(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023038
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126576
(22)【出願日】2022-08-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(71)【出願人】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163902
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 奈月
(72)【発明者】
【氏名】大島 登志一
(72)【発明者】
【氏名】中本 達夫
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601FF03
4C601GA18
4C601GA20
4C601GA21
4C601KK24
4C601KK31
4C601KK42
(57)【要約】
【課題】穿刺手技を容易にする。
【解決手段】穿刺手技の補助に利用される穿刺手技補助システムであって、患者の超音波断層像を取得する超音波プローブ51と、穿刺手技に利用される穿刺器具40の位置及び姿勢を計測する計測装置20と、超音波断層像及び計測装置20による計測データに基づいて、穿刺の状態を示す補助画像データを生成し、当該補助画像データをディスプレイ32に表示させる穿刺補助画像生成装置10と、を備え、穿刺補助画像生成装置10は、計測データを用いて、穿刺器具40、超音波プローブ51の断層面、及び、患者体内の穿刺目標点の位置合わせし、位置合わせによって得られた穿刺器具40の穿刺針41、断層面、及び、穿刺目標点の位置関係を示し、超音波断層像に重畳する補助画像データを生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺手技の補助に利用される穿刺手技補助システムであって、
患者の超音波断層像を取得する超音波プローブと、
穿刺手技に利用される穿刺器具の位置及び姿勢を計測する計測装置と、
前記超音波断層像及び前記計測装置による計測データに基づいて、穿刺の状態を示す補助画像データを生成し、当該補助画像データをディスプレイに表示させる穿刺補助画像生成装置と、
を備え、
前記穿刺補助画像生成装置は、
前記計測データを用いて、前記穿刺器具、前記超音波プローブの断層面、及び、患者体内の穿刺目標点の位置合わせし、
前記位置合わせによって得られた前記穿刺器具の穿刺針、前記断層面、及び、前記穿刺目標点の位置関係を示し、前記超音波断層像に重畳する前記補助画像データを生成する、
穿刺手技補助システム。
【請求項2】
前記ディスプレイ及び周囲環境を撮像するカメラを有し、穿刺手技を行うユーザに装着される装着装置をさらに備え、
前記計測装置は、
前記超音波プローブ及び前記穿刺器具とともに、前記装着装置の位置及び姿勢を計測し、
前記穿刺補助画像生成装置は、
前記カメラで撮影した前記患者、前記穿刺器具及び前記超音波プローブを含む現実環境画像上の、前記計測装置における計測結果を考慮した位置に、前記補助画像データを重ねて表示する
請求項1に記載の穿刺手技補助システム。
【請求項3】
演算装置を備え、穿刺手技の補助に利用される補助画像データを生成する穿刺補助画像生成装置であって、
前記演算装置は、
計測装置から、患者の超音波断層像を取得する超音波プローブと、穿刺手技に利用される穿刺器具の位置及び姿勢を計測した計測データを受け付け、
前記計測データを用いて、前記穿刺器具、前記超音波プローブの断層面、及び、患者体内の穿刺目標点の位置合わせを実行し、
前記超音波プローブから超音波断層像を受け付け、
前記位置合わせによって得られた前記穿刺器具の穿刺針、前記断層面、及び、前記穿刺目標点の位置関係を示し、前記超音波断層像に重畳する前記補助画像データを生成するステップと、
前記超音波断層像が表示される表示装置に前記補助画像データを表示させるステップと、
を実行する穿刺補助画像生成装置。
【請求項4】
前記位置関係を表す情報は、前記穿刺針の先端、及び、前記断層面に位置する前記穿刺目標点との距離を示すガイド図形を含む
請求項3に記載の穿刺補助画像生成装置。
【請求項5】
前記ガイド図形は、前記穿刺針を軸として設けられる複数の錐体の、前記断層面を基準とする断面で表される
請求項4に記載の穿刺補助画像生成装置。
【請求項6】
前記複数の錐体は、
前記穿刺針の中心軸を中心軸とし、前記穿刺針の先端から第1の所定距離後方に頂点が位置し、前記穿刺針の先端が前記穿刺目標点に近接すると、前記断層面での断面が小さくなる第1の錐体と、
前記穿刺針の中心軸を中心軸とし、前記穿刺針の先端から第2の所定距離前方に頂点が位置し、前記穿刺針の先端が前記穿刺目標点に近接すると、前記断層面での断面が大きくなる第2の錐体と、
前記穿刺針の中心軸を中心軸とし、前記穿刺針の先端を頂点とし、前記第2の錐体よりも錐体側面の傾斜が緩やかで、前記穿刺針の先端が前記穿刺目標点を通過すると、前記断層面での断面が大きくなる第3の錐体とを含み、
前記位置関係を表す情報は、
前記穿刺針の先端と前記穿刺目標点との間が前記第2の所定距離以上であるとき、前記第1の錐体の第1の断面のみを含み、
前記穿刺針の先端と前記穿刺目標点との間が前記第2の所定距離未満であるとき、前記第1の断面内に、前記第2の錐体の第2の断面が含まれ、
前記穿刺針の先端が前記穿刺目標点に接触すると、前記第1の断面と前記第2の断面とを重なった状態で含み、
前記穿刺針の先端が前記穿刺目標点を通過すると、前記第2の断面内に、前記第1の断面が含まれるとともに、前記穿刺針の先端の挿入深さに応じて、前記第3の錐体の第3の断面が大きく表される
請求項5に記載の穿刺補助画像生成装置。
【請求項7】
前記複数の錐体は、円錐又は正角錐である
請求項6に記載の穿刺補助画像生成装置。
【請求項8】
前記ガイド図形は、前記穿刺目標点を頂点とし、穿刺針の先端を底面の中心とする底面とする錐体である
請求項4に記載の穿刺補助画像生成装置。
【請求項9】
前記錐体は、円錐又は正角錐である
請求項8に記載の穿刺補助画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、静脈注射や胸腔穿刺等の穿刺手技は、医師の熟練した技術が要求されてきた。例えば、穿刺手技において、穿刺の目標である血管及び穿刺針の先端の双方のサイズが小さく、加えて、血管及び体内に侵入した穿刺針も目視では視認することができないこともあり、非常に困難である。また、体内での穿刺針の状況等は、目視で容易に把握することができないため、若い医師による技術の習得も困難であった。より多くの医師によって容易かつ短時間で穿刺手技が可能となれば、患者の負担も軽減され、また、迅速に必要な処置を受けることができる。
【0003】
