SKICON(登録商標)-200EX (株式会社ヤヨイ)を用いて行った。本装置は、高周波を用いた交流電流に対する伝導度(conductance μS)を測定することで、「表層」の角層の水分量を測定することができる。高周波電流は物の表面を流れやすく、伝導度と水分含有量の間には密接な相関関係があるからである。このように、本実施例では、「表層」の角層の水分量を測定することで、皮膚の柔らかさや滑らかさを適切に評価している。
【0047】
【0048】
表1に示される通り、0.1%のヘパリン類似物質を含有する比較例1の検体では水分量の上昇率が5.0 %であり、0.000001(1×10-6)%のツボクサエキス抽出物(固形分)を含有する比較例2の検体では水分量の上昇率が見られなかった(-0.5%)。比較例1と比較例2の結果を踏まえると、0.1%のヘパリン類似物質と0.000001(1×10-6)%のツボクサエキス抽出物を含有する検体による水分上昇率は、相加効果として理論値4.5 %である。ところが、0.1%のヘパリン類似物質と0.000001(1×10-6)%のツボクサエキス抽出物を含有する実施例1の検体では4.5%を大きく上回る上昇率(9.5%)を示しており、ヘパリン類似物質の保湿効果を、ツボクサエキス抽出物が相乗的に増強していることがわかる。
【0049】
また、表1に示される通り、0.1%のヘパリン類似物質を含有する比較例1の検体では水分量の上昇率が5.0 % であり、0.001 (1×10-3)%のツボクサエキス抽出物を含有する比較例3の検体では水分量の上昇率が9.5 % であった。比較例1と比較例3の結果を踏まえると、0.1%のヘパリン類似物質と0.001 (1×10-3)%のツボクサエキス抽出物を含有する検体による水分上昇率は、相加効果として理論値14.5 %である。ところが、0.1%のヘパリン類似物質と0.001 (1×10-3)%のツボクサエキス抽出物を含有する実施例2の検体では14.5%を大きく上回る上昇率(24.0%)を示しており、ヘパリン類似物質の保湿効果を、ツボクサエキス抽出物が相乗的に増強していることがわかる。
【0050】
このように、表1に示された結果から、ツボクサエキス抽出物は、その濃度に応じて、ヘパリン類似物質の保湿効果を相乗的に増強していることがわかる。
【0051】
[実施例3]化粧水の調製
表2に記載の水性溶媒に粘稠剤を加えて分散した。当該分散して得られた溶液に、表2に記載の残りの成分(有効成分、pH調整剤、防腐剤、ツボクサエキス抽出物)を全て加え、室温で混合した。その後、70℃まで温度を昇温させながら撹拌した後、30℃まで冷却させながら撹拌した後、室温に戻し、組成物を得た。得られた組成物は、成分が溶解状態にあった。
【0052】
【0053】
表2において、%は、質量%を示す。また、キサンタンガムとしてはKELTROL (登録商標) CG-SFT(CP Kelco Inc. 社製)を、カルボキシビニルポリマーとしてはNTC-CARBOMER 381(Guangzhou Tinci Materials Technology社製)を、ツボクサエキス抽出物(BG70)としてはセキセツソウ抽出液BG70(丸善製薬社製)を使用した。
【0054】
[実施例4]乳液の調製
表3に記載の水性溶媒に粘稠剤を加えて分散した。当該混合して得られた溶液に、有効成分、pH調整剤、ツボクサエキス抽出物を加え80℃まで温度を昇温させた(溶解液A)。別途、油性成分、界面活性剤(乳化剤)、防腐剤を80℃まで温度を昇温させながら撹拌した(溶解液B)。80℃の溶解液Bを撹拌しながら、80℃の溶解液Aと混合した後、30℃まで冷却させながら撹拌した。その後、室温に戻し、組成物を得た。得られた組成物は、成分が乳化状態にあった。
【0055】
【0056】
表3において、%は、質量%を示す。また、カルボキシビニルポリマーとしてはNTC-CARBOMER 381(Guangzhou Tinci Materials Technology社製)を、ステアリン酸ポリオキシル40としてはNIKKOL MYS-40MV(日光ケミカルズ株式会社製)を、モノステアリン酸グリセリンとしてはNIKKOL MGS-BMV(日光ケミカルズ株式会社製)を、ツボクサエキス抽出物(BG70)としてはセキセツソウ抽出液BG70(丸善製薬社製)を使用した。
【0057】
実施例3で調製した化粧水、及び比較例4として市場で入手可能な化粧水(NALC(登録商標)薬用モイストローション)、並びに実施例4で調製した乳液、及び比較例5として市場で入手可能な乳液(NALC(登録商標)薬用ミルクローション)について、被験者(ヒト8名)の皮膚における保湿作用を確認した。まず、各検体の塗布前に、被験者の皮膚塗布部位(前腕内側)の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布前水分量Xとした。そして、当該部位の直径約0.8 cm の円領域に、各検体5μLを塗布した。塗布後1時間、2時間、4時間、及び6時間経過した時点で、皮膚塗布部位の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布後水分量Yとした。
【0058】
各検体ついて、「(塗布後水分量Y-塗布前水分量X)/塗布前水分量X×100」を算出した値を表4(実施例3及び比較例4)及び表5(実施例4及び比較例5)の水分上昇率(%)として示した。なお、皮膚水分量の測定は、皮表角層水分量測定装置 SKICON-200EX (株式会社ヤヨイ)を用いて行った。
【0059】
【0060】
【0061】
比較例4で使用したNALC薬用モイストローションは、有効成分としてヘパリン類似物質とグリチルリチン酸ジカリウムを配合された化粧水であり、その他成分として、精製水、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液、ヒアルロン酸ナトリウム(2)、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、ユズセラミド、1,3-ブチレングリコール、濃グリセリン、グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液、クエン酸、クエン酸ナトリウム、フェノキシエタノールを含むが、ツボクサエキス抽出物を含有しない。表4に示す通り、実施例3で調製した化粧水は、比較例4の市販品化粧水よりも、皮膚の水分上昇率を高めており、保湿性能が高いことがわかる。
【0062】
比較例5で使用したNALC薬用ミルクローションは、有効成分としてヘパリン類似物質とグリチルリチン酸ジカリウムを配合された乳液であり、その他成分として、精製水、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、濃グリセリン、ソルビット液、ヒアルロン酸ナトリウム(2)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液、スクワラン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、メドウフォーム油、軽質流動イソパラフィン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7E.O.)、ポリアクリ ル酸アミド、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、水酸化カリウム、天然ビタミンE、エデト酸二ナトリウム、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチルを含むが、ツボクサエキス抽出物を含有しない。表5に示す通り、実施例4で調製した乳液は、比較例4の市販品乳液よりも、皮膚の水分上昇率を高めており、保湿性能が高いことがわかる。
本発明によれば、保湿作用が増強された皮膚外用組成物を提供することができるため、皮膚にうるおいを与えたり、皮膚を保護したり、皮膚の乾燥を防いだりするための化粧料等として本発明を利用することができる。