(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022914
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】運転計画最適化支援装置および方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126363
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】宇野 侑希
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 淳
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力設備の運転計画のロバスト性評価を支援する。
【解決手段】運転計画最適化支援装置1は、電力設備の運転計画問題と電力設備の初期設定のパラメータを記憶する記憶部10と、予め設定された運転計画問題である原問題を分割し、運転計画を実施する時間帯毎の下位問題と、複数の下位問題にわたって適用される制約が設定された上位問題を作成する計画作成部11と、初期設定のパラメータの条件下で問題を求解装置2が解いた後に、初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを評価用パラメータとして設定する条件変更部12と、評価用パラメータの条件下で求解装置2が問題の解を求めた結果から、求解装置2が初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得るロバスト性評価部13とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された電力設備の運転計画問題と前記電力設備の初期設定のパラメータとを記憶するように構成された記憶部と、
前記初期設定のパラメータの条件下で前記運転計画問題を求解装置が解いた後に、前記初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを評価用パラメータとして設定するように構成された条件変更部と、
前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が前記運転計画問題の解を求めた結果から、前記求解装置が前記初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得るように構成されたロバスト性評価部とを備えることを特徴とする運転計画最適化支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の運転計画最適化支援装置において、
予め設定された運転計画問題である原問題を所定の特性に基づいて複数に分割し、前記特性毎の下位問題と、複数の前記下位問題にわたって適用される制約が設定された上位問題とを作成するように構成された計画作成部をさらに備え、
前記計画作成部は、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、
前記ロバスト性評価部は、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示することを特徴とする運転計画最適化支援装置。
【請求項3】
請求項2記載の運転計画最適化支援装置において、
前記所定の特性は、所定の時間帯であることを特徴とする運転計画最適化支援装置。
【請求項4】
請求項2記載の運転計画最適化支援装置において、
前記計画作成部は、前記原問題を前記下位問題と前記上位問題に等価に変換できたかどうかを確認し、等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記初期設定のパラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示し、
前記ロバスト性評価部は、前記等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記評価用パラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示することを特徴とする運転計画最適化支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の運転計画最適化支援装置において、
予め設定された運転計画問題は、複数の電力設備を統合制御するアグリゲーターの評価指標を目的関数とし、電力設備個々の発動状態を示す状態変数を決定変数として定式化されていることを特徴とする運転計画最適化支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の運転計画最適化支援装置において、
前記ロバスト性評価部は、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解が実行可能解であるかどうかを示す実行可否情報を含む前記ロバスト性評価情報を生成し、前記求解装置が求めた解が実行可能解である場合には、前記実行可否情報に加えて、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解と、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解から前記ロバスト性評価部が算出した目的関数評価値とを含む前記ロバスト性評価情報を生成することを特徴とする運転計画最適化支援装置。
【請求項7】
電力設備の初期設定のパラメータに基づいて前記電力設備の運転計画問題を求解装置が解いた後に、前記初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを評価用パラメータとして設定する第1のステップと、
