(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023013
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】フロー合成装置用マイクロミキサー及びフロー合成装置
(51)【国際特許分類】
B01F 33/301 20220101AFI20240214BHJP
B01F 23/21 20220101ALI20240214BHJP
B01F 23/232 20220101ALI20240214BHJP
B01F 25/00 20220101ALI20240214BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01F33/301
B01F23/21
B01F23/232
B01F25/00
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126532
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】302018053
【氏名又は名称】株式会社中村超硬
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】重田 和俊
【テーマコード(参考)】
3C081
4G035
4G036
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081BA23
3C081BA24
3C081BA25
3C081BA41
3C081BA51
3C081EA28
3C081EA37
4G035AB04
4G035AC47
4G035AE13
4G036AC70
(57)【要約】
【課題】気相と液相とをマイクロミキサーにより合流させて連続して気液反応をさせるフロー合成を行う際に、供給する気相と液相に圧力差があっても、液相が気相の供給用流路側に逆流することなく、気相と液相とを所定の量比で合流させることが可能なフロー合成装置用マイクロミキサーを提供すること。
【解決手段】六方切替バルブと、気相供給用流路と、液相供給用流路と、排出用流路と、合成用流路と、サンプルループとを有し、前記六方切替バルブにより、気相又は液相供給用流路とサンプルループと排出用流路が連通すると同時に、液相又は気相供給用流路と合成用流路とが連通する第1流路と、気相又は液相供給用流路と排出用流路が連通すると同時に、液相又は気相供給用流路とサンプルループと合成用流路とが連通する第2流路とに交互に切り替えて、液相と気相を合成用流路に交互に流出させることが可能である、フロー合成装置用マイクロミキサー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相と液相を連続的に合流させるフロー合成装置用マイクロミキサーであって、
該フロー合成装置用マイクロミキサーは、六方切替バルブと、気相供給用流路と、液相供給用流路と、排出用流路と、合成用流路と、サンプルループとを有し、
前記六方切替バルブは、前記気相供給用流路と連結する気相供給口、前記液相供給用流路と連結する液相供給口、排出用流路と連結する排出口、合成用流路と連結する合成用流出口、前記サンプルループの両端と連結する2つのサンプルループ用開口を有し、
前記六方切替バルブは、気相又は液相供給用流路とサンプルループと排出用流路が連通すると同時に、液相又は気相供給用流路と合成用流路とが連通する第1流路と、気相又は液相供給用流路と排出用流路が連通すると同時に、液相又は気相供給用流路とサンプルループと合成用流路とが連通する第2流路とに切り替え可能であり、
前記第1流路と前記第2流路とを交互に切り替えて、少なくともサンプルループに流入させた気相又は液相を合成用流路に流出させることで、液相と気相を合成用流路に交互に流出させることが可能である、フロー合成装置用マイクロミキサー。
【請求項2】
前記サンプルループ用開口が、第1開口と第2開口を有し、
前記気相供給口、前記サンプルループ用開口の第1開口、前記合成用流出口、前記液相供給口、前記サンプルループ用開口の第2開口及び排出口が、この順で時計回り又は反時計回りに前記六方切替バルブに設けられている請求項1記載のフロー合成装置用マイクロミキサー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフロー合成装置用マイクロミキサーを有するフロー合成装置。
【請求項4】
