(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023045
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240214BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240214BHJP
C02F 3/10 20230101ALI20240214BHJP
C12P 5/02 20060101ALI20240214BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12M1/00 H
C02F3/28 B
C02F3/28 A
C02F3/10 Z
C12P5/02
C12N1/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126590
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000120401
【氏名又は名称】荏原実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊博
(72)【発明者】
【氏名】川崎 祐
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC13
4B029DB01
4B029DB11
4B064AB03
4B064CA01
4B064CC22
4B064DA16
4B065AA01X
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4B065CA55
4D003AA12
4D003EA21
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4D003FA10
4D040AA04
4D040AA26
4D040AA34
4D040AA42
4D040AA54
(57)【要約】
【課題】
微生物を用いた場合でも、高い効率で高濃度のメタンガスを生成可能な、二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法を提供すること。
【解決手段】
水素含有ガスBとCO
2含有ガスAとを微生物処理を行う嫌気性生物反応槽1に供給し、メタンガスを含有する処理ガスEを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該処理ガスEの少なくとも一部を該反応槽に循環する循環ガスライン(D)を有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有ガスとCO2含有ガスとを微生物処理を行う嫌気性生物反応槽に供給し、メタンガスを含有する処理ガスを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、
該処理ガスの少なくとも一部を該反応槽に循環する循環ガスラインを有することを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、
該反応槽の後段には、該処理ガスに含まれるNH3を除去するNH3除去手段を有することを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、
該反応槽の後段には、該処理ガスに含まれるメタンガスを分離するためのガス分離手段を有し、
該ガス分離手段によりメタンガスが除去された残留ガスを、該循環ガスラインに供給することを特徴とする二酸化炭除去を含むメタンガス生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、
該NH3除去手段の後段には、該NH3除去手段を通過したガスに含まれるメタンガスを分離するためのガス分離手段を有し、
該ガス分離手段によりメタンガスが除去された残留ガスを、該循環ガスラインに供給することを特徴とする二酸化炭除去を含むメタンガス生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、
該反応槽内の微生物を含む液体中に流動担体を有し、該流動担体の充填率は5~50%であることを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の二酸化炭素除去及びメタンガス生成装置において、
該循環ガスラインで循環させる該処理ガスの循環量を、該反応槽に供給する該水素含有ガスと該CO2含有ガスとの合計量の0.5~50倍に設定する循環量調整手段を有することを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置。
【請求項7】
水素含有ガスとCO2含有ガスとを嫌気性生物反応槽に供給し、該反応槽内で微生物処理を行い、メタンガスを含有する処理ガスを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、
