(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022986
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20240214BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240214BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240214BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240214BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240214BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240214BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
B60C11/00 F
B60C11/03 Z
B60C11/13 B
B60C11/13 C
C08K3/36
C08K5/3477
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126476
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雅子
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA05
3D131BA12
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC33
3D131BC40
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EB07U
3D131EB24X
3D131EB28V
3D131EB38V
3D131EB38X
4J002AC01X
4J002AC03W
4J002AC06X
4J002AC08W
4J002DJ016
4J002EU007
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】低燃費性能、ウェットグリップ性能および耐摩耗性の総合性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物およびタイヤを提供すること。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対して、シリカ、およびテトラジン化合物0.1質量部以上5質量部以下を含むタイヤ用ゴム組成物であって、ゴム成分がイソプレン系ゴム25質量%超、スチレンブタジエンゴム50質量%超およびブタジエンゴムを含むものであり、ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIRとし、テトラジン化合物の含有量(質量部)をATETとするとき、AIRとATETとが下式(1)を満たし、タイヤ用ゴム組成物の30℃における損失正接を30℃tanδとし、0℃における損失正接を0℃tanδとするとき、30℃tanδと0℃tanδとが下式(2)と下式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
ATET/AIR>0.020 (1)
30℃tanδ≦0.15 (2)
0℃tanδ/30℃tanδ>2.0 (3)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対して、シリカ、およびテトラジン化合物0.1質量部以上5質量部以下を含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分が、イソプレン系ゴム25質量%超、スチレンブタジエンゴム50質量%超およびブタジエンゴムを含むものであり、
前記ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIRとし、テトラジン化合物の含有量(質量部)をATETとするとき、AIRとATETとが下式(1)を満たし、
前記タイヤ用ゴム組成物の30℃における損失正接を30℃tanδとし、0℃における損失正接を0℃tanδとするとき、30℃tanδと0℃tanδとが下式(2)と下式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
ATET/AIR>0.020 (1)
30℃tanδ≦0.15 (2)
0℃tanδ/30℃tanδ>2.0 (3)
【請求項2】
前記式(1)の右辺が0.050である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記式(3)の右辺が3.0である請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量部中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量(質量部)をASBRとし、前記ブタジエンゴムの含有量をABRとするとき、AIRとASBRとABRとが下式(4)を満たす請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
ASBR>AIR>ABR (4)
【請求項5】
前記シリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記シリカが平均一次粒子径17nm以下のシリカを含む請求項1~5記載のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記タイヤ用ゴム組成物がカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)をASILとし、ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラックの含有量(質量部)をACBとするとき、ASILとACBとが下式(5)を満たす請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
ACB/ASIL<1 (5)
【請求項8】
前記タイヤ用ゴム組成物がメルカプト系シランカップリング剤を含む請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。
【請求項10】
前記タイヤの最大負荷能力をWL(kg)とし、前記タイヤの重量をG(kg)とするとき、WLとGとが下式(6)を満たす請求項9記載のタイヤ。
G/WL≦0.012 (6)
【請求項11】
前記トレッドのトレッド接地面のランド比(%)をBとするとき、ASBRとBとが下式(7)を満たす請求項9または10記載のタイヤ。
ASBR×B>25.0 (7)
【請求項12】
前記トレッドのトレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝と、前記周方向溝によって区画された陸部とを有し、
前記陸部はタイヤ径方向内側に向かって延在する横溝を有し、
前記横溝は前記延在方向に垂直な断面において溝幅がトレッド面での溝幅よりも広がる部分を有している請求項9~11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記トレッドの溝底ゲージが1mm以上4mm以下である請求項9~12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記トレッドのトレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝を有し、
前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とするとき、前記センター領域に存在する周方向溝の少なくとも一つがジグザグ状である請求項9~13のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とし、前記センター領域の両外側であってかつトレッド接地幅内である領域を一対のショルダー領域とするとき、前記ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さが10mm以上である請求項9~14のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用車等に広く用いられるタイヤには、低燃費性能とウェットグリップ性能とを高いレベルで両立させることが求められている。例えば、特許文献1は、所定のビニル量のスチレン-ブタジエンゴムと所定のシス1,4結合含有率のブタジエンゴムとを所定の割合で含むゴム組成物を用いて、ウェット制動性および転がり抵抗性能を向上することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、低燃費性能およびウェットグリップ性能だけでなく、そのようなタイヤを長く使用できるようにするためには、タイヤの耐摩耗性を高めることも必要である。
【0005】
本発明は、低燃費性能、ウェットグリップ性能および耐摩耗性の総合性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物およびタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のタイヤ用ゴム組成物に関する。
ゴム成分100質量部に対して、シリカ、およびテトラジン化合物0.1質量部以上5質量部以下を含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分が、イソプレン系ゴム25質量%超、スチレンブタジエンゴム50質量%超およびブタジエンゴムを含むものであり、
前記ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIRとし、テトラジン化合物の含有量(質量部)をATETとするとき、AIRとATETとが下式(1)を満たし、
前記タイヤ用ゴム組成物の30℃における損失正接を30℃tanδとし、0℃における損失正接を0℃tanδとするとき、30℃tanδと0℃tanδとが下式(2)と下式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
ATET/AIR>0.020 (1)
30℃tanδ≦0.15 (2)
