(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023003
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】歯車装置の荷重配分調整方法および歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126514
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮地 駿
(72)【発明者】
【氏名】音在 啓太郎
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA03
3J027FA43
3J027FB32
3J027FC12
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC03
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE29
(57)【要約】
【課題】出力側キャリアと入力側キャリアとにおける荷重の配分を調整することが可能な歯車装置の荷重配分調整方法を提供する。
【解決手段】この歯車装置の荷重配分調整方法は、歯車装置の荷重配分を調整する方法であって、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を確認する工程と、荷重配分を確認しながら、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、出力側キャリア5および入力側キャリア6の回転を同期させるキャリア接続部材7に対する、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材8の接続位置を調整する工程と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車装置の荷重配分を調整する方法であって、
出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる前記荷重配分を確認する工程と、
前記荷重配分を確認しながら、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる前記荷重配分が所定の配分となるように、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアの回転を同期させるキャリア接続部材に対する、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアの各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程と、を備える、歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項2】
前記キャリア接続部材は、前記出力トルク伝達部材に対してトルクを伝達する接続部を有しており、
前記キャリア接続部材に対する前記出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程において、軸方向における前記出力トルク伝達部材に対する前記接続部の接続位置を調整する、請求項1に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項3】
前記キャリア接続部材は、筒状形状を有しており、
前記接続部は、前記キャリア接続部材の内周面に設けられており、
前記キャリア接続部材に対する前記出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程において、前記接続部に対する前記出力トルク伝達部材のかかり代の長さを調整する、請求項2に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項4】
前記キャリア接続部材に対する前記出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程において、軸方向における前記接続部の位置が、前記出力側キャリアと、前記入力側キャリアとの間の位置となるように、前記接続部の位置を調整する、請求項3に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項5】
少なくとも、前記出力側キャリアと、前記入力側キャリアと、前記キャリア接続部材と、前記出力トルク伝達部材と、前記出力トルク伝達部材を支持し、前記出力トルク伝達部材からのトルクが伝達される出力シャフトと、をモデル化した3次元モデルを生成する工程をさらに備え、
前記荷重配分を確認する工程において、前記3次元モデルに基づいて、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる応力を解析することにより、前記荷重配分を確認する、請求項4に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項6】
前記荷重配分を確認する工程において、前記3次元モデルにおける前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアを固定した状態で、前記出力シャフトにトルクを伝達した際の、前記出力シャフトに伝達されたトルクに対する前記キャリア接続部材と前記出力側キャリアとの接続箇所の反力、および、前記出力シャフトに伝達されたトルクに対する前記キャリア接続部材と前記入力側キャリアとの接続箇所の反力を確認することにより、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる前記荷重配分を確認する、請求項5に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項7】
前記歯車装置は、軸回りに回転可能に設けられた軸部材と、前記軸部材に取り付けられ、前記軸部材の回転に連動して回転する出力側外歯歯車と、前記軸部材に取り付けられ、前記軸部材の回転に連動して回転する入力側外歯歯車とを有しており、
前記荷重配分を確認する工程において、前記出力側外歯歯車に設けられたひずみセンサの出力値に基づいて、前記出力側外歯歯車にかかる荷重である出力側荷重を取得するとともに、前記入力側外歯歯車に設けられたひずみセンサの出力値に基づいて、前記入力側外歯歯車にかかる荷重である入力側荷重を取得して、前記出力側荷重および前記入力側荷重を比較することにより、前記荷重配分を確認する、請求項4に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【請求項8】
軸回りに回転可能に設けられた軸部材と、
内周面に内歯車が設けられた外筒と、
前記軸部材に取り付けられ、前記内歯車に噛み合いながら回転する出力側外歯歯車と、
前記軸部材に取り付けられ、前記内歯車に噛み合いながら回転する入力側外歯歯車と、
前記外筒と同軸上に設けられ、前記出力側外歯歯車の回転が伝達されることにより、前記外筒に対して相対回転する出力側キャリアと、
前記外筒と同軸上に設けられ、前記入力側外歯歯車の回転が伝達されることにより、前記外筒に対して相対回転する入力側キャリアと、
前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアに接続され、前記出力側キャリアと前記入力側キャリアとの回転を同期させるキャリア接続部材と、
前記キャリア接続部材に接続され、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアの各々からトルクを伝達する出力トルク伝達部材と、
前記出力トルク伝達部材を支持し、前記出力トルク伝達部材からトルクが伝達される出力シャフトとを備え、
前記キャリア接続部材と前記出力トルク伝達部材との接続位置は、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる荷重配分が所定の配分となるように、軸方向の位置が調整されている、歯車装置。
【請求項9】
前記キャリア接続部材は、前記出力トルク伝達部材に対してトルクを伝達する接続部を有しており、
軸方向における前記出力トルク伝達部材に対する前記接続部の接続位置が調整されることにより、軸方向における接続位置が調整されている、請求項8に記載の歯車装置。
【請求項10】
前記キャリア接続部材は、筒状形状を有しており、
前記接続部は、前記キャリア接続部材の内周面に設けられており、
前記接続部に対する前記出力トルク伝達部材のかかり代の長さが調整されることにより、軸方向における接続位置が調整されている、請求項9に記載の歯車装置。
【請求項11】
前記軸部材は、軸方向に並ぶように配設された第1偏心部と第2偏心部とを有し、
前記出力側外歯歯車は、前記第1偏心部に取り付けられ、前記第1偏心部の偏心回転に連動して揺動回転するように構成されており、
前記入力側外歯歯車は、前記第2偏心部に取り付けられ、前記第2偏心部の偏心回転に連動して揺動回転するように構成されており、
前記出力側キャリアは、前記出力側外歯歯車の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されており、
前記入力側キャリアは、前記入力側外歯歯車の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されており、
