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  • 特開-体内挿入部材および電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022956
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】体内挿入部材および電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240214BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240214BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126421
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊之
(72)【発明者】
【氏名】安立 啓介
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK13
4C160KK38
4C160KL03
4C160MM32
4C160NN01
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB28
4C267BB42
4C267BB46
4C267CC07
4C267CC08
(57)【要約】
【課題】体内に挿入される電極の性能向上を図る。
【解決手段】少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体2と、長尺体2の先端側に設けられる電極4とを備える。電極4は、電極4の厚み方向に並ぶ第1層と第2層とを含み、第2層の少なくとも一部は第1層より長尺体2から離れた位置にある。第1層は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含む。第2層は、金を主成分とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体と、
前記先端側に設けられる電極と、を備え、
前記電極は、前記電極の厚み方向に並ぶ第1層と第2層とを含み、前記第2層の少なくとも一部は前記第1層より前記長尺体から離れた位置にあり、
前記第1層は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含み、
前記第2層は、金を主成分とする、
体内挿入部材。
【請求項2】
前記長尺体は、可撓性を有する管状のシャフトであり、
前記体内挿入部材は、カテーテルである、
請求項1に記載の体内挿入部材。
【請求項3】
前記シャフトの先端側に設けられ、前記シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンを備え、
前記電極は、前記バルーンの表面に設けられる、
請求項2に記載の体内挿入部材。
【請求項4】
前記第1層は、前記バルーンの表面に接し、
前記第2層は、前記電極の外表面に位置する、
請求項3に記載の体内挿入部材。
【請求項5】
前記第2層は、銀および炭素の少なくとも一方の含有量が前記第1層よりも少ない、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の体内挿入部材。
【請求項6】
前記第1層の端部は、前記第2層で被覆される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の体内挿入部材。
【請求項7】
少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体を有する体内挿入部材における前記先端側に設けられる電極であって、
前記電極の厚み方向に並ぶ第1層と第2層とを含み、前記第2層の少なくとも一部は前記第1層より前記長尺体から離れた位置にあり、
前記第1層は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含み、
前記第2層は、金を主成分とする、
電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体内挿入部材および電極に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、診断や処置のために体内に挿入される部材である。例えば特許文献1には、体内で拡張可能なバルーンを備えるバルーンカテーテルが開示されている。このバルーンカテーテルは、高周波電力が印加される電極がバルーンの表面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/157100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーンの表面に電極を設ける場合、電極には、バルーンの変形に追従できるよう延伸性(柔軟性)が求められる。また、電極がバルーンから脱離しないようバルーンに対する密着性が求められる。また、当然に導電性が求められる。さらに、電極は体内に挿入されるため、生体に対する安全性(毒性が低いこと)も求められる。カテーテルのシャフトに電極が直に設けられる場合や、医療用針など他の体内挿入部材に電極が設けられる場合も、電極にはこれらの性能が求められる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、体内に挿入される電極の性能向上を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は、体内挿入部材である。この体内挿入部材は、少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体と、長尺体の先端側に設けられる電極と、を備える。電極は、電極の厚み方向に並ぶ第1層と第2層とを含み、第2層の少なくとも一部は第1層より長尺体から離れた位置にある。第1層は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含む。第2層は、金を主成分とする。
