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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023017
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126540
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】野村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 草
(57)【要約】
【課題】リフィルの転写ヘッドを好適に保護し得る転写具を提供する。
【解決手段】繰出用リール及び巻取用リールを収容するケースAを有し、繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドSを経由させて巻取用リールに巻き取らせるように構成された転写具であって、繰出用リール、巻取用リール、及び、転写ヘッドSはケースAに着脱可能なリフィルEを構成するものであり、転写ヘッドSが、転写ローラーs1と支持体s2とを有し、ケースAは、転写ヘッドSの近傍に保護壁m12が設けられ、保護壁m12の内面には、転写ヘッドSの少なくとも一部を収納する凹部2を備えている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出用リール及び巻取用リールを収容するケースを有し、前記繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて前記巻取用リールに巻き取らせるように構成された転写具であって、
前記繰出用リール、前記巻取用リール、及び、前記転写ヘッドはケースに着脱可能なリフィルを構成するものであり、
前記転写ヘッドが、前記転写テープを被転写面に対して押し付ける転写端部と、前記転写端部を支持する支持体とを有し、
前記ケースは、前記転写ヘッドの近傍に保護壁が設けられたものであり、
前記保護壁の内面には、前記転写ヘッドの少なくとも一部を収納する凹部を備えた転写具。
【請求項2】
前記保護壁が、前記転写ヘッドの左右に対をなして配設されている請求項1記載の転写具。
【請求項3】
前記ケースが、前記リフィルの左右に位置する左側壁及び右側壁と、これら左側壁及び右側壁における周縁部間に配設された周壁とを備えたものであり、
前記保護壁が、前記左側壁及び前記右側壁の前部にそれぞれ配設されている請求項2記載の転写具。
【請求項4】
前記凹部が、前記支持体の一部を収納するものである請求項1記載の転写具。
【請求項5】
前記支持体が、前後方向に延びてなり先端部において前記転写端部を支持する支持壁を備えたものであり、この支持壁の一部が前記凹部に収納されている請求項4記載の転写具。
【請求項6】
前記凹部が、前記支持体の一部に外嵌するものである請求項4記載の転写具。
【請求項7】
前記凹部が、前記支持体の一部を移動可能に収納するものである請求項4記載の転写具。
【請求項8】
前記リフィルが、リフィルベースと、このリフィルベースに前記支持体が一体化された前記転写ヘッドと、前記リフィルベースに対して回転可能に支持された前記繰出用リール及び前記巻取用リールとを備えたものである請求項1記載の転写具。
【請求項9】
前記転写端部が、前記支持体に対して回転可能に支持された転写ローラーである請求項1記載の転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、先端部に糊等の転写物を転写するための転写ヘッドが設けられたリフィルを有し、このリフィルをケースに装着して使用される種々の転写具が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
リフィルの転写ヘッドは、転写操作時において用紙等の転写対象面を押圧するものであるため、押圧に伴う弾性変形に耐えることができるよう一定の剛性が確保されたものとなっている。
【0004】
ところが、従来のものでは、転写具において使用者に注目されやすい部位となる転写ヘッドの外観がリフィル側の構造に委ねられており、意匠性を向上させる設計の自由度が制限されていた。
【0005】
