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特開2024-22994樹脂の分解処理方法および分解処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022994
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】樹脂の分解処理方法および分解処理装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126495
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井田 至世
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 大吾
(72)【発明者】
【氏名】畝田 廣志
(72)【発明者】
【氏名】馬場 剛志
(72)【発明者】
【氏名】平岡 尚子
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 智史
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA28
4F401CA07
4F401CA08
4F401CA58
4F401CA67
4F401CB14
4F401CB18
4F401CB21
4F401CB26
4F401CB34
4F401CB35
4F401EA46
4F401FA01X
4F401FA01Y
4F401FA02X
4F401FA02Y
4F401FA09Z
(57)【要約】
【課題】安全で、効率的に樹脂の分解処理を実施できる樹脂の分解処理方法および分解処理装置を提供する。
【解決手段】シリンダ12、シリンダ12に熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部11、供給された熱可塑性樹脂および溶融可塑化した熱可塑性樹脂を搬送するスクリュ12a、溶融可塑化された熱可塑性樹脂を亜臨界状態または超臨界状態で分解処理するために、加熱および加圧状態の流体を、シリンダ内に供給する流体供給部13、シリンダ12の先端に設けられ、熱可塑性樹脂の分解物をシリンダの外部に排出する押出部14、スクリュ12aを回転駆動する回転駆動機構15、シリンダ12内で溶融可塑化された熱可塑性樹脂の逆流を抑制する逆流抑制機構16、を有する樹脂の分解処理装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、樹脂の分解処理方法:
(a)熱可塑性樹脂を、樹脂供給部からシリンダに供給する工程;
(b)前記シリンダ内で、供給された前記熱可塑性樹脂を加熱および加圧して、溶融可塑化する工程;
(c)加熱および加圧された流体を、流体供給部から前記溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂に供給し、混合する工程;
(d)供給された前記流体により、溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂を亜臨界状態または超臨界状態に晒すことで分解する工程;および
(e)前記(d)工程で得られた前記熱可塑性樹脂の分解物を、前記シリンダの先端に設けられた押出部から押出す工程、
ここで、前記(b)工程において、前記熱可塑性樹脂の温度、前記熱可塑性樹脂の圧力および前記シリンダの温度から選ばれる少なくとも1つを測定し、その測定値に応じて、溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂の逆流を抑制する逆流抑制工程を開始する。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂の分解処理方法において、
前記逆流抑制工程は、前記流体供給部よりも下流側の前記シリンダにおいて、前記溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂を前記シリンダから外部へ排出する工程である、樹脂の分解処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂の分解処理方法において、
前記溶融樹脂の外部への排出は、前記押出部と隣接した前記シリンダに設けられたリリーフ孔から行われる、樹脂の分解処理方法。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂の分解処理方法において、
前記逆流抑制工程は、前記(a)工程において、前記熱可塑性樹脂の供給量を増加させる工程である、樹脂の分解処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の樹脂の分解処理方法において、
前記熱可塑性樹脂の供給量を、1.5~2.5倍に増加させる、樹脂の分解処理方法。
【請求項6】
請求項1記載の樹脂の分解処理方法において、
前記逆流抑制工程は、前記(c)工程における前記流体の供給を停止する工程である、樹脂の分解処理方法。
【請求項7】
請求項1記載の樹脂の分解処理方法において、
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である、樹脂の分解処理方法。
【請求項8】
以下を含む、樹脂の分解処理装置:
シリンダ;
前記シリンダに、分解処理の対象である熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部;
前記シリンダにおいて、供給された前記熱可塑性樹脂および溶融可塑化した前記熱可塑性樹脂を搬送するスクリュ;
溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂を亜臨界状態または超臨界状態で分解処理するために、加熱および加圧状態の流体を、前記シリンダ内に供給する流体供給部;
前記シリンダの先端に設けられ、前記熱可塑性樹脂の分解物を前記シリンダの外部に押出す押出部;および
前記樹脂供給部と前記流体供給部との間に設けられた前記シリンダにおいて、前記熱可塑性樹脂の温度を測定する樹脂温度計、前記熱可塑性樹脂の圧力を測定する樹脂圧力計、前記シリンダの温度を測定するシリンダ温度計および前記スクリュを駆動する回転駆動機構のエネルギー消費量または駆動トルクを測定するスクリュ測定計から選ばれる少なくとも1つを有し、前記樹脂温度計、前記樹脂圧力計、前記シリンダ温度計および前記スクリュ測定計の測定値のうち少なくとも1つに応じて、溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂の逆流を抑制することができる逆流抑制機構。
