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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023018
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用コイルユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240214BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240214BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
B62D21/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126543
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203BA12
(57)【要約】
【課題】例えば地上高を低くする等の車両形状の変更を必要とすること無しに、非接触電力伝送での漏洩磁束を低減し、結合係数を向上させることができる車両用コイルユニットを提供する。
【解決手段】車両用コイルユニット10は、車体の下部に固定される枠状のサブフレーム11と、サブフレーム11の下方で一体的にサブフレーム11に沿って環状に配置されるとともに、送電装置から非接触で伝送される交流電力を受け取るコイル15と、コア部材12とを備える。コア部材12は、サブフレーム11とコイル15との間に配置されるとともに、サブフレーム11よりも透磁率が大きい材料によって形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部に固定される枠状のサブフレームと、
前記サブフレームの下方で一体的に前記サブフレームに沿って環状に配置されるとともに、送電装置から非接触で伝送される交流電力を受け取るコイルと
を備える
ことを特徴とする車両用コイルユニット。
【請求項2】
少なくとも前記サブフレームと前記コイルとの間に配置されるとともに、前記サブフレームよりも透磁率が大きい材料によって形成されるコア部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用コイルユニット。
【請求項3】
前記コア部材は、
上下方向で前記サブフレームと前記コイルとの間に配置される第1部位と、
前記コイルの外周部よりも外方に配置される第2部位と
を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用コイルユニット。
【請求項4】
前記サブフレームは鉄を主成分とする材料により形成され、
前記コア部材はフェライトコア又は電磁鋼板により形成される
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用コイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、車両側のコイルユニット及び充電モジュールを車両のサブフレームに搭載する構造が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-6200号公報
【特許文献2】特表2017-529271号公報
【特許文献3】特開2014-104976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、充給電の出力及び効率を向上させることが望まれている。例えば、上記従来技術の非接触電力伝送システムでは、車両の外部の送電側コイルと車両の受電側コイルとに対して漏洩磁束(つまり、送電側コイル及び受電側コイルと鎖交する主磁束以外の磁束)を低減し、結合係数を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、例えば地上高を低くする等の車両形状の変更を必要とすること無しに、非接触電力伝送での漏洩磁束を低減し、結合係数を向上させることができる車両用コイルユニットを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る車両用コイルユニット(例えば、実施形態での車両用コイルユニット10,10A)は、車体の下部に固定される枠状のサブフレーム(例えば、実施形態でのサブフレーム11)と、前記サブフレームの下方で一体的に前記サブフレームに沿って環状に配置されるとともに、送電装置から非接触で伝送される交流電力を受け取るコイル(例えば、実施形態でのコイル15)とを備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載の車両用コイルユニットは、少なくとも前記サブフレームと前記コイルとの間に配置されるとともに、前記サブフレームよりも透磁率が大きい材料によって形成されるコア部材(例えば、実施形態でのコア部材12,12A)を備えてもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の車両用コイルユニットでは、前記コア部材は、上下方向で前記サブフレームと前記コイルとの間に配置される第1部位(例えば、実施形態での第1部位12a)と、前記コイルの外周部よりも外方に配置される第2部位(例えば、実施形態での第2部位12b)とを備えてもよい。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)に記載の車両用コイルユニットでは、前記サブフレームは鉄を主成分とする材料により形成され、前記コア部材はフェライトコア又は電磁鋼板により形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)によれば、枠状のサブフレームに沿って環状に配置されるコイルを備えることにより、サブフレームをいわゆる鉄心とするので、例えばコイル搭載に伴う構成の複雑化及びレイアウト調整に煩雑な手間を要することを抑制しつつ、非接触電力伝送での漏洩磁束を低減し、結合係数を向上させることができる。
