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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022934
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】捨石均し用重錘
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/10 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
E02D15/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126389
(22)【出願日】2022-08-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】506378647
【氏名又は名称】株式会社青山海事
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 武美智
(72)【発明者】
【氏名】乾 良典
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA02
2D045CA01
2D045CA32
(57)【要約】
【課題】小型化することで、その均し場所が限定されることなく、またその取り扱いが非常に良好となる捨石均し用重錘を提供する。
【解決手段】捨石均し用重錘1は、略直方体状の箱体7の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、箱体7の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤ4が吊り金具40を介して直接接続される構成であり、捨石均し用重錘1全体を小型化できるので、均し場所が限定されることなく、またその取り扱いが非常に良好となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘であって、
当該捨石均し用重錘は、略直方体状の箱体の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、
前記箱体の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続される構成であることを特徴とする捨石均し用重錘。
【請求項2】
前記箱体の幅寸法は、2.5m以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【請求項3】
前記箱体の高さ寸法は、1.2m以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【請求項4】
前記箱体の天端板及び底板と、前記各ウェイト板とには、上下方向に貫通する水抜孔が複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【請求項5】
前記箱体の側板に、水平方向に貫通する水抜孔が複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【請求項6】
前記箱体の上端には、長手方向に沿って延びる吊り用突起部が立設され、
前記吊り金具が前記吊り用突起部に対してその長手方向に沿う位置を変更可能に固定されることを特徴とする請求項1に記載の捨石均し用重錘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、防波堤(例えば、傾斜堤、直立堤や混成堤等)の基礎として捨石を積層してなる捨石基礎マウンド(ブロック)や、岸壁を構成する裏込捨石ブロックを施工する過程において、その仕上げ時、その天端面及び法面を均す捨石均し工事が行われる。この捨石均し工事は、潜水士が小型のバケットを使用して石材を一つ一つ移動させて整形する均し作業を行っている。しかしながら、従来の捨石均し工事では、以下(1)~(3)に記載の問題が発生する。すなわち、(1)作業する水深が15mを超えると、潜水士への負担が大きくなり減圧症の発病リスクが増大する。(2)作業する水深が深くなると、1回の潜水可能時間が減少して、かつ、連続潜水を行うための浮上減圧時間及び待機時間が増加して作業効率が低下する。(3)800~1000kg/個の基礎捨石や被覆石の潜水士よる均し作業は、石材が重いので非常に体力を消耗し、減圧症の発病リスクを増大させる。さらに、近年潜水士の数も減少しており、潜水作業の担い手が不足している状態である。
【0003】
そこで、潜水士への負担を軽減して、捨石均し工事に採用すべく提案された従来技術として、特許文献1には、一対のシェルの下端にスクリード部材が一体的にそれぞれ連結され、該スクリード部材の下面が均し面として構成され、石材の掘削、運搬及び投石できる機能に加え、捨石基礎上を均す重錘としての機能を有するグラブバケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6444844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のグラブバケットは、捨石基礎マウンドの表面を均す重錘としての機能に加え、石材の掘削、運搬及び投石できる機能をも有し、その重さを45トンとするために必然的に大型化してしまう。そのために、特許文献1に記載のグラブバケットを、例えば、岸壁を構成する裏込捨石ブロックに間隔を置いて配置される鋼管杭間に挿入することができず、各鋼管杭間の裏込捨石ブロックの法面等を均すことが困難であり、採用することができない。しかも、特許文献1に記載のグラブバケットは、高さ寸法が5mを超えるために、このクラブバケットを水平方向に対して傾けるべく、クラブバケットの上端において、起重機船のクレーンからの吊ワイヤをかける位置を変更する際など、作業者が自身の身長よりもはるかに高い高さ5mの高所で作業する必要があり、その作業が極めて困難なものになる。
