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特開2024-22906度数可変コンタクトレンズ、及び度数可変コンタクトレンズの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022906
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】度数可変コンタクトレンズ、及び度数可変コンタクトレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240214BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20240214BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B3/14
G02C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126352
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000131245
【氏名又は名称】株式会社シード
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 卓
(72)【発明者】
【氏名】狩野 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒田 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】福島 努
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BC04
2H006BC07
2H006BD03
(57)【要約】
【課題】製造が容易であり、かつ十分な度数の変化が可能な度数可変コンタクトレンズを提供すること。
【解決手段】度数可変コンタクトレンズは、第1の空間に充填されている液体と、前記第1の空間に隣接する第2の空間に充填されており、前記液体と屈折率が異なる気体と、前記第1の空間と前記第2の空間とを仕切るとともに、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する貫通孔が形成されており、前記液体の形体を変えるように駆動される仕切りアクチュエータと、前記第1の空間及び前記第2の空間の外周を覆う隔壁部と、前記隔壁部の前記第1の空間側を封止する第1の蓋部と、前記隔壁部の前記第2の空間側を封止する第2の蓋部と、前記仕切りアクチュエータに電力を供給するとともに前記仕切りアクチュエータの駆動を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空間に充填されている液体と、
前記第1の空間に隣接する第2の空間に充填されており、前記液体と屈折率が異なる気体と、
前記第1の空間と前記第2の空間とを仕切るとともに、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する貫通孔が形成されており、前記液体の形体を変えるように駆動される仕切りアクチュエータと、
前記第1の空間及び前記第2の空間の外周を覆う隔壁部と、
前記隔壁部の前記第1の空間側を封止する第1の蓋部と、
前記隔壁部の前記第2の空間側を封止する第2の蓋部と、
前記仕切りアクチュエータに電力を供給するとともに前記仕切りアクチュエータの駆動を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする度数可変コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記隔壁部と前記第1の空間との隙間、又は前記隔壁部と前記第2の空間との隙間を水密に封止する封止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項3】
前記封止部は、前記隔壁部と前記第1の蓋部と前記第2の蓋部とに囲まれた第3の空間に充填されていることを特徴とする請求項2に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第1の蓋部及び前記第2の蓋部の外周を覆う被覆部を備えることを特徴とする請求項1に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項5】
前記第1の蓋部及び前記第2の蓋部は、剛性を有する材料からなり、当該度数可変コンタクトレンズを装用中に加わる圧力により変形しないことを特徴とする請求項1に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項6】
前記第1の蓋部又は前記第2の蓋部には、前記第3の空間に連通する穴部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項7】
前記貫通孔は、円形をなすことを特徴とする請求項1に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項8】