【請求項9】
請求項8記載の樹脂の分解処理装置において、
前記逆流抑制機構が、前記流体供給部よりも下流側の前記シリンダにおいて、前記シリンダの内部と外部雰囲気とを接続するリリーフ孔を開閉可能に設けられているリリーフ弁と、前記測定値に応じて、前記リリーフ弁の開閉を制御する制御部と、を有する、樹脂の分解処理装置。
【請求項10】
請求項9記載の樹脂の分解処理装置において、
前記リリーフ弁が、前記押出部と隣接した前記シリンダに設けられている、分解処理装置。
【請求項11】
請求項8記載の樹脂の分解処理装置において、
前記逆流抑制機構が、前記樹脂供給部から供給する樹脂量を調節可能なフィーダーと、前記測定値に応じて、前記フィーダーにより前記樹脂供給部から前記シリンダへ供給する前記樹脂量を増加させる制御部と、を有する、樹脂の分解処理装置。
【請求項12】
請求項8記載の樹脂の分解処理装置において、
前記逆流抑制機構が、前記流体供給部に接続され、前記流体を供給するための配管に設けられたバルブと、前記測定値に応じて、前記バルブの開閉を制御できる制御部と、を有する、樹脂の分解処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の分解処理方法および分解処理装置に係り、特に、高温、高圧状態での樹脂の分解処理を実施する際に、樹脂供給部側への逆流を生じさせないようにした樹脂の分解処理方法および分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック製品は非常に幅広い分野で使用されており、その使用量は膨大なものとなっている。一方で、プラスチック製品の廃棄処理にはコストがかかり、また、自然環境下に放置される等により河川や海域等にその成分が流出したりすることにより環境への影響も問題となっている。
【0003】
そのため、各種樹脂は、それをリサイクルにより資源を有効利用することが種々検討されてきており、例えば、2軸押出機を用いてアクリル樹脂を熱分解することにより得られるモノマーを回収、再利用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年では、樹脂の分解処理方法として、亜臨界状態または超臨界状態の流体に晒すことでモノマーを得る方法も研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-106427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、亜臨界状態や超臨界状態を利用する場合、用いる液体(流体)に応じて所定の温度および圧力とする必要があり、通常、高温および高圧条件となるため、その用途に用いられる分解処理装置は、密閉等されたものが検討される。
【0007】
一方で、そのような亜臨界状態や超臨界状態に耐えうる分解処理装置を用意するとなると、例えば、専用の装置を作製しなければならない等、初期コストが嵩み、トータルの処理コストも高くなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような樹脂のリサイクルを促進するために、安全で、連続的に樹脂の分解処理を実施できる樹脂の分解処理方法および分解処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される樹脂の分解処理方法は、(a)熱可塑性樹脂を、樹脂供給部からシリンダに供給する工程;(b)シリンダ内で、供給された熱可塑性樹脂を加熱および加圧して、溶融可塑化する工程;(c)加熱および加圧された流体を、流体供給部から溶融可塑化された熱可塑性樹脂に供給し、混合する工程;(d)供給された流体により、溶融可塑化された熱可塑性樹脂を亜臨界状態または超臨界状態に晒すことで分解する工程;および(e)(d)工程で得られた熱可塑性樹脂の分解物を、シリンダの先端に設けられた押出部から押出す工程、を有する。
【0010】
ここで、この分解処理方法では、(b)工程において、熱可塑性樹脂の温度、熱可塑性樹脂の圧力およびシリンダの温度から選ばれる少なくとも1つを測定し、その測定値に応じて、溶融可塑化された熱可塑性樹脂の逆流を抑制する逆流抑制工程を開始する。
【0011】
本願において開示される樹脂の分解処理装置は、シリンダ;シリンダに、分解処理の対象である熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部;シリンダにおいて、供給された熱可塑性樹脂および溶融可塑化した熱可塑性樹脂を搬送するスクリュ;溶融可塑化された熱可塑性樹脂を亜臨界状態または超臨界状態で分解処理するために、加熱および加圧状態の流体を、シリンダ内に供給する流体供給部;シリンダの先端に設けられ、熱可塑性樹脂の分解物をシリンダの外部に排出する押出部を有する。
【0012】
さらに、この分解処理装置は、樹脂供給部と流体供給部との間に設けられたシリンダにおいて、熱可塑性樹脂の温度を測定する樹脂温度計、熱可塑性樹脂の圧力を測定する樹脂圧力計、シリンダの温度を測定するシリンダ温度計およびスクリュを駆動する回転駆動機構のエネルギー消費量または駆動トルクを測定するスクリュ測定計から選ばれる少なくとも1つを有し、前記樹脂温度計、前記樹脂圧力計、前記シリンダ温度計および前記スクリュ測定計の測定値の少なくとも1つの変化に応じて、溶融可塑化された熱可塑性樹脂の逆流を抑制する逆流抑制機構を有する。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される樹脂の分解処理方法および分解処理装置によれば、安全で、連続的に実施できる樹脂の分解処理方法および分解処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1の樹脂の分解処理装置の概略構成を示す側面図である。
図2図1の分解処理装置のシリンダ内に配置されたスクリュを説明するための側面視したときの図である。
図3図1の分解処理装置における、逆流抑制機構をより詳細に説明するための図である。
図4図1の分解処理装置における、逆流抑制機構をより詳細に説明するための図である。
図5】実施の形態1の樹脂の分解処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】実施の形態2の樹脂の分解処理装置の概略構成を示す側面図である。
