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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023027
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】接着剤の塗布判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/28 20060101AFI20240214BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
G01B11/28 H
G06T7/00 300F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126559
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】白井 真彦
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA12
2F065AA54
2F065AA58
2F065AA59
2F065BB02
2F065DD02
2F065FF04
2F065JJ03
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR06
2F065UU05
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA52
5L096FA59
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA32
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】建材に塗布された接着剤の塗布量が、適正量であるか否かを簡単に判定することができる接着剤の塗布判定装置を提供する。
【解決手段】塗布判定装置10は、撮像装置20で撮像された床材5を含む全体画像G1から、床材5の画像および各接着剤4の画像を抽出し、抽出した床材5の画像G2から、床材5の輪郭線Pa~Pdを抽出する画像抽出部11と、接着剤4の画像を、長辺51の方向の接着剤41の画像と、短辺52の方向の接着剤42の画像と、に分類する接着剤分類部13と、長辺51の方向の接着剤41の本数と短辺52の方向の接着剤42の本数を特定する本数特定部14と、長辺51の方向の接着剤41の本数と短辺52の方向の接着剤42の本数に基づいて、床材5に塗布された接着剤4の塗布量が適切であるかを判定する塗布量判定部16と、を少なくとも備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺と短辺の矩形状の建材に、前記長辺の方向および前記短辺の方向に沿って塗布された接着剤の塗布量が適正量であるかを判定する塗布判定装置であって、
撮像装置で撮像された建材を含む全体画像から、前記建材の画像および各接着剤の画像を抽出し、抽出した前記建材の画像から、前記建材の輪郭線を抽出する画像抽出部と、
前記接着剤の画像を、前記長辺の方向の接着剤の画像と、前記短辺の方向の接着剤の画像と、に分類する接着剤分類部と、
前記長辺の方向の接着剤の本数と前記短辺の方向の接着剤の本数を特定する本数特定部と、
前記長辺の方向の接着剤の本数と前記短辺の方向の接着剤の本数に基づいて、前記建材に塗布された接着剤の塗布量が適切であるかを判定する塗布量判定部と、
を少なくとも備えることを特徴とする接着剤の塗布判定装置。
【請求項2】
前記接着剤分類部は、前記接着剤の画像を構成する画素の座標を用いたクラスタ分析により、前記長辺の方向の接着剤の画像と、前記短辺の方向の接着剤の画像と、に分類することを特徴とする請求項1に記載の接着剤の塗布判定装置。
【請求項3】
前記塗布判定装置は、
前記輪郭線に基づいて、前記建材および前記建材に塗布された前記接着剤の画像を、正面から視た正面画像に射影変換する射影変換部と、をさらに備え、