前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が前記運転計画問題の解を求めた結果から、前記求解装置が前記初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得る第2のステップとを含むことを特徴とする運転計画最適化支援方法。
【請求項8】
請求項7記載の運転計画最適化支援方法において、
前記第1のステップの前に、予め設定された運転計画問題である原問題を所定の特性に基づいて複数に分割し、前記特性毎の下位問題と、複数の前記下位問題にわたって適用される制約が設定された上位問題とを作成する第3のステップをさらに含み、
前記第3のステップは、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示するステップを含み、
前記第2のステップは、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示するステップを含むことを特徴とする運転計画最適化支援方法。
【請求項9】
請求項8記載の運転計画最適化支援方法において、
前記所定の特性は、所定の時間帯であることを特徴とする運転計画最適化支援方法。
【請求項10】
請求項8記載の運転計画最適化支援方法において、
前記第3のステップは、前記原問題を前記下位問題と前記上位問題に等価に変換できたかどうかを確認し、等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記初期設定のパラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示するステップを含み、
前記第2のステップは、前記等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記評価用パラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示するステップを含むことを特徴とする運転計画最適化支援方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の運転計画最適化支援方法において、
予め設定された運転計画問題は、複数の電力設備を統合制御するアグリゲーターの評価指標を目的関数とし、電力設備個々の発動状態を示す状態変数を決定変数として定式化されていることを特徴とする運転計画最適化支援方法。
【請求項12】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の運転計画最適化支援方法において、
前記第2のステップは、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解が実行可能解であるかどうかを示す実行可否情報を含む前記ロバスト性評価情報を生成し、前記求解装置が求めた解が実行可能解である場合には、前記実行可否情報に加えて、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解と、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解から前記ロバスト性評価部が算出した目的関数評価値とを含む前記ロバスト性評価情報を生成するステップを含むことを特徴とする運転計画最適化支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力設備の運転計画を策定する技術に掛かり、特に運転計画のロバスト性評価を支援する運転計画最適化支援装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本政府は自然エネルギーの活用や電力の完全自由化に向けて電力システム改革に取り組んでおり、自然変動電源による発電や、節電による電力需要の抑制等の様々な電力取引の機会が拡大している。また、自然変動電源による発電や、節電による電力需要の抑制等、それ単体では発電電力・節電電力を制御することができない設備が電力システムに組み込まれつつあり、このような設備の増加傾向は今後も継続することが想定される。
【0003】
電力は重要な社会インフラの一つであり、停電せず安定して電力が供給されるということは消費者にとって重要である。また、電力を受け取る側の設備には受け取ることができる電力量・電圧の範囲などの特性が決まっており、それらの特性を逸脱した電力が入力されてしまうと設備の故障や機能不全・火災等の危険があることから、通常は何らかの指標を用いた「守るべき条件」を定めた電力取引が行われる。電力取引の定めとしては、例えば供給される電圧や交流周波数の範囲、消費電力の範囲などがある。
【0004】
電力取引の定めに違反した場合、違約金や損害の補償などの支払い義務が発生したり、電力取引の相手からの信用を失ったりといった不利益が発生し得るため、違反の発生は避けることが好ましい。
【0005】
従来から活用されていた発電設備(長時間にわたって一定の発電電力を維持する原子力発電所や、その時必要な量を発電する火力発電所など)は、発電電力が制御可能であるため、設備能力やメンテナンス計画等をもとに合理的に計画された発電計画に対し、実際の発電電力が一定の精度で制御されている。しかし、単体では発電電力・節電電力を制御することができない設備は、この制御が行われないのであるから、発電計画と実際の出力に乖離が生じ得る。
【0006】
単体では発電電力・節電電力を制御することができない設備であっても、複数の設備を組み合わせたり発電電力・節電電力を制御することができる設備と組み合わせたりした上で適切に統合制御することにより、発電計画と実際の出力の乖離を一定以下に抑えること、つまり一定の精度で制御することが可能である。このような統合制御を行う事業者をアグリゲーターと呼ぶ。
【0007】