【0007】
本開示の他の態様は、少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体を有する体内挿入部材における長尺体の先端側に設けられる電極である。この電極は、電極の厚み方向に並ぶ第1層と第2層とを含み、第2層の少なくとも一部は第1層より長尺体から離れた位置にある。第1層は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含む。第2層は、金を主成分とする。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、体内に挿入される電極の性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る体内挿入部材の側面図である。
図2図1のA-A線に沿った断面図である。
図3】電極の一部分の拡大断面図である。
図4】電極の組成分布を示す図である。
図5】電極の端部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る体内挿入部材1の側面図である。体内挿入部材1は、少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体2(棒体)と、長尺体2の先端側に設けられる電極4とを備える。本実施の形態における「長尺」とは、長手方向の第1長さが長手方向に垂直な方向の第2長さより長いことをいう。例えば、第1長さと第2長さとの比(第1長さ/第2長さ)は5以上である。本実施の形態の体内挿入部材1は、一例としてアブレーション用のバルーンカテーテルである。このバルーンカテーテルは、血管、気管、消化管、総胆管、膵管等の体内の管状器官、これらの接続部、検査や治療のために体内に形成される孔や管等に挿入され、目的部位の拡張や処置に用いられる。
【0013】
体内挿入部材1としてのバルーンカテーテルは、シャフト6と、バルーン8と、電極4と、ハンドル10とを備える。シャフト6は、可撓性を有する長尺の管状体で構成される。シャフト6は、ポリオレフィンやポリアミドといった樹脂を含む、公知の可撓性材料で構成される。シャフト6は、長尺体2に相当する。シャフト6の第1長さは、例えば600mm~1800mmである。
【0014】
バルーン8は、シャフト6の先端(遠位端)側に設けられる。バルーン8は、好ましくはシャフト6の全長の半分よりも先端側に取り付けられる。以下では適宜、バルーンカテーテルあるいはシャフト6におけるバルーン8が設けられる側を単に「先端側」といい、反対(近位端)側を単に「基端側」という。バルーン8は、シャフト6の基端側から供給される、造影剤や生理食塩水等の流体によって拡張可能である。また、バルーン8は、流体の排出により収縮可能である。なお、図1には、バルーン8が拡張した状態を示している。バルーン8は、ポリオレフィンやポリアミドといった樹脂を含む、公知の可撓性材料で構成される。
【0015】
電極4は、バルーン8の表面に設けられる。例えば電極4は、バルーン8の外表面に積層された金属薄膜で構成される。本実施の形態では、シャフト6の軸方向(シャフト6の軸が延びる方向、あるいはシャフト6の長さ方向)に延びる帯状の電極4がバルーン8の表面に複数設けられている。各電極4は、シャフト6内に挿通された、あるいはシャフト6の外表面に敷設された、図示しない導線を介して図示しない外部電源に接続される。外部電源から電極4に電力が供給されると、ジュール熱により電極4が発熱する。電極4の構造については後に詳細に説明する。
【0016】
ハンドル10は、シャフト6の基端側に設けられる。シャフト6は、先端側から体内に挿入される。これにより、バルーン8および電極4が体内に送り込まれる。ハンドル10は、体外に配置されて施術者によって把持あるいは操作される。
【0017】
図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。図2に示すように、シャフト6は、筒状のインナーシャフト12と、筒状のアウターシャフト14とを有する。インナーシャフト12は、アウターシャフト14の内部に挿入される。インナーシャフト12の先端側は、アウターシャフト14の先端側から突出する。この突出した部分に、バルーン8が配置される。インナーシャフト12の外周面とアウターシャフト14の内周面との間には、バルーン拡張ルーメン16が設けられる。バルーン拡張ルーメン16は、バルーン8を拡張させる流体の通路として機能する。バルーン拡張ルーメン16の一端は、バルーン8の内部空間に接続される。バルーン拡張ルーメン16の他端側は、ハンドル10まで延びる。
【0018】
拡張状態にあるバルーン8は、先端側から基端側に向かって、先端側ネック部18と、先端側テーパ部20と、中間部22と、基端側テーパ部24と、基端側ネック部26とに区分けされる。先端側ネック部18は、インナーシャフト12の外周面に固定される。先端側テーパ部20は、先端側ネック部18から基端側に向かうにつれて径が大きくなり、中間部22に接続される。中間部22は、全長にわたって略同一の径を有する。基端側テーパ部24は、中間部22から基端側に向かうにつれて径が小さくなり、基端側ネック部26に接続される。基端側ネック部26は、アウターシャフト14の外周面に固定される。各電極4は、先端側ネック部18から中間部22にかけて延在する。なお、各電極4は、先端側、例えば先端側ネック部18上に延在する部分が互いに接続されて、一体になっていてもよい。