該処理ガスの少なくとも一部を該反応槽に循環することを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、
該処理ガスに含まれるNH3を除去することを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法。
【請求項9】
請求項7に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、
該処理ガスからメタンガスを分離し、
該メタンガスが除去された残留ガスを、該反応槽に循環させることを特徴とする二酸化炭除去を含むメタンガス生成方法。
【請求項10】
請求項8に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、
該NH3を除去した処理ガスから、メタンガスを分離し、
該メタンガスが除去された残留ガスを、該反応槽に循環させることを特徴とする二酸化炭除去を含むメタンガス生成方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、該嫌気性生物反応槽に供給される該水素含有ガスのH2質量と該CO2含有ガスのCO2質量との比は、1:5.5~1:11の範囲に設定されていることを特徴とする二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法に関し、特に、水素含有ガスとCO2含有ガスとを微生物処理を行い、メタンガスを含有する処理ガスを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の削減及び除去が大きな課題となっている。二酸化炭素は、化石燃料の燃焼等に伴って発生するため、その削減や回収及び再利用が求められている。また、有機性廃水や下水汚泥や有機性廃棄物、食品残渣等の有機性汚泥をメタン発酵にて得られたバイオガス中にも二酸化炭素が含まれており、二酸化炭素の除去が必要となる。
【0003】
二酸化炭素の除去利用技術として、下記反応式(1)に示すようなメタネーション技術がすでに公知である。
4H2+CO2→CH4+2H2O ・・・・・・・・(1)
【0004】
特許文献1及び2に示すように、二酸化炭素の除去とメタンガスの生成方法として、触媒を用い、高圧、高温の条件で高いメタン生成能力が得られることが既に開示されている。しかし、このような方法は大量のエネルギーを消費し、生成システム・装置の稼働コストが大きく、装置の耐久性も乏しい。
【0005】
これに対し、特許文献3に示すように、微生物の働きによる上記(1)の反応も可能である。
図1に示すように、反応槽1の内部に、微生物を含む液体培地10を入れ、炭酸ガスと水素ガスを符号Cのように供給し、反応槽内の散気手段2から液体培地に通気供給する。また、浮遊する微生物や液体培地を撹拌するため、撹拌翼MBをモーターMで駆動している。
【0006】
しかし、そのメタン生成能力は低く、限定的である。例えば、特許文献3のようにリアクター当たりのメタンガス発生量は最大約10.8L/L-Reactor/d(単位:一日で、反応槽内の1リットル当たりのメタンガスの発生量)と少なく、反応槽から排出される処理ガス中のメタンガス濃度も55%程度と低い。微生物によるメタネーション反応は微生物濃度や処理条件、特に二酸化炭素や水素ガスの反応液中への溶解濃度や溶解速度、微生物への拡散速度等に大きく影響される。このため、微生物によるメタネーションにおいては、安定した高いメタン生成速度及び高濃度メタンガスの生成が大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5562873号公報
【特許文献2】特許第6956665号公報
【特許文献3】特公昭63-49999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解消し、微生物を用いた場合でも、高い効率で高濃度のメタンガスを生成可能な、二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の二酸化炭素処理を含むメタンガス生成装置及び方法は、以下の特徴を有する。
(1) 水素含有ガスとCO2含有ガスとを微生物処理を行う嫌気性生物反応槽に供給し、メタンガスを含有する処理ガスを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該処理ガスの少なくとも一部を該反応槽に循環する循環ガスラインを有することを特徴とする。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該反応槽の後段には、該処理ガスに含まれるNH3を除去するNH3除去手段を有することを特徴とする。
【0011】