電力取引においては、契約量を定め、この契約量が料金や報酬額に影響するという形態が一般的である。契約量の算定方法として運転計画法を用いた方法が知られている。アグリゲーターが運転計画法を採用する場合、アグリゲーターにとっては、計画された出力(発電量や節電量)と実際の出力の乖離が「守るべき条件」を満たす範囲内であるか否かを評価することは、前述の不利益の発生可能性や頻度・確率を予め見積もり、最終的に得られる利益を想定するために、商業上重要である。また、アグリゲーターが契約量の決定方法として運転計画法を用いる場合には、運転計画法の解がある種のロバスト性を持つことが重要である。
【0008】
運転計画問題の解法としても用いられる最適化は、評価値が最良となるような解を求めるが、その解は一部が少し変化しただけで評価値が極端に悪化したり実行可能解が存在しなくなったりすることがあり得る。運転計画問題の解として得られる運転計画と現実の運転実績とがある範囲で異なるということが予め想定される場合は、その変化があったとしても解が実行可能であり、かつ評価値があまり悪化しないような解が実用上有用である。この「ある範囲の変動が起こったとしても解が実行可能であり、かつ評価値があまり悪化しない」という性質を「ロバスト性」と呼ぶこととする。
【0009】
最適な契約量を求める従来技術として、特許文献1に開示された電力取引リスク管理システムがある。この電力取引リスク管理システムでは、発電所や市場から調達した電力を満期および配当期間が定められた金融資産とみなし、種々の契約形態の電力需要を契約電力量、契約期間、契約条件等に基づく満期および配当期間が定められた金融負債とし、これらを満期および配当期間を考慮した電力ポートフォリオとして総合的に管理する。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、変動が起こると想定した変数が現実に変動が起こる変数と異なる場合や、想定した変動の範囲が現実と異なる場合などのロバスト性を、得られた解(運転計画)について評価する方法については考慮されていない。
【0010】
典型的な事象として、設備の故障によってその設備の発電が行えなくなることがある。ある設備Aが発電できないと仮定し、電力取引の守るべき条件を満たした発電・節電を設備A以外の設備だけで行うことが可能かを評価することは、現実に設備Aが発電できなくなった場合に電力取引の条件違反に伴う不利益が発生するか否かを見積もるために重要である。しかし、このような評価を行う方法について特許文献1に開示された技術では考慮されていない。
【0011】
別の典型的な事象として、運用データの乏しい設備の発電量について、その設備と類似の設備の中で平均的な設備の発電量が従う確率分布と同じ確率分布に従うと仮定して運転計画を求めたが、実際には運用データの乏しい設備の発電量が従う確率分布は、仮定した確率分布に比べて不足発電量の期待値が大きいために、発電にコストがかかる他の設備で補う発電量の期待値が大きくなってしまうということがある。
【0012】
運用データの乏しい設備の発電量が、類似の設備の中で平均的な設備の発電量が従う確率分布ではなく、類似の設備の中で比較的特異な設備の発電量が従う確率分布に従うと仮定した場合、どの程度期待利益が悪化するかを評価することは、現実に仮定が正しかった場合に、どの程度利益が悪化するかを見積もるために重要である。しかし、このような評価を行う方法についても特許文献1に開示された技術では考慮されていない。
【0013】
以上のように運転計画についてロバスト性を評価することは重要であり、ロバスト性を評価する人や事業者を支援する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、契約量の算定を行うにあたり作成した運転計画のロバスト性評価を支援することができる運転計画最適化支援装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の運転計画最適化支援装置は、予め設定された電力設備の運転計画問題と前記電力設備の初期設定のパラメータとを記憶するように構成された記憶部と、前記初期設定のパラメータの条件下で前記運転計画問題を求解装置が解いた後に、前記初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを評価用パラメータとして設定するように構成された条件変更部と、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が前記運転計画問題の解を求めた結果から、前記求解装置が前記初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得るように構成されたロバスト性評価部とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の運転計画最適化支援装置の1構成例は、予め設定された運転計画問題である原問題を所定の特性に基づいて複数に分割し、前記特性毎の下位問題と、複数の前記下位問題にわたって適用される制約が設定された上位問題とを作成するように構成された計画作成部をさらに備え、前記計画作成部は、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記ロバスト性評価部は、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示することを特徴とするものである。
また、本発明の運転計画最適化支援装置の1構成例において、前記所定の特性は、所定の時間帯である。
また、本発明の運転計画最適化支援装置の1構成例において、前記計画作成部は、前記原問題を前記下位問題と前記上位問題に等価に変換できたかどうかを確認し、等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記初期設定のパラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示し、前記ロバスト性評価部は、前記等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記評価用パラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の運転計画最適化支援装置の1構成例において、予め設定された運転計画問題は、複数の電力設備を統合制御するアグリゲーターの評価指標を目的関数とし、電力設備個々の発動状態を示す状態変数を決定変数として定式化されていることを特徴とするものである。