図7】実施の形態2の樹脂の分解処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図8】実施の形態3の樹脂の分解処理装置の概略構成を示す側面図である。
図9】実施の形態3の樹脂の分解処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
<検討の経緯>
まずは、本願発明の検討の経緯について説明する。
上記のように、亜臨界状態または超臨界状態の流体により樹脂を分解処理(解重合処理)する場合には、通常は、その処理条件に耐えうる密閉された処理容器を用意して行うことが多い。しかしながら、本発明者らは、樹脂材料を形成する際に用いられる樹脂押出装置を、この樹脂の分解処理に用いることができないか検討した。
【0017】
すなわち、本発明者らは、このような樹脂の押出装置を利用することで、樹脂の分解処理に特殊な処理装置を用意することなく、既存の押出装置をそのまま、または、分解処理に適するようにわずかな改変で、樹脂の分解処理を連続的かつ効率的に行うことができるのではないかと考えた。
【0018】
押出装置は、通常、筒状のシリンダの一方から原料となる熱可塑性樹脂を供給し、これをシリンダ内で徐々に加熱、混練し、溶融可塑化した樹脂をスクリュで搬送する。そして、溶融可塑化した樹脂は、シリンダ内を搬送されるうちに十分に混練され、均一に混ざった樹脂材料としてシリンダの先端に設けられたダイスから押し出される。このシリンダ内は、加熱、加圧された条件となるため、上記樹脂の分解処理においても、装置をそのまま利用し、シリンダ内において亜臨界状態や超臨界状態の流体と樹脂とを混合することで分解処理が可能であることが想定された。
【0019】
実際に、本発明者らはそのような条件での樹脂の分解処理を試してみたところ、シリンダ内で亜臨界状態を維持することができ、また、樹脂の分解処理も行うことができることを確認した。
【0020】
ところが、この分解処理を継続したところ、押出装置の樹脂供給部から、溶融可塑化した樹脂および溶融前の樹脂が逆流して噴出することがあった。これは、押出装置の樹脂供給部側は、通常、密閉されておらず、大気に解放された状態であり、シリンダ内で溶融可塑化した溶融樹脂の圧力が、樹脂供給部側の溶融前樹脂の圧力よりも大きくなってしまうためと考えられる。
【0021】
そこで、押出装置を使用して亜臨界状態による樹脂の分解処理を行う際においても、溶融可塑化した樹脂が逆流することなく、樹脂の分解処理を継続、安心して実施できる分解処理装置を提供するため、各種検討を行い、逆流を抑制し得る樹脂の分解処理方法および分解処理装置を見出した。以下、本実施の形態における樹脂の分解処理装置および分解処理方法について、詳細に説明する。
【0022】
<実施の形態1>
[樹脂の分解処理装置]
図1は、実施の形態1の樹脂の分解処理装置の構成例を示す図である。図2は、図1に示した樹脂の分解処理装置のシリンダ内に配置されたスクリュを説明するための図であり、側面視したときの図である。
【0023】
図1に示した樹脂の分解処理装置10は、分解対象の樹脂を亜臨界状態または超臨界状態の流体に晒して分解処理するために使用される装置である。
【0024】
この樹脂の分解処理装置10は、樹脂供給部11と、スクリュを有するシリンダ12と、シリンダ12に流体を供給する流体供給部13と、押出部14と、シリンダ12のスクリュを駆動する回転駆動機構15と、逆流抑制機構16と、を有する。
【0025】
樹脂供給部11は、分解対象の樹脂を、シリンダ12へ供給するものである。本実施の形態では、分解対象の樹脂として、熱可塑性樹脂が供給される。供給される熱可塑性樹脂としては、ペレット、粉末、フレーク等の種々の形態のものが用いられ、例えば、フィーダー等によりホッパを有する樹脂供給部11に上部から投入され、シリンダ12内へ供給される。以下、供給される熱可塑性樹脂がペレットの場合を例に説明する。
【0026】
シリンダ12は、内部にスクリュ12aを有する。図2には、図1の樹脂の分解処理装置10のシリンダ12の内部構造がわかるように、シリンダ12を断面視した図を示している。なお、図2のシリンダ12には、流体供給部13が配置される流体供給孔12bと溶融可塑化された熱可塑性樹脂をシリンダ12内から外部に排出できるリリーフ孔12cも示している。
【0027】
このスクリュ12aを回転させることにより、供給された樹脂が、シリンダ12の内部を押出部14側(下流側)に徐々に搬送される。このスクリュ12aとしては2本のスクリュを設けた二軸スクリュを用いると、二軸押出装置を構成できる。二軸押出装置は、スクリュの回転速度やバレル設定温度などの運転条件が自由に変更できる柔軟性があり、また、高い搬送性、連続処理性などの種々の利点を有する。
【0028】
シリンダ12は、例えば、複数のシリンダブロックが連結されて構成され、各シリンダブロックには、内部に熱可塑性樹脂を搬送可能な空間が設けられている。この空間には、スクリュ12aが設けられており、スクリュ12aは、回転駆動機構15に接続されている。この回転駆動機構15によりスクリュ12aを回転させて、シリンダ12において分解対象の樹脂を搬送できる。
【0029】
また、シリンダ12は、その温度を調節できるようにヒータが設けられている。分解対象である熱可塑性樹脂は、樹脂供給部11から押出部14側に向かって搬送されるが、その際、上記ヒータにより徐々に加熱されて、溶融可塑化された熱可塑性樹脂が容易に得られる。また、このように得られた溶融可塑化された熱可塑性樹脂はシリンダ12内を容易に搬送可能となり、さらに下流側に搬送される。
【0030】
また、シリンダ12内の溶融樹脂及び流体供給部13から供給された流体はスクリュ12aによって昇圧され、亜臨界状態または超臨界状態に達する。
【0031】
途中、後述する流体供給部13により流体が供給されると、溶融可塑化された熱可塑性樹脂と流体とが混合され、このとき上記したようにシリンダ12に設けられているヒータおよびスクリュによってシリンダ12内が所定の温度および圧力に調節され、亜臨界状態または超臨界状態となる。そして、この亜臨界状態または超臨界状態のまま、さらにシリンダ12内を搬送しながら、熱可塑性樹脂の分解処理を進行させるようにする。
【0032】
流体供給部13は、シリンダ12内の溶融可塑化された熱可塑性樹脂に加熱および加圧された流体を供給するものである。この流体供給部13は、熱可塑性樹脂がシリンダ12内で溶融可塑化された後に、シリンダ12内に供給されるように配置される。
【0033】