前記キャリア接続部材は、前記出力側キャリアの回転と、前記入力側キャリアの回転とを同期させるように構成されている、請求項10に記載の歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置の荷重配分調整方法および歯車装置に関し、特に、複数のキャリアを有する歯車装置の荷重配分調整方法および歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来複数のキャリアを有する歯車装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、外筒と、キャリアと、キャリア軸受と、入力軸と、クランク軸と、第1クランク軸受と、第2クランク軸受と、第1外歯歯車と、第2外歯歯車と、第1ころ軸受と、第2ころ軸受と、伝達歯車とを備える歯車装置が開示されている。上記特許文献1に開示されているキャリアは、伝達歯車を基準として、一方側と他方側との両側に設けられており、シャフト部によって接続されている。また、上記特許文献1に開示されている構成では、入力軸から入力されたトルクは、伝達歯車を介して、クランク軸に伝達される。また、クランク軸に伝達されたトルクは、第1外歯歯車および第2外歯歯車を介して、キャリアに伝達される。具体的には、第1外歯歯車から一方側のキャリアにトルクが伝達される。また、第2外歯歯車から、他方側のキャリアにトルクが伝達される。また、各キャリアに伝達されたトルクは、一方側のキャリアから、ロボットアームなどに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に開示されている構成では、一方側のキャリア(出力側キャリア)に出力シャフトが設けられ、出力トルクを得る構成であると考えられる。そのため、上記特許文献1に開示されている構成では、他方側のキャリア(入力側キャリア)とシャフト部によって連結された出力側キャリアに出力シャフトが設けられる構成であると考えられる。この場合、ロボットアームなどの外部の部材に対してトルクを伝達する際に、出力側キャリアと入力側キャリアとにおいて、出力シャフトまでのトルクの伝達経路に差が生じる。この場合、上記特許文献1に開示されている構成では、入力側キャリアは、シャフト部によって出力側キャリアと接続されているため、入力側キャリアにおけるトルクの伝達経路の部品点数が、出力側キャリアにおけるトルクの伝達経路の部品点数よりも多くなる。そのため、入力側キャリアにおけるトルクの伝達経路の剛性が、出力側キャリアにおけるトルクの伝達経路の剛性よりも小さくなる。トルクの伝達経路の剛性が大きいほど、より高いトルクを伝達するため、上記特許文献1に開示されている構成では、トルクの伝達経路の差に起因して、出力側キャリアと入力側キャリアとにかかる荷重に差が生じる。したがって、出力側キャリアと、入力側キャリアとにおいて、荷重の分配に差異が生じるといった不都合がある。しかしながら、上記特許文献1に開示されている構成では、出力側キャリアのトルクの伝達経路の長さと、入力側キャリアのトルクの伝達経路の長さとを調整することが困難である。したがって、上記特許文献1に開示されている構成では、出力側キャリアと入力側キャリアとにおける荷重の分配を調整できないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、出力側キャリアと入力側キャリアとにおける荷重の配分を調整することが可能な歯車装置の荷重配分調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討を行った結果、出力側キャリアと入力側キャリアとを接続する部材を介して出力シャフトを設けるとともに、出力シャフトにトルクを伝達する位置を調整可能な構成とすることにより、出力側キャリアと入力側キャリアとにおける荷重の配分を調整することが可能であるということを見出した。この知見に基づき、この発明の第1の局面における歯車装置の荷重配分調整方法は、歯車装置の荷重配分を調整する方法であって、出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる荷重配分を確認する工程と、荷重配分を確認しながら、出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる荷重配分が所定の配分となるように、出力側キャリアおよび入力側キャリアの回転を同期させるキャリア接続部材に対する、出力側キャリアおよび入力側キャリアの各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程と、を備える。
【0008】
この発明の第2の局面による歯車装置は、軸回りに回転可能に設けられた軸部材と、内周面に内歯車が設けられた外筒と、軸部材に取り付けられ、内歯車に噛み合いながら回転する出力側外歯歯車と、軸部材に取り付けられ、内歯車に噛み合いながら回転する入力側外歯歯車と、外筒と同軸上に設けられ、出力側外歯歯車の回転が伝達されることにより、外筒に対して相対回転する出力側キャリアと、外筒と同軸上に設けられ、入力側外歯歯車の回転が伝達されることにより、外筒に対して相対回転する入力側キャリアと、出力側キャリアおよび入力側キャリアに接続され、出力側キャリアと入力側キャリアとの回転を同期させるキャリア接続部材と、キャリア接続部材に接続され、出力側キャリアおよび入力側キャリアの各々からトルクを伝達する出力トルク伝達部材と、出力トルク伝達部材を支持し、出力トルク伝達部材からトルクが伝達される出力シャフトとを備え、キャリア接続部材と出力トルク伝達部材との接続位置は、出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる荷重配分が所定の配分となるように、軸方向の位置が調整されている。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の局面における歯車装置の荷重配分調整方法、および、第2の局面における歯車装置は、出力側キャリアと入力側キャリアとが、キャリア接続部材によって接続されている。また、キャリア接続部材に対して、出力側キャリアおよび入力側キャリアからのトルクが伝達される。そして、キャリア接続部材と接続された出力トルク伝達部材を介して出力シャフトからトルクが出力される。したがって、上記第1の局面における歯車装置の荷重配分調整方法、および、第2の局面における歯車装置では、出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる荷重配分が所定の配分となるように、出力側キャリアおよび入力側キャリアの各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材の接続位置を調整する。これにより、出力側キャリアからのトルクの伝達経路と、入力側キャリアからのトルクの伝達経路とを調整することができる。その結果、接続位置を調整することにより、出力側キャリアと入力側キャリアとにおける荷重の配分を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態による歯車装置の軸方向に沿った断面図である。
【
図2】一実施形態による歯車装置の軸方向と直交する方向に沿った断面図である。
【
図3】一実施形態による歯車装置における出力側キャリアおよび入力側キャリアにおけるトルクの伝達経路を説明するための模式図である。
【
図4】一実施形態による歯車装置の荷重配分を解析するための3次元モデルを説明するための模式図である。
【
図5】一実施形態による3次元モデルを用いて出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる荷重を解析する構成を説明するための模式図である。
【
図6】一実施形態によるキャリア接続部材と出力トルク伝達部材との接続位置を調整する構成を説明するための断面図である。
【
図7】キャリア接続部材と出力トルク伝達部材との接続位置を調整した際の荷重配分の解析結果を説明するための図である。
【
図8】一実施形態による歯車装置の荷重配分を調整する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】変形例による歯車装置において、出力側外歯歯車にかかる荷重を確認する構成を説明するための模式図である。
【
図10】変形例による歯車装置の荷重配分を調整する処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態による歯車装置100(
図1参照)の構成、および、歯車装置100において出力側キャリア5(
図1参照)および入力側キャリア6(
図1参照)にかかる荷重の配分を調整する構成について説明する。本実施形態による歯車装置100は、モータ、エンジン、および、タービンのうちの、少なくともいずれかを備える回転機械に設けられる減速機である。回転機械は、たとえば、ロボットアームや航空機などの回転部(旋回部)である。
【0013】
図1に示すように、歯車装置100は、軸部材1と、外筒2と、出力側外歯歯車3と、入力側外歯歯車4と、出力側キャリア5と、入力側キャリア6と、キャリア接続部材7と、出力トルク伝達部材8と、出力シャフト9とを備える。また、本実施形態による歯車装置100は、入力シャフト10と、複数のキャリアピン11と、複数の第1軸受12と、複数の第2軸受13と、を備える。なお、本実施形態において、「出力側」とは、軸部材1が延びる方向において、歯車装置100の中心よりも出力シャフト9が設けられている側を意味する。また、「入力側」とは、軸部材1が延びる方向において、歯車装置100の中心よりも入力シャフト10が設けられている側を意味する。また、本実施形態では、軸部材1が延びる方向を、X方向とする。X方向のうち、出力側の方向を、X1方向とし、入力側の方向をX2方向とする。また、X方向と直交する方向を、Y方向とし、Y方向の一方側をY1方向、他方側をY2方向とする。
【0014】
