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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023025
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】核酸抽出方法および核酸抽出システム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240214BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126557
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三森 裕示
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
(72)【発明者】
【氏名】稲村 一彦
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB01
4B029BB20
4B029HA05
4B063QA20
4B063QQ01
4B063QQ41
4B063QR90
4B063QS10
4B063QS14
(57)【要約】
【課題】試料に含まれる核酸を容易に抽出すること。
【解決手段】核酸抽出システムが、メンブレンフィルターを用いて、核酸を含む試料を捕集する捕集工程と、当該試料を捕集したメンブレンフィルターを収容する容器であって、メンブレンフィルターと同一形状の容器に、当該試料の溶解を促進する溶解補助液を注入し、容器を密閉する密閉工程と、密閉された容器を加熱し、試料から前記核酸を抽出する抽出工程とを実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸抽出システムが、
メンブレンフィルターを用いて、核酸を含む試料を捕集する捕集工程と、
前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを収容する容器であって、前記メンブレンフィルターと同一形状の前記容器に、前記試料の溶解を促進する溶解補助液を注入し、前記容器を密閉する密閉工程と、
密閉された前記容器を加熱し、前記試料から前記核酸を抽出する抽出工程と、
を実行する核酸抽出方法。
【請求項2】
前記捕集工程は、
前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の濾過容器に前記試料を含む懸濁液を流し込むことによって、前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、
前記密閉工程は、
前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを前記メンブレンフィルターと同一形状の抽出容器に移し替え、前記抽出容器の内部空間に前記溶解補助液を注入するとともに、前記抽出容器を密閉し、
前記抽出工程は、
密閉された前記抽出容器を収容する加熱装置を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する、
請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項3】
前記捕集工程は、
親水性である前記メンブレンフィルターを用いて前記試料を捕集する、
請求項1または2に記載の核酸抽出方法。
【請求項4】
前記密閉工程は、
アルカリ、酸、酵素、界面活性剤、酸化還元剤およびタンパク質変性剤のうち少なくとも1つを含む前記溶解補助液を注入し、前記容器を密閉する、
請求項1または2に記載の核酸抽出方法。
【請求項5】
前記抽出工程は、
密閉された前記容器を140℃以上に加熱し、前記試料から前記核酸を抽出する、
請求項1または2に記載の核酸抽出方法。
【請求項6】
前記捕集工程は、
前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の濾過容器に前記試料を含む懸濁液を流し込むことによって、前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、
前記密閉工程は、
前記濾過容器の内部空間に前記溶解補助液を注入するとともに、前記濾過容器を密閉し、
前記抽出工程は、
密閉された前記濾過容器を収容する加熱装置を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する、
請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項7】
濾過装置と、密閉装置と、加熱装置とを備える核酸抽出システムにおいて、
前記濾過装置は、
メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによって前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集する濾過容器を有し、
前記密閉装置は、
前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、前記試料の溶解を促進する溶解補助液とともに密閉する抽出容器を有し、
前記加熱装置は、
密閉された前記抽出容器を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する加熱部を有する、
核酸抽出システム。
【請求項8】
濾過装置と、加熱装置とを備える核酸抽出システムにおいて、
前記濾過装置は、
メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによって前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、前記試料の溶解を促進する溶解補助液とともに密閉する濾過容器を有し、
前記加熱装置は、
密閉された前記濾過容器を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する加熱部を有する、
核酸抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸抽出方法および核酸抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メンブレンフィルター法において微生物を捕集し、捕集後のフィルターに対してダイレクト高温加圧抽出法(dHTP法)にて核酸を抽出する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-157265号公報
【特許文献2】国際公開2019/043779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、専門技術や煩雑なハンドリングを要求されて、現場での適用性が低いことがあるので、試料に含まれる核酸を容易に抽出することが難しい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試料に含まれる核酸を容易に抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、核酸抽出システムが、メンブレンフィルターを用いて、核酸を含む試料を捕集する捕集工程と、前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを収容する容器であって、前記メンブレンフィルターと同一形状の前記容器に、前記試料の溶解を促進する溶解補助液を注入し、前記容器を密閉する密閉工程と、密閉された前記容器を加熱し、前記試料から前記核酸を抽出する抽出工程と、を実行する核酸抽出方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、濾過装置と、密閉装置と、加熱装置とを備える核酸抽出システムにおいて、前記濾過装置は、メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによって前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集する濾過容器を有し、前記密閉装置は、前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、前記試料の溶解を促進する溶解補助液とともに密閉する抽出容器を有し、前記加熱装置は、密閉された前記抽出容器を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する加熱部を有する、核酸抽出システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、濾過装置と、加熱装置とを備える核酸抽出システムにおいて、前記濾過装置は、メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによって前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、前記試料の溶解を促進する溶解補助液とともに密閉する濾過容器を有し、前記加熱装置は、密閉された前記濾過容器を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する加熱部を有する、核酸抽出システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る核酸抽出システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態1に係る核酸抽出システムの構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態1に係る核酸抽出工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】実施形態1に係る捕集工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態1に係る密閉工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係る抽出工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態2に係る核酸抽出システムの各装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る核酸抽出方法および核酸抽出システムを、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態1〕
以下に、実施形態1に係る核酸抽出システムの構成、各装置等の構成、各工程の流れを順に説明し、最後に実施形態1の効果を説明する。
【0013】
〔1.核酸抽出システム100-1の構成〕
図1を用いて、実施形態に係る核酸抽出システム100-1の構成を詳細に説明する。図1は、実施形態1に係る核酸抽出システム100-1の構成例を示す図である。以下では、核酸抽出システム100-1全体の構成例、核酸抽出システム100-1の工程、核酸抽出システム100-1の効果の順に説明する。
【0014】
(1-1.核酸抽出システム100-1全体の構成例)
核酸抽出システム100-1は、メンブレンフィルター10、濾過装置20、密閉装置30および加熱装置40を有する。以下では、メンブレンフィルター10、濾過装置20、密閉装置30および加熱装置40について説明する。
【0015】
(1-1-1.メンブレンフィルター10)
メンブレンフィルター10は、微生物等の処理対象である試料を捕捉可能な孔径を有するフィルターである。図1の例では、メンブレンフィルター10は、外縁のある円形状のフィルターであるが、メンブレンフィルター10の形状や材質は限定されない。
【0016】
(1-1-2.濾過装置20)
濾過装置20は、分離可能な濾過容器21(21-1、21-2)および収容部22を有する。ここで、濾過容器21は、メンブレンフィルター10と同一の形状であって、メンブレンフィルター10を収容することができる。また、濾過容器21は、菌体培養液等の試料が流し込まれる貫通部を有する。図1の例では、濾過容器21は、ハット状の上部濾過容器21-1および下部濾過容器21-2によってメンブレンフィルター10を収容しているが、濾過容器21の形状や材質は限定されない。
【0017】
(1-1-3.密閉装置30)
密閉装置30は、分離可能な抽出容器31(31-1、31-2)および収容部32を有する。ここで、抽出容器31は、メンブレンフィルター10と同一の形状であって、メンブレンフィルター10を収容することができる。図1の例では、抽出容器31は、円盤状の上部抽出容器31-1および下部抽出容器31-2によってメンブレンフィルター10を収容しているが、抽出容器31の形状や材質は限定されない。また、密閉装置30は、収容された抽出容器31を機械的に密閉する。
【0018】
(1-1-4.加熱装置40)
加熱装置40は、抽出容器31を収容し、設定温度に加熱および保温する装置である。図1の例では、加熱装置40は、円盤状の抽出容器31を収容しているが、加熱装置40の形状や材質は限定されない。
【0019】
(1-2.核酸抽出システム100-1の工程)
上記の情報処理システム100の工程について説明する。以下では、捕集工程、密閉工程、抽出工程の順に説明する。なお、各工程は、異なる順序で実行することもできる。また、各工程のうち、省略される工程があってもよい。
【0020】
(1-2-1.捕集工程)
第1の工程として、捕集工程について説明する。以下では、濾過装置設定工程(図1(1)参照)、濾過工程(図1(2)参照)の順に説明する。
【0021】
(1-2-1-1.濾過装置設定工程)
第1に、濾過容器21は、メンブレンフィルター10を収容する。例えば、濾過容器21は、ハット状の上部濾過容器21-1と下部濾過容器21-2とに挟み込むことによってメンブレンフィルター10を収容する。なお、上部濾過容器21-1と下部濾過容器21-2とは、同一の形状であってもよい。第2に、濾過装置20は、メンブレンフィルター10が収容された濾過容器21を収容する。例えば、濾過装置20は、濾過容器21が有する凸型の部位と対応する凹型の収容部22を有し、収容部22に濾過容器21の当該部位が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0022】
(1-2-1-2.濾過工程)
第1に、濾過装置20は、捕集対象である試料を含む懸濁液の流入を受け入れる。例えば、濾過装置20は、上部濾過容器21-1の貫通部から流し込まれた微生物を含む菌体培養液50を受け入れる。第2に、濾過装置20は、メンブレンフィルター10上に試料を捕集する。例えば、濾過装置20は、下部濾過容器21-2の貫通部から減圧装置(不図示)を用いた吸引が行われることによって、メンブレンフィルター10上に菌体培養液に含まれる微生物を捕集する。
【0023】
(1-2-2.密閉工程)
第2の工程として、密閉工程について説明する。以下では、密閉装置設定工程(図1(3)参照)、抽出容器密閉工程(図1(4)参照)の順に説明する。
【0024】
(1-2-2-1.密閉装置設定工程)
第1に、抽出容器31は、試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容する。例えば、抽出容器31は、円盤状の抽出容器31に、濾過容器21からピンセットを用いて移動されたメンブレンフィルター10を収容する。なお、蓋に対応する上部抽出容器31-1と、受け皿に対応する下部抽出容器31-2とは、同一の形状であってもよい。第2に、抽出容器31は、試料の溶解を促進する溶解補助液60の注入を受け入れる。例えば、抽出容器31は、酸、アルカリ、酵素、界面活性剤、酸化還元剤、タンパク質変性剤等を含む溶解補助液60の注入を受け入れる。第3に、密閉装置30は、メンブレンフィルター10が収容された抽出容器31を収容する。例えば、密閉装置30は、円盤状の抽出容器31と対応する凹型の収容部32を有し、収容部32に抽出容器31が挿入されることによって抽出容器31を固定する。