【0006】
そして、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、小型化することで、その均し場所が限定されることなく、またその取り扱いが非常に良好となる捨石均し用重錘を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の捨石均し用重錘に係る発明は、水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘であって、当該捨石均し用重錘は、略直方体状の箱体の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、前記箱体の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続される構成であることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、捨石ブロックの表面を均すための均し専用の重錘を採用することで、その大きさを小型化することができる。また、捨石均し用重錘を構成する箱体の上端に、起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続され、捨石均し用重錘を捨石ブロックの表面に落下させてその位置を均すことができる。要するに、捨石均し用重錘を構成する箱体の上端に、起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続されるだけであるので、その構成がシンプルであり、その取り扱いが非常に良好となり、作業効率を向上させることができる。なお、捨石均し用重錘はその重さが45トン程度であり、直巻能力が45トン以上のクレーンを備えた起重機船が必要となる。
【0008】
請求項2の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記箱体の幅寸法は、2.5m以下に設定されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、箱体の幅寸法が2.5m以下に設定されているので、均す場所が比較的狭い場所であっても、問題なく均すことができ、均す場所が限定されることはない。
【0009】
請求項3の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記箱体の高さ寸法は、1.2m以下に設定されることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、箱体の高さ寸法が1.2m以下に設定されているので、捨石均し用重錘を水平方向に対して傾けるべく、箱体の上端において、クレーンからの吊ワイヤをかける位置を変更する際、作業者によって容易にその作業を行うことができる。
【0010】
請求項4の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記箱体の天端板及び底板と、前記各ウェイト板とには、上下方向に貫通する水抜孔が複数形成されることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、上下方向に貫通する水抜孔を設けているので、捨石均し用重錘の底面により捨石ブロックの表面を均す際、水中における捨石均し用重錘の落下速度の低下を抑制すること、すなわち、捨石均し用重錘を落下させる際の水の抵抗を十分に抑制することができる。また、上下方向に貫通する水抜孔を設けているので、捨石均し用重錘(箱体)の底面により捨石ブロックの表面を均す際、捨石均し用重錘の落下時、上下方向に貫通する水抜孔への水の流れを促進することができ、その結果、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。
【0011】
請求項5の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記箱体の側板に、水平方向に貫通する水抜孔が複数形成されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、箱体の側板に設けた水抜孔により、箱体の内外の水の流通を良好にすることができ、その結果、水中における捨石均し用重錘の落下速度の低下(捨石均し用重錘の落下の際の水の抵抗)をさらに抑制でき、また、捨石均し用重錘(箱体)の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速をさらに低下させることができる。
【0012】
請求項6の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記箱体の上端には、長手方向に沿って延びる吊り用突起部が立設され、前記吊り金具が前記吊り用突起部に対してその長手方向に沿う位置を変更可能に固定されることを特徴とするものである。