0℃tanδ/30℃tanδ>2.0 (3)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低燃費性能、ウェットグリップ性能および耐摩耗性の総合性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物およびタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】タイヤの断面における、タイヤ断面幅Wt、タイヤ断面高さHt、およびタイヤ外径Dtを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤにおいて、トレッド接地面を模式的に表した図である。同図中の囲われた領域がトレッド接地面である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドパターンを示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤについて、断面図の一部を模式的に表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカ、およびテトラジン化合物0.1質量部以上5質量部以下を含むタイヤ用ゴム組成物であって、前記ゴム成分がイソプレン系ゴム25質量%超、スチレンブタジエンゴム50質量%超およびブタジエンゴムを含むものであり、前記ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIRとし、テトラジン化合物の含有量(質量部)をATETとするとき、AIRとATETとが下式(1)を満たし、前記タイヤ用ゴム組成物の30℃における損失正接を30℃tanδとし、0℃における損失正接を0℃tanδとするとき、30℃tanδと0℃tanδとが下式(2)と下式(3)を満たすタイヤ用ゴム組成物である。
ATET/AIR>0.020 (1)
30℃tanδ≦0.15 (2)
0℃tanδ/30℃tanδ>2.0 (3)
【0010】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明において、低燃費性能、ウェットグリップ性能および耐摩耗性の総合性能を向上させることができるメカニズムとしては以下が考えられる。すなわち、イソプレン系ゴム25質量%超、スチレンブタジエンゴム50質量%超およびブタジエンゴムを含むゴム成分に、シリカとテトラジン化合物の所定量とを配合し、式(1)を満たすことで、シリカの偏在が抑制され、さらに、その状態において式(2)および式(3)を満たすことで、低燃費性能、ウェットグリップ性能および耐摩耗性の総合性能が向上するものと考えられる。
【0011】
前記式(1)の右辺は0.050であることが好ましい。
【0012】
テトラジン化合物のイソプレン系ゴムに対する含有比率を高めることで、イソプレンゴム層の耐摩耗性を向上することができると考えられる。
【0013】
前記式(3)の右辺は3.0であることが好ましい。
【0014】
低温の発熱性に係る0℃tanδを、常温の発熱性に係る30℃tanδに対する比において大きくすることで、ウェットグリップ性能を高めることができると考えられる。
【0015】
ゴム成分100質量部中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量(質量部)をASBRとし、前記ブタジエンゴムの含有量をABRとするとき、ASBRとABRとAIRとは下式(4)を満たすことが好ましい。
ASBR>AIR>ABR (4)
【0016】
ガラス転移温度が高い順に含有量を増やすことによって、耐摩耗性能とウェットグリップ性能のバランスを高めることができる。
【0017】
前記シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましい。
【0018】
低燃費性能を担保し易い傾向がある。
【0019】
前記シリカは平均一次粒子径17nm以下のシリカを含むことが好ましい。
【0020】
耐摩耗性を向上させることができると考えられる。
【0021】
前記タイヤ用ゴム組成物はカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)をASILとし、ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラックの含有量(質量部)をACBとするとき、ASILとACBとは下式(5)を満たすことが好ましい。
ACB/ASIL<1 (5)
【0022】
本発明の効果を達成する上で、シリカリッチの配合系が好ましいと考えられる。
【0023】
前記タイヤ用ゴム組成物はメルカプト系シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0024】
メルカプト系シランカップリング剤を含むことで燃費性を向上させることができると考えられる。
【0025】
本発明の他の実施形態は、前記タイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤである。
【0026】
前記タイヤの最大負荷能力をWL(kg)とし、前記タイヤの重量をG(kg)とするとき、WLとGとは下式(6)を満たすことが好ましい。
G/WL≦0.012 (6)
【0027】
式(6)を満たすタイヤは、比較的軽量のため発熱が小さいので、低燃費性の観点から好ましいと考えられる。
【0028】
前記トレッドのトレッド接地面のランド比(%)をBとするとき、ASBRとBとは下式(7)を満たすことが好ましい。
ASBR×B>25.0 (7)
【0029】
上記を満たすことで耐摩耗性とウェットグリップ性能のバランスを向上させることができると考えられる。
【0030】
前記トレッドのトレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝と、前記周方向溝によって区画された陸部とを有し、前記陸部はタイヤ径方向内側に向かって延在する横溝を有し、前記横溝は前記延在方向に垂直な断面において溝幅がトレッド面での溝幅よりも広がる部分を有していることが好ましい。
【0031】
前記の横溝を陸部に配置することで、摩耗が進展しても圧縮剛性の増大を抑制することができ、ウェットグリップ性能を確保することができると考えられる。
【0032】
前記トレッドの溝底ゲージは1mm以上4mm以下であることが好ましい。
【0033】
溝底ゲージを上記の範囲内とすることで、発熱を抑えることができ、低燃費性の向上に寄与し得ると考えられる。
【0034】
前記トレッドのトレッド面はタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝を有し、前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とするとき、前記センター領域に存在する周方向溝の少なくとも一つはジグザグ状であることが好ましい。
【0035】
センター領域に存在する周方向溝の少なくとも一つがジグザグ状であることにより、当該周方向溝を流れる気流による放熱効果を高めることができるので、耐久性が向上し、耐摩耗性に寄与すると考えられる。
【0036】
前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とし、前記センター領域の両外側であってかつトレッド接地幅内である領域を一対のショルダー領域とするとき、前記ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さは10mm以上であることが好ましい。
【0037】
上記構成により、排水性を高めることができるので、ウェットグリップ性能の向上に寄与すると考えられる。
【0038】
<定義>
「タイヤの各部の寸法等」は、特に断りがない限り、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態において特定される値とする。
【0039】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている「Measuring Rim」、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている「Design Rim」を指す。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0040】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とする。
【0041】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0042】
「最大負荷能力(WL)(kg)」は、正規状態で測定されたタイヤ断面幅をWt(mm)、タイヤ断面高さをHt(mm)、タイヤ外径をDt(mm)としたとき、下記式(A)および式(B)により算出される値である。Vはタイヤが占める空間の仮想体積である。前記のタイヤ断面幅Wtは、正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。前記のタイヤ断面高さHtは、ビード部底面からトレッド最表面までの距離であり、タイヤの外径はリム径の呼びとの差の1/2である。本開示において、最大負荷能力は、別に規定される場合を除き、上記の「最大負荷能力(WL)(kg)」のことを指す。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt ・・・(A)
WL=0.000011×V+100 ・・・(B)
【0043】
「タイヤ重量」はG(kg)で表す。ただし、Gはリムの重量を含まない、タイヤ単体の重量である。一方、タイヤの内腔に、スポンジやシーラントからなる部材またはセンサー部材などを備える場合はそれらを含む重量である。
【0044】
「ランド比B」は、正規状態のタイヤに正規荷重が負荷され、キャンバー角0度で平面に接地したときのトレッド接地面において、全ての溝を埋めたと仮定した状態でのトレッド接地面の表面積に対する、接地している表面積の比であり、トレッド表面に墨を塗り、厚紙に押しつけることで得られる。ここで、全ての溝とは、前記の周方向溝および横溝を含むものである。
【0045】
「横溝」とは、陸部に存在する溝であって、その溝幅は特に限定されない。したがって、溝幅が2mm以上のもの以外に、サイプと呼ばれることもある溝幅が2mm未満の細溝も含まれる。
【0046】
「溝底ゲージ」とは、周方向溝の最深部からベルト層のコード(ベルト保護層がコードを有している場合はベルト保護層のコード)までのゴムの厚みであって、溝が複数ある場合には、当該ゴムの厚みが最大になるものをいう。
【0047】
「ジグザグ状」とは、周方向溝の幅方向の中心が、タイヤ幅方向に振れながら、タイヤ周方向に延びていることを意図している。従って、直線状の溝が繰り返し折れ曲がる形態の他、曲線状の溝が波状に繰り返し湾曲している形態も含まれる。