【0025】
(1-2-2-2.抽出容器密閉工程)
密閉装置30は、収容された抽出容器31を密閉する。例えば、密閉装置30は、上部抽出容器31-1と下部抽出容器31-2とを加圧することによって、収容された抽出容器31を機械的に密閉する。
【0026】
(1-2-3.密閉工程)
第3の工程として、抽出工程について説明する。以下では、加熱装置設定工程(図1(5)参照)、加熱工程(図1(6)参照)の順に説明する。
【0027】
(1-2-3-1.加熱装置設定工程)
第1に、加熱装置40は、設定温度まで予熱する。例えば、加熱装置40は、設定温度である140℃まで予熱する。第2に、加熱装置40は、抽出容器31が収容された密閉装置30を収容する。例えば、加熱装置40は、円盤状の抽出容器31と対応する凹型の収容部42を有し、収容部42に抽出容器31が密閉されたまま挿入できるように密閉装置30を固定する。
【0028】
(1-2-3-2.抽出容器加熱工程)
加熱装置40は、収容された抽出容器31を既定温度まで加熱する。例えば、加熱装置40は、収容部42に密閉されたまま挿入された抽出容器31を既定温度である140℃に加熱し、当該温度で保温する。上記の工程によって、抽出容器31内の溶解補助剤に核酸が抽出される。このとき、加熱装置40は、収容された2以上の抽出容器31を同時に既定温度まで加熱することもできる。
【0029】
(1-3.核酸抽出システム100-1の効果)
以下では、参考技術として、特許文献1および特許文献2において利用される核酸抽出技術の背景、当該技術の概要および当該技術の改善点を説明した上で、核酸抽出システム100-1の効果について説明する。
【0030】
(1-3-1.参考技術の背景)
以下では、参考技術に係る微生物回収および核酸抽出に関する技術背景について説明する。
【0031】
(1-3-1-1.微生物回収)
メンブレンフィルター法は、微生物または微粒子による汚染について水性溶液を分析するために世界中で認められている有効な手法である。サンプルに存在する細菌はすべてメンブレンの表面上に捕集され、メンブレンをペトリディッシュの寒天培地に浸した吸収パッドの上に置くとフィルターを栄養素が通過することにより、メンブレンの上面で細菌の増殖が促される。増菌培養後のコロニーを計数することにより、汚染の種類を特定することができる。
【0032】
(1-3-1-2.核酸抽出)
核酸を抽出するためには、細胞の膜構造を破壊(溶解)し、細胞の内容物を細胞外に抽出する。微生物は、大腸菌等のグラム陰性細菌、枯草菌等のグラム陽性菌、カンジダ菌等の真菌に大きく分類されるが、それぞれで膜構造が異なる。例えば、グラム陰性細菌よりもグラム陽性菌の細胞壁は、ペプチドグリカン層がより厚くより高密度となっている。真菌では、細胞壁の主成分がβ-グルカンおよびキチンであり、上述の細菌とは組成が異なる。上記のような理由から、酵素的、化学的な細胞溶解法を利用する場合には、分析対象に応じたプロトコルが用いられる。また、多くの市販核酸抽出キットにおいて、試薬の添加や攪拌等の複数工程が存在する。
【0033】
(高温加熱抽出法)
ここで、特許文献1に記載されている高温加熱抽出法について説明する。高温加熱抽出法は、特別な試薬を必要としない手法であり、比較的広範な微生物にも適用可能で、かつ迅速に核酸を抽出することができる手法である。
【0034】
(ダイレクト高温加熱抽出法)
また、特許文献2に記載されているダイレクト高温加熱抽出法について説明する。ダイレクト高温加熱抽出法は、メンブレンフィルターにより捕集した微生物から直接核酸を抽出する手法であり、抽出法として高温加圧抽出法を適用する手法である。
【0035】
(1-3-2.参考技術の概要)
以下では、メンブレンフィルター法において微生物を捕集し、捕集後のフィルターに対してダイレクト高温加圧抽出法にて核酸抽出する工程について説明する。
【0036】
(1-3-2-1.構成)
当該技術では、濾過装置、メンブレンフィルター、ガラスチューブ等の抽出容器、およびヒートブロック等の加熱容器を使用する。
【0037】
(1-3-2-2.工程)
当該技術では、以下のように微生物回収および核酸抽出を実施する。第1に、加熱装置(ヒートブロック)を設定温度(140℃)に予熱する。第2に、濾過装置にメンブレンフィルターを取り付け、菌体培養液を濾過する。第3に、抽出容器(ガラスチューブ)に菌を捕集したフィルターを挿入する。第4に、抽出容器に溶解補助液を導入する。第5に、機械的な構造を用いて抽出容器を密閉する。第6に、抽出容器中のフィルターおよび溶解補助液を加熱装置で規定温度(140℃)になるまで加熱する。上記の工程によって、抽出容器内の溶解補助剤に核酸が抽出される。
【0038】
(1-3-3.参考技術の改善点)
参考技術に係る微生物回収および核酸抽出の改善点について説明する。第1に、工程が多く、ハンドリングが煩雑であるので、コンタミネーションリスクが高い。第2に、専門技術が必要であり、現場での適用性が低い。例えば、上記の参考技術では、メンブレンフィルターを抽出容器に移し替える際に、ガラスチューブに押し込むように収容する必要があるので、コンタミネーションが起こりやすい。また、上記のコンタミネーションを回避するためには専門技術が必要となる。
【0039】
(1-3-4.核酸抽出システム100-1の概要)
核酸抽出システム100-1では、メンブレンフィルター10を用いて核酸を含む試料を捕集し、当該試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の容器に試料の溶解を促進する溶解補助液60を注入し、当該容器を密閉し、密閉した当該容器を加熱し、当該試料から核酸を抽出する。
【0040】
このとき、核酸抽出システム100-1では、濾過装置20は、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによってメンブレンフィルター10上に当該試料を捕集する濾過容器21を有し、密閉装置30は、当該試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の容器であって、当該試料の溶解を促進する溶解補助液60とともに密閉する抽出容器31を有し、加熱装置40は、密閉した抽出容器31を所定温度以上に加熱することによって、当該試料から核酸を抽出する。
【0041】
(1-3-5.核酸抽出システム100-1の効果)
核酸抽出システム100-1は、煩雑なハンドリングが必要ないので、コンタミネーションリスクを低減することができる。また、核酸抽出システム100-1は、専門技術が不要となるので、現場での当該手法の適用がしやすくなる。例えば、核酸抽出システム100-1は、メンブレンフィルター10と同一形状の濾過容器21および抽出容器31を用いることにより、微生物回収および核酸抽出の操作を行う際にコンタミネーションのリスクを減らし、かつ簡便に操作を実施することができる。すなわち、核酸抽出システム100-1は、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができる。
【0042】
〔2.核酸抽出システム100-1の各構成〕
図2を用いて、図1に示した核酸抽出システム100-1の機能構成について説明する。図2は、実施形態1に係る核酸抽出システム100-1の構成例を示すブロック図である。以下では、実施形態1に係る構成例について、メンブレンフィルター10、濾過装置20、密閉装置30、加熱装置40、菌体培養液50、溶解補助液60の順に詳細に説明する。
【0043】
(2-1.メンブレンフィルター10の構成例)
以下では、メンブレンフィルター10の構成例について説明する。以下では、メンブレンフィルター10の形状、孔径、材質の順に説明する。
【0044】
(2-1-1.メンブレンフィルター10の形状)