前記接着剤分類部は、前記接着剤の画像を、前記長辺の方向の接着剤の画像と前記短辺の方向の接着剤の画像に、分類することを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤の塗布判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長辺と短辺の矩形状の建材に、長辺方向および短辺方向に沿って塗布された接着剤の塗布量が、適正量であるかを判定する塗布判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建材に塗布された接着剤の塗布状態を判定する判定装置が提案されている。たとえば、特許文献1に記載の判定装置は、塗布ヘッドに、塗布ノズルと撮像装置とを取り付けて、塗布ノズルから塗布される接着剤を、撮像装置で撮像しながら、接着剤が適正な位置に塗布されたかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-217099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1とは異なり、床材などの建材に接着剤を塗布する際には、施工者が接着剤を直接塗布することになり、適正量の接着剤が塗布されていることを判定することは難しい。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建材に塗布された接着剤の塗布量が、適正量であるか否かを簡単に判定することができる接着剤の塗布判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る接着剤の塗布判定装置は、長辺と短辺の矩形状の建材に、前記長辺の方向および前記短辺の方向に沿って塗布された接着剤の塗布量が適正量であるかを判定する塗布判定装置であって、撮像装置で撮像された建材を含む全体画像から、前記建材の画像および各接着剤の画像を抽出し、抽出した前記建材の画像から、前記建材の輪郭線を抽出する画像抽出部と、前記接着剤の画像を、前記長辺の方向の接着剤の画像と、前記短辺の方向の接着剤の画像と、に分類する接着剤分類部と、前記長辺の方向の接着剤の本数と前記短辺の方向の接着剤の本数を特定する本数特定部と、前記長辺の方向の接着剤の本数と前記短辺の方向の接着剤の本数に基づいて、前記建材に塗布された接着剤の塗布量が適切であるかを判定する塗布量判定部と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、画像抽出部は、撮像装置で撮像された建材を含む全体画像から、建材の画像および各接着剤の画像を抽出し、抽出した建材の画像から、建材の輪郭線を抽出する。この抽出には、たとえば、機械学習により建材の画像の抽出を機械学習したものを用いた抽出、および、エッジ検出などの画像処理を利用した抽出を挙げることができる。
【0008】
接着剤分類部は、接着剤の画像を、長辺の方向の接着剤の画像と、短辺の方向の接着剤の画像と、に分類する。建材の輪郭線は、矩形状の建材の短辺と長辺とにより形成されるため、この長辺に沿った方向の接着剤の画像と、短辺の沿った方向の接着剤の画像とを、簡単に分類することができる。このような分類は、たとえば、長辺および短辺のそれぞれに対して、これらを構成する画素を通過する直線を設定し、当該直線から距離が、所定の範囲にある接着剤の画像の画素を、グルーピングすることにより分類してもよく、後述するクラスタ分析により、分類してもよい。
【0009】
このような分類を行うことにより、本数特定部は、長辺の方向の接着剤の本数と短辺の方向の接着剤の本数を特定することができる。ここで、接着剤は、特定のチューブタイプの容器に収納されており、この容器の先端から押し出されることにより、塗布されるため、接着剤の塗布される方向とその本数がわかれば、接着剤の塗布量を概ね把握することができる。したがって、本発明では、塗布量判定部は、長辺の方向の接着剤の本数と短辺の方向の接着剤の本数に基づいて、建材に塗布された接着剤の塗布量が適切であるかを判定することができる。このようにして、撮像装置で建材を撮像することで、建材に塗布された接着剤の塗布量が、適正量であるか否かを簡単に判定することができる。
【0010】
ここで、上述した如く、接着剤の画像を、長辺の方向の接着剤の画像と、短辺の方向の接着剤の画像と、に分類することができるのであれば、接着剤分類部による分類の手法は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様として、前記接着剤分類部は、前記接着剤の画像を構成する画素の座標を用いたクラスタ分析により、前記長辺の方向の接着剤の画像と、前記短辺の方向の接着剤の画像と、に分類する。
【0011】
この態様によれば、接着剤の画像を構成する画素の座標を用いたクラスタ分析により、断続的に接着剤が塗布された部分であっても、一つのグループにグルーピングすることができるため、長辺の方向および短辺の方向に沿った接着剤の画像をより正確に分類することができる。