非特許文献1には、事前に複数の超音波断層像から構築したポリゴンモデルを用いて、超音波プローブの位置及び姿勢を計測して、超音波断層像を重畳表示する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Technologies for Augmented Reality Systems: Realizing Ultrasound-Guided Needle Biopsies、Andrei State他6名、SIGGRAPH '96: Proceedings of the 23rd annual conference on Computer graphics and interactive techniques、1996年8月、439-446頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、穿刺手技の補助を実現する穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の穿刺手技補助システムは、穿刺手技の補助に利用される穿刺手技補助システムであって、患者の超音波断層像を取得する超音波プローブと、穿刺手技に利用される穿刺器具の位置及び姿勢を計測する計測装置と、前記超音波断層像及び前記計測装置による計測データに基づいて、穿刺の状態を示す補助画像データを生成し、当該補助画像データをディスプレイに表示させる穿刺補助画像生成装置と、を備え、前記穿刺補助画像生成装置は、前記計測データを用いて、前記穿刺器具、前記超音波プローブの断層面、及び、患者体内の穿刺目標点の位置合わせを実行するステップと、前記位置合わせによって得られた前記穿刺器具の穿刺針、前記断層面、及び、前記穿刺目標点の位置関係を示し、前記超音波断層像に重畳する前記補助画像データを生成するステップと、を実行する。
【0007】
本開示の穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法を使用することにより、容易かつ短時間での穿刺手技を実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法によれば、容易かつ短時間での穿刺手技を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】穿刺手技補助システムを示すブロック図である。
【
図2】穿刺器具及び超音波プローブを利用する穿刺について説明する概略図である。
【
図3】計測装置、装着装置、穿刺器具及び超音波プローブの位置関係を示す概略図である。
【
図4A】穿刺補助画像生成装置を示すブロック図である。
【
図4B】穿刺補助画像生成装置の入力装置について説明する概略図である。
【
図5A】穿刺器具と第1のデータを示す円錐について説明する概略図である。
【
図5B】穿刺器具と第1のデータについて説明する他の概略図である。
【
図6A】穿刺器具と第2のデータの生成に利用される第1の円錐について説明する概略図である。
【
図6B】穿刺器具と第2のデータの生成に利用される第2の円錐について説明する概略図である。
【
図6C】穿刺器具と第2のデータの生成に利用される第3の円錐について説明する概略図である。
【
図7】穿刺針の先端と穿刺目標点との位置関係を説明する概略図である。
【
図8A】穿刺針の先端が穿刺目標点から遠い場合の超音波プローブ、穿刺針及び穿刺目標点の位置関係の一例を説明する概略図である。
【
図8B】
図8Aの場合の断層面、穿刺目標点及び第1の円錐の位置関係を説明する概略図である。
【
図9A】穿刺針の先端が穿刺目標点に近づいた場合の超音波プローブ、穿刺針及び穿刺目標点の位置関係の他の例を説明する概略図である。
【
図9B】
図9Aの場合の断層面、穿刺目標点、第1の円錐及び第2の円錐の位置関係を説明する概略図である。
【
図9D】穿刺針が断層面に垂直でない場合の補助画像データの一例である。
【
図10A】穿刺針の先端が穿刺目標点である場合の超音波プローブ、穿刺針及び穿刺目標点の位置関係の他の例を説明する概略図である。
【
図10B】
図10Aの場合の断層面、穿刺目標点、第1の円錐及び第2の円錐の位置関係を説明する概略図である。
【
図11A】穿刺針の先端が穿刺目標点を通過した後の超音波プローブ、穿刺針及び穿刺目標点の位置関係の他の例を説明する概略図である。
【
図11B】
図11Aの場合の断層面、穿刺目標点、第1の円錐及び第2の円錐の位置関係を説明する概略図である。
【
図12A】穿刺手技の補助画像の生成の処理を説明するフローチャートである。
【
図13】位置姿勢データの生成の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して本開示に係る穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法について説明する。ここでは、穿刺手技補助システムは、医師による患者への穿刺手技の補助に利用することができる。
【0011】
「穿刺手技」は、治療や診断のため、医師が患者の体内に穿刺器具の穿刺針を挿入する行為である。以下では、穿刺手技補助システムを、医師が患者の血管へ薬液の注入のため、超音波装置を用いて超音波断層像を確認しながら、穿刺器具により血管に穿刺針を刺す例で説明する。しかしながら、穿刺手技には、血管への穿刺の他、腰椎穿刺、胸腔穿刺、腹水穿刺等がある。本開示の穿刺手技補助システムは、これらの場合であっても、利用することができる。なお、以下の説明では、同一の構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
「断層面」は、超音波装置によって超音波が送信され、超音波断層像の生成の対象となる人体内部の面をいう。
【0013】
図1に、実施形態に係る穿刺手技補助システムの一例を示す。本開示に係る穿刺手技補助システム1は、穿刺補助画像生成装置10、穿刺手技を行う医師であるユーザに装着される装着装置30及び穿刺手技に利用される特定の物体の位置及び姿勢を計測する計測装置20を備える。この穿刺手技補助システム1は、
図2に一例を示すように、ユーザである医師が、超音波装置50及び穿刺器具40を用いて、患者に穿刺する際に利用される。
図2に示す例では、超音波装置50の超音波プローブ51、穿刺器具40及び患者の身体の一部の位置関係を示す。ここで、少なくとも、装着装置30、計測装置20、超音波装置50及び穿刺器具40は、同一空間内に存在するが、穿刺補助画像生成装置10は、他の装置20~40とネットワークを介して通信可能であれば、他の空間に存在してもよい。
【0014】
穿刺器具40は、患者の体内に挿入される穿刺針41を有する。例えば、穿刺器具40は、患者の体内に穿刺針41を挿入し、薬液を患者の体内に注入する目的で利用される。
【0015】
超音波装置50は、患者の超音波断層像の取得に利用する。具体的には、超音波装置50は、超音波を生成して患者の体内に送信するとともに、体内で反射した超音波を受信する超音波プローブ51と、超音波プローブ51で受信した超音波を用いて超音波断層像を生成する処理装置52とを有する。また、超音波装置50は、超音波断層像を表示するディスプレイを有してもよい。ユーザは、超音波装置50で生成される超音波断層像から、患者の体内の状態や、穿刺器具40の穿刺針の位置等を把握することができる。超音波装置50は、穿刺補助画像生成装置10に処理装置52で生成した超音波断層像を送信する。
