(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023011
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】フィルタ装置およびそれを備えた高周波フロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
H03H 7/09 20060101AFI20240214BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20240214BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240214BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H04B1/38
H01F17/00 D
H01F27/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126529
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾形 誠
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
5K011
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070CB13
5J024AA01
5J024BA11
5J024CA04
5J024CA06
5J024DA04
5J024DA25
5J024DA33
5J024EA03
5J024KA01
5K011DA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部シールド電極の影響を抑制してフィルタ特性を向上させる共振器を有するフィルタ装置及びフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置100は、積層体、入力端子T1、出力端子T2、接地端子GND、共通電極PC、接地電極PG1、第1の共振器、第2の共振器、シールド電極PG2及び接地ビアVG1、VG2を備える。第1の共振器は、第1ビアVL1A、VL1B及び平板電極P1を含む。第1ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端が入力端子に接続されている。平板電極は、第1ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なっている。第2の共振器は、第2ビアVL2A、VL2B及び平板電極P2を含む。第2ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端が出力端子に接続されている。平板電極P2は、第2ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および第2面を有し、複数の誘電体層が積層された積層体と、
前記積層体の前記第2面に配置された入力端子、出力端子、および接地端子と、
前記積層体の前記第1面側に配置された共通電極と、
前記接地端子に接続された接地電極と、
前記共通電極と前記接地電極との間の層に配置された第1共振器および第2共振器と、
前記共通電極よりも前記第1面側に配置され、前記積層体の積層方向から平面視した場合に前記共通電極の全体と重なるシールド電極と、
前記共通電極を介して、前記シールド電極と前記接地電極とを接続する第1接地ビアと、
前記共通電極を介さずに、前記シールド電極と前記接地電極とを直接接続する第2接地ビアとを備え、
前記第1共振器は、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記入力端子に接続された第1ビアと、
前記第1ビアに接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第1平板電極とを含み、
前記第2共振器は、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記出力端子に接続された第2ビアと、
前記第2ビアに接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第2平板電極とを含む、フィルタ装置。
【請求項2】
前記共通電極から前記シールド電極および前記第2接地ビアを経由して前記接地電極に至る経路長は、前記共通電極から前記第1接地ビアを経由して前記接地電極に至る経路長よりも長い、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記共通電極から前記シールド電極および前記第2接地ビアを経由して前記接地電極に至る経路のインダクタンス値は、前記共通電極から前記第1接地ビアを経由して前記接地電極に至る経路のインダクタンス値よりも大きい、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記第1共振器と前記第2共振器との間に配置された第3共振器をさらに備え、
前記第3共振器は、
前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第3平板電極と、
前記共通電極と前記第3平板電極との間に配置された第3ビアとを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記第2共振器と前記第3共振器との間に配置された第4共振器をさらに備え、
前記第4共振器は、
前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第4平板電極と、
前記共通電極と前記第4平板電極との間に配置された第4ビアとを含む、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記第1平板電極に接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記第3平板電極と少なくとも一部が重なる第5平板電極と、
前記第2平板電極に接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記第4平板電極と少なくとも一部が重なる第6平板電極と、
前記積層方向から平面視した場合に、前記第5平板電極および前記第6平板電極と少なくとも一部が重なる第7平板電極とをさらに備える、請求項5に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
第1面および第2面を有し、複数の誘電体層が積層された積層体と、
前記積層体の前記第2面に配置された入出力端子および接地端子と、
前記積層体の前記第1面側に配置された第1電極と、
前記接地端子に接続された接地電極と、
前記第1電極と前記接地電極との間の層に配置された共振器と、
前記第1電極よりも前記第1面側に配置され、前記積層体の積層方向から平面視した場合に前記第1電極と重なるシールド電極と、
前記第1電極を介して、前記シールド電極と前記接地電極とを接続する第5接地ビアと、
前記第1電極を介さずに、前記シールド電極と前記接地電極とを直接接続する第6接地ビアとを備え、
前記共振器は、
一方端が前記第1電極に接続され、他方端が前記入出力端子に接続された第5ビアと、
前記第5ビアに接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第2電極とを含む、フィルタ装置。
【請求項8】
第1面および第2面を有し、複数の誘電体層が積層された積層体と、
前記積層体の前記第2面に配置された入力端子、出力端子、および接地端子と、
前記積層体の前記第1面側に配置された共通電極と、
前記接地端子に接続された接地電極と、
前記共通電極と前記接地電極との間の層に配置された第1共振器および第2共振器と、
前記共通電極よりも前記第1面側に配置された、第1シールド電極および第2シールド電極と、
前記共通電極を介して、前記第1シールド電極と前記接地電極とを接続する第1接地ビアと、
前記共通電極を介さずに、前記第1シールド電極と前記接地電極とを直接接続する第2接地ビアと、
前記共通電極を介して、前記第2シールド電極と前記接地電極とを接続する第3接地ビアと、
前記共通電極を介さずに、前記第2シールド電極と前記接地電極とを直接接続する第4接地ビアとを備え、
前記積層体の積層方向から平面視した場合に、前記第1シールド電極および前記第2シールド電極によって、前記共通電極のほぼ全体が覆われており、
前記第1共振器は、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記入力端子に接続された第1ビアと、
前記第1ビアに接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第1平板電極とを含み、
前記第2共振器は、
一方端が前記共通電極に接続され、他方端が前記出力端子に接続された第2ビアと、
前記第2ビアに接続され、前記積層方向から平面視した場合に前記接地電極と少なくとも一部が重なる第2平板電極とを含む、フィルタ装置。
【請求項9】
前記フィルタ装置は、バンドパスフィルタである、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
請求項1に記載のフィルタ装置を備えた、高周波フロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置およびそれを備えた高周波フロントエンド回路に関し、より特定的には、フィルタ装置の特性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2022/019112号明細書(特許文献1)においては、本体の上面側に配置された共通電極に複数の共振器が接続されたフィルタ装置において、当該共通電極よりもさらに上面側に、接地電極に接続された内部シールド電極が配置された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/019112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2022/019112号明細書(特許文献1)に開示されたフィルタ装置においては、内部シールド電極によって、フィルタ装置外部に存在する外部機器のシールド電極(外部シールド電極)と、フィルタ装置の共通電極との結合が抑制される。これにより、外部シールド電極に起因するフィルタ特性の変動が抑制できる。
【0005】
一方で、国際公開第2022/019112号明細書(特許文献1)に開示されたフィルタ装置においては、内部シールド電極と接地電極とを接続するビアが、各共振器における接地ビアと共用されているため、内部シールド電極を介して共振器同士が結合し得る。そのため、国際公開第2022/019112号明細書(特許文献1)のような内部シールド電極を用いた場合でも、外部シールド電極が共振器間の結合に少なからず影響し得る。フィルタ特性のさらなる向上を実現するためには、このような外部シールド電極による影響を可能な限り排除することが必要となる。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、共振器を有するフィルタ装置において、外部シールド電極の影響を抑制してフィルタ特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、積層体の第1面側に配置された共通電極と、接地端子に接続された接地電極と、第1共振器および第2共振器と、シールド電極と、第1接地ビアおよび第2接地ビアとを備える。入力端子、出力端子、および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。第1共振器および第2共振器は、共通電極と接地電極との間の層に配置されている。シールド電極は、共通電極よりも第1面側に配置され、積層体の積層方向から平面視した場合に共通電極の全体と重なっている。第1接地ビアは、共通電極を介して、シールド電極と接地電極とを接続している。第2接地ビアは、共通電極を介さずに、シールド電極と接地電極とを直接接続している。第1共振器は、第1ビアと、第1平板電極とを含む。第1ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端が入力端子に接続されている。第1平板電極は、第1ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なっている。第2共振器は、第2ビアと、第2平板電極とを含む。第2ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端が出力端子に接続されている。第2平板電極は、第2ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なっている。
【0008】
