(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023039
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】既存杭の杭頭構造、及び既存杭と新設杭の杭頭構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126577
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】土佐内 優介
(72)【発明者】
【氏名】岸 俊甫
(72)【発明者】
【氏名】山黒 寛矢
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA01
(57)【要約】
【課題】既存杭の杭頭が、新設建築物の鉛直荷重の一部を負担しつつ、地震時の水平力が作用することを効果的に抑制されている、既存杭の杭頭構造と、既存杭と新設杭の杭頭構造を提供すること。
【解決手段】既存杭の杭頭構造90は、既存杭10の杭天端面14とコンクリート基礎70とが縁切りされ、既存杭10の杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に第1隙間20がある。また、既存杭10と新設杭10Aがコンクリート基礎70を支持する、既存杭と新設杭の杭頭構造100は、既存杭10の杭天端面14とコンクリート基礎70とが縁切りされ、既存杭10の杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に第1隙間20があり、新設杭10Aの杭頭13がコンクリート基礎70に結合されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存杭の杭天端面とコンクリート基礎とが縁切りされており、
前記既存杭の杭頭の外周面と周辺地盤との間に第1隙間があることを特徴とする、既存杭の杭頭構造。
【請求項2】
前記杭天端面と前記コンクリート基礎の下面が当接して、前記コンクリート基礎からの鉛直荷重が前記杭天端面に直接作用していることを特徴とする、請求項1に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項3】
前記杭天端面と前記コンクリート基礎の下面の間に第2隙間があり、前記第2隙間に他の物質が存在して、前記コンクリート基礎からの鉛直荷重が前記他の物質を介して前記杭天端面に間接的に作用していることを特徴とする、請求項1に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項4】
前記杭頭の前記外周面と前記周辺地盤との間に枠材が配設され、前記枠材により前記第1隙間が保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項5】
前記第1隙間に緩衝材が配設されていることを特徴とする、請求項1又は4に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項6】
前記枠材が上蓋を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項7】
前記杭天端面と前記上蓋との間、前記上蓋と前記コンクリート基礎の下面との間、の少なくとも一方に滑り材が介在していることを特徴とする、請求項6に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項8】
前記杭天端面は、高さ調整用に平坦に切断された整形面、高さ調整用にコンクリートが増し打ちされた整形面、のいずれか一方であることを特徴とする、請求項1に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項9】
前記既存杭の杭径をDとした際に、前記第1隙間の深度方向長さの最大値が、1D乃至3Dの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の既存杭の杭頭構造。
【請求項10】
既存杭と新設杭がコンクリート基礎を支持する、既存杭と新設杭の杭頭構造であって、
前記既存杭の杭天端面と前記コンクリート基礎とが縁切りされ、前記既存杭の杭頭の外周面と周辺地盤との間に第1隙間があり、
前記新設杭の杭頭が前記コンクリート基礎に結合されていることを特徴とする、既存杭と新設杭の杭頭構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存杭の杭頭構造、及び既存杭と新設杭の杭頭構造に関する。
【背景技術】
【0002】
旧建築物の建設跡地に新設建築物を施工する際に、旧建築物が杭基礎を有する杭基礎建築物である場合は、地盤内に存在する既存杭を完全に撤去した上で、新設杭を施工し、新設杭により新設建築物を支持させる施工が行われる。
【0003】