また、リフィルはいわゆる消耗品であるため、テープに保持された転写物が尽きた場合には、基本的に廃棄されるものとなっている。そのため、廃棄される樹脂の量を抑制するためには、リフィルにおける転写ヘッドが比較的スリムに構成されることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-062537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、リフィルの転写ヘッドを好適に保護する転写具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、繰出用リール及び巻取用リールを収容するケースを有し、前記繰出用リールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて前記巻取用リールに巻き取らせるように構成された転写具であって、前記繰出用リール、前記巻取用リール、及び、前記転写ヘッドはケースに着脱可能なリフィルを構成するものであり、前記転写ヘッドが、前記転写テープを被転写面に対して押し付ける転写端部と、前記転写端部を支持する支持体とを有し、前記ケースは、前記転写ヘッドの近傍に保護壁が設けられたものであり、前記保護壁の内面には、前記転写ヘッドの少なくとも一部を収納する凹部を備えた転写具である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記保護壁が、前記転写ヘッドの左右に対をなして配設されている請求項1記載の転写具である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記ケースが、前記リフィルの左右に位置する左側壁及び右側壁と、これら左側壁及び右側壁における周縁部間に配設された周壁とを備えたものであり、前記保護壁が、前記左側壁及び前記右側壁の前部にそれぞれ配設されている請求項2記載の転写具である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記凹部が、前記支持体の一部を収納するものである請求項1記載の転写具である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記支持体が、前後方向に延びてなり先端部において前記転写端部を支持する支持壁を備えたものであり、この支持壁の一部が前記凹部に収納されている請求項4記載の転写具である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記凹部が、前記支持体の一部に外嵌するものである請求項4記載の転写具である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記凹部が、前記支持体の一部を移動可能に収納するものである請求項4記載の転写具である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記リフィルが、リフィルベースと、このリフィルベースに前記支持体が一体化された前記転写ヘッドと、前記リフィルベースに対して回転可能に支持された前記繰出用リール及び前記巻取用リールとを備えたものである請求項1記載の転写具である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記転写端部が、前記支持体に対して回転可能に支持された転写ローラーである請求項1記載の転写具である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、リフィルの転写ヘッドを好適に保護する転写具を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における部分拡大斜視図。
図3】同実施形態における右側面図。
図4図2におけるV方向矢視図。
図5】同実施形態における分解斜視図。
図6】同実施形態における分解斜視図。
図7】同実施形態における分解斜視図。
図8】同実施形態におけるケースの内面側を説明するための右側面図。
図9】同実施形態におけるケースの内面側を説明するための左側面図。
図10】同実施形態におけるリフィルの部分拡大右側面図。
図11】同実施形態におけるリフィルの部分拡大左側面図。
図12図3におけるX-X線断面図。
図13図3におけるY-Y線断面図。
図14】同実施形態における転写ヘッド及びその近傍の左右方向中央断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図1~14を参照して説明する。
【0021】
この実施形態は、本発明を、転写テープtに添着された転写物である糊(図示せず)を用紙等の被転写面(図示せず)に対して転写するための転写具に適用したものである。
【0022】
転写具は、繰出用リールQから繰り出された転写テープtを、転写ヘッドSを経由させて巻取用リールRに巻き取らせるようにしたものである。
【0023】