本開示の他の局面に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入出力端子と、接地端子と、積層体の第1面側に配置された第1電極と、接地端子に接続された接地電極と、第1電極と接地電極との間の層に配置された共振器と、シールド電極と、第5接地ビアおよび第6接地ビアとを備える。入出力端子および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。シールド電極は、第1電極よりも第1面側に配置され、積層体の積層方向から平面視した場合に第1電極と重なっている。第5接地ビアは、第1電極を介して、シールド電極と接地電極とを接続している。第6接地ビアは、第1電極を介さずに、シールド電極と接地電極とを直接接続している。共振器は、一方端が第1電極に接続され、他方端が入出力端子に接続された第5ビアと、第5ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第2電極とを含む。
【0009】
本開示のさらに他の局面に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と積層体の第1面側に配置された共通電極と、接地端子に接続された接地電極と、第1共振器および第2共振器と、第1シールド電極および第2シールド電極と、第1接地ビア~第4接地ビアとを備える。入力端子、出力端子、および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。第1共振器および第2共振器は、共通電極と接地電極との間の層に配置されている。第1シールド電極および第2シールド電極は、共通電極よりも第1面側に配置されている。第1接地ビアは、共通電極および共振器を介して、第1シールド電極と接地電極とを接続している。第2接地ビアは、共通電極を介さずに、第1シールド電極と接地電極とを直接接続している。第3接地ビアは、共通電極を介して、第2シールド電極と接地電極とを接続している。第4接地ビアは、共通電極を介さずに、第2シールド電極と接地電極とを直接接続している。積層体の積層方向から平面視した場合に、第1シールド電極および第2シールド電極によって、共通電極のほぼ全体が覆われている。第1共振器は、一方端が共通電極に接続され、他方端が入力端子に接続された第1ビアと、第1ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第1平板電極とを含む。第2共振器は、一方端が共通電極に接続され、他方端が出力端子に接続された第2ビアと、第2ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第2平板電極とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るフィルタ装置においては、シールド電極には、共通電極を介して接地電極に接続される接地ビア(第1接地ビア,第3接地ビア,第5接地ビア)と、共通電極を介さずに接地電極に直接接続される接地ビア(第2接地ビア,第4接地ビア,第6接地ビア)とが接続されている。このような構成によって、共振器に流れる信号(電流)の大部分は共通電極を介する接地ビアを経由して接地電極に伝達され、共通電極を介さない接地ビアおよびシールド電極を経由する経路には信号はほとんど伝達されない。したがって、フィルタ装置の外部機器の外部シールド電極が近接した場合でも、外部シールド電極の影響を抑制してフィルタ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路を有する通信装置のブロック図である。
【
図2】実施の形態1のフィルタ装置の等価回路図である。
【
図3】実施の形態1のフィルタ装置の外観斜視図である。
【
図4】実施の形態1のフィルタ装置の積層構造を示す分解斜視図である。
【
図5】比較例のフィルタ装置の積層構造を示す分解斜視図である。
【
図6】実施の形態1および比較例のフィルタ装置における信号経路を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1および比較例のフィルタ装置における通過特性を説明するための図である。
【
図8】実施の形態2のフィルタ装置の積層構造を示す分解斜視図である。
【
図9】実施の形態3のフィルタ装置の積層構造を示す分解斜視図である。
【
図10】実施の形態4のフィルタ装置の積層構造を示す分解斜視図である。
【
図11】実施の形態5のフィルタ装置の等価回路図である。
【
図12】実施の形態5のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路20を有する通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯端末あるいは携帯電話基地局である。
【0014】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナ12と、高周波フロントエンド回路20と、ミキサ30と、局部発振器32と、D/Aコンバータ(DAC)40と、RF回路50とを備える。また、高周波フロントエンド回路20は、バンドパスフィルタ22,28と、増幅器24と、減衰器26とを含む。なお、
図1においては、高周波フロントエンド回路20が、アンテナ12から高周波信号を送信する送信回路を含む場合について説明するが、高周波フロントエンド回路20はアンテナ12を介して高周波信号を受信する受信回路を含んでいてもよい。
【0015】
通信装置10は、RF回路50から伝達された送信信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ12から放射する。RF回路50から出力された送信信号である変調済みのデジタル信号は、D/Aコンバータ40によってアナログ信号に変換される。ミキサ30は、D/Aコンバータ40によってデジタル信号からアナログ信号に変換された送信信号を、局部発振器32からの発振信号と混合して高周波信号へとアップコンバートする。バンドパスフィルタ28は、アップコンバートによって生じた不要波を除去して、所望の周波数帯域の送信信号のみを抽出する。減衰器26は、送信信号の強度を調整する。増幅器24は、減衰器26を通過した送信信号を、所定のレベルまで電力増幅する。バンドパスフィルタ22は、増幅過程で生じた不要波を除去するとともに、通信規格で定められた周波数帯域の信号成分のみを通過させる。バンドパスフィルタ22を通過した送信信号は、アンテナ12から放射される。
【0016】
上記のような通信装置10におけるバンドパスフィルタ22,28として、本開示に対応したフィルタ装置を採用することができる。
