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特開2024-22929ガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料
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  • 特開-ガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022929
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/06 20060101AFI20240214BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C10L1/06
C10G2/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126383
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】新井 琢真
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4H129BC43
4H129KA15
4H129NA22
4H129NA30
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量を低減することが可能なガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料を提供する。
【解決手段】ガソリン代替燃料の製造方法は、フィッシャー・トロプシュ法により、粗油を合成する工程と、粗油を蒸留してナフサを分離する工程と、ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む。ガソリン代替燃料は、フィッシャー・トロプシュ法により生成されるナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ法により、粗油を合成する工程と、
前記粗油を蒸留してナフサを分離する工程と、
前記ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む、ガソリン代替燃料の製造方法。
【請求項2】
MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する工程と、
前記プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する工程と、をさらに含む、請求項1に記載のガソリン代替燃料の製造方法。
【請求項3】
前記MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する代わりに、前記ナフサをクラッキングしてプロピレンを得る、請求項2に記載のガソリン代替燃料の製造方法。
【請求項4】
フィッシャー・トロプシュ法により、粗油を合成する工程と、
前記粗油を蒸留して軟質ナフサおよび重質ナフサを分離する工程と、
前記重質ナフサをクラッキングしてプロピレンを得る工程と、
前記プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する工程と、
前記軟質ナフサと、前記2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む、ガソリン代替燃料の製造方法。
【請求項5】
フィッシャー・トロプシュ法により生成されるナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を含む、ガソリン代替燃料。
【請求項6】
前記ナフサは、軟質ナフサである、請求項5に記載のガソリン代替燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動の緩和または影響軽減を目的とした取り組みが継続されており、二酸化炭素の排出量低減に関する研究開発が実施されている。その中でも、e-fuelが注目されている。e-fuelは、太陽光、風力等の再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを使用して、水を電気分解することにより生成する水素を用いて合成される合成燃料である。
【0003】
合成燃料の製造方法の一例として、フィッシャー・トロプシュ(FT)法により、一酸化炭素を水素と反応させて粗油を合成した後、粗油を蒸留する方法が知られている。これにより、ディーゼル燃料およびジェット燃料が得られるが、副生成物であるナフサを有効に利用することが望まれている。
【0004】
また、合成燃料の製造方法の他の例として、一酸化炭素および/または二酸化炭素を水素と反応させて、メタノールを合成した後、MTG法により、メタノールからガソリン代替燃料を合成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-44926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガソリン代替燃料を製造する際の二酸化炭素の排出量を低減することが望まれている。そこで、ガソリン代替燃料を製造する際に、FT法により生成されるナフサを使用することが考えられるが、ガソリン代替燃料のリサーチ法オクタン価を89以上にする必要がある。
【0007】
本発明は、二酸化炭素の排出量を低減することが可能なガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)フィッシャー・トロプシュ法により、粗油を合成する工程と、前記粗油を蒸留してナフサを分離する工程と、前記ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む、ガソリン代替燃料の製造方法。
【0009】
(2)MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する工程と、前記プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する工程と、をさらに含む、(1)に記載のガソリン代替燃料の製造方法。
【0010】
(3)前記MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する代わりに、前記ナフサをクラッキングしてプロピレンを得る、(2)に記載のガソリン代替燃料の製造方法。
【0011】
(4)フィッシャー・トロプシュ法により、粗油を合成する工程と、前記粗油を蒸留して軟質ナフサおよび重質ナフサを分離する工程と、前記重質ナフサをクラッキングしてプロピレンを得る工程と、前記プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する工程と、前記軟質ナフサと、前記2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む、ガソリン代替燃料の製造方法。
【0012】
(5)フィッシャー・トロプシュ法により生成されるナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を含む、ガソリン代替燃料。
【0013】
(6)前記ナフサは、軟質ナフサである、(5)に記載のガソリン代替燃料。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二酸化炭素の排出量を低減することが可能なガソリン代替燃料の製造方法およびガソリン代替燃料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のガソリン代替燃料の第1の製造方法の一例を示す図である。
図2】本実施形態のガソリン代替燃料の第1の製造方法の他の例を示す図である。