転写具は、内部にリフィルEが収容される収容空間spが形成されたケースAと、繰出用リールQ及び巻取用リールRを保持するとともに先端部に転写ヘッドSが配設されたリフィルEと、転写ヘッドSを覆うキャップBとを備えている。
【0024】
ケースAとリフィルEとの間には、繰出用リールQと巻取用リールRとを連動させる連動機構Fが設けられている。
【0025】
以下、転写具について詳述する。
【0026】
<<ケースA>>
ケースAは、繰出用リールQ及び巻取用リールRを収容するものである。ケースAには、内部に転写テープtを保持したリフィルEを収容し得る収容空間spが形成されている。
【0027】
ケースAは、リフィルEの左右に配設される左側壁m1及び右側壁n1と、左側壁m1及び右側壁n1における周縁部間に配設された周壁Wとを備えている。周壁Wは、上壁・下壁・後壁によって構成され、リフィルEの上側、下側、及び、後側を覆うものとなっている。
【0028】
ケースAの先端部には、転写テープtを転写ヘッドSの転写ローラーs1に導出するとともに転写ローラーs1を経由した転写テープtをケースAの内部に導入するための開口部Lが設けられている。
【0029】
左側壁m1及び右側壁n1の前部には、開口部Lを臨む位置に転写ヘッドSを保護する左右一対の保護壁である左保護壁m12及び右保護壁n12を備えている。左保護壁m12及び右保護壁n12は、起立板状をなしており転写ヘッドSを両側部から挟むように当該転写ヘッドSの左右両側に対をなして配設されている。
【0030】
ケースAは、リフィルEの左側、及び、リフィルEの上側・下側・後側を部分的に覆う主ケース部Mと、リフィルEの右側、及び、リフィルEの上側・下側・後側を部分的に覆うカバー部Nとを備えている。
【0031】
<主ケース部M>
主ケース部Mは、収容空間spに収容されたリフィルEにおける左側の略全部、上側の略左半分、下側における前部分の略全部・後部分の略左半分、及び、後側の略左半分を覆う形態をなしている。
【0032】
すなわち、主ケース部Mは、起立姿勢をなす左側壁m1と、左側壁m1における周縁部から当該左側壁m1に対して略直交する方向に延設され左上壁部m2・左下壁部m3・左後壁部m4によって構成された左の周壁構成部分を備えている。
【0033】
[左側壁m1]
左側壁m1は、リフィルベースe1、繰出用リールQ、及び、巻取用リールRの左側を覆う左側壁本体m11と、左側壁本体m11の前端部から前方に延設され転写ヘッドSの左側を覆う保護壁である左保護壁m12とを備えたものである。
【0034】
まずは、左側壁本体m11について説明する。
【0035】
左側壁本体m11は、リフィルEの前端部以外の部分、すなわち、リフィルEにおける転写ヘッドS以外の部分の左側を覆うものである。左側壁本体m11は、その内面側に、リフィルベースe1の前端部に設けられたボス部e17に嵌合する位置決め用の凸部maを備えている。
【0036】
また、左側壁本体m11の内面側には、繰出ギア7、巻取ギア6、及び、中間ギア5をそれぞれ回転可能に支持し得る図示しないギア支持軸が突設されている。
【0037】
左側壁本体m11の内面側には、リフィルEの繰出用リールQに対応する位置にポリオキシメチレン(POM)樹脂製の第二の繰出用リール摺接部材G2が配設されており、巻取用リールRに対応する位置にポリオキシメチレン(POM)樹脂製の第二の巻取用リール摺接部材H2が配設されている。
【0038】
続いて、左保護壁m12について詳述する。なお、後で詳述する右保護壁n12は、左保護壁m12と略左右対称に構成されている。
【0039】
左保護壁m12は、前方に向かって漸次上下寸法が短くなるように形成された側面視において略三角形状をなしている。左保護壁m12の先端部には、転写ヘッドSに設けられた転写ローラーs1の軸支持部sjを避けるように部分円弧状に凹んだ形状の切欠部1が形成されている。
【0040】
左保護壁m12の外面側には、下部に閉位置のキャップBの一部が配設される凹所4が形成されている。凹所4には、閉位置のキャップBと節度係合し得る突起4tが配設されている。
【0041】
左保護壁m12の内面側には、転写ヘッドSの一部を収納する凹部2が形成されている。この実施形態の凹部2は、転写操作時における支持体s2が撓まない姿勢で転写ヘッドSの上下位置を規制し得る規制部を構成するものである。左保護壁m12の内面側には、凹部2に隣接する箇所に規制部である凸部3が設けられている。
【0042】
凹部2は、転写ヘッドSの少なくとも一部、すなわち、支持体s2の一部を収納するものである。なお、転写ヘッドSの支持体s2は、前後方向に延びてなり先端部において転写ローラーs1を支持する左右の支持壁s22を備えており、当該支持壁s22の外側部が凹部2の内部に位置するものとなっている。