本実施形態による歯車装置100は、入力シャフト10とともに軸部材1が回転することにより、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4が揺動回転する。揺動回転した出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4は、キャリアピン11と噛み合うことで、軸線61回りに回転する。出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4が軸線61回りに回転することにより、軸部材1が軸線61回りに回転(公転)する。そのため、軸部材1が軸線61回りに公転することによって出力側キャリア5および入力側キャリア6が軸線61回りに回転する。出力側キャリア5および入力側キャリア6が回転することにより、キャリア接続部材7、出力トルク伝達部材8を介して、出力シャフト9に対してトルクが伝達される。
【0015】
軸部材1は、中実の軸形状を有している。軸部材1は、軸回りに回転可能に設けられている。本実施形態では、軸部材1は、軸線60回りに回転可能に構成されている。また、軸部材1は、複数の第1軸受12によって回転支持されている。本実施形態では、軸部材1は、軸方向に並ぶように配設された第1偏心部1aと第2偏心部1bとを有する。また、軸部材1には、伝達歯車1cが設けられている。軸部材1は、伝達歯車1cを介して、入力シャフト10と接触している。軸部材1は、入力シャフト10が軸線61回りに回転することにより、軸線60回りに回転する。また、軸部材1は、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4の揺動回転によって、軸線61回りに公転する。
【0016】
第1偏心部1aは、伝達歯車1cよりもX1方向側に配置されている。また、第2偏心部1bは、伝達歯車1cよりもX2方向側に配置されている。第1偏心部1aと、第2偏心部1bとは、互いに位相が異なった状態で、軸部材1に設けられている。第1偏心部1aと、第2偏心部1bとは、たとえば、180度位相がずれた状態で、軸部材1に設けられている。
【0017】
外筒2は、内周面2aに内歯車が設けられている。外筒2は、円筒形状を有している。また、外筒2は、歯車装置100のケースを兼ねている。本実施形態では、外筒2は、内歯車として、複数のキャリアピン11が設けられている。キャリアピン11の配置については、後述する。
【0018】
出力側外歯歯車3は、軸部材1に取り付けられている。具体的には、出力側外歯歯車3は、第1偏心部1aに取り付けられている。具体的には、出力側外歯歯車3には、第1開口部3aと、第2開口部3bとが設けられている。出力側外歯歯車3は、第1開口部3aに第1偏心部1aが挿通された状態で、第1偏心部1aに設けられている。本実施形態では、第1偏心部1aは、隙間が生じた状態で第1開口部3aに挿通されている。したがって、出力側外歯歯車3は、第1偏心部1aの偏心回転に連動して揺動回転するように構成されている。また、第2開口部3bには、キャリア接続部材7および出力トルク伝達部材8が挿通されている。なお、キャリア接続部材7および出力トルク伝達部材8は、隙間が生じた状態で、第2開口部3bに挿通されている。
【0019】
また、本実施形態では、出力側外歯歯車3は、X方向において、伝達歯車1cと出力側キャリア5との間の位置に配置されている。また、出力側外歯歯車3は、内歯車に噛み合いながら回転するように構成されている。すなわち、出力側外歯歯車3は、外筒2に対して相対回転可能に構成されている。本実施形態では、出力側外歯歯車3は、キャリアピン11との噛み合いの位置が変化しながら回転する。具体的には、出力側外歯歯車3は、回転角度に応じて、対応する位置に設けられたキャリアピン11と噛み合いながら回転する。すなわち、出力側外歯歯車3は、軸部材1が軸線61回りに回転することにより、軸線61回りを揺動回転する。
【0020】
入力側外歯歯車4は、軸部材1に取り付けられている。具体的には、入力側外歯歯車4は、第2偏心部1bに取り付けられている。具体的には、入力側外歯歯車4には、第1開口部4aと、第2開口部4bとが設けられている。入力側外歯歯車4は、第1開口部4aに第2偏心部1bが挿通された状態で、第2偏心部1bに設けられている。本実施形態では、第2偏心部1bは、隙間が生じた状態で第1開口部4aに挿通されている。したがって、入力側外歯歯車4は、第2偏心部1bの偏心回転に連動して揺動回転するように構成されている。また、第2開口部4bには、キャリア接続部材7が挿通されている。なお、キャリア接続部材7は、隙間が生じた状態で、第2開口部4bに挿通されている。
【0021】
また、本実施形態では、入力側外歯歯車4は、X方向において、入力側キャリア6と伝達歯車1cとの間の位置に配置されている。また、入力側外歯歯車4は、内歯車に噛み合いながら回転するように構成されている。すなわち、入力側外歯歯車4は、外筒2に対して相対回転可能に構成されている。本実施形態では、入力側外歯歯車4は、キャリアピン11との噛み合いの位置が変化しながら回転する。具体的には、入力側外歯歯車4は、回転角度に応じて、対応する位置に設けられたキャリアピン11と噛み合いながら回転する。すなわち、入力側外歯歯車4は、軸部材1が軸線61回りに回転することにより、軸線61回りに揺動回転する。なお、入力側外歯歯車4は、出力側外歯歯車3と位相がずれた状態で、内歯車に噛み合っている。
【0022】
出力側キャリア5は、外筒2と同軸上に設けられている。また、出力側キャリア5は、軸線61回りに回転可能に構成されている。具体的には、出力側キャリア5は、出力側外歯歯車3の揺動回転に伴って軸部材1が軸線61回りに回転することにより、軸部材1からトルクが伝達され、軸線61回りに回転する。本実施形態では、出力側キャリア5は、X方向において、出力側外歯歯車3と、出力シャフト9との間の位置に配置されている。出力側キャリア5には、開口部5a、および、凹部5bが設けられている。開口部5aには、キャリア接続部材7が挿入された状態で固定されている。また、開口部5aには、出力トルク伝達部材8が挿通されている。
【0023】
また、出力側キャリア5は、出力側外歯歯車3の回転が伝達されることにより、外筒2に対して相対回転するように構成されている。出力側キャリア5は、出力側外歯歯車3の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されている。
【0024】
入力側キャリア6は、外筒2と同軸上に設けられている。また、入力側キャリア6は、軸線61回りに回転可能に構成されている。具体的には、入力側キャリア6は、入力側外歯歯車4の揺動回転に伴って軸部材1が軸線61回りに回転することにより、軸部材1からトルクが伝達され、軸線61回りに回転する。本実施形態では、入力側キャリア6は、外筒2の内部において、入力側外歯歯車4よりもX2方向側に配置されている。また、入力側キャリア6には、開口部6aおよび凹部6bが設けられている。開口部6aには、キャリア接続部材7が挿入された状態で固定されている。
【0025】
また、入力側キャリア6は、入力側外歯歯車4の回転が伝達されることにより、外筒2に対して相対回転するように構成されている。入力側キャリア6は、入力側外歯歯車4の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されている。すなわち、本実施形態による歯車装置100は、偏心揺動型の歯車装置である。
【0026】
キャリア接続部材7は、筒状形状を有している。また、キャリア接続部材7は、出力側キャリア5および入力側キャリア6に接続されている。具体的には、キャリア接続部材7の出力側(X1方向側)の端部7aが、出力側キャリア5に接続されている。本実施形態では、キャリア接続部材7の出力側の端部7aは、出力側キャリア5の開口部5aに挿入された状態で出力側キャリア5に固定されている。キャリア接続部材7の出力側の端部7aは、出力側キャリア5の開口部5aに対してどのように固定されてもよい。本実施形態では、キャリア接続部材7は、キャリア接続部材7の出力側の端部7aが出力側キャリア5の開口部5aに圧入されることにより、出力側キャリア5に固定されている。
【0027】
また、キャリア接続部材7は、キャリア接続部材7の入力側(X2方向側)端部7bが、入力側キャリア6に接続されている。本実施形態では、キャリア接続部材7の入力側の端部7bは、入力側キャリア6の開口部6aに挿入された状態で入力側キャリア6に固定されている。キャリア接続部材7の入力側の端部7bは、入力側キャリア6の開口部6aに対してどのように固定されてもよい。本実施形態では、キャリア接続部材7は、キャリア接続部材7の入力側の端部7bが入力側キャリア6の開口部6aに圧入されることにより、入力側キャリア6に固定されている。
【0028】
また、キャリア接続部材7は、出力側キャリア5と入力側キャリア6との回転を同期させるように構成されている。本実施形態では、キャリア接続部材7は、出力側キャリア5の回転と、入力側キャリア6の回転とを同期させるように構成されている。したがって、キャリア接続部材7は、出力側キャリア5および入力側キャリア6の回転に伴って、軸線61回りに公転するように構成されている。すなわち、キャリア接続部材7は、出力側キャリア5および入力側キャリア6からのトルクを、出力トルク伝達部材8に対して伝達する。
【0029】
また、キャリア接続部材7は、出力トルク伝達部材8に対してトルクを伝達する接続部7cを有している。接続部7cは、キャリア接続部材7の内周面7dに設けられている。接続部7cは、キャリア接続部材7の内周面7dから、キャリア接続部材7の内側に向けて突出するように構成されている。
【0030】
接続部7cは、出力トルク伝達部材8の外周面8aと当接する第1接続部分7eと、軸方向から出力トルク伝達部材8の入力側(X2方向側)の端部8bに当接する第2接続部分7fとを有している。なお、第1接続部分7eは、軸方向からは出力トルク伝達部材8に接触しない。また、第2接続部分7fは、第1接続部分7eよりも突出量が多くなるように構成されている。
【0031】