【0016】
計測装置20は、装着装置30と、穿刺器具40と、超音波プローブ51との位置及び姿勢を計測する。例えば、計測装置20は、装着装置30と、穿刺器具40と、超音波プローブ51とに設けたマーカとして取り付けられたリフレクタに対して赤外光を投光する投光手段21と、装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51にマーカとして取り付けられたリフレクタで反射された赤外光を受光する受光手段22と、受光手段22で受光した赤外光を処理して装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51の位置及び姿勢を計測する処理装置23とを有する光学式トラッカーである。計測装置20は、装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51の各形状と、それぞれにターゲットとして取り付けた複数のリフレクタの取り付け位置との関係を予め登録する。そして、計測装置20は、受光手段22で受光する赤外光から、計測装置20は、穿刺補助画像生成装置10に処理装置23で計測された装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51それぞれの位置及び姿勢を、計測データとして送信する。なお、ここでは、計測装置20が投光手段21及び受光手段22を有し、マーカがリフレクタであるパッシブ形式の一例を示すが、これに限定されない。例えば、計測装置20は、アクティブ形式を採用してもよい。具体的には、マーカが発光手段である場合、計測装置は、受光手段のみを備え、投光手段を備えず、マーカから発光された光を受光手段で受光して各マーカの位置を計測することで、対象物の位置及び姿勢を計測する。
【0017】
投光手段21及び受光手段22は、例えば、一体となるカメラとして構成される。ここで、複数の方向からの信号を取得することで、装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51の位置及び姿勢を計測することができる。また、装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51の位置及び姿勢は固定でなく変動するため、同時に複数方向から画像を取得する必要があるため、計測装置20は、複数のカメラを利用する。したがって、計測装置20は、複数組の投光手段21及び受光手段22を有する。具体的には、位置及び姿勢の計測対象とする装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51にはそれぞれ予め複数のリフレクタが備えられている。受光手段22は、投光手段21から発光され、リフレクタで反射した信号を受光してそれらの位置及び姿勢を計測する。
【0018】
ここで、
図3に一例を示すように、複数組の投光手段21及び受光手段22は、ユーザの上前方、具体的には、ユーザの頭上前方に設置されることが好ましい。換言すると、ユーザの背面側ではなくて手元側の上方に設置されることが好ましい。また、複数のリフレクタ60は、超音波プローブ51において、上方、具体的には、超音波の送受信側とは反対側に取り付けられることが好ましい。このように、投光手段21及び受光手段22をユーザの上方に設置し、リフレクタ60を超音波プローブ51の上方に取り付けることで、穿刺手技におけるユーザへの妨げを防止することができるばかりではなく、ユーザの身体等によって投光手段21からの投光及び受光手段22での受光が妨げられるのを防止することができる。加えて、このような配置によって信号の送受信を確実にすることも可能となるため、計測装置20によって、位置及び姿勢の計測の精度の低下を防ぐことができる。また、同様の効果を得るため、装着装置30についても、複数のリフレクタ60は、上方、具体的には、装着時のユーザの頭頂側に取り付けられることが好ましい。さらに、穿刺器具40についても、複数のリフレクタ60は、上方、具体的には、穿刺器具40における穿刺針41の遠位側に取り付けられることが好ましい。
【0019】
このとき、装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51の位置及び姿勢は、それぞれ、X軸、Y軸及びZ軸で表す世界座標系を用いて表される。これにより、各装置同士の位置関係も特定することができる。後述する各種の位置及び姿勢についても、この世界座標系を基準とするが、装着装置30のディスプレイ32に表示してユーザに視認させるため、それぞれの位置及び姿勢は、装着装置30のユーザの視点に合わせて相対的に変換され、変換された位置及び姿勢で描画する。
【0020】
穿刺補助画像生成装置10は、超音波装置50から受信した超音波断層像及び計測装置20から受信した計測データに基づいて、穿刺器具40による穿刺の状態を示す補助画像データを生成する。また、穿刺補助画像生成装置10は、生成した補助画像データを装着装置30に送信し、ディスプレイ32に表示させる。穿刺補助画像生成装置10の構成は、
図4Aを用いて後述する。ここで、補助画像データは、後述する装着装置30のカメラ31で撮影された周辺環境画像中で、穿刺器具40の状況を3次元的に示す第1のデータと、超音波画像中で、穿刺器具40の状況を2次元的に示す第2のデータとを含む。
【0021】
装着装置30は、周囲環境を撮影するカメラ31と、カメラ31で撮影された周辺環境画像及び穿刺補助画像生成装置10から受信した補助画像データを表示するディスプレイ32を表示する。例えば、装着装置30は、ユーザの頭部に装着可能な装置であって、頭部の方向に連動して穿刺補助のための画像を表示可能なディスプレイを有する、例えば、ヘッドマウントディスプレイやスマートグラスである。スマートグラスを利用する場合、不安定であると穿刺手技の妨げになるため、装着時にヘッドマウントディスプレイと同程度に装着時にユーザの頭部で安定感があることが好ましい。カメラ31は、ユーザの視線に合わせて取り付けられている。したがって、カメラ31が撮影する周囲環境は、ユーザの視線に合わせた画像であって、具体的には、装着装置30を装着していない場合に、ユーザが視認することのできる周囲環境である。仮に、ユーザが前方を向いている場合には、カメラ31はユーザ前方を撮影し、ユーザが手元を向いている場合には、ユーザの手元を撮影する。
【0022】
また、装着装置30は、右目用と左目用とで別々のディスプレイ32を備え、各ディスプレイ32に実際の視差を考慮した立体画像を表示させることが好ましい。この場合、装着装置30は右目用のディスプレイ32に表示させる左目用の画像を撮影するカメラ31と、左目用のディスプレイ32に表示させる左目用の画像を撮影するカメラ31とを別々に備えることが好ましい。
【0023】