この流体供給部13から供給される流体により、その下流側において、溶融可塑化された熱可塑性樹脂が亜臨界状態または超臨界状態の流体に晒されて、分解される。なお、流体供給部13から供給する流体は、シリンダ12内で亜臨界状態または超臨界状態となるようにすればよく、シリンダ12へ供給する直前においては、亜臨界状態または超臨界状態とまでなっていなくてもよい。なお、この供給される流体は、シリンダ12への供給前に亜臨界状態または超臨界状態としておき、その状態を維持したままシリンダ12内へ供給すると、流体の供給直後から溶融可塑化された熱可塑性樹脂の分解が開始されるため、好ましい。
【0034】
上記のように溶融可塑化された熱可塑性樹脂に添加されるが、このときシリンダ12内は加熱および加圧されているため、ここで供給される流体は、その圧力に抗してシリンダ12内へ供給される。
【0035】
また、上記したように流体が供給された後、亜臨界状態または超臨界状態とするため、供給される流体は、流体供給部13における溶融可塑化された熱可塑性樹脂の温度と同等またはそれよりも高い温度であることが好ましい。
【0036】
したがって、流体供給部13は、供給する流体を所定の加熱状態とできる加熱手段が設けられていることが好ましい。例えば、図1には、流体供給部13が加熱水製造装置13aに接続されている図を示している。このように加熱水製造装置13aにより、所定の加熱状態とした流体を製造し、得られた流体を、プランジャポンプ等のポンプにより配管を通して流体供給部13からシリンダ12内へ供給できるようにすればよい。
【0037】
押出部14は、シリンダ12内を搬送されてきた熱可塑性樹脂の分解物を分解処理装置10の外部に排出する部材であり、押出用の孔または押出口の絞りを有する。押出部14は装置内の圧力を保持しつつ、分解物を外部に排出できるような構成とできるものであればよい。
【0038】
なお、この押出部14には、原料回収用の容器と接続されていてもよいし、押出された熱可塑性樹脂の分解物をさらに所定の処理に付すように、異なる処理装置と接続されていてもよい。
【0039】
回転駆動機構15は、シリンダ12内に設けられるスクリュ12aを回転させるための装置である。回転駆動機構15により回転されたスクリュにより、分解対象物の熱可塑性樹脂がシリンダ12内を搬送される。
【0040】
なお、シリンダ12内にスクリュが2本設けられた二軸押出装置でも、1本のスクリュが設けられた単軸押出装置でもよい。二軸押出装置の場合、2本のスクリュは、互いに平行に配置されて回転する。2本の軸は互いに噛み合うように配置されていてもよいし、噛み合っていないように配置されていてもよい。スクリュの数を2本とした場合には、原料の搬送効率が高い事、また混練性能が高い事、などから、スクリュ口径が同一の場合、スクリュが1本の単軸よりもスクリュが2本の二軸の方が押出量を高くでき好ましい。また、シリンダ12の延在方向と、シリンダ12内のスクリュの延在方向とは同じである。
【0041】
逆流抑制機構16は、上記シリンダ12内で、供給する熱可塑性樹脂や溶融可塑化された熱可塑性樹脂が樹脂供給部11側から噴出する逆流を抑制するための機構である。
【0042】
本実施の形態において、逆流抑制機構16は、樹脂温度計、樹脂圧力計およびシリンダ温度計から選ばれる少なくとも1つの測定センサ16aと、シリンダ12に設けられたリリーフ弁16bと、測定センサ16aで得られる測定値に応じてリリーフ弁16bの動作を制御する制御部16cと、を有して構成されている。ここで、測定センサ16aとしては、スクリュを駆動する回転駆動機構15のエネルギー消費量および/または回転駆動機構15の回転トルクを測定するスクリュ測定計(図示せず)を有するようにしてもよい。
【0043】
測定センサ16aは、上記のように、樹脂温度計、樹脂圧力計、シリンダ温度計およびスクリュ測定計から選ばれる少なくとも1つの測定センサである。この測定センサ16aとしては、樹脂温度計、樹脂圧力計、シリンダ温度計およびスクリュ測定計のうち1つでもよいし、複数を組み合わせて設けてもよい。また、図1では、測定センサ16aを1つ設けた例を示しているが、同種の測定センサを複数個設けてもよい。複数個設ける場合、シリンダ12を構成するシリンダブロックのうち異なるシリンダブロックにそれぞれ設けるようにすることが好ましい。なお、測定センサ16aとして、スクリュ測定計を設ける場合には、シリンダブロックには設ける必要がなく、回転駆動機構15において、そのエネルギー消費量および/または回転トルクが計測できるように設けられる。
【0044】
リリーフ弁16bは、シリンダ12の内部と外部雰囲気とを接続するリリーフ孔12cを任意のタイミングで開閉することが可能な開閉弁である。このリリーフ弁16bは、手動で開閉するようにしてもよいし、自動で開閉するようにしてもよい。このリリーフ弁16bを開放することにより、シリンダ12内の圧力を低下させ、逆流を効果的に抑制できる。なお、図1では、制御部16cを設けて自動で開閉できるようにしている構成例を示しており、このような構成とすれば、所定の測定値が検出された際に、すぐにリリーフ弁16bを開けることができ、逆流抑制の操作を遅滞なく行うことができる。
【0045】
このリリーフ弁16bは、シリンダ12のうち、熱可塑性樹脂が溶融可塑化された以降のシリンダ12に配置されるように設けるものであり、その配置位置は、流体供給部13より押出部14側(下流側)であることが好ましく、流体供給部13と押出部14の間において押出部14寄りがより好ましく、押出部14と隣接するシリンダブロックが特に好ましい。
【0046】
制御部16cは、測定センサ16aとリリーフ弁16bと接続されており、測定センサ16aが測定した温度または圧力を常時モニターし、その測定値が所定の閾値を超えるか、または、その測定値の変化率が所定の大きさを超えた際に、リリーフ弁16bを自動で開け、シリンダ12内の溶融可塑化された樹脂を装置外部に排出するように動作する。
【0047】
この逆流抑制機構16としては、測定センサ16aの測定値をモニターしておき、所定の測定値が検出された際に警告するようにして、その警告が発せられたときに、リリーフ弁16bを手動で開けるようにしてもよい。この場合、この制御部16cは、設けなくてもよい。
【0048】
<樹脂の分解処理方法>
次に、本実施の形態の樹脂の分解処理方法について、上記説明した図1の樹脂の分解処理装置10を用いる場合を例に、各工程を説明する。
【0049】
まず、熱可塑性樹脂を、樹脂供給部11からシリンダ12に供給する((a)工程;樹脂供給工程)。この工程は、分解対象の熱可塑性樹脂を、分解処理装置の本体であるシリンダ12の内部へ供給するものである。
【0050】