【0019】
図2では、各部の断面形状が直線状であり、先端側テーパ部20が先端側ネック部18および中間部22に対して傾斜し、基端側テーパ部24が中間部22および基端側ネック部26に対して傾斜している。したがって、各ネック部と各テーパ部との境界、および中間部22と各テーパ部との境界が明確である。しかしながら、この構造に限定されず、各部が曲線状で、これにより各部の境界が不明確となっていてもよい。
【0020】
続いて、電極4の構造について詳細に説明する。図3は、電極4の一部分の拡大断面図である。図3に示すように、電極4は、電極4の厚み方向に並ぶ第1層28と第2層30とを含む。第2層30の少なくとも一部の領域は、第1層28よりバルーン8(長尺体2、シャフト6)から離れた位置にある。本実施の形態の第1層28は、バルーン8の表面に接して、当該表面に沿って広がっている。第2層30は、電極4の外表面に位置し且つ第1層28に接して、第1層28に沿って広がっている。また第2層30は、後述する端部を除いて、第1層28よりバルーン8から離れた位置にある。
【0021】
なお、第1層28はバルーン8に直に接していなくてもよいし、第2層30は第1層28に直に接していなくてもよい。また、第2層30の外側に他の層が設けられてもよい。また例えば、電極4を厚み方向に3等分した際のバルーン8に接する層を第1層28、電極4の外表面を含む層を第2層30と定めることもできる。第1層28の厚みは、例えば1μm以上150μm以下である。第2層30の厚みは、例えば1μm以上10μm以下である。また一例として、第1層28の厚みは、第2層30の厚みよりも10μm以上厚い。
【0022】
図4は、電極4の組成分布を示す図である。横軸は、バルーン8からの距離を示し、バルーン8と第1層28との界面は0である。縦軸は、各層の全成分に対する、金(Au)、銀(Ag)、炭素(C)の各原子の割合を示す。図4に示すグラフは、次のようにして得ることができる。すなわち、電極4が厚み方向に切断される。切断面がクロスセクションポリッシャーで研磨され、観察面とされる。走査型電子顕微鏡(SEM)に付設のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて、この観察面の複数個所に電子線が照射される。これにより、電子線が照射された部分の成分とその含有量とが測定される。この結果、図4が得られる。なお、EDSを用いた測定では、窒素(N)および酸素(O)も検出されるが、これらの図示は省略する。
【0023】
図4に示すように、第1層28は、銀、金および炭素を主成分とする。また、第1層28は、銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含む。好ましくは、第1層28に含まれる全成分中で炭素が最も多い。本実施の形態における「銀、金および炭素を主成分とする」とは、第1層28を構成する全成分に対し、銀、金および炭素の各含有量の合計が50原子%以上、好ましくは70原子%以上であることをいう。銀、金および炭素の各含有量の合計が50原子%以上である場合、好ましくは銀、金および炭素の各含有量は50原子%未満である。また、銀、金および炭素の各含有量の合計が70原子%以上である場合、好ましくは銀、金および炭素の各含有量は70原子%未満である。
【0024】
一方、第2層30は、金を主成分とする。本実施の形態における「金を主成分とする」とは、第2層30を構成する全成分に対し、金が50原子%以上、好ましくは70原子%以上であることをいう。各層における各成分の含有量は、各層の厚み方向および/または平面方向にずれた任意の複数個所の測定点における含有量の平均値とされる。
【0025】
第1層28における銀の含有量は、例えば10原子%以上30原子%以下である。第1層28における金の含有量は、例えば10原子%以上25原子%以下である。第1層28における炭素の含有量は、例えば30原子%以上50原子%未満である。
【0026】
また、第2層30における銀の含有量は、例えば0原子%以上1原子%以下である。第2層30における金の含有量は、例えば80原子%以上99原子%以下である。第2層30における炭素の含有量は、例えば1原子%以上20原子%以下である。
【0027】
また好ましくは、第2層30は、銀および炭素の少なくとも一方の含有量が第1層28よりも少ない。本実施の形態の第2層30では、銀および炭素の両方の含有量が第1層28における銀および炭素の含有量よりも少なくなっている。第1層28における銀の含有量と第2層30における銀の含有量との差は、例えば9原子%以上30原子%以下である。第1層28における炭素の含有量と第2層30における炭素の含有量との差は、例えば10原子%以上49原子%以下である。なお、第1層28における金の含有量と第2層30における金の含有量との差は、55原子%以上89原子%以下である。
【0028】
第1層28および第2層30を含む電極4は、例えば、第1層28用の導電性インクをバルーン8の表面に塗布して第1層28を形成し、続いて第2層30用の導電性インクを第1層28の表面に塗布して第2層30を形成することで、得ることができる。各導電性インクは、各層を構成する金属成分と、溶媒とを含む。
【0029】