【0011】
上記(2)の場合、サブフレームよりも透磁率が大きいコア部材をサブフレームとコイルとの間に備えることにより、コイル周辺の磁束を適切に誘導して、漏洩磁束を低減することができる。
【0012】
上記(3)の場合、コア部材はコイルの外周部よりも外方に配置される第2部位を備えることにより、車両の走行路等に設けられる送電装置のコイルとの間の磁路での磁気抵抗を低減することができる。
【0013】
上記(4)の場合、少なくともサブフレームとコイルとの間に配置されるフェライトコア又は電磁鋼板のコア部材を備えることにより、例えばフェライトコア又は電磁鋼板をコイルよりも上方側の全域に配置する場合等に比べて、損失が発生する磁束密度分布が集中する領域のみにフェライトコア又は電磁鋼板を配置することで重量の増大及び費用が嵩むことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態での車両用コイルユニットの構成を示す斜視図。
図2】本発明の実施形態での車両用コイルユニットの構成を示す分解斜視図。
図3】本発明の実施形態での車両用コイルユニットを前後方向の後方側から見るとともに、前後方向に直交するZ-X平面で一部を切断して示す図。
図4】本発明の実施形態での車両用コイルユニットの一部を拡大して示す断面図。
図5】本発明の実施形態での車両用コイルユニットの入力電圧に応じた出力及び効率の特性の例を示すグラフ図。
図6】本発明の実施形態の変形例での車両用コイルユニットの一部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る車両用コイルユニットについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態での車両用コイルユニット10の構成を示す図である。図2は、実施形態での車両用コイルユニット10の構成を示す分解斜視図である。図3は、実施形態での車両用コイルユニット10を前後方向の後方側から見るとともに、前後方向に直交するZ-X平面で一部を切断して示す図である。図4は、実施形態での車両用コイルユニット10の一部を拡大して示す断面図である。
以下において、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は、各軸に平行な方向である。例えば図1から図4に示すように、Z軸方向は車両用コイルユニット10を搭載する車両の上下方向に平行であり、X軸方向は車両の左右方向に平行であり、Y軸方向は車両の前後方向に平行である。Z軸の正方向は車両の上方向であり、X軸の正方向は車両の左方向であり、Y軸の正方向は車両の前方向である。
【0016】
実施形態の車両用コイルユニット10は、例えば、非接触での電力伝送により外部から電力を受け取る車両に搭載されている。図1から図3に示すように、車両用コイルユニット10は、例えば、一体的に構成されるサブフレーム11と、コア部材12と、インナー接続部材13と、インナープレート14と、コイル15とを備える。
【0017】
サブフレーム11は、例えば、車体の下部に固定されて、ドライブユニット及びフロントサスペンション等を搭載するフロントサブフレームである。サブフレーム11は、例えば、非接触での電力伝送により外部の送電装置Tから交流電力を受け取る受電装置及び電力変換装置等を搭載する。
サブフレーム11の外形は、例えば枠状に形成されている。サブフレーム11は、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等のように、SS(Steel Structure)及びSC(Steel Carbon)等に比べて相対的に透磁率が大きい鉄材(つまり鉄を主成分とする材料)によって形成されている。
【0018】
サブフレーム11は、例えば、一対のサイドメンバ21a,21bと、一対のクロスメンバ22a,22bとを備える。一対のサイドメンバ21a,21bは、車両の左右方向に間隔をあけて前後方向に沿って延びるように設けられる。一対のクロスメンバ22a,22bは、一対のサイドメンバ21a,21bの前部同士と後部同士との各々を接続する。一対のクロスメンバ22a,22bは、車両の前後方向に間隔をあけて左右方向に沿って延びるように設けられる。
図3及び図4に示すように、サブフレーム11は、例えば、後述するコイル15に対して、上下方向の上方側及び上下方向に直交する方向での外方側を取り囲むように設けられている。
【0019】
コア部材12の外形は、例えば枠状に形成されている。コア部材12は、例えばサブフレーム11に対して上下方向に間隔をあけて、サブフレーム11に沿うように設けられる。コア部材12は、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板又はフェライトコアのように、サブフレーム11に比べて相対的に透磁率が大きい材料によって形成されている。