なお、ここで供給する分解対象の樹脂製品は、熱可塑性樹脂製であり加水分解を生ずるものであれば特に限定されず、その樹脂の種類としては、例えば、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等が挙げられる。本実施例ではポリアミド(PA)樹脂の加水分解の一例を紹介する。
【0051】
次いで、シリンダ12内で、供給された熱可塑性樹脂を加熱および加圧して、溶融可塑化する((b)工程;溶融可塑化工程)。ここで、上記樹脂供給工程で供給された熱可塑性樹脂は、スクリュ12aにより、シリンダ12内を押出部15へ向かって搬送されながら、加熱および加圧される。
【0052】
ここで、シリンダ12の外周に設けられたヒータにより搬送されながら徐々に高温となるように、また、シリンダ12の内部のスクリュにより搬送されながら徐々に加圧されるようになっている。このように加熱および加圧されて、熱可塑性樹脂は溶融可塑化された状態で、スクリュ12aにより容易に搬送できる。
【0053】
用いる樹脂種によって異なるが、次に説明する流体供給工程の前に、例えば、樹脂温度が250~400℃、樹脂圧力が15~22MPaの条件となるように、加熱および加圧することが好ましい。なお、流体供給工程の直前までに150~250℃、15~20MPaとすることが好ましい。より具体的には、分解対象の樹脂としてポリアミド(PA)樹脂を含んでいる場合、例えば、樹脂温度が300~350℃、樹脂圧力が15~18MPaとなるようにすることが好ましい。
【0054】
次いで、加熱および加圧された流体を、流体供給部13からシリンダ12内の溶融可塑化された熱可塑性樹脂に供給する((c)工程:流体供給工程)。ここで供給された流体は溶融可塑化された熱可塑性樹脂と混合される。
【0055】
このとき供給される流体は、溶融可塑化された樹脂を分解するために、亜臨界状態または超臨界状態とすることが可能な流体、例えば、水、メタノール等のアルコールが挙げられ、水が好ましい。超臨界状態は、その液体の臨界点を超えた領域において、液体と気体の中間状態のようになった活性を有する状態を指し、亜臨界状態は、超臨界状態よりもやや低い領域における活性を有する液相状態を指す。
【0056】
用いる流体によって、亜臨界状態、超臨界状態の条件は異なるが、水の場合、亜臨界状態は、例えば、150~350℃で飽和圧力以上となる圧力(例えば、300℃のときの飽和圧力は8.59MPa、350℃のときの飽和圧力は16.54MPa)とすればよく、超臨界状態は、例えば、374℃以上、かつ、22MPa以上とすればよい。
【0057】
ここで、亜臨界状態または超臨界状態とするのは、溶融可塑化された熱可塑性樹脂に供給する前でも後でもよく、この流体供給工程においては、供給する流体が所望の条件となるように、加熱および加圧状態を調整する。なお、供給前に亜臨界状態または超臨界状態としておき、この流体をシリンダ12内へ供給することが好ましい。このようにすることで、シリンダ12内へ流体を供給すると、溶融可塑化された熱可塑性樹脂は流体と混合されるが、混合と同時に分解処理を開始できる。
【0058】
そして、上記流体が供給された後、シリンダ12内で溶融可塑化された熱可塑性樹脂は、亜臨界状態または超臨界状態の流体と混合され、これによって分解される((d)工程;分解工程)。この分解工程は、熱可塑性樹脂が十分に分解し得る時間行うことが好ましく、これは亜臨界状態または超臨界状態の流体との混合時間をシリンダ12の長さとスクリュ12aの回転による搬送速度等により調整できる。
【0059】
上記分解処理の時間としては、例えば、2~5分が好ましく、5~10分がより好ましく、10~15分がさらに好ましい。
【0060】
このように亜臨界状態または超臨界状態に晒された熱可塑性樹脂は、その結合が切断されて、原料であるモノマーにまで分解(解重合)された樹脂の分解物となる。
【0061】
そして、この分解工程で得られた熱可塑性樹脂の分解物を、シリンダ12の先端に設けられた押出部14から押出す((e)工程;押出工程)。押し出された樹脂の分解物は回収される。この分解物は、再度、樹脂製造の際に、原料として再利用することができる。
【0062】
なお、再利用にあたっては、分解物中に含まれる不純物を除去することが好ましく、回収にあたって、不純物除去工程を行ってもよい。
【0063】
次に、本実施の形態に特徴的である逆流抑制工程について説明する。
上記(a)工程~(e)工程を行ったとき、シリンダ12に投入される熱可塑性樹脂は、例えば、ハンドリングしやすいように粒状のペレットになっており、投入後、上記したように加熱および加圧されて溶融可塑化される。このとき、図3に示したように、樹脂供給部11から供給された固形状のペレット50が下流側に搬送されながら半溶融状態となり、次いで完全に溶融された溶融樹脂51となる。
【0064】
このとき、このペレット50側の圧力と溶融樹脂51側の圧力とのバランスが取れている場合は、継続した運転が可能で、分解処理を効率よく行うことができる。しかし、このバランスが崩れ、溶融樹脂51側の圧力がペレット50側の圧力よりも高くなった場合、溶融樹脂51が、ペレット50を樹脂供給部11側へ押し戻しつつ逆流し、ついには、溶融樹脂51とペレット50が混合された状態で樹脂供給部11から外部に噴出する場合がある。
【0065】
本実施の形態においては、このような逆流を抑制するために、図1に示したように、シリンダ12に測定センサ16aを有する。図3には、この測定センサ16aとして、樹脂温度計16a-1、樹脂圧力計16a-2、シリンダ温度計16a-3を備えた例を示しているが、上記の通り、これら測定センサ16aは1種でもよいし、2種でもよいし、3種でもよい。また、測定センサ16aを、スクリュ測定計単独としてもよいし(この場合、スクリュ測定計は回転駆動装置15に設けられる)、スクリュ測定計と樹脂温度計16a-1、樹脂圧力計16a-2およびシリンダ温度計16a-3の少なくとも1種とを組み合わせてもよい。以下、測定センサ16aをシリンダブロックに設けた図3を参照しながら説明する。
【0066】
ここで、図3においては、樹脂温度計16a-1、樹脂圧力計16a-2、シリンダ温度計16a-3が、シリンダ12のうち、樹脂供給部11から流体供給部13までのシリンダブロックに設けている例を示しているが、1つのシリンダブロックに測定センサを設けるようにしてもよい。
【0067】
1つのシリンダブロックに設けた場合でも、測定センサ16aが設けられていれば、上記圧力のバランスが崩れたことを検知できるため問題ない。また、複数のシリンダブロックに設けた場合、上記圧力のバランスの崩れをより正確に検知でき好ましい。
【0068】