【0017】
(フィルタ装置の構成)
次に
図2~
図4を用いて、実施の形態1のフィルタ装置100の詳細な構成について説明する。
【0018】
図2は、フィルタ装置100の等価回路図である。
図2を参照して、フィルタ装置100は、入力端子T1と、出力端子T2と、接地端子GNDと、共振器RC1~RC4とを備える。共振器RC1~RC4の各々は、インダクタとキャパシタとが並列接続されたLC並列共振器である。
【0019】
共振器RC1は、入力端子T1と接地端子GNDとの間に直列に接続されたインダクタL1A,L1Bと、インダクタL1Bに並列に接続されたインダクタL2Bと、当該インダクタL1A,L1Bに並列に接続されたキャパシタC1とを含む。インダクタL1AとキャパシタC1との接続ノードN1Aは、入力端子T1に接続されている。インダクタL1BとキャパシタC1との接続ノードN3Bは、接地端子GNDに接続されている。なお、インダクタL2Bのインダクタンス値は、インダクタL1Bのインダクタンス値よりも大きい。
【0020】
共振器RC2は、出力端子T2と接地端子GNDとの間に直列に接続されたインダクタL2A,L2Bと、インダクタL2Bに並列に接続されたインダクタL1Bと、当該インダクタL2A,L2Bに並列に接続されたキャパシタC2とを含む。インダクタL2AとキャパシタC2との接続ノードN2Aは、出力端子T2に接続されている。インダクタL2BとキャパシタC2との接続ノードN4Bは、接地端子GNDに接続されている。すなわち、並列接続されたインダクタL1B,L2Bは、共振器RC1と共用されている。
【0021】
共振器RC3は、直列に接続されたインダクタL3A,L1Bと、インダクタL1Bに並列に接続されたインダクタL2Bと、当該インダクタL3A,L1Bに並列に接続されたキャパシタC3とを含む。インダクタL3AとキャパシタC3との接続ノードN3Aは、キャパシタC13を介して共振器RC1の接続ノードN1A(すなわち、入力端子T1)に接続されている。共振器RC3においても、並列接続されたインダクタL1B,L2Bは、共振器RC1と共用されている。
【0022】
共振器RC4は、直列に接続されたインダクタL4A,L2Bと、インダクタL2Bに並列に接続されたインダクタL1Bと、当該インダクタL4A,L2Bに並列に接続されたキャパシタC4とを含む。インダクタL4AとキャパシタC4との接続ノードN4Aは、キャパシタC24を介して共振器RC2の接続ノードN2A(すなわち、出力端子T2)に接続されている。共振器RC4においても、並列接続されたインダクタL1B,L2Bは、共振器RC1と共用されている。
【0023】
また、共振器RC1の接続ノードN1A(入力端子T1)と、共振器RC2の接続ノードN2A(出力端子T2)とが、キャパシタC12を介して接続されている。さらに、接続ノードN1B,N2Bで示される、各共振器のインダクタL1A,L2A,L3A,L4Aが互いに接続された部分が、
図4等で後述する共通電極PCに対応する。
【0024】
各共振器同士は、磁気結合により結合している。このように、フィルタ装置100は、入力端子T1と出力端子T2との間に、互いに磁気結合する4段の共振器が配置された構成を有している。各共振器の共振周波数を調整することによって、フィルタ装置100は、所望の周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタとして機能する。
【0025】
図3はフィルタ装置100の外観斜視図であり、
図4はフィルタ装置100の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【0026】
図3および
図4を参照して、フィルタ装置100は、複数の誘電体層LY1~LY8が積層方向に積層された、直方体または略直方体の積層体110を備えている。誘電体層LY1~LY8は、たとえば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミック、あるいは樹脂により形成されている。積層体110の内部において、各誘電体層に設けられた複数の電極、および、誘電体層間に設けられた複数のビアによって、LC並列共振器のインダクタおよびキャパシタが構成される。なお、本明細書において「ビア」とは、異なる誘電体層に設けられた電極を接続するために、誘電体層中に設けられる導体を示す。ビアは、たとえば、導電ペースト、めっき、および/または金属ピンなどによって形成される。
【0027】
なお、以降の説明においては、積層体110における誘電体層LY1~LY8の積層方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって積層体110の長辺に沿った方向を「X軸方向」とし、積層体110の短辺に沿った方向を「Y軸方向」とする。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上側、負方向を下側と称する場合がある。
【0028】
積層体110の上面111(誘電体層LY1)には、フィルタ装置100の方向を特定するための方向性マークDMが配置されている。積層体110の下面112(誘電体層LY8)には、当該フィルタ装置100と外部機器とを接続するための外部端子(入力端子T1、出力端子T2および接地端子GND)が配置されている。入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDの各々は平板電極であり、積層体110の下面112に規則的に配置されたLGA(Land Grid Array)端子である。実施の形態1の「上面111」および「下面112」は、本開示における「第1面」および「第2面」にそれぞれ対応する。
【0029】
フィルタ装置100は、
図2で説明したように、4段のLC並列共振器を有している。より具体的には、ビアVL1A,VL1Bおよびキャパシタ電極P1を含んで構成された共振器RC1と、ビアVL2A,VL2Bおよびキャパシタ電極P2を含んで構成された共振器RC2と、ビアVL3およびキャパシタ電極P3を含んで構成された共振器RC3と、ビアVL4およびキャパシタ電極P4を含んで構成された共振器RC4とを含む。ビアVL1B,VL2B,VL3,VL4の各々は、誘電体層LY3に配置された共通電極PCに接続されている。
【0030】
共通電極PCは、ビアVG1,VG3によって、誘電体層LY6に配置された接地電極PG1、および、誘電体層LY2に配置されたシールド電極PG2に接続されている。接地電極PG1は、ビアVG2,VG4によって、シールド電極PG2と直接接続されている。また、接地電極PG1は、ビアVG5,VG6によって、誘電体層LY8の接地端子GNDに接続されている。キャパシタ電極P1,P2,P3,P4は、誘電体層LY6に配置されている。