【0048】
「センター領域に存在する周方向溝」とは、トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とし、前記センター領域の両外側であってかつトレッド接地幅内である領域を一対のショルダー領域とするとき、前記センター領域内に存在する周方向溝である。ある周方向溝がセンター領域とショルダー領域の双方に跨って存在するとき、当該周方向溝の半分以上がセンター領域に存在すれば、センター領域に存在する周方向溝である。
【0049】
「ショルダー領域に存在する周方向溝」とは、トレッド面に存在する周方向溝のうち、センター領域に存在する周方向溝でない周方向溝である。
【0050】
「ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さ」は、ショルダー領域に存在する周方向溝が複数ある場合には、最も深い溝深さを有する周方向溝についての溝深さである。
【0051】
「可塑剤の含有量」は、可塑剤によって伸展されたゴム成分中の可塑剤量も含む。同様に、「オイルの含有量」は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
【0052】
<測定方法>
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される。
【0053】
「ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0054】
「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0055】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0056】
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017によって求められる値である。
【0057】
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0058】
「平均一次粒子径」は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察された一次粒子を400個以上測定し、その平均により求める値である。シリカやカーボンブラックなどに適用される。
【0059】
「樹脂等の軟化点」は、特に断りのない限り、JIS K 6220-1:2015に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。他の方法で測定された軟化点は、その旨、記載される。
【0060】
「30℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定する。サンプルをタイヤから採取する場合は、各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部から、タイヤ周方向を長辺となるように、かつ、タイヤ半径方向を厚みとなるようにして、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmのサンプルを採取する。
【0061】
「0℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定する。サンプルをタイヤから採取する場合は、30℃tanδの場合と同様にする。
【0062】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物について説明する。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、テトラジン化合物0.1質量部以上5質量部以下を含む。
【0063】
(ゴム成分)
本発明のゴム成分は、イソプレン系ゴム25質量%超、スチレンブタジエンゴム50質量%超およびブタジエンゴムを含む。
【0064】
≪イソプレン系ゴム≫
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは26質量%以上、より好ましくは28質量%超、さらに好ましくは30質量%以上である。上限は、好ましくは45質量%未満、より好ましくは40質量%未満、さらに好ましくは35質量%未満である。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。
【0066】
≪SBR≫
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。また、SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5.0質量%超、より好ましくは10.0質量%超、さらに好ましくは20.0質量%超である。該スチレン含有量は、好ましくは40.0質量%未満、より好ましくは35.0質量%未満、さらに好ましくは30.0質量%未満である。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0068】
SBRのビニル結合量は、好ましくは30質量%超、より好ましくは40質量%超、さらに好ましくは50質量%超である。該ビニル結合量は、好ましくは80質量%未満、より好ましくは70質量%未満、さらに好ましくは65質量%未満である。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。なお、ビニル結合量は、前記方法によって測定できる。
【0069】
SBRとして可塑剤で伸展されたSBR(伸展SBR)を用いることもできるし、非伸展SBRを用いることもできる。伸展SBRを用いる場合、SBRの伸展量、すなわち、SBRに含まれる伸展可塑剤の含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。伸展に用いる可塑剤としては、例えば、オイルが好適に用いられる。
【0070】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0071】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは52質量%以上、より好ましくは55質量%超、さらに好ましくは60質量%以上である。上限は、好ましくは90質量%未満、より好ましくは80質量%未満、さらに好ましくは70質量%未満である。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。
【0072】
≪BR≫
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
なかでも、BRは、シス含量が90質量%超のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%超がより好ましく、98質量%以上がより好ましくい。なお、シス含量は、前記方法によって測定できる。
【0074】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0075】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0076】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは1質量%超、より好ましくは3質量%超、さらに好ましくは5質量%超、さらに好ましくは10質量%超、さらに好ましくは15質量%超、さらに好ましくは18質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%未満、より好ましくは25質量%未満、さらに好ましくは22質量%以下である。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。
【0077】
≪式(4)≫
ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIR、スチレンブタジエンゴムの含有量(質量部)をASBR、ブタジエンゴムの含有量をABRとするとき、AIRとASBRとABRとは、本発明の効果の観点から、下式(4)を満たすことが好ましい。
ASBR>AIR>ABR (4)
【0078】
ここで、ASBR/AIRの値は、1.3超が好ましく、より好ましくは1.5超、さらに好ましくは1.7超である。該値の上限は自ずと制限されるが、例えば、2.9未満または2.5未満程度であってもよい。また、AIR/ABRの値は、1.1超が好ましく、より好ましくは1.6超、さらに好ましくは2.9超である。該値の上限は自ずと制限されるが、例えば、48.0未満または9.0未満または4.5未満または3.0未満であってもよい。
【0079】
≪その他のゴム成分≫
ゴム成分としては、上記以外のゴムを使用できる。上記以外のゴムとしては、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、80質量%超が好ましく、より好ましくは90質量%超であり、100質量%が最も好ましい。
【0081】
(テトラジン化合物)
テトラジン化合物は、テトラジン環を含む化合物の総称であり、テトラジンおよびその誘導体である。テトラジン化合物としては、具体的には、下記化学式(1)で表される化合物またはその塩を用いることができる。
【0082】
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基またはアミノ基を表し、これら各基はそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
【0083】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルキル基の炭素数は1以上8以下であることが好ましい。より好ましいアルキル基は、炭素数1以上6以下の直鎖状または分岐状アルキル基である。
【0084】
アルキルチオ基としては、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルキルチオ基の炭素数は1以上8以下であることが好ましい。より好ましいアルキルチオ基は、炭素数1以上6以下の直鎖状または分岐状アルキルチオ基である。
【0085】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、1-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0086】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0087】
アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0088】
複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、テトラヒドロキノリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基等の含窒素複素環基;フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基等の含酸素複素環基;チエニル基、ベンゾチエニル基等の含硫黄複素環基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等の窒素原子と酸素原子を含む複素環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子と硫黄原子を含む複素環基が挙げられる。これらの中でも、芳香族性を持つ複素環基である複素芳香環基が好ましく、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、フリル基、またはチエニル基である。
【0089】
アミノ基としては、1級アミノ基(-NH2)だけでなく、炭化水素基(好ましくはアルキル基)を1つまたは2つ有する2級または3級アミノ基でもよい。なお、2級または3級アミノ基の場合、該炭化水素基の炭素数は合計で15以下であることが好ましい。
【0090】
これらのアルキル基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリール基、アリールチオ基、複素環基およびアミノ基の各基は、それぞれ1個以上の置換基を有してもよい。該置換基としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下有していてもよい。
【0091】
R1およびR2は、複素環基が好ましく、なかでも、芳香族複素環基がより好ましい。
【0092】
化学式(1)で表されるテトラジン化合物の塩としては、特に限定されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0093】
一実施形態において、テトラジン化合物としては、化学式(1)中のR1およびR2が、それぞれ独立にアリール基または複素環基であることが好ましく、より好ましくは複素環基であり、さらに好ましくは含窒素複素芳香環基であり、さらに好ましくはピリジル基またはチエニル基である。
【0094】
テトラジン化合物(1)の具体例としては、下記化合物等が挙げられる。
3,6-ビス(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(3-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(2-フラニル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(2-チエニル)-1,2,4,5-テトラジン、
3-メチル-6-(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(2-ピリミジニル)-1,2,4,5-テトラジン、
3,6-ビス(2-ピラジル)-1,2,4,5-テトラジン
【0095】
≪含有量≫
テトラジン化合物の含有量は0.1質量部以上5質量部以下である。該含有量は、好ましくは0.5質量部超、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは1質量部超、さらに好ましくは1.5質量部超、さらに好ましくは2.0質量部以上である。一方、該含有量は、好ましくは5.0質量部未満、より好ましくは4.5質量部未満、さらに好ましくは4.0質量部以下である。
【0096】
≪式(1)(ATET/AIR)≫
前記ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIRとし、テトラジン化合物の含有量(質量部)をATETとするとき、AIRとATETとは下式(1)を満たす。
ATET/AIR>0.020 (1)
【0097】
式(1)において、右辺の値は、本発明の効果の観点から、0.023が好ましく、より好ましく0.030、さらに好ましく0.040、さらに好ましく0.050、さらに好ましく0.060、さらに好ましく0.067である。一方、ATET/AIRの値の上限について特に制限はないが、該値は、通常、1.000未満であり、あるいは0.500未満、あるいは0.200未満である。
【0098】
(充填剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物はシリカを含み、シリカとカーボンブラックとを含むことがより好ましい。
【0099】
≪シリカ≫
前記タイヤ用ゴム組成物には、充填材としてシリカが配合される。使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g超、より好ましくは150m2/g超、さらに好ましくは175m2/g以上、さらに好ましくは180m2/g超であり、さらに好ましくは210m2/g超である。シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは600m2/g未満、より好ましくは350m2/g未満、さらに好ましくは260m2/g未満である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能が向上する傾向がある。なお、シリカのN2SAは、前記方法で測定される値である。
【0101】
シリカの平均一次粒子径は、補強性、低燃費性等の観点から、好ましくは25nm未満、より好ましくは22nm未満、さらに好ましくは17nm以下、さらに好ましくは16nm未満、さらに好ましくは15nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm超、より好ましくは5nm超、さらに好ましくは10nm超である。なお、シリカの平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0102】
シリカの含有量(シリカの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましい。該含有量は、より好ましくは85質量部未満、さらに好ましくは83質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。一方、該含有量は、好ましくは35質量部超、より好ましくは40質量部超、さらに好ましくは50質量部以上である。上記範囲内にあることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。
【0103】
≪シランカップリング剤≫
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)等のメルカプト系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられ、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤が好ましく、とりわけ、メルカプト系シランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
メルカプト系シランカップリング剤とは、メルカプト基を有するシランカップリング剤および保護基によってメルカプト基が保護されたシランカップリング剤を意味する。メルカプト系シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、下記化学式(2)で表される化合物、下記化学式(3)で表される化合物、および、下記化学式(4)で示される結合単位Aと下記化学式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、本発明の効果をより良好に発揮できるという理由から、下記化学式(2)で表される化合物、および、下記化学式(4)で示される結合単位Aと下記化学式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物の少なくとも1種が好ましく、下記化学式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0105】
【化2】
(式中、R
1001は-Cl、-Br、-OR
1006、-O(O=)CR
1006、-ON=CR
1006R
1007、-ON=CR
1006R
1007、-NR
1006R
1007および-(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される1価の基(R
1006、R
1007およびR
1008は同一でも異なっていてもよく、各々水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子または炭素数1~18の1価の炭化水素基、R
1003は-[O(R
1009O)
j]-基(R
1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R
1004は炭素数1~18の2価の炭化水素基、R
1005は炭素数1~18の1価の炭化水素基を示し、x、yおよびzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【0106】
【化3】
(式中、R
101、R
102、およびR
103は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、それぞれ独立して、炭素数1~30の2価の炭化水素基を表し;R
112は、炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、炭素数6~30のアリール、または炭素数7~30のアラルキルを表し;zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表し;R
104は、炭素数1~6のアルキレンを表す。)
【0107】
【化4】
【化5】
(式中、xは0以上の整数を表し;yは1以上の整数を表し;R
201は、水素原子、炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、または炭素数2~30のアルキニル(該アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、ハロゲン原子、ヒドロキシルもしくはカルボキシルで置換されていてもよい)を表し;R