前記仕切りアクチュエータは、前記貫通孔の中心を中心軸とする球面の一部をなすことを特徴とする請求項7に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項9】
前記仕切りアクチュエータには、前記貫通孔の中心から放射状に隙間部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項10】
前記仕切りアクチュエータは、前記貫通孔の外周に沿って配列された複数の部材からなることを特徴とする請求項7に記載の度数可変コンタクトレンズ。
【請求項11】
第1の空間及び前記第1の空間に隣接する第2の空間の外周を覆う隔壁部と、前記隔壁部の前記第1の空間側を封止する第1の蓋部と、前記第1の空間と前記第2の空間とを仕切るとともに、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する貫通孔が形成されており、前記第1の空間に充填されている液体の形体を変えるように駆動される仕切りアクチュエータと、に囲まれている前記第1の空間に前記液体を充填する液体充填ステップと、
前記液体と屈折率が異なる気体雰囲気中において、前記隔壁部と前記第1の蓋部との間の隙間、及び前記隔壁部と前記隔壁部の前記第2の空間側を封止する第2の蓋部との間の隙間を封止する封止ステップと、
を含むことを特徴とする度数可変コンタクトレンズの製造方法。
【請求項12】
前記封止ステップは、前記隔壁部と前記第1の蓋部と前記第2の蓋部とに囲まれた第3の空間に封止部を充填することを特徴とする請求項11に記載の度数可変コンタクトレンズの製造方法。
【請求項13】
前記封止ステップは、前記仕切りアクチュエータに電力を供給するとともに前記仕切りアクチュエータの駆動を制御する制御部を水密に封止することを特徴とする請求項11に記載の度数可変コンタクトレンズの製造方法。
【請求項14】
前記封止ステップの後に、前記第1の蓋部及び前記第2の蓋部の外周を覆う被覆部形成する被覆部形成ステップを含むことを特徴とする請求項11に記載の度数可変コンタクトレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、度数可変コンタクトレンズ、及び度数可変コンタクトレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、混和しない2種類の液体の界面における屈折率差を利用することにより、焦点位置を変えることができる可変焦点レンズが開示されている。2種類の液体は、貫通孔が形成されたアクチュエータにより仕切られ、第1の液室と第2の液室とにそれぞれ注入されている。第1の液室には、第1の液体に対して親液性を有し、かつ第2の液体に対して疎液性を有するように表面処理が施されている。同様に、第2の液室には、第2の液体に対して親液性を有し、かつ第1の液体に対して疎液性を有するように表面処理が施されている。このように構成された可変焦点レンズにおいて、アクチュエータを駆動し、貫通孔に形成される2種類の液体の界面を変形させることにより焦点位置を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-80047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微小なコンタクトレンズにおいて、十分に度数を変化させるためには、界面における屈折率差が大きいことが好ましい。界面における屈折率差が大きいと、わずかな界面の変形で十分に度数を変化させることができる。
【0005】
また、微小なコンタクトレンズでは、第1の液室と第2の液室とに異なる表面処理を施すことは困難である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、製造が容易であり、かつ十分な度数の変化が可能な度数可変コンタクトレンズ、及び度数可変コンタクトレンズの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る度数可変コンタクトレンズは、第1の空間に充填されている液体と、前記第1の空間に隣接する第2の空間に充填されており、前記液体と屈折率が異なる気体と、前記第1の空間と前記第2の空間とを仕切るとともに、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する貫通孔が形成されており、前記液体の形体を変えるように駆動される仕切りアクチュエータと、前記第1の空間及び前記第2の空間の外周を覆う隔壁部と、前記隔壁部の前記第1の空間側を封止する第1の蓋部と、前記隔壁部の前記第2の空間側を封止する第2の蓋部と、前記仕切りアクチュエータに電力を供給するとともに前記仕切りアクチュエータの駆動を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記隔壁部と前記第1の空間との隙間、又は前記隔壁部と前記第2の空間との隙間を水密に封止する封止部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記封止部は、前記隔壁部と前記第1の蓋部と前記第2の蓋部とに囲まれた第3の空間に充填されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記第1の蓋部及び前記第2の蓋部の外周を覆う被覆部