(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022990
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240214BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126487
(22)【出願日】2022-08-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年9月30日、ウェブサイトによる公開、https://www.benesse-hd.co.jp/ja/ir/library/ar/2021/focus/nursing_care.html (2)令和3年11月5日、ウェブサイトによる公開、https://pdf.irpocket.com/C9783/l3Fa/NfGl/UB5G.pdf (3)令和3年12月7日、ウェブサイトによる公開、https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00028/112400011/ (4)令和3年12月21日、ウェブサイトによる公開、https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00028/120600012/ (5)令和4年1月14日、ウェブサイトによる公開、https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00028/121600013/ (6)令和4年2月25日、ウェブサイトによる公開、https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2022/025551.html (7)令和4年4月4日、ウェブサイトによる公開、https://yellowfin.co.jp/blog/2022/04/4-jpnews1-case-study-benesse-style-care (8)令和4年4月22日、ウェブサイトによる公開、https://www.benesse.co.jp/digital/casestudy_4/ (9)令和4年5月12日、ウェブサイトによる公開、https://pdf.irpocket.com/C9783/wigp/S4QV/OQeO.pdf (10)令和4年5月17日、ウェブサイトによる公開、https://www.benesse.co.jp/brand/category/care/20220517_1/ (11)令和4年6月24日、ウェブサイトによる公開、https://www.benesse-hd.co.jp/ja/about/profile/pdf/2022/pdf_profile.pdf
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (12)令和3年12月17日、刊行物による公開、株式会社日経BP、日経ビジネス、2021年12月20日号 (13)令和4年1月7日、刊行物による公開、株式会社日経BP、日経ビジネス、2022年1月10日号 (14)令和4年1月28日、刊行物による公開、株式会社日経BP、日経ビジネス、2022年1月31日号 (15)令和4年6月30日、刊行物による公開、公益社団法人神奈川県介護福祉士会、神奈川県介護福祉士会 会報誌「ほほえみ」、66号 (16)令和4年2月4日、刊行物による公開、株式会社日経BP、日経トレンディ、2022年3月号 (17)令和4年2月3日、刊行物による公開、株式会社日刊工業新聞社、日刊工業新聞、令和4年2月3日付 (18)令和4年3月8日、刊行物による公開、株式会社山陽新聞事業社、山陽新聞、令和4年3月8日付 (19)令和4年3月25日、刊行物による公開、株式会社日刊工業新聞社、日刊工業新聞、令和4年3月25日付 (20)令和4年4月22日、刊行物による公開、株式会社日刊工業新聞社、日刊工業新聞、令和4年4月22日付 (21)令和4年4月6日、刊行物による公開、株式会社高齢者住宅新聞社、高齢者住宅新聞、第666・667号 (22)令和4年2月10日、刊行物による公開、株式会社毎日新聞社、毎日新聞、令和4年2月10日付朝刊 (23)令和4年7月3日、刊行物による公開、株式会社産業経済新聞社、産経新聞、令和4年7月3日付朝刊
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (24)令和4年2月24日、テレビ放送による公開、テレビ東京、ワールドビジネスサテライト、令和4年2月24日22時から放送
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (25)令和3年10月15日、株式会社ベネッセスタイルケアにおける採用パンフレットの配布による公開
(71)【出願人】
【識別番号】509146296
【氏名又は名称】株式会社ベネッセスタイルケア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮下 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜浩
(72)【発明者】
【氏名】中野 修平
(72)【発明者】
【氏名】枝松 裕子
(72)【発明者】
【氏名】安食 香澄
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】対象者それぞれに合わせて、対象者の行動症状や心理症状の発生を判定し、発生の要因候補を特定することができる情報処理方法、プログラム、および情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理方法は、コンピュータが、対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得し、生活記録に基づいて、対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定し、症状が発生していることを判定の結果が示す場合、生活記録に基づいて、症状の発生の1以上の要因候補を特定し、判定の結果を示す症状情報と、1以上の要因候補のそれぞれを示す要因候補情報とを、ユーザの要求に応じてユーザ装置に出力させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得し、
前記生活記録に基づいて、前記対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定し、
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記生活記録に基づいて、前記症状の発生の1以上の要因候補を特定する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記対象者の生体および/または前記対象者の周辺環境をセンシングすることで得られるセンサデータであって前記生活記録を記録した記録時点におけるセンサデータ、並びに/または前記記録時点における前記対象者の状態を定量的および/もしくは選択的に記録した介護記録を取得し、
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記センサデータおよび/または前記介護記録に基づいて、前記症状の発生の1以上の要因候補を特定する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、