(3) 上記(1)に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該反応槽の後段には、該処理ガスに含まれるメタンガスを分離するためのガス分離手段を有し、該ガス分離手段によりメタンガスが除去された残留ガスを、該循環ガスラインに供給することを特徴とする。
【0012】
(4) 上記(2)に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該NH3除去手段の後段には、該NH3除去手段を通過したガスに含まれるメタンガスを分離するためのガス分離手段を有し、該ガス分離手段によりメタンガスが除去された残留ガスを、該循環ガスラインに供給することを特徴とする。
【0013】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該反応槽内の微生物を含む液体中に流動担体を有し、該流動担体の充填率は5~50V%であることを特徴とする。
【0014】
(6) 上記(5)に記載の二酸化炭素除去及びメタンガス生成装置において、該循環ガスラインで循環させる該処理ガスの循環量を、該反応槽に供給する該水素含有ガスと該CO2含有ガスとの合計量の0.5~50倍に設定する循環量調整手段を有することを特徴とする。
【0015】
(7) 水素含有ガスとCO2含有ガスとを嫌気性生物反応槽に供給し、該反応槽内で微生物処理を行い、メタンガスを含有する処理ガスを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、該処理ガスの少なくとも一部を該反応槽に循環することを特徴とする。
【0016】
(8) 上記(7)に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、該処理ガスに含まれるNH3を除去することを特徴とする。
【0017】
(9) 上記(7)に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、該処理ガスからメタンガスを分離し、該メタンガスが除去された残留ガスを、該反応槽に循環させることを特徴とする。
【0018】
(10) 上記(8)に記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、該NH3を除去した処理ガスから、メタンガスを分離し、該メタンガスが除去された残留ガスを、該反応槽に循環させることを特徴とする。
【0019】
(11) 上記(7)乃至(10)のいずれかに記載の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成方法において、該嫌気性生物反応槽に供給される該水素含有ガスのH2質量と該CO2含有ガスのCO2質量との比は、1:5.5~1:11の範囲に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水素含有ガスとCO2含有ガスとを嫌気性生物反応槽に供給し、該反応槽内で微生物処理を行い、メタンガスを含有する処理ガスを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法において、該処理ガスの少なくとも一部を該反応槽に循環するため、処理ガス中に残留する二酸化炭素及び水素を、再び該反応槽に供給してメタン生成反応に寄与することが可能となるため、生成される処理ガスのメタンガスの濃度を高くでき、プロセス全体のメタンガス転換率を高くすることが可能となる。しかも、該反応槽に供給されるガス量を多くすることで、微生物を含む浮遊汚泥や流動担体を撹拌でき、反応液の均一化と良好な流動状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来のメタンガス生成装置を説明する図である。
【
図2】本発明に係る二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置の基本的考えを説明する図である。
【
図3】本発明に係る二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置の第1の実施例を示す図である。
【
図4】本発明に係る二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置の第2の実施例を示す図である。
【
図5】本発明に係る二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置の第3の実施例を示す図である。
【
図6】本発明に係る二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置の第4の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法について、