請求項6の発明では、捨石ブロックの法面を均す際などは、作業者により、吊り金具の、吊り用突起部に対するその長手方向に沿う固定位置を変更することで、捨石均し用重錘を水平方向に対して所望の傾斜角度にて容易に傾斜させた状態で吊り下げることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る捨石均し用重錘では、小型化することで、その均し場所が限定されることなく、またその取り扱いが非常に良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の底面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の一方からの側面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の他方からの側面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘に採用した吊り金具及びシャックルの断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘に採用した吊り金具の正面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘に採用したウェイト板の平面図である
図9図9は、本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘の箱体内に積層、収容された各ウェイト板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図1図9に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る捨石均し用重錘1は、防波堤(例えば、傾斜堤、直立堤や混成堤等)の基礎として捨石を積層してなる捨石基礎マウンド(ブロック)や、岸壁を構成する裏込捨石ブロックの表面(天端面や法面)を均すものである。図1を参照して、本実施形態に係る捨石均し用重錘1の上端には、起重機船(図示略)のクレーン(図示略)からの吊ワイヤ4が吊り金具40を介して直接接続される。
【0016】
そして、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、起重機船のクレーンからの吊ワイヤ4により吊り上げられ、当該捨石均し用重錘1を捨石ブロックの表面より所定の高さから落下させ、その動作を表面全域に亘って繰り返すことで、捨石ブロックの表面を均している。この均し作業は、通常、荒均し工程、中均し工程、仕上げ均し工程、計測均し工程の4回の均し工程が必要となる。また、仕上げ均し工程及び計測均し工程後には、捨石ブロックの表面の出来形において、その管理値が±5cmを満足する必要がある。
【0017】
本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、図1及び図9を参照して、箱体7内に複数のウェイト板60、60を積層、収容して構成される。図1を参照して、箱体7は直方体状に形成される。箱体7は、天端板10、底板11、及び4枚の側板12a、12bから構成される。図1図4及び図5を参照して、箱体7の長手方向の長さ寸法Lは、3.5m以下に設定される。本実施形態では、箱体7の長手方向の長さ寸法Lは、約3.2mに設定される。箱体7の幅方向の長さ寸法Wは、2.5m以下に設定される。本実施形態では、箱体7の幅方向の長さ寸法Wは、約2.2mに設定される。箱体7の高さ寸法Hは、1.2m以下に設定される。本実施形態では、箱体7の幅方向の長さ寸法Hは、約0.8mに設定される。
【0018】
図1図3及び図9を参照して、箱体7の天端板10及び底板11は、平面視長方形状に形成され、その外形寸法は同じである。天端板10の厚みと側板12a、12bの厚みとは略同じである。底板11の厚みは、天端板10の厚みより厚い。底板11の厚みは、天端板10の厚みの約3倍である。図4及び図5も参照して、各側板12a、12bは正面視にて細長い長方形状に形成される。図1を参照して、各側板12a、12bは、天端板10と底板11との間にそれらの外端より若干内側に配置される。言い換えれば、天端板10及び底板11の外端は、各側板12a、12bの外面より外方に若干突出している。
【0019】
図1及び図4を参照して、箱体7の長手方向と同方向に延びる一対の側板12a、12aの外面であって、天端板10と底板11との間の位置に、長手方向に沿って間隔を置いて複数の長手側補強リブ15、15が接続される。なお、本実施形態では、長手側補強リブ15は7箇所設けられる。同様に、図1及び図5を参照して、箱体7の幅方向と同方向に延びる一対の側板12b、12bの外面であって、天端板10と底板11との間の位置にも、幅方向に沿って間隔を置いて複数の幅側補強リブ16、16が接続される。なお、本実施形態では、幅側補強リブ16は5箇所設けられる。長手側補強リブ15及び幅側補強リブ16は、共に断面矩形状の棒材で構成される。
【0020】
図1図3を参照して、箱体7の天端板10及び底板11には、複数の水抜孔20がそれぞれ形成される。水抜孔20は、天端板10及び底板11を上下方向に沿ってそれぞれ貫通される。なお、本実施形態では、水抜孔20は、箱体7の天端板10及び底板11のそれぞれに対し6箇所形成される。また、箱体7の天端板10及び底板11の全ての水抜孔20の内径は同じであり、200mmである。本実施形態では、水抜孔20は、箱体7の天端板10及び底板11の長手方向に沿って等間隔で3箇所、幅方向に沿って等間隔で2箇所形成される。