メンブレンフィルター10は、円形(正円、楕円)に特に限定されず、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)の他、立体的な形状であってもよい。また、複数の、同一形状または異なる形状のメンブレンフィルター10を重ね合わせたものであってもよい。
【0045】
(2-1-2.メンブレンフィルター10の孔径)
メンブレンフィルター10は、処理対象である試料を捕捉可能な孔径を有することが好ましい。例えば、メンブレンフィルター10は、0.45μm以下の孔径を有することが好ましい。
【0046】
(2-1-3.メンブレンフィルター10の材質)
メンブレンフィルター10の材質は、抽出容器31における核酸抽出を阻害せず、抽出した核酸が吸着しにくい材質であれば特に限定されない。メンブレンフィルター10の材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロース混合エステル、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル(PVC)、純銀等が挙げられる。なお、「セルロース混合エステル」とは、生物学的に不活性な、酢酸セルロースと硝酸セルロースとの混合物から構成される材料である。
【0047】
メンブレンフィルター10の材質は、親水性であることが好ましく、例えば、親水性PTFE、親水性PVDF、親水性PES、親水性PCが好ましい。メンブレンフィルター10の材質が親水性であると、抽出容器31において抽出された核酸がメンブレンフィルター10により吸着しにくい。
【0048】
上記の中でも、メンブレンフィルター10の材質としては、親水性PCがより好ましい。メンブレンフィルター10の材質が親水性PCであると、孔径や孔径分布が一定であるフィルターが得られやすい。孔径や孔径分布が一定であるフィルターを用いることにより、試料を安定的に捕集することができる。なお、メンブレンフィルター10の材質が親水性であることを示す1つの指標として、メンブレンフィルター10の材質の接触角を挙げることができる。
【0049】
(2-2.濾過装置20の構成例)
以下では、濾過装置20の構成例について説明する。濾過装置20は、メンブレンフィルター10を用いて、核酸を含む試料を捕集する。例えば、濾過装置20は、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の濾過容器21に試料を含む懸濁液を流し込むことによって、メンブレンフィルター10上に試料を捕集する。ここで、濾過装置20は、濾過容器21および収容部22を有する。
【0050】
(2-2-1.濾過容器21)
濾過容器21は、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによってメンブレンフィルター10上に試料を捕集する。例えば、濾過容器21は、円形状のメンブレンフィルター10を収容可能なハット状の上部濾過容器21-1と下部濾過容器21-2とからなる容器であって、上部濾過容器21-1と下部濾過容器21-2とによってメンブレンフィルター10を挟み込んで収容する。また、濾過容器21は、上部濾過容器21-1および下部濾過容器21-2に液体を注入することができる穴である貫通部を有し、試料の懸濁液である菌体培養液50が上部の貫通部から流し込まれることによってメンブレンフィルター10上に試料を捕集する。
【0051】
(2-2-2.収容部22)
収容部22は、メンブレンフィルター10が収容された濾過容器21を収容する。例えば、収容部22は、濾過容器21が有する凸型の部位と対応する凹型の形状であって、濾過容器21の凸型の部位が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0052】
(2-2-3.その他)
濾過装置20は、減圧濾過が可能な吸引瓶や濾過瓶等を含む構成であってもよい。
【0053】
(2-3.密閉装置30の構成例)
以下では、密閉装置30の構成例について説明する。密閉装置30は、試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容する容器であって、メンブレンフィルター10と同一形状の容器に、試料の溶解を促進する溶解補助液60を注入し、当該容器を密閉する。例えば、密閉装置30は、試料を捕集したメンブレンフィルター10をメンブレンフィルター10と同一形状の抽出容器31に移し替え、抽出容器31の内部空間に溶解補助液60を注入するとともに、抽出容器31を密閉する。ここで、密閉装置30は、抽出容器31および収容部32を有する。
【0054】
(2-3-1.抽出容器31)
抽出容器31は、試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の容器であって、メンブレンフィルター10を試料の溶解を促進する溶解補助液60とともに密閉する。例えば、抽出容器31は、円形状のメンブレンフィルター10を収容可能な円盤状の上部抽出容器31-1と下部抽出容器31-2とからなる内部空間を有する容器であって、蓋に対応する上部抽出容器31-1と受け皿に対応する下部抽出容器31-2とによって、濾過容器21からピンセット等で移し替えられたメンブレンフィルター10を収容する。また、抽出容器31は、上部抽出容器31-1および下部抽出容器31-2を重ね合わせたときに液体を注入することができる内部空間を有し、注入された溶解補助液60によってメンブレンフィルター10全体を浸すことができる。また、抽出容器31は、上部抽出容器31-1および下部抽出容器31-2を重ね合わせたときに気密性の高い構造を有する。
【0055】
(2-3-2.収容部32)
収容部32は、メンブレンフィルター10が収容された抽出容器31を収容する。例えば、収容部32は、円盤状の抽出容器31と対応する凹型の形状であって、抽出容器31が挿入されることによって抽出容器31を固定する。また、収容部32は、メンブレンフィルター10が収容された抽出容器31を収容する際に、抽出容器31を加圧することによって密閉する。
【0056】
(2-4.加熱装置40の構成例)
以下では、加熱装置40の構成例について説明する。例えば、加熱装置40は、ヒートブロック、オイルバス等で実現される。加熱装置40は、密閉された容器を加熱し、試料から核酸を抽出する。例えば、加熱装置40は、密閉された抽出容器31を所定温度以上に加熱することによって、試料から核酸を抽出する。ここで、加熱装置40は、加熱部41および収容部42を有する。
【0057】
(2-4-1.加熱部41)
加熱部41は、密閉された抽出容器31を所定温度以上に加熱することによって、試料から核酸を抽出する。例えば、加熱部41は、密閉された抽出容器31を140℃以上に加熱し、試料から核酸を抽出する。円形状のメンブレンフィルター10を収容可能な円盤状の上部抽出容器31-1と下部抽出容器31-2とからなる内部空間を有する容器であって、蓋に対応する上部抽出容器31-1と受け皿に対応する下部抽出容器31-2とによってメンブレンフィルター10を収容する。
【0058】
加熱部41は、抽出容器31に注入された溶解補助液60に、試料から核酸を抽出する。例えば、加熱部41は、核酸として、ゲノムDNA、リボソーマルRNA、プラスミドDNAを抽出する。
【0059】
(2-4-2.収容部42)
収容部42は、メンブレンフィルター10が収容された抽出容器31を収容する。例えば、収容部42は、円盤状の抽出容器31と対応する凹型の形状であって、抽出容器31が挿入されることによって抽出容器31を固定する。このとき、収容部42は、密閉装置30によって固定された抽出容器31を受け入れることによって、気密性を保ったまま抽出容器31を収容することができる。
【0060】
(2-4-3.その他)
上述の加熱装置40を用いる核酸抽出工程は、シリカメンブレン法、荷電微粒子法、フェノールクロロフォルム法等の核酸精製の粗抽出液、PCR、RT-PCR、LAMP、NASBAなどの核酸増幅の鋳型、リアルタイムPCR検出、マイクロアレイ検出、ハイブリダイゼーションプロテクトアッセイ、核酸配列シーケンス等の核酸検出の標的等に適用することができる。
【0061】