202は、炭素数1~30のアルキレン、炭素数2~30のアルケニレン、または炭素数2~30のアルキニレンを表し;ここにおいて、R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
【0108】
化学式(2)で示される化合物としては、R1005、R1006、R1007およびR1008はそれぞれ独立に、炭素数1以上18以下の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1以上18以下の1価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状または分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1以上18以下のアルキレン基、炭素数2以上18以下のアルケニレン基、炭素数5以上18以下のシクロアルキレン基、炭素数6以上18以下のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6以上18以下のアリーレン基、炭素数7以上18以下のアラルキレン基をあげることができる。アルキレン基およびアルケニレン基は、直鎖状および分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基およびアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0109】
化学式(2)におけるR1002、R1005、R1006、R1007およびR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0110】
化学式(2)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等があげられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0111】
化学式(2)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0112】
化学式(2)で表されるシランカップリング剤は、分子内にチオエステル構造(すなわち保護されたメルカプト基)を有しており、高温までゴム成分との反応性が少なく、混練中のゴム成分とシランカップリング剤とシリカとの強固な結合を抑制することができ、シリカを適度に分散させることができるので、本発明の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0113】
化学式(3)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記化学式(6)で表される化合物(エボニックデグサ社製のSi363)等が挙げられ、下記化学式(6)で表される化合物を好適に使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化6】
【0114】
化学式(4)で示される結合単位Aと化学式(5)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、モメンティブ社等より製造販売されているものが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量(複数のシランカップリング剤を併用する場合は全ての合計量)は、シリカの分散性を高める観点から、1質量部超が好ましく、より好ましくは3質量部超、さらに好ましくは5質量部超、さらに好ましくは7質量部超である。また、該含有量は、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、20質量部未満が好ましく、15質量部未満がより好ましく、12質量部未満がさらに好ましい。
【0116】
≪カーボンブラック≫
カーボンブラックとしては、特に限定されず、タイヤ工業で使用可能なものをいずれも使用できる。そのようなカーボンブラックとしては、例えば、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g超が好ましく、70m2/g超がより好ましく、90m2/g超がさらに好ましい。また、上記N2SAは、200m2/g未満が好ましく、150m2/g未満がより好ましく、130m2/g未満がさらに好ましい。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能のが向上する傾向がある。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、前記方法によって求められる。
【0118】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、補強性の観点から、好ましくは30nm未満、より好ましくは28nm未満、さらに好ましくは25nm未満である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは10nm超、より好ましくは15nm超、さらに好ましくは20nm超である。なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、前記方法により求めることができる。
【0119】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部超、より好ましくは3質量部超、さらに好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは30質量部未満、より好ましくは20質量部未満、さらに好ましくは10質量部未満である。上記範囲内にすることで、低燃費性およびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。
【0120】
≪式(5)(ACB/ASIL)≫
タイヤゴム組成物がシリカとカーボンブラックとを含む場合において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部)をASILとし、カーボンブラックの含有量(質量部)をACBとするとき、ASILとACBとは下式(5)を満たすことが好ましい。
ACB/ASIL<1 (5)
【0121】
上記式(5)の右辺は、好ましくは0.5、より好ましくは0.3、さらに好ましくは0.1である。一方、ACB/ASILの値の下限は特に制限はないが、例えば、0.01超であってもよい。
【0122】
≪他の充填材≫
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカとカーボンブラック以外の他の充填材を含んでいてもよい。そのような他の充填剤としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー等が挙げられる。
【0123】
≪充填剤の含有量≫
充填材の含有量(充填材の合計含有量)は、本発明の効果の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部超、さらに好ましくは40質量部超、さらに好ましくは50質量部超である。該含有量の上限は、好ましくは200質量部未満、より好ましくは150質量部未満、さらに好ましくは120質量部未満、さらに好ましくは100質量部未満である。
【0124】
(樹脂)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は樹脂を含むことができる。樹脂としては、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
≪石油樹脂≫
石油樹脂としては、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。
【0126】
C5系石油樹脂とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0127】
芳香族系石油樹脂とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0128】
C5C9系石油樹脂とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0129】
≪テルペン系樹脂≫
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0130】
≪ロジン系樹脂≫
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。
【0131】
≪フェノール系樹脂≫
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0132】
樹脂成分のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部超が好ましく、3質量部超がより好ましく、4質量部超がさらに好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、樹脂成分の含有量は、30質量部未満が好ましく、25質量部未満がより好ましく、20質量部未満がさらに好ましい。
【0133】
(可塑剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記樹脂成分以外の可塑剤を含有することができる。可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)で液体(液状)の可塑剤および常温(25℃)で固体の可塑剤の両方を含む概念である。上記樹脂成分以外の可塑剤としては、具体的には、例えば、オイル、液状ポリマー、エステル系可塑剤等が挙げられる。樹脂成分以外の可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
≪オイル≫
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、飲食店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよい。オイルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
≪液状ポリマー≫
液状ポリマーは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。液状ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
≪エステル系可塑剤≫
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。エステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