【0021】
本実施形態では、水抜孔20は天端板10及び底板11に対して規則的に配置されているが、不規則に任意の位置に形成されてもよい。図1図4及び図5を参照して、箱体7の4枚の側板12a、12bそれぞれにも、複数の水抜孔22a~22c、23a、23bが形成される。水抜孔22a~22c、23a、23bは、側板12a、12bを水平方向に沿って貫通される。図4を参照して、本実施形態では、箱体7の長手方向に沿う一対の側板12a、12aそれぞれに設けた複数の水抜孔22a~22cは、隣接する長手側補強リブ15間に1箇所ずつ設けられる。
【0022】
また、箱体7の長手方向に沿う一対の側板12a、12aそれぞれに設けた複数の水抜孔22a~22cは、当該側板12aの長手方向中央を基準に対称の位置に設けれる。詳しくは、当該側板12aの長手方向において最も外側に位置する一対の水抜孔22a、22aは、下側で、且つ内側の長手側補強リブ15それぞれに近接する位置に配置される。これらの水抜孔22a、22aよりも内側の一対の水抜孔22b、22bは、上側で、且つ内側の長手側補強リブ15それぞれに若干寄った位置に配置される。さらに、当該側板12aの長手方向において最も内側に位置する一対の水抜孔22c、22cは、下側で、且つ外側の長手側補強リブ15それぞれに若干寄った位置に配置される。
【0023】
一方、図5を参照して、本実施形態では、箱体7の幅方向に沿う一対の側板12b、12bそれぞれに設けた複数の水抜孔23a、23bは、隣接する幅側補強リブ16間に1箇所ずつ設けられる。箱体7の幅方向に沿う一対の側板12b、12bそれぞれに設けた複数の水抜孔23a、23bは、当該側板12bの長手方向中央を基準に対称の位置に設けれる。詳しくは、当該側板12bの長手方向において最も外側に位置する一対の水抜孔23a、23aは、下側で、且つ隣接する幅側補強リブ16、16間の中央にそれぞれ配置される。また、当該側板12bの長手方向において最も内側に位置する一対の水抜孔23b、23bは、上側で、且つ隣接する幅側補強リブ16、16間の中央にそれぞれ配置される。
【0024】
なお、本実施形態では、箱体7の各側板12a、12bに設けた水抜孔22a~22c、23a、23bの内径は全て同じであり、その内径は100mmである。そして、各側板12a、12bの上述した位置に水抜孔22a~22c、23a、23bをそれぞれ配置することで、箱体7の内外の水の流通をより良好にすることができ、捨石均し用重錘1の底面により捨石ブロックの表面を均す際、捨石均し用重錘1の落下時、箱体7内を上方に向かって流れる水を容易に箱体7外に逃がすことができる。
【0025】
図1図2図4及び図5を参照して、箱体7の天端板10には、長手方向に沿って延びる吊り用突起部26が立設される。吊り用突起部26は、天端板10の長手方向全域に亘って設けれる。吊り用突起部26、26は、天端板10の幅方向両端に一対設けられる。吊り用突起部26は板状に形成される。吊り用突起部26の両側面と天端板10との間には、長手方向に沿って間隔を置いて複数の補強リブ28が設けれる。吊り用突起部26の両側面には、薄い突起部が長円環状に延びる第1~第3囲い部31~33が長手方向に沿って間隔をおいて複数形成される。本実施形態では、第1~第3囲い部31~33として3箇所形成される。第1囲い部31と第3囲い部33とは、その長手方向に沿う長さ寸法が同じである。第2囲い部32の長手方向に沿う長さ寸法は、第1及び第3囲い部31、33の長手方向に沿う長さ寸法より長い。
【0026】
第1囲い部31内に第1挿通孔35が1箇所形成される。第2囲い部32内には、第2挿通孔36、36が長手方向に沿って間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、第2挿通孔36、36は5箇所形成される。第3囲い部33内には、第3挿通孔37、37が長手方向に沿って間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、第3挿通孔37、37は2箇所形成される。第1~第3挿通孔35~37は、吊り用突起部26を貫通している。本実施形態では、第1~第3挿通孔35~37の内径は全て同じであり、これら第1~第3挿通孔35~37に、吊り金具40を箱体7の吊り用突起部26に固定するための固定ボルト55が挿通される。なお、第1~第3挿通孔35~37は、上述した個数及び位置に限定されることはない。
【0027】
図1及び図5を参照して、箱体7の吊り用突起部26に上方から吊り金具40が嵌合される。図6及び図7を参照して、吊り金具40は、所定長さを有し、下方が開放されるコ字状の嵌合本体部43と、嵌合本体部43の上端から一体的に上方に向かって立設される板状のシャックル固定部44と、から構成される。嵌合本体部43は、互いに間隔を開けて対向する挟持板状部48、48と、一対の挟持板状部48、48の上端を連結する連結天端部49とから構成される。各挟持板状部48、48には、長手方向に沿って互いに間隔を置いて配置される一対の貫通孔51、51が形成される。これらの貫通孔51には、吊り金具40を箱体7の吊り用突起部26に固定するための固定ボルト55が挿通される。シャックル固定部44の長手方向略中央に貫通孔53が形成される。当該貫通孔53には、シャックルボルト57が挿通される。なお、図1に示すように、シャックル46には、起重機船のクレーンからの吊ワイヤ4の先端が連結される。
【0028】