一般に電極4の構成成分には、電極4に導電性を付与するための銀と、電極4に延伸性やバルーン8に対する密着性を付与するための樹脂とが含有される。上述した炭素は、樹脂に由来するものである。バルーン8の変形に電極4をより追従させやすくしたり、バルーン8からの電極4の剥離をより抑制したりするために、樹脂の量を増やすことが考えられる。しかしながら、樹脂の量を増やすと電極4の導電性が低下し得る。電極4の導電性が低下すると電極4が発熱しやすくなり、バルーン8の損傷を引き起こし得る。
【0030】
一方で、電極4の導電性を優先して銀の含有量を増やすと、電極4の延伸性や密着性が低下し得る。一般にバルーンカテーテルを製造する際は、バルーン8を拡張した状態で電極4を形成した後に、バルーン8を折り畳む。このため、バルーン8を折り畳む際に電極4にクラックが生じたり、電極4がバルーン8から剥離したりすることを抑制したい。
【0031】
また、銀および樹脂の配合バランスを調整して電極4の延伸性、密着性および導電性を確保できたとしても、樹脂や銀は、体内に溶出すると細胞毒性を示すおそれがある。導電性インクの溶媒も、電極4中に残存して体内に溶出した場合は、同様に細胞毒性を示し得る。したがって、延伸性、密着性および導電性に加えて、電極4の生体に対する安全性も確保する必要がある。シャフト6を含む長尺体2の表面に電極4を直に設ける場合も、延伸性、密着性、導電性および安全性の確保が同様に求められる。
【0032】
これに対し、本実施の形態の電極4は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ当該3成分中で炭素を最も多く含む第1層28と、金を主成分として第1層28を覆う第2層30とを備える。第1層28中の炭素は樹脂に由来するため、第1層28は、銀、金および樹脂を主成分としていることになる。
【0033】
第1層28において、銀、金および樹脂を主成分としつつ、銀および金よりも樹脂の割合を多くすることで、電極4における延伸性、密着性および導電性のバランスを良好な状態とすることができる。また、第1層28は、導電成分として銀だけでなく金も含む。金は、銀よりも展延性が高い。したがって、電極4の導電性を高めつつ延伸性の低下を抑制することができる。
【0034】
また、金を主成分とする第2層30で第1層28を被覆することで、第1層28に含まれる樹脂、銀、残存溶媒の溶出を抑制することができる。よって、電極4の安全性を高めることができる。また、電極4の導電性も高めることができる。また、本実施の形態の第2層30は、電極4の外表面に位置する。このため、電極4の安全性をより高めることができる。また、第2層30は、第1層28よりも銀および炭素の少なくとも一方の含有量が少ない。これにより、電極4の安全性をより高めることができる。
【0035】
図5は、電極4の端部の拡大断面図である。図5に示すように、好ましくは第1層28の端部は、第2層30で被覆される。本実施の形態の第2層30は、バルーン8の表面に沿う方向で第1層28の外側まで拡がり、第1層28の外側まで延在した端部がバルーン8の表面に接している。このため、第1層28の主表面だけでなく、第1層28の端面も第2層30で被覆されている。第1層28の全体が第2層30で覆われることで、電極4の安全性をより高めることができる。なお上述の構造は、第1層28が、銀、金および炭素を主成分とする中央部と、金を主成分とする端部とを有していると解釈することもできる。
【0036】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0037】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体(2)と、
先端側に設けられる電極(4)と、を備え、
電極(4)は、電極(4)の厚み方向に並ぶ第1層(28)と第2層(30)とを含み、第2層(30)の少なくとも一部は第1層(28)より長尺体(2)から離れた位置にあり、
第1層(28)は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含み、
第2層(30)は、金を主成分とする、
体内挿入部材。
[第2項目]
長尺体(2)は、可撓性を有する管状のシャフト(6)であり、
体内挿入部材(1)は、カテーテルである、
第1項目に記載の体内挿入部材(1)。
[第3項目]
シャフト(6)の先端側に設けられ、シャフト(6)の基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーン(8)を備え、
電極(4)は、バルーン(8)の表面に設けられる、
第2項目に記載の体内挿入部材(1)。
[第4項目]
第1層(28)は、バルーン(8)の表面に接し、
第2層(30)は、電極(4)の外表面に位置する、
第3項目に記載の体内挿入部材(1)。
[第5項目]
第2層(30)は、銀および炭素の少なくとも一方の含有量が第1層(28)よりも少ない、
第1項目乃至第4項目のいずれかに記載の体内挿入部材(1)。
[第6項目]
第1層(28)の端部は、第2層(30)で被覆される、
第1項目乃至第5項目のいずれかに記載の体内挿入部材(1)。
[第7項目]
少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体(2)を有する体内挿入部材(1)における先端側に設けられる電極(4)であって、
電極(4)の厚み方向に並ぶ第1層(28)と第2層(30)とを含み、第2層(30)の少なくとも一部は第1層(28)より長尺体(2)から離れた位置にあり、
第1層(28)は、銀、金および炭素を主成分とし、且つ銀、金および炭素のうち炭素を最も多く含み、
第2層(30)は、金を主成分とする、
電極(4)。
【符号の説明】
【0038】
1 体内挿入部材、 2 長尺体、 4 電極、 6 シャフト、 8 バルーン、 28 第1層、 30 第2層。
図1
図2
図3
図4
図5