≪含有量≫
樹脂成分以外の可塑剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(複数を併用する場合は全ての合計量)は、1質量部超が好ましく、2質量部超がより好ましく、3質量部超がさらに好ましい。また、該可塑剤の含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、30質量部未満がさらに好ましい。
【0138】
(その他配合剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、その他の配合剤として、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤等を使用することができる。
【0139】
≪ワックス≫
ワックスとしては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。なかでも、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、これらの精選特殊ワックス等が挙げられ、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。ワックスは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0140】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.3質量部超が好ましく、0.5質量部超がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。一方、該含有量は、4.0質量部未満が好ましく、3.0質量部未満がより好ましく、2.0質量部未満がさらに好ましい。
【0141】
≪老化防止剤≫
老化防止剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。老化防止剤としては、例えば、キノリン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤や、カルバミン酸金属塩等が挙げられる。なかでも、耐オゾン性能の向上効果をより良好に発揮できるという理由から、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましい。
【0142】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部超が好ましく、0.8質量部超がより好ましく、1.0質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、7.0質量部未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましく、3.0質量部未満がさらに好ましい。
【0143】
≪ステアリン酸≫
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、0.7質量部超がより好ましく、1.0質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、加硫速度の観点から、10質量部未満が好ましく、5質量部未満がより好ましく、3質量部未満がさらに好ましい。
【0144】
≪酸化亜鉛≫
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、0.7質量部超がより好ましく、1質量部以超がさらに好ましい。一方、該含有量は、耐摩耗性の観点から、10質量部未満が好ましく、7質量部未満がより好ましく、5質量部未満がさらに好ましい。
【0145】
≪加硫剤≫
加硫剤としては、特に限定されず、公知の加硫剤を用いることができ、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤、樹脂加硫剤、酸化マグネシウム等の金属酸化物などが挙げられる。なかでも、硫黄系加硫剤が好ましい。硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等の硫黄供与体等を用いることができる。これらのなかでも、硫黄を用いることが好ましい。加硫剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0146】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄(オイル処理硫黄、分散剤で処理された特殊硫黄、マスターバッチタイプの硫黄など)、不溶性硫黄(オイル処理不溶性硫黄など)などがあげられ、いずれも好適に用いられる。なかでも、粉末硫黄が好ましい。硫黄は、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。
【0147】
加硫剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.4質量部超が好ましく、0.7質量部超がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、6.0質量未満が好ましく、5.0質量部未満がより好ましく、3.0質量部未満がさらに好ましい。加硫剤の含有量が上記範囲内であると、適切な補強効果が得られる傾向があり、本発明の効果をより良好に発揮できる傾向がある。なお、加硫剤がオイル処理硫黄などのように硫黄以外の成分を含む場合、加硫剤の含有量は、硫黄成分自体の含有量を意味する。
【0148】
≪加硫促進剤≫
加硫促進剤としては、特に限定されず、公知の加硫促進剤を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系、チウラム系、グアニジン系が好ましく、スルフェンアミド系がより好ましい。加硫促進剤は、例えば、大内新興化学工業(株)、三新化学工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらの加硫促進剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0149】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などが挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等が挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどが挙げられる。
【0150】
加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、2.0質量部超がさらに好ましい。一方、該含有量は、8.0質量部未満が好ましく、6.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量が上記範囲内であると、破壊強度および伸びが確保できる傾向があり、本発明の効果をより良好に発揮できる傾向がある。
【0151】
(式(2)(30℃tanδ)、式(3)(0℃tanδ/30℃tanδ))
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、30℃における損失正接を30℃tanδとし、0℃における損失正接を0℃tanδとするとき、30℃tanδと0℃tanδとが下式(2)と下式(3)を満たす。
30℃tanδ≦0.15 (2)
0℃tanδ/30℃tanδ>2.0 (3)
【0152】
上記式(2)において、右辺の値は、0.14であることが好ましい。一方、30℃tanδの下限は本発明の効果の観点から特に制限はないが、通常0.08程度である。
【0153】
上記式(3)において、右辺の値は、2.3であることが好ましく、より好ましくは2.6、さらに好ましくは2.9、さらに好ましくは3.0、さらに好ましくは3.1である。一方、0℃tanδ/30℃tanδの上限は本発明の効果の観点から特に制限はないが、通常4.0程度である。
【0154】
0℃tanδの値および30℃tanδの値は、タイヤ工業における常法により、調節することができ、具体的には、タイヤ用ゴム組成物に配合される薬品(例えば、ゴム成分、充填剤、軟化剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤等)の種類や量を変化させることにより調節することができる。例えば、シリカや芳香族系石油樹脂の含有量を少なくすることにより、0℃tanδの値および30℃tanδの値を小さくすることができ、反対に、多くすることにより、0℃tanδの値および30℃tanδの値を大きくすることができる。したがって、当業者は、目標とする30℃tanδの値、および、0℃tanδ/30℃tanδの値に応じて、0℃tanδの値および30℃tanδの値を、適宜、調節することができる。
【0155】
<タイヤ>
以下、本発明のタイヤについて、適宜、図面も参照しながら説明する。但し、図面はあくまで説明のための例示である。本発明のタイヤは、前記タイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤである。
【0156】
(式(6)(G/WL))
本発明のタイヤは、タイヤの最大負荷能力をWL(kg)とし、タイヤ重量をG(kg)とするとき、WLとGとが下式(6)を満たすことが好ましい。
G/WL≦0.012 (6)
【0157】
上記式(6)を満たす本発明のタイヤは、最大負荷能力を基準としてタイヤ重量が制限された比較的軽量のタイヤである。式(6)の右辺は、0.011であることがより好ましく、さらに好ましくは0.010、さらに好ましくは0.009である。一方、G/WLの下限について、本発明の効果の観点からは特に制限はないが、通常、0.008程度である。
【0158】
G/WLの値は、WLの値に対する相対的なGの値を減らすことにより小さくすることができ、反対に、WLの値に対する相対的なGの値を増加させると大きくなる。
【0159】
(式(7)(ASBR×B))
本発明のタイヤは、そのトレッドのトレッド接地面のランド比(%)をBとするとき、ASBRとBとが下式(7)を満たすことが好ましい。
ASBR×B>25.0 (7)
【0160】
ランド比Bは、正規状態のタイヤに正規荷重が負荷され、キャンバー角0度で平面に接地したときのトレッド接地面において、全ての溝を埋めたと仮定した状態でのトレッド接地面の表面積に対する、接地している表面積の比であり、トレッド表面に墨を塗り、厚紙に押しつけることで得られる。