前記合成用流路の下流側に、圧力調整装置が設けられていない、請求項3記載のフロー合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロー合成装置用マイクロミキサー及び当該フロー合成装置用マイクロミキサーを有するフロー合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロミキサーを有するフロー合成装置は、微小な断面を有する微小流路を利用することで、比表面積の大きさに基づく精密温度制御が可能、安定層流界面間の分子拡散に基づく精密混合制御が可能、微小流路内の滞留時間の精密制御により反応時間の制御が可能、などの特性を有するとされている。そのため、これらの特性を利用して、化学合成、新規物質の創製などに用いられている。
【0003】
このようなフロー合成装置では、マイクロミキサーにおいて複数の流体を微小流路の混合流路に連続して導入して混合させる。前述のようにマイクロミキサーでの混合は分子拡散を利用するものであるが、微小流路内に流体を導入し、分子拡散により均一に複数の流体を混合させることは必ずしも容易ではない。
【0004】
この改善策として、例えば特許文献1では、混合部分において混合対象の流体を薄くかつ一様な多層に形成すること、あるいは薄い層を保ちつつ流速を減速させるために、混合流路とこれに接続する複数の流入路を有し、少なくとも2種の流体がそれぞれ複数の流入路から混合流路へ導入されて流体の混合が行われる流体混合器であって、前記混合流路には、流れ方向で前記複数の流入路が所定間隔で接続されることにより複数の流路接続部が設けられ、且つ隣り合う流路接続部では異なる種類の流体が導入されるように配管されているものが提案されている。
【0005】
また、前述の分子拡散による均一混合に関する点以外に、特許文献2には、このようなフロー合成装置を用いてラジカル重合反応による高分子合成を行う場合に理想的な分子量分布を実現するための要求機能として、(i)均一温度制御、(ii)生成物である高分子の高粘性送液、(iii)気液混合/分離が挙げられている。そして、この(iii)の機能を実現するための構成として、気体は透過するが液体は透過しない特殊な弾性管を所定の圧力チャンバー内に設け、弾性管内で反応を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/030952号
【特許文献2】特開2009-274030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、各種の化学合成や、新規物質の創製を、マイクロミキサーを有するフロー合成装置を用いて検討する際に使用する出発原料としては、気相、液相などの各種のもの挙げられる。微小流路の混合流路内にこれらの各相を導入して混合するには一般に大きな圧力を付与する必要がある。出発原料の特性はさまざまであり、導入圧力はその特性に応じて選択するが、混合流路に導入するには、導入される各相の圧力差を極力小さくし圧力の平衡をとるように導入圧力などを制御する。出発原料が気相同士や液相同士の場合は、導入圧力を制御して、混合流路に導入し易い傾向にあるが、出発原料が液相と気相である場合、それらの特性は大きく異なり、圧力の平衡をとることが困難である。
【0008】
本発明者は、一般的なT字型マイクロミキサーを用い、これに気相と液相とを供給し両者を混合させることを試みたが、圧力差が大きく、気相の供給路側に液相が逆流し混合できないことを確認した。
【0009】
前述の特許文献1、2には、適用可能な流体として気体、液体などが挙げられている。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、混合対象の流体を薄くかつ一様な多層に形成して、効率的な分子拡散による混合を実現するために、複雑な微小流路が形成されている。このような複雑な微小流路に、液相を導入するには、かなりの高圧を要すると考えられる。そのため、このような流体混合器に液相と気相を混合させようとすると、気相をさらに高圧で導入する必要があるが、実際には非常に困難であると考えられる。また、特許文献2に記載の発明では、前述のように、特定の弾性管を用いて、弾性管内外の気体の移動を行うことが記載されているが、弾性管内に気体を導入するには、やはり相当の圧力が必要になると考えられ、実現は困難と考えられる。