【0012】
ここで、全体画像は、建材と正対する位置から撮像されたものである場合には、特に問題ないが、たとえば、建材に対して傾斜した角度から撮像した場合には、接着剤の本数を正確に算出することができないおそれがある。このような点から、前記塗布判定装置は、前記輪郭線に基づいて、前記建材および前記建材に塗布された前記接着剤の画像を、正面から視た正面画像に射影変換する射影変換部と、をさらに備え、前記接着剤分類部は、前記接着剤の画像を、前記長辺の方向の接着剤の画像と前記短辺の方向の接着剤の画像に、分類する。
【0013】
この態様によれば、射影変換部により、輪郭線に基づいて、建材および建材に塗布された前記接着剤の画像を、正面から視た正面画像に射影変換するので、接着剤分類部は、接着剤の画像を、長辺の方向の接着剤の画像と、短辺の方向の接着剤の画像とに、正確に分類することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建材に塗布された接着剤の塗布量が、適正量であるか否かを簡単に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の塗布判定装置で判定する接着剤が塗布された床材を説明するための模式的斜視図である。
図2】本実施形態に係る塗布判定装置を含むシステムの模式図である。
図3図1に示す塗布判定装置の演算装置の制御ブロック図である。
図4図2に示す床材の画像および接着剤の画像と、床材の輪郭線の抽出等を説明するための模式図である。
図5図3に示す射影変換部を説明するための模式図である。
図6図2に示す接着剤分類部による接着剤の画像の分類を説明するための模式図である。
図7図1に示す塗布判定装置を用いた作業フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図1図7を参照しながら、本実施形態に係る塗布判定装置10を説明する。
【0017】
1.建材5と接着剤4について
本実施形態では、塗布判定装置10は、図1に示すように、長辺51と短辺52の矩形状の床材(建材)5に、長辺51の方向Xおよび短辺52の方向Yに沿って塗布された接着剤4の塗布量が適正量であるかを判定する装置である。
【0018】
本実施形態では、建材として床材5を例示するが、たとえば、石膏ボード、壁材、天井材などの内装ばかりでなく、外壁材、スレート材、軒天材(軒下の化粧材)等であってもよい。接着剤としては、たとえば酢酸ビニル接着剤、ウレタン系接着剤等であってもよく、ゴム系、アクリル系、若しくはシリコーン系の粘着剤またはこれらの接着剤であってもよい。
【0019】
図1に示すように、床材5は、平面視において、長辺51と短辺52で構成された矩形状の板材である。床材5の側面のうち、長辺方向Xの側面には、雄実55Aと雌実55Bが形成されており、短辺方向Yの側面には、雄実56Aと雌実56Bとが形成されている。
【0020】
複数の床材5、5、…を敷設する際には、後述する接着剤Aを、床材5の裏面53に塗布した後、床材5を床下地面に配置し、床材5の雄実55A(56A)を、隣接する床材の雌実55B(56B)に実接合する。
【0021】
ここで、敷設後の床材5が床下地面から浮き上がらないようにするためには、適正量の接着剤を、床材5の裏面53に塗布することが重要である。接着剤4は、特定のチューブタイプの容器に収納されており、この容器の先端から押し出されることにより、床材5の裏面53に塗布される。
【0022】
具体的には、長辺方向Xの雄実55A(または雌実55B)側の縁部に沿って、一本の接着剤4(41)が塗布され、短辺方向Yの雄実56A(または雌実56B)に沿って、複数本の接着剤4(42)が等間隔に塗布される。そこで、接着剤4の塗布される方向(長辺方向と短辺方向)の接着剤の本数がわかれば、接着剤の塗布量を概ね把握することができるため、床材5に塗布された接着剤4の塗布量が適切であるかを判定することができる。
【0023】
このような観点から、本実施形態に係る塗布判定装置10は、床材(建材)5に、長辺方向Xおよび短辺方向Yに沿って塗布された接着剤4の塗布量が適正量であるかを判定する。
【0024】
2.塗布判定装置10のハードウエア構成について
塗布判定装置10は、ハードウエアとして、ROM、RAM等で構成され、床材5の寸法等の仕様条件、接着剤の塗布の適正を判定する判定プログラム等が記録された記憶部10Aと、判定プログラムを実行する演算部10Bと、を備えている。
