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  • 特開-インク供給用チューブ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022919
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インク供給用チューブ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240214BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240214BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B41J2/175 503
C08L53/02
C08L27/18
C08L101/00
C08L23/00
F16L11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126370
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 和久
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦
(72)【発明者】
【氏名】植田 慎之介
【テーマコード(参考)】
2C056
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056KB14
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB02
3H111CB14
3H111DB02
3H111EA04
4J002AA011
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB151
4J002BB171
4J002BD153
4J002BP011
4J002BP012
4J002FD333
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】柔軟性や成形性、形状復元性が高く、内面の凹凸が少ないインク供給用チューブを提供する。
【解決手段】上記課題を解決するインク供給用チューブは、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を20質量%以上30質量%以下と、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂0.5質量%以上2質量%以下と、熱可塑性樹脂(ただし、前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体および前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を除く)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を20質量%以上30質量%以下と、
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂0.5質量%以上2質量%以下と、
熱可塑性樹脂(ただし、前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体および前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を除く)と、
を含む、
インク供給用チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載のインク供給用チューブであって、
前記熱可塑性樹脂が、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体を含む、
インク供給用チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載のインク供給用チューブであって、
前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂をさらに含む、
インク供給用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク供給用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置が、多数開発されている。インクジェット印刷装置では、インクを貯留するインクタンクと、印字ヘッド部分との接続部に、柔軟性を有するインク供給用チューブを使用することが一般的である。このようなインク供給用チューブには、柔軟性だけでなく、ガスバリア性が高いこと、外力が加わった後の形状復元性が高いこと、不純物の溶出が少ないこと等、が求められる。またさらに、インクの流動時に気泡を発生させないように、内周面に凹凸が少ないこと、も求められる。
【0003】
ここで、インクジェット印刷装置に使用するインクには、水系インク、溶剤系インク、UV硬化系インク等があり、インク供給用チューブの組成は、インクの種類によって選択されることが多い。例えば水系インクを使用する印刷装置のインク供給用チューブでは、ブチルゴムやスチレン系熱可塑性エラストマーが多く使用される。
【0004】
ブチルゴムは、ガスバリア性が高く、組成次第で、柔軟性が高くなるが、インクに不純物が溶出することがある。またブチルゴムは、製造時に架橋が必要であることから、高価である、という課題もある。