そして、捨石ブロックの天端面等を均す際には、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を水平方向に対して傾斜させずに吊り上げる必要がある。その際には、作業者により、吊り金具40(嵌合本体部43)の一対の挟持板状部48、48により箱体7の吊り用突起部26を上方から挟み込むように嵌合させ、吊り用突起部26の第2囲い部32内の長手方向両端に位置する一対の第2挿通孔36、36と、吊り金具40の一対の挟持板状部48、48に設けた一対の貫通孔51、51とを一致させる。その後、各固定ボルト55、55を一対の第2挿通孔36、36と一対の貫通孔51、51とに挿通して、吊り金具40を箱体7の吊り用突起部26の長手方向中央部に連結する。
【0029】
また、吊り金具40のシャックル固定部44にシャックル46を嵌合させて、シャックル固定部44の貫通孔53にシャックルボルト57を挿通することで、シャックル46を吊り金具40のシャックル固定部44に連結する。そして、起重機船のクレーンからの吊ワイヤ4を巻き上げると、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は水平方向に対して傾斜せずに吊り上げられる。
【0030】
次に、捨石ブロックの法面を均す際には、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を水平方向に対して所定角度で傾斜させて吊り上げる必要がある。その際には、作業者により、吊り金具40(嵌合本体部43)の一対の挟持板状部48、48を箱体7の吊り用突起部26の長手方向に沿って一端側または他端側に所定距離スライドさせて、一対の挟持板状部48、48に設けた一対の貫通孔51、51と、対応する、吊り用突起部26の第1~3囲い部31~33内の一対の第1~第3挿通孔35~37(いずれか一対)とを一致させる。その後、各固定ボルト55、55を一対の貫通孔51、51と、対応する一対の第1~第3挿通孔35~37(いずれか一対)とに挿通して、吊り金具40を箱体7の吊り用突起部26における長手方向に沿う所定位置に連結する。
【0031】
また、吊り金具40のシャックル固定部44にシャックル46を嵌合させて、シャックル固定部44の貫通孔53にシャックルボルト57を挿通することで、シャックル46を吊り金具40のシャックル固定部44に連結する。そして、起重機船のクレーンからの吊ワイヤ4を巻き上げると、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は水平方向に対して所定角度で傾斜した状態で吊り上げられる。
【0032】
図8及び図9を参照して、箱体7内には、複数のウェイト板60が積層されて収容される。本実施形態では、ウェイト板60は5枚積層される。ウェイト板60は、所定厚みを有する平面視長方形状に形成される。ウェイト板60には、箱体7の天端板10及び底板11に設けた複数の水抜孔20と同じ位置に複数の水抜孔62が上下方向に貫通して設けられる。なお、本実施形態では、ウェイト板60の水抜孔62は、箱体7の天端板10及び底板11に設けた水抜孔20と同様に6箇所形成される。
【0033】
また、ウェイト板60に設けた全ての水抜孔62の内径は同じである。水抜孔62は、箱体7の天端板10及び底板11の水抜孔20の内径と同じであり、200mmである。なお、ウェイト板60の4隅に設けた4箇所の水抜孔62には、当該水抜孔62を横切るように細いピン65がそれぞれ配置される。各ピン65、65を用いて、ウェイト板60を持ち上げ、箱体7内に収容することができる。そして、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、その重さが45トン程度となり、起重機船に備えた、直巻能力が45トン以上のクレーンにより吊り上げ、または落下させることが可能になる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る捨石均し用重錘1は、略直方体状の箱体7の内部にウェイト板60を複数枚積層、収容してなり、箱体7の天端板10に吊り金具40を介して起重機船のクレーンからの吊ワイヤ4が直接接続される構成である。このように、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を、捨石ブロックの表面を均すための均し専用として採用することで、その構造をシンプルにすることができ、その大きさを小型化することができる。また、小型化できたことで、その取り扱いが非常に良好となり、その作業効率を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、箱体7の幅寸法Wが2.5m以下に設定され、その全体が小型化されているので、岸壁を構成する裏込捨石ブロックに間隔を置いて配置される鋼管杭間にも何ら問題なく挿入することができ、その位置を容易に均すことが可能になる。要するに、捨石均し用重錘1が小型化されているので、均す場所が比較的狭い場所であっても、問題なく均すことができ、均す場所が限定されることはない。
【0036】
さらに、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、箱体7の高さ寸法Hが1.2m以下に設定され、作業者(大人)の身長よりも低く、作業者の腰部辺りに設定されている。これにより、捨石均し用重錘1を水平方向に対して傾けるべく、作業者による、吊り金具40を箱体7の吊り用突起部26の長手方向に沿って一端側または他端側に所定距離スライドさせる作業や、固定ボルト55、55により、吊り金具40を箱体7の吊り用突起部26の長手方向に沿う所定位置に連結する作業、またシャックル46を吊り金具40のシャックル固定部44に嵌合させる作業等を、安全に、また容易に行うことができ、その作業効率を向上させることができる。