図2乃至6に基づき、詳細に説明する。なお、説明を簡略化するため、以下ではメタンガス生成装置を中心に説明する。
本発明は、
図2に示すように、水素含有ガスAとCO
2含有ガスBとを微生物処理を行う嫌気性生物反応槽1に供給(符号C)し、メタンガスを含有する処理ガスEを排出する二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置において、該処理ガスEの少なくとも一部を該反応槽に循環(符号D)する循環ガスラインを有することを特徴とする。
【0023】
ガスAは二酸化炭素ガスを含むものであれば、嫌気性生物反応槽1に供給して処理可能である。有機性廃水や有機性汚泥等をメタン発酵して得られたバイオガスをガスAとして用いてもよい。また、工場や火力発電所等から燃焼に伴って発生する二酸化炭素(排ガス)を用いてもよい。
【0024】
ガスBは水素ガスを含むものであれば、嫌気性生物反応槽1に供給して利用することができる。太陽光や風力等の再生エネルギーや発電所の夜間余剰電力等を利用し、水の電気分解で得られた水素ガスをガスBとして用いてもよい。また、工場の生産工程等から副生成物として発生する水素ガスを用いてもよい。
【0025】
CO
2を含有するガスA及び水素が含有するガスBは、嫌気性生物反応槽1に供給するため、酸素を含まないことが好ましい。また、反応槽1に供給する方法として、
図2に示すように、ガスAとガスBとを混合した混合ガスCを反応槽に供給する方法や、ガスAとガスBとを別々に供給する方法がある。
【0026】
ガスA及びBを反応槽1内に供給する際は、微生物を含む反応液(液体培地)に散気し、反応液中にガスを溶解させたり、気泡が微生物と接触する機会を増加させるため、反応槽1の底部に散気手段2を配置している。当然、混合ガスCに対応する散気手段を設けても良いし、ガスA又はBの各々に対応した散気手段であっても良い。
【0027】
散気手段2としては、ガス溶解効率の高い微細気泡散気装置を用いることが好ましい。微細気泡散気装置としては、メンブレン型やセラミック型散気盤方式、さらにエジェクター方式等のいずれを用いても同様な効果が得られる。メンブレンやセラミック型等の場合、その表面孔径が小さいほど発生ガス気泡も小さく。溶解効率が高くなるため、表面孔径30μm以下が望ましい。エジェクター等の場合も、物理的に微細気泡を発生させるため、微細気泡孔径が30μm以下のものが好ましい。さらにマイクロバブルやナノバブルが得られる散気手段であれば、水素の溶解効率が一層高く得られ、メタン生成効率の向上効果が得られる。
【0028】
嫌気性生物反応槽1には二酸化炭素ガスと水素ガスを反応して、メタンガスに転換するメタン生成菌主体の微生物が保持されている。
メタン生成菌としては、消化汚泥由来の菌を使用でき、水素と二酸化炭素からメタンを生成可能な水素資化性メタン生成菌を使用することが望ましい。具体的には、メタノバクテリウム属の「Methanobacterium thermoautotrophicum」「Methanobacterium formicicum」、メタノコッカス属の「Methanococcus vanielii」、またはメタノサリシナ属の「Methanosaricina barkerii」が好適に利用可能である。
【0029】
微生物保持の形態として、浮遊汚泥と流動担体のいずれかもしくは両者を共存させる方式とすることができる。浮遊汚泥と流動担体を共存する場合は、嫌気性生物反応槽内の微生物濃度を高く維持することが可能である。さらに流動担体の場合はメタン生成反応に必要な水素資化メタン生成菌が優先的に付着できる親水性のものを用いれば、高い反応速度で水素と二酸化炭素ガスをメタンガスに転換することが可能となる。
【0030】
浮遊汚泥は予め、下水汚泥等の有機性汚泥をメタン発酵して得られた嫌気性消化汚泥を種汚泥として馴致培養して使用することができる。浮遊汚泥を単独使用する場合は、予め反応槽内に高濃度の消化汚泥を投入することが望ましい。浮遊物質(MLSS)としては10,000mg/L以上、好ましくは15,000~25,000mg/Lとすることが好ましい。嫌気性生物反応槽では、供給ガスによる生物反応であるため、基本的に処理ガスの分離であり、固液分離がほとんど必要でないことから、安定した流動状態を維持できるMLSS濃度であることが望ましい。
【0031】
流動担体としては水素資化メタン生成菌の付着しやすい親水性担体を用いることが好ましい。担体表面に上記メタン生成菌を安定して付着させるためには予め嫌気性消化汚泥に浸漬しておくことが有効である。嫌気性生物反応槽に投入する流動担体としては、微生物に分解されない高分子担体であり、上記水素資化メタン生成菌が容易に付着できる親水性担体が好ましい。高分子担体としては、ポリエチレングリコール(PEG)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、ポリカーボネイト、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリポロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0032】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形、チューブ型の何れも使用可能、有効径は生物反応槽排出液出口のスクリーンより安定して分離できる3~20mmが好ましい。担体の比表面積としては100~5,000m2/m3とするのが好ましい。