前記対象者の健常時において、前記対象者の生活を記録したテキスト情報を含む健常時生活記録と、前記対象者の生体および/または前記対象者の周辺環境をセンシングすることで得られた健常時センサデータとを取得し、
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記生活記録と前記健常時生活記録との第1比較、および/または前記センサデータと前記健常時センサデータとの第2比較を行い、
前記第1比較および/または前記第2比較の結果に基づいて、前記症状に対する前記1以上の要因候補のそれぞれの寄与度を算出し、
前記1以上の要因候補のそれぞれの寄与度に基づいて、前記1以上の要因候補の中から前記症状の発生の1以上の要因を特定する、
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記症状が発生していると判定された生活記録であるBPSD時生活記録と前記健常時生活記録とは、それぞれの前記記録時点を開始時点として前記開始時点から第1期間遡って記録されたものを含み、
前記第1期間での時系列をあわせて行った前記第1比較の結果に基づいて、前記BPSD時生活記録と前記健常時生活記録との間の第1差異を、前記時系列にそって複数抽出し、
前記抽出された複数の第1差異のそれぞれに対して、前記開始時点から前記複数の第1差異のそれぞれを抽出した時点までの間の時間の長さに応じて重み付けを行い、
前記重み付けにさらに基づいて、前記寄与度を算出する、
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、
前記症状が発生していると判定された生活記録の記録時点におけるセンサデータであるBPSD時センサデータと前記健常時センサデータとは、それぞれに対応する前記記録時点を開始時点として前記開始時点から第2期間遡ってセンシングして得られたものを含み、
前記第2期間での時系列をあわせて行った前記第2比較の結果に基づいて、前記BPSD時センサデータと前記健常時センサデータとの間の第2差異を、前記時系列にそって複数抽出し、
前記抽出した複数の第2差異のそれぞれに対して、前記開始時点から前記複数の第2差異のそれぞれを抽出した時点までの間の時間の長さに応じて重み付けを行い、
前記重み付けにさらに基づいて、前記寄与度を算出する、
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、
前記テキスト情報は、記録の方法としてフォーカスチャーティングを用いて記録者によりフリーテキストで記録された情報である、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記コンピュータが、
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記症状を複数の類型に分類し、
前記複数の類型のそれぞれにおいて前記症状の発生状況を評価する、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、
前記対象者に対するケアの複数の改善案の中から、前記1以上の要因候補の少なくともいずれかに対応する改善案を特定する、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記コンピュータが、
前記対象者に対して行ったアセスメントの結果を示すアセスメント情報を取得し、
前記アセスメント情報および/または前記判定の結果を示す症状情報に基づいて、前記対象者のパターンを特定し、
前記改善案のそれぞれについて、前記パターンとの近似度を算出し、
前記近似度に基づいて、前記複数の改善案の中から、前記1以上の要因候補の少なくともいずれかに対応する改善案を特定する、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記判定の結果を示す症状情報は、前記症状の発生日時を含み、
前記コンピュータが、
所定期間における前記対象者に対する前記ケアの履歴を示すケア履歴情報を記憶する記憶部を参照して、前記発生日時に行われていた前記ケアの内容を特定する、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得する取得機能と、
前記生活記録に基づいて、前記対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定する判定機能と、を実現させ、
前記コンピュータに、
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記生活記録に基づいて、前記症状の発生の1以上の要因候補を特定する特定機能を実現させる、
プログラム。
【請求項12】
対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得する取得部と、
前記生活記録に基づいて、前記対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記症状が発生していることを前記判定の結果が示す場合、前記生活記録に基づいて、前記症状の発生の1以上の要因候補を特定する特定部を備える、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象者の生体および対象者の周辺環境をセンシングすることで得られるセンサデータを利用して、対象者の行動症状や心理症状の発生を判定する技術が存在する。下記特許文献1では、対象者に関するセンサデータに基づいてこの対象者の覚醒頻度、昼寝または夕寝の頻度などの睡眠状態を判定し、判定した睡眠状態に基づいて、対象者の認知症周辺症状の発生を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、センサデータを利用して対象者の行動症状や心理症状の発生を判定する場合、定量的なデータに基づく画一的な判定にならざるを得ない。しかしながら、例えば睡眠センサを利用する場合、対象者Aと対象者Bとについて同じような睡眠状態をセンサデータが示しても、対象者Aと対象者Bとが安心できる睡眠状態はそれぞれ異なる可能性がある。対象者Aにとっては現在の睡眠状態に安心を感じていて、他方、対象者Bにとっては現在の睡眠状態に不安を感じていることがありうる。このように、対象者それぞれに合わせた行動症状や心理症状の発生の判定をすることが困難であった。さらに、画一的な判定の結果の場合、この判定の結果をみて何が要因となっているかといったことを特定する際にも、画一的な対応となってしまっていた。
【0005】