出力トルク伝達部材8は、キャリア接続部材7に接続されている。具体的には、出力トルク伝達部材8は、出力トルク伝達部材8の入力側(X2方向側)の端部8bが、キャリア接続部材7に挿入されることにより、キャリア接続部材7に接続されている。本実施形態では、出力トルク伝達部材8は、半分以上、キャリア接続部材7に挿入されている。
【0032】
また、本実施形態では、出力トルク伝達部材8は、出力トルク伝達部材8の入力側(X2方向側)の端部8bが、接続部7cにおいてキャリア接続部材7と接触した状態で、キャリア接続部材7に接続されている。具体的には、出力トルク伝達部材8は、X2方向側の端部8bの外周面8aが、第1接続部分7eと接触している。また、出力トルク伝達部材8のX2方向側の端面8dが、第2接続部分7fと接触している。すなわち、出力トルク伝達部材8のX2方向側の端部8bは、接続部7cに嵌合している。なお、出力トルク伝達部材8のX2方向側の端面8dは、第2接続部分7fと接触していなくてもよい。
【0033】
また、出力トルク伝達部材8の入力側の端部8b以外の部分は、キャリア接続部材7と接触していない。すなわち、キャリア接続部材7のうちの、第1接続部分7eよりもX1方向側の部分は、第1接続部分7eよりも、内径が大きい。なお、第1接続部分7eの内径は、第1接続部分7eよりもX1方向側の部分の内径と、同一の大きさであってもよい。この場合、出力トルク伝達部材8のうちの、第1接続部分7eとの嵌合部よりもX1方向側の外径を小さくすればよい。
【0034】
また、本実施形態では、出力トルク伝達部材8は、キャリア接続部材7と一体的に、軸線61回りに公転するように構成されている。
【0035】
また、本実施形態では、出力トルク伝達部材8は、出力シャフト9と接続されている。具体的には、出力トルク伝達部材8の出力側(X1方向側)の端部8cが、出力シャフト9の後述する凹部9aに挿入された状態で固定されることにより、出力シャフト9に接続されている。出力トルク伝達部材8のX1方向側の端部8cが出力シャフト9の凹部9aに固定される手法は、問わない。本実施形態では、出力トルク伝達部材8のX1方向側の端部8cは、出力シャフト9の凹部9aに圧入されることにより、出力シャフト9に固定されている。
【0036】
また、出力トルク伝達部材8は、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクを伝達するように構成されている。本実施形態では、出力トルク伝達部材8は、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクを出力シャフト9に伝達するように構成されている。
【0037】
出力シャフト9は、外筒2と同軸上に設けられている。また、出力シャフト9は、軸線61周りに回転可能に設けられている。また、出力シャフト9は、外筒2に対して相対回転可能に構成されている。出力シャフト9は、凹部9aを有している。凹部9aには、出力トルク伝達部材8の出力側の端部8cが圧入されている。すなわち、出力シャフト9は、出力トルク伝達部材8を支持するように構成されている。また、出力シャフト9は、出力トルク伝達部材8からトルクが伝達されるように構成されている。また、出力シャフト9のX1方向側の端部9bは、X1方向に向けて、外筒2から突出している。
【0038】
入力シャフト10は、外筒2と同軸上に設けられている。また、入力シャフト10は、軸線61周りに回転可能に設けられている。また、入力シャフト10は、外筒2に対して相対回転可能に構成されている。入力シャフト10は、X2方向側から外筒2に挿入されている。入力シャフト10のX1方向側の端部10aには、入力歯車10bが設けられている。入力歯車10bは、伝達歯車1cと係合している。したがって、入力シャフト10を回転させると、入力シャフト10とともに、軸部材1が回転する。
【0039】
キャリアピン11は、外筒2の内周面2aに設けられている。キャリアピン11は、X方向において、伝達歯車1cと出力側キャリア5との間の位置に配置されている。また、キャリアピン11は、出力側外歯歯車3と係合している。出力側外歯歯車3が軸部材1によって回転され、出力側外歯歯車3がキャリアピン11に接触した際に、キャリアピン11から出力側外歯歯車3に対して反力が伝達される。
【0040】
また、キャリアピン11は、X方向において、入力側キャリア6と伝達歯車1cとの間の位置に配置されている。また、キャリアピン11は、入力側外歯歯車4と係合している。入力側外歯歯車4が軸部材1によって回転され、入力側外歯歯車4がキャリアピン11に接触した際に、キャリアピン11から入力側外歯歯車4に対して反力が伝達される。
【0041】
第1軸受12は、軸部材1を回転支持している。本実施形態では、第1軸受12は、出力側キャリア5の凹部5bに設けられている。本実施形態では、第1軸受12は、凹部5bにおいて、Y1方向およびY2方向の各々に設けられており、軸部材1の出力側の端部1dを支持している。
【0042】
また、本実施形態では、第1軸受12は、入力側キャリア6の凹部6bに設けられている。本実施形態では、第1軸受12は、凹部6bにおいて、Y1方向およびY2方向の各々に設けられており、軸部材1の入力側の端部1eを支持している。したがって、軸部材1は、外筒2に対して相対回転可能に構成されている。第1軸受12は、たとえば、コロ軸受である。本実施形態では、第1軸受12は、円錐ころ軸受である。
【0043】
第2軸受13は、軸部材1を回転支持している。本実施形態では、第2軸受13は、軸方向において、第1偏心部1aに対応する位置で、かつ、第1偏心部1aと出力側外歯歯車3との間の位置に設けられている。
図1に示す例では、第2軸受13は、第1偏心部1aと出力側外歯歯車3の内周面とに接触した状態で、軸部材1を回転支持している。また、第2軸受13は、軸方向において、第2偏心部1bに対応する位置で、かつ、第2偏心部1bと入力側外歯歯車4との間の位置に設けられている。
図1に示す例では、第2軸受13は、第2偏心部1bと入力側外歯歯車4の内周面とに接触した状態で、軸部材1を回転支持している。
【0044】
図1に示すように、本実施形態による歯車装置100は、入力シャフト10が軸線61回り回転する際のトルクが、入力歯車10bを介して伝達歯車1cに伝達される。伝達歯車1cに伝達されたトルクにより、伝達歯車1cとともに軸部材1が回転する。軸部材1が回転することにより、第1偏心部1aおよび第2偏心部1bを介して、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4が偏心揺動する。出力側外歯歯車3が偏心揺動することにより、キャリアピン11からの反力が出力側外歯歯車3に伝達される。キャリアピン11から反力が伝達された出力側外歯歯車3は、軸線61回りに回転する。出力側外歯歯車3が軸線61回りに回転すると、軸部材1も軸線61回りに回転する。この際、軸部材1の回転に伴って、出力側キャリア5も軸線61回りに回転する。出力側キャリア5が回転した際のトルクは、キャリア接続部材7および出力トルク伝達部材8を介して、出力シャフト9に伝達される。
【0045】
また、入力側外歯歯車4が偏心揺動することにより、キャリアピン11からの反力が入力側外歯歯車4に伝達される。キャリアピン11から反力が伝達された入力側外歯歯車4は、軸線61回りに回転する。入力側外歯歯車4が軸線61回りに回転すると、軸部材1も軸線61回りに回転する。この際、軸部材1の回転に伴って、入力側キャリア6も軸線61回りに回転する。入力側キャリア6が回転した際のトルクは、キャリア接続部材7および出力トルク伝達部材8を介して、出力シャフト9に伝達される。このようにして、入力シャフト10から入力されたトルクは、出力シャフト9に伝達される。
【0046】
なお、出力側外歯歯車3がキャリアピン11からの反力によって回転することにより生じるトルクは、出力側外歯歯車3から、出力側キャリア5および入力側キャリア6の両方に伝達される。また、入力側外歯歯車4がキャリアピン11からの反力によって回転することにより生じるトルクは、入力側外歯歯車4から、出力側キャリア5および入力側キャリア6の両方に伝達される。また、出力側外歯歯車3がどこかの位置(位相)でキャリアピン11と噛み合っているとき、入力側外歯歯車4がそれを打ち消す位置(位相)でキャリアピン11と噛み合っている。出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4の両者のトルクを合成すると、軸部材1を介して出力側キャリア5、および、入力側キャリア6に作用するトルクのうち、軸線61周りの回転方向以外の成分が小さくなる。トルクの伝達割合は、近い位置にある部材ほどおおきくなるので、出力側外歯歯車3から出力側キャリア5に伝達されるトルクの割合が、出力側外歯歯車3から入力側キャリア6に伝達されるトルクの割合より大きくなる。また、入力側外歯歯車4から入力側キャリア6に伝達されるトルクの割合が、入力側外歯歯車4から出力側キャリア5に伝達されるトルクの割合より大きくなる。
【0047】
図2に示すように、歯車装置100は、1つの入力シャフト10と、複数の軸部材1と、複数のキャリア接続部材7とを備える。本実施形態では、歯車装置100は、3つの軸部材1と、3つのキャリア接続部材7とを備えている。3つの軸部材1は、外筒2の周方向において略等間隔に配置されている。また、3つのキャリア接続部材7は、3つの軸部材1とは異なる位置において、外筒2の周方向において略等間隔に配置されている。なお、歯車装置100が備える軸部材1の個数、および、キャリア接続部材7の個数は、3つに限定されない。
【0048】
また、
図2に示すように、キャリアピン11は、外筒2の内周面2aにおいて、外筒2の周方向に所定の間隔で設けられている。なお、
図2に示すキャリアピン11の配置間隔および個数は、あくまで一例であり、
図2の例に限定されない。また、
図2に示す伝達歯車1cの歯の数は、あくまで一例であり、