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記第1の蓋部及び前記第2の蓋部は、剛性を有する材料からなり、当該度数可変コンタクトレンズを装用中に加わる圧力により変形しないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記第1の蓋部又は前記第2の蓋部には、前記第3の空間に連通する穴部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記貫通孔は、円形をなすことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記仕切りアクチュエータは、前記貫通孔の中心を中心軸とする球面の一部をなすことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記仕切りアクチュエータには、前記貫通孔の中心から放射状に隙間部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズは、上記発明において、前記仕切りアクチュエータは、前記貫通孔の外周に沿って配列された複数の部材からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズの製造方法は、第1の空間及び前記第1の空間に隣接する第2の空間の外周を覆う隔壁部と、前記隔壁部の前記第1の空間側を封止する第1の蓋部と、前記第1の空間と前記第2の空間とを仕切るとともに、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する貫通孔が形成されており、前記第1の空間に充填されている液体の形体を変えるように駆動される仕切りアクチュエータと、に囲まれている前記第1の空間に前記液体を充填する液体充填ステップと、前記液体と屈折率が異なる気体雰囲気中において、前記隔壁部と前記第1の蓋部との間の隙間、及び前記隔壁部と前記隔壁部の前記第2の空間側を封止する第2の蓋部との間の隙間を封止する封止ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズの製造方法は、上記発明において、前記封止ステップは、前記隔壁部と前記第1の蓋部と前記第2の蓋部とに囲まれた第3の空間に封止部を充填することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズの製造方法は、上記発明において、前記封止ステップは、前記仕切りアクチュエータに電力を供給するとともに前記仕切りアクチュエータの駆動を制御する制御部を水密に封止することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一態様に係る度数可変コンタクトレンズの製造方法は、上記発明において、前記封止ステップの後に、前記第1の蓋部及び前記第2の蓋部の外周を覆う被覆部形成する被覆部形成ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、製造が容易であり、かつ十分な度数の変化が可能な度数可変コンタクトレンズ、及び度数可変コンタクトレンズの製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る度数可変コンタクトレンズの断面図である。
図2図2は、仕切りアクチュエータの拡大図である。
図3図3は、仕切りアクチュエータが駆動される様子を表す図である。
図4図4は、度数可変コンタクトレンズの製造方法の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、液体充填ステップを示す図である。
図6図6は、封止ステップを示す図である。
図7図7は、変形例1に係る度数可変コンタクトレンズの概略的な構成図である。
図8図8は、変形例2に係る度数可変コンタクトレンズの概略的な構成図である。
図9図9は、変形例3に係る度数可変コンタクトレンズの仕切りアクチュエータの拡大図である。
図10図10は、変形例4に係る度数可変コンタクトレンズの仕切りアクチュエータの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の度数可変コンタクトレンズ、及び度数可変コンタクトレンズの製造方法の詳細について実施の形態に即して説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0024】
(実施の形態)
〔度数可変コンタクトレンズの構成〕
図1は、本発明の実施の形態に係る度数可変コンタクトレンズの断面図である。図1に示すように、度数可変コンタクトレンズ100は、フレキシブル基盤1と、制御部2と、配線3と、仕切りアクチュエータ4と、液体5と、気体6と、貫通孔7と、界面8と、第1の蓋部9と、第2の蓋部10と、隔壁部11と、樹脂封止部12と、被覆部13と、を備える。以下において、第1の蓋部9と隔壁部11と仕切りアクチュエータ4とに囲まれた空間を第1の空間という。同様に、第2の蓋部10と隔壁部11と仕切りアクチュエータ4とに囲まれた空間を第2の空間という。なお、第1の空間と第2の空間との貫通孔7における境界は、界面8ではなく、仕切りアクチュエータ4の上面又は下面に沿った面とする。また、第1の蓋部9と第2の蓋部10と隔壁部11とに囲まれた空間を第3の空間という。