【0025】
塗布判定装置10には、入力装置31と出力装置32とが接続されている。本実施形態では、入力装置31と出力装置32とが一体となったタッチパネルディスプレイであってもよい。入力装置31を用いて、床材5の仕様条件、判定プログラム等のデータが入力される。本実施形態では、入力装置31は、撮像装置20で撮像した画像データが入力される。入力装置31で入力されたデータは、記憶部10Aに記憶される。出力装置32は、撮像装置20で撮像された画像データ、演算部10Bで演算された演算結果等が、表示される。
【0026】
本実施形態では、塗布判定装置10は、記憶部10Aおよび演算部10Bで構成されていたが、例えば、入力装置31および出力装置32を備えたものであってもよい。塗布判定装置10は、入力装置31および出力装置32に加えて、撮像装置20をさらに備え、これらが一体となったスマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末であってもよい。
【0027】
3.塗布判定装置10のソフトウエア構成について
本実施形態では、図3に示すように、塗布判定装置10は、画像抽出部11と、射影変換部12と、接着剤分類部13と、本数特定部14と、面積率・間隔算出部15と、塗布量判定部16と、を少なくとも備えている。
【0028】
3-1.画像抽出部11について
図4に示すように、画像抽出部11は、撮像装置20で撮像された床材5を含む全体画像G1から、床材5の画像および各接着剤4の画像を抽出し、抽出した床材5の画像から、床材5の輪郭線Pa、Pb、Pc、Pdを抽出する。
【0029】
画像抽出部11は、例えば、サポートベクターマシーン(SVM)などを利用して、撮像装置20で撮像した床材5の画像と、この画像における床材5の形状の特徴量(例えば、床材のエッジの沿った複数の点)を、教師データとし、撮像画像から床材5の特徴量を学習したものであってもよい。これにより、床材5の画像を含む任意の全体画像G1から、床材の画像を抽出することができる。また、Haar-like特徴量などの特徴量を用いたカスケード分類器を用いて、床材自体を識別した後に、その識別範囲の画像から、上述した機械学習されたものを用いて、床材5の画像を抽出してもよい。
【0030】
同様の手法で、全体画像G1に対する複数の接着剤4の画像を抽出する。たとえば、本実施形態では、長辺方向Xおよび短辺方向Yの接着剤4(41、42)の本数を少なくとも特定することができればよく、接着剤4の形状を機械学習したカスケード分類器などを用いて、接着剤4を識別してもよい。他にも、変換した正面画像を二値化処理またはグレースケール処理し、周りの画素と所定の明度の差を有した画素数から、接着剤4の画像を識別してもよい。
【0031】
さらに、床材5は、矩形状であることから、エッジ検出(Canny法などを利用したエッジ検出など)および一般的に知られた直線検出(Hough法などを利用した直線検出など)により、床材5の4辺からなる輪郭線として検出してもよい。
【0032】
なお、ここで、床材5の画像として、床材5の裏面53の画像が抽出されることが好ましいが、たとえば、床材5の画像として、床材5の裏面53に、雄実55Aおよび雌実55Bを含む側面の画像が含まれていてもよい。このような場合であっても、側面を含む床材5の画像は、裏面53のみの画像よりも大きい(画素数が多い)ため、接着剤4の塗布量が、実際よりも少ない塗布量であると判定される。したがって、このような場合であっても。塗布量判定部16により、接着剤4の塗布量が、適正量に達していないという誤判定がされることはない。
【0033】
3-2.射影変換部12について
射影変換部12は、床材5および塗布された接着剤4の画像G2を、正面から視た正面画像G3に射影変換する。抽出した床材5の画像G2を、正面から視た正面画像G3に射影変換することができるのであれば、射影変換部12による射影変換の手法は特に限定されるものではない。
【0034】
たとえば、矩形状の床材5の予め入力された短辺および長辺の長さを入力し、対応する床材5の画像G2の輪郭線Pa~Pdが、短辺または長辺のいずれに該当するかを判定し、床材5の画像G2の輪郭線Pa~Pdの縦横比が、短辺と長辺の比率に合致するように、抽出した床材5の画像G2を正面画像G3に変換してもよい。この際には、輪郭線Pa~Pdの各交点g1~g4を算出し、これらの交点の座標から、輪郭線Pa~Pdの長さを算出する。なお、図5に示す射影変換において、輪郭線の画素の膨張・収縮処理を行ってもよく、正面画像G3に変換する方法は、一般的に知られた方法であり、詳細な説明を省略する。