しかしながら、既存杭の撤去には手間と時間、及び撤去費用を要し、旧建築物の平面規模が大きく、既存杭の本数が多い場合にはこれらの課題が一層顕著になり、既存杭の撤去から新設建築物の施工完了までの工期の長期化が余儀なくされ得る。そこで、複数本の既存杭が存在する場合に、その一部もしくは全部を撤去せずに残置した上で、別途新設杭を施工し、既存杭と新設杭とによって新設建築物が支持される杭基礎建築物を施工することにより、上記様々な課題を解消することが可能になる。
【0004】
ここで、特許文献1には、既存杭利用の基礎構造が提案されている。具体的には、建設跡地に残留した既存杭と、新設される新設杭と、これら新設杭と既存杭とに支持されて新設建物を支持するフーチングと、既存杭とフーチングとの間に配置される緩衝手段とを備え、緩衝手段には塑性変形可能な材料からなる緩衝材が適用されている、既存杭利用の基礎構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の既存杭利用の基礎構造によれば、既存杭を完全に撤去して新設杭を施工する際の上記様々な課題を解消することができる。ところで、旧建築物を支持する既存杭には、1981年以前の所謂旧耐震基準に基づいて設計されている杭が多分に含まれている。このような既存杭の設計においては、現在の耐震基準下で要求される水平耐力が十分に考慮されていない可能性が極めて高いことから、既存杭の再利用に際しては、鉛直荷重を負担させ、水平力(水平荷重)を極力負担させないような杭頭構造が肝要になる。しかしながら、このような設計思想に基づく既存杭の杭頭構造や、既存杭と新設杭の杭頭構造に関する技術の開示は現状存在しない。
【0007】
コンクリート基礎と杭との杭頭構造に関しては、杭頭とコンクリート基礎の固定度に応じて、剛結合とピン結合、これらの間の半剛結合といった複数種の杭頭構造が存在する。
【0008】
剛結合の場合は、杭頭(杭天端)に曲げモーメントが生じ、従ってこの曲げモーメントに抗し得るように杭頭とコンクリート基礎との設計が必要になり、補強筋が密に配筋される必要があるなどのデメリットがある一方で、ピン結合に比べて杭頭の水平変位が抑制できるメリットがある。
【0009】
対して、ピン結合の場合は、杭頭(杭天端)に生じる曲げモーメントはゼロとなり、杭頭の途中位置(杭天端から数m程度下方の位置)に曲げモーメントが生じることから、杭頭とコンクリート基礎の双方の曲げモーメントに対する補強構造が不要になるメリットがあるものの、剛結合に比べて杭頭の水平変位が大きくなるデメリットがある。これらのことから、設計上優先する項目(補強筋等の有無、水平変位の大小等)に応じた杭頭構造が採用されることになる。
【0010】
しかしながら、いずれの杭頭構造を採用する場合でも、杭頭に地震時の水平力が作用することに変わりはなく、杭頭とコンクリート基礎との間の固定度に関わらず、既存杭を再利用する際の既存杭の杭頭構造においては、杭頭に地震時の水平力が極力作用しない措置が必要になることに変わりはない。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、既存杭の杭頭が、新設建築物の鉛直荷重の一部を負担しつつ、地震時の水平力(水平荷重)が作用することを効果的に抑制されている、既存杭の杭頭構造と、既存杭と新設杭の杭頭構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による既存杭の杭頭構造の一態様は、
既存杭の杭天端面とコンクリート基礎とが縁切りされており、
前記既存杭の杭頭の外周面と周辺地盤との間に第1隙間があることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、既存杭の杭天端面とコンクリート基礎とが縁切りされた上で、既存杭の杭頭の外周面と周辺地盤との間に第1隙間があることにより、既存杭の杭頭がコンクリート基礎を介して建築物の荷重の一部を負担しつつ、地震時の水平力(水平荷重)を受けることを効果的に抑制もしくは抑止された杭頭構造を形成できる。
【0014】
ここで、「杭頭構造」とは、文字通り、既存杭の杭頭における構造(もしくは、以下で記載する、既存杭と新設杭の双方の杭頭における構造)である。また、「縁切りされている」とは、既存杭の杭天端面とコンクリート基礎とがピン結合や剛結合等で結合されていないことを意味しており、例えば、既存杭の杭天端面がコンクリート基礎の底面に当接(接触)している形態や、杭天端面とコンクリート基礎の底面との間に地盤等が介在する形態を含んでいる。尚、後者の形態であっても、コンクリート基礎の底面から例えば1m程度かそれ未満の僅かな隙間を置いて杭天端面が存在する場合は、この隙間に存在する地盤等を介して、コンクリート基礎から作用する鉛直荷重の一部を既存杭にて負担することが可能になる。
【0015】
また、既存杭に地震時の水平力が作用する態様には、建築物に地震時の水平力が作用した際に、コンクリート基礎からの鉛直荷重による押し込み力とともにこの水平力の一部が作用する態様や、地震時の周辺地盤の振動によって生じる水平力が既存杭に作用する態様等が含まれる。
【0016】