図2は、トレッド接地面を模式的に表している。同図中の囲われた領域がトレッド接地面である。
【0161】
上記式(7)において、右辺の値は、28.0が好ましく、より好ましくは30.0、さらに好ましくは32.0、さらに好ましくは33.0である。一方、ASBR×Bの値の上限について、本発明の効果の観点から特に制限はないが、通常、70.0程度であり、60.0程度であってもよい。
【0162】
ランド比Bは、グリップ性能、耐摩耗性の観点から、0.50以上が好ましく、より好ましくは0.60超、さらに好ましくは0.64以上である。一方、ランド比Rは、グリップ性能の観点から、0.80未満が好ましく、より好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.70未満である。
【0163】
(周方向溝、横溝)
前記トレッド面はタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝と、前記周方向溝によって区画された陸部とを有し、前記陸部はタイヤ径方向内側に向かって延在する横溝を有し、前記横溝は前記延在方向に垂直な断面において溝幅がトレッド面での溝幅よりも広がる部分を有していることが好ましい。
【0164】
周方向溝は、直線状に延びるものであってもよいし、ジグザグ状に延びるものであってもよい。また、周方向溝の本数は1つ以上であればよいが、2つ以上あることで陸部が少なくとも一対のショルダー陸部とそれらに挟まれたセンター陸部とに分けられ、さらに3つ以上であることでセンター陸部が、さらに車両装着時に車両内側となる陸部と、同外側となる陸部とに分けられる。このため、それぞれの陸部のトレッドパターンを異なるものとすることができ、トレッドパターンを設計する際の自由度が向上するので好ましい。周方向溝の本数は、4つ以上であってもよく、5つ以上であってもよい。
【0165】
横溝はタイヤ径方向内側に向かって延在し、前記延在方向に垂直な断面において溝幅がトレッド面での溝幅よりも広がる部分(拡幅部)を有していることが好ましい。かかる構成を有することで、摩耗が進展しても圧縮剛性の増大を抑制することができ、ウェットグリップ性能を確保することができると考えられる。横溝の幅は特に限定されないが、通常、8mm以下である。また、溝幅が2mm未満のものはサイプとして溝と区別される場合もあるが、本発明の横溝は、溝幅が2mm未満のものも含む。横溝の方向は、タイヤ幅方向に対し、所定の角度(θ)をもつものであってよい。θの範囲は、例えば、0°~±80°である。一の横溝は、タイヤ幅方向の任意の位置でθが一定であってもよく、タイヤ幅方向の位置の変位に応じてθが変化してもよい。横溝は、少なくとも一端が周方向溝に連通していてもよいし、両端が周方向溝に連通していてもよいし、または、連通していなくてもよい。
【0166】
図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドパターンを示したものである。同図において、トレッド面は、タイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向溝を有している。中央に位置する周方向溝11はジグザグ状に延びている。その両側に位置する一対の周方向溝12は直線状に延びている。これら周方向溝によって、一対のセンター陸部21と、一対のショルダー陸部22とが区画されている。センター陸部21にはタイヤ径方向内側に向かって延在する横溝31が配置されており、ショルダー陸部22にはタイヤ径方向内側に向かって延在する横溝32が配置されている。横溝31は前記延在方向に垂直な断面において溝幅がトレッド面での溝幅よりも徐々に広がり、溝底で最大となる拡幅部を有している。一方、横溝32は前記延在方向に垂直な断面において溝幅が一定である。横溝31はその両端がいずれも周方向溝に連通していない。一方、横溝32は一端が周方向溝に連通し、他端はトレッド接地端Teまで延びている。
【0167】
(溝底ゲージ)
前記トレッドの溝底ゲージは1mm以上4mm以下であることが好ましい。溝底ゲージとは、周方向溝の最深部からベルト層のコード(ベルト保護層がコードを有している場合はベルト保護層のコード)までのゴムの厚みであって、溝が複数ある場合には、当該ゴムの厚みが最大になるものをいう。溝底ゲージを上記の範囲内とすることで、発熱を抑えることができ、低燃費性の向上に寄与し得ると考えられ、好ましい。溝底ゲージは2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。
【0168】
図4は、本発明の一実施形態に係るタイヤについて、断面図の一部を模式的に表したものである。タイヤ100は、トレッド200と、そのタイヤ半径方向内側に配置されたバンド300と、さらに内側に配置された二層からなるベルト層400を有している。また、ベルト層400は、それぞれ、ベルトコード500を有している。周方向溝の最深部からベルトコード500までのゴムの厚みが溝底ゲージD1として表されている。
【0169】
(センター領域の周方向溝の形状)
前記トレッドのトレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝を有し、前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とするとき、前記センター領域に存在する周方向溝の少なくとも一つがジグザグ状であることが好ましい。センター領域に存在する周方向溝の少なくとも一つがジグザグ状であることにより、当該周方向溝を流れる気流による放熱効果を高めることができるので、耐久性が向上し、耐摩耗性に寄与すると考えられる。ここで、ジグザグ状とは、周方向溝の幅方向の中心が、タイヤ幅方向に振れながら、タイヤ周方向に延びていることを意図している。従って、直線状の溝が繰り返し折れ曲がる形態の他、曲線状の溝が波状に繰り返し湾曲している形態も含まれる。
【0170】
ジグザグ状の周方向溝がセンター領域に存在するとは、当該周方向溝の半分以上がセンター領域に存在することをいう。すなわち、センター領域の両外側の、トレッド接地幅内の領域を一対のショルダー領域とするとき、ある周方向溝がセンター領域とショルダー領域の双方に同時に跨って存在するとしても、当該周方向溝の半分以上がセンター領域に存在すれば、センター領域に存在する周方向溝である。
【0171】
図3において、周方向溝11は、トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域であるセンター領域内に存在し、その形状が直線状の溝が繰り返し折れ曲がる形態のジグザグ状である。
【0172】
(ショルダー領域の周方向溝の溝深さ)
前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とし、前記センター領域の両外側であってかつトレッド接地幅内である領域を一対のショルダー領域とするとき、前記ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さが10mm以上であることが好ましい。上記構成により、排水性を高めることができるので、ウェットグリップ性能の向上に寄与すると考えられる。ここで、ショルダー領域に存在する周方向溝とは、トレッド面に存在する周方向溝のうち、上述のセンター領域に存在する周方向溝以外の周方向溝である。すなわち、当該ショルダー領域に存在する周方向溝とは、その溝がセンター領域とショルダー領域の双方に同時に跨って存在するとしても、その半分超がショルダー領域に存在する周方向溝である。また、ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さとは、ショルダー領域に存在する周方向溝が複数ある場合には、最も深い溝深さを有する周方向溝についての溝深さである。
【0173】
ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さは、11mm以上であることが好ましく、12mm以上であることがより好ましい。
【0174】
図4において、ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さがD2で表されている。
【0175】
<製造>
本発明に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0176】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0177】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0178】
本発明のタイヤは、前記のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でトレッド部のトレッド面を構成するゴム層の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0179】
<用途>
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
【実施例0180】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。以下に示す各種薬品を用いて、各表に従って得られるタイヤを検討して下記評価方法に基づいて算出した結果を、各表の下部に示す。
【0181】
<各種薬品>
以下に実施例および比較例で用いた薬品をまとめて説明する。
【0182】
IR系ゴム:天然ゴム(TSR20)
SBR:JSR(株)製のHPR850(スチレン含有量27.5質量%、ビニル結合量59.0質量%)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量98質量%、ビニル結合量1質量%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のシーストN220(N2SA114m2/g、平均一次粒子径23nm)
シリカ1:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA175m2/g、平均一次粒子径:17nm)
シリカ2:エボニックデグサ社製のウルトラシル9100GR(N2SA235m2/g、平均一次粒子径:15nm)
シランカップリング剤1:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT(3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
テトラジン化合物1:3,6-ビス(2-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン(東京化成工業(株)製)