図2に示す個数に限定されない。また、
図2に示す入力歯車10bの歯の数は、あくまで一例であり、
図2に示す個数に限定されない。
【0049】
図2に示すように、入力歯車10bは、3つの伝達歯車1cと係合している。したがって、入力歯車10bが回転することにより、3つの伝達歯車1cが連動して回転する。
【0050】
(出力側および入力側におけるトルクの伝達経路)
次に、
図3を参照して、出力側におけるトルクの伝達経路62、および、入力側におけるトルクの伝達経路63について説明する。なお、
図3に示す例では、出力側におけるトルクの伝達経路62を、太い実線で図示している。また、
図3に示す例では、入力側におけるトルクの伝達経路63を、太い破線で図示している。
【0051】
出力側におけるトルクの伝達経路62、および、入力側におけるトルクの伝達経路63は、入力シャフト10から出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4までのトルクの伝達経路が同一である。そのため、
図3に示す例では、出力側におけるトルクの伝達経路62、および、入力側におけるトルクの伝達経路63の各々を、キャリアピン11の位置を経路の開始点としている。
【0052】
図3に示すように、出力側におけるトルクの伝達経路62は、キャリアピン11を開始点とし、出力側外歯歯車3、出力側キャリア5、キャリア接続部材7、および、出力トルク伝達部材8を介して、出力シャフト9に到達する。
【0053】
一方、入力側におけるトルクの伝達経路63は、キャリアピン11を開始点とし、入力側外歯歯車4、入力側キャリア6、キャリア接続部材7、および、出力トルク伝達部材8を介して、出力シャフト9に到達する。
【0054】
図3に示すように、出力側におけるトルクの伝達経路62、および、入力側におけるトルクの伝達経路63の各々は、キャリア接続部材7と出力トルク伝達部材8との接続位置から、同一の経路となる。すなわち、接続部7cから出力シャフト9までのトルクの伝達経路は、出力側におけるトルクの伝達経路62、および、入力側におけるトルクの伝達経路63で同一である。そこで、本願発明者らは、キャリア接続部材7と出力トルク伝達部材8との接続部7cの位置を調整することにより、出力側におけるトルクの伝達経路62と、入力側におけるトルクの伝達経路63との長さを調整できることを発見した。
【0055】
(接続位置の調整)
図4~
図8を参照して、キャリア接続部材7(
図4参照)と出力トルク伝達部材8(
図4参照)との接続位置を調整する構成について説明する。本実施形態では、出力側キャリア5(
図4参照)および入力側キャリア6(
図4参照)にかかる荷重配分を確認しながら、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、キャリア接続部材7と出力トルク伝達部材8との接続位置の調整が行われる。
【0056】
(3次元モデル)
本実施形態では、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分の確認は、
図4に示す3次元モデル30を用いた応力解析によって行われる。3次元モデル30は、歯車装置100(
図1参照)をモデル化することにより生成される。なお、出力側外歯歯車3(
図1参照)にかかる荷重は、出力側キャリア5にかかる荷重と、略同一の荷重である。また、入力側外歯歯車4(
図1参照)にかかる荷重は、入力側キャリア6にかかる荷重を略同一である。
【0057】
そこで、本実施形態では、
図4に示すように、3次元モデル30は、少なくとも、出力側キャリア5と、入力側キャリア6と、キャリア接続部材7と、出力トルク伝達部材8と、出力シャフト9と、をモデル化することにより生成される。なお、
図4に示す例では、便宜的に、出力側キャリア5、入力側キャリア6、および、出力シャフト9の一部を切断した状態で図示している。
【0058】
また、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重の確認は、3次元モデル30における出力側キャリア5および入力側キャリア6を固定した状態で行われる。具体的には、3次元モデル30における出力側キャリア5および入力側キャリア6を固定した状態(拘束条件)で、出力シャフト9にトルクを伝達する。この際の、出力シャフト9に伝達されたトルクに対するキャリア接続部材7と出力側キャリア5との接続箇所21(第1接続箇所21a)の反力を確認(計算)する。出力側キャリア5の固定は、3次元モデル30における凹部5bを拘束することにより行われる。
【0059】
また、3次元モデル30における出力側キャリア5および入力側キャリア6を固定した状態で、出力シャフト9にトルクを伝達した際の、出力シャフト9に伝達されたトルクに対するキャリア接続部材7と入力側キャリア6との接続箇所21(第2接続箇所21b)の反力を確認する。入力側キャリア6の固定は、3次元モデル30における凹部6bを拘束することにより行われる。
【0060】
(荷重配分の調整)
次に、
図6を参照して、出力側キャリア5および入力側キャリア6(
図1参照)にかかる荷重配分を調整する構成について説明する。
【0061】
本実施形態では、荷重配分の調整は、軸方向(X方向)における出力トルク伝達部材8に対する接続部7cの接続位置を調整することにより行われる。具体的には、接続部7cに対する出力トルク伝達部材8のかかり代20の長さ20aを調整することにより接続位置の調整が行われる。また、本実施形態では、かかり代20の長さ20aとともに、出力シャフト9の凹部9aの入力側(X2方向側)の端面9cから、接続部7cまでの距離20bを調整することにより、接続位置を調整する。すなわち、軸方向(X方向)における出力トルク伝達部材8に対する接続部7cの接続位置とは、かかり代20の長さ20aと、接続部7cまでの距離20bとに基づいて決定される位置である。
【0062】
(荷重配分の解析結果)
次に、
図7を参照して、かかり代20(
図6参照)の長さ20a(
図6参照)、および、出力シャフト9(
図6参照)の凹部9a(
図6参照)の入力側(X2方向側)の端面9c(
図6参照)から接続部7c(
図6参照)までの長さ20b(
図6参照)を調整した際の、出力側キャリア5(
図1参照)および入力側キャリア6(
図1参照)にかかる荷重配分について説明する。
【0063】
図7に示す荷重配分の解析結果40における第1寸法は、凹部9aの入力側(X2方向側)の端面9cから接続部7cまでの距離20b(
図6参照)である。また、解析結果40における第2寸法は、かかり代20の長さ20aである。また、第1寸法および第2寸法の単位は、mm(ミリメートル)である。
【0064】
また、解析結果40における入力側荷重および出力側荷重の単位は、N(ニュートン)である。また、解析結果40における割合は、入力側荷重に対する出力側荷重の比(出力側荷重/入力側荷重)である。なお、解析結果40に示す割合が1よりも大きい場合、出力側キャリア5にかかる荷重の割合が、入力側キャリア6にかかる荷重よりも大きい状態であることを意味している。また、解析結果40に示す割合が1よりも小さい場合、入力側キャリア6にかかる荷重が、出力側キャリア5にかかる荷重よりも大きい状態であることを意味している。また、解析結果40に示す割合が1の場合、出力側キャリア5にかかる荷重と、入力側キャリア6にかかる荷重とが、等しい状態であることを意味している。
【0065】
図7に示すNo.1~No.6のように、第1寸法と第2寸法とを調整し、3次元モデル30(
図4参照)による応力解析を行った。No.1~No.3では、第1寸法を48.8mmとした。また、No.4~No.6では、第1寸法を71.2mmとした。また、No.1およびNo.4では、第2寸法を5.0mmとした。また、No.2およびNo.5では、第2寸法を、10.0mmとした。また、No.3およびNo.6では、第2寸法を、15.0mmとして、解析結果40に示すように、第1寸法および第2寸法を調整することにより、出力側の荷重と、入力側の荷重との配分を調整することが可能であることが確認できた。また、第1寸法および第2寸法のいずれかを変更した場合でも、出力側の荷重と、入力側の荷重との配分を調整することが可能であることが確認できた。
【0066】
(荷重配分の調整処理)
次に、
図8を参照して、本実施形態による歯車装置100(
図1参照)の荷重配分を調整する処理について説明する。
【0067】
ステップ101において、3次元モデル30(
図4参照)を生成する。本実施形態では、ステップ101において、少なくとも、出力側キャリア5(
図4参照)と、入力側キャリア6(
図4参照)と、キャリア接続部材7(
図4参照)と、出力トルク伝達部材8(
図4参照)と、出力シャフト9(
図4参照)と、をモデル化することにより、3次元モデル30を生成する。
【0068】
ステップ102において、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を確認する。具体的には、ステップ102において、3次元モデル30に基づいて、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる応力を解析することにより、荷重配分を確認する。より具体的には、3次元モデル30における出力側キャリア5および入力側キャリア6を固定した状態で、出力シャフト9にトルクを伝達した際の、出力シャフト9に伝達されたトルクに対するキャリア接続部材7と出力側キャリア5との第1接続箇所21a(
図4参照)の反力、および、出力シャフト9に伝達されたトルクに対するキャリア接続部材7と入力側キャリア6との第2接続箇所21b(
図4参照)の反力を確認することにより、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を確認する。
【0069】