特許文献2には、弾性管内の液相内に反応等により生じた気体を弾性管外に移動させることは具体的に記載されているが、弾性管外の気体を弾性管内に移動させる具体例は言及されていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、気相と液相とをマイクロミキサーにより合流させて連続して気液反応をさせるフロー合成を行う際に、供給する気相と液相に圧力差があっても、液相が気相の供給用流路側に逆流することなく、気相と液相とを所定の量比で合流させることが可能なフロー合成装置用マイクロミキサー、及び、当該フロー合成装置用マイクロミキサーを有し、所望の気液反応によるフロー合成が可能なフロー合成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、気相と液相とをマイクロミキサーにより合流させて連続して気液反応をさせるフロー合成を行う際に、各供給用流路から連続して供給される気相と液相とを連続して交互に合成用流路に流出させることで液相が気相の供給用流路側に逆流するのを防止して所望の量比で気相と液相との気液反応を連続的に行うことが可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
本発明の第一は、気相と液相を連続的に合流させるフロー合成装置用マイクロミキサーであって、該フロー合成装置用マイクロミキサーは、六方切替バルブと、気相供給用流路と、液相供給用流路と、排出用流路と、合成用流路と、サンプルループとを有し、前記六方切替バルブは、前記気相供給用流路と連結する気相供給口、前記液相供給用流路と連結する液相供給口、排出用流路と連結する排出口、合成用流路と連結する合成用流出口、前記サンプルループの両端と連結する2つのサンプルループ用開口を有し、前記六方切替バルブは、気相又は液相供給用流路とサンプルループと排出用流路が連通すると同時に、液相又は気相供給用流路と合成用流路とが連通する第1流路と、気相又は液相供給用流路と排出用流路が連通すると同時に、液相又は気相供給用流路とサンプルループと合成用流路とが連通する第2流路とに切り替え可能であり、前記第1流路と前記第2流路とを交互に切り替えて、少なくともサンプルループに流入させた気相又は液相を合成用流路に流出させることで、液相と気相を合成用流路に交互に流出させることが可能である、フロー合成装置用マイクロミキサーに関する。
【0013】
前記フロー合成装置用マイクロミキサーの実施形態では、前記サンプルループ用開口が、第1開口と第2開口を有し、前記気相供給口、前記サンプルループ用開口の第1開口、前記合成用流出口、前記液相供給口、前記サンプルループ用開口の第2開口及び排出口が、この順で時計回り又は反時計回りに前記六方切替バルブに設けられていてもよい。
【0014】
本発明の第二は、前記フロー合成装置用マイクロミキサーを有するフロー合成装置に関する。
【0015】
前記フロー合成装置の実施形態では、前記合成用流路の下流側に、圧力調整装置が設けられていなくてよい。
【0016】
尚、前述のマイクロミキサー及び当該マイクロミキサーを有するフロー合成装置を構成する各流路は、微小流路であり、微小流路とは、断面幅或いは内径1.0mm以下の流路を意味するものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、気相と液相とをマイクロミキサーにより合流させて連続して気液反応をさせるフロー合成を行う際に、供給する気相と液相に圧力差があっても、液相が気相の供給用流路側に逆流することなく、気相と液相とを所定の量比で合流させることが可能なフロー合成装置用マイクロミキサー、及び、当該フロー合成装置用マイクロミキサーを有し、所望の気液反応によるフロー合成が可能なフロー合成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るフロー合成装置用マイクロミキサー及びこれを有するフロー合成装置の概要及びその流路構成を説明するための説明図である。
【
図2】
図1に示す実施形態に係るマイクロミキサーにおいて、六方切替バルブが第1流路の流路構成の場合に、サンプルループに気相を流入させた時の状態を説明するための説明図である。
【
図3】
図2に示す状態から、六方切替バルブを第2流路に切り替えた直後の状態を説明するための説明図である。
【
図4】
図3に示す状態から、サンプルループに液相を流入させ、サンプルループ内の気相を液相により押し出して、合成用流路に流出させるとともに、気相を気相供給用流路から排出用流路に流出させている状態を説明するための説明図である。
【
図5】
図4に示す状態から、六方切替バルブを第1流路に切り替えた直後の状態を説明するための説明図である。
【
図6】
図5に示す状態から、サンプルループ内に気相を流入させ、サンプルループ内の液相を気相により押し出して、排出用流路に流出させるとともに、液相を液相供給用流路から合成用流路に流出させている状態を説明するための説明図である。
【
図7】
図6に示す状態から、六方切替バルブを第2流路に切り替えた直後の状態を説明するための説明図である。
【