図3】本実施形態のガソリン代替燃料の第2の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
[ガソリン代替燃料の製造方法]
(第1の方法)
本実施形態のガソリン代替燃料の第1の製造方法は、フィッシャー・トロプシュ(FT)法により、粗油を合成する工程と、粗油を蒸留してナフサを分離する工程と、ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む。ここで、粗油は、再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを使用して、水を電気分解することにより生成する水素を用いて合成することができるため、二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合するため、ガソリン代替燃料のリサーチ法オクタン価を89以上にすることができる。ここで、ナフサのリサーチ法オクタン価は、例えば、50以上80未満である。
【0018】
表1に、標準燃料(75体積%)およびオレフィン(25体積%)の混合物のリサーチ法オクタン価(RON;JIS K2280-1)を示す。ここで、標準燃料としては、n-へプタン(35体積%)およびイソオクタン(65体積%)の混合物(PRF65)を用いた。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から、オレフィンが有するC-C=C-構造が多くなると、RONを向上させる効果が大きくなる傾向があることがわかり、C-C=C-構造を4個有する2,3-ジメチル-2-ブテンは、RONを向上させる効果が最も大きい。
【0021】
ナフサに対する2,3-ジメチル-2-ブテンの体積比は、ガソリン代替燃料のリサーチ法オクタン価を89以上にすることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、1/3以上1以下である。
【0022】
本実施形態のガソリン代替燃料の第1の製造方法は、MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する工程と、プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する工程と、をさらに含むことが好ましい(図1参照)。ここで、メタノールは、再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを使用して、水を電気分解することにより生成する水素を用いて合成することができるため、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0023】
プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する方法としては、公知の方法を用いることができる(例えば、有機合成化学,第48巻第9号(1990),806-813参照)。
【0024】
2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する際に、2,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-2-ペンテン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン等の副生成物が生成する場合がある。この場合、ガソリン代替燃料は、リサーチ法オクタン価が89以上であれば、上記の副生成物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態のガソリン代替燃料の第1の製造方法は、2,3-ジメチル-2-ブテンから上記の副生成物を除去する分留工程を省略することができるため、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0025】
なお、MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する工程を省略して、石油に由来するプロピレンを使用してもよい。
【0026】
また、MTP法により、メタノールからプロピレンを合成する工程の代わりに、FT法により、粗油を合成する工程と、粗油を蒸留してナフサを分離する工程と、ナフサをクラッキングしてプロピレンを得る工程を実施してもよい(図2参照)。ここで、粗油は、再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを使用して、水を電気分解することにより生成する水素を用いて合成することができるため、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0027】
なお、石油ナフサのクラッキングと同様にして、ナフサをクラッキングすることができる。
【0028】
(第2の方法)
本実施形態のガソリン代替燃料の第2の製造方法は、フィッシャー・トロプシュ法により、粗油を合成する工程と、粗油を蒸留して軟質ナフサおよび重質ナフサを分離する工程と、重質ナフサをクラッキングしてプロピレンを得る工程と、プロピレンを二量化して、2,3-ジメチル-2-ブテンを合成する工程と、軟質ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合する工程を含む(図3参照)。ここで、粗油は、再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを使用して、水を電気分解することにより生成する水素を用いて合成することができるため、二酸化炭素の排出量を低減することができる。また、軟質ナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を混合するため、ガソリン代替燃料のリサーチ法オクタン価を89以上にすることができる。ここで、軟質ナフサのリサーチ法オクタン価は、例えば、70以上80未満であり、重質ナフサのリサーチ法オクタン価は、例えば、60以上70未満である。このため、軟質ナフサに対する2,3-ジメチル-2-ブテンの体積比を低減することができる。また、重質ナフサをクラッキングしてプロピレンを得るため、重質ナフサも有効に利用することができる。
【0029】
なお、粗油を蒸留してナフサを分離した後に、ナフサを蒸留して軟質ナフサおよび重質ナフサを分離してもよい。
【0030】
[ガソリン代替燃料]
本実施形態のガソリン代替燃料は、FT法により生成されるナフサと、2,3-ジメチル-2-ブテンと、を含む。ここで、FT法により生成されるナフサは、FT法により合成される粗油から分離することができる。また、FT法により合成される粗油は、再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを使用して、水を電気分解することにより生成する水素を用いて合成することができるため、二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0031】
本実施形態のガソリン代替燃料中の2,3-ジメチル-2-ブテンの含有量は、リサーチ法オクタン価を89以上にすることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、25体積%以上50体積%以下である。
【0032】
なお、本実施形態のガソリン代替燃料は、本実施形態のガソリン代替燃料の第1の製造方法により、製造することができる。
【0033】
FT法により生成されるナフサは、軟質ナフサであることが好ましい。これにより、本実施形態のガソリン代替燃料中の2,3-ジメチル-2-ブテンの含有量を低減することができる。この場合、本実施形態のガソリン代替燃料は、本実施形態のガソリン代替燃料の第2の製造方法により、製造することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で、上記の実施形態を適宜変更してもよい。
図1
図2
図3