【0043】
凹部2は、支持体s2の側部に対して嵌合(外嵌)するものとなっている。転写ヘッドSは、凹部2に対して、前後方向にフレーム状に延びた左の支持壁s22が内嵌されるように構成されている。
【0044】
凹部2は、左保護壁m12の後部側に設けられ左の支持壁s22における後支持壁部分srが内嵌される後凹部構成部分21と、左保護壁m12の前部側に設けられ左の支持壁s22における前支持壁部分sfが内嵌される前凹部構成部分22と、後凹部構成部分21と前凹部構成部分22との間に設けられ左の支持壁s22における中間支持壁部分scが内嵌される中間凹部構成部分23とを備えている。
【0045】
凹部2を構成する後凹部構成部分21、中間凹部構成部分23、及び、前凹部構成部分22は連設されたものとなっている。
【0046】
前凹部構成部分22は、後凹部構成部分21よりも上下寸法が長く設定されている。中間凹部構成部分23は、前凹部構成部分22よりも上下幅寸法が長く設定されている。凹部2に嵌合される転写ヘッドSの支持壁s22は、上下寸法を異ならせた凹部構成部分21、22、23に対応した形状をなしている。
【0047】
規制部である凸部3は、側面視において略L字状をなしたものである。凸部3は、凹部2の上縁部側に設けられている。凸部3は、転写ヘッドSの支持体s2に対して係合するように左保護壁m12の内面から内方に突出したものである。
【0048】
この実施形態では、凸部3は、前後方向に延びた第一突出部分31と、第一突出部分31の前端部から第一突出部分31に対して略直交する上方に延びた第二突出部分32を備えている。
【0049】
第一突出部分31は、転写ヘッドSにおける左の支持壁s22を構成する後支持壁部分srの上縁部に対して係わり合い、転写操作時における後支持壁部分srの上方への撓み変形を規制し得るものとなっている。
【0050】
第二突出部分32は、転写ヘッドSにおける左の支持壁s22を構成する中間支持壁部分scの背面側及びテープガイド壁s23を構成する起立壁部shの背面側に対して係わり合い、転写操作時における中間支持壁部分scの後方への撓み変形を規制し得るものとなっている。
【0051】
[左上壁部m2・左下壁部m3・左後壁部m4]
左上壁部m2及び左下壁部m3には、カバー部Nに設けられた複数の着脱用の係合爪vが係合し得る爪係合部dが設けられている。また、左下壁部m3には、カバー部Nに設けられた位置決め突起zが係合し得る突起係合部xが設けられている。
【0052】
左後壁部m4には、ヒンジ部を構成する一対の軸部jが設けられている。一対の軸部jは、カバー部Nに設けられた一対の軸受部yに対して枢着されるようになっている。
【0053】
左下壁部m3の前端部には、前方に延びてなり左右に対をなす左右の支持アームPが設けられている。左右の支持アームPには、キャップBを閉位置と開位置との間で回転可能に支持するキャップ支持部p1、及び、キャップBを閉位置方向及び開位置方向に付勢し得る付勢部材Cを回転可能に支持する付勢部材支持部p2が設けられている。
【0054】
<カバー部N>
カバー部Nは、収容空間spを開閉し得るように主ケース部Mに対して回転可能に構成されている。カバー部Nは、ヒンジ部を介して主ケース部Mに対して回転可能に支持されている。
【0055】
カバー部Nは、主ケース部Mと協働して収容空間spを閉じる閉じ姿勢と、リフィルEの交換作業ができるように収容空間spを開放し得る開放姿勢との間で姿勢変更可能に構成されている。
【0056】
カバー部Nは、収容空間spに収容されたリフィルEにおける右側、上側の略右半分、下側における後部の略右半分、及び、後側の略右半分を覆う形態をなしている。
【0057】
すなわち、カバー部Nは、起立姿勢をなす右側壁n1と、右側壁n1における周縁部から当該右側壁n1に対して略直交する方向に延設され右上壁部n2・右下壁部n3・右後壁部n4とによって構成された右の周壁構成部分を備えている。
【0058】
[右側壁n1]
右側壁n1は、リフィルフレーム、繰出用リールQ、及び、巻取用リールRの右側を覆う右側壁本体n11と、右側壁本体n11の前端部から前方に延設され転写ヘッドSの右側を覆う保護壁である右保護壁n12とを備えたものである。
【0059】
まずは、右側壁本体n11について説明する。
【0060】
右側壁本体n11は、リフィルEの前端部以外の部分、すなわち、リフィルEにおける転写ヘッドS以外の部分の右側を覆うものである。右側壁本体n11は、その内面側に、リフィルベースe1の前端部に設けられた嵌合突起e18に嵌合する嵌合凹部e18を備えている。
【0061】