テトラジン化合物2:3,6-ビス(4-ピリジル)-1,2,4,5-テトラジン(東京化成工業(株)製)
テトラジン化合物3:3,6-ビス(2-チエニル)-1,2,4,5-テトラジン(東京化成工業(株)製)
樹脂:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、Tg43℃、軟化点85℃)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0183】
<未加硫ゴム組成物の製造>
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を、150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得る。該混練物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、100℃の条件下で2分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。
【0184】
<加硫ゴム組成物の製造>
得られた各未加硫ゴム組成物を、170℃で15分間加硫することにより、加硫ゴム組成物を得る。
【0185】
<試験用タイヤの製造>
表2および表3に従い、得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を得る。
【0186】
<30℃tanδ>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmのサンプルを採取し、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で、損失正接を測定する。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とする。
【0187】
<0℃tanδ>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmのサンプルを採取し、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度0℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で、損失正接を測定する。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とする。
【0188】
<低燃費性能>
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(4.82kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準例を100とする指数で表示する。指数が大きいほど、低燃費性能に優れる。
【0189】
<耐摩耗性能>
上記で得た加硫ゴム組成物を所定の大きさに切り出し、加硫ゴム試験片とする。LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用い、荷重100N、速度20km/h、スリップアングル6°の条件にて、各加硫ゴム試験片の容積損失量を測定し、次の式に基づき、指数で表示する。指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れる。
耐摩耗性能=(基準例の容積損失量)/(各実施例または各比較例の容積損失量)×100
【0190】
<ウェットグリップ性能>
各試験用タイヤを車両(国産FF2000CC)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求めた。基準例の結果を100として指数で表した。指数が大きいほどウェットスキッド性能(ウェットグリップ性能)に優れていることを示す。
【0191】
<総合性能>
低燃費性能指数、耐摩耗性能指数およびウェットグリップ性能指数の総和を総合性能指数とし、当該総合性能指数により、これら性能の総合性能を評価する。
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
<実施形態>
以下に、好ましい実施形態を示す。
【0196】
[1]ゴム成分100質量部に対して、シリカ、およびテトラジン化合物0.1質量部以上5.0質量部未満、好ましくは0.5質量部超4.5質量部未満、より好ましくは0.6質量部以上4.0質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部超4.0質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部超4.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以上4.0質量部以下を含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分が、イソプレン系ゴム25質量%超、好ましくは26質量%以上、より好ましくは28質量%超、さらに好ましくは30質量%以上、スチレンブタジエンゴム50質量%超、好ましくは52質量%以上、より好ましくは55質量%超、さらに好ましくは60質量%以上、およびブタジエンゴムを含むものであり、
前記ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量(質量部)をAIRとし、テトラジン化合物の含有量(質量部)をATETとするとき、AIRとATETとが下式(1)を満たし、好ましくは式(1)の右辺の値が0.023、より好ましく0.030、さらに好ましく0.040であり、
前記タイヤ用ゴム組成物の30℃における損失正接を30℃tanδとし、0℃における損失正接を0℃tanδとするとき、30℃tanδと0℃tanδとが下式(2)と下式(3)を満たし、好ましくは式(2)の右辺の値が0.14であり、好ましくは式(3)の右辺の値が2.3、より好ましくは2.6、さらに好ましくは2.9であるタイヤ用ゴム組成物。
ATET/AIR>0.020 (1)
30℃tanδ≦0.15 (2)
0℃tanδ/30℃tanδ>2.0 (3)
[2]前記式(1)の右辺が0.050、好ましく0.060、より好ましく0.067である上記[1]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[3]前記式(3)の右辺が3.0、好ましくは3.1である上記[1]または[2]記載のタイヤ用ゴム組成物。
[4]ゴム成分100質量部中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量(質量部)をASBRとし、前記ブタジエンゴムの含有量をABRとするとき、AIRとASBRとABRとが下式(4)を満たす上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
ASBR>AIR>ABR (4)
[5]前記シリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下、好ましくは85質量部未満、より好ましくは83質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[6]前記シリカが平均一次粒子径17nm以下、好ましくは16nm未満、より好ましくは15nm以下のシリカを含む上記[1]~[5]記載のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[7]前記タイヤ用ゴム組成物がカーボンブラックを含み、
ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)をASILとし、ゴム成分100質量部に対する前記カーボンブラックの含有量(質量部)をACBとするとき、ASILとACBとが下式(5)を満たし、好ましくは式(5)の右辺の値が0.5、より好ましくは0.3、さらに好ましくは0.1である上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
ACB/ASIL<1 (5)
[8]前記タイヤ用ゴム組成物がメルカプト系シランカップリング剤を含む上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。
[10]前記タイヤの最大負荷能力をWL(kg)とし、前記タイヤの重量をG(kg)とするとき、WLとGとが下式(6)を満たし、好ましくは式(6)の右辺の値が0.011、より好ましくは0.010、さらに好ましくは0.009である上記[9]記載のタイヤ。
G/WL≦0.012 (6)
[11]前記トレッドのトレッド接地面のランド比(%)をBとするとき、ASBRとBとが下式(7)を満たし、好ましくは右辺の値が28.0、より好ましくは30.0、さらに好ましくは32.0、さらに好ましくは33.0である上記[9]または[10]記載のタイヤ。
ASBR×B>25.0 (7)
[12]前記トレッドのトレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝と、前記周方向溝によって区画された陸部とを有し、
前記陸部はタイヤ径方向内側に向かって延在する横溝を有し、
前記横溝は前記延在方向に垂直な断面において溝幅がトレッド面での溝幅よりも広がる部分を有している上記[9]~[11]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[13]前記トレッドの溝底ゲージが1mm以上4mm以下、好ましくは2mm以上4mm以下、より好ましくは3mm以上4mm以下である上記[9]~[12]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[14]前記トレッドのトレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる1以上の周方向溝を有し、
前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とするとき、前記センター領域に存在する周方向溝の少なくとも一つがジグザグ状である上記[9]~[13]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[15]前記トレッド面においてタイヤ赤道を中心としてトレッド接地幅の30%の領域をセンター領域とし、前記センター領域の両外側であってかつトレッド接地幅内である領域を一対のショルダー領域とするとき、前記ショルダー領域に存在する周方向溝の最深部の溝深さが10mm以上、好ましくは11mm以上、より好ましくは12mm以上である上記[9]~[14]のいずれか1項に記載のタイヤ。