担体表面に微細孔径を多く有するもの、内部が中空であるスポンジ、表面に無数の凹凸を有するものがメタン生成菌の付着固定が速く、短期間の馴致培養で高濃度のメタン生成菌付着が得られる。さらに長期間、嫌気性生物反応槽においてメタン生成菌を高濃度に維持できることから、安定したメタン転換性能が得られる。
担体比重はガス通気状態においても均一流動できる1.0付近であることが好ましい。担体充填量は嫌気性生物反応槽内において局部堆積のないように5~50V%、好ましくは5~30V%とすることが望ましい。当該担体充填量は、担体や反応液が占める全体の体積に対し、担体のみを充填した場合に占める体積の比率を意味している。
【0033】
反応槽1内に流動担体が移動可能な程度に反応液(液体培地)を満たす。この液体には、表1に示すような微生物(メタン生成菌)の栄養源が含まれている。
【0034】
【0035】
本発明に係る二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置の特徴は、
図2に示すように、嫌気性生物反応槽1から排出される処理ガスEの一部を、該反応槽1に循環(符号D)させることである。循環に際しては、送風機(ガスブロア)BLを用いて強制的に循環させることが可能である。また、循環した処理ガスは、ガスA及び/またはガスBと混合して、散気手段2に供給するだけでなく、循環したガス専用に散気手段を設けることも可能である。
【0036】
処理ガスの一部を循環させる目的は、処理ガス中に残留する未処理の水素や二酸化炭素を有効活用し、メタンガス転換効率を100%に近づけるためである。処理ガスの循環により、嫌気性生物反応槽内において再び利用されて二酸化炭素や水素ガスと微生物の接触頻度が増加してメタンガス転換効率も高くなる。また、ガス流量増加に伴う反応槽内の反応液の流動状態も促進され、浮遊汚泥や流動担体の撹拌も進み、微生物による処理効率の向上が期待できる。さらに反応槽気相部においても、ガスが大きく流動し、気相部のガス混合と均一性が促進されて、反応液への溶解効率が向上する。気相部では、軽い水素が上部に集中しやすく、かなり強い推進力(圧力)がないと反応液に溶け込むことが難しい。この循環ガスにより、気相部のガス流動が激しくなるため、軽い水素ガスも気相内で均一となり、反応液への接触頻度が増加し、溶解量も増加することから、安定した処理性能を得ることができる。
【0037】
また、処理ガスの循環によって、後述するように、ガスA又はBの供給量の変動や、供給するガスA内のCO2濃度やガスB内の水素濃度の変動が発生した場合でも、安定的に微生物処理を行うことが可能となる。
【0038】
図3は、
図2のメタンガス生成装置において、メタンガス転換効率を高めるため、各種機器(供給ポンプ、制御弁、濃度センサ等)を配置した図である。ガスAは供給ポンプP1によって供給され、ガスBは供給ポンプP2によって供給される。
図3では、ガスAとガスBとを混合し、さらに循環する処理ガスと一緒に嫌気性生物反応槽1に供給しているが、各々のガスを別々に反応槽1に供給することが可能であることは言うまでもない。また、ガスA又はBの供給源から圧力の高いガスが供給される場合には、供給ポンプに代えて供給量調整バルブ(制御弁)で構成することも可能である。また、循環する処理ガスの内圧が高い場合には、処理ガスの一部がガスAやガスBの供給側の方に逆流するのを抑制するため、循環ガスラインに接続する供給側のラインに逆止弁を配置することも可能である。
【0039】
さらに、反応槽1に供給されるガスのCO2濃度や水素濃度を測定する濃度センサーS1や、処理ガスに含まれるメタンガス濃度を測定する濃度センサーS2を配置することも可能である。これらの各種センサーの測定結果に基づき、供給ポンプP1及びP2、循環用送風機BL、さらには制御弁V2などを、制御手段CUで駆動制御を行うことも可能である。図中の点線矢印は、電気信号の伝達ルートを示している。なお、制御弁V2などには点線矢印が記載されていないが、当然、制御手段CUにより制御されるよう構成することが可能である。
【0040】
例えば、制御手段CUによる制御目標が、ガスAに含まれるCO2とガスBに含まれる水素の供給量が、嫌気性生物反応槽1内の微生物により全て処理される、所謂、転換効率100%である場合を例に、制御手段CUによる処理の一例を説明する。