右側壁本体n11の内面側には、リフィルEの繰出用リールQに対応する位置にポリオキシメチレン(POM)樹脂製の第一の繰出用リール摺接部材G1が配設されており、巻取用リールRに対応する位置にポリオキシメチレン(POM)樹脂製の第一の巻取用リール摺接部材H1が配設されている。
【0062】
続いて、右保護壁n12について詳述する。右保護壁n12は、左保護壁m12と略左右対称に構成されているため、同一の符号を付して説明する。
【0063】
右保護壁n12は、前方に向かって漸次上下寸法が短くなるように形成された側面視において略三角形状をなしている。右保護壁n12の先端部には、転写ヘッドSに設けられた転写ローラーs1の軸支持部sjを避けるように部分円弧状に凹んだ形状の切欠部1が形成されている。
【0064】
右保護壁n12の外面側には、下部に閉位置のキャップBの一部が配設される凹所4が形成されている。凹所4には、閉位置のキャップBと節度係合し得る突起4tが配設されている。
【0065】
右保護壁n12の内面側には、転写ヘッドSの一部を収納する凹部2が形成されている。この実施形態の凹部2は、転写操作時における支持体s2が撓まない姿勢で転写ヘッドSの上下位置を規制し得る規制部を構成するものである。右保護壁n12の内面側には、凹部2に隣接する箇所に規制部である凸部3が設けられている。
【0066】
凹部2は、転写ヘッドSの少なくとも一部、すなわち、支持体s2の一部を収納するものである。なお、転写ヘッドSの支持体s2は、前後方向に延びてなり先端部において転写ローラーs1を支持する左右の支持壁s22を備えており、当該支持壁s22の外側部が凹部2の内部に位置するものとなっている。
【0067】
凹部2は、支持体s2の側部に対して嵌合(外嵌)するものとなっている。転写ヘッドSは、凹部2に対して、前後方向にフレーム状に延びた右の支持壁s22が内嵌されるように構成されている。
【0068】
凹部2は、右保護壁n12の後部側に設けられ右の支持壁s22における後支持壁部分srが内嵌される後凹部構成部分21と、右保護壁n12の前部側に設けられ右の支持壁s22における前支持壁部分sfが内嵌される前凹部構成部分22と、後凹部構成部分21と前凹部構成部分22との間に設けられ右の支持壁s22における中間支持壁部分scが内嵌される中間凹部構成部分23とを備えている。
【0069】
凹部2を構成する後凹部構成部分21、中間凹部構成部分23、及び、前凹部構成部分22は連設されたものとなっている。
【0070】
前凹部構成部分22は、後凹部構成部分21よりも上下寸法が長く設定されている。中間凹部構成部分23は、前凹部構成部分22よりも上下幅寸法が長く設定されている。凹部2に嵌合される転写ヘッドSの支持壁s22は、上下寸法を異ならせた凹部構成部分21、22、23に対応した形状をなしている。
【0071】
規制部である凸部3は、側面視において略L字状をなしたものである。凸部3は、凹部2の上縁部側に設けられている。凸部3は、転写ヘッドSの支持体s2に対して係合するように右保護壁n12の内面から内方に突出したものである。
【0072】
この実施形態では、凸部3は、前後方向に延びた第一突出部分31と、第一突出部分31の前端部から第一突出部分31に対して略直交する上方に延びた第二突出部分32を備えている。
【0073】
第一突出部分31は、転写ヘッドSにおける右の支持壁s22を構成する後支持壁部分srの上縁部に対して係わり合い、転写操作時における後支持壁部分srの上方への撓み変形を規制し得るものとなっている。
【0074】
第二突出部分32は、転写ヘッドSにおける右の支持壁s22を構成する中間支持壁部分scの背面側及びテープガイド壁s23を構成する起立壁部shの背面側に対して係わり合い、転写操作時における中間支持壁部分scの後方への撓み変形を規制し得るものとなっている。
【0075】
[右上壁部n2・右下壁部n3・右後壁部n4]
右上壁部n2及び右下壁部n3には、複数の着脱用の係合爪vが設けられている。また、右下壁部n3には、位置決め突起zが突設されている。
【0076】
右後壁部n4には、ヒンジ部を構成する一対の軸受部yが設けられている。
【0077】
<<リフィルE>>
リフィルEは、糊が添着された転写テープtを保持したものである。リフィルEは、リフィルベースe1と、リフィルベースe1に対して回転可能に支持された繰出用リールQと、繰出用リールQよりも後に配設されリフィルベースe1に対して回転可能に支持された巻取用リールRと、リフィルベースe1の前端部に連設された転写ヘッドSを備えたものである。
【0078】
転写ヘッドS、繰出用リールQ、及び、巻取用リールRは、ケースAに対して着脱可能なリフィルEを構成するものとなっている。
【0079】
<リフィルベースe1>