なお、この測定センサ16aを設けるシリンダブロックは、大部分がペレットとなっている樹脂供給部11側のシリンダブロックに設けることが好ましい。このように樹脂供給部11側のシリンダブロックにおいて測定センサ16aで測定された数値の変動があった場合、逆流が発生していることを正確に検知し、後述する抑制動作を開始できる。
【0069】
例えば、図3に示した状態で分解処理を継続していたが、溶融樹脂51側の圧力が高くなり、図4に示したように樹脂供給部11側に溶融樹脂が逆流を開始した場合、樹脂温度計16a-1、樹脂圧力計16a-2およびシリンダ温度計16a-3の少なくとも1つの測定値の変動を検知して、逆流が生じていると判断した場合、制御部16cは、リリーフ弁16bを開き、溶融樹脂51を、シリンダ12内から開口部を通じて外部に排出する。これにより、シリンダ12内の溶融樹脂の圧力が低下し、溶融樹脂51がペレット50と共に樹脂供給部11側に逆流し、噴出するような事態を抑制できる。具体例としては、樹脂温度計16a-1が例えば240℃から265℃といったように、10%温度が上昇したときに、リリーフ弁16bを開くことが挙げられる。
【0070】
なお、測定センサ16aでの測定値としては、その制御部16cによりリリーフ弁16bの動作を制御するために、その測定値による閾値を設定しておいてもよいし、その経時変化をモニターして、その変動値による閾値を設定しておいてもよい。この閾値は、測定センサ16aを設置するシリンダや使用する樹脂や流体、分解処理の条件等により適宜設定すればよい。
【0071】
分解対象の熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用い、供給する流体として水を使用する分解処理の場合、測定値による閾値として、例えば、樹脂温度が50~225℃、樹脂圧力が1~8MPa、シリンダ温度が25~250℃と設定する場合が例示できる。また、変動値による閾値として、例えば、樹脂温度は5~30%、樹脂圧力は5~30%、シリンダ圧力は5~30%と設定する場合が例示できる。
【0072】
<分解処理装置の動作>
本実施の形態の樹脂の分解処理装置および分解処理方法について、上記説明したが、この樹脂の分解処理装置10の一連の動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0073】
まず、樹脂の分解処理装置10を立ち上げ、測定センサ16aにより測定値(温度、圧力)を表示させる(S1-1)。次いで、リリーフ弁16bを閉鎖し(S1-2)、分解処理装置10の運転を開始する(S1-3)。運転開始によりシリンダ12は所定の温度に加熱され、スクリュ12aの駆動も開始される。
【0074】
分解対象の樹脂として、ペレット50を樹脂供給部11に供給を開始し(S1-4)、樹脂が十分に溶融可塑化し、シリンダ12中を搬送されていることを確認して、流体供給部13から加熱および加圧された流体の供給を開始する(S1-5)。
【0075】
さらに、シリンダ12内の圧力を所定の圧力とするために昇圧を開始する(S1-6)。昇圧を開始すると同時に、逆流の予兆が無いかを測定センサ16aの測定値により判断する(S1-7)。逆流の予兆が無い場合、運転を続行する(S1-8)。
その後、圧力が規定圧力に到達したことを確認し(S1-9)、再度、逆流の予兆が無いかを測定センサ16aの測定値により判断する(S1-10)。ここでも逆流の予兆が無い場合、運転を続行し、樹脂の分解処理を継続する(S1-11)。
【0076】
一方、上記逆流の予兆が無いか確認した際に(S1-7,S1-10)、逆流の予兆があった場合、リリーフ弁16bを解放する(S1-12,S1-13)。リリーフ弁16bを解放することにより、シリンダ12内の圧力を速やかに低下させることができ、逆流を抑制(防止)できる。また、逆流の予兆が無いか否かは、運転を継続(S1-11)した後にも、常時行うことにより、逆流を確実に抑制(防止)できる。
【0077】
リリーフ弁16bを解放した後、再度運転を再開する場合には、リリーフ弁16bを閉鎖し(S1-14)、再度、昇圧を開始し(S1-6)、逆流の予兆が無いかを確認しながら運転を行う(S1-7~S1-14)。なお、一旦リリーフ弁を解放した後は、逆流の原因があればそれを除いた後に運転を再開することが好ましい。
【0078】
問題なければ、樹脂の分解処理が全て終了するまで運転を継続し、全て終了したところで、分解処理装置を停止する。
【0079】
(実施の形態2)
<樹脂複合材料の製造装置>
この実施の形態2は、逆流抑制機構として、樹脂供給部からの樹脂供給量を変動させることにより逆流を抑制する実施の形態であり、その他の構成は実施の形態1と同一とできる。図6は、実施の形態2の樹脂の分解処理装置の構成例を示す図である。
【0080】
図6に示した樹脂の分解処理装置20は、樹脂供給部11と、スクリュを有するシリンダ12と、シリンダ12に流体を供給する流体供給部13と、押出部14と、シリンダ12のスクリュを駆動する回転駆動機構15と、逆流抑制機構26と、を有する。
【0081】
ここで、樹脂供給部11、シリンダ12、流体供給部13、押出部14、回転駆動機構15は、実施の形態1で説明した内容と同一であるため、説明を省略する。この実施の形態2においては、上記したように樹脂供給部11からの樹脂供給量を変動させることにより逆流を抑制するもので、逆流抑制機構26を有する点に特徴を有する。以下、逆流抑制機構26について詳細に説明する。
【0082】
本実施の形態において、逆流抑制機構26は、樹脂温度計、樹脂圧力計およびシリンダ温度計から選ばれる少なくとも1つの測定センサ26aと、樹脂供給部11に供給する樹脂量を調整することができるフィーダー26bと、測定センサ26aで得られる測定値に応じてフィーダー26bの動作を制御する制御部16cと、を有して構成されている。
【0083】
測定センサ26aは、第1の実施の形態で説明した測定センサ16aと同一の構成とできるため、ここでの説明は省略する。
【0084】
フィーダー26bは、公知のフィーダーを用いることができ、樹脂供給部11へ分解対象となる樹脂を供給する装置である。この実施の形態で用いるフィーダー26bはその供給量を調節できる機能を有しており、次に説明する制御部26cと接続され、状況に応じて供給する樹脂量を変更できる。
【0085】
制御部26cは、測定センサ26aとフィーダー26bと接続されており、測定センサ26aが測定した温度または圧力を常時モニターし、その測定値が所定の閾値を超えるか、または、その測定値の変化率が所定の大きさを超えた際に、フィーダー26bから樹脂供給部11へ供給する樹脂量を増大させるように動作する。
【0086】