図8】実験例において、実施形態に係るマイクロミキサーを用いて気相と液相とを連続して交互に合成用流路に流出させたときの様子を示した撮像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明するが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得ることは勿論である。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るフロー合成装置用マイクロミキサー(以下「マイクロミキサー」と称する場合がある。)1及びこれを有するフロー合成装置2の流路構成を説明するための説明図である。
【0021】
図1に示すように、マイクロミキサー1は、六方切替バルブ10、気相供給用流路11、液相供給用流路12、排出用流路13、合成用流路14、サンプルループ15を有する。また、六方切替バルブ10は、ポート(1)~(6)を有し、ポート(1)が気相供給用流路11と連結する気相供給口、ポート(2)がサンプルループ15の一方端(第1端)15aと連結する第1のサンプルループ用開口、ポート(3)が合成用流路14と連結する合成用流出口、ポート(4)が液相供給用流路12と連結する液相供給口、ポート(5)がサンプルループ15の他方端(第2端)15bと連結する第2のサンプルループ用開口、ポート(6)が排出用流路13と連結する排出口に対応する。
図1に示す例では、ポート(1)~(6)がその順に時計回りに同一円周上に配置されている。各ポートの円周上の間隔は、後述する第1流路と第2流路が形成されれば特に限定はない。
図1に示す例では、円周を6等分して各ポートを設けている。
【0022】
図1に示す例では、六方切替バルブ1は、次の第1流路と第2流路とに切り替え可能となるように構成されている。第1流路は、ポート(1)、(2)が連通する流路a、ポート(3)、(4)が連通する流路b、ポート(5)、(6)が連通する流路cを形成して、気相供給用流路11とサンプルループ15と排出用流路13が連通すると同時に、液相供給用流路12と合成用流路14とが連通することで形成される(
図1、2、5、6参照)。第2流路は、ポート(1)、(6)が連通する流路d、ポート(2)、(3)が連通する流路e、ポート(4)、(5)が連通する流路fを形成して、気相供給用流路11と排出用流路13が連通すると同時に、液相供給用流路12とサンプルループ15と合成用流路14とが連通することで形成される(
図3、4、7参照)。
【0023】
六方切替バルブ1は、例えば、ポート(1)~(6)が設けられたステータと、流路a~fを形成するための3つの流路溝が形成されたローターとを備えるロータリーバルブにより構成することができる。ローターを回転させることにより、第1流路と第2流路とを切り替えることができる。
【0024】
サンプルループ15は、
図1に示す例では、連続して合成用流路14に送液される液相の一部を気相に置き換えて、合成用流路14に気相と液相を交互に流出させる際に、気相を一時的に貯留する機能を有する。つまり、気相と液相の混合比はサンプルループ15内に貯留させる量により調整が可能である。したがって、気相と液相の合成反応の条件を考慮して、サンプルループ15の長さ等を決定することができる。
【0025】
図1に示す例では、フロー合成装置2は、前述のマイクロミキサー1;気相供給用流路11の上流側に順に設けられる、逆止弁16、気相の流量を制御するマスフローコントローラー17、気相を貯留する気相ボンベ18;液相供給用流路12の上流側に順に設けられる、逆止弁19、ポンプ20、液相を貯留する液相容器21;排出用流路13の下流側に設けられる廃棄槽22;合成用流路14の下流側に順に設けられる反応槽23、生成物を貯留する回収容器24を有する。
【0026】
図1に示す例では、気相ボンベ18、液相容器21はそれぞれ1つのみであるが、必要に応じて複数設けることができる。尚、気相同士、液相同士は一般的なマイクロミキサーで混合可能である。反応槽23の構成は、合成反応に応じて選択可能である。例えば、固体触媒が内部に充填された触媒カラム、螺旋状等の形状を有する反応用管等が挙げられる。触媒カラムに充填される固体触媒としては、例えば、パラジウム炭素(Pd/C)等が挙げられる。反応槽23には、必要に応じて加熱装置等を設けることができる。
【0027】
図1に示すフロー合成装置2は、六方切替バルブ10、ポンプ20、逆止弁16、19、マスフローコントローラー17の動作を制御する制御部を有するものであってもよい。
【0028】
図1に示すマイクロミキサー1、フロー合成装置2の動作を
図2~7に基づき説明する。尚、
図1は、動作前の停止状態を示したものであり、