そこで、本発明のいくつかの態様は、対象者それぞれに合わせて、対象者の行動症状や心理症状の発生を判定し、発生の要因候補を特定することができる情報処理方法、プログラム、および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータが、対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得し、生活記録に基づいて、対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定し、症状が発生していることを判定の結果が示す場合、生活記録に基づいて、症状の発生の1以上の要因候補を特定する。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得する取得機能と、生活記録に基づいて、対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定する判定機能と、を実現させ、コンピュータに、症状が発生していることを判定の結果が示す場合、生活記録に基づいて、症状の発生の1以上の要因候補を特定する特定機能と、を実現させる。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、対象者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録を取得する取得部と、生活記録に基づいて、対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定する判定部と、を備え、症状が発生いることを判定の結果が示す場合、生活記録に基づいて、症状の発生の1以上の要因候補を特定する特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のいくつかの態様によれば、対象者それぞれに合わせて、対象者の行動症状や心理症状の発生を判定し、発生の要因候補を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る介護支援システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る介護支援システムの概要の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るサーバ装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る介護支援システムの画面例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る介護支援システムの画面例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る介護支援システムの画面例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る介護支援システムの画面例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る介護支援システムの動作例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る介護支援システムのハードウェア構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
<1.システム構成>
図1を用いて、本実施形態に係る介護支援システム1のシステム構成の例を説明する。本実施形態に係る介護支援システム1は、介護サービスを被介護者(対象者の一態様)に提供するにあたって、介護者である介護スタッフを支援するためのシステムである。被介護者は、介護支援システム1を用いて、介護スタッフにより生活に関するケア(以下、単に「ケア」ともいう)を受けている者とする。
【0013】
介護支援システム1では、被介護者の生活を記録者やコンピュータにより記録したテキスト情報を含む生活記録と、被介護者の生体および/または被介護者の周辺環境をセンシングすることで得られるデータ(以下、「センサデータ」ともいう)を、被介護者に対するケアに利用する。この記録者は、例えば、介護スタッフまたは被介護者の家族などであってもよい。
【0014】
介護支援システムでは、被介護者の認知症に関する心理症状および/または行動症状、いわゆるBPSD(Behavioral and Psychological Symptom of Dementia)への介護スタッフの対応を支援する。以下、被介護者の認知症に関する心理症状および/または行動症状を、「BPSD」ともいう。
【0015】
図1に示すように、介護支援システム1は、サーバ装置100と、介護スタッフが使用するスタッフ端末200と、を備える。サーバ装置100とスタッフ端末200とは、通信ネットワークNを介して接続される。介護支援システム1のユーザは、例えば、介護スタッフ、介護スタッフ以外の介護サービスの提供者、および/または被介護者の関係者(例えば、被介護者の家族など)が考えられる。
【0016】
通信ネットワークNは、無線ネットワークや有線ネットワークにより構成される。通信ネットワークNの一例としては、携帯電話網や、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMax(登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、有線LAN、電話線、電力線通信ネットワーク、IEEE1394などに準拠したネットワークがある。
【0017】
[サーバ装置]
サーバ装置100は、スタッフ端末200との通信が可能な情報処理装置である。サーバ装置100は、介護サービスを被介護者に提供するにあたって、介護スタッフを支援するための機能を提供する。本実施形態では、サーバ装置100が介護サービスを提供するためのWebサイト(以下、「介護支援サイト」ともいう)を生成し、生成した介護支援サイトのWebページをスタッフ端末200に配信する例を説明する。サーバ装置100は、スタッフ端末200を介して介護スタッフに介護支援サイトのURLを指定しログインさせることにより、許可された介護支援サイトのページにアクセスさせることができる。このログインは、各ユーザが介護支援システム1に予め登録したアカウント(ユーザIDとパスワード)によって行われる。
【0018】
[スタッフ端末]
スタッフ端末200は、例えば、スマートフォンやタブレット端末、PDA、ラップトップなどの汎用または専用の情報処理装置によって構成される。スタッフ端末200は、ユーザ装置の一態様である。本実施形態では、スタッフ端末200に標準的に備わるWebブラウザを利用する例を説明する。スタッフ端末200は、サーバ装置100から配信されたWebページをWebブラウザから閲覧することで、サーバ装置100から学習ツールの提供を受けるものとする。
【0019】
<2.システムの概要>
図2を用いて、本実施形態に係る介護支援システム1の概要を説明する。
図2に示すように、介護支援システム1では、介護支援サイトにおいて、(1)アセスメント(2)DAR(Data Action Response)による生活記録・事故(転倒、誤入室など)、(3)センサ/体調記録/薬、(4)ケアの改善ヒント、といった(1)~(4)それぞれに関連する情報を被介護者ごとにまとめたダッシュボード(以下、「ケア支援ダッシュボード」ともいう)をスタッフ端末200に出力させることができる。
【0020】
(1)アセスメント(被介護者の基本情報)
ケア支援ダッシュボードは、例えば、被介護者の基本情報として、被介護者のアセスメントの記録(最新の記録とそれ以前の所定期間における記録)を出力する。このアセスメントは、例えば、被介護者について、要介護度、認知症のステージ、見当識障害の有無、生活の場面ごとの自立度(例えば、日常生活自立度など)などについて評価したものを含む。
【0021】
(2)DAR・事故(被介護者の状態)