図4Aに示すように、穿刺補助画像生成装置10は、制御装置11、記憶装置12及び通信装置13を備えるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。また、穿刺補助画像生成装置10は、信号の入出力に利用される入力装置14及び出力装置15を備えることができる。
【0024】
制御装置11は、穿刺補助画像生成装置10全体の制御を司るコントローラである。例えば、制御装置11は、記憶装置12に記憶されるコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、補助画像データの生成を実行するための各種処理を実現する。また、制御装置11は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、制御装置11は、CPU、MPU、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現することができる。
【0025】
記憶装置12は、種々の情報を記録する記録媒体である。記憶装置12は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置12は、制御装置11が実行するコンピュータプログラムと、補助画像データの生成に使用する種々のデータ等を格納する。
【0026】
通信装置13は、外部の装置(例えば、計測装置20、装着装置30、超音波装置50等)とのデータ通信を可能とするための、外部装置の仕様による通信手段である。上述したデータ通信は、有線および/または無線によるデータ通信であり、装置固有に設計された通信仕様、もしくは公知の通信規格にしたがって行われ得る。例えば、有線によるデータ通信は、HDMI(登録商標)などの映像信号規格、イーサネット(登録商標)規格、および/またはUSB(登録商標)規格等に準拠して動作する半導体集積回路の通信コントローラを通信装置13として用いることによって行われる。また無線によるデータ通信は、デジタル機器用の近距離無線通信規格であるBluetooth、LAN(Local Area Network)に関するIEEE802.11規格、および/または移動体通信に関する、いわゆる4G/5Gと呼ばれる、第4世代/第5世代移動通信システム等に準拠して動作する半導体集積回路の通信コントローラを通信装置13として用いることによって行われる。
【0027】
入力装置14は、補助画像データの生成及び表示のための操作やデータの入力に利用される、操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マイクロフォン等の入力手段である。穿刺補助画像生成装置10は、穿刺手技の際に利用されるため、ユーザの手はキーボード等の手を用いる入力手段の利用は好ましくない。したがって、ユーザが穿刺手技で利用することのないペダルも入力装置14として利用することができる。具体的には、入力装置14として、予め、
図4Bに示すようなペダル141~143を、ユーザの足元に設置してもよい。ユーザは、穿刺手技を行いながら、足でペダルを押下して所望の操作入力を実行することで、手を用いることなく、穿刺手技を継続しながら足によって補助画像データの生成及び表示のために必要な操作をすることができる。なお、
図4Bに示す例では、扇形状の基台上に、3つのペダル141~143が設けられる一例であるが、入力装置14として用いるペダルの形状、数、設置方法等についてはこれに限定されない。
【0028】
出力装置15は、補助画像データの生成及び表示のための信号やデータの出力に利用される、ディスプレイ、スピーカ等の出力手段である。穿刺補助画像生成装置10で生成される補助画像データは、装着装置30のディスプレイ32で表示されるが、ディスプレイ32に表示される画像を、装着装置30を装着するユーザ以外も視認可能とするため、出力装置15であるディスプレイに表示してもよい。これにより、例えば、装着装置30を装着しない研修中の医師等に対し、装着装置30のディスプレイ32で表示される映像を参考にして穿刺手技を把握しやすくさせることができる。
【0029】
例えば、穿刺補助画像生成装置10は、補助画像データの生成及び表示のリクエストの信号を受け付けると、補助画像データの生成の一連の処理を実行する。具体的には、穿刺補助画像生成装置10は、補助画像データの生成の処理として、制御装置11において、各処理を実行する。この補助画像データの生成及び表示のリクエストは、例えば、
図4Bを用いて説明したペダル141の押下により操作される。例えば、ペダル141の押下により、補助画像データの生成及び表示が有効なモードとなり、本モードを解除するまで継続的に、補助画像データが毎フレーム生成及び表示される。再度ペダル141が押下されることにより、補助画像データの生成及び表示のモードが解除され補助画像データが表示されないこととなる。
【0030】
制御装置11は、計測装置20から、装着装置30、穿刺器具40及び超音波プローブ51のそれぞれの位置及び姿勢を示す計測データを取得する。また、制御装置11は、超音波装置50から超音波断層像を生成する。制御装置11は、取得した計測データと、超音波断層像を用いて、穿刺目標点、及び、穿刺針41の位置関係を3次元的に示し、周辺環境画像に重畳する情報である第1のデータと、穿刺目標点、穿刺針41、及び、断層面の位置関係を示し、超音波断層像に重畳する情報である第2のデータとを含む補助画像データを生成する。
【0031】
制御装置11は、生成した補助画像データを、装着装置30に送信し、ディスプレイ32に表示させる。このとき、制御装置11は、カメラ31で撮影された患者の身体の少なくとも一部と、穿刺器具40と、超音波プローブ51とを含む現実環境画像に超音波断層像を重畳させるとともに、その超音波断層像に補助画像データを重畳させて、各画像をディスプレイ32に表示させることが好ましい。
【0032】
なお、右目用と左目用とで別々のディスプレイ32を備える場合、制御装置11は、補助画像データの生成及び各画像データの表示等の処理を、視差のある立体映像を生成するため、右目用と左目用とでそれぞれ別々に実行することが好ましい。
【0033】
補助画像データが含む「位置関係を示す情報」は、穿刺針41の先端と穿刺目標点との位置関係を示す「ガイド図形」を含む。ここで、第1のデータに含まれる「ガイド図形」は、穿刺目標点を頂点とし、穿刺対象の皮膚に穿刺針41の先端が接したときにユーザからの指示によって設定される、穿刺針41の先端を中心として穿刺針41に垂直な面を底面とする錐体である。本実施形態では、第1のデータとして利用される錐体は、円錐である一例で説明する。また、この円錐の底面の直径は限定されず、例えば、円錐の高さとの比によって定めることができる。また、第2のデータに含まれる「ガイド図形」は、穿刺針41を軸として設けられる複数の錐体の、断層面を基準とする断面で表される。本実施形態では、第2のデータの生成に利用される複数の錐体も円錐である一例で説明する。したがって、錐体の断面は、円形である。しかしながら、錐体は円錐に限られず、四角錐等の角錐であってもよい。なお、断層面は、複数の円錐の中心軸に垂直に得られるとは限られないため、正円ではなく、楕円となる場合もあり得る。また、後述する例では、第1の円錐の断面を破線、第2の円錐の断面を一点鎖線、第3の円錐の断面を二点鎖線で示す。