【0020】
インナー接続部材13の外形は、例えば枠状に形成されている。インナー接続部材13は、例えばサブフレーム11の開口を取り囲む内周縁部に沿って上下方向の下方に向かって突出するように設けられる。インナー接続部材13は、サブフレーム11の内周縁部と、インナープレート14の外周部とを接続する。
インナープレート14の外形は、例えば矩形板状に形成されている。インナープレート14は、例えばサブフレーム11の開口を塞ぐように設けられる。インナー接続部材13及びインナープレート14は、例えば、後述するコイル15に対して、上下方向に直交する方向での内方側に向かい合うように設けられている。
インナー接続部材13及びインナープレート14は、例えばサブフレーム11と同一の材料によって形成されている。
【0021】
コイル15の外形は、例えばサブフレーム11に沿った環状に形成されている。コイル15は、例えばサブフレーム11の下方にコア部材12を介して配置されている。コイル15とサブフレーム11とは、少なくとも上下方向の両側からコア部材12を挟み込むように配置されている。
図4に示すように、コイル15は、例えば、渦巻状の導線15aと、絶縁被膜15bとを備える。
【0022】
コア部材12及びコイル15は、例えば封止材又は筐体等の支持部材31の内部に収容されている。支持部材31の外形は、例えば環状に形成されている。支持部材31は、例えば樹脂等の絶縁性を有する材料によって形成されている。支持部材31は、例えば締結又は接着等によってサブフレーム11に固定されている。支持部材31は、例えば、コア部材12及びコイル15を覆う収容部31aと、収容部31aの内周部から径方向の内方に突出する突出部31bとを備える。突出部31bは、例えば上下方向に沿って装着される締結ボルト32によってサブフレーム11に固定されている。
【0023】
図5は、実施形態での車両用コイルユニット10の入力電圧に応じた出力及び効率の特性の例を示すグラフ図である。
図5に示すように、入力電圧に応じて効率は変動なく出力が向上し、別途規格される電圧値で運用されることが想定される。
【0024】
上述したように、実施形態の車両用コイルユニット10によれば、枠状のサブフレーム11に沿って環状に配置されるコイル15を備えることにより、サブフレーム11をいわゆる鉄心とするので、例えばコイル15の搭載に伴う構成の複雑化及びレイアウト調整に煩雑な手間を要することを抑制しつつ、非接触電力伝送での漏洩磁束を低減し、結合係数を向上させることができる。
サブフレーム11よりも透磁率が大きいコア部材12をサブフレーム11とコイル15との間に備えることにより、コイル15周辺の磁束を適切に誘導して、漏洩磁束を低減することができる。
少なくともサブフレーム11とコイル15との間に配置されるフェライトコア又は電磁鋼板のコア部材12を備えることにより、例えばフェライトコア又は電磁鋼板をコイル15よりも上方側の全域に配置する場合等に比べて、損失が発生する磁束密度分布が集中する領域のみにフェライトコア又は電磁鋼板を配置することで、重量の増大及び費用が嵩むことを抑制することができる。
【0025】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
図6は、実施形態の変形例での車両用コイルユニット10Aの一部を拡大して示す断面図である。
図6に示すように、変形例の車両用コイルユニット10Aのコア部材12Aは、例えば、上下方向でインナープレート14とコイル15との間に配置される第1部位12aと、上下方向に直交する方向でインナープレート14とコイル15との間に配置される第2部位12bとを備える。第2部位12bは、例えば、コイル15の外周部よりも外方に配置され、第1部位12aから下方に突出するように形成されている。
変形例の車両用コイルユニット10Aによれば、コア部材12Aはコイル15の外周部よりも外方に配置される第2部位12bを備えることにより、車両の走行路等に設けられる送電装置のコイルとの間の磁路での磁気抵抗を低減することができる。
【0026】
上述した実施形態では、サブフレーム11はフロントサブフレームであるとしたが、これに限定されず、例えばリアサブフレーム等であってもよい。
上述した実施形態では、サブフレーム11又はコザ部材12の上下方向又は上下方向に直交する方向での体積を増大させてもよい。
上述した実施形態では、インナー接続部材13及びインナープレート14は、サブフレーム11に対して開閉可能又は取り外し可能に設けられてもよい。例えば、いわゆるハッチ構造等によって、サブフレーム11に搭載されているドライブユニット等の目視点検及び油脂類の交換等の保守作業を容易に実行可能とすることができる。
上述した実施形態では、インナー接続部材13及びインナープレート14は省略されてもよい。
上述した実施形態では、コア部材12は省略されてもよい。
【0027】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
10,10A…車両用コイルユニット、11…サブフレーム、12,12A…コア部材、12a…第1部位、12b…第2部位、13…インナー接続部材、14…インナープレート、15…コイル、T…送電装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6