ケア支援ダッシュボードは、例えば、被介護者の状態として、生活記録に基づいて、BPSDについて単位期間ごとの発生件数の推移などを出力してもよい。また、ケア支援ダッシュボードは、例えば、この出力に関する詳細な情報として、生活記録に含まれるテキスト情報そのものを出力させてもよい。また、生活記録は、例えば、記録方法としてフォーカスチャーティング(DAR)の手法を用いて被介護者の生活を経過観察した記録であってもよい。
【0022】
ケア支援ダッシュボードは、例えば、被介護者の表情の様子をフェイスマークで記録した結果に基づいて、フェイスマークの種類ごとの件数を出力してもよい。
【0023】
ケア支援ダッシュボードは、例えば、被介護者の状態として、被介護者の事故を記録したテキスト情報を含む事故記録に基づいて、事故発生の状況(例えば、単位期間ごとの事故発生件数の推移など)を出力する。また、ケア支援ダッシュボードは、例えば、この出力に関する詳細な情報として、事故記録に含まれるテキスト情報そのものを出力させてもよい。
【0024】
ケア支援ダッシュボードは、例えば、上記の事故発生件数、BPSDの発生件数およびフェイスマークの件数について、単位期間(
図2では、「時間帯」と表記)ごとの他に、これらが発生したときのケアの種類ごとに出力してもよい。
【0025】
(3)センサ/体調記録/薬(被介護者の状態を引き起こす要因)
ケア支援ダッシュボードは、例えば、上記(2)の状態を引き起こす要因として、被介護者のセンサデータ、体調の記録、医薬品の処方内容、現在行っているケアの内容等を出力する。
【0026】
(4)ケアの改善ヒント(要因への対応)
ケア支援ダッシュボードは、例えば、上記(3)の要因への対応として、ケアを改善するためのヒントを出力する。ケア支援ダッシュボードは、例えば、睡眠センサのセンサデータが被介護者の睡眠時間が標準値よりも短いことを示す場合、「睡眠時間が短いようです。寝姿勢は大丈夫?」といったヒントを出力してもよい。
【0027】
被介護者が本来どのような人なのか、被介護者の状態はよいのか悪いのか、よい/悪い状態を引き起こす要因は何なのか、それらに対応するためにはどうすればよいのか、というように、被介護者をケアする際に介護スタッフが考えるべきことがいくつもある。上記構成のもと、介護支援システム1では、その答えまたはヒントとなり得る情報をケア支援ダッシュボードでまとめて、このような介護スタッフの思考の流れにそって出力させることができる。
【0028】
上記構成のもと、介護支援システム1では、対象者の生活記録や事故記録のテキスト情報によりBPSDについて単位期間ごとの発生件数の推移などを出力することができる。このため、定量的な記録や選択方式による記録では表しきれない対象者それぞれの性格や趣向などをふまえた細やかな記録によって対象者に合わせたBPSDの発生の状況を出力させることができる。
【0029】
<3.機能構成>
図3を参照して、本実施形態に係るサーバ装置100の機能構成を説明する。
図3に示すように、サーバ装置100は、制御部110と、通信部120と、記憶部130と、を備える。
【0030】
[制御部]
制御部110は、取得部111と、判定部112と、特定部113と、出力部115と、を備える。また、制御部110は、例えば、分類部114を備えてもよい。
【0031】
[取得部]
取得部111は、スタッフ端末200または記憶部130から、被介護者の生活記録を取得する。
【0032】
取得部111は、例えば、センサ装置(不図示)または記憶部130から、生活記録を記録した時点(以下、「記録時点」ともいう)におけるセンサデータを取得してもよい。このセンサ装置は、例えば、体動センサ、睡眠センサ、脈拍センサ、呼吸センサ、温度センサ、排泄検知センサ、血圧センサ(血圧計)、体重計、湿度計、気圧計、および/または画像センサなどであってもよい。また、この記録時点は、例えば、一定の幅をもった時間(すなわち、時期)を示してもよい。例えば、生活記録を記録した日時が「2022年6月30日 午前10時15分」であれば、この記録の記録時点は、2022年6月30日午前10時台としてもよいし、2022年6月30日午前中としてもよい。
【0033】
センサデータは、例えば、被介護者の生体をセンシングすることで得られるデータ(以下、「生体データ」ともいう)を含んでもよい。生体データは、例えば、被介護者の睡眠の状態、排泄の状態、脈拍の状態、呼吸の状態、血圧の状態、体重の状態、および/または体温の状態を測定したものであってもよい。また、センサデータは、被介護者の周辺環境をセンシングすることで得られるデータ(以下、「環境データ」ともいう)を含んでもよい。環境データは、例えば、被介護者の周辺環境の温度の状態、湿度の状態、および/または気圧の状態などを測定したものであってもよい。
【0034】
取得部111は、例えば、記憶部130から、健常時生活記録と、健常時センサデータとを取得してもよい。健常時生活記録は、被介護者の健常時において、この被介護者の生活を記録したテキスト情報を含む生活記録である。また、健常時センサデータは、被介護者の健常時において、被介護者の生体および/または被介護者の周辺環境をセンシングすることで得られたデータである。
【0035】
取得部111は、例えば、記憶部130から、アセスメント情報を取得してもよい。アセスメント情報は、被介護者に対して行ったアセスメントの結果を示す情報である。
【0036】
[判定部]
判定部112は、生活記録に基づいて、被介護者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状(言い換えれば、BPSD)の発生を判定する。具体的には、判定部112は、被介護者について、BPSDが発生しているか否か(言い換えれば、発生の有無)、また、発生しているBPSDがどのような症状かを判定してもよい。判定部112は、この判定の結果を示す症状情報を記憶部130に記憶させてもよい。
【0037】
生活記録は、例えば、記録の方法としてフォーカスチャーティングを用いて記録者(例えば、介護スタッフなど)によりフリーテキストで記録されたテキストであってもよい。具体的には、生活記録は、被介護者の心配事や関心事、被介護者の行動、または被介護者に起きた出来事などにフォーカスして被介護者の経過が記録されたテキスト情報を含んでもよい。また、生活記録は、例えば、フォーカスチャーティング(DAR)の手法を用いて被介護者を経過観察した、記録者によるフリーテキストであってもよい。このような構成によれば、被介護者それぞれに合わせて被介護者それぞれに起こった出来事などに焦点をあてた観察がなされ、介護スタッフの自由な記載によるこの観察の記録に基づいてBPSDの発生を判定することができる。このため、被介護者それぞれに合わせたBPSDの発生を判定することができ、介護スタッフのノウハウや知見が活かされた観察の記録に基づくことにより、ノウハウや知見を取り入れた形での判定をすることができる。
【0038】
症状情報は、被介護者ごとのBPSDに関する情報である。症状情報は、例えば、BPSDの発生の有無、(BPSDの発生が「有」の場合)発生しているBPSDごとに、BPSDの類型、発生日時、および/または発生場所などを含んでもよい。
【0039】
判定部112は、例えば、自然言語処理の技術や機械学習および深層学習の技術を用いて、BPSDの発生を判定してもよい。判定部112は、例えば、BPSDのどの症状が発生しているかを判定するための判定モデルを用いて、判定してもよい。
【0040】