【0037】
さらにまた、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、箱体7の天端板10及び底板11と、各ウェイト板60とには、上下方向に貫通する水抜孔62が複数形成される。これにより、本実施形態に係る捨石均し用重錘1の底面により捨石ブロックの表面を均す際、水中における捨石均し用重錘1の落下速度の低下(捨石均し用重錘1の落下の際の水の抵抗)を十分に抑制することができ、落下させた捨石均し用重錘1によって捨石ブロックの表面に十分な大きさの力を付与することができ、ひいては、捨石ブロックの表面を十分に突き固めて均すことができる。
【0038】
また、箱体7の天端板10及び底板11と、各ウェイト板60とに上下方向に貫通する水抜孔20、62を設けることで、捨石均し用重錘1の底面により捨石ブロックの表面を均す際、捨石均し用重錘1の落下時、上下方向に貫通する水抜孔20、62への水の流れを促進することで、捨石均し用重錘1の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。その結果、捨石ブロックの表面に位置する比較的小さい30~50kg/個の転動を抑制することができ、捨石マウンドの表面外形における出来高の管理値を満足することができる。
【0039】
さらにまた、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、箱体7の側板12a、12bに、水平方向に貫通する水抜孔22a~22c、23a、23bが複数形成される。そして、箱体7の側板12a、12bに設けた水抜孔22a~22c、23a、23bにより、箱体7の内外の水の流通を良好にすることができ、その結果、捨石均し用重錘1の底面により捨石ブロックの表面を均す際、捨石均し用重錘1の落下時、箱体7内の上方に向かう水の流れが妨げられることはない。言い換えれば、捨石均し用重錘1の落下時、箱体7内を上方に向かって流れる水を容易に側板12a、12bに設けた水抜孔22a~22c、23a、23bから外方に逃がすことができる。これにより、水中における捨石均し用重錘1の落下速度の低下(捨石均し用重錘1の落下の際の水の抵抗)をさらに抑制でき、また、捨石均し用重錘1(箱体7)の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速をさらに低下させることができる。
【0040】
さらにまた、本実施形態に係る捨石均し用重錘1では、箱体7の上端には、長手方向に沿って延びる吊り用突起部26が立設され、吊り金具40が吊り用突起部26に対してその長手方向に沿う位置を変更可能に固定される。言い換えれば、吊り金具40が吊り用突起部26に挟み込むように嵌合されると共に長手方向に沿ってスライド自在で、且つ任意の位置(対応する第1~第3挿通孔35~37の位置)に固定可能に構成される。これにより、作業者によって、吊り金具40(嵌合本体部43)の一対の挟持板状部48、48を箱体7の吊り用突起部26を上方から挟み込むように嵌合させ、吊り用突起部26の長手方向に沿って一端側または他端側に容易にスライドさせることができ、容易に吊り金具40(嵌合本体部43)を箱体7の吊り用突起部26の長手方向に沿う任意の位置(対応する第1~第3挿通孔35~37の位置)に固定することができる。要するに、本実施形態に係る捨石均し用重錘1を水平方向に対して傾斜させる作業を容易に行うことができ、その作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 捨石均し用重錘,4 吊ワイヤ,7 箱体,10 天端板,11 底板,12a、12b 側板,20 水抜孔(天端板,底板),22a~22c、23a、23b 水抜孔(側板),26 吊り用突起部,40 吊り金具,60 ウェイト板,62 水抜孔(ウェイト板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘であって、
当該捨石均し用重錘は、略直方体状の箱体の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、
前記箱体の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続される構成であり、
記箱体の天端板及び底板と、前記各ウェイト板とには、上下方向に貫通する水抜孔が複数形成され、
前記箱体の天端板及び底板の各水抜孔と、前記各ウェイト板の各水抜孔とは、平面視にて同じ位置に形成されることを特徴とする捨石均し用重錘。
【請求項2】
水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘であって、
当該捨石均し用重錘は、略直方体状の箱体の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、
前記箱体の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続される構成であり、
前記箱体の上端には、長手方向に沿って延びる吊り用突起部が立設され、
前記吊り金具が前記吊り用突起部に対してその長手方向に沿う位置を変更可能に固定されることを特徴とする捨石均し用重錘。
【請求項3】