また、本発明の運転計画最適化支援装置の1構成例において、前記ロバスト性評価部は、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解が実行可能解であるかどうかを示す実行可否情報を含む前記ロバスト性評価情報を生成し、前記求解装置が求めた解が実行可能解である場合には、前記実行可否情報に加えて、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解と、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解から前記ロバスト性評価部が算出した目的関数評価値とを含む前記ロバスト性評価情報を生成することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の運転計画最適化支援方法は、電力設備の初期設定のパラメータに基づいて前記電力設備の運転計画問題を求解装置が解いた後に、前記初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを評価用パラメータとして設定する第1のステップと、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が前記運転計画問題の解を求めた結果から、前記求解装置が前記初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得る第2のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の運転計画最適化支援方法の1構成例は、前記第1のステップの前に、予め設定された運転計画問題である原問題を所定の特性に基づいて複数に分割し、前記特性毎の下位問題と、複数の前記下位問題にわたって適用される制約が設定された上位問題とを作成する第3のステップをさらに含み、前記第3のステップは、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示するステップを含み、前記第2のステップは、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の運転計画最適化支援方法の1構成例において、前記所定の特性は、所定の時間帯である。
また、本発明の運転計画最適化支援方法の1構成例において、前記第3のステップは、前記原問題を前記下位問題と前記上位問題に等価に変換できたかどうかを確認し、等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記初期設定のパラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記初期設定のパラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示するステップを含み、前記第2のステップは、前記等価変換ができた場合には、前記原問題を解く代わりに、前記評価用パラメータの条件下で前記下位問題と前記上位問題とを解くように前記求解装置に指示し、前記等価変換ができなかった場合には、前記評価用パラメータの条件下で前記原問題を解くように前記求解装置に指示するステップを含むことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の運転計画最適化支援方法の1構成例において、予め設定された運転計画問題は、複数の電力設備を統合制御するアグリゲーターの評価指標を目的関数とし、電力設備個々の発動状態を示す状態変数を決定変数として定式化されていることを特徴とするものである。
また、本発明の運転計画最適化支援方法の1構成例において、前記第2のステップは、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解が実行可能解であるかどうかを示す実行可否情報を含む前記ロバスト性評価情報を生成し、前記求解装置が求めた解が実行可能解である場合には、前記実行可否情報に加えて、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解と、前記評価用パラメータの条件下で前記求解装置が求めた解から前記ロバスト性評価部が算出した目的関数評価値とを含む前記ロバスト性評価情報を生成するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、条件変更部とロバスト性評価部とを設けることにより、利用者にロバスト性評価情報を提供することができ、利用者による運転計画のロバスト性評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係る運転計画最適化支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係る運転計画最適化支援装置と求解装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、電力設備の情報の例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係る求解装置が解いた解を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例に係る運転計画最適化支援装置と求解装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明の原理]
発明者は、電力取引における契約量の算定にあたり、運転計画について感度分析を行うことで、計画問題の条件を変動させた場合でも解が実行可能であるか、目的関数の評価値がどう変化するかという情報を得ることで、その情報を基に運転計画のロバスト性を人間が総合的に判断することができると想い至った。