【0034】
図5A及び
図5Bに、第1のデータとして利用される円錐を示す。第1のデータとなる円錐は、穿刺目標点Tを頂点とし、穿刺目標点を頂点とし、穿刺針41の先端411を中心として穿刺針41に垂直な面を底面として設定される。この円錐自体が、第1のデータとして、周辺環境画像に三次元的に重畳される。
図5A及び
図5Bに示す例では、穿刺針41の位置を実線Lnで示し、穿刺針の延長線を破線Leで示す。第1データは、これらの線Ln、Leを含んでもよい。このように第1のデータとして示される円錐の頂点に向けて穿刺針を進めることで、穿刺目標点に穿刺針41の先端を到達させることができる。
【0035】
図6Aに、第2のデータの生成に利用される第1の円錐の断面、具体的には、第1の円錐の中心軸に沿った縦断面の一例を破線で示す。第1の円錐は、穿刺針41の中心軸Lを中心軸とし、穿刺針41の先端から第1の所定距離L1後方に頂点P1が位置し、穿刺針41の先端が穿刺目標点に近接すると、断層面での第1の円錐の断面が小さくなるように形成される。換言すると、第1の円錐の頂点P1は、穿刺針41の先端を基準として所定距離L1、穿刺器具40の本体側に存在し、第1の円錐の底面は、穿刺方向に存在する。以下では、第1の円錐の超音波プローブ51で送受信される超音波による断層面での断面を第1の断面とする。例えば、各円錐の高さは、使用時の穿刺動作に応じて適宜調整される。より具体的には、穿刺において、穿刺器具40が動く距離や穿刺針41の先端が動く距離よりも大きい長さが好ましい。
【0036】
図6Bに、第2の円錐の断面、具体的には、第2の円錐の中心軸に沿った縦断面(一点鎖線)の一例を示す。なお、
図6Bにおいて、参考のため、第1の円錐の縦断面(破線)も示す。第2の円錐は、穿刺針41の中心軸Lを中心軸とし、穿刺針41の先端から第2の所定距離L2前方に頂点P2が位置し、穿刺針41の先端が穿刺目標点に近接すると断層面での第2の円錐の断面が大きくなるように形成される。換言すると、第2の円錐の頂点P2は、穿刺針41の中心軸L上で、穿刺針41の先端から所定距離L2、穿刺器具40の本体とは逆方向に存在し、第2の円錐の底面は、穿刺器具40の本体側に存在する。以下では、第2の円錐の超音波プローブ51で送受信される超音波による断層面での断面を第2の断面とする。なお、第1の円錐と第2の円錐とは、穿刺針41の先端において中心軸と垂直な位置で、それぞれの錐体側面(図では斜辺)が交差する。
【0037】
図6Cに、第3の円錐の断面、具体的には、第3の円錐の中心軸に沿った縦断面(二点鎖線)の一例を示す。
図3Cにおいて、参考のため、第2の円錐の縦断面(一点鎖線)も示す。第3の円錐は、穿刺針41の中心軸Lを中心軸とし、穿刺針41の先端を頂点P3とし、穿刺針41の先端が穿刺目標点を通過後に、穿刺針41が穿刺目標点から遠ざかると断面が大きくなるように形成される。また、第3の円錐は、第2の円錐よりも錐体側面の傾斜が緩やかに形成される。換言すると、第3の円錐の頂点P3は、穿刺針41の先端に存在し、第3の円錐の底面は、穿刺器具40の本体側に存在する。また、第3の円錐は、第2の円錐よりも斜辺が緩やかであるため、第2の円錐の斜辺と、第3の円錐の斜辺とは、穿刺針41の先端よりも穿刺器具40の本体側において、交差する。また、穿刺針41の先端と、第2の円錐の斜辺と第3の円錐の斜辺とが交差する位置で特定される長さを第3の所定距離L3とする。具体的には、第2の円錐と第3の円錐とは、穿刺針41の先端から穿刺器具40の本体側へ第3の所定距離後退した位置において中心軸Lと垂直な位置で、それぞれの錐体側面(図では斜辺)が交差する。ここでは、第3の円錐の超音波プローブ51で送受信される超音波による断層面での断面を第3の断面とする。
【0038】
穿刺補助画像生成装置10では、穿刺目標点の位置と、上述した第1乃至第3の断面をガイド図形として含む、補助画像データの第2データを生成する。
図7において、「C」は患者の皮膚表面を示し、「U」は超音波プローブ51で送受信される超音波U(断層面の位置)を示し、「T」は穿刺目標点を示す。このとき、(1)乃至(5)は、それぞれ、(1)穿刺前の状態、(2)穿刺後の穿刺針41の先端が穿刺目標点Tから離れた状態、(3)穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに近接した状態、(4)穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに達した状態、(5)穿刺針41の先端が穿刺目標点Tと通過した状態を示す。これら各状態にある場合の補助画像データの一例を、
図8A乃至
図11Cを用いて説明する。
【0039】
図8Aは、医師が超音波プローブ51で取得する超音波断層像を参考にしながら、患者の血管Bに穿刺した様子を説明する概略図である。なお、
図8Aにおいて、患者に穿刺した穿刺針41を、破線で示す。
図8Aは、穿刺を開始した状態(
図7の(2))であって、穿刺針41の先端が患者の血管Bの穿刺目標点Tとの距離が第2の所定距離L2となる前の様子を示す。ここで、穿刺目標点Tは、超音波プローブ51で送受信される超音波Uの経路によって定義される断層面と、穿刺針41の延長線が交わる血管B上に位置する。
図8Aに示すように超音波プローブ51の傾きを変更させることで、患者の皮膚表面に対する送受信される超音波の角度を変化させることができ、これに応じて、超音波断層像の範囲を変化させることができる。したがって、医師は、穿刺針41を患者に穿刺する前の針先が皮膚に当たった状態で、
図8Aの矢印で示すように、超音波プローブ51の傾きを変更させるとともに、穿刺器具40の傾きも動かすことで、超音波Uの経路によって定義される断層面上に、穿刺針41の延長線と血管Bとが交わる穿刺目標点Tを見つけ出すことができる。
【0040】
図8Aに示す穿刺を開始した状態では、穿刺針41の先端は、穿刺目標点Tから遠位、具体的には、所定距離L2よりも遠い位置にある。
図6A乃至6Cを用いて上述したように、第1の円錐は、穿刺針41の先端から所定距離L1後方の頂点P1を基準として、穿刺の前方側に広がる錐形であるが、第2の円錐は、穿刺針41の先端から所定距離L2前方の頂点P2を基準として、穿刺の後方側に広がる錐形であり、第3の円錐は、穿刺針41の先端を基準として、穿刺針41の後方側に広がる錐形である。したがって、
図8Bに示すように、超音波プローブ51で送受信される超音波Uで定義される断層面で、第1乃至第3の円錐によって得られる断面は、第1の断面のみとなる。この場合、
図8Cに示すように、補助画像データの第2のデータは、第1の断面の外周と、穿刺目標点Tとのみを含む。したがって、穿刺針41の先端と穿刺目標点Tとの間が、第2の円錐の頂点P2と、第1の円錐及び第2の円錐の斜辺の交点とで規定される所定距離L2以上であるとき、第2のデータは、穿刺目標点Tと、第1の断面のみを含む。そして、穿刺目標点Tと、穿刺針41の先端との距離が近づくにつれて、第1の断面のサイズが小さくなる。このため、ガイド図形である第2のデータを確認するユーザは、第1の断面のサイズに応じて、穿刺針41の挿入の程度を把握することができる。