(2-5.菌体培養液50の構成例)
以下では、菌体培養液50の構成例について説明する。
【0062】
(2-5-1.菌体培養液50の培養方法)
実施形態1の核酸抽出工程で用いられる菌体培養液50は、核酸を有する試料を培養することにより得られる。試料の培養方法は、特に限定されず、例えば、試料を捕集したフィルターを直接固体培地上に置き、フィルターを介して試料を培養する方法(固相培養)が挙げられる。また、試料の別の培養方法としては、例えば液体培地または固体培地を水に溶解させた溶液の存在下で試料を培養する方法(液相培養)が挙げられる。用いる液体培地または固体培地の種類は、培養する試料Bの種類や生理的条件によって選択される。
【0063】
(2-5-2.菌体培養液50の試料)
実施形態1の核酸抽出工程において、処理対象である試料としては、特に限定されず、微生物、微生物以外の動物細胞(例えば、昆虫細胞等)、植物細胞、マイコプラズマ、ウィルス等が挙げられる。
【0064】
上記微生物としては、例えば、アシネトバクター(Acinetobacter)種、アクチノミセス(Actinomyces)種、アエロコッカス(Aerococcus)種、アエロモナス(Aeromonas)種、アルカリゲネス(Alcaligenes)種、バチルス(Bacillus)種、バクテリオデス(Bacteriodes)種、ボルデテラ(Bordetella)種、ブランハメラ(Branhamella)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、カンピロバクター(Campylobacter)種、カンジダ(Candida)種、カプノシトファギア(Capnocytophagia)種、クロモバクテリウム(Chromobacterium)種、クロストリジウム(Clostridium)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、デイノコッカス(Deinococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)種、エシェリシア(Escherichia)種、フラボバクテリウム(Flavobacterium)種、ゲメラ(Gemella)種、ヘモフィルス(Haemophilus)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種、レジオネラ(Legionella)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、リステリア(Listeria)種、ミクロコッカス(Micrococcus)種、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、ナイセリア(Neisseria)種、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、ノカルディア(Nocardia)種、オエルスコビア(Oerskovia)種、パラコッカス(Paracoccus)種、ペディオコッカス(Pediococcus)種、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)種、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種、プロテウス(Proteus)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、ラーネラ(Rahnella)種、ロドコッカス(Rhodococcus)種、ロドスピリルム(Rhodospirillum)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、ストレプトミセス(Streptomyces)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ビブリオ(Vibrio)種、およびイェルシニア(Yersinia)種からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0065】
上述した微生物の中には、生育状態によって芽胞や胞子といった形態をとる微生物が存在する。実施形態1の核酸抽出工程において、処理対象である試料の形態は、特に限定されない。また、実施形態1の核酸抽出工程において、処理対象である試料は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0066】
(2-6.溶解補助液60の構成例)
以下では、溶解補助液60の構成例について説明する。
【0067】
(2-6-1.溶解補助液60の種類)
実施形態1の溶解補助液60は、水のみでも上記効果を発揮するが、試料から核酸をより効率的に抽出する目的で、水以外に、アルカリ、酸、酵素、界面活性剤、酸化還元剤およびタンパク質変性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の細胞溶解促進剤を含むことが好ましい。
【0068】
細胞溶解促進剤は、試料の膜構造を溶解させる能力を有する。細胞溶解促進剤が試料の膜構造に作用することで、試料を破壊しやすくなり、試料から核酸をより効率的に抽出することができる。
【0069】
(2-6-2.アルカリ)
溶解補助液60として使用するアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、または水酸化カリウム(KOH)等が挙げられる。
【0070】
(2-6-3.酸)
溶解補助液60として使用する酸としては、例えば塩酸(HCl)、または硫酸(H2SO4)等が挙げられる。
【0071】
(2-6-4.酵素)
溶解補助液60として使用する酵素としては、例えばProteinase K等のタンパク質分解酵素、またはchitinase、lysozyme、zymolyase等の多糖分解酵素が挙げられる。
【0072】
(2-6-5.界面活性剤)
溶解補助液60として使用する界面活性剤は、例えばイオン性であってもよく、非イオン性であってもよい。非イオン性の界面活性剤としては、例えばオクチルフェノールエトキシレート(C14H22O(C2H4O)n)等が挙げられる。実施形態1の核酸抽出装置101は、市販品のオクチルフェノールエトキシレートを用いることができ、例えばSIGMA社製のTritonX-100(C14H22O(C2H4O)n,n=100)等が挙げられる。
【0073】
また、イオン性の界面活性剤は、陰イオン性であってもよく、陽イオン性であってもよく、両イオン性であってもよい。陰イオン性の界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate:SDS)等が挙げられる。陽イオン性の界面活性剤としては、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium bromide:CTAB)等が挙げられる。両イオン性の界面活性剤としては、例えばベタイン等が挙げられる。ここで、「ベタイン」とは、正電荷と負電荷とを同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物の総称のことである。ベタインの代表例としては、トリメチルグリシンが挙げられる。
【0074】
(2-6-6.酸化還元剤)
溶解補助液60として使用する酸化還元剤としては、例えば過酸化水素水、β-メルカプトエタノール、ジチオトレイトールなどが挙げられる。
【0075】
(2-6-7.タンパク質変性剤)
溶解補助液60として使用するタンパク質変性剤としては、例えばグアニジン塩酸塩、尿素などが挙げられる。
【0076】
(2-6-8.その他)
溶解補助液60の成分として、キレート剤を使用してもよい。溶解補助液60として使用するキレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid,EDTA)等が挙げられる。