前記箱体の幅寸法は、2.5m以下に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の捨石均し用重錘。
【請求項4】
前記箱体の高さ寸法は、1.2m以下に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の捨石均し用重錘。
【請求項5】
前記箱体の側板に、水平方向に貫通する水抜孔が複数形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の捨石均し用重錘。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の捨石均し用重錘に係る発明は、水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘であって、当該捨石均し用重錘は、略直方体状の箱体の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、前記箱体の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続される構成であり、記箱体の天端板及び底板と、前記各ウェイト板とには、上下方向に貫通する水抜孔が複数形成され、前記箱体の天端板及び底板の各水抜孔と、前記各ウェイト板の各水抜孔とは、平面視にて同じ位置に形成されることを特徴とするものである。
また、請求項2の捨石均し用重錘に係る発明は、水中に積層された多数の捨石からなる捨石ブロックの表面を均すための捨石均し用重錘であって、当該捨石均し用重錘は、略直方体状の箱体の内部にウェイト板を複数枚収容してなり、前記箱体の上端に起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続される構成であり、前記箱体の上端には、長手方向に沿って延びる吊り用突起部が立設され、前記吊り金具が前記吊り用突起部に対してその長手方向に沿う位置を変更可能に固定されることを特徴とするものである。
請求項1及び2の発明では、捨石ブロックの表面を均すための均し専用の重錘を採用することで、その大きさを小型化することができる。また、捨石均し用重錘を構成する箱体の上端に、起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続され、捨石均し用重錘を捨石ブロックの表面に落下させてその位置を均すことができる。要するに、捨石均し用重錘を構成する箱体の上端に、起重機船のクレーンからの吊ワイヤが吊り金具を介して直接接続されるだけであるので、その構成がシンプルであり、その取り扱いが非常に良好となり、作業効率を向上させることができる。なお、捨石均し用重錘はその重さが45トン程度であり、直巻能力が45トン以上のクレーンを備えた起重機船が必要となる。
さらに、請求項1の発明では、上下方向に貫通する水抜孔を設けているので、捨石均し用重錘の底面により捨石ブロックの表面を均す際、水中における捨石均し用重錘の落下速度の低下を抑制すること、すなわち、捨石均し用重錘を落下させる際の水の抵抗を十分に抑制することができる。また、上下方向に貫通する水抜孔を設けているので、捨石均し用重錘(箱体)の底面により捨石ブロックの表面を均す際、捨石均し用重錘の落下時、上下方向に貫通する水抜孔への水の流れを促進することができ、その結果、捨石均し用重錘の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速を小さく抑えることができる。
一方、請求項2の発明では、捨石ブロックの法面を均す際などは、作業者により、吊り金具の、吊り用突起部に対するその長手方向に沿う固定位置を変更することで、捨石均し用重錘を水平方向に対して所望の傾斜角度にて容易に傾斜させた状態で吊り下げることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記箱体の幅寸法は、2.5m以下に設定されることを特徴とするものである。
請求項の発明では、箱体の幅寸法が2.5m以下に設定されているので、均す場所が比較的狭い場所であっても、問題なく均すことができ、均す場所が限定されることはない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記箱体の高さ寸法は、1.2m以下に設定されることを特徴とするものである。
請求項の発明では、箱体の高さ寸法が1.2m以下に設定されているので、捨石均し用重錘を水平方向に対して傾けるべく、箱体の上端において、クレーンからの吊ワイヤをかける位置を変更する際、作業者によって容易にその作業を行うことができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項5の捨石均し用重錘に係る発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記箱体の側板に、水平方向に貫通する水抜孔が複数形成されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、箱体の側板に設けた水抜孔により、箱体の内外の水の流通を良好にすることができ、その結果、水中における捨石均し用重錘の落下速度の低下(捨石均し用重錘の落下の際の水の抵抗)をさらに抑制でき、また、捨石均し用重錘(箱体)の底面端部から外側への略水平方向に沿う水の流速をさらに低下させることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】