判定モデルは、例えば、教師データに基づいて、機械学習および深層学習の技術を用いて学習されたモデルであってもよい。また、この教師データは、例えば、BPSDの発生の有無、類型、意欲・POS行動の有無を表すラベルが付与されたテキスト情報であってもよい。また、このラベルは、スタッフ端末200に表示されたテキスト情報に対する介護スタッフの指定(言い換えれば、テキスト情報が表示された画面に対する操作入力)に応じて付与されてもよい。
【0041】
判定モデルは、例えば、前処理として、生活記録に含まれるテキスト情報に対して形態素解析を行い、テキスト情報に含まれる文章を、単語の単位に分割する。判定モデルは、例えば、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を含んでもよい。判定モデルは、BERTを用いて、上記分割された単語群のベクトルシーケンスに変換し、変換したベクトルシーケンスを入力して、回答文に相当するベクトルシーケンスを出力する。次に、判定モデルは、出力したベクトルシーケンスに基づいて特徴ベクトルを生成する。次に、判定モデルは、ニューラルネットワーク(分類器)を含み、ニューラルネットワークに特徴ベクトルを入力して、BPSDがどの類型の症状を発生しているか、または発生していないかの分類を出力することで、発生の有無を判定し、さらにBPSDの類型を分類する。また、判定モデルは、例えば、BPSDの発生の有無と同様に、判定モデルを用いて意欲的な行動および/またはポジティブな行動(以下、「意欲・POS行動」ともいう)の有無を判定してもよい。
【0042】
上記構成によれば、判定部112は、定量的な記録や選択方式による記録では表しきれない対象者それぞれの性格や趣向などをふまえて記録したテキスト情報によってBPSDの発生を判定することができる。このため、対象者それぞれに合わせて、BPSDの発生の判定をすることができる。
【0043】
[判定部]
判定部112は、生活記録に基づいて、被介護者について、意欲・POS行動を判定する。具体的には、判定部112は、被介護者について、意欲・POS行動を行っているか否か(言い換えれば、行動の有無)、また行っている意欲・POS行動がどのような行動なのか判定してもよい。判定部112は、この判定の結果を示す行動情報を記憶部130に記憶させてもよい。
【0044】
[特定部]
特定部113は、BPSDの発生を判定部112による判定の結果が示す場合、生活記録に基づいて、BPSDの発生の1以上の要因候補を特定する。特定部113は、この特定した1以上の要因候補のそれぞれを示す要因候補情報を記憶部130に記憶させてもよい。
【0045】
特定部113は、例えば、複数のBPSDの発生の要因のそれぞれを表す文字列(以下、「要因文字列」ともいう)が登録された辞書情報を参照して、判定部112によりBPSDが発生していると判定されたテキスト情報に含まれる文字列の中から要因文字列と少なくとも一部が一致する文字列を抽出できた場合、この要因文字列に対応する要因を、要因候補として特定してもよい。
【0046】
特定部113は、例えば、自然言語処理の技術や機械学習および深層学習の技術を用いて、BPSDの発生の1以上の要因候補を特定してもよい。特定部113は、例えば、BPSDの発生の1以上の要因候補を特定するための特定モデルを用いて、特定してもよい。なお、この特定モデルと判定部112の判定モデルとは、同一のモデルであってもよい。
【0047】
特定モデルは、例えば、教師データを元に、機械学習および深層学習の技術を用いて学習されたモデルであってもよい。また、この教師データは、例えば、BPSDの発生の有無、類型、BPSDの発生の要因を表すラベルが付与されたテキスト情報であってもよい。また、要因ラベルは、スタッフ端末200に表示されたテキスト情報に対する介護スタッフの指定(言い換えれば、テキスト情報が表示された画面に対する操作入力)に応じて付与されてもよい。
【0048】
特定部113は、例えば、生活記録の記録時点におけるセンサデータおよび/または介護記録に基づいて、BPSDの発生の1以上の要因候補を特定してもよい。具体的には、特定部113は、BPSDが発生した時の睡眠センサのセンサデータが被介護者の睡眠時間の不足を示す場合、要因候補として睡眠時間の不足を特定してもよい。このような構成によれば、テキスト情報の記録では表しきれない、被介護者の生体の変化や環境の状態を定量的に表し、かつ相対的に介護スタッフに負荷をかけずに情報量が多く盛り込まれたセンサデータや介護記録に基づいて要因候補を特定することができる。
【0049】
特定部113は、例えば、後述する寄与度算出部113bが算出した1以上の要因候補のそれぞれの寄与度(以下、単に「寄与度」ともいう)に基づいて、1以上の要因候補の中からBPSDの発生の1以上の要因を特定してもよい。
【0050】
特定部113は、例えば、アセスメント情報および/または症状情報に基づいて、ケアによる被介護者のパターン(以下、「被介護者パターン」ともいう)を特定してもよい。被介護者パターンは、例えば、被介護者が受けているケアの類型を表すパターン、被介護者の行動の類型を表すパターン、被介護者の認知症の状態を含む身体の状態の類型を表すパターン、および/または被介護者の趣向の類型を表すパターン(これらのパターンのうち2以上のパターンの組み合わせを含む)であってもよい。
【0051】
特定部113は、例えば、ケア履歴情報を記憶する記憶部130を参照して、BPSDの発生日時に行われていたケアの内容を特定してもよい。ケア履歴情報は、所定期間における被介護者に対するケアの履歴を示す情報である。
【0052】
特定部113は、例えば、対象者に対するケアの複数の改善案のそれぞれを示す改善案情報を記憶する記憶部130を参照して、改善案情報に基づいて、複数の改善案の中から、1以上の要因候補の少なくともいずれかに対応するケアの改善案(以下、単に「対応改善案」ともいう)を特定してもよい。また、特定部113は、例えば、近似度算出部113cにより算出された近似度にさらに基づいて、対応改善案を特定してもよい。特定部113は、例えば、複数の改善案の中から近似度が最も高い改善案を、対応改善案として特定してもよい。
【0053】
特定部113は、例えば、比較部113aを備えてもよい。比較部113aは、例えば、BPSDの発生を判定部112による判定の結果が示す場合、このBPSDが発生したと判定された生活記録(以下、「BPSD時生活記録」ともいう)と、健常時生活記録との比較(以下、「第1比較」ともいう)を行う。また、比較部113aは、例えば、BPSDの発生を判定部112による判定の結果が示す場合、BPSD時生活記録の記録時点におけるセンサデータ(以下、「BPSD時センサデータ」ともいう)と健常時センサデータとの比較(以下、「第2比較」ともいう)を行う。
【0054】
BPSD時生活記録と健常時生活記録とは、それぞれの記録時点を開始時点としてこの開始時点から第1期間遡って記録されたものを含んでもよい。例えば、生活記録の記録時点を「2022年6月30日」とし、第1期間を「3か月」とする場合、生活記録は、2022年6月30日から3か月間遡って2022年3月30日までの記録したものを含んでもよい。この場合、比較部113aは、例えば、第1期間での時系列をあわせて行った第1比較の結果に基づいて、BPSD時生活記録と健常時生活記録との間の差異(以下、「第1差異」ともいう)を、時系列にそって複数抽出してもよい。
【0055】
比較部113aは、例えば、上記抽出された複数の第1差異のそれぞれに対して、開始時点から複数の第1差異のそれぞれを抽出した時点までの間の時間の長さに応じて重み付けを行ってもよい。比較部113aは、例えば、この時間の長さに重み付けを比例させて、この長さが短いほど、すなわち開始時点から近い抽出時点ほど重みを大きくするようにしてもよい。