【0077】
また、上述した細胞溶解促進剤の中でも、実施形態1の溶解補助液60は、界面活性剤を含むことが好ましく、SDSと、オクチルフェノールエトキシレートとのいずれか一方または両方を含むことがより好ましい。
【0078】
例えば、実施形態1の核酸抽出工程で抽出した核酸を高感度で検出したい場合にはSDSを用いるとよい。これに対し、実施形態1の核酸抽出工程で抽出した核酸を、SDSによって阻害される酵素反応に用いる場合には、試料の膜構造に対してSDSよりも温和に作用するオクチルフェノールエトキシレートを用いるとよい。
【0079】
実施形態1の溶解補助液60は、必要に応じて緩衝液を含んでもよい。緩衝液としては、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Tris-HCl)等が挙げられる。
【0080】
〔3.核酸抽出システム100-1の処理の流れ〕
図3図6を用いて、実施形態に係る核酸抽出システム100-1の処理の流れについて説明する。以下では、核酸抽出システム100-1の工程全体の流れを説明した上で、捕集工程の流れ、密閉工程の流れ、抽出工程の流れの順に説明する。
【0081】
(3-1.核酸抽出システム100-1の工程全体の流れ)
図3を用いて、核酸抽出システム100-1の処理全体の流れについて説明する。図3は、実施形態1に係る核酸抽出工程の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS101~S103は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101~S103のうち、省略される処理があってもよい。
【0082】
第1に、濾過装置20は、濾過工程を実行する(ステップS101)。第2に、密閉装置30は、密閉工程を実行する(ステップS102)。第3に、加熱装置40は、抽出工程を実行し(ステップS103)、処理を終了する。
【0083】
(3-2.濾過工程の流れ)
図4を用いて、濾過装置20による濾過工程の流れについて説明する。図4は、実施形態1に係る濾過工程の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS201~S204は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS201~S204のうち、省略される処理があってもよい。
【0084】
(3-2-1.メンブレンフィルター収容工程)
濾過装置20は、メンブレンフィルター10を収容する(ステップS201)。例えば、濾過装置20は、分離可能なハット状の濾過容器21(上部濾過容器21-1、下部濾過容器21-2)によって、親水性のメンブレンフィルター10を収容する。
【0085】
(3-2-2.濾過容器設置工程)
濾過装置20は、メンブレンフィルター10を固定する濾過容器21を収容する(ステップS202)。例えば、濾過装置20は、凹型の収容部22を有し、濾過容器21が有する凸型の部位が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0086】
(3-2-3.液体流入工程)
濾過装置20は、試料を含む液体を受け入れる(ステップS203)。例えば、濾過装置20は、濾過容器21の貫通部に上部から流し込まれた菌体培養液50を受け入れる。
【0087】
(3-2-4.試料捕集工程)
濾過装置20は、核酸を含む試料を濾過して捕集する(ステップS204)。例えば、濾過装置20は、濾過容器21の貫通部の下部から吸引濾過が行われることによって、メンブレンフィルター10上に菌体培養液50に含まれる微生物を捕集する。
【0088】
(3-3.密閉工程の流れ)
図5を用いて、密閉装置30による密閉工程の流れについて説明する。図5は、実施形態1に係る密閉工程の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS301~S304は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS301~S304のうち、省略される処理があってもよい。
【0089】
(3-3-1.メンブレンフィルター移行工程)
密閉装置30は、試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容する(ステップS301)。例えば、密閉装置30は、分離可能な円盤状の抽出容器31(上部抽出容器31-1、下部抽出容器31-2)によって、濾過容器21からピンセットを用いて移動されたメンブレンフィルター10を収容する。
【0090】
(3-3-2.液体注入工程)
密閉装置30は、試料から核酸を抽出する液体を受け入れる(ステップS302)。例えば、密閉装置30は、抽出容器31に注入された溶解補助液60を受け入れる。
【0091】
(3-3-3.抽出容器設置工程)
密閉装置30は、メンブレンフィルター10が移し替えられた抽出容器31を収容する(ステップS303)。例えば、密閉装置30は、凹型の収容部32を有し、円盤型の抽出容器31が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0092】
(3-3-4.抽出容器密閉工程)
密閉装置30は、収容した抽出容器31を密閉する(ステップS304)。例えば、密閉装置30は、収容部32に固定した抽出容器31を上部および下部から加圧することによって抽出容器31を密閉する。
【0093】
(3-4.抽出工程の流れ)
図6を用いて、加熱装置40による抽出工程の流れについて説明する。図6は、実施形態1に係る抽出工程の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS401~S403は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS401~S403のうち、省略される処理があってもよい。
【0094】
(3-4-1.予熱工程)
加熱装置40は、設定温度に予熱する(ステップS401)。例えば、加熱装置40は、設定温度である140℃まで予熱する。
【0095】
(3-4-2.抽出容器設置工程)
第2に、加熱装置40は、抽出容器31を収容する(ステップS402)。例えば、加熱装置40は、凹型の収容部42を有し、収容部42に抽出容器31が挿入されることによって抽出容器31を固定する。このとき、加熱装置40は、収容部42に抽出容器31が密閉されたまま挿入できるように密閉装置30を固定し、その後抽出容器31のみを収容部42に収容する。
【0096】
(3-4-3.抽出容器加熱工程)
加熱装置40は、収容した抽出容器31を既定温度まで加熱する(ステップS403)。例えば、加熱装置40は、収容部42に密閉されたまま挿入された抽出容器31を既定温度である140℃に加熱し、当該温度で保温する。
【0097】
〔4.実施形態1の効果〕
最後に、実施形態1の効果について説明する。以下では、実施形態1に係る工程に対応する効果1~5について説明する。
【0098】
(4-1.効果1)
第1に、上述した実施形態1に係る工程では、メンブレンフィルター10を用いて核酸を含む試料を捕集し、当該試料を捕集したメンブレンフィルター10を収容する容器であって、メンブレンフィルター10と同一形状の容器に、当該試料の溶解を促進する溶解補助液60を注入し、当該容器を密閉し、密閉した容器を加熱し、当該試料から核酸を抽出する。このため、実施形態1に係る工程では、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができる。
【0099】
(4-2.効果2)
第2に、上述した実施形態に係る工程では、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の濾過容器21に試料を含む懸濁液を流し込むことによって、メンブレンフィルター10上に当該試料を捕集し、当該試料を捕集したメンブレンフィルター10をメンブレンフィルター10と同一形状の抽出容器31に移し替え、抽出容器31の内部空間に溶解補助液60を注入するとともに、抽出容器31を密閉し、密閉した抽出容器31を収容する加熱装置40を所定温度以上に加熱することによって、当該試料から核酸を抽出する。このため、実施形態1に係る工程では、試料に含まれる核酸を容易に、かつ効果的に抽出することができる。