また、「コンクリート基礎」とは、鉄筋コンクリート製の基礎を意味しており、この「基礎」には、底盤(スラブ)やフーチングが含まれる。基礎がフーチングの場合は、各フーチングが独立している形態の他に、複数のフーチングが地中梁にて相互に接続される形態も含まれる。さらに、コンクリート基礎を含む新設建築物は、その全体が鉄筋コンクリート(RC:Reinforced Concrete)造の建築物の他、コンクリート基礎の上に鉄骨(S:Steel)造や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC:Steel Reinforced Concrete)造の上部構造を備えたハイブリッド建築物が含まれる。また、既存杭は、場所打ちコンクリート杭の他、鋼管杭やSC杭、PHC杭等の既製杭が含まれる。
【0017】
本態様では、既存杭の杭頭の外周面の全周囲と周辺地盤との間に、第1隙間が設けられる。この第1隙間が設けられる「杭頭」の杭天端面からの深度方向の長さ範囲は、仮に地震時の水平力が作用した際に既存杭を損傷に至らしめる応力(曲げ応力やせん断応力)等が生じ得る範囲に設定できる。従って、このような長さ範囲においては、既存杭の杭頭の外周面の全周に第1隙間が設けられ、それ以深では既存杭の外周面と周辺地盤とは密着している。
【0018】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様は、
前記杭天端面と前記コンクリート基礎の下面が当接して、前記コンクリート基礎からの鉛直荷重が前記杭天端面に直接作用していることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、杭天端面とコンクリート基礎の下面が当接していることにより、コンクリート基礎から作用する鉛直荷重の一部を既存杭が確実に負担することができる。
【0020】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様は、
前記杭天端面と前記コンクリート基礎の下面の間に第2隙間があり、前記第2隙間に他の物質が存在して、前記コンクリート基礎からの鉛直荷重が前記他の物質を介して前記杭天端面に間接的に作用していることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、杭天端面とコンクリート基礎の下面の間に第2隙間があり、第2隙間に他の物質が存在していることにより、地震時に作用する水平力によってコンクリート基礎を含む建築物が水平変位した際の、杭天端面とコンクリート基礎の下面の間に生じ得る摩擦力が既存杭に作用することを低減できる。
【0022】
ここで、第2隙間に存在する「他の物質」とは、地盤の他に、以下で説明する、杭頭の天端面と外周面を包囲する枠材を構成する上蓋、この上蓋の上面もしくは下面に設けられている滑り材等のいずれか一種もしくは複数が含まれる。
【0023】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様において、
前記杭頭の前記外周面と前記周辺地盤との間に枠材が配設され、前記枠材により前記第1隙間が保持されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、杭頭の外周面と周辺地盤との間に枠材が配設され、枠材によって第1隙間が保持されていることにより、周辺地盤が軟弱地盤であったり砂質地盤等であって自立できない場合であっても、杭頭の外周面と周辺地盤との間の第1隙間を保持することができる。尚、周辺地盤が比較的硬質な地盤や粘性の高い粘性地盤であって自立可能な場合は、枠材がない場合でも杭頭の外周面と周辺地盤との間の第1隙間を保持することが可能である。
【0025】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様は、
前記第1隙間に緩衝材が配設されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、第1隙間に緩衝材が配設されていることにより、枠材に水平力が作用して枠材の内面が杭頭の外周面に接触しようとした際に、双方の間に介在する緩衝材が水平力を吸収して杭頭への水平力の作用を抑制することができる。
【0027】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様は、
前記枠材が上蓋を備えていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、枠材が上蓋を備えていることにより、第1隙間に地盤が入り込むことを防止でき、第1隙間を保持することができる。ここで、上蓋は、コンクリート基礎の下面と接触していてもよいし、コンクリート基礎の下面との間に第2隙間を有していてもよい。
【0029】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様において、