【0056】
BPSD時センサデータと健常時センサデータとは、それぞれに対応する記録時点を開始時点としてこの開始時点から第2期間遡ってセンシングして得られたものを含んでもよい。例えば、センサデータに対応する記録時点を「2022年6月30日」とし、第2期間を「3か月」とする場合、BPSD時センサデータは、2022年6月30日から3か月間遡って2022年3月30日までに測定されたものを含んでもよい。この場合、比較部113aは、例えば、第2期間での時系列をあわせて行った第2比較の結果に基づいて、センサデータと健常時センサデータとの間の差異(以下、「第2差異」ともいう)を、時系列にそって複数抽出してもよい。なお、第1期間と第2期間は、同じ期間であってもよいし、異なる期間であってもよい。
【0057】
比較部113aは、例えば、上記抽出された複数の第2差異のそれぞれに対して、開始時点から複数の第2差異のそれぞれを抽出した時点までの間の時間の長さに応じて重み付けを行ってもよい。比較部113aは、例えば、第1差異と同様に、この時間の長さに重み付けを比例させて、この長さが短いほど重みを大きくするようにしてもよい。
【0058】
特定部113は、例えば、寄与度算出部113bを備えてもよい。寄与度算出部113bは、例えば、第1比較および/または第2比較の結果に基づいて、BPSDに対する1以上の要因候補のそれぞれの寄与度を算出してもよい。
【0059】
寄与度算出部113bは、例えば、変数重要度分析の手法を用いて、1以上の要因候補のそれぞれの寄与度を算出してもよい。寄与度算出部113bは、例えば、寄与度として、BPSDの発生日時とセンサデータおよび/または介護記録とに基づいて、1以上の要因候補の特徴量の重要度(いわゆる、Feature Importance)を評価してもよい。また、寄与度算出部113bは、例えば、この特徴量の重要度の評価にあたって、ICE(Individual Conditional Expectation)の手法を用いてもよい。
【0060】
寄与度算出部113bは、例えば、複数の第1差異のそれぞれに対する重み付けにさらに基づいて、寄与度を算出してもよい。このような構成によれば、BPSDの発生時点との時間的な距離に応じて、健常時との差異がどの程度BPSDの発生に寄与しているかを変化させることができる。このため、例えば、発生時点に近い差異ほど重みを大きくすることで、寄与度の値を大きくさせることができるため、BPSDとの相関がより強い要因候補を特定させることができる。
【0061】
寄与度算出部113bは、例えば、複数の第2差異のそれぞれに対する重み付けにさらに基づいて、寄与度を算出してもよい。このような構成によれば、BPSDの発生時点との時間的な距離に応じて、健常時との差異がどの程度BPSDの発生に寄与しているかを変化させることができる。このため、例えば、発生時点に近い差異ほど重みを大きくすることで、寄与度の値を大きくさせることができるため、BPSDとの相関がより強い要因候補を特定させることができる。
【0062】
特定部113は、例えば、近似度算出部113cを備えてもよい。近似度算出部113cは、被介護者に対する複数の改善案候補のそれぞれについて、特定部113により特定された被介護者パターンとの近似度を算出する。近似度算出部113cは、例えば、複数の改善案のそれぞれを表す改善案情報と、被介護者パターンを表すパターン情報とがどの程度一致するかを示す一致度を算出し、算出した一致度に基づいて近似度を算出してもよい。
【0063】
[分類部]
分類部114は、BPSDの発生を判定部112による判定の結果が示す場合、この発生したBPSDを複数の類型(以下、「BPSD類型」ともいう)に分類する。
【0064】
分類部114は、評価部114aを備える。評価部114aは、複数のBPSD類型のそれぞれにおいて症状の状況(例えば、類型ごとの症状の発生量など)を評価する。
【0065】
[出力部]
出力部115は、スタッフ端末200に、介護支援システム1の画面や音声などで各種情報を出力させる。出力部115は、例えば、生活記録、センサデータ、症状情報、行動情報、アセスメント情報、改善案情報、および/またはケア履歴情報などに基づいて、後述する
図4~7で示すケア支援ダッシュボードA1の各画面を表示させるための表示情報(例えば、Webページなど)を生成してもよい。出力部115は、生成した表示情報をスタッフ端末200に送信してもよい。スタッフ端末200は受信した表示情報に基づいて、各画面を表示させる。
【0066】
出力部115は、症状情報を、ユーザの要求に応じてスタッフ端末200に出力させる。症状情報は、判定部112によるBPSDの発生の判定の結果を示す情報である。このような構成によれば、出力部115は、生活記録に基づいて判定されたBPSDの発生を介護スタッフに提示することができ、介護スタッフによる被介護者のケアを支援することができる。
【0067】
出力部115は、例えば、特定部113が特定した1以上の要因候補のそれぞれを示す要因候補情報を、介護スタッフの要求に応じてスタッフ端末200に出力させてもよい。このような構成によれば、介護スタッフに対してBPSDの発生の要因候補を提示することができる。このため、介護スタッフは、提示された要因候補を参考にして、BPSDの発生の要因を特定することができ、介護スタッフによる被介護者のケアを支援することができる。
【0068】
出力部115は、例えば、特定部113が特定した1以上の要因のそれぞれを示す要因情報を、介護スタッフの要求に応じてスタッフ端末200に出力させてもよい。このような構成によれば、介護スタッフに対してBPSDの発生の要因を提示することができる。
【0069】
出力部115は、例えば、複数のBPSD類型のそれぞれにおいて評価部114aにより評価された症状の発生状況を、介護スタッフの要求に応じてスタッフ端末200に出力させてもよい。このような構成によれば、BPSD類型のどの類型が強くでているのかを確認することができる。このため、介護スタッフは、症状が強くでている類型に対して、他の類型よりも優先度をあげて対応することができる。
【0070】
出力部115は、例えば、特定部113により特定された改善案を示す改善案情報を、介護スタッフの要求に応じてスタッフ端末200に出力させてもよい。このような構成によれば、介護スタッフに対して、出力された要因候補または要因に対してどのようにケアを改善すればいいのかというヒントを提案することができる。これにより、介護スタッフがケアの改善を1から考えることなく、また、介護スタッフのスキルや経験が浅くとも、BPSDに対応するために被介護者それぞれにより適したケアとなるよう改善を行うことができる。
【0071】
出力部115は、例えば、BPSDの発生を判定部112による判定の結果が示す場合、介護スタッフの要求に応じて、症状情報と、特定部113により特定されたケアの内容と、特定部113により特定された改善案を示す改善案情報と、を対応付けてスタッフ端末200に出力させてもよい。このような構成によれば、介護スタッフは、対応付けられたBPSDの発生と発生時のケアの内容と改善案とをまとめて確認することができる。このため、介護スタッフにとって使い勝手のよい介護支援システムを提供することができる。
【0072】
[通信部]
通信部120は、通信ネットワークNを介して、スタッフ端末200と、介護支援サイトのWebページなどの各種情報を送受信する。