一方、スチレン系熱可塑性エラストマーは、インク供給用チューブの製造時に、架橋工程が必要なく、比較的安価であるとの利点がある。従来、柔軟性および形状復元性が高い、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(以下「SEBS」とも称する)が、インク供給用チューブの主成分として好適に使用されている。また、ガスバリア性および柔軟性が高い、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(以下、「SIBS」とも称する)も、インク供給用チューブの主成分として好適に使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-51368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上述のSIBSは、形状復元性が低い場合がある。そこで、高分子量化することで、形状復元性を高めることが試みられている。しかしながら、高分子量化すると、形状復元性は高まるものの、柔軟性や成形性が低下しやすかった。さらに、高分子量化したSIBSでインク供給用チューブを作製すると、インク供給用チューブの内面に凹凸が生じやすく、インク中に気泡が発生しやすい、という課題もあった。
本発明の主な目的は、柔軟性や成形性、形状復元性が高く、内面の凹凸が少ないインク供給用チューブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を20質量%以上30質量%以下と、
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂0.5質量%以上2質量%以下と、
熱可塑性樹脂(ただし、前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体および前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を除く)と、
を含む、
インク供給用チューブを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟性や成形性、形状復元性が高く、内面の凹凸が少ないインク供給用チューブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るインク供給用チューブ概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るインク供給用チューブについて説明する。
本実施形態のインク供給用チューブは、インクジェット印刷装置内で、インクタンクと印字ヘッド部分とを接続するためのチューブである。当該インク供給用チューブは、特に、水系インクを使用するインクジェット印刷装置に好適に使用される。
当該インク供給用チューブの概略断面図を図1に示す。インク供給用チューブ100は、図1(a)に示すように、複数(図1では4本)の単心チューブ11どうしの間に連結部12が配置され、これらが一体に連結された構造であってもよく、図1(b)に示すように、単心チューブ11のみで構成されていてもよい。なお、図1(a)に示すように、複数の単心チューブ11が連結部12で連結されている場合、使用時、すなわちインクジェット印刷装置内に配置する際に、連結部12を引き裂いたり切断したりして、個々の単心チューブ11に分離することが一般的である。連結部12の形状は特に制限されず、連結部12の幅や厚さは、適宜選択される。
【0011】
また、単心チューブ11は、単層からなる筒状の構造体である。単心チューブ11内で、その外径や内径が変化していてもよいが、単心チューブ11は通常、一端から他端まで、均一な外径および内径を有することが好ましい。また、図1(a)に示す態様、および図1(b)に示す態様のいずれにおいても、単心チューブ11の内径や外径は、インクジェット印刷装置の構造に合わせて適宜選択される。一般的なインクジェット印刷装置用のインク供給用チューブ100では、単心チューブ11の内径が、1mm~3mm程度であり、外径が3mm~5mm程度である。一方、単心チューブ11の長さは、制限されない。例えばインクジェット印刷装置に合わせて、所定の長さに切断されていてもよく、インク供給用チューブ100を使用する際に、使用者(インクジェット印刷装置の製造者)が所定の長さに切断できるよう、長尺状であってもよい。
【0012】
ここで、インク供給用チューブ100(単心チューブ11)は、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)と、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂(以下「PTFE系樹脂」とも称する)と、熱可塑性樹脂と、を少なくとも含む。
【0013】
SIBSは、スチレンまたはその誘導体由来の構成単位を主に含むスチレンブロックと、イソブチレン由来の構成単位を主に含むイソブチレンブロックとが、スチレンブロック/イソブチレンブロック/スチレンブロックの順に並んだトリブロック共重合体である。インク供給用チューブ100は、SIBSを一種のみ含んでいてもよく、例えば重量平均分子量や、スチレンブロックとイソブチレンブロックとの比率等が異なる二種以上のSIBSを含んでいてもよい。
ここで、SIBS中のスチレンブロックの割合と、イソブチレンブロックの割合との比は、所望の物性に合わせて適宜選択される。当該比はスチレンブロック:イソブチレンブロック=3:7程度であるのが好ましい。スチレンブロックが多くなると、形状復元性が高まりやすい。一方、イソブチレンブロックが多くなると、柔軟性が高まりやすい。
また、SIBSのJIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、6.0以下が好ましく、6.0未満がより好ましい。SIBSのMFRが当該範囲であると、SIBSが後述の熱可塑性樹脂等と均一に混合しやすくなったり、形状復元性が良好になったりしやすい。
上記SIBSの量は、インク供給用チューブの総量に対して20質量%以上30質量%以下である。SIBSの量が20質量%以上であると、インク供給用チューブのガスバリア性が良好になりやすい。一方、SIBSの量が30質量%以下であると、得られるインク供給用チューブの表面平滑性、特にチューブ内部の表面平滑性が良好になりやすく、インク中に気泡が発生し難くなる。
【0014】