【0041】
図9Aは、穿刺が進み、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに第2の所定距離L2の範囲内に近づいた状態を示す(
図7の(3))。ここで、
図6Bを用いて上述したように、第2の円錐は、穿刺針の先端から所定位置前方の頂点P2を基準として、穿刺針41の後方側に広がる錐形である。したがって、
図9Bに示すように、超音波Uを基準とする断層面で、複数の円錐によって得られる断面は、第1の断面と、第2の断面となる。このように穿刺針41の先端が穿刺目標点Tから所定距離L2の範囲内に近づいた場合、
図9Bに示すように、第1の円錐内に、第2の円錐が存在する。したがって、
図9Cに示すように、補助画像データの第2のデータは、第1の断面の外周と、その内部に存在する第2の断面の外周と、穿刺目標点Tとを含む。したがって、穿刺針41の先端と穿刺目標点Tとの間が、第2の円錐の頂点P2と、第1の円錐及び第2の円錐の斜辺の交点とで規定される所定距離L2の範囲内であるとき、第2のデータは、穿刺目標点Tと、第1の断面と、第1の断面内に位置する第2の断面を含む。そして、穿刺目標点Tと、穿刺針41の先端との距離が近づくにつれて、第1の断面のサイズが小さくなり、第2の断面のサイズは大きくなる。したがって、ガイド図形である第2のデータを確認するユーザは、第1の断面及び第2の断面のサイズに応じて、穿刺針41の挿入の程度を把握することができる。なお、超音波プローブ51の傾きが変化したことにより、穿刺針41が断層面に対して垂直でなくなった場合、
図9Dに示すように第1の断面及び第2の断面は、正円ではなく楕円となる。したがって、ユーザは、第2のデータを確認することで、穿刺針41の穿刺目標点Tへの到達の度合いとともに、穿刺針41の傾きの度合いも把握することができる。
【0042】
図10Aは、さらに穿刺が進み、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに達した状態を示す(
図7の(4))。ここで、
図6Bを用いて上述したように、第1の円錐と第2の円錐とは、穿刺針41の先端において中心軸と垂直な位置で、斜辺が重なるように配置される。したがって、超音波Uを基準とする断層面に対して穿刺針41が垂直に挿入され、
図10Bに示すように、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに達したとき、複数の円錐によって得られる断面は、第1の断面と第2の断面とが重なった状態である。したがって、
図10Cに示すように、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに達したとき、第2のデータは、穿刺目標点Tと、重なった状態の第1の断面及び第2の断面を含む。
図10Cの第2のデータにおいて、第1の断面と第2の断面が重なった状態を実線で示すが、重なったことが把握することができれば、表示方法は限定されない。補助画像データの第2のデータを確認するユーザは、第1の断面及び第2の断面が重なった状態を把握することで、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tに到達したことを把握することができる。
【0043】
また、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tを通過する場合もある。
図11Aは、穿刺針41の先端が血管B上の穿刺目標点Tを通過した状態を示す(
図7の(5))。このような場合、
図11Bに示すように、超音波Uを基準とする断層面で、複数の円錐によって得られる断面は、第1の断面、第2の断面、第3の断面となる。この場合、
図11Cに示すように、補助画像データの第2のデータは、穿刺目標点Tと、第1の断面の外周と、第1の断面の外周にある第3の断面の外周及び第2の断面の外周とを含む。ここで、
図11Cを用いて上述したように、第2の円錐と第3の円錐とは、頂点の位置が異なるとともに、錐体側面の傾斜の傾きが異なるため、斜辺が交差する部分があり、交差部分までは第2の外周が外側であるが、交差部分からは第3の外周が外側となる。したがって、穿刺針41の先端が穿刺目標点Tを通過すると、第2のデータは、第2の断面内に、第1の断面を含むとともに、穿刺針41の先端の挿入深さの程度に応じて、具体的には、穿刺針41の先端の穿刺目標点Tの通過が所定距離L3より短いとき、第3の断面が第2の断面の内側であって、通過が所定距離L3より長いとき、第2の断面が第3の断面の内側となる。
【0044】
なお、
図8C、
図9C、
図10C及び
図11Cに示す例では、穿刺目標点Tをクロス、第1の断面を破線、第2の断面を一点鎖線、第3の断面を二点鎖線で示し、第1の断面と第2の断面の重なりを実線で示したが、これに限定されない。例えば、穿刺目標点Tは、仮に、クロスではなく点や円等で示す方が分かりやすい場合、点や円で示してもよい。例えば、全ての線を異なる色の実線で示す方が分かりやすい場合、各断面を異なる色の実線で示してもよい。
【0045】
〈穿刺手技の補助画像の生成方法〉
図12A及び12Bに示すフローチャートを用いて、本開示に係る穿刺補助画像生成装置10における穿刺手技の補助画像の生成方法について説明する。
【0046】
まず、穿刺補助画像生成装置10は、計測装置20から、計測装置20で取得された位置姿勢データを受信する(S001)。位置姿勢データは、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30の位置及び姿勢を示す情報を含む。なお、計測装置20における位置姿勢データの取得については、
図13に示すフローチャートを用いて後述する。
【0047】
次に穿刺補助画像生成装置10は、例えば、装着装置30のカメラ31で撮影された映像データを取得し出力装置15に表示する(S002)。
【0048】
穿刺補助画像生成装置10は、ステップS002において取得された映像データに対して、後に、穿刺器具40において穿刺針41の先端を特定する校正処理のために、校正処理用のデータとして、穿刺針41の先端の位置及び姿勢とステップS001で受信した穿刺器具40の位置姿勢との「差分補正データ」を受け付ける。また同時に、超音波プローブ51において先端の位置を特定する校正処理のために、超音波プローブ51の先端の位置・姿勢とステップS001で受信した超音波プローブ51の計測された位置姿勢との「差分補正データ」を受け付ける(S003)。ステップS003の校正処理用データとしては、校正処理、すなわち穿刺針41および超音波プローブ51の先端の位置と計測された位置とのずれを補正するための前述の差分補正データを初回のみユーザが設定し保存する。2回目以降は、初回に保存された校正処理用データを受け付ける。
【0049】