前記杭天端面と前記上蓋との間、前記上蓋と前記コンクリート基礎の下面との間、の少なくとも一方に滑り材が介在していることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、杭天端面と上蓋との間、上蓋とコンクリート基礎の下面との間の少なくとも一方に滑り材が介在していることにより、コンクリート基礎との間の摩擦力に起因する水平力が杭頭に作用することを抑制できる。ここで、本態様の具体的な形態は、杭天端面と上蓋との間に滑り材が介在する形態、上蓋とコンクリート基礎の下面との間に滑り材が介在する形態、杭天端面と上蓋との間、及び上蓋とコンクリート基礎の下面との間の双方に滑り材が介在する形態を含んでいる。
【0031】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様において、
前記杭天端面は、高さ調整用に平坦に切断された整形面、高さ調整用にコンクリートが増し打ちされた整形面、のいずれか一方であることを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、杭天端面が、高さ調整用に平坦に切断された整形面、高さ調整用にコンクリートが増し打ちされた整形面のいずれか一方であることにより、コンクリート基礎の下面との間で可及的に摩擦力を低減できる態様で杭天端面を当接させることができ、あるいは、コンクリート基礎の下面との間に所定の第2隙間を確保して、杭天端面の全域に対してコンクリート基礎からの鉛直荷重の一部を均等に作用させることができる。
【0033】
また、本発明による既存杭の杭頭構造の他の態様において、
前記既存杭の杭径をDとした際に、前記第1隙間の深度方向長さの最大値が、1D乃至3Dの範囲にあることを特徴とする。
【0034】
本態様によれば、第1隙間の深度方向長さの最大値が1D乃至3Dの範囲に設定されていることにより、杭頭に水平力が作用した際に生じるせん断応力等によって既存杭が破損する可能性の高い深度方向の長さ範囲における、当該水平力の作用を抑制することができる。
【0035】
また、本発明による既存杭と新設杭の杭頭構造の一態様は、
既存杭と新設杭がコンクリート基礎を支持する、既存杭と新設杭の杭頭構造であって、
前記既存杭の杭天端面と前記コンクリート基礎とが縁切りされ、前記既存杭の杭頭の外周面と周辺地盤との間に第1隙間があり、
前記新設杭の杭頭が前記コンクリート基礎に結合されていることを特徴とする。
【0036】
本態様によれば、複数の既存杭と複数の新設杭がコンクリート基礎から作用する鉛直荷重を負担するハイブリッドな杭頭構造に関し、既存杭の杭天端面とコンクリート基礎が縁切りされ、既存杭の杭頭の外周面と周辺地盤との間に第1隙間があることにより、既存杭の杭頭は、建築物の荷重の一部を負担しつつ、地震時の水平力を受けることを効果的に抑制され、新設杭の杭頭は、建築物の荷重の一部と地震時の水平力の双方を受けることが可能になる。また、既存杭を有効に再利用することにより、新設杭の本数低減や仕様ダウンを図ることが可能になり、既存杭の撤去に要する時間と施工コストを解消もしくは削減できることと相俟って、工期の大幅な短縮と工費の大幅な削減に繋がる。
【発明の効果】
【0037】
以上の説明から理解できるように、本発明の既存杭の杭頭構造、及び既存杭と新設杭の杭頭構造によれば、既存杭の杭頭が、新設建築物の鉛直荷重の一部を負担しつつ、地震時の水平力が作用することを効果的に抑制されている、既存杭の杭頭構造と、既存杭と新設杭の杭頭構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】第1実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図2】第2実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図3A】第3実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図4】第4実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図5】第5実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図6】第6実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図7】第7実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図8】第8実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図9】第9実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【
図10】実施形態に係る既存杭と新設杭の杭頭構造の一例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、各実施形態に係る既存杭の杭頭構造、及び既存杭と新設杭の杭頭構造の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0040】
[第1実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
はじめに、