リフィルベースe1は、繰出用リールQ、及び、巻取用リールRの右側部に配されたフレーム状をなしている。
【0080】
リフィルベースe1は、板状をなし中心部に繰出用リールQを回転可能に支持し得る繰出用リール支持部(図示せず)を有した第一の側板部分e11と、板状をなし中心部に巻取用リールRを回転可能に支持し得る巻取用リール支持部(図示せず)を有した第二の側板部分e12と、フレーム状をなし第一、第二の側板部分e11、e12の上部間を繋ぐ上連結部分e13と、フレーム状をなし第一、第二の側板部分e11、e12の下部間を繋ぐ下連結部分e14と、フレーム状をなし第一の側板部分e11の上部から前方に延出し当該第一の側板部分e11と主ケース部Mの左側壁本体m11に突設された位置決め用の凸部maに係合するボス部e17との間を繋ぐ前上連結部分e15と、第一の側板部分e11の下部から前方に延出し当該第一の側板部分e11の下部と左側壁本体m11の凸部maに係合するボス部e17との間を繋ぐ前下連結部分e16と、左右方向に延びた円筒状をなし一方すなわち左側に開放されたボス部e17を備えている。ボス部e17の他方すなわち右の側端部には、外側方に突出しカバー部Nに設けられた嵌合凹部naに嵌合される嵌合突起e18が設けられている。
【0081】
リフィルベースe1の前端部には、前方に延びるようにして転写ヘッドSの支持体s2が一体に連設されている。
【0082】
<繰出用リールQ>
繰出用リールQには、転写テープtが巻回保持されている。繰出用リールQから導出された転写テープtは、転写ヘッドSを経由して巻取用リールRに繋がったものとなっている。
【0083】
<巻取用リールR>
巻取用リールRは、繰出用リールQから繰り出された後に転写ヘッドSを経由した転写テープtを巻き取るものである。
【0084】
巻取用リールRは、連動機構Fにより、転写具の使用すなわち転写テープtに添着した糊を用紙等の被転写面に転写する操作(転写ローラーs1が被転写面の上を走行する操作)に連動して転写テープtを巻き取るものである。
【0085】
<転写ヘッドS>
転写ヘッドSは、糊を用紙等の被転写面に対して転写させるものである。転写ヘッドSは、転写テープtを被転写面に対して押し付ける転写端部である転写ローラーs1と、転写ローラーs1を回転可能に支持し得る支持体s2とを備えている。
【0086】
[転写ローラーs1]
転写ローラーs1は、左右方向に延びてなるものである。転写ローラーs1は、左右方向に延びた略円柱状をなすローラー本体s11と、ローラー本体s11の左右両端部に突設された軸部s12とを備えたものである。左右の軸部s12は、支持体s2における左右の支持壁s22の先端部に配設された軸支持部sjに支持されるようになっている。
【0087】
[支持体s2]
支持体s2は、前後方向に長手をなし上下方向の寸法が抑制された薄板状及びフレーム状の部分を主体に構成されたものである。支持体s2の後端部は、リフィルベースe1と一体化されている。
【0088】
支持体s2は、リフィルベースe1の先端部すなわちボス部e17の前端部から前方に向かって延設されたベース部s21と、ベース部s21の左右両端部に対をなして設けられ先端部に転写ローラーs1の軸部s12を支持する軸支持部sjが設けられた左右の支持壁s22と、ベース部s21の先端部近傍から上方に立設され転写テープtの左右位置を規制し得るテープガイド壁s23とを備えている。
【0089】
ベース部s21は、伏臥姿勢をなし、左右方向及び前後方向に延びた板状をなしている。ベース部s21の後端部は、リフィルベースe1の前端部であるボス部e17の前部に一体に連続したものとなっている。
【0090】
左右の支持壁s22は、全体として前後方向に延びた起立壁状をなしている。左右の支持壁s22は、前方への延出端部である先端部に軸支持部sjが設けられている。左右の支持壁s22の前部は、ベース部s21に対して片持ち状に支持されている。
【0091】
左右の支持壁s22は、後部に配設された後支持壁部分srと、前部に配設され前端部に軸支持部sjが設けられた前支持壁部分sfと、後支持壁部分srと前支持壁部分sfとの間に配設された中間支持壁部分scとを備えている。
【0092】
前支持壁部分sfは、後支持壁部分srよりも上下寸法が長く設定されている。すなわち、前支持壁部分sfは、後支持壁部分srよりも上方に突出したものとなっている。
【0093】
中間支持壁部分scは、前後寸法が短く設定されたものであり、前支持壁部分sfよりも上下寸法が長く設定されている。すなわち、中間支持壁部分scは、前支持壁部分sfよりも上方に突出したものとなっている。中間支持壁部分scは、テープガイド壁s23における左右の起立壁部shの各外側縁に一体に連結されている。