また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂(PTFE系樹脂)は、ポリテトラフルオロエチレンまたはその誘導体であればよく、例えばポリテトラフルオロエチレンをアクリル変性した樹脂等であってもよい。本実施形態では特に、フィブリル形成能を有するPTFE系樹脂が特に好ましい。フィブリル形成能を有するPTFE系樹脂とは、分子量が大きく、剪断力等の外的作用によって、繊維状になる傾向を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む樹脂(もしくは構造体、混合物等)をいう。上記繊維状になる傾向を有するPTFEの数平均分子量は、例えば数百万~数千万程度である。当該フィブリル形成能を有するPTFE系樹脂を、上記SIBSや後述の熱可塑性樹脂と組み合わせると、上記SIBSや熱可塑性樹脂の溶融張力が向上し、インク供給用チューブの内面の表面平滑性が良好になりやすい。
フィブリル形成能を有するPTFE系樹脂の例には、高分子量のPTFEからなる芯材と、その周囲に配置された低分子量のPTFEからなる鞘と、を有する、芯鞘構造のもの;高分子量のPTFEと他の樹脂との共凝集混合物;高分子量のPTFE存在下で、他の単量体の重合を行い、PTFEと他の樹脂とを混合した混合等が含まれる。ただし、フィブリル形成能を有するPTFE系樹脂は、これらに限定されない。
PTFE系樹脂の量は、インク供給用チューブの総量に対して0.5質量%以上2質量%以下である。PTFE系樹脂の量が0.5質量%以上であると、得られるインク供給用チューブの表面平滑性、特にチューブ内部の表面平滑性が良好になりやすく、インク中に気泡が発生し難くなる。一方、PTFE系樹脂の量が2質量%以下であると、インクへの不純物の溶出が生じ難くなる。
【0015】
また、熱可塑性樹脂は、上述のSIBSおよびPTFE系樹脂以外の樹脂であり、これらと相溶可能な樹脂であればよい。熱可塑性樹脂の種類は、所望の物性や、インク供給用チューブ内を流動させるインクの種類等に応じて適宜選択される。
好ましい熱可塑性樹脂の例には、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、ポリオレフィン系樹脂等が含まれる。ポリオレフィン系樹脂の例には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオレフィン単独重合体;エチレン・ポリプロピレン等のエチレンとα-オレフィンとの共重合体;等が含まれる。これらの中でも特に、SEBSおよびポリエチレンがより好ましく、これらを両方含むことが特に好ましい。
上記SIBSとSEBSとを組み合わせると、SIBSのガスバリア性と、SEBSの形状復元性とを兼ね備えた、非常に優れたインク供給用チューブとなる。インク供給用チューブにおける、SIBSとSEBSとの含有量の比は、1:1.5~1:3.5程度が好ましい。また、SEBSの量は、インク供給用チューブの総量に対して50質量%以上70質量%以下が好ましく、53質量%以上63質量%以下がより好ましい。SEBSの量が50質量%以上であると、得られるインク供給用チューブの形状復元性が良好になりやすい。一方、SEBSの量が70質量%以下であると、インク供給用チューブのガスバリア性等が良好になりやすい。
一方、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を組み合わせると、インク供給用チューブの強度が良好になりやすい。オレフィン系樹脂(特にポリエチレン)の量は、インク供給用チューブの総量に対して10質量%以上20質量%以下が好ましく16質量%以上17質量%以下がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂の総量は、インク供給用チューブの総量に対して65質量%以上79.5質量%以下が好ましく、69質量%以上79.5質量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の量が当該範囲であると、インク供給用チューブの強度が良好になる。
【0016】
また、インク供給用チューブは、本実施形態の目的及び効果を損なわない範囲で、上記以外の成分をさらに含んでいてもよい。
【0017】
上述のインク供給用チューブは、以下の物性を有することが好ましい。
インク供給用チューブの厚さを6mmとしたときのデュロメータA硬さは、40以上50以下であることが好ましい。インク供給用チューブのデュロメータA硬さが当該範囲であると、インク供給用チューブが適度な柔軟性を有しやすくなる。上記デュロメータA硬さは、インク供給用チューブと同一の材料を、厚さ6mmのシートにプレス成形し、JIS K6253に準拠して、デュロメータタイプA硬度計にて測定される値であり、押針を当ててから15秒後の値をデュロメータA硬さとして採用する。インク供給用チューブのデュロメータA硬さは、例えば上記SIBSの種類や重量平均分子量等によって調整できる。
【0018】
インク供給用チューブの厚さを6mmとしたときの圧縮歪みは、45%以下が好ましい。インク供給用チューブの圧縮歪みが当該範囲であると、インク供給用チューブに外力が加わっても、形状が復元しやすい。上記圧縮歪みは、インク供給用チューブと同一の材料を、厚さ6mmのシートにプレス成形し、JIS K6262に準拠して、70℃で22時間、25%圧縮したときの、圧縮前の厚さに対する、圧縮後の変形量の割合である。具体的には、圧縮前の厚さをt、圧縮後の厚さをtとしたとき、{(t-t)/t}×100で求められる値である。上記永久歪みは、例えば上記SIBSの種類や重量平均分子量、SIBSとSEBSとの比等によって、調整できる。
【0019】
インク供給用チューブの厚さを0.5mmとしたときの、カップ法で測定される、40℃、90%Rhにおける透湿度は5g/m・24時間以下が好ましい。インク供給用チューブの透湿度が当該範囲であると、インク供給用チューブ内を流動するインクから溶媒が揮発したりし難く、インクに組成変化が生じ難い。上記透湿度は、例えばSIBSの含有量等によって調整できる。
【0020】