図1を参照して、第1実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図1Aは、第1実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図であり、
図1Bは、
図1AのB―B矢視図である。
【0041】
第1実施形態をはじめ、以下で説明する各実施形態に係る既存杭の杭頭構造は、コンクリート基礎70が鉄筋コンクリート製の底盤であり、既存杭10が場所打ちコンクリート杭として説明するが、コンクリート基礎はフーチングであってもよく、既存杭は鋼管杭やSC杭等の既製杭であってもよい。さらに、
図1等においては、コンクリート基礎70の内部にある鉄筋と既存杭10の内部にある鉄筋の図示を省略する。
【0042】
また、
図1乃至
図9に示す各実施形態に係る既存杭の杭頭構造90~90Hは、
図10に示す既存杭と新設杭の杭頭構造100のうち、既存杭の杭頭における構造を抽出して示している。すなわち、旧建築物の建設跡地に新設建築物を施工するに当たり、地盤G内に存在する既存杭10の一部もしくは全部を撤去することなく再利用することとし、新たに新設杭10A(
図10参照)を施工して、既存杭10と新設杭10Aにより新設建築物80を支持する基礎構造を形成する既存杭の杭頭構造を示すものである。以下で説明する既存杭10は、基本的に1981年以前の所謂旧耐震基準に基づいて設計されている杭として説明する。
【0043】
図1Aと
図1Bに示す既存杭の杭頭構造90は、円柱状の既存杭10の杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71が当接され、既存杭10の杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に第1隙間20を有する。
【0044】
既存杭10の杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71は単に当接されている構成であることから、双方がピン結合や剛結合により結合されていない、縁切りされた杭頭構造となっている。
【0045】
ここで、杭天端面14は、高さ調整用に平坦に切断された整形面、もしくは、高さ調整用にコンクリートが増し打ちされた整形面のいずれか一方である。
【0046】
杭天端面14がこのような整形面であることにより、コンクリート基礎70の下面71との間で可及的に摩擦力を低減できる態様で杭天端面14を当接させることができ、コンクリート基礎70の下面71を介して、建築物の鉛直荷重の一部を杭天端面14の全域に対して均等に作用させることができる。
【0047】
既存杭10の杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間には、
図1Bに示すように円環状の第1隙間20が形成される。この第1隙間20の深度方向の長さh(最大長さ)は、既存杭10の杭径(直径)をDとした際に、1D乃至3Dの範囲に設定されている。
【0048】
杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71が当接していることから、コンクリート基礎70からの鉛直荷重W1は、杭天端面14に直接作用する。これに対して、地震時に既存杭10の杭頭12に作用し得る水平力(水平荷重)H1は、杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間にある第1隙間20により、杭頭12に作用しないか、僅かな水平力が作用するにとどめることができる。
【0049】
所謂旧耐震基準に基づいて設計されている既存杭10の設計においては、現在の耐震基準下で要求される水平耐力が十分に考慮されていない可能性が極めて高いことから、既存杭の杭頭構造90により、既存杭10に対して鉛直荷重W1を負担させ、水平荷重H1を極力負担させないような杭頭構造を形成できる。
【0050】
また、第1隙間20の深度方向の長さh(最大長さ)が1D乃至3Dの範囲に設定されていることにより、杭頭12に水平力が作用した際に生じるせん断応力等によって既存杭10が破損する可能性の高い深度方向の長さ範囲における、水平力の作用を抑制することができる。
【0051】
図1に示す既存杭の杭頭構造90は、周辺地盤Gが硬質地盤であったり、あるいは粘性の高い粘性地盤であり、従って第1隙間20の孔壁が崩れることなく自立できる地盤である場合に形成できる。
【0052】
既存杭の杭頭構造90によれば、既存杭10に対してコンクリート基礎70から作用する鉛直荷重W1を負担させ、地震時の水平力H1を極力負担させない構造であることから、所謂旧耐震基準に基づいて設計されている既存杭10を有効に再利用することが可能になり、新設の杭基礎建築物を施工する際の新設杭の本数低減や仕様ダウンを図ることができ、既存杭10の撤去に要する時間と施工コストを解消もしくは削減できることと相俟って、工期の大幅な短縮と工費の大幅な削減に繋がる。
【0053】