【0100】
(4-3.効果3)
第3に、上述した実施形態に係る工程では、親水性であるメンブレンフィルター10を用いて試料を捕集する。このため、実施形態1に係る工程では、より効果的に試料を捕集することによって、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができる。
【0101】
(4-4.効果4)
第4に、上述した実施形態に係る工程では、アルカリ、酸、酵素、界面活性剤、酸化還元剤およびタンパク質変性剤のうち少なくとも1つを含む溶解補助液60を注入し、容器を密閉する。このため、実施形態1に係る工程では、より効果的に試料の溶解を促進することによって、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができる。
【0102】
(4-5.効果5)
第5に、上述した実施形態に係る工程では、密閉した容器を140℃以上に加熱し、試料から核酸を抽出する。このため、実施形態1に係る工程では、より効果的に試料を加熱および加圧することによって、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができる。
【0103】
〔実施形態2〕
以下に、実施形態2に係る核酸抽出システムの構成、各装置等の構成、各工程の流れを順に説明し、最後に実施形態1の効果を説明する。なお、実施形態1と共通する構成や工程については説明を省略する。
【0104】
〔1.核酸抽出システム100-2の構成〕
図7を用いて、実施形態2に係る核酸抽出システム100-2の構成を詳細に説明する。図7は、実施形態2に係る核酸抽出システム100-2の構成例を示すブロック図である。核酸抽出システム100-2では、実施形態1に係る核酸抽出システム100-1において用いられた濾過容器21と抽出容器31とが統合された構成であって、メンブレンフィルター10を移し替える工程を省略することができる。以下では、実施形態2に係る構成例について、濾過装置20および加熱装置40について説明する。なお、メンブレンフィルター10、菌体培養液50、溶解補助液60の構成については、実施形態1と共通するので説明を省略する。
【0105】
(1-1.濾過装置20の構成例)
以下では、濾過装置20の構成例について説明する。濾過装置20は、メンブレンフィルター10を用いて、核酸を含む試料を捕集する。例えば、濾過装置20は、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の濾過容器21に試料を含む懸濁液を流し込むことによって、メンブレンフィルター10上に試料を捕集する。ここで、濾過装置20は、濾過容器21および収容部22を有する。
【0106】
(1-1-1.濾過容器21)
濾過容器21は、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによってメンブレンフィルター10上に試料を捕集する。例えば、濾過容器21は、円形状のメンブレンフィルター10を収容可能な円盤状の上部濾過容器21-1と下部濾過容器21-2とからなる容器であって、上部濾過容器21-1と下部濾過容器21-2とによってメンブレンフィルター10を挟み込んで収容する。また、濾過容器21は、上部濾過容器21-1および下部濾過容器21-2に液体を注入することができる穴である貫通部を有し、試料の懸濁液である菌体培養液50が上部の貫通部から流し込まれることによってメンブレンフィルター10上に試料を捕集する。
【0107】
濾過容器21は、メンブレンフィルター10を試料の溶解を促進する溶解補助液60とともに密閉する。例えば、濾過容器21は、上部濾過容器21-1および下部濾過容器21-2を重ね合わせたときに液体を注入することができる内部空間を有し、注入された溶解補助液60によってメンブレンフィルター10全体を浸すことができる。このとき、濾過容器21は、上部濾過容器21-1および下部濾過容器21-2の貫通部を塞ぐことのできる蓋部材を設置することによって、重ね合わせたときに気密性の高い構造を有する。
【0108】
(1-1-2.収容部22)
収容部22は、メンブレンフィルター10が収容された濾過容器21を収容する。例えば、収容部22は、濾過容器21が有する凸型の部位と対応する凹型の形状であって、濾過容器21の凸型の部位が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0109】
収容部22は、メンブレンフィルター10が収容された濾過容器21を収容する。例えば、収容部22は、円盤状の濾過容器21と対応する凹型の形状であって、濾過容器21が挿入されることによって濾過容器21を固定する。また、収容部22は、濾過容器21を加圧することによって密閉することもできる。
【0110】
(1-1-3.その他)
濾過装置20は、減圧濾過が可能な吸引瓶や濾過瓶等を含む構成であってもよい。
【0111】
(1-2.加熱装置40の構成例)
以下では、加熱装置40の構成例について説明する。例えば、加熱装置40は、ヒートブロック、オイルバス等で実現される。加熱装置40は、密閉された容器を加熱し、試料から核酸を抽出する。例えば、加熱装置40は、密閉された濾過容器21を所定温度以上に加熱することによって、試料から核酸を抽出する。ここで、加熱装置40は、加熱部41および収容部42を有する。
【0112】
(1-2-1.加熱部41)
加熱部41は、密閉された濾過容器21を所定温度以上に加熱することによって、試料から核酸を抽出する。例えば、加熱部41は、密閉された濾過容器21を140℃以上に加熱し、試料から核酸を抽出する。
【0113】
(1-2-2.収容部42)
収容部42は、メンブレンフィルター10が収容された濾過容器21を収容する。例えば、収容部42は、円盤状の濾過容器21と対応する凹型の形状であって、濾過容器21が挿入されることによって濾過容器21を固定し、気密性を保ったまま濾過容器21を収容することができる。
【0114】
〔2.核酸抽出システム100-2の処理の流れ〕
以下では、実施形態2に係る核酸抽出システム100-2の処理の流れについて説明する。なお、実施形態1と共通する工程については説明を省略する。なお、下記の工程は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の工程のうち、省略される処理があってもよい。
【0115】
第1に、濾過装置20は、濾過工程を実行する。第2に、濾過装置20は、密閉工程を実行する。第3に、加熱装置40は、抽出工程を実行し、処理を終了する。すなわち、核酸抽出システム100-2では、密閉装置30を使用することなく、核酸抽出工程を実行することができる。
【0116】
(2-1.濾過工程の流れ)
以下では、濾過装置20による濾過工程の流れについて説明する。なお、下記の工程は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の工程のうち、省略される処理があってもよい。
【0117】
(2-1-1.メンブレンフィルター収容工程)
第1に、濾過装置20は、メンブレンフィルター10を収容する。例えば、濾過装置20は、分離可能な円盤状の濾過容器21(上部濾過容器21-1、下部濾過容器21-2)によって、親水性のメンブレンフィルター10を収容する。
【0118】
(2-1-2.濾過容器設置工程)
第2に、濾過装置20は、メンブレンフィルター10を固定する濾過容器21を収容する。例えば、濾過装置20は、凹型の収容部22を有し、濾過容器21が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0119】
(2-1-3.液体流入工程)