【0025】
フレキシブル基盤1は、可撓性を有するフレキシブル基板であり、制御部2が実装されているとともに、配線3が電気的に接続されている。
【0026】
制御部2は、仕切りアクチュエータ4に電力を供給するとともに仕切りアクチュエータ4の駆動を制御する。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路、メモリ等の記憶装置、蓄電可能なバッテリ、各種信号を受信する受信回路、各種信号を出力する出力回路等からなる。制御部2が受信回路を有する場合、制御部2は、外部から受信した信号に応じて度数可変コンタクトレンズ100の度数を制御することができる。制御部2は、度数可変コンタクトレンズ100の度数を遠方視と近方視と2つの度数に切り換えてもよいが、制御部2が電流モニタを有する場合、電流の値に応じて度数を連続的に変えてもよい。
【0027】
配線3は、金属等の導電性材料からなり、制御部2と仕切りアクチュエータ4とを電気的に接続する。
【0028】
仕切りアクチュエータ4は、第1の空間と第2の空間とを仕切るとともに、液体5の形体を変えるように駆動される。仕切りアクチュエータ4には、第1の空間と第2の空間とを連通する貫通孔7が形成されている。仕切りアクチュエータ4は、例えば高分子アクチュエータであるが、形状記憶合金であってもよい。高分子アクチュエータは、例えばイオン導電膜からなるポリマーの両面に電極を形成したものであり、電極間に電圧を印加すると内部のカチオンが片側に移動し、膨潤して体積が大きくなることにより屈曲する。仕切りアクチュエータ4として高分子アクチュエータを用いることにより、低電力で仕切りアクチュエータ4を駆動させることができる。
【0029】
図2は、仕切りアクチュエータの拡大図である。図2は、図1の矢印Aの方向から仕切りアクチュエータ4を見た図である。配線3の一端は、仕切りアクチュエータ4に電気的に接続されている。配線3の他端は、フレキシブル基盤1を経由して制御部2に電気的に接続されている。仕切りアクチュエータ4は、貫通孔7の中心を中心軸とする球面の一部をなす。
【0030】
液体5は、第1の空間に充填されている。液体5は、度数可変コンタクトレンズ100の機能を損なわない程度に透明度が高い液体であることが好ましい。また、液体5は、液体に限られず、仕切りアクチュエータ4の駆動を妨げない程度に粘性が小さい粘弾性体であってもよい。
【0031】
気体6は、第1の空間に隣接する第2の空間に充填されており、液体と屈折率が異なる。気体6は、例えば窒素であるが、度数可変コンタクトレンズ100の機能を損なわない程度に透明度が高い気体であればよい。
【0032】
貫通孔7は、円形をなし、第1の空間と第2の空間とを連通する。
【0033】
界面8は、液体5と気体6との界面である。
【0034】
第1の蓋部9は、隔壁部11の第1の空間側を封止し、第1の空間に充填された液体5を漏らさないように収容する。第1の蓋部9は、剛性を有する材料からなり、度数可変コンタクトレンズ100を装用中に加わる瞼からの圧力等により変形しない。
【0035】
第2の蓋部10は、隔壁部11の第2の空間側を封止し、第2の空間に充填された気体6を漏らさないように収容する。第2の蓋部10は、剛性を有する材料からなり、度数可変コンタクトレンズ100を装用中に加わる瞼からの圧力等により変形しない。
【0036】
隔壁部11は、第1の空間及び第2の空間の外周を覆う円筒形の隔壁である。隔壁部11は、第1の蓋部9又は第2の蓋部10と一体的に形成されていてもよい。
【0037】
樹脂封止部12は、第3の空間に充填されており、第1の空間及び第2の空間を水密に封止する。具体的には、第1の蓋部9と隔壁部11とが一体的に形成されている場合、樹脂封止部12は、隔壁部11と第2の蓋部10との間の隙間を水密に封止する。樹脂封止部12は、例えばシリコーン、エポキシ樹脂等の樹脂材料からなるが、第1の空間及び第2の空間を水密に封止可能であればどのような材料であってもよく、樹脂以外の接着剤等であってもよい。
【0038】
被覆部13は、第1の蓋部9及び第2の蓋部10の外周を覆う。被覆部13は、pHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)、SHG(シリコーンハイドロゲル)等のソフトコンタクトレンズに用いられる材料により形成されているが、ハードコンタクトレンズに用いられる材料により形成されていてもよい。
【0039】
〔度数可変コンタクトレンズの駆動〕
図3は、仕切りアクチュエータが駆動される様子を表す図である。図3には、駆動される前の仕切りアクチュエータ4aを破線で図示し、駆動後の仕切りアクチュエータ4bを実線で図示した。仕切りアクチュエータ4は、第1の空間の体積が小さくなると同時に第2の空間の体積が大きくなるように、図3の下方に移動するように駆動される。すると、第1の空間に充填されている液体5が押し出されて、液体5の形体が変化する。具体的には、液体5の平面状の界面8a(破線)が球面状の界面8b(実線)に変形する。そして、度数可変コンタクトレンズ100の屈折率が変化し、度数可変コンタクトレンズ100の度数が変化する。
【0040】
〔度数可変コンタクトレンズの製造方法〕