[第2実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図2を参照して、第2実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図2は、第2実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0054】
図2に示す既存杭の杭頭構造90Aは、杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71との間に第2隙間30があり、第2隙間30に地盤G(他の物質の一例)が存在している点と、杭頭12の外周面15と枠材40の間の第1隙間20に緩衝材60が介在している点において、既存杭の杭頭構造90と相違する。
【0055】
緩衝材60は、発泡スチロールをはじめとする発泡樹脂等、水平力吸収性を備えつつ、比較的硬質で第1隙間20を保持できる素材が好ましい。
【0056】
杭天端面14がコンクリート基礎70の下面71に当接していないことから、コンクリート基礎70からの鉛直荷重W1は、第2隙間30にある地盤Gを介して杭天端面14に間接的に作用することになる。
【0057】
杭天端面14がコンクリート基礎70の下面71に当接していないことにより、地震時に作用する水平力によってコンクリート基礎70を含む建築物が水平変位した際の、杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71との間に生じ得る摩擦力が既存杭10に作用することを低減できる。
【0058】
第1隙間20に緩衝材60が配設されていることにより、枠材40に水平力H1が作用して枠材40の内面が杭頭12の外周面15に接触しようとした際に、双方の間に介在する緩衝材60が水平力H1を吸収して杭頭12への水平力H1の作用を抑制することができる。
【0059】
[第3実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図3を参照して、第3実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図3Aは、第3実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図であり、
図3Bは、
図3AのB―B矢視図である。
【0060】
図3に示す既存杭の杭頭構造90Bは、既存杭10杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に枠材40が配設され、枠材40により第1隙間20が保持されている点において、既存杭の杭頭構造90と相違する。すなわち、杭天端面14がコンクリート基礎70の下面71に当接している態様は既存杭の杭頭構造90と同様である。
【0061】
図3A及び
図3Bに示すように、枠材40は円筒状を呈しており、この形状により円環状の第1隙間20を保持する。枠材40には、鋼製の枠材やコンクリート製の枠材、硬質な樹脂製(例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics))の枠材等を適用できる。
【0062】
杭頭12の周囲に枠材40が配設されることにより、周辺地盤Gが軟弱地盤であったり砂質地盤等であって自立できない場合であっても、杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間の第1隙間20を保持することができる。
【0063】
[第4実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図4を参照して、第4実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図4は、第4実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0064】
図4に示す既存杭の杭頭構造90Cは、既存杭10杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に枠材40が配設される点は既存杭の杭頭構造90Bと同様であるが、杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71との間に滑り材50(他の物質の一例)が介在している点において、既存杭の杭頭構造90Bと相違する。
【0065】
滑り材50は、例えば、テフロン(登録商標)に代表される、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)等のフッ素樹脂等により形成される。杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71との間に滑り材50が介在していることにより、地震時に作用する水平力によってコンクリート基礎70を含む建築物が水平変位した際の、杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71との間に生じ得る摩擦力が既存杭10に作用することを抑制もしくは抑止できる。
【0066】