【0035】
3-3.接着剤分類部13について
接着剤分類部13は、図6に示す、接着剤4の画像を構成する画素の座標を用いたクラスタ分析により、長辺方向Xの接着剤41の画像L1と、短辺方向Yの接着剤42の画像A1~A5と、に分類する。
【0036】
ここで、画像抽出部11における抽出の仕方、接着剤の塗布の仕方により、一本の接着剤42を、断続した異なる複数の接着剤42として抽出されることがある。たとえば、図5に示すように、接着剤42a、42b(42c、42d)が、それぞれ一本の線として抽出されないことがある。このような場合には、接着剤42a、42b(42c、42d)ごとに、後述する本数特定部14で、接着剤42の本数を特定するため、実際の本数に比べて、多い本数が特定されてしまう。この結果、後述する塗布量判定部16が、接着剤の塗布量が適切であると誤判定することがある。このような観点から、接着剤分類部13は、以下の内容に沿って、少なくとも、接着剤4の本数を特定する前に、接着剤4のグループ分け(分類)を行う。
【0037】
具体的には、接着剤分類部13は、画像抽出部11で抽出した接着剤41、42を構成する画素の座標(全体画像G1に対する各画素の後述するX-Y直交座標)を用いたクラスタ分析により、長辺方向Xの接着剤41の画像L1と、短辺方向Yの接着剤41の画像A1~A5と、にグループ分けする(分類する)。本実施形態では、クラスタ分析により、たとえば、図5に示す接着剤42a、42bを1つの接着剤42とし、接着剤42c、42dを1つの接着剤42としたグループ分けがされる(分類される)。
【0038】
より具体的には、接着剤分類部13は、接着剤4を構成する各画素の座標値に対してベイズガウス混合モデル(Bayesian Gaussian mixture model)などによるクラスタ分析を実施し、接着剤4を、長辺方向Xの接着剤41の画像L1と、短辺方向Yの接着剤41の画像A1~A5と、に分類する。
【0039】
ここで、接着剤分類部13が抽出した接着剤41、42の各画素の座標値の分布状況に応じてクラスタ数を含めて推定する。ここで、長辺方向Xの接着剤41の長さ(両端の画素のX座標の最小値と最大値の差)が、床材5の長辺方向Xの長さの90%以上のもののみを抽出する。同様に、短辺方向Yの接着剤42から推定された各クラスタの長さ(両端の画素のY座標の最小値と最大値の差)が、床材5の短辺方向Yの長さの90%以上のもののみを抽出する。このようにして、分類した長辺方向Xおよび短辺方向Yの接着剤41、42を確実に抽出することができる。
【0040】
3-4.本数特定部14について
本数特定部14は、接着剤分類部13で分類された長辺方向Lの接着剤41の本数と短辺方向Yの接着剤42の本数を特定する。図6に示す本実施形態では、長辺方向Lの接着剤41の本数が1本と短辺方向Yの接着剤42の本数が5本であると特定することができる。
【0041】
3-5.面積率・間隔算出部15について
面積率・間隔算出部15は、床材5の裏面53の面積に対する接着剤4の面積の割合(接着剤4の面積率)と、長辺方向Xの接着剤41同士、短辺方向の接着剤42同士の間隔を算出する。なお、図6に示すように、長辺方向Xの接着剤41の本数は、1本であるので、ここでは、短辺方向Yの接着剤42同士の間隔のみが算出される。
【0042】
接着剤4の面積率は、全ての接着剤4の画像の総画素数に対して、床材5の輪郭線Pa~Pdで囲まれた床材5の画像の画素数を除算することにより、算出することができる。接着剤42同士の間隔を算出する際には、最小二乗法などにより、各接着剤42が通過するように直線の方程式を求め、隣り合う接着剤42の方程式の直線同士の長辺方向Xに沿った距離を算出する。なお、各接着剤42の画像を構成する画素の座標に対して、主成分分析を行い、接着剤42の中心を通り第一主成分の方向の直線(主成分軸)を算出してもよい。この他にも、接着剤42(画像A1~A5)の中心座標を算出し、中心座標から隣合う接着剤との距離を算出してもよい。
【0043】
なお、後述する塗布量判定部16による判定を行う際に、接着剤の面積率、接着剤同士の間隔を、接着剤4の適正な塗布量または適正な塗布方法の判定条件としない場合には、面積率・間隔算出部15を設けなくてもよい。
【0044】
3-6.塗布量判定部16について