【0031】
入力端子T1は、ビアVL1Aにより誘電体層LY6に配置されたキャパシタ電極P1に接続されている。キャパシタ電極P1は、ビアVL1Bによって、誘電体層LY2に配置された共通電極PCに接続されている。キャパシタ電極P1は、略L字形状をした平板電極である。積層体110を積層方向(Z軸方向)から平面視した場合に、キャパシタ電極P1の一部は、誘電体層LY7の接地電極PG1と重なっている。キャパシタ電極P1と接地電極PG1とによって、
図2におけるキャパシタC1が構成される。
【0032】
ビアVL1Bおよび共通電極PCによって、
図2におけるインダクタL1Aが構成される。ビアVG1,VG3における共通電極PCと接地電極PG1との間の部分によって、
図2におけるインダクタL1Bが構成される。ビアVG1,VG3における共通電極PCとシールド電極PG2との間の部分、シールド電極PG2、および、ビアVG2,VG4によって、
図2におけるインダクタL2Bが構成される。すなわち、キャパシタ電極P1、接地電極PG1、シールド電極PG2、ビアVL1B,VG1~VG4および共通電極PCによって、共振器RC1が構成される。
【0033】
出力端子T2は、ビアVL2Aにより誘電体層LY6に配置されたキャパシタ電極P2に接続されている。キャパシタ電極P2は、ビアVL2Bによって、誘電体層LY2に配置された共通電極PCに接続されている。キャパシタ電極P2は、略L字形状をした平板電極である。積層体110を積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P2の一部は、誘電体層LY7の接地電極PG1と重なっている。キャパシタ電極P2と接地電極PG1とによって、
図2におけるキャパシタC2が構成される。ビアVL2Bおよび共通電極PCによって、
図2におけるインダクタL2Aが構成される。すなわち、キャパシタ電極P2、接地電極PG1、シールド電極PG2、ビアVL2B,VG1~VG4および共通電極PCによって、共振器RC2が構成される。
【0034】
共振器RC1のキャパシタ電極P1は、ビアVL5によって、誘電体層LY5に配置されたキャパシタ電極P5に接続されている。キャパシタ電極P5は、矩形形状の平板電極である。積層体110を積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P5の一部は、誘電体層LY6に配置された共振器RC3のキャパシタ電極P3と重なっている。キャパシタ電極P3とキャパシタ電極P5とによって、
図2におけるキャパシタC13が構成される。ビアVL3は、キャパシタ電極P3と共通電極PCに接続されている。キャパシタ電極P3、接地電極PG1、シールド電極PG2、ビアVL3,VG1~VG4および共通電極PCによって、共振器RC3が構成される。
【0035】
共振器RC2のキャパシタ電極P2は、ビアVL6によって、誘電体層LY5に配置されたキャパシタ電極P6に接続されている。キャパシタ電極P6は、矩形形状の平板電極である。積層体110を積層方向から平面視した場合に、キャパシタ電極P6の一部は、誘電体層LY6に配置された共振器RC4のキャパシタ電極P4と重なっている。キャパシタ電極P4とキャパシタ電極P6とによって、
図2におけるキャパシタC24が構成される。ビアVL4は、キャパシタ電極P4と共通電極PCに接続されている。キャパシタ電極P4、接地電極PG1、シールド電極PG2、ビアVL4,VG1~VG4および共通電極PCによって、共振器RC4が構成される。
【0036】
誘電体層LY4には、矩形形状のキャパシタ電極P7が配置されている。キャパシタ電極P7は、積層体110を積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY5に配置されたキャパシタ電極P5およびキャパシタ電極P6と部分的に重なっている。キャパシタ電極P5~P7によって、
図2におけるキャパシタC12が構成される。
【0037】
実施の形態1における「ビアVL1A,VL1B」は、本開示における「第1ビア」に対応する。実施の形態1における「ビアVL2A,VL2B」は、本開示における「第2ビア」に対応する。実施の形態1における「ビアVL3」および「ビアVL4」は、本開示における「第3ビア」および「第4ビア」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「ビアVG1,VG3」の各々は、本開示における「第1接地ビア」に対応する。実施の形態1における「ビアVG2,VG4」の各々は、本開示における「第2接地ビア」に対応する。実施の形態1における「キャパシタ電極P1~P7」は、本開示における「第1平板電極」~「第7平板電極」にそれぞれ対応する。
【0038】
(フィルタ特性)
次に、
図5~
図7を用いて、実施の形態1のフィルタ装置100のフィルタ特性について、比較例と比較しながら説明する。
図5は比較例のフィルタ装置100Xの分解斜視図である。フィルタ装置100Xにおいては、
図4で説明したフィルタ装置100における、ビアVG2,VG4が除かれた構成となっている。フィルタ装置100Xにおけるその他の構成はフィルタ装置100と同様である。
図5において
図4と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0039】
図6は、実施の形態1および比較例のフィルタ装置における信号経路を説明するための図である。
図6においては、左図に実施の形態1のフィルタ装置100における分解斜視図の一部が示されており、右図には比較例のフィルタ装置100Xにおける分解斜視図の一部が示されている。なお、
図6の説明においては、
図2および
図4を適宜参照しながら、2段目の共振器RC3を流れる信号について説明する。
【0040】
共振器RC1からキャパシタC13を介して共振器RC3に伝達された信号は、ビアVL3によって共通電極PCに伝達される。共通電極PCにおいては、ビアVL3に最も近接しているビアVG1に信号が伝達され、その大部分は実線の矢印AR1の経路によって接地電極PG1へと流れる。また、ビアVG1に伝達された信号の一部は、シールド電極PG2へも伝達される。
【0041】