【0025】
ここで言う感度分析とは、計画問題において、条件を変動させた場合に解が実行可能であるか、評価値がどう変化するかを求める手法、または逆に解の実行可能性や評価値の範囲から許される変動の範囲を求める手法を指す。
【0026】
さらに、発明者は、対象の計画問題が大規模になると感度分析の結果を人間が理解することが困難となるため、次のように問題を2階層にすることで、感度分析の対象とする問題の規模を小さくし、その感度分析の結果を人間が理解し易くできると想い至った。具体的には、解くべき計画問題を、次の条件の下で作成する。
【0027】
(I)契約量を変更することができない期間毎に、下位問題を作成する。この下位問題には、時間に依存しないパラメータ、対象の期間にのみ対応するパラメータ、および対象の期間にのみ対応する決定変数を用いて表現できる全ての制約を記述する。この下位問題の目的関数は、時間に依存しないパラメータ、対象の期間にのみ対応するパラメータ、および対象の期間にのみ対応する決定変数を用いて表現する。
【0028】
(II)下位問題の制約として表現されなかった制約(複数の下位問題を横断するような制約)は、上位問題の制約として記述する。
【0029】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係る運転計画最適化支援装置の構成を示すブロック図である。運転計画最適化支援装置1は、予め設定された電力設備の運転計画問題と電力設備の初期設定のパラメータとを記憶する記憶部10と、予め設定された運転計画問題である原問題を分割し、運転計画を実施する時間帯毎の下位問題と、複数の下位問題にわたって適用される制約が設定された上位問題とを作成する計画作成部11と、初期設定のパラメータの条件下で運転計画問題を求解装置2が解いた後に、初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを評価用パラメータとして設定する条件変更部12と、評価用パラメータの条件下で求解装置2が運転計画問題の解を求めた結果から、求解装置2が初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得るロバスト性評価部13と、ロバスト性評価情報を出力する出力部14とを備えている。
【0030】
図2は本実施例の運転計画最適化支援装置1と、運転計画問題を解く求解装置2の動作を説明するフローチャートである。
まず、運転計画最適化支援装置1の記憶部10には、定式化された運転計画問題が予め記憶されている。
【0031】
運転計画は、ある時間帯において、電力設備を発動(発電または節電すること)するのかしないのかということを、全ての電力設備について計画するものである。本実施例では、アグリゲーターの利益が目的関数として予め定式化されており、目的関数が最大となるような運転計画問題の解を求解装置2が求める。運転計画最適化支援装置1は、運転計画のロバスト性を評価する利用者(例えばアグリゲーター)を支援する。
【0032】
以下、運転計画問題の具体例を示す。
図3は運転計画の対象となる電力設備の情報の例を示す図である。ここでは、名称A~Eの5機の電力設備があるものとする。電力設備には、例えば太陽光発電のように発電電力および節電電力を制御することができない変動電源と、例えば火力発電のように発電電力および節電電力を制御することが可能な調整可能電源とがある。
【0033】
契約量と電力設備の出力は全て発電または節電であるとし、
図3に示す電力設備を用いて、将来のある一日の3つの計画区間(時間帯)毎に運転計画を作成する。電力設備の出力は、変動電源の場合は発動時の想定出力を表し、調整可能電源の場合は発動時の最大出力を表している。運転計画を実施する計画区間(時間帯)とは、同一の契約量を適用しなければならない期間であり、同一の契約量を割り当てる期間としてそれ以上分割することができない最短の期間を意味する。
【0034】
アグリゲーターの収入を契約量×単価とし、単価を¥1/kWhとする。電力設備によっては、発動に所定のコストが発生する。
図3の例では、名称Eの調整可能電源の発動に300[¥]のコストが発生する。また、一日に発動できる時間帯の数の上限値(最大発動時間帯数)が電力設備毎に定められている。
【0035】
本実施例では、変動電源の出力が変動することがあり、その変動電源に見合った調整可能電源の調整用出力により変動を相殺できる(安定化できる)という運転計画モデルを採用している。例えば
図3の例では、名称Aの変動電源の場合、発動時の想定出力が1000kWで、出力調整用として必要な調整可能電源の出力が100kWである。この変動電源は、発動時に900kW~1000kWの範囲で出力が得られることになる。この変動電源の出力の変動幅100kW分を相殺するように調整可能電源の出力100kW分を制御することで、安定的に1000kWを出力する電源を構成することができる。
【0036】
すなわち、本実施例では、変動電源の計画出力と調整可能電源の計画出力(変動電源の調整用として割り当てた分の調整可能電源出力を除く)との和が、変動電源の実績出力と調整可能電源の実績出力との和に等しくなるというモデルを採用している。発動しない変動電源の計画出力と実績出力は共に0である。ただし、発動時には変動電源の計画出力と実績出力の差は、0になるとは限らない。
【0037】
契約量は、必ず正の値とし、発動する全ての設備の出力から、出力調整用とした調整可能電源の出力分を引き、さらに調整可能電源が割り当てられていない変動電源の出力を引いた値とする。例えば
図3の例の名称Aの変動電源の場合、安定的に1000kWを出力する電源を構成するために、変動電源の出力1000kWと調整可能電源の出力100kWの両方を使うので、契約量(安定的に提供できる出力)としては、変動電源の出力変動を相殺するために使う調整可能電源の出力100kW分を除外した変動電源の出力1000kWのみとなる。