単位時間当たりの供給量(供給流量)として、CO2流量a(L/h)や水素流量b(L/h)が想定され、反応式(1)の反応が成立するには、二酸化炭素ガスの流量aを基準に、水素流量bはb=4aであり、生成されたメタンガスの流量e(L/h)はe=aとなる。
【0041】
このためには、二酸化炭素を含むガスAと水素を含むガスBとの供給量を調整し、反応槽1の供給される二酸化炭素及び水素の供給量を調整するだけでなく、供給ガス中の二酸化炭素と水素のモル比、例えば、1:4となるように調整している。さらには、反応液(液体培地)中に水素より二酸化炭素の方が溶解し易いことを考慮し、例えば水素ガスの供給量を上記モル比より大きくすることも可能である。また、このモル比は、供給ガス中の質量比としても表現でき、供給ガス中の水素:二酸化炭素の質量比を、1:5.5~1:11の範囲内に設定する。
【0042】
ガスA及びガスBの供給量は、濃度センサーS1で二酸化炭素ガス濃度や水素濃度を測定し、濃度比又は各濃度から算出される質量比が所定の値となるよう、制御手段CUが各供給ポンプP1及びP2の駆動を制御している。
【0043】
反応槽1内で、供給された二酸化炭素や水素が微生物によって十分に処理されているか否かを判断するため、メタンガスの濃度を測定する濃度センサーS2を設けている。また、濃度センサーS2には、処理されていない残留ガスに含まれる二酸化炭素や水素の濃度を検知し、反応槽1内の微生物の処理能力を評価することも可能である。微生物の処理能力を上回る原料ガスの供給が行われている場合には、制御手段CUにより、ガスA及びガスBの供給量を制御することができる。
【0044】
循環ガスDの循環量は、処理ガスEのCH4濃度や反応槽1内の流動状態等に基づき設定される。循環量を制御するには、送風機(ブロア)BLの駆動を制御するだけでなく、必要に応じて制御弁V2又はV3の開閉又は開閉量の制御を行うことが可能である。
【0045】
上述のように、供給ガスであるガスA及びBの供給量を制御することで、反応槽1内の微生物により供給ガス中の全ての二酸化炭素(及び水素)をメタンガスに転換することは可能である。しかしながら、ガスA又はBの供給量の変動や、供給するガスA内のCO2濃度やガスB内の水素濃度の変動が発生した場合などでは、ガスA及びBの供給量を精度高く最適に制御することは困難である。しかも、稼働時間や環境温度等により微生物の総量が変動することもあり、ガスA及びBの供給量の制御はより難しくなる。
【0046】
これに対し、循環ガスDを設けることで、ガスA及びBの供給量(供給される二酸化炭素や水素の供給量)に対し、反応槽1に供給されるガス量(循環ガスを含む)を多くすることで、ガスA及びBの変動要因の影響を緩和させ、安定した微生物処理を実現することができる。ガスA及びBの供給量に対する循環ガスの循環量の割合(倍率)は、高いほど安定した運転が可能となるだけでなく、反応槽1内の流動状態が良くなり、好ましいと言える。また送風機BLの消費電力やガスHRT(原料となるガスの反応液中の滞留時間)を考慮すると、安定処理時のガス循環倍率を最大50倍以内、好ましくは2~20倍とする。ここで循環ガス量の倍率とは注入されるCO2ガス及びH2ガスの合計量に対する倍率である。
【0047】
例えば、濃度センサーS2がサンプルガスを採取して測定し、CH4濃度が50%以下と低い場合は、循環ガス量を一時的に増やして対応することが可能である。また、嫌気性生物反応槽1内の微生物の濃度が少なく、活性がまだ十分でない、立ち上げ初期などにおいては、供給されるガスAとガスBの合計量が少ないため、供給ガス量に対する循環ガス倍率が50倍程度として、撹拌効果を高めてもよい。
また、微生物には酸素が供給できないため、ガスA及びBを増加するより、循環ガスの量を増加させる方が、酸素が混入するリスクを抑制することも可能となる。
【0048】
嫌気性生物反応槽1におけるメタンガスへの転換効率を高くするためには、嫌気性生物反応槽1の処理ガス中のメタンガス濃度を常時測定しながら、供給する二酸化炭素ガスを含むガスA及び水素ガスを含むガスBの供給流量を調整し、転換効率を向上させることができる。
【0049】
例えば、濃度センサーS1を利用して、H2:CO2質量比が1:5.5~1:11となるように、ガスA及びBの各流量を調整するため、各供給ポンプP1及びP2ンプを制御する。嫌気性生物反応槽1に供給されるH2:CO2質量比が1:5.5~1:11から外れると、メタン生成反応に伴って、メタン生成反応に必要以上のH2またはCO2が供給されるため、メタン生成反応後にH2またはCO2が多く残留し、処理ガスのCH4濃度の低下を招く。しかも、排出ガス量も多くなり、後述するガス分離装置に対する分離負荷が過大となり、ガス分離膜のCH4分離性能が不安定となる。
【0050】
また、濃度センサーS2による処理ガス中のCH4濃度が50%以下と低い場合の対応方法として、ガスA及びガスBの流量を調整し、供給ガスのH2:CO2質量比が1:5.5~1:11となるようにする。仮に、供給ガスのH2:CO2質量比がすでに1:5.5~1:11範囲内であるものの、CH4濃度が50%以下と低い場合は、供給ガスのH2:CO2質量比をできるだけ1:5.5~1:7、好ましくは1:6~1:7とすることで、処理ガスのCH4濃度を向上させることが可能となる。