続いて、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS001で計測装置20から受信した位置姿勢データに含まれる穿刺器具40および超音波プローブ51の位置姿勢と、ステップS003で受け付けた穿刺針41の先端の位置及び超音波プローブ51の先端の位置と、により、穿刺器具40において穿刺針41の先端の位置を特定する校正処理と、超音波プローブ51において先端の位置を特定する校正処理を行う(S004)。これにより、穿刺針41の先端及び超音波プローブ51の先端が特定された上でその後の処理が実行される。
【0050】
また、穿刺補助画像生成装置10は、超音波プローブ51によって得られた超音波断層像を取得する(S005)。
【0051】
その後、穿刺補助画像生成装置10は、装着装置30に搭載されるカメラ31によって撮影された現実環境の映像データを取得する(S006)。ここで取得する現実環境の映像データは、仮に、ユーザが装着装置30を装着していない場合に視認可能な現実環境の状態を含む。具体的には、現実環境の映像データは、患者の患部近傍の皮膚とともに、穿刺器具40及び超音波プローブ51を含む。
【0052】
その後、穿刺補助画像生成装置10は、装着装置30のディスプレイ32に、ステップS006で取得した映像データを、現実環境映像として表示させる(S007)。ここで、仮に、カメラ31で撮影される映像データが、装着装置30を装着するユーザの実際の視野より広い場合、穿刺補助画像生成装置10は、例えば、ステップS006で取得した映像データをトリミングする等の処理を施してもよい。
【0053】
また、穿刺補助画像生成装置10は、装着装置30のディスプレイ32に、ステップS005で取得した超音波断層像を表示させる(S008)。このとき、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS007で表示させた現実環境映像上の対応する位置に、超音波断層像を重畳させる。具体的には、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS001で受信した位置姿勢データで示される超音波プローブ51の位置及び装着装置30の位置を用いて、現実環境映像上の超音波断層像の位置を決定する。
【0054】
穿刺補助画像生成装置10は、補助画像データを生成する(S009)。補助画像データの生成の詳細については、
図12Bに示すフローチャートを用いて説明する。
【0055】
穿刺補助画像生成装置10は、装着装置30のディスプレイ32に、ステップS009で生成した補助画像データを表示させる(S010)。このとき、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS007で表示させた現実環境映像の上に、補助画像データの第1のデータを重畳させる。また、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS008で表示させた超音波断層像上の対応する位置に、補助画像データの第2のデータを重畳させる。ここでは、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS001で受信した位置姿勢データで示される超音波プローブ51の位置、装着装置30の位置と、ステップS010で決定した超音波断層像の位置を用いて、現実環境映像上及び超音波断層像上の補助画像データの位置を決定する。
【0056】
その後も穿刺手技が継続する間(S011でYES)、ステップS001~S011の処理を繰り返す。
【0057】
なお、穿刺手技の補助の方法の各手順は、
図12Aに示す処理の順序に限定されない。例えば、穿刺器具40、超音波プローブ51、及び装着装置30等の位置及び姿勢の取得は同時に実行されてもよい。また例えば、装着装置30のディスプレイへの現実環境映像、超音波断層像、及び補助画像データの表示も同時に実行されてもよい。
【0058】
次に、
図12Bに示すフローチャートを用いて、
図12AのフローチャートのステップS009に示す補助画像データの生成の処理の詳細について説明する。
【0059】
穿刺補助画像生成装置10は、穿刺目標登録のリクエストを受け付けると(S101でYES)、断層面と、穿刺針41の中心軸との交点を「穿刺目標点」として登録する(S102)。ここで、「穿刺目標登録」のリクエストは、穿刺手技の実施開始時、穿刺手技を行う医師等のユーザが、穿刺針を皮膚に正に穿刺する時点で設定することが一般的であり、一度、穿刺目標点が登録されると、その後に続いて取得される映像データのフレームについては、既に登録された穿刺目標点が利用される。具体的には、穿刺目標の登録は、穿刺針41の針先が患者の皮膚に接し、穿刺針41の針先が穿刺の目標となる血管に向けられた状態で行われる。穿刺補助画像生成装置10は、ステップS001で取得した超音波プローブ51の位置及び姿勢に基づいて、超音波が送受信される「断層面」の位置を導く。この断層面を表す画像が、ステップS005で取得される超音波断層像である。また、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS001で取得した穿刺器具40の位置及び姿勢に基づいて、三次元空間上の「穿刺針の中心軸」を導く。さらに、穿刺補助画像生成装置10は、このようにして導いた「断層面」と「穿刺針の中心軸」との交点を、「穿刺目標点」として登録する。例えば、ユーザは、
図4Bに示したペダル143を押下することにより、穿刺目標点の登録をリクエストすることができる。
【0060】
また、穿刺補助画像生成装置10は、穿刺目標登録の指示を受け付けたとき、穿刺針41の先端位置を、「穿刺開始点」として登録する(S103)。穿刺補助画像生成装置10は、ステップS001で取得した穿刺器具40の位置及び姿勢と、予め記憶装置12に記憶される穿刺器具40のサイズとに基づいて、三次元空間上の「穿刺針先端位置」を導く。
【0061】
穿刺補助画像生成装置10は、ステップS102で登録された穿刺目標点の印を描画する(S104)。なお、仮に穿刺目標登録の指示がなかった場合(S101でNO)、以前のフレームで穿刺目標点が登録されているため、以前のフレームで登録された穿刺目標点に基づいて、穿刺目標点の印を描画する。
【0062】
穿刺補助画像生成装置10は、ステップS103で登録した穿刺開始点から、ステップS102で登録した穿刺目標点を結ぶ線を軸とし、穿刺目標点を頂点とする第1のデータの一部である円錐を描画する(S105)。この円錐により、穿刺針41の方向を示すことができる。
【0063】
穿刺補助画像生成装置10は、第1のデータの一部として、穿刺針41の位置を示す線分を描画する(S106)。例えば、穿刺補助画像生成装置10は、
図5Bの線Lnに示すように、穿刺針41の位置を示す線分を描画する。本線分の描画に関わり、穿刺針41の状態を視認できるようにするために、断層像上の交わりとしてではなく、3次元的な穿刺針41の位置を把握するための線分として描画する。本線分の方向は、穿刺針41を軸とする方向に一致させる。穿刺針41の位置は、ステップS001で取得した穿刺器具40の位置及び姿勢に基づいて導く。
【0064】