図4は、度数可変コンタクトレンズの製造方法の手順を示すフローチャートである。図5は、液体充填ステップを示す図である。図5に示すように、隔壁部11と第1の蓋部9と仕切りアクチュエータ4とに囲われている第1の空間にディスペンサDから貫通孔7を介して液体5を充填する(ステップS1:液体充填ステップ)。なお、この例では、隔壁部11と第1の蓋部9とが一体的に形成されているものとする。
【0041】
図6は、封止ステップを示す図である。気体6の雰囲気中において、図6に示すように、第1の蓋部9と第2の蓋部10と隔壁部11とに囲まれた第3の空間に、ディスペンサDから第3の空間に連通する穴部14、及び第1の蓋部9と第2の蓋部10との間の隙間15を介して樹脂を充填し、樹脂封止部12を形成ことにより、隔壁部11と第2の蓋部10との間の隙間を封止する(ステップS2:封止ステップ)。このとき、穴部14及び隙間15から気体が排出されることにより、第3の空間内に気体が残留することを防止している。
【0042】
その後、第1の蓋部9及び第2の蓋部10の外周を覆う被覆部13を形成し(ステップS3:被覆部形成ステップ)、度数可変コンタクトレンズ100が製造される。
【0043】
以上説明した実施の形態によれば、第1の空間に液体5が充填されており、第2の空間に気体6が充填されていることにより、第2の空間に液体が充填されている場合と比較して、界面8における屈折率差を大きくすることができる。そのため、微小なコンタクトレンズであっても、わずかな液体5の界面8の変形で十分に度数を変化させることが可能となる。
【0044】
また、度数可変コンタクトレンズ100では、第1の空間に液体5が充填されており、第2の空間に気体6が充填されていることにより、第1の空間と第2の空間とに異なる表面処理を施す必要がなく、製造が容易である。
【0045】
また、度数可変コンタクトレンズ100において、第1の蓋部9及び第2の蓋部10は、剛性を有する材料からなり、度数可変コンタクトレンズ100を装用中に加わる圧力により変形しないため、瞼からの圧力等により度数可変コンタクトレンズ100の度数が不安定となることが防止されている。
【0046】
また、度数可変コンタクトレンズ100において、第1の蓋部9と第2の蓋部10と隔壁部11とに囲まれた第3の空間に樹脂を充填して封止することにより、微小であり、かつ水密性が求められるコンタクトレンズであっても、容易に製造することができる。
【0047】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る度数可変コンタクトレンズの概略的な構成図である。図7に示すように、度数可変コンタクトレンズ100Aにおいて、第1の蓋部9と第2の蓋部10との間には、第2の蓋部10が隔壁部11に当接した状態において第1の蓋部9と第2の蓋部10と隔壁部11とに囲まれた第3の空間に連通する隙間16Aが形成されている。その結果、封止ステップにおいて、隙間16Aから気体が排出されることにより、第3の空間内に気体が残留することを防止することができる。
【0048】
(変形例2)
図8は、変形例2に係る度数可変コンタクトレンズの概略的な構成図である。図8に示すように、度数可変コンタクトレンズ100Bの第2の蓋部10Bは、図8の左右の端部を覆う側壁部を有しない。この構成では、封止ステップにおいて、第1の蓋部9と第2の蓋部10Bと隔壁部11とに3方向を囲まれた空間に樹脂を充填する。
【0049】
(変形例3)
図9は、変形例3に係る度数可変コンタクトレンズの仕切りアクチュエータの拡大図である。図9に示すように、仕切りアクチュエータ4Cには、貫通孔7の中心から放射状に隙間部41Cが形成されている。仕切りアクチュエータ4Cに隙間部41Cが形成されていることにより、仕切りアクチュエータ4Cが駆動される際の変形エネルギーを低減することができ、より低電力で仕切りアクチュエータ4Cを駆動させることができる。隙間部41Cには、液体5を封止するため、フィルム又はゲル等を配置してもよい。
【0050】
(変形例4)
図10は、変形例4に係る度数可変コンタクトレンズの仕切りアクチュエータの拡大図である。図10に示すように、仕切りアクチュエータ4Dは、貫通孔7の外周に沿って配列された複数の板状部材42Dからなり、複数の板状部材42Dの間には、隙間部43Dが形成されている。仕切りアクチュエータ4Dが複数の板状部材42Dからなり隙間部43Dが形成されていることにより、仕切りアクチュエータ4Dが駆動される際の変形エネルギーを低減することができ、より低電力で仕切りアクチュエータ4Dを駆動させることができる。隙間部43Dには、液体5を封止するため、フィルム又はゲル等を配置してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 フレキシブル基盤
2 制御部
3 配線
4、4C、4D 仕切りアクチュエータ
5 液体
6 気体
7 貫通孔
8 界面
9 第1の蓋部
10、10B 第2の蓋部
11 隔壁部
12 樹脂封止部
13 被覆部
14 穴部
15、16A 隙間
41C、43D 隙間部
42D 板状部材
100、100A、100B 度数可変コンタクトレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10