【0038】
さらに、調整可能電源が割り当てられていない変動電源は、調整可能電源によって安定化されていないことになる。このような変動電源は出力が安定しないため、調整可能電源が割り当てられていない変動電源の出力を契約量に組み入れると、契約量を守れない可能性がある。したがって、調整可能電源が割り当てられていない変動電源の出力を契約量から除外する。
図3に示した情報は、予め記憶部10に記憶されている。
以上のような前提に基づいて、利用者が作成した運転計画問題の目的関数を式(1)に示す。
【0039】
【0040】
また、本実施例の運転計画問題の制約式を式(2)~式(4)に示す。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
式(1)~式(4)において、ξr,tは設備rを時間帯tに発動する場合に1、発動しない場合に0の値をとる状態変数、grは設備rの出力に単価をかけた値[¥]、mrは設備rが出力調整用として必要とする調整可能電源の出力に単価をかけた値[¥]、crは設備rを発動する場合にかかるコスト[¥]、lrは設備rの最大発動時間帯数、Rは全ての設備の識別情報(設備名)の集合、Vは変動電源の識別情報の集合、Dは調整可能電源の識別情報の集合、Tは運転計画問題が対象とする時間帯tの集合(ある一日の時間帯tの集合)である。
【0045】
式(1)は、発動する設備rの出力に単価をかけた値grから、同設備rが出力調整用として必要とする調整可能電源の出力に単価をかけた値mrを引いて、さらに同設備rを発動する場合にかかるコストcrを引いた金額(gr-mr-cr)を、時間帯tにおいて発動する全ての設備rについて合計し、さらに一日の全ての時間帯tについて合計した金額を最大化することを意味し、アグリゲーターの利益を最大化することを意味している。
【0046】
式(2)は、発動する変動電源が出力調整用として必要とする調整可能電源の出力に単価をかけた値mvを時間帯tにおいて発動する全ての変動電源について合計した金額が、発動する調整可能電源の出力に単価をかけた値gdを時間帯tにおいて発動する全ての調整可能電源について合計した金額以下でなければならないという制約を示している。式(3)は、変数ξr,tを設備r毎に一日の全ての時間帯tについて合計した値が、設備rの最大発動時間帯数lr以下でなければならないという制約を示している。式(4)は、金額(gr-mr-cr)を時間帯tにおいて発動する全ての設備rについて合計した金額が、すべての時間帯tにおいて正の値でなければならないという制約を示している。
【0047】
記憶部10には、式(1)~式(4)が予め記憶されている。運転計画最適化支援装置1の計画作成部11は、記憶部10に記憶された運転計画問題を所定の特性に基づいて複数に分割し、特性毎の下位問題と上位問題を作成する(
図2ステップS1)。本実施例では、所定の特性を時間帯とするが、時間帯以外の特性の例としては、例えば設備、天候等がある。計画作成部11は、以下の規則(A)、(B)に従って、下位問題と上位問題を作成する。
【0048】
(A)計画作成部11は、時間帯t毎に下位問題を作成する。この下位問題には、時間に依存しない時不変なパラメータ、対象の時間帯tにのみ対応するパラメータ、および対象の時間帯tにのみ対応する決定変数を用いて表現できる全ての制約を記述する。この下位問題の目的関数は、時間に依存しないパラメータ、対象の時間帯tにのみ対応するパラメータ、および対象の時間帯tにのみ対応する決定変数を用いて表現する。
(B)計画作成部11は、下位問題の制約として表現できなかった制約(複数の下位問題にわたって適用される制約)を、上位問題の制約として記述する。
【0049】
式(1)~式(4)の運転計画問題を原問題として、下位問題と上位問題の具体例について説明する。下位問題の目的関数を式(5)に示す。
【0050】
【0051】
下位問題の制約式を式(6)、式(7)に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
式(5)は、発動する設備rの出力に単価をかけた値grから、同設備rが出力調整用として必要とする調整可能電源の出力に単価をかけた値mrを引いて、さらに同設備rを発動する場合にかかるコストcrを引いた金額(gr-mr-cr)を、時間帯tにおいて発動する全ての設備rについて合計した金額を最大化することを意味している。
【0055】
式(6)は、発動する変動電源が出力調整用として必要とする調整可能電源の出力に単価をかけた値mvを時間帯tにおいて発動する全ての変動電源について合計した金額が、発動する調整可能電源の出力に単価をかけた値gdを時間帯tにおいて発動する全ての調整可能電源について合計した金額以下でなければならないという制約を示している。式(7)は、金額(gr-mr-cr)を時間帯tにおいて発動する全ての設備rについて合計した金額が、正の値でなければならないという制約を示している。
【0056】
式(5)~式(7)において、ξr,tが時間帯tのみに対応する決定変数、lr,R,V,Dが時不変のパラメータである。式(5)~式(7)の例では、時間帯tのみに対応するパラメータは無い。
【0057】
上位問題の目的関数を式(8)に示す。
【0058】
【0059】
上位問題の制約式を式(9)に示す。
【0060】
【0061】
式(8)において、ft(ξt)は時間帯tに対応する下位問題の目的関数評価値である。目的関数評価値ft(ξt)は、時間帯tにおける利益Σr∈R(gr-mr-cr)・ξr,tである。式(8)は、下位問題の目的関数評価値ft(ξt)を一日の全ての時間帯tについて合計した値を最大化することを意味している。つまり、上位問題の目的関数は、原問題の目的関数と同じである。上位問題の制約式は式(3)と同じである。
【0062】
次に、計画作成部11は、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できたかどうかを確認する(