また、インク供給用チューブの内表面の、JIS B0601(2001)に準じて測定される最大高さRzは、15μm以下が好ましい。インク供給用チューブの内表面の粗さ(Rz)が15μm以下であると、インクの流動時や、インクが当該インク供給用チューブ内に滞留したとき、インク内に気泡が発生し難くなる。上記表面粗さは、例えばPTFE系樹脂の量や、SIBSとSEBSとの比等によって、調整できる。
【0021】
インク供給用チューブの製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造できる。上述のSIBS、PTFE系樹脂、および熱可塑性樹脂、ならびに必要に応じて他の成分を、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の密閉式混練装置やバッチ式混練装置;単軸押出機や二軸押出機のような連続式の溶融混練装置等を用いて混合する。
そして、当該組成物を、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形等によって、所望の形状のインク供給用チューブに加工する。これらの中でも特に、押出成形によれば、効率よくインク供給用チューブを製造できる。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
【0023】
1.材料の準備
実施例および比較例には、以下の材料を使用した。なお、SIBSのMFR(メルトフローレート)は、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg重にて測定した値である。
(1)SIBS
・SIBS-A:SIBSTAR 073T-UL(カネカ社製、MFR:6g/10分)
・SIBS-B:SIBSTAR 103T-UL(カネカ社製、MFR:0.1g/10分)
(2)熱可塑性樹脂
・SEBS:EARNESTON CJ103(クラレ社製)
・ポリエチレン(PE)樹脂:(NUC社製、低密度ポリエチレン)
(3)PTFE系樹脂
・A-3000:(PTFEのアクリル変性樹脂、メタブレン(商品名)、三菱ケミカル社製)
(4)その他
・アクリル系加工助剤:P-530A(三菱ケミカル社製)
【0024】
2.インク供給用チューブの作製
下記表1に示す組成で、SIBS、熱可塑性樹脂、PTFE系樹脂(もしくはアクリル系加工助剤)をニーダーで混合し、ペレタイザーにてペレット化した。ただし、比較例4~6は、当該工程は行わず、市販のSIBSまたはSEBSのペレットをそのまま使用した。そして、上記ペレットを、溶融させてダイスから押出し、外径が3.8mm、内径が1.8mmである、単心のインク供給チューブを作製した。
【0025】
3.物性の測定および評価
インク供給用チューブの評価、および物性について、以下のように行った。各結果を表1に示す。
(1)デュロメータA硬さの測定
各実施例および比較例で作製したペレットを厚さ6mmのシートにプレス成形した。そして、JIS K6253に準拠して、デュロメータタイプA硬度計の押針を当てて、15秒後の値を測定した。
(2)圧縮永久歪みの測定
デュロメータA硬さの測定と同様の方法で作製したシートを、JIS K6262に準拠して、70℃で22時間、25%圧縮した。そして、圧縮前の厚さに対する、圧縮後の厚さ(変形量)の割合を測定した。
(3)透湿度の測定
各実施例および比較例で作製したペレットを厚さ0.5mmのシートにプレス成形した。そして、カップ法で測定される、40℃、90%Rhにおける透湿度を測定した。
(4)チューブ内面粗さの測定
各実施例および比較例で作製したインク供給チューブを切り開き、内面の表面表さをJIS B0601(2001)に準じて測定し、最大高さRzを特定した。
(5)気泡発生有無の評価
各実施例および比較例で作製したインク供給チューブを、30℃、10%Rh環境下で、14日間インク中に浸漬して放置し、気泡の発生の有無を確認した。
〇:目視で気泡が確認できない
×:目視で気泡を確認できる
(6)不純物の溶出評価
各実施例および比較例で作製したインク供給チューブ50gを、30℃、10%Rh環境下で、3か月間インク中に浸漬して放置し、不純物の溶出の有無を確認した。
〇:Si、ゴミ、異物、油分等の不純物が基準値未満である
×:Si、ゴミ、異物、油分等の不純物が基準値以上検出される
【0026】
3.結果
【表1】
【0027】
上記表1に示すように、SIBSを20質量%以上30質量%以下含み、かつPTFE系樹脂を0.5質量%以上2質量%以下含む場合には、いずれもチューブ内面粗さが小さく(15μm以下)、インク中に気泡の発生が見られなかった。さらに、これらのインク供給用チューブにおいて、インクへの不純物溶出も見られなかった。また、デュロメータA硬さが40以上50以下に収まり、圧縮永久歪みが45%以下となった。すなわち形状復元性が良好であった。さらに、透湿度(ガスバリア性)も5g/m・24時間以下であり、非常に良好であった(実施例1~5)。
これに対し、SIBSおよびPTFE系樹脂を含まず、SEBSのみからなる比較例6では、柔軟性や形状復元性は良好であったものの、透湿度(ガスバリア性)が低かった。一方、SIBS樹脂のみからなる比較例4や比較例5では、圧縮永久歪みが大きかった。すなわち形状復元性が低かった。さらに、チューブ内面粗さが大きく、インク中に気泡が発生しやすかった。またSIBS樹脂を含んだとしても、その量が20質量%未満である場合には、ガスバリア性が低かった。
また、PTFE系樹脂を含まない場合や、PTFE系樹脂の替わりにアクリル系加工助剤を含む場合には、チューブ内面粗さが大きく、インク中に気泡が発生しやすかった(比較例1および3)。さらに、PTFE樹脂が多すぎる場合には、Siの溶出が確認された(比較例2)。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のインク供給用チューブは、柔軟性や成形性、形状復元性が高く、内面の凹凸が少ない。したがって、インクジェット印刷装置、特に水系インクジェットインクを印刷するためのインクジェット印刷装置に好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0029】
11 単心チューブ
12 連結部
100 インク供給用チューブ
図1