さらに、杭頭12の周囲に枠材40が配設されることにより、周辺地盤Gが軟弱地盤であったり砂質地盤等であって自立できない場合であっても、杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間の第1隙間20を保持することができる。
【0067】
[第5実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図5を参照して、第5実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図5は、第5実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0068】
図5に示す既存杭の杭頭構造90Dは、既存杭10杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に枠材40が配設される点、及び、杭天端面14とコンクリート基礎70の下面71との間に滑り材50が介在している点は既存杭の杭頭構造90Cと同様であるが、杭頭12の外周面15と枠材40の間の第1隙間20に緩衝材60が介在している点において、既存杭の杭頭構造90Cと相違する。
【0069】
既に説明したように、第1隙間20に緩衝材60が配設されていることにより、枠材40に水平力H1が作用して枠材40の内面が杭頭12の外周面15に接触しようとした際に、双方の間に介在する緩衝材60が水平力H1を吸収して杭頭12への水平力H1の作用を抑制することができる。
【0070】
尚、図示を省略するが、緩衝材が、
図1に示す既存杭の杭頭構造90の第1隙間20や、
図2に示す既存杭の杭頭構造90Aの第1隙間20に配設されてもよいし、
図1や
図2に示す既存杭10の杭天端面14の上方に滑り材が配設されてもよいし、緩衝材と滑り材のいずれか一方が配設されてもよい。
【0071】
[第6実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図6を参照して、第6実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図6は、第6実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0072】
図6に示す既存杭の杭頭構造90Eは、既存杭10杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に配設される枠材40Aが上蓋42(他の物質の一例)を有する点において、既存杭の杭頭構造90Bと相違する。
【0073】
上蓋42の下面は杭天端面14に当接し、上面はコンクリート基礎70の下面に当接する。このように、枠材40Aが上蓋42を備えていることにより、第1隙間20に地盤Gが入り込むことを防止でき、第1隙間20を保持することができる。ここで、杭天端面14と上蓋42の間に滑り材が配設され、第1隙間20に緩衝材が配設されてもよいし、いずれか一方が配設されてもよい。
【0074】
[第7実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図7を参照して、第7実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図7は、第7実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0075】
図7に示す既存杭の杭頭構造90Fは、枠材40Aの備える上蓋42とコンクリート基礎70の下面71との間に第2隙間30があり、第2隙間30に地盤Gが介在している点において、既存杭の杭頭構造90Eと相違する。
【0076】
枠材40Aの備える上蓋42がコンクリート基礎70の下面71に当接していないことにより、地震時に作用する水平力によってコンクリート基礎70を含む建築物が水平変位した際の、上蓋42とコンクリート基礎70の下面71との間に生じ得る摩擦力が既存杭10に作用することを低減できる。また、枠材40Aが上蓋42を備えていることにより、第1隙間20に地盤Gが入り込むことを防止でき、第1隙間20を保持することができる。ここで、杭天端面14と上蓋42の間に滑り材が配設され、第1隙間20に緩衝材が配設されてもよいし、いずれか一方が配設されてもよい。
【0077】
[第8実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図8を参照して、第8実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図8は、第8実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0078】
図8に示す既存杭の杭頭構造90Gは、枠材40Aの備える上蓋42とコンクリート基礎70の下面71との間にある第2隙間30において、地盤Gに代わり滑り材50A(他の物質の一例)が介在する点において、既存杭の杭頭構造90Fと相違する。尚、上蓋42の下面と杭天端面14は当接している。
【0079】