【0051】
濃度センサーS2で二酸化炭素濃度が検出できる場合には、二酸化炭素が検出できる程度までのガスAの供給量を増加させ、その上で、供給ガスのH2:CO2質量比が1:5.5~1:11範囲内となるよう、ガスBの供給量を調整する。当然、当該質量比を1:5.5~1:7、または1:6~1:7の範囲に変更し、メタンガスの転換効率を上げ、例えば、85%以上に高く維持することも可能となる。
【0052】
メタン生成反応に伴い、副生成物として少量のH2Oが生成されて、反応槽1内の反応液水位が上昇する。嫌気性生物反応槽1内の水位を一定にするためには、メタンガス生成に伴って増加する分量だけ、反応槽1の下部付近から排出する必要がある。排出液Gの排出方法として嫌気性生物反応槽1の水位が所定レベルを超えた時に、バルブV1を制御し、所定量を排出液Gとして排出することができる。また、所定量を連続排出しながら嫌気性生物反応槽1内の水位を、ほぼ一定に維持することも可能である。なお、流動担体を用いた場合は、嫌気性生物反応槽内の流動担体が流出しないように排出口付近に流動担体を分離できるスクリーンを設置することが望ましい。
【0053】
排出液中に浮遊微生物が高濃度に存在する場合は、固液分離して微生物のみを反応槽1に再び返送すれば、反応槽内の微生物濃度が高く維持できることから、安定したメタン生成性能が得られる。固液分離手段としては、膜分離や遠沈分離方式等を用いることが可能である。このように嫌気性生物反応槽内の汚泥濃度や流動状態を確認しながら、必要に応じて排出液に対し、固液分離を行い、微生物を嫌気性生物反応槽に戻すことも可能である。なお、微生物増殖に伴い、嫌気性生物反応槽内の浮遊汚泥濃度が増加し、浮遊汚泥の流動性や反応性に影響がある場合は適宜に槽内から浮遊汚泥を排出することが望ましい。
【0054】
排出液Gの排出に伴い、微生物に必要な栄養分も排出液とともに生物反応槽外部に排出されるため、排出分の補充を行う必要がある。この補充は、液体培地等の補充Fと一緒に行って良いし、不足する栄養剤成分のみ注入しても良い。例えば、添加する栄養剤成分及び濃度は表1に示すとおりである。栄養剤種類は、表1に示すように、基本的に栄養塩類、微量元素及びカチオン類に分けることができる。表1に示す濃度は嫌気性生物反応槽内の反応液中の濃度である。このため、メタン生成反応にて水生成に伴う排出液の排出量(排出液で排出される栄養成分の量)に応じた栄養剤量を添加して、反応液濃度を表1に示す範囲内に維持することが好ましい。特に、反応液中のNH4-Nが通気に伴い、NH3として徐々に揮散して残留濃度が低下することが確認されたため、NH4-N源を定期的に追加する必要がある。栄養源の添加(補充F)は、連続又はバッチ式でも同様な効果が得られる。
【0055】
図4は、生物反応槽の後段にNH
3除去手段であるNH
3除去装置を加えた本発明の他の一例を示す。ここでは、嫌気性生物反応槽1からの処理ガスEをNH
3除去装置3に導入している。NH
3除去装置3には清水又は弱酸性水溶液30が入れられており、揮散したNH
3ガスを水溶液中に溶解してNH
4-Nとする。また、NH
3が水中に溶解した場合、反応式NH
3+H
2O→NH
4OHに示すように若干、アルカリ性となる。このため、水槽の水溶液は予め弱酸性とすることが望ましい。
【0056】
NH3が溶解吸収されたNH3除去装置の水溶液は、定期的に吸収液ドレンより排出(I)される。排出液Iは反応液のN栄養源として再利用することができる。
【0057】
嫌気性生物反応槽から処理ガスEを排出する配管の先端は、NH3除去水槽の底部に導入されるため、NH3除去水槽の水深が嫌気性生物反応槽1への水頭圧となる。NH3除去水槽の水深が深いほど、嫌気性生物反応槽内部に対する水頭圧が高くなる。水頭圧が高いほど、嫌気性生物反応槽の内部圧力が高くなり、反応液に溶解しにくい水素ガスが多く溶解でき、微生物によるメタン生成反応が促進され、高いメタン生成速度や高いメタンガスへの転換効率が期待できる。
【0058】
NH3除去装置の水溶液等を入れる容器の形状としては、設置面積が少ない円柱形が好ましい。通常揮散するNH3が低濃度であり、水中NH3溶解度も高いため、除去装置内の必要水量が少なくてよい。このことから、細長い円柱形がより好ましい。水深としては反応槽1の水深と同程度の3~10mとすることが好ましい。
【0059】
図5は嫌気性生物反応槽の後段にガス分離手段であるガス分離装置4を加えた本発明の他の一例を示す。嫌気性生物反応槽1からの処理ガスを精製して純度の高いメタンガスを得るために処理ガスEをガス分離装置に導入し、メタンガスを分離精製すれば、純度の高いCH
4ガスを処理ガスLとして得られる。一方、メタンガス精製分離