【0073】
[記憶部]
記憶部130は、生活記録、センサデータ、症状情報、行動情報、アセスメント情報、改善案情報、ケア履歴情報を含む介護に関する各種情報を記憶する。記憶部130は、例えば、これらの情報を相互に関連付けて記憶してもよい。記憶部130は、データベースマネジメントシステム(DBMS)を利用して各種情報を記憶してもよいし、ファイルシステムを利用して各種情報を記憶してもよい。DBMSを利用する場合は、情報ごとにテーブルを設けて、このテーブル間を関連付けて各種情報を管理してもよい。
【0074】
<4.画面例>
図4~7を参照して、介護支援システム1のケア支援ダッシュボードの画面例を説明する。なお、
図4~7で説明する各画面において、
図4~7を用いて説明する画面の構成要素以外の要素が含まれてもよいし、
図4~7を用いて説明する画面の構成要素の一部が適宜省かれてもよい。
【0075】
図4~7では、ケア支援ダッシュボードA1が表示するBPSD状況・要因候補画面A2、BPSD発生要因詳細A3、生活記録(DAR)画面A4のそれぞれの例を説明する。ケア支援ダッシュボードA1は、切替タブエリアa11にある各画面に対応するタブを指定して、指定されたタブに対応する画面を表示するように切り替えることができす。
【0076】
図4~5は、BPSDの発生の状況とその要因候補とを表示するためのBPSD状況・要因候補画面A2の例を示す模式図である。本例では、BPSD状況・要因候補画面A2について、画面をスクロール操作などすることにより
図4に続いて
図5が表示されるものとする。
【0077】
図4に示すように、BPSD状況・要因候補画面A2は、BPSD件数表示エリアa22と、ポジティブ記録表示エリアa23と、フェイスマーク表示エリアa24と、事故発生件数表示エリアa25を含む。BPSD状況・要因候補画面A2は、切替タブエリアa11にある「BPSD状況・要因候補」と表示されているタブを指定して表示される。
【0078】
BPSD件数表示エリアa22は、単位期間ごとのBPSD発生件数の大きさを縦棒グラフで表示する。BPSD発生件数は、例えば、判定部112においてBPSDが発生していると判定された場合に、発生したBPSDの症状ごとにカウントされた件数である。なお、BPSD状況・要因候補画面A2で表示する各グラフでは、単位期間について、日単位、週単位、四半期単位、年単位と切り替えられるようになっており、単位期間を切り替えると各グラフの表示についても、切り替えた単位に合わせて表示を変更する。
【0079】
ポジティブ記録表示エリアa23は、単位期間ごとの意欲・POS行動の発生件数の大きさを棒グラフで表示する。意欲・POS行動の発生件数は、例えば、判定部112において、意欲・POS行動があると判定された場合に、意欲・POS行動ごとにカウントされた件数である。
【0080】
フェイスマーク表示エリアa24は、被介護者の表情の様子を記録したフェイスマークについて、単位期間ごとに、その種類ごとの件数の大きさを縦棒グラフで表示する。
【0081】
事故発生件数表示エリアa25は、単位期間ごとの事故発生件数の大きさを縦棒グラフで表示する。事故発生件数表示エリアa25は、例えば、事故発生件数が0件の場合は表示されなくてもよい。事故発生件数は、介護記録または生活記録に基づいてカウントされた件数である。介護記録は、例えば、被介護者の状態を、定量的に、および/または選択的に記録したものであってよい。具体的には、介護記録は、被介護者について、睡眠、排泄、食事、水分摂取量、体重、血圧の状態、呼吸の状態、動脈血酸素飽和度(以下、「SpO2」ともいう)などのそれぞれを定量的に記録したもの、および/または選択方式で記録したものである。
【0082】
図5に示すように、BPSD状況・要因候補画面A2は、判定部112においてBPSDが発生していると判定された場合に、BPSD分類表示エリアa26、ケア別BPSD件数表示エリアa27、時間帯別BPSD表示エリアa28、BPSD要因候補表示エリアa29を含んでもよい。言い換えれば、BPSD状況・要因候補画面A2は、判定部112においてBPSDが発生していると判定された場合には、これらのエリアを表示しなくてもよい。
【0083】
BPSD分類表示エリアa26の上部は、発生したBPSDを複数の類型(本例では、9個の類型)に分類して、類型ごとの発生量(本例では、上記BPSD発生件数を類型ごとに集計したものとする)を算出、すなわち症状の発生状況を評価し、レーダーチャートで表示する。また、BPSD分類表示エリアa26の下部は、BPSDの複数の類型それぞれについて、ケアヒント画面A2-1を表示するためのリンク(以下、「ケアヒントリンク」ともいう)を表示する。なお、上部に表示された類型と下部に表示された類型は、同じであってもよいし、異なってもよい。後者の場合、上部に表示された類型は、例えば、下部に表示された類型の上位概念化したもの、言い換えると下部に表示された類型をさらに大まかに分類したものであってもよい。
【0084】
ケアヒントリンクを指定すると、ケア支援ダッシュボードA1は、ケアヒント画面A2-1を表示する。本例では、BPSDの複数の類型のうち「No.3 暴力 介護拒否」の類型に対応するケアヒントリンクが指定されたものとする。ケアヒント画面A2-1は、この指定されたBPSDの類型に対応するケアの改善案を、介護スタッフに対するケアの際のヒントとして表示する。
【0085】
ケア別BPSD件数表示エリアa27は、BPSDが発生した際に行っていたケアの種類ごとに、BPSDの発生件数の大きさを横棒グラフで表示する。
【0086】
時間帯別BPSD表示エリアa28は、BPSDが発生した際の時間帯ごとに、BPSDの発生件数の大きさを横棒グラフで表示する。
【0087】
BPSD要因候補表示エリアa29は、BPSD発生の1以上の要因候補のそれぞれの寄与度の大きさを横棒グラフで表示する。この横棒グラフでは、寄与度の大きさが大きい順に1以上の要因候補をソートして表示する(
図5では、「上から順に関係が強い横目が並んでいます」と表記)。
【0088】
図6に示すように、BPSD発生要因詳細画面A3は、センサデータに基づいて、被介護者について、BPSD発生の要因候補に関する、単位時間ごとの睡眠時間と活動時間の大きさなどを棒グラフやタイムチャートで表示する。また、BPSD発生要因詳細画面A3は、介護記録に基づいて、被介護者について、BPSD発生の要因候補に関する、排便量、排便性状、尿量、食事量、水分量、体重、体温、血圧(上下)の状態、脈拍の状態、および/または呼吸の状態を棒グラフなどのチャートで表示する。BPSD発生要因詳細画面A3は、切替タブエリアa11にある「BPSD発生詳細(センサ・記録)」と表示されているタブを指定して表示される。
【0089】
図7に示すように、生活記録(DAR)画面A4は、複数の生活記録をまとめたテーブルを表示する。このテーブルでは、記録のレコードごとに、フォーカスした出来事について、この出来事に関するデータ(Data)、出来事に対して行ったケアや処置(Action)、行ったケアや処置に対する被介護者の反応(Response)のそれぞれについて、記録されたフリーテキストを表示する。また、このテーブルでは、複数の生活記録を、それぞれに対応するフェイスマークでソートして表示することができる。また、このテーブルでは、複数の生活記録を、それぞれにおけるBPSDの発生の有無でソートして表示することができる。また、このテーブルでは、複数の生活記録を、それぞれにおける意欲・POS行動の有無でソートして表示することができる。