図2~7では、流路内の気相の流れを実線で、液相の流れを波線で示す。また、矢印で流れ方向を示す。
【0029】
先ず
図1に示すように、六方切替バルブ10を第1流路の状態にして、所望の気相、液相などを準備する。そして、
図2に示すように、第1流路の状態で、気相及び液相を送液する。気相は、マスフローコントローラー17により流量を制御しながら、流路11から、流路a、サンプルループ15、流路c、流路13へ送液される。場合により、廃棄槽22に到達し得る。廃棄槽22は、気相は外部に安全に放出可能なように構成されている。また、外部に放出させた気相を回収し再利用可能なように構成してもよい。液相は、ポンプ20により流量を制御しながら、流路12、流路b、流路14へ送液される。場合により、反応槽23、回収容器24に到達し得る。サンプルループ15の全体に気相が貯留され、流路14に液相が到達した後、
図3に示すように、バルブ10を第2流路に切り替える。
【0030】
図3は、バルブ10を
図2に示す第1流路の状態から第2流路に切り替えた直後のマイクロミキサー1の気相と液相の流路内の状態を示したものである。
図3に示すように、第1流路において流路a、流路b、流路cを構成し、各流路に存在する気相又は液相が、それぞれ、第2流路において流路e、流路f、流路dに移動する。流路dの気相は、流路11から流入する気相により、流路13に押し出され、流路13に存在していた気相に挟まれながら廃棄槽22に流入する。サンプルループ15内に流入させた気相は、流路eの気相とともに、流路fに存在する液相と流路12から流入する液相により、流路14に押し出される。この際、気相の下流側には流路14にも液相が存在しているため、気相は、液相に挟まれながら、流路14に流入する。即ち、液相、気相、液相の順に流路14に流出していくことになる。そして、
図4に示すように、
図3に示す状態から、サンプルループ15内の気相の全てを流路14に流入させる。
【0031】
その後、バルブ10を第1流路に切り替える。
図5は、バルブ10を
図4に示す第2流路の状態から、第1流路に切り替えた直後のマイクロミキサー1の気相と液相の流路内の状態を示したものである。
図5に示すように、
図4に示す第2流路において流路e、流路f、流路dを構成し、各流路に存在する気相又は液相が、それぞれ、第1流路において流路a、流路b、流路cに移動する。流路bに存在する液相は、流路12から流入する液相により押し出され、流路14に存在していた液相(場合により気相であり得る)に挟まれながら流路14に流入する。サンプルループ15内に流入させた液相は、流路aの液相及び流路cの気相とともに、流路11から流入する気相により、流路13に押し出される。そして、
図6に示すように、サンプルループ15内に気相を流入させ、その全体に貯留させる。
【0032】
その後、バルブ10を第2流路に切り替える。
図7は、バルブ10を
図6に示す第1流路の状態から、第2流路に切り替えた直後のマイクロミキサー1の気相と液相の流路内の状態を示したものである。
図7に示すように、
図6に示す第1流路において流路a、流路b、流路cを構成し、各流路に存在する気相又は液相が、それぞれ、第2流路において流路e、流路f、流路dに移動する。流路dの気相は、流路11から流入する気相により、流路13に押し出され、流路13に存在していた液相に挟まれながら廃棄槽22に流入する。このように廃棄槽22には、気相と液相が流入し得る。流入した液相は、前述の気相の場合と同様に、外部に放出して再利用可能なように構成してもよい。サンプルループ15内に流入させた気相は、流路eの気相とともに、流路fに存在する液相と流路12から流入する液相により、流路14に押し出される。この際、気相の下流側には流路14にも液相が存在しているため、気相は、液相に挟まれながら、流路14に流入する。即ち、液相、気相、液相の順に流路14に流出していくことになる。そして、例えば
図4に示すのと同様に、サンプルループ15内に存在する気相の全てが流路14に押し出された後、再度
図5に示すようにバルブ10を第1流路に切り替える。
【0033】
以上のように、バルブ10の第1流路と第2流路とを交互に繰り返し切り替えることで、圧力差の影響を受けることなく、液相を流路12から流路14に流入させる際に、サンプルループ15内に流入させた気相を液相と液相の間に繰り返し連続して流入させることが可能になる。また、サンプルループ15の容量は一定であることから、液相の流量を制御することで、所望の量比となるように液相と気相とを交互に流路14に流出させることができる。
【0034】