ステップ103において、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が、所定の配分になっているか否かを確認する。出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分になっている場合、処理は、終了する。出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分になっていない場合、処理は、ステップ104へ進む。
【0070】
ステップ104において、荷重配分を確認しながら、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、キャリア接続部材7(
図6参照)に対する、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材8(
図6参照)の接続位置を調整する。具体的には、軸方向における出力トルク伝達部材8に対する接続部7c(
図6参照)の接続位置を調整する。より具体的には、接続部7cに対する出力トルク伝達部材8のかかり代20(
図6参照)の長さ20a(
図6参照)を調整する。なお、本実施形態では、ステップ104において、出力シャフト9(
図6参照)の凹部9a(
図6参照)の入力側(X2方向側)の端面9c(
図6参照)から、接続部7cまでの距離20b(
図6参照)の調整も行われる。また、ステップ104において、軸方向(X方向)における接続部7cの位置が、出力側キャリア5と、入力側キャリア6との間の位置となるように、接続部7cの位置を調整する。その後、処理は、ステップ102へ進む。
【0071】
本実施形態では、ステップ102~ステップ104の処理を繰り返すことにより、出力側キャリア5および入力側キャリア6の荷重配分が、所定の配分となるように、かかり代20の長さ20aおよび出力シャフト9の凹部9aのX2方向側の端面9cから接続部7cまでの距離20bを調整する。したがって、本実施形態における歯車装置100は、キャリア接続部材7と出力トルク伝達部材8との接続位置は、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、軸方向の位置が調整されている。
【0072】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
上記実施形態では、歯車装置100の荷重配分調整方法は、歯車装置100の荷重配分を調整する方法であって、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を確認する工程と、荷重配分を確認しながら、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、出力側キャリア5および入力側キャリア6の回転を同期させるキャリア接続部材7に対する、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材8の接続位置を調整する工程と、を備える。
【0074】
ここで、上記実施形態による歯車装置100は、出力側キャリア5と入力側キャリア6とが、キャリア接続部材7によって接続されている。また、キャリア接続部材7に対して、出力側キャリア5および入力側キャリア6からのトルクが伝達される。そして、キャリア接続部材7と接続された出力トルク伝達部材8を介して出力シャフト9からトルクが出力される。したがって、上記実施形態における歯車装置100の荷重配分調整方法では、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材8の接続位置を調整する。これにより、出力側キャリア5からのトルクの伝達経路62と、入力側キャリア6からのトルクの伝達経路63とを調整することができる。その結果、接続位置を調整することにより、出力側キャリア5と入力側キャリア6とにおける荷重の配分を調整することができる。
【0075】
また、上記実施形態による歯車装置100は、軸回りに回転可能に設けられた軸部材1と、内周面2aに内歯車が設けられた外筒2と、軸部材1に取り付けられ、内歯車に噛み合いながら回転する出力側外歯歯車3と、軸部材1に取り付けられ、内歯車に噛み合いながら回転する入力側外歯歯車4と、外筒2と同軸上に設けられ、出力側外歯歯車3の回転が伝達されることにより、外筒2に対して相対回転する出力側キャリア5と、外筒2と同軸上に設けられ、入力側外歯歯車4の回転が伝達されることにより、外筒2に対して相対回転する入力側キャリア6と、出力側キャリア5および入力側キャリア6に接続され、出力側キャリア5と入力側キャリア6との回転を同期させるキャリア接続部材7と、キャリア接続部材7に接続され、出力側キャリア5および入力側キャリア6の各々からトルクを伝達する出力トルク伝達部材8と、出力トルク伝達部材8を支持し、出力トルク伝達部材8からトルクが伝達される出力シャフト9とを備え、キャリア接続部材7と出力トルク伝達部材8との接続位置は、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分が所定の配分となるように、軸方向の位置が調整されている。
【0076】
これにより、上記歯車装置100の荷重配分調整方法と同様に、接続位置を調整することにより、出力側キャリア5と入力側キャリア6とにおける荷重の配分を調整することが可能な歯車装置100を提供することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0078】
すなわち、本実施形態では、上記のように、キャリア接続部材7は、出力トルク伝達部材8に対してトルクを伝達する接続部7cを有しており、キャリア接続部材7に対する出力トルク伝達部材8の接続位置を調整する工程において、軸方向(X方向)における出力トルク伝達部材8に対する接続部7cの接続位置を調整する。これにより、接続部7cの位置を調整することにより、軸方向(X方向)における出力トルク伝達部材8の接続位置を容易に調整することができる。その結果、出力側キャリア5にかかる荷重と、入力側キャリア6にかかる荷重との配分を、容易に調整することができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、キャリア接続部材7は、筒状形状を有しており、接続部7cは、キャリア接続部材7の内周面7dに設けられており、キャリア接続部材7に対する出力トルク伝達部材8の接続位置を調整する工程において、接続部7cに対する出力トルク伝達部材8のかかり代20の長さ20aを調整する。これにより、接続部7cの位置とともに、かかり代20の長さ20aを調整することによって、キャリア接続部材7に対する出力トルク伝達部材8の設置面積を調整することができる。その結果、キャリア接続部材7から出力トルク伝達部材8に対するトルクの伝達点の位置の微調整を行うことが可能となるので、出力側キャリア5にかかる荷重と、入力側キャリア6にかかる荷重との配分の微調整を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、キャリア接続部材7に対する出力トルク伝達部材8の接続位置を調整する工程において、軸方向における接続部7cの位置が、出力側キャリア5と、入力側キャリア6との間の位置となるように、接続部7cの位置を調整する。これにより、出力側キャリア5から接続部7cまでの間の距離と、入力側キャリア6から接続部7cまでの間の距離とに大きな差が生じることを抑制することができる。その結果、出力側キャリア5におけるトルクの伝達経路62と、入力側キャリア6におけるトルクの伝達経路63との差が大きくなることを抑制することが可能となるので、荷重配分がどちらか一方のキャリアに偏ることを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、少なくとも、出力側キャリア5と、入力側キャリア6と、キャリア接続部材7と、出力トルク伝達部材8と、出力トルク伝達部材8を支持し、出力トルク伝達部材8からのトルクが伝達される出力シャフト9と、をモデル化した3次元モデル30を生成する工程をさらに備え、荷重配分を確認する工程において、3次元モデル30に基づいて、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる応力を解析することにより、荷重配分を確認する。これにより、3次元モデル30に基づいて解析を行うので、接続部7cの位置を様々な位置に変更しながら、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる応力を解析することができる。その結果、キャリア接続部材7および出力トルク伝達部材8の実物を用いて解析を行う構成と比較して、接続部7cの位置を様々な位置に変更した場合の解析結果を容易に取得することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、荷重配分を確認する工程において、3次元モデル30における出力側キャリア5および入力側キャリア6を固定した状態で、出力シャフト9にトルクを伝達した際の、出力シャフト9に伝達されたトルクに対するキャリア接続部材7と出力側キャリア5との接続箇所21(第1接続箇所21a)の反力、および、出力シャフト9に伝達されたトルクに対するキャリア接続部材7と入力側キャリア6との接続箇所21(第2接続箇所21b)の反力を確認することにより、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を確認する。ここで、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4にかかる荷重配分は、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分と略等しい。