穿刺補助画像生成装置10は、第1データの一部として、穿刺針41の延長線を示す線分を描画する(S107)。例えば、穿刺補助画像生成装置10は、
図5Bの線Leに示すように、穿刺針41の延長線の位置を3次元的に示す線分を描画する。このとき、穿刺補助画像生成装置10は、少なくとも、穿刺針41の先端から、断層面までの穿刺針41の延長線を描画する。またこのとき、穿刺補助画像生成装置10は、ステップS106で描画した穿刺針41と少なくとも色又は線種のいずれかが異なる状態で、穿刺針41の延長線を描画する。穿刺針41の延長線は、ステップS001で取得した穿刺器具40の位置及び姿勢に基づいて導く。
【0065】
穿刺補助画像生成装置10は、第1のデータの一部として、穿刺針41の中心軸と、断層面との交点に交点の印を描画する(S108)。穿刺針41の中心軸は、ステップS001で取得した穿刺器具40の位置及び姿勢に基づいて導き、断層面は、ステップS001で取得した超音波プローブ51の位置及び姿勢に基づく。断層面は、超音波プローブ51の傾きに合わせて変化するので、断層面の変化に合わせて穿刺針41の中心軸と断層面との交点の位置も変化する。このように、ステップS105~S108の処理によって、第1のデータが生成される。
【0066】
穿刺補助画像生成装置10は、第2のデータの一部として、穿刺針41の先端から所定距離L1後方の位置を頂点とし、穿刺方向側に開く第1の円錐の、断層面での断面である第1の断面を描画する(S109)。この第1の断面は、穿刺針41の深さを示す。具体的には、第1の断面が小さくなると、穿刺針41の穿刺深さが深くなる。
【0067】
穿刺補助画像生成装置10は、第2のデータの一部として、穿刺針41の先端から所定距離L2前方の位置を頂点とし、穿刺方向側から後方に開く第2の円錐の、断層面での断面である第2の断面を描画する(S110)。この第2の断面は、穿刺針41の先端が断層面に接近する度合いを示す。具体的には、穿刺針41の先端が、穿刺目標点Tと第2の所定距離L2の範囲内に近接したときに第2の断面が描画され、穿刺針41の穿刺深さが深くなると、第2の断面が大きくなる。
【0068】
穿刺補助画像生成装置10は、第2のデータの一部として、穿刺針41の先端を頂点とし、穿刺方向側から後方に開く第3の円錐の、断層面での断面である第3の断面を描画する(S111)。この第3の断面は、穿刺針41の先端が断層面を通過した度合いを示す。具体的には、穿刺針41の先端が、穿刺目標点Tを通過すると第3の断面が描画され、その通過距離が大きくなると、第3の断面が大きくなる。このように、ステップS109~S111の処理によって、第2のデータが生成される。
【0069】
〈位置姿勢データの生成方法〉
続いて、
図13に示すフローチャートを用いて、計測装置20における位置姿勢データの生成方法の一例を説明する。
【0070】
まず、計測装置20は、複数の投光手段21及び受光手段22を用いて画像データを取得する(S201)。ここで、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30には、予め、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30の位置及び姿勢の特定に利用されるマーカが取り付けられる。また、受光手段22で観測される画像データには、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30に取り付けられたマーカを含む。
【0071】
計測装置20は、処理装置23において、ステップS201において取得した画像データを用いて、位置姿勢データを生成する(S202)。具体的には、処理装置23は、複数の画像データの対応するフレーム毎、すなわち、同一タイミングで取得されたフレーム毎に、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30に取り付けられたマーカの位置及び姿勢を検出し、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30の位置及び姿勢を、上述したような統一した座標系を用いて示す位置姿勢データを生成する。例えば、装着装置30がヘッドマウントディスプレイであるとき、穿刺補助画像生成装置10は、装着装置30を装着するユーザの頭部の位置及び姿勢を求めることができるため、ユーザの頭部の位置と、ユーザの頭部がどの方向を向いているかを求めることができる。
【0072】
計測装置20は、ステップS202において生成した位置姿勢データを、穿刺補助画像生成装置10に送信する(S005)。ステップS202で計測装置20によって送信された位置姿勢データは、穿刺補助画像生成装置10においてステップS001で受信される。
【0073】
なお、
図13に示す計測装置20での位置姿勢データの生成及び送信は、例えば、穿刺補助画像生成装置10で穿刺手技を補助する間、繰り返し継続して実行される。具体的には、
図13に示すフローチャートの処理は、
図12Aに示すフローチャートの処理が実行される間、
図12Aに示すフローチャートの処理と非同期で、継続して稼働する。したがって、穿刺補助画像生成装置10は、計測装置20から継続して受信する位置姿勢データを利用して、穿刺器具40、超音波プローブ51及び装着装置30の位置及び姿勢をリアルタイムで取得し、穿刺手技の補助画像の生成に利用することができる。
【0074】
穿刺補助画像生成装置10は、上述したように、穿刺目標点Tと穿刺開始点とに応じて生成された穿刺目標点Tと穿刺針41との位置関係を3次元的に示す第1のデータを生成する。また、穿刺補助画像生成装置10は、穿刺目標点Tとともに、穿刺針41と穿刺目標点Tとの距離や、穿刺針41の深さに応じて表示状態が異なる第1乃至第3の断面を含む第2のデータを生成する。また、穿刺補助画像生成装置10は、第1のデータを周辺環境画像中に重畳させて表示し、第1のデータを超音波断層像上に重畳させて表示させる。換言すると、穿刺手技補助システム1は、ユーザの環境映像に、超音波断層像に加えて、穿刺の状況を表す第1のデータ及び第2のデータを含む補助画像データを重ねて表示することで、複合現実(MR)を実現する。これにより、穿刺手技補助システム1のユーザは、超音波断層像だけでは十分に把握することのできない穿刺目標点Tと穿刺針41との距離を示すガイド図形である補助画像データを確認しながら、穿刺針41の穿刺状況を把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の穿刺手技補助システム、穿刺補助画像生成装置及び穿刺補助画像生成方法は、穿刺手技の補助に有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 穿刺手技補助システム
10 穿刺補助画像生成装置
11 制御装置
12 記憶装置
13 通信装置
14 入力装置
15 出力装置
20 計測装置
21 投光手段
22 受光手段
23 処理装置
30 装着装置
31 カメラ
32 ディスプレイ
40 穿刺器具
41 穿刺針
50 超音波装置
51 超音波プローブ
52 処理装置