右図に示されるビアVG2,VG4のない比較例のフィルタ装置100Xにおいては、シールド電極PG2に伝達された信号は、破線の矢印AR3のように、共振器RC2,RC4に用いられるビアVG3を通って接地電極PG1へと流れる。すなわち、共振器RC3と共振器RC4とを結合する信号が、シールド電極PG2を介して伝達される。そのため、外部機器におけるシールド電極(外部シールド電極)が、フィルタ装置100Xに近接した場合、共振器RC3と共振器RC4との間の結合が、この外部シールド電極によって影響を受ける。
【0042】
一方、実施の形態1のフィルタ装置100においては、シールド電極PG2に伝達された信号は、ビアVG1に最も近接しているビアVG2に伝達され、破線の矢印AR2のようにビアVG2を介して接地電極PG1へと流れ、ビアVG3へはほとんど流れない。すなわち、シールド電極PG2においては、共振器RC3と共振器RC4を結合する信号が流れないため、外部シールド電極が存在した場合でも、共振器RC3と共振器RC4との結合には影響しない。
【0043】
なお、共通電極PCからシールド電極PG2を経由して接地電極PG1に至る経路の経路長は、共通電極PCからビアVG1のみを経由して接地電極PG1に至る経路の経路長よりも長く、インダクタンス値が大きくなるため、信号の大部分はビアVG1のみを経由する経路に流れる。そのため、比較例のフィルタ装置100Xの場合でも、シールド電極PG2のない構成に比べると外部シールド電極による影響を低減することはできる。しかしながら、実施の形態1のように、シールド電極PG2と接地電極PG1とを直接接続するビアVG2,VG4を設けることによって、比較例の場合に比べて、共振器間の結合に対する外部シールド電極の影響をさらに低減することができる。
【0044】
図7は、実施の形態1および比較例のフィルタ装置において、外部シールドの有無による通過特性の変化を説明するための図である。
図7においては、左図に実施の形態1のフィルタ装置100の通過特性のグラフが示されており、右図には比較例のフィルタ装置100Xの通過特性のグラフが示されている。各グラフにおいて、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失が示されている。また、各グラフにおいて、実線LN10,LN20は外部シールド電極がない場合の通過特性であり、破線LN11,LN21は外部シールド電極がある場合の通過特性である。
【0045】
図7を参照して、右図の比較例の場合には、外部シールド電極がある場合には、外部シールド電極がない場合に比べて、通過帯域が低周波数側に拡大しており、言い換えれば通過帯域と非通過帯域との間の減衰特性が低下している。なお、このような特性変化は、所望のフィルタ特性に対して必ずしも悪い影響とは言えない場合もあるが、外部シールド電極の有無によってフィルタ特性が変動すれば、当該フィルタ装置が適用された機器の性能が不安定になる可能性がある。
【0046】
一方で、左図の実施の形態1の場合には、外部シールド電極の有無による通過特性の変化はほとんど見られない。したがって、実施の形態1のような構成とすることによって、外部シールド電極の影響を抑制してフィルタ特性を向上(安定化)させるとともに、当該フィルタ装置が適用された機器の性能の安定化を図ることができる。
【0047】
なお、上記の説明においては、4つの共振器で構成されるフィルタ装置について説明したが、共振器の数は5つ以上であってもよい。
【0048】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、シールド電極が複数の平板電極によって形成される構成について説明する。
【0049】
図8は、実施の形態2のフィルタ装置100Aの積層構造を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Aにおいては、実施の形態1のフィルタ装置100のシールド電極PG2が、シールド電極PG21,PG22に置き換えられた構成となっている。
図8において、
図4で示したフィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0050】
図8を参照して、フィルタ装置100Aの誘電体層LY2には、1段目の共振器RC1および2段目の共振器RC3に対して設けられたシールド電極PG21と、3段目の共振器RC4および4段目の共振器RC2に対して設けられたシールド電極PG22とが配置されている。
【0051】
シールド電極PG21,PG22の各々は、矩形形状の平板電極であり、全体として
図4のフィルタ装置100のシールド電極PG2と同程度の大きさとなっている。言い換えれば、積層体110の積層方向から平面視した場合に、シールド電極PG21,PG22によって、共通電極PCのほぼ全体が覆われている。シールド電極PG21にはビアVG1,VG2が接続されており、シールド電極PG22にはビアVG3,VG4が接続されている。
【0052】
このように、シールド電極が二分割された構成においても、各シールド電極に、共振器を介さずに接地電極PG1に接続されるビアが配置されているため、外部機器の外部シールド電極が近接した場合でも、共振器間の結合への影響を低減することができる。また、シールド電極が分割されているため、シールド電極を介した共振器RC3と共振器RC4との結合も抑制できる。
【0053】
実施の形態2における「シールド電極PG21」および「シールド電極PG22」は、本開示における「第1シールド電極」および「第2シールド電極」に対応する。実施の形態2における「ビアVG1」~「ビアVG4」は、本開示における「第1接地ビア」~「第4接地ビア」にそれぞれ対応する。
【0054】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、フィルタ装置が2つの共振器で構成される例について説明する。
【0055】
図9は、実施の形態3のフィルタ装置100Bの積層構造を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Bにおいては、実施の形態1のフィルタ装置100における共振器RC3,RC4が削除された構成となっている。より具体的には、フィルタ装置100Bは、
図4におけるキャパシタ電極P3,P4およびビアVL3,VL4が削除された構成となっている。
図9において、
図4で示したフィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0056】
フィルタ装置100Bのような2段の共振器の構成においても、共振器を介さずに接地電極PG1に接続されるビアVG2,VG4が、シールド電極PG2に配置されているため、外部機器の外部シールド電極が近接した場合でも、共振器間の結合への影響を低減することができる。