このように所定の量比となるように流路14に交互に流出させた液相と気相は所望の条件に調整した反応槽23において、連続して所定の気液反応をさせることができる。特に、反応槽23が、固体触媒が充填された触媒カラムを備える場合、触媒カラム内において気相と液相とが撹拌されながら触媒粒子間を移動すると考えられ、気相と液相が効率的に反応する傾向にあると考えられる。
【0035】
反応槽23において気液反応による生成した生成物は、未反応物とともに回収容器24で回収される。回収容器24は、気相を外部に排出することが可能なように構成することができる。
【0036】
本実施形態では、六方切替バルブ10が、気相供給用流路11とサンプルループ15と排出用流路13が連通すると同時に、液相供給用流路12と合成用流路14とが連通する第1流路と、気相供給用流路11と排出用流路13が連通すると同時に、液相供給用流路12とサンプルループ15と合成用流路14とが連通する第2流路とに切り替え可能となるように構成し、第1流路と第2流路とを交互に切り替えて、少なくともサンプルループ15に流入させた気相を合成用流路14に流出させることで液相と気相を合成用流路14に交互に流出させるように構成している。
【0037】
本実施形態の変形例として、例えば、気相と液相の配置を入れ替えて、構成することができる。この場合、六方切替バルブ10のポート(1)、(4)がそれぞれ、液相供給用流路と連結する液相供給口、気相供給用流路と連結する気相供給口となり、その他の構成は前述の実施形態と同じである。そして、六方切替バルブは、液相供給用流路(
図1~7の符号11に対応することになる)とサンプルループ15と排出用流路13が連通すると同時に、気相供給用流路(
図1~7の符号12に対応することになる)と合成用流路14とが連通する第1流路と、液相供給用流路と排出用流路13が連通すると同時に、気相供給用流路とサンプルループ15と合成用流路14とが連通する第2流路とに切り替え可能となるように構成される。また、前述の実施形態の場合と同様にして、第1流路と第2流路とを交互に切り替えて、少なくともサンプルループ15に流入させた液相を合成用流路14に流出させることで、液相と気相を合成用流路14に交互に流出させることが可能となるようにすることができる。尚、この変形例は、反応槽23内の圧力が気相供給用流路(
図1~7の符号12に対応する)内の圧力より低い場合に適用可能である。
【0038】
以上述べたように、マイクロミキサー1は六方切替バルブ10を有することで、気相と液相の圧力差に関わらず、流路14に対して、気相と液相を交互に流出させ、両相を合流させることが可能である。そのため、流路14の下流側、特に、反応槽23の下流側に圧力調整装置が設けられていなくても、気相と液相とを所望の量比で反応槽23に供給することが可能である。
【0039】
このようなマイクロミキサー及びこれを有するフロー合成装置は、気相と液相とを反応させる各種の気液反応に適用可能である。このような気液反応系としては、例えば、接触水素化等が挙げられるが、これに限定されるわけではない。
【実施例0040】
(実験例)
以下では、前述の
図1に示すような実施形態に係るマイクロミキサー1を用いて、
図2~7に示すような工程を行い、別々に連続して供給する気相と液相を所定の量比で交互に合成用流路14に流出させる実験を行った。
【0041】
条件は下記のとおりである。
気相:窒素、流量10cc/min
液相:ポリエチレングリコール300、流量1.0ml/min
サンプルループ15:長さ100mm、内径1.0mm
流路11~14の幅(内径):1.0mm
流路a(e)、b(f)、c(d)の幅:0.25mm
【0042】
その結果、無色の窒素ガス(気相)と淡い黄色に着色したポリエチレングリコール(液相)とが交互に流路14に連続して流出し、流路11に液相の逆流がないことを目視により確認した。その際の合成用流路14に流出している流体の撮像を
図8に示す。
図8に示すように、流路14において、符号A~Dで示す矢印の位置に気相と液相の境界が観察され、液相(
図8中の例えばAB間等)と気相(
図8中の例えばBC間等)とが連続して交互に流出していることが分かる。したがって、気相及び液相を所望の気液反応系の基質とした場合に流路14の下流側の反応槽において連続して所望の気液反応をさせることが可能であることが分かる。
1 フロー合成装置用マイクロミキサー;2 フロー合成装置;10 六方切替バルブ;11 気相供給用流路;12 液相供給用流路;13 排出用流路;14 合成用流路;15 サンプルループ;15a 一方端;15b 他方端;16、19 逆止弁;17 マスフローコントローラー;18 気相ボンベ;20 ポンプ;21 液相容器;22 廃棄槽;23 反応槽;24 回収容器;A、B、C、D 気相と液相の境界。