【0094】
左右の支持壁s22を構成する前支持壁部分sf、中間支持壁部分sc、及び、後支持壁部分srの各下端縁は、共通の仮想直線cf上に揃うように設定されている。一方で、前支持壁部分sf、中間支持壁部分sc、及び、後支持壁部分srの各上端縁は、仮想直線cfから異なる離間距離に設定されている。
【0095】
テープガイド壁s23は、左右に離間して配設された一対の起立壁部shと、左右の起立壁部shの基端部間を繋ぐ基端壁部seとを備えたものである。テープガイド壁s23は、正面視において上向きコ字状ないしチャンネル状をなしている。テープガイド壁s23は、左右に離間した一対の起立壁部shの内側縁部に対して転写テープtが当接した場合に、当該転写テープtの適切な左右方向の位置を案内するものとなっている。
【0096】
<<連動機構F>>
連動機構Fは、リフィルEとケースAとの間に設けられている。連動機構Fは、使用者による転写操作により生じた繰出用リールQのトルクを巻取用リールRに対して適切に伝達するためのものである。
【0097】
連動機構Fは、ケースAに対して回転可能に支持された繰出ギア7と、繰出ギア7に対して相対回転可能に保持され繰出用リールQに係わり合うクラッチ部材u1と、クラッチ部材u1に対して繰出ギア7が摺動回転し得るようにクラッチ部材u1を繰出ギア7に対して押圧する図示しないクラッチバネと、繰出ギア7に噛合する中間ギア5と、中間ギア5に噛合する巻取ギア6とを備えたものである。
【0098】
繰出ギア7と繰出用リールQとの間には、クラッチ部材u1及びクラッチバネを含んでなるクラッチUが設けられている。クラッチUは、転写テープtに過度の引っ張り力が作用しないようにするための既知の構成のものである。
【0099】
<<キャップB>>
キャップBは、不使用時において、転写ヘッドSが外部に露出しないように覆い得るものである。キャップBは、転写ヘッドSの前側、下側、及び、左右両側を覆うことができる立体的形状のものである。
【0100】
この実施形態のキャップBは、ケースAとの間に介設された付勢部材Cにより、中間位置から開位置方向に付勢されるとともに中間位置から閉位置方向に付勢されるものとなっている。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る転写具は、繰出用リールQ及び巻取用リールRを収容するケースAを有し、繰出用リールQから繰り出された転写テープtを転写ヘッドSを経由させて巻取用リールRに巻き取らせるように構成された転写具である。
【0102】
そして、繰出用リールQ、巻取用リールR、及び、転写ヘッドSはケースAに着脱可能なリフィルEを構成するものであり、転写ヘッドSが、転写テープtを被転写面に対して押し付ける転写端部たる転写ローラーs1と、転写ローラーs1を支持する支持体s2とを有している。
【0103】
ケースAは、転写ヘッドSの近傍に保護壁である左保護壁m12及び右保護壁n12が設けられたものであり、各保護壁m12、n12の内面には、転写ヘッドSの少なくとも一部を収納する凹部2を備えたものである。
【0104】
このため、本実施形態であれば、少なくとも、リフィルEの転写ヘッドSを好適に保護し得る転写具を提供することができるものとなる。
【0105】
つまり、ケースAの左保護壁m12及び右保護壁n12に、転写ヘッドSの一部を収納する凹部2が設けられているため、転写ヘッドSは、予期しない外力を直接的に受け難く、好適に保護されたものとなっている。
【0106】
また、ケースAに設けた凹部2によって、リフィルEに設けられた転写ヘッドSは撓み難く構成されているため、転写ヘッドSはスリムな構成を採りつつも転写操作時において安定するものとなっている。
【0107】
しかも、ケースAの左保護壁m12及び右保護壁n12に、転写ヘッドSの一部を収納する凹部2が設けられている。このため、転写ヘッドS、左保護壁m12、及び、右保護壁n12を含んで構成される転写具の前部は、全体的な左右幅寸法が抑制されやすいものとなり、転写具における前部のコンパクト化を図る設計の自由度に優れたものとなっている。
【0108】
さらに、転写具において使用者に注目されやすい部位となる転写ヘッドS付近の外観が、ケースA側の構造(特に、左保護壁m12及び右保護壁n12の構造)にも委ねられることになるため、意匠性を向上させるための設計の自由度に優れたものとなっている。
【0109】
左保護壁m12及び右保護壁n12が、転写ヘッドSの左右に対をなして配設されている。
【0110】
このため、リフィルEの転写ヘッドSは、転写ヘッドSの左右に対をなして配された左保護壁m12及び右保護壁n12によって、好適に保護されたものとなっている。