この逆流抑制機構26としては、測定センサ26aの測定値をモニターしておき、所定の測定値が検出された際に警告するようにして、その警告が発せられたときに、フィーダーからの樹脂供給量を手動で増大させるようにしてもよい。その場合、この制御部26cは、設けなくてもよい。
【0087】
<樹脂の分解処理方法>
次に、本実施の形態の樹脂の分解処理方法について、上記説明した図6の樹脂の分解処理装置20を用いる場合を例に、各工程を説明する。
【0088】
なお、この実施の形態における樹脂の分解処理方法は、第1の実施の形態で説明した樹脂の分解処理方法と、(a)工程~(e)工程は共通するため、その説明は省略する。本実施の形態においては、逆流抑制工程が特徴であり、第1の実施の形態とは異なるため、主にこの相違部分について以下説明する。
【0089】
上記(a)工程~(e)工程を行ったとき、第1の実施の形態および図3で説明したように、樹脂供給部11から供給された固形状のペレット50が下流側に搬送されながら半溶融状態となり、次いで完全に溶融された溶融樹脂51となる。そして、ペレット50側の圧力と溶融樹脂51側の圧力とのバランスが崩れたとき、溶融樹脂51が、ペレット50を樹脂供給部11側へ押し戻しつつ逆流し、ついには、溶融樹脂51とペレット50が混合された状態で樹脂供給部11から外部に噴出する場合がある。
【0090】
本実施の形態においては、このような逆流を抑制するために、図6に示したように、シリンダ12に樹脂温度計、樹脂圧力計およびシリンダ温度計から選ばれる少なくとも1つの測定センサ26aを有する。この測定センサ26aは、第1の実施の形態の測定センサ16aと同一の構成とできる。
【0091】
本実施の形態では、図3に示した状態で分解処理を継続していたが、溶融樹脂51側の圧力が高くなり、図4に示したように樹脂供給部11側に溶融樹脂が逆流を開始した場合、樹脂温度計16a-1、樹脂圧力計16a-2およびシリンダ温度計16a-3の少なくとも1つの測定値の変動を検知して、逆流が生じていると判断した場合、制御部26cは、フィーダー26bにおいて樹脂供給量を増大させ、ペレット50側の圧力が高まるようにする。これにより、シリンダ12内のペレット50と溶融樹脂51の圧力とのバランスを調整し、溶融樹脂51がペレット50と共に樹脂供給部11側に逆流し、噴出するような事態を抑制できる。
【0092】
このとき、測定センサ26aでの測定値としては、第1の実施の形態で説明した閾値や変動値を設定し、動作させるようにすればよい。
【0093】
なお、樹脂量の増大は、上記逆流による噴出を抑制できる量であればよく、例えば、もともと供給していた樹脂量に対し、1.5~2.5倍とすることが好ましい。
【0094】
また、樹脂量の増大後、再度、測定センサ26aの測定値を確認し、逆流が抑制されたか否かを確認し、逆流が抑制されていなかった場合、さらに樹脂量を増大させるようにして、これを抑制するまで繰り返すようにしてもよい。この場合、樹脂量の増大は、もともと供給していた樹脂量に対し、1.1~1.5倍程度として、段階的に樹脂量を増大させるようにしてもよい。
【0095】
<分解処理装置の動作>
本実施の形態の樹脂の分解処理装置および分解処理方法について、上記説明したが、この樹脂の分解処理装置20の一連の動作について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0096】
まず、樹脂の分解処理装置20を立ち上げ、測定センサ26aにより測定値(温度、圧力)を表示させる(S2-1)。次いで、分解処理装置20の運転を開始する(S2-2)。運転開始によりシリンダ12は所定の温度に加熱され、スクリュ12aの駆動も開始される。
【0097】
分解対象の樹脂として、ペレット50を樹脂供給部11に供給を開始し(S2-3)、樹脂が十分に溶融可塑化し、シリンダ12中を搬送されていることを確認して、流体供給部13から加熱および加圧された流体の供給を開始する(S2-4)。
【0098】
さらに、シリンダ12内の圧力を所定の圧力とするために昇圧を開始する(S2-5)。昇圧を開始すると同時に、逆流の予兆が無いかを測定センサ26aの測定値により判断する(S2-6)。逆流の予兆が無い場合、運転を続行する(S2-7)。
【0099】
その後、圧力が規定圧力に到達したことを確認し(S2-8)、再度、逆流の予兆が無いかを測定センサ26aの測定値により判断する(S2-9)。ここでも逆流の予兆が無い場合、運転を続行し、樹脂の分解処理を継続する(S2-10)。
【0100】
一方、上記逆流の予兆が無いか確認した際に(S2-6,S2-9)、逆流の予兆があった場合、フィーダー26bから供給する樹脂量を増大させる(S2-11,S2-12)。供給樹脂量を増大した後は、測定センサ26aの測定値を確認し、予兆が消えたか否かを確認する(S2-13)。予兆が消えている場合、運転を続行して分解処理を継続する(S2-9)。予兆が消えていない場合、再度、樹脂の供給を増大させて(S2-11,S2-12)、これを予兆が消えるまで繰り返す。供給樹脂量を増大させることにより、シリンダ12内で、ペレット50と溶融樹脂51との圧力のバランスを調整し、逆流を抑制(防止)できる。また、逆流の予兆が無いか否かは、運転を継続(S2-10)した後にも、常時行うことにより、逆流を確実に抑制(防止)できる。
【0101】
問題なければ、樹脂の分解処理が全て終了するまで運転を継続し、全て終了したところで、分解処理装置を停止する。
【0102】
(実施の形態3)
この実施の形態3は、逆流抑制機構として、流体供給部からの流体の供給を停止することにより逆流を抑制する実施の形態であり、その他の構成は実施の形態1と同一とできる。図8は、実施の形態3の樹脂の分解処理装置の構成例を示す図である。
【0103】
図8に示した樹脂の分解処理装置30は、樹脂供給部11と、スクリュを有するシリンダ12と、シリンダ12に流体を供給する流体供給部13と、押出部14と、シリンダ12のスクリュを駆動する回転駆動機構15と、逆流抑制機構36と、を有する。
【0104】
ここで、樹脂供給部11、シリンダ12、流体供給部13、押出部14、回転駆動機構15は、実施の形態1で説明した内容と同一であるため、説明を省略する。この実施の形態3においては、上記したように流体供給部13からの流体の供給を停止させることにより逆流を抑制するもので、逆流抑制機構36を有する点に特徴を有する。以下、逆流抑制機構36について詳細に説明する。
【0105】