塗布量判定部16は、長辺方向Xの接着剤41の本数と短辺方向Yの接着剤42の本数に基づいて、床材5の塗布された接着剤4の塗布量が適切であるかを判定する。具体的には、長辺方向Xの接着剤41の本数と短辺方向Yの接着剤42の本数が、予め設定された本数以上であれば、接着剤4の塗布量が適切である(適正な量である)と判定する。なお、本実施形態では、この判定条件が、長辺方向Xの接着剤41の本数が、1本以上で、短辺方向Yの接着剤42の本数が、5本以上に設定されているので、床材5の塗布された接着剤4の塗布量が適切であると判定される。
【0045】
なお、塗布量判定部16は、上述した判定条件に加えて、接着剤4の面積率が、予め設定された値以上である場合に、床材5の塗布された接着剤4の塗布量が適切であると判定してもよい。さらに、塗布量判定部16は、長辺方向Xの接着剤41同士、短辺方向Yの接着剤42同士の間隔が、予め設定された値以下の場合に、床材5の塗布された接着剤4の塗布形態が適切であると判定してもよい。
【0046】
以下に、図7を参照して、塗布判定装置10を用いた作業フロー図を説明する。
まず、ステップS1では、接着剤4を床材5の裏面53に塗布する。ステップS2では、撮像装置20で、検査対象範囲として、床材5を含む範囲を撮影し、全体画像G1を取得する。
【0047】
次に、ステップS3では、画像抽出部11により、撮像装置20で撮像された床材5を含む全体画像G1から、床材5の画像および接着剤4の画像を抽出し、抽出した床材5の画像から、床材5の輪郭線Pa~Pdを抽出する。
【0048】
次に、ステップS4では、射影変換部12が、床材5および塗布された接着剤4の画像G2を、正面から視た正面画像G3に射影変換する。ステップS5では、接着剤分類部13が、接着剤4の画像を構成する画素の座標を用いたクラスタ分析により、長辺方向Xの接着剤41の画像L1と、短辺方向Yの接着剤42の画像A1~A5と、に分類する。この射影変換部12により、輪郭線Pa~Pdに基づいて、床材5および床材5に塗布された接着剤4の画像を、正面から視た正面画像に射影変換するので、接着剤分類部13は、接着剤4の画像を、長辺方向Xの接着剤41の画像と、短辺方向Yの接着剤42の画像とに、正確に分類することができる。
【0049】
ステップS6では、本数特定部14が、接着剤分類部13で分類された長辺方向Xの接着剤41の本数と短辺方向Yの接着剤42の本数をカウントする。次に、ステップS7では、面積率・間隔算出部15が、接着剤4の面積率と、短辺方向の接着剤42同士の間隔を算出する。
【0050】
ステップS8では、塗布量判定部16は、長辺方向Xの接着剤41の本数と短辺方向Yの接着剤42の本数に基づいて、床材5の塗布された接着剤4の塗布量が適切であるかを判定する。このとき、塗布量判定部16は、接着剤4の面積率と、短辺方向の接着剤42同士の間隔とから、接着剤4の塗布量が適切であるかを判定と、接着剤4の塗布形態が適切であるかを判定してもよい。
【0051】
本実施形態によれば、塗布量判定部16は、長辺方向Xの接着剤41の本数と短辺方向Yの接着剤42の本数に基づいて、床材5の塗布された接着剤4の塗布量が適切であるかを判定することができる。したがって、撮像装置20で床材5を撮像することで、床材5に塗布された接着剤4の塗布量が、適正量であるか否かを簡単に判定することができる。特に、接着剤4の画像を構成する画素の座標を用いたクラスタ分析により、断続的に接着剤4が塗布された部分であっても、一つのグループにグルーピングすることができるため、長辺方向Xおよび短辺方向Yに沿った接着剤4の画像をより正確に分類することができる。
【0052】
接着剤4の塗布量が適量と判定をした場合には、ステップS9で、塗布した接着剤4を床材5の裏面53に引き延ばす。ただし、ステップS9の作業は行わなくてもよい。ステップS10では、接着剤4が引き延ばされた床材5を、床下地面または床材の下地材に敷設し、床材5を実接合する。このようにして、適量の接着剤4が塗布された床材5を敷設するので、床材5の浮き上がり等を回避することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0054】
5:床材(建材)、4:接着剤、10:塗布判定装置、11:画像抽出部、12:射影変換部、13:接着剤分類部、14:本数特定部、16:塗布量判定部、20:撮像装置、G1:全体画像、G2:床材(建材)の画像、G3:正面画像
図1
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図5
図6
図7