【0111】
ケースAが、リフィルEの左右に位置する左側壁m1及び右側壁n1と、これら左側壁m1及び右側壁n1における周縁部間に配設された周壁Wとを備えたものである。そして、左保護壁m12及び右保護壁n12が、左側壁m1及び右側壁n1の前部にそれぞれ配設されている。
【0112】
このため、左保護壁m12及び右保護壁n12は、転写ヘッドSを適切に保護することができるように、左側壁m1及び右側壁n1の好適な位置に設けられたものとなっている。
【0113】
凹部2が、支持体s2の一部である左右の支持壁s22を収納するものである。
【0114】
このため、ケースAにおける左保護壁m12及び右保護壁n12に設けられた凹部2は、転写ヘッドSを構成する支持体s2の一部を好適に収納するものとなっている。
【0115】
支持体s2が、前後方向に延びてなり先端部において転写ローラーs1を支持する左右の支持壁s22を備えたものであり、左右の支持壁s22の一部が凹部2に収納されている。
【0116】
このため、凹部2に収納される支持壁s22は、前後方向に延びてなるものであるため、リフィルE側の樹脂材料の量が抑制された比較的スリムな構成を採りやすいものとなっている。
【0117】
そして、ケースAに設けられた凹部2は、前後方向に延びてなる左右の支持壁s22の一部を収納することにより、リフィルEに設けられた転写ヘッドSの撓み変形を抑制しつつ、当該転写ヘッドSを好適に保護するものとなっている。
【0118】
凹部2が、支持体s2の一部である左右の支持壁s22に外嵌するものである。
【0119】
このため、左右の支持壁s22が凹部2に嵌合するため、転写ヘッドSが好適に保護されるとともに転写操作時において安定するものとなっている。
【0120】
リフィルEが、リフィルベースe1と、リフィルベースe1に支持体s2が一体化された転写ヘッドSと、リフィルベースe1に対して回転可能に支持された繰出用リールQ及び巻取用リールRとを備えたものである。
【0121】
このため、リフィルEを構成する転写ヘッドSの支持体s2がリフィルベースe1と一体化された好適な構成をなしている。
【0122】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0123】
凹部は、支持体の一部を移動可能に収納するものであってもよい。
【0124】
すなわち、凹部は、支持体の一部に嵌合しないように構成されたものであってもよい。
【0125】
換言すれば、転写具は、転写ヘッドの支持体が、ケースに設けられた凹部内において撓み変形できるように構成されたものであってもよい。
【0126】
ケースには、規制部を構成する凸部が設けられていないものであってもよい。
【0127】
凹部や凸部の具体的な形状は、本発明の趣旨に対応して、適宜の形状に設定可能であることは言うまでもない。
【0128】
転写ヘッドは、転写テープを被転写面(転写対象物)に押し付ける機能を発揮するものであればよく、本実施形態に示されるものに限られるものではない。
【0129】
転写ヘッドの転写端を構成する部材は、転写ローラーに限られるものではない。転写ヘッドを構成する他の転写端としては、例えば、板面を利用して被転写面に対して転写テープを押し付けるようにした板状部材等を挙げることができる。
【0130】
転写具が転写する転写物は、糊に限られるものではない。他の転写物としては、例えば、修正用の修正剤(修正テープ)や装飾用の装飾剤(装飾テープ)を挙げることができる。
【0131】
ケースの保護壁が、テープの左右位置を規制(案内)する規制壁(案内壁)を兼ねた構成のものであってもよい。
【0132】
摺接部材が形成される「樹脂」とは、ポリオキシメチレン(POM)樹脂に限られるものではない。摺接部材が形成される「樹脂」は、ケース又はケース内に配された静止構造物に適用された樹脂よりも摺動性を有したものであればよい。
【0133】
なお、ポリオキシメチレン(POM)樹脂以外の「樹脂」としては、例えば、ディスペンサを構成する部品の内、比較的大型の部品であるケースの製造に好適な樹脂であるABS樹脂やポリスチレン(PS)樹脂よりも摺動性の優れた樹脂を挙げることができる。
【0134】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0135】
A…ケース
E…リフィル
S…転写ヘッド
2…凹部
m12…左保護壁(保護壁)
n12…右保護壁(保護壁)
s1…転写ローラー(転写端部)
s2…支持体
s22…左右の支持壁
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