図2ステップS2)。具体的には、計画作成部11は、式(1)~式(4)の原問題に所定のパラメータξ
r,t,g
r,m
r,c
r,l
r,R,V,Dの組み合わせを与えたときの目的関数評価値Σ
r∈R,t∈T(g
r-m
r-c
r)・ξ
r,tと、式(5)~式(9)の下位問題と上位問題に、原問題と同じパラメータξ
r,t,g
r,m
r,c
r,l
r,R,V,Dの組み合わせを与えたときの目的関数評価値Σ
t∈Tf
t(ξ
t)とが一致し、かつ式(2)~式(4)の原問題の制約式の評価(制約式が満たされているか、満たされていないか)と式(6)、式(7)の下位問題の制約式と式(9)の上位問題の制約式の評価が一致していれば、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できたと判定する。制約式を満たす所定のパラメータξ
r,t,g
r,m
r,c
r,l
r,R,V,Dの組み合わせは、例えば利用者によって予め設定されている。
【0063】
計画作成部11は、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できた場合(ステップS2においてYES)、作成した下位問題と上位問題の解を求めるように求解装置2に対して指示する(
図2ステップS3)。また、計画作成部11は、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できなかったと判定した場合(ステップS2においてNO)、原問題の解を求めるように求解装置2に対して指示する(
図2ステップS4)。
【0064】
求解装置2は、下位問題と上位問題の解を求めるよう計画作成部11から指示された場合、記憶部10に記憶されている初期設定のパラメータの条件下で、下位問題の目的関数と上位問題の目的関数とが最大になる設備r毎の状態変数ξ
r,tを時間帯t毎に下位問題と上位問題の解として求める(
図2ステップS5)。一般には、個々の下位問題に対しては非線形計画法を用いることができ、上位問題(全ての下位問題を含む)に対しては多目的計画法を用いることができる。問題の構造が特殊であり、その特殊性を利用してより良い性能の計画法を用いることができる場合は、その計画法を用いてよい。
【0065】
また、求解装置2は、原問題の解を求めるよう計画作成部11から指示された場合、記憶部10に記憶されている初期設定のパラメータの条件下で、原問題の目的関数が最大になる設備r毎の状態変数ξr,tを時間帯t毎に原問題の解として求める(ステップS5)。原問題に対しては多目的計画法を用いることができる。
【0066】
図3に記載した設備を対象として、式(5)~式(7)の下位問題と式(8)、式(9)の上位問題を求解装置2が解いた結果、
図4に示すような解が得られた。時間帯t1での解は、ξ
A,t1=1、ξ
B,t1=1、ξ
C,t1=1、ξ
D,t1=1、ξ
E,t1=1である。時間帯t2での解は、ξ
A,t2=1、ξ
B,t2=1、ξ
C,t2=1、ξ
D,t2=0、ξ
E,t2=1である。時間帯t3での解は、ξ
A,t3=1、ξ
B,t3=0、ξ
C,t3=0、ξ
D,t3=1、ξ
E,t3=0である。なお、この解における上位問題の目的関数評価値Σ
t∈Tf
t(ξ
t)は5700[¥]であった。
【0067】
次に、運転計画最適化支援装置1の条件変更部12は、記憶部10に記憶されている電力設備に関する初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を変更したパラメータを、運転計画問題のロバスト性評価のための評価用パラメータとして設定する(
図2ステップS6)。上記のとおり、初期設定のパラメータとしては、出力(=g
r/単価)、出力調整用として必要な調整可能電源の出力(=m
r/単価)、発動コストc
r、最大発動時間帯数l
r、発動が可能な全ての設備の識別情報(設備名)の集合R、発動が可能な変動電源の識別情報の集合V、発動が可能な調整可能電源の識別情報の集合Dがある。
【0068】
初期設定のパラメータは、それぞれ設定可能な範囲が予め定められている。条件変更部12は、初期設定のパラメータのうち少なくとも一部を設定可能な範囲内で変更する。変更するパラメータの種類、変更幅、変更後の値または変更後の集合は、利用者によって予め設定されている。
【0069】
運転計画最適化支援装置1のロバスト性評価部13は、条件変更部12が設定した評価用パラメータの条件下で、問題の解を再度求めるよう求解装置2に指示し、求解装置2が解を求めた結果から、求解装置2が初期設定のパラメータの条件下で求めた解についてのロバスト性評価情報を得る(
図2ステップS7)。
【0070】
ロバスト性評価情報としては、求解装置2が評価用パラメータの条件下で求めた解と、求解装置2が評価用パラメータの条件下で求めた解からロバスト性評価部13が算出した問題全体の目的関数評価値と、求解装置2が評価用パラメータの条件下で求めた解(運転計画)どおりの設備の運転が可能かどうかを示す実行可否情報とがある。
【0071】
原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できた場合、求解装置2は、ロバスト性評価部13からの指示に従って、評価用パラメータの条件下で、下位問題の目的関数と上位問題の目的関数とが最大になる設備r毎の状態変数ξr,tを下位問題と上位問題の解として求める。また、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できなかった場合、求解装置2は、ロバスト性評価部13からの指示に従って、評価用パラメータの条件下で、原問題の目的関数が最大になる設備r毎の状態変数ξr,tを原問題の解として求める。
【0072】
上記のとおり、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できた場合には、問題全体の目的関数評価値は上位問題の目的関数評価値である。また、原問題を下位問題と上位問題に等価に変換できなかった場合には、問題全体の目的関数評価値は原問題の目的関数評価値である。