したがって、上記のように構成することにより、入力シャフト10、軸部材1、出力側外歯歯車3、および、入力側外歯歯車4のモデルを作成することなく、出力側キャリア5および入力側キャリア6の荷重配分を解析することができる。その結果、3次元モデル30を生成する際のユーザの負担を軽減することができる。また、3次元モデル30に入力シャフト10、軸部材1、出力側外歯歯車3、および、入力側外歯歯車4が含まれていないので、3次元モデル30のデータ容量が増加することを抑制することができる。その結果、3次元モデル30を用いて解析を行う際の、解析処理の負荷が増加することを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、キャリア接続部材7は、出力トルク伝達部材8に対してトルクを伝達する接続部7cを有しており、軸方向における出力トルク伝達部材8に対する接続部7cの接続位置が調整されることにより、軸方向における接続位置が調整されている。これにより、出力側キャリア5にかかる荷重と、入力側キャリア6にかかる荷重との配分を、容易に調整することが可能な歯車装置100を提供することができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、キャリア接続部材7は、筒状形状を有しており、接続部7cは、キャリア接続部材7の内周面7dに設けられており、接続部7cに対する出力トルク伝達部材8のかかり代20の長さ20aが調整されることにより、軸方向における接続位置が調整されている。接続部7cの位置を調整することにより、軸方向(X方向)における出力トルク伝達部材8の接続位置を容易に調整することができる。その結果、キャリア接続部材7から出力トルク伝達部材8に対するトルクの伝達点の位置の微調整を行うことが可能となるので、出力側キャリア5にかかる荷重と、入力側キャリア6にかかる荷重との配分の微調整を行うことが可能な歯車装置100を提供することができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、軸部材1は、軸方向に並ぶように配設された第1偏心部1aと第2偏心部1bとを有し、出力側外歯歯車3は、第1偏心部1aに取り付けられ、第1偏心部1aの偏心回転に連動して揺動回転するように構成されており、入力側外歯歯車4は、第2偏心部1bに取り付けられ、第2偏心部1bの偏心回転に連動して揺動回転するように構成されており、出力側キャリア5は、出力側外歯歯車3の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されており、入力側キャリア6は、入力側外歯歯車4の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されており、キャリア接続部材7は、出力側キャリア5の回転と、入力側キャリア6の回転とを同期させるように構成されている。これにより、偏心揺動型の歯車装置100において、出力側キャリア5および入力側キャリア6の荷重配分を容易に調整することができる。
【0086】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0087】
たとえば、上記実施形態では、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を、3次元モデル30を用いて応力解析することにより確認する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図9に示す変形例による歯車装置110のように、出力側外歯歯車3にひずみセンサ50を設けることにより、出力側外歯歯車3にかかる荷重を取得するように構成されていてもよい。なお、入力側外歯歯車4においても、
図9に示す出力側外歯歯車3と同様に、ひずみセンサ50が設けられており、入力側外歯歯車4にかかる荷重を取得する。
【0088】
ひずみセンサ50は、第1ひずみセンサ50aと、第2ひずみセンサ50bと、第3ひずみセンサ50cとを有する。ひずみセンサ50は、いわゆる、3軸のひずみセンサである。第1ひずみセンサ50aは、軸部材1が延びる方向(X方向)と直交する面内において、互い直交する2方向のうちの、一方側の方向における出力側外歯歯車3のひずみを検知する。また、第2ひずみセンサ50bは、軸部材1が延びる方向(X方向)と直交する面内において、互い直交する2方向のうちの、他方側の方向における出力側外歯歯車3のひずみを検知する。また、第3ひずみセンサ50cは、軸部材1が延びる方向(X方向)における出力側外歯歯車3のひずみを検知する。
【0089】
次に、
図10を参照して、変形例による歯車装置110(
図9参照)において、荷重配分を調整する処理について説明する。なお、上記実施形態による荷重配分を調整する処理と同様の処理については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0090】
ステップ200において、出力側外歯歯車3(
図9参照)に設けられたひずみセンサ50(
図9参照)の出力値に基づいて、出力側外歯歯車3にかかる荷重である出力側荷重を取得する。また、入力側外歯歯車4(
図1参照)に設けられたひずみセンサ50の出力値に基づいて、入力側外歯歯車4にかかる荷重である入力側荷重を取得する。
【0091】
ステップ201において、ステップ200において取得した出力側荷重および入力側荷重を比較することにより、荷重配分を確認する。
【0092】
その後、処理は、ステップ103へ進み、処理が終了するか、ステップ103からステップ104へ処理が進む。
【0093】
変形例では、上記のように、歯車装置110は、軸回りに回転可能に設けられた軸部材1と、軸部材1に取り付けられ、軸部材1の回転に連動して回転する出力側外歯歯車3と、軸部材1に取り付けられ、軸部材1の回転に連動して回転する入力側外歯歯車4とを有しており、荷重配分を確認する工程において、出力側外歯歯車3に設けられたひずみセンサ50の出力値に基づいて、出力側外歯歯車3にかかる荷重である出力側荷重を取得するとともに、入力側外歯歯車4に設けられたひずみセンサ50の出力値に基づいて、入力側外歯歯車4にかかる荷重である入力側荷重を取得して、出力側荷重および入力側荷重を比較することにより、荷重配分を確認する。これにより、出力側外歯歯車3に設けられたひずみセンサ50の出力値、および、入力側外歯歯車4に設けられたひずみセンサ50の出力値を取得することにより、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4の荷重配分を容易に確認することができる。その結果、たとえば、3次元モデル30を生成することなく、歯車装置110における荷重配分を容易に確認することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、出力トルク伝達部材8が、接続部7cにおいてキャリア接続部材7に接続し、接続部7cの位置を調整することにより、出力側キャリア5および入力側キャリア6の荷重配分を調整する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、出力トルク伝達部材8の外周面8aが、キャリア接続部材7の内周面7dと面接触することによりキャリア接続部材7と出力トルク伝達部材8とが接続されるように構成されていてもよい。この場合、出力トルク伝達部材8がキャリア接続部材7に挿通される長さを調整することにより、出力側キャリア5および入力側キャリア6の荷重配分を調整すればよい。
【0095】
また、上記実施形態では、接続位置を調整する際に、かかり代20の長さ20aを調整する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、かかり代20の長さ20aを調整することなく、X方向における接続部7cの位置を調整してもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、接続位置を調整する際に、かかり代20の長さ20aおよび、出力シャフト9の凹部9aの入力側(X2方向側)の端面9cから、接続部7cまでの距離20bの両方を調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、かかり代20の長さ20a、および、出力シャフト9の凹部9aの入力側(X2方向側)の端面9cから、接続部7cまでの距離20bのいずれか一方のみが調整されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、少なくとも、出力側キャリア5と、入力側キャリア6と、キャリア接続部材7と、出力トルク伝達部材8と、出力シャフト9と、をモデル化した3次元モデル30を用いて、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重配分を確認する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、3次元モデルとして、歯車装置100の全体をモデル化し、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4にかかる荷重を確認してもよい。また、出力側外歯歯車3と、入力側外歯歯車4と、出力側キャリア5と、入力側キャリア6と、キャリア接続部材7と、出力トルク伝達部材8と、出力シャフト9と、をモデル化し、出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4にかかる荷重を確認してもよい。出力側外歯歯車3および入力側外歯歯車4、または、出力側キャリア5および入力側キャリア6にかかる荷重を確認することが可能であれば、どのような3次元モデル30を生成してもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、軸方向(X方向)における接続部7cの位置が、出力側キャリア5と、入力側キャリア6との間の位置となるように、接続部7cの位置を調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。接続部7cの位置が、出力側キャリア5と、入力側キャリア6との間の位置以外の位置となるように、接続部7cの位置が調整されてもよい。しかしながら、接続部7cの位置が、出力側キャリア5と、入力側キャリア6との間の位置以外の位置となるように、接続部7cの位置を調整した場合、出力側キャリア5および入力側キャリア6のどちらか一方の荷重配分が大きくなる。したがって、接続部7cの位置が、出力側キャリア5と、入力側キャリア6との間の位置以外の位置となるように、接続部7cの位置が調整されることが好ましい。