【0057】
[実施の形態4]
実施の形態4においては、フィルタ装置が3つの共振器で構成される例について説明する。
【0058】
図10は、実施の形態4のフィルタ装置100Cの積層構造を示す分解斜視図である。フィルタ装置100Cにおいては、実施の形態1のフィルタ装置100における共振器RC4が削除された構成となっている。
図10において、
図4で示したフィルタ装置100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0059】
より具体的には、フィルタ装置100Cは、
図4におけるキャパシタ電極P4およびビアVL4が削除された構成となっている。なお、フィルタ装置100Cにおいては、共振器RC3を構成するキャパシタ電極P3およびビアVL3は、積層体110において、X軸方向の中央付近に配置されている。そして、キャパシタ電極P3は、積層体110の積層方向から平面視した場合に、誘電体層LY5に配置されたキャパシタ電極P5,P6と部分的に重なっている。
【0060】
フィルタ装置100Cのような3段の共振器の構成においても、共振器を介さずに接地電極PG1に接続されるビアVG2,VG4が、シールド電極PG2に接続されているため、外部機器の外部シールド電極が近接した場合でも、共振器間の結合への影響を低減することができる。
【0061】
[実施の形態5]
実施の形態5においては、フィルタ装置が1つの共振器で構成される例について説明する。
【0062】
図11は、実施の形態5のフィルタ装置100Dの等価回路図である。また、
図12は、フィルタ装置100Dの積層構造を示す分解斜視図である。
【0063】
まず
図11を参照して、フィルタ装置100Dは、入力端子T1と出力端子T2とをつなぐ経路と、接地端子GNDとの間に共振器RC11が接続された構成を有している。共振器RC11は、インダクタL11,L12,L13と、キャパシタC11とを含んでいる。インダクタL11の一方端は、入力端子T1および出力端子T2に接続されている。インダクタL12,L13は、インダクタL11の他方端と接地端子GNDとの間に並列に接続されている。インダクタL13のインダクタンス値は、インダクタL12のインダクタンス値よりも大きい。キャパシタC11は、入力端子T1および出力端子T2と、接地端子GNDとの間に接続されている。
【0064】
次に
図12を参照して、フィルタ装置100Dにおける積層体110Dは、複数の誘電体層LY11~LY16が積層された構成を有している。実施の形態1のフィルタ装置100と同様に、上面111(誘電体層LY11)には方向性マークDMが配置されている。また、下面112(誘電体層LY16)には、入力端子T1、出力端子T2および接地端子GNDが配置されている。なお、実施の形態5においては、入力端子T1および出力端子T2は、共通の1つの平板電極によって構成されている。そのため、以降の説明においては、入力端子T1および出力端子T2を包括して「入出力端子T12」とも称する。
【0065】
入出力端子T12は、ビアVL11によって、誘電体層LY14に配置されたキャパシタ電極P12に接続されている。キャパシタ電極P12は、略L字形状を有する平板電極であり、積層体110Dの法線方向から平面視した場合に、誘電体層LY15に配置された接地電極PG11と部分的に重なっている。接地電極PG11は、ビアVG13,VG14によって、誘電体層LY16の接地端子GNDに接続されている。すなわち、キャパシタ電極P14と接地端子GNDとによって、
図11におけるキャパシタC11が構成される。
【0066】
キャパシタ電極P12は、さらに、ビアVL12によって、誘電体層LY13に配置された平板電極P11に接続されている。ビアVL12および平板電極P11によって、
図11におけるインダクタL11が構成される。平板電極P11は、ビアVG11によって誘電体層LY12に配置されたシールド電極PG12、および、誘電体層LY15に配置された接地電極PG11に接続されている。
【0067】
シールド電極PG12は、略矩形形状を有する平板電極であり、積層体110Dの法線方向から平面視した場合に、誘電体層LY13の平板電極P11と重なっている。シールド電極PG12は、ビアVG12によって、平板電極P11を介さずに接地電極PG11に直接接続されている。
【0068】
すなわち、平板電極P11からビアVG11のみを経由して接地電極PG11に至る経路によって、
図11におけるインダクタL12が構成される。また、平板電極P11から、ビアVG11、シールド電極PG12およびビアVG12を経由して接地電極PG11に至る経路によって、
図11におけるインダクタL13が構成される。平板電極P11は、
図11における、インダクタL11,L12,L13の接続ノードの部分に対応する。
【0069】
このような構成においても、共振器RC11を流れる電流は、主に平板電極P11からビアVG11のみを経由して接地電極PG11へ至る経路長の短い(インダクタンス値の小さい)経路を流れ、シールド電極PG12を経由する経路にはほとんど流れない。そのため、フィルタ装置100Dの上面111方向に、外部機器のシールド電極が存在する場合においても、フィルタ装置100Dへの影響を低減することができる。
【0070】
なお、実施の形態5における「平板電極P11」は、本開示における「第1電極」に対応する。実施の形態5における「ビアVG11」および「ビアVG12」は、本開示における「第5接地ビア」および「第6接地ビア」にそれぞれ対応する。実施の形態5における「ビアVL12」は、本開示における「第5ビア」に対応する。実施の形態5における「キャパシタ電極P12」は、本開示における「第2電極」に対応する。
[態様]
(第1項)一態様に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と、積層体の第1面側に配置された共通電極と、接地端子に接続された接地電極と、第1共振器および第2共振器と、シールド電極と、第1接地ビアおよび第2接地ビアとを備える。入力端子、出力端子、および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。第1共振器および第2共振器は、共通電極と接地電極との間の層に配置されている。シールド電極は、共通電極よりも第1面側に配置され、積層体の積層方向から平面視した場合に共通電極の全体と重なっている。第1接地ビアは、共通電極を介して、シールド電極と接地電極とを接続している。第2接地ビアは、共通電極を介さずに、シールド電極と接地電極とを直接接続している。第1共振器は、第1ビアと、第1平板電極とを含む。第1ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端が入力端子に接続されている。第1平板電極は、第1ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なっている。第2共振器は、第2ビアと、第2平板電極とを含む。第2ビアは、一方端が共通電極に接続され、他方端が出力端子に接続されている。第2平板電極は、第2ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なっている。