【0073】
ロバスト性評価部13は、評価用パラメータの条件下で求解装置2が求めた解が実行可能解であるかどうかを示す実行可否情報を含むロバスト性評価情報を生成する。また、ロバスト性評価部13は、求解装置2が求めた解が実行可能解である場合には、実行可否情報に加えて、評価用パラメータの条件下で求解装置2が求めた解と、評価用パラメータの条件下で求解装置2が求めた解からロバスト性評価部13が算出した目的関数評価値とを含むロバスト性評価情報を生成する。
【0074】
運転計画最適化支援装置1の出力部14は、ロバスト性評価情報を出力する(
図2ステップS8)。出力方法としては、ロバスト性評価情報の表示、ロバスト性評価情報の外部への送信などがある。
【0075】
なお、条件変更部12が複数組の評価用パラメータを順番に設定し、ロバスト性評価部13が評価用パラメータの組毎にロバスト性評価情報を求めるようにしてもよい。
また、上記の例では、条件変更部12が自動的に評価用パラメータを設定しているが、利用者が運転計画最適化支援装置1に対して手動で設定した評価用パラメータを用いるようにしてもよい。
【0076】
以下、ステップS6,S7の具体例について説明する。ここでは、
図4に示したような解が得られた後に、以下の(a)~(d)の4組のパラメータ変更を行うものとする。
【0077】
(a)名称Dの設備の発動コストを0[¥]から50[¥]に変更する。
(b)名称Dの設備の発動コストを0[¥]から200[¥]に変更する。
(c)名称Dの設備の発動コストを0[¥]から一定幅(例えば10[¥])ずつ増加させる。
(d)名称Dの設備の出力を100[kW]から80[kW]に変更する。
【0078】
(a)~(c)の例は発動コストの変動に関するロバスト性を確認するための例であり、記憶部10に記憶されている初期設定のパラメータのうち、名称Dの設備の発動コストのみを変更したパラメータを評価用パラメータとする。(d)の例は設備能力の条件変更に関するロバスト性を確認するための例であり、記憶部10に記憶されている初期設定のパラメータのうち、名称Dの設備の出力のみを変更したパラメータを評価用パラメータとする。
【0079】
(a)の例についてロバスト性評価部13がロバスト性評価情報を求めると、求解装置2が初期設定のパラメータの条件下で求めた解と評価用パラメータの条件下で求めた解が同じであり、上位問題の目的関数評価値が5600[¥]、実行可否情報が“実行可”を示す結果となった。
【0080】
(b)の例についてロバスト性評価部13がロバスト性評価情報を求めると、求解装置2が初期設定のパラメータの条件下で求めた解と評価用パラメータの条件下で求めた解が同じであり、上位問題の目的関数評価値が5300[¥]、実行可否情報が“実行可”を示す結果となった。
【0081】
(c)の例についてロバスト性評価部13がロバスト性評価情報を求めると、名称Dの設備の発動コストが100[¥]未満では、求解装置2が初期設定のパラメータの条件下で求めた解と評価用パラメータの条件下で求めた解が同じであり、実行可否情報が“実行可”を示す結果となった。一方、名称Dの設備の発動コストが100[¥]を超えると、求解装置2が評価用パラメータの条件下で求めた解が変わり、時間帯t1で名称Dの設備が発動しなくなるが、実行可否情報は“実行可”を示す結果となった。
【0082】
(d)の例についてロバスト性評価部13がロバスト性評価情報を求めると、実行可否情報が“実行不可”を示す結果となった。実行不可となった理由は、時間帯t1~t3の制約式(式(7))を全て満たす解が存在しないためである。
【0083】
利用者は、ロバスト性評価部13が求めたロバスト性評価情報から、求解装置2が求めた解(運転計画)についてのロバスト性を以下のように判断できる。
利用者は、(a)~(c)の例で、名称Dの設備の発動コストが高くなるシナリオについて検討した結果、いずれも運転計画を実行可能であり、利益としても大きな目減りが無いことから、名称Dの設備の発動コストの変動(増加)に対して、運転計画のロバスト性は十分にあると判断した。
【0084】
また、利用者は、(d)の例で実行可否情報が“実行不可”を示す結果となったことから、名称Dの設備の出力の変動に対して、運転計画のロバスト性が不足していると判断した。利用者は、名称Dの設備の出力の値について、より慎重に調査を行い、出力の値が間違いないことを確認することとし、値に間違いがある場合は原問題を再検討することとした。
【0085】
以上のように、本実施例では、利用者にロバスト性評価情報を提供することができ、利用者による運転計画のロバスト性評価を支援することができる。
【0086】
本実施例で説明した運転計画最適化支援装置1と求解装置2の各々は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図5に示す。
【0087】
コンピュータは、CPU100と、記憶装置101と、インターフェース装置(I/F)102とを備えている。運転計画最適化支援装置1の場合、I/F102には、利用者のための入力装置やディスプレイ装置、求解装置2等が接続される。求解装置2の場合、I/F102には、運転計画最適化支援装置1等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の運転計画最適化支援方法を実現させるためのプログラムは記憶装置101に格納される。装置1,2のCPU100は、記憶装置101に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、電力設備の運転計画を策定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…運転計画最適化支援装置、2…求解装置、10…記憶部、11…計画作成部、12…条件変更部、13…ロバスト性評価部、14…出力部。