【0099】
また、上記実施形態では、軸部材1が、第1偏心部1aおよび第2偏心部1bを有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。軸部材1は、第1偏心部1aおよび第2偏心部1bを有していなくてもよい。すなわち、歯車装置100は、偏心揺動型の歯車装置でなくてもよい。たとえば、歯車装置100は、遊星歯車装置であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、歯車装置100が、減速機である構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。歯車装置100は、出力シャフト9が回転することにより生じたトルクを、入力シャフト10に伝達する、いわゆる、増速機であってもよい。
【0101】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0102】
(項目1)
歯車装置の荷重配分を調整する方法であって、
出力側キャリアおよび入力側キャリアにかかる前記荷重配分を確認する工程と、
前記荷重配分を確認しながら、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる前記荷重配分が所定の配分となるように、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアの回転を同期させるキャリア接続部材に対する、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアの各々からトルクが伝達される出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程と、を備える、歯車装置の荷重配分調整方法。
【0103】
(項目2)
前記キャリア接続部材は、前記出力トルク伝達部材に対してトルクを伝達する接続部を有しており、
前記キャリア接続部材に対する前記出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程において、軸方向における前記出力トルク伝達部材に対する前記接続部の接続位置を調整する、項目1に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【0104】
(項目3)
前記キャリア接続部材は、筒状形状を有しており、
前記接続部は、前記キャリア接続部材の内周面に設けられており、
前記キャリア接続部材に対する前記出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程において、前記接続部に対する前記出力トルク伝達部材のかかり代の長さを調整する、項目2に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【0105】
(項目4)
前記キャリア接続部材に対する前記出力トルク伝達部材の接続位置を調整する工程において、軸方向における前記接続部の位置が、前記出力側キャリアと、前記入力側キャリアとの間の位置となるように、前記接続部の位置を調整する、項目2または3に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【0106】
(項目5)
少なくとも、前記出力側キャリアと、前記入力側キャリアと、前記キャリア接続部材と、前記出力トルク伝達部材と、前記出力トルク伝達部材を支持し、前記出力トルク伝達部材からのトルクが伝達される出力シャフトと、をモデル化した3次元モデルを生成する工程をさらに備え、
前記荷重配分を確認する工程において、前記3次元モデルに基づいて、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる応力を解析することにより、前記荷重配分を確認する、項目1~4のいずれか1項に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【0107】
(項目6)
前記荷重配分を確認する工程において、前記3次元モデルにおける前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアを固定した状態で、前記出力シャフトにトルクを伝達した際の、前記出力シャフトに伝達されたトルクに対する前記キャリア接続部材と前記出力側キャリアとの接続箇所の反力、および、前記出力シャフトに伝達されたトルクに対する前記キャリア接続部材と前記入力側キャリアとの接続箇所の反力を確認することにより、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる前記荷重配分を確認する、項目5に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【0108】
(項目7)
前記歯車装置は、軸回りに回転可能に設けられた軸部材と、前記軸部材に取り付けられ、前記軸部材の回転に連動して回転する出力側外歯歯車と、前記軸部材に取り付けられ、前記軸部材の回転に連動して回転する入力側外歯歯車とを有しており、
前記荷重配分を確認する工程において、前記出力側外歯歯車に設けられたひずみセンサの出力値に基づいて、前記出力側外歯歯車にかかる荷重である出力側荷重を取得するとともに、前記入力側外歯歯車に設けられたひずみセンサの出力値に基づいて、前記入力側外歯歯車にかかる荷重である入力側荷重を取得して、前記出力側荷重および前記入力側荷重を比較することにより、前記荷重配分を確認する、項目1~4のいずれか1項に記載の歯車装置の荷重配分調整方法。
【0109】
(項目8)
軸回りに回転可能に設けられた軸部材と、
内周面に内歯車が設けられた外筒と、
前記軸部材に取り付けられ、前記内歯車に噛み合いながら回転する出力側外歯歯車と、
前記軸部材に取り付けられ、前記内歯車に噛み合いながら回転する入力側外歯歯車と、
前記外筒と同軸上に設けられ、前記出力側外歯歯車の回転が伝達されることにより、前記外筒に対して相対回転する出力側キャリアと、
前記外筒と同軸上に設けられ、前記入力側外歯歯車の回転が伝達されることにより、前記外筒に対して相対回転する入力側キャリアと、
前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアに接続され、前記出力側キャリアと前記入力側キャリアとの回転を同期させるキャリア接続部材と、
前記キャリア接続部材に接続され、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアの各々からトルクを伝達する出力トルク伝達部材と、
前記出力トルク伝達部材を支持し、前記出力トルク伝達部材からトルクが伝達される出力シャフトとを備え、
前記キャリア接続部材と前記出力トルク伝達部材との接続位置は、前記出力側キャリアおよび前記入力側キャリアにかかる荷重配分が所定の配分となるように、軸方向の位置が調整されている、歯車装置。
【0110】
(項目9)
前記キャリア接続部材は、前記出力トルク伝達部材に対してトルクを伝達する接続部を有しており、
軸方向における前記出力トルク伝達部材に対する前記接続部の接続位置が調整されることにより、軸方向における接続位置が調整されている、項目8に記載の歯車装置。
【0111】
(項目10)
前記キャリア接続部材は、筒状形状を有しており、
前記接続部は、前記キャリア接続部材の内周面に設けられており、
前記接続部に対する前記出力トルク伝達部材のかかり代の長さが調整されることにより、軸方向における接続位置が調整されている、項目9に記載の歯車装置。
【0112】
(項目11)
前記軸部材は、軸方向に並ぶように配設された第1偏心部と第2偏心部とを有し、
前記出力側外歯歯車は、前記第1偏心部に取り付けられ、前記第1偏心部の偏心回転に連動して揺動回転するように構成されており、
前記入力側外歯歯車は、前記第2偏心部に取り付けられ、前記第2偏心部の偏心回転に連動して揺動回転するように構成されており、
前記出力側キャリアは、前記出力側外歯歯車の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されており、
前記入力側キャリアは、前記入力側外歯歯車の揺動回転が伝達されることにより、回転するように構成されており、
前記キャリア接続部材は、前記出力側キャリアの回転と、前記入力側キャリアの回転とを同期させるように構成されている、項目8~10のいずれか1項に記載の歯車装置。
【符号の説明】
【0113】
1 軸部材
1a 第1偏心部
1b 第2偏心部
2 外筒
2a 内周面(外筒の内周面)
3 出力側外歯歯車
4 入力側外歯歯車
5 出力側キャリア
6 入力側キャリア
7 キャリア接続部材
7c 接続部(出力トルク伝達部材に対してトルクを伝達する接続部)
7d 内周面(キャリア接続部材の内周面)
8 出力トルク伝達部材
9 出力シャフト
20 かかり代(接続部に対する出力トルク伝達部材のかかり代)
20a かかり代の長さ
21 接続箇所(キャリア接続部材と出力側キャリアとの接続箇所)
30 3次元モデル
50 ひずみセンサ
100、110 歯車装置