第3に、濾過装置20は、試料を含む液体を受け入れる。例えば、濾過装置20は、濾過容器21の貫通部に上部から流し込まれた菌体培養液50を受け入れる。
【0120】
(2-1-4.試料捕集工程)
第4に、濾過装置20は、核酸を含む試料を濾過して捕集する。例えば、濾過装置20は、濾過容器21の貫通部の下部から吸引濾過が行われることによって、メンブレンフィルター10上に菌体培養液50に含まれる微生物を捕集する。
【0121】
(2-2.密閉工程の流れ)
以下では、濾過装置20による密閉工程の流れについて説明する。なお、下記の工程は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の工程のうち、省略される処理があってもよい。
【0122】
(2-2-1.液体注入工程)
第1に、濾過装置20は、試料から核酸を抽出する液体を受け入れる。例えば、濾過装置20は、濾過容器21に注入された溶解補助液60を受け入れる。
【0123】
(2-2-2.濾過容器密閉工程)
第2に、濾過装置20は、濾過容器21を密閉する。例えば、濾過装置20は、濾過容器21の貫通部を蓋部材で塞いだ後に、収容部22に固定した濾過容器21を上部および下部から加圧することによって濾過容器21を密閉する。
【0124】
(2-3.抽出工程の流れ)
以下では、加熱装置40による抽出工程の流れについて説明する。なお、下記の工程は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の工程のうち、省略される処理があってもよい。
【0125】
(2-3-1.予熱工程)
第1に、加熱装置40は、設定温度に予熱する。例えば、加熱装置40は、設定温度である140℃まで予熱する。
【0126】
(2-3-2.濾過容器設置工程)
第2に、加熱装置40は、濾過容器21を収容する。例えば、加熱装置40は、凹型の収容部42を有し、収容部42に濾過容器21が挿入されることによって濾過容器21を固定する。
【0127】
(2-3-3.抽出容器加熱工程)
第3に、加熱装置40は、収容した濾過容器21を既定温度まで加熱する。例えば、加熱装置40は、収容部42に密閉されたまま挿入された濾過容器21を既定温度である140℃に加熱し、当該温度で保温する。
【0128】
〔3.実施形態2の効果〕
最後に、実施形態2の効果について説明する。上述した実施形態2に係る工程では、メンブレンフィルター10を収容するメンブレンフィルター10と同一形状の濾過容器21に試料を含む懸濁液を流し込むことによって、メンブレンフィルター10上に当該試料を捕集し、濾過容器21の内部空間に溶解補助液60を注入するとともに、濾過容器21を密閉し、密閉した濾過容器21を収容する加熱装置40を所定温度以上に加熱することによって、当該試料から核酸を抽出する。このため、実施形態2に係る工程では、微生物回収から核酸抽出まで同一容器内で実施することによって工程を簡略化し、試料に含まれる核酸を容易に抽出することができる。
【0129】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0130】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0131】
〔その他〕
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0132】
(1)核酸抽出システムが、メンブレンフィルターを用いて、核酸を含む試料を捕集する捕集工程と、前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを収容する容器であって、前記メンブレンフィルターと同一形状の前記容器に、前記試料の溶解を促進する溶解補助液を注入し、前記容器を密閉する密閉工程と、密閉された前記容器を加熱し、前記試料から前記核酸を抽出する抽出工程と、を実行する核酸抽出方法。
【0133】
(2)前記捕集工程は、前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の濾過容器に前記試料を含む懸濁液を流し込むことによって、前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、前記密閉工程は、前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを前記メンブレンフィルターと同一形状の抽出容器に移し替え、前記抽出容器の内部空間に前記溶解補助液を注入するとともに、前記抽出容器を密閉し、前記抽出工程は、密閉された前記抽出容器を収容する加熱装置を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する、(1)に記載の核酸抽出方法。
【0134】
(3)前記捕集工程は、親水性である前記メンブレンフィルターを用いて前記試料を捕集する、(1)または(2)に記載の核酸抽出方法。
【0135】
(4)前記密閉工程は、アルカリ、酸、酵素、界面活性剤、酸化還元剤およびタンパク質変性剤のうち少なくとも1つを含む前記溶解補助液を注入し、前記容器を密閉する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の核酸抽出方法。
【0136】
(5)前記抽出工程は、密閉された前記容器を140℃以上に加熱し、前記試料から前記核酸を抽出する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の核酸抽出方法。
【0137】
(6)前記捕集工程は、前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の濾過容器に前記試料を含む懸濁液を流し込むことによって、前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、前記密閉工程は、前記濾過容器の内部空間に前記溶解補助液を注入するとともに、前記濾過容器を密閉し、前記抽出工程は、密閉された前記濾過容器を収容する加熱装置を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する、(1)、(3)~(5)のいずれか1つに記載の核酸抽出方法。
【0138】
(7)濾過装置と、密閉装置と、加熱装置とを備える核酸抽出システムにおいて、前記濾過装置は、メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによって前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集する濾過容器を有し、前記密閉装置は、前記試料を捕集した前記メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、前記試料の溶解を促進する溶解補助液とともに密閉する抽出容器を有し、前記加熱装置は、密閉された前記抽出容器を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する加熱部を有する、核酸抽出システム。
【0139】
(8)濾過装置と、加熱装置とを備える核酸抽出システムにおいて、前記濾過装置は、メンブレンフィルターを収容する前記メンブレンフィルターと同一形状の容器であって、核酸を含む試料が流し込まれることによって前記メンブレンフィルター上に前記試料を捕集し、前記試料の溶解を促進する溶解補助液とともに密閉する濾過容器を有し、前記加熱装置は、密閉された前記濾過容器を所定温度以上に加熱することによって、前記試料から前記核酸を抽出する加熱部を有する、核酸抽出システム。
【符号の説明】
【0140】
10 メンブレンフィルター
20 濾過装置
21 濾過容器
22 収容部
30 密閉装置
31 抽出容器
32 収容部
40 加熱装置
41 加熱部
42 収容部
50 菌体培養液
60 溶解補助液
100-1、100-2 核酸抽出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7