本実施の形態において、逆流抑制機構36は、樹脂温度計、樹脂圧力計およびシリンダ温度計から選ばれる少なくとも1つの測定センサ36aと、流体供給部13に接続され、前記流体を供給するための配管に設けられたバルブ36bと、測定センサ36aで得られる測定値に応じてバルブ36bの開閉を制御できる制御部36cと、を有して構成されている。
【0106】
測定センサ36aは、第1の実施の形態で説明した測定センサ16aと同一の構成とできるため、ここでの説明は省略する。
【0107】
バルブ36bは、公知のバルブを用いることができ、流体供給部13からシリンダ12への流体供給をするために接続された配管に設けられている。このバルブ36bを開閉することで、シリンダ12への流体の供給の可否、供給量を制御することができる。
【0108】
制御部36cは、測定センサ36aとバルブ36bと接続されており、測定センサ36aが測定した温度または圧力を常時モニターし、その測定値が所定の閾値を超えるか、または、その測定値の変化率が所定の大きさを超えた際に、バルブ36bを閉めて、シリンダ12へ供給される流体を停止させるように動作する。
【0109】
この逆流抑制機構36としては、測定センサ36aの測定値をモニターしておき、所定の測定値が検出された際に警告するようにして、その警告が発せられたときに、流体供給部13からの流体供給を手動で停止するようにしてもよい。その場合、この制御部36cは、設けなくてもよい。
【0110】
<樹脂の分解処理方法>
次に、本実施の形態の樹脂の分解処理方法について、上記説明した図8の樹脂の分解処理装置30を用いる場合を例に、各工程を説明する。
【0111】
なお、この実施の形態における樹脂の分解処理方法は、第1の実施の形態で説明した樹脂の分解処理方法と、(a)工程~(e)工程は共通するため、その説明は省略する。本実施の形態においては、逆流抑制工程が特徴であり、第1の実施の形態とは異なるため、主にこの相違部分について以下説明する。
【0112】
上記(a)工程~(e)工程を行ったとき、第1の実施の形態および図3で説明したように、樹脂供給部11から供給された固形状のペレット50が下流側に搬送されながら半溶融状態となり、次いで完全に溶融された溶融樹脂51となる。そして、ペレット50側の圧力と溶融樹脂51側の圧力とのバランスが崩れたとき、溶融樹脂51が、ペレット50を樹脂供給部11側へ押し戻しつつ逆流し、ついには、溶融樹脂51とペレット50が混合された状態で樹脂供給部11から外部に噴出する場合がある。
【0113】
本実施の形態においては、このような逆流を抑制するために、図8に示したように、シリンダ12に樹脂温度計、樹脂圧力計およびシリンダ温度計から選ばれる少なくとも1つの測定センサ36aを有する。この測定センサ36aは、第1の実施の形態の測定センサ16aと同一の構成とできる。
【0114】
本実施の形態では、図3に示した状態で分解処理を継続していたが、溶融樹脂51側の圧力が高くなり、図4に示したように樹脂供給部11側に溶融樹脂が逆流を開始した場合、樹脂温度計16a-1、樹脂圧力計16a-2およびシリンダ温度計16a-3の少なくとも1つの測定値の変動を検知して、逆流が生じていると判断した場合、制御部36cは、バルブ36bを閉めて、シリンダ12への流体の供給を停止する。これにより、シリンダ12内のペレット50と溶融樹脂51の圧力とのバランスを調整し、溶融樹脂51がペレット50と共に樹脂供給部11側に逆流し、噴出するような事態を抑制できる。
【0115】
このとき、測定センサ36aでの測定値としては、第1の実施の形態で説明した閾値や変動値を設定し、動作させるようにすればよい。
【0116】
<分解処理装置の動作>
本実施の形態の樹脂の分解処理装置および分解処理方法について、上記説明したが、この樹脂の分解処理装置30の一連の動作について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0117】
まず、樹脂の分解処理装置30を立ち上げ、測定センサ36aにより測定値(温度、圧力)を表示させる(S3-1)。次いで、分解処理装置30の運転を開始する(S3-2)。運転開始によりシリンダ12は所定の温度に加熱され、スクリュ12aの駆動も開始される。
【0118】
分解対象の樹脂として、ペレット50を樹脂供給部11に供給を開始し(S3-3)、樹脂が十分に溶融可塑化し、シリンダ12中を搬送されていることを確認して、流体供給部13から加熱および加圧された流体の供給を開始する(S3-4)。
【0119】
さらに、シリンダ12内の圧力を所定の圧力とするために昇圧を開始する(S3-5)。昇圧を開始すると同時に、逆流の予兆が無いかを測定センサ36aの測定値により判断する(S3-6)。逆流の予兆が無い場合、運転を続行する(S3-7)。
【0120】
その後、圧力が規定圧力に到達したことを確認し(S3-8)、再度、逆流の予兆が無いかを測定センサ36aの測定値により判断する(S3-9)。ここでも逆流の予兆が無い場合、運転を続行し、樹脂の分解処理を継続する(S3-10)。
【0121】
一方、上記逆流の予兆が無いか確認した際に(S3-6,S3-9)、逆流の予兆があった場合、バルブ36bを閉めて流体供給部13からの流体の供給を停止させる(S3-11,S3-12)。流体供給を停止した後は、運転条件を変更する(S3-13)。ここで変更する運転条件は、逆流を抑制し得る条件であればよく、例えば、樹脂供給量、流体供給量、スクリュ回転数、シリンダ温度等が挙げられる。
【0122】
運転条件変更後は、バルブ36bを開けて流体供給を再開する(S3-4)。流体供給を停止させることにより、シリンダ12内で、ペレット50と溶融樹脂51との圧力のバランスを調整し、逆流を抑制(防止)できる。また、逆流の予兆が無いか否かは、運転を継続(S3-10)した後にも、常時行うことにより、逆流を確実に抑制(防止)できる。
【0123】
問題なければ、樹脂の分解処理が全て終了するまで運転を継続し、全て終了したところで、分解処理装置を停止する。
【0124】
以上、本発明について、実施の形態および実施例により具体的に説明したが、本発明はこれら実施の形態および実施例に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0125】
10,20,30 樹脂の分解処理装置
11 樹脂供給部
12 シリンダ
12a スクリュ
12b 流体供給孔
12c リリーフ孔
13 流体供給部
14 押出部
15 回転駆動機構
16,26,36 逆流抑制機構
16a,26a,36a 測定センサ
16c,26c,36c 制御部
16b リリーフ弁
26b フィーダー
36c バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9