【0090】
<5.動作例>
図8を参照して、サーバ装置100の動作例を説明する。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0091】
図8に示すように、サーバ装置100の取得部111は、対象者の生活を記録者が記録した生活記録を取得する(S10)。取得部111は、上記生活記録を記録した記録時点におけるセンサデータを取得する(S11)。サーバ装置100の判定部112は、生活記録に基づいて、対象者について、認知症に関する心理症状および/または行動症状が発生しているか否かを判定する(S12)。
【0092】
上記症状が発生していることを上記判定の結果が示す場合(S13のYes)、サーバ装置100の特定部113は、センサデータと生活記録に基づいて、上記症状の発生の1以上の要因候補を特定する(S14)。サーバ装置100の寄与度算出部113bは、上記症状に対する1以上の要因候補のそれぞれの寄与度を算出する(S15)。特定部113は、1以上の要因候補のそれぞれの寄与度に基づいて、上記1以上の要因候補の中から上記症状の発生の1以上の要因を特定する(S16)。サーバ装置100の出力部115は、ユーザの要求に応じて、上記症状が発生していることを示す症状情報と、1以上の要因のそれぞれを示す要因情報を、ユーザ装置に出力させる(S17)。
【0093】
上記症状が発生していないことを上記判定の結果が示す場合(S13のNo)、サーバ装置100の出力部115は、ユーザの要求に応じて、上記症状が発生していないことを示す症状情報を、ユーザ装置に出力させる(S18)。
【0094】
<5.ハードウェア構成>
図9を参照して、上述してきたサーバ装置100をコンピュータ800により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0095】
図9に示すように、コンピュータ800は、プロセッサ801と、メモリ803と、記憶装置805と、入力I/F部807と、データI/F部809と、通信I/F部811、及び表示装置813を含む。
【0096】
プロセッサ801は、メモリ803に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ800における様々な処理を制御する。例えば、サーバ装置100の制御部110が備える各機能部などは、メモリ803に一時記憶されたプログラムを、プロセッサ801が実行することにより実現可能である。
【0097】
メモリ803は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。メモリ803は、プロセッサ801によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0098】
記憶装置805は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置805は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。この他、記憶装置805は、生活記録、センサデータ、症状情報、アセスメント情報、改善案情報、ケア履歴情報などの各種情報を登録するテーブルと、当該テーブルを管理するDBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じてメモリ803にロードされることにより、プロセッサ801から参照される。
【0099】
入力I/F部807は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F部807の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサ、ウェアラブル・デバイスなどが挙げられる。入力I/F部807は、例えばUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介してコンピュータ800に接続されても良い。
【0100】
データI/F部809は、コンピュータ800の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F部809の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置などがある。データI/F部809は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F部809は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ800へと接続される。
【0101】
通信I/F部811は、コンピュータ800の外部の装置と有線または無線により、インターネットNを介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F部811は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F部811は、例えばUSBなどのインタフェースを介してコンピュータ800に接続される。
【0102】
表示装置813は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置813の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイなどが挙げられる。表示装置813は、コンピュータ800の外部に設けられても良い。その場合、表示装置813は、例えばディスプレイケーブルなどを介してコンピュータ800に接続される。また、入力I/F部807としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置813は、入力I/F部807と一体化して構成することが可能である。
【0103】
なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0104】
[変形例]
なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、以下のような場合も本発明に含まれる。
【0105】
[変形例1]
上記実施形態に係るサーバ装置100が備える各構成の少なくとも一部は、スタッフ端末200が備えていてもよい。スタッフ端末200は、例えば、介護支援システム1専用のアプリケーションプログラム(ネイティブアプリ)(以下、「介護支援アプリ」ともいう)をインストールしてこの介護支援アプリを実行することでこれらの構成を実現させてもよい。言い換えれば、介護支援システム1では、サーバ装置100が配信する介護支援サイトを利用してもよいし、介護支援アプリを利用してもよい。介護支援システムにおいて、介護支援アプリを利用する場合、スタッフ端末200がオフラインであっても、介護スタッフは少なくとも一部の機能を利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1…介護支援システム、100…サーバ装置、110…制御部、111…取得部、112…判定部、113…特定部、114…分類部、115…出力部、200…スタッフ端末、800…コンピュータ、801…プロセッサ、803…メモリ、805…記憶装置、807…入力I/F部、809…データI/F部、811…通信I/F部、813…表示装置。