枠材40Aの備える上蓋42とコンクリート基礎70の下面71との間に滑り材50Aが介在していることにより、地震時に作用する水平力によってコンクリート基礎70を含む建築物が水平変位した際の、上蓋42とコンクリート基礎70の下面71の間に生じ得る摩擦力が既存杭10に作用することを抑制もしくは抑止できる。また、枠材40Aが上蓋42を備えていることにより、第1隙間20に地盤Gが入り込むことを防止でき、第1隙間20を保持することができる。
【0080】
[第9実施形態に係る既存杭の杭頭構造]
次に、
図9を参照して、第9実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図9は、第9実施形態に係る既存杭の杭頭構造の一例の縦断面図である。
【0081】
図9に示す既存杭の杭頭構造90Hは、枠材40Aの備える上蓋42の下面と杭天端面14の間に別途の滑り材50B(他の物質の一例)が介在する点において、既存杭の杭頭構造90Gと相違する。
【0082】
枠材40Aの備える上蓋42とコンクリート基礎70の下面71との間に滑り材50Aが介在していることに加えて、上蓋42の下面と杭天端面14との間に別途の滑り材50Bが介在することにより、地震時に作用する水平力によってコンクリート基礎70を含む建築物が水平変位した際の、上蓋42とコンクリート基礎70の下面71との間に生じ得る摩擦力が既存杭10に作用することを、より一層抑制もしくは抑止できる。また、枠材40Aが上蓋42を備えていることにより、第1隙間20に地盤Gが入り込むことを防止でき、第1隙間20を保持することができる。ここで、第1隙間20に緩衝材が配設されてもよい。
【0083】
[実施形態に係る既存杭と新設杭の杭頭構造]
次に、
図10を参照して、実施形態に係る既存杭と新設杭の杭頭構造の一例について説明する。ここで、
図10は、実施形態に係る既存杭と新設杭の杭頭構造の一例の正面図である。ここで、図示例は、既存杭と新設杭の杭頭構造100を形成する既存杭の杭頭構造として、
図7に示す既存杭の杭頭構造90Fを適用した例を示しているが、他の既存杭の杭頭構造90、90A、90B、90C、90D、90E、90G、90H等が適用されてもよいことは勿論のことである。
【0084】
図示例は、鉄筋コンクリート製のコンクリート基礎70と上部構造75を備えた新設の杭基礎建築物80の施工に際し、既に存在している既存杭10を再利用し、別途新設杭10Aを施工することにより、これら複数の既存杭10と新設杭10Aとにより鉛直荷重Wが負担される構成の杭基礎建築物である。
【0085】
新設杭10Aの杭頭13は、コンクリート基礎70との間でピン結合や剛結合、これらの間の半剛結合により結合されている。一方、既存杭10は、第2隙間30に介在する地盤Gを介してコンクリート基礎70の下面から離れた位置に存在する。
【0086】
この構成により、既存杭と新設杭の杭頭構造100では、杭基礎建築物80の全体の鉛直荷重Wのうち、相対的に大きな鉛直荷重W2を新設杭10Aが負担し、相対的に小さな鉛直荷重W1を既存杭10が負担するような鉛直荷重の負担割合となる。
【0087】
一方、地震時の水平力Hが作用した際には、コンクリート基礎70に結合される新設杭10Aは相対的に大きな水平力H2を負担する一方、杭頭12がコンクリート基礎70と縁切りされている既存杭10は、僅かな水平力H1を負担するか、もしくは水平力を負担しないこととなる。
【0088】
既存杭と新設杭の杭頭構造100によれば、既存杭10の杭頭12とコンクリート基礎70が縁切りされ、既存杭10の杭頭12の外周面15と周辺地盤Gとの間に第1隙間20があることにより、既存杭10の杭頭12は、杭基礎建築物80の鉛直荷重の一部W1を負担しつつ、地震時の水平力の一部H1を受けることを効果的に抑制され、新設杭10Aの杭頭13は、杭基礎建築物80の鉛直荷重の一部W2と地震時の水平力の一部H2の双方を受けることが可能になる。このことにより、所謂旧耐震基準に基づいて設計されている既存杭10を破損させることなく、有効に再利用することができる。
【0089】
さらに、既存杭10を有効に再利用することにより、新設杭10Aの本数低減や仕様ダウンを図ることが可能になり、既存杭10の撤去に要する時間と施工コストを解消もしくは削減できることと相俟って、工期の大幅な短縮と工費の大幅な削減に繋がる。
【0090】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0091】
10:既存杭
10A:新設杭
12,13:杭頭
14:杭天端面
15:外周面
20:第1隙間
30:第2隙間
40,40A:枠材
42:上蓋
50,50A,50B:滑り材
60:緩衝材
70:コンクリート基礎
75:上部構造
80:建築物(新設の杭基礎建築物、杭基礎建築物)
90,90A,90B,90C,90D,90E,90F,90G,90H:既存杭の杭頭構造
100:既存杭と新設杭の杭頭構造
G:周辺地盤(地盤)
W:鉛直荷重
W1,W2:鉛直荷重の一部(鉛直荷重)
H:水平荷重(水平力)
H1:水平荷重の一部(水平力、水平力の一部)