【0071】
(第2項)第1項に記載のフィルタ装置において、共通電極からシールド電極および第2接地ビアを経由して接地電極に至る経路長は、共通電極から第1接地ビアを経由して接地電極に至る経路長よりも長い。
【0072】
(第3項)第1項に記載のフィルタ装置において、共通電極からシールド電極および第2接地ビアを経由して接地電極に至る経路のインダクタンス値は、共通電極から第1接地ビアを経由して接地電極に至る経路のインダクタンス値よりも大きい。
【0073】
(第4項)第1項~第3のいずれか1項に記載のフィルタ装置は、第1共振器と第2共振器との間に配置された第3共振器をさらに備える。第3共振器は、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第3平板電極と、共通電極と第3平板電極との間に配置された第3ビアとを含む。
【0074】
(第5項)第4項に記載のフィルタ装置は、第2共振器と第3共振器との間に配置された第4共振器をさらに備える。第4共振器は、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第4平板電極と、共通電極と第4平板電極との間に配置された第4ビアとを含む。
【0075】
(第6項)第5項に記載のフィルタ装置は、第5平板電極~第7平板電極をさらに備える。第5平板電極は、第1平板電極に接続され、積層方向から平面視した場合に第3平板電極と少なくとも一部が重なっている。第6平板電極は、第2平板電極に接続され、積層方向から平面視した場合に第4平板電極と少なくとも一部が重なっている。第7平板電極は、積層方向から平面視した場合に、第5平板電極および第6平板電極と少なくとも一部が重なっている。
【0076】
(第7項)他の態様に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入出力端子と、接地端子と、積層体の第1面側に配置された第1電極と、接地端子に接続された接地電極と、第1電極と接地電極との間の層に配置された共振器と、シールド電極と、第5接地ビアおよび第6接地ビアとを備える。入出力端子および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。シールド電極は、第1電極よりも第1面側に配置され、積層体の積層方向から平面視した場合に第1電極と重なっている。第5接地ビアは、第1電極を介して、シールド電極と接地電極とを接続している。第6接地ビアは、第1電極を介さずに、シールド電極と接地電極とを直接接続している。共振器は、一方端が第1電極に接続され、他方端が入出力端子に接続された第5ビアと、第5ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第2電極とを含む。
【0077】
(第8項)他の態様に係るフィルタ装置は、複数の誘電体層が積層された積層体と、入力端子と、出力端子と、接地端子と積層体の第1面側に配置された共通電極と、接地端子に接続された接地電極と、第1共振器および第2共振器と、第1シールド電極および第2シールド電極と、第1接地ビア~第4接地ビアとを備える。入力端子、出力端子、および接地端子は、積層体の第2面に配置されている。第1共振器および第2共振器は、共通電極と接地電極との間の層に配置されている。第1シールド電極および第2シールド電極は、共通電極よりも第1面側に配置されている。第1接地ビアは、共通電極および共振器を介して、第1シールド電極と接地電極とを接続している。第2接地ビアは、共通電極を介さずに、第1シールド電極と接地電極とを直接接続している。第3接地ビアは、共通電極を介して、第2シールド電極と接地電極とを接続している。第4接地ビアは、共通電極を介さずに、第2シールド電極と接地電極とを直接接続している。積層体の積層方向から平面視した場合に、第1シールド電極および第2シールド電極によって、共通電極のほぼ全体が覆われている。第1共振器は、一方端が共通電極に接続され、他方端が入力端子に接続された第1ビアと、第1ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第1平板電極とを含む。第2共振器は、一方端が共通電極に接続され、他方端が出力端子に接続された第2ビアと、第2ビアに接続され、積層方向から平面視した場合に接地電極と少なくとも一部が重なる第2平板電極とを含む。
【0078】
(第9項)第1項~第8項のいずれか1項に記載のフィルタ装置は、バンドパスフィルタである。
【0079】
(第10項)他の態様に係る高周波フロントエンド回路は、第1項~第10のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備えている。
【0080】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
10 通信装置、12 アンテナ、20 高周波フロントエンド回路、22,28 バンドパスフィルタ、24 増幅器、26 減衰器、30 ミキサ、32 局部発振器、40 D/Aコンバータ、50 RF回路、100,100A~100D,100X フィルタ装置、110,110D 積層体、111 上面、112 下面、N1A~N4A,N1B~N4B 接続ノード、C1~C4,C11~C13,C24 キャパシタ、DM 方向性マーク、GND 接地端子、L1A~L4A,L1B,L2B,L11~L13 インダクタ、LY1~LY8,LY11~LY16 誘電体層、VG1~VG6,VG11~VG14,VL1A,VL1B,VL2A,VL2B,VL3~VL6,VL11,VL12 ビア、P1~P7,P12,P14 キャパシタ電極、P11 平板電極、PC 共通電極、PG1,PG11 接地電極、PG2,PG12,PG21,PG22 シールド電極、RC1~RC4,RC11 共振器、T1 入力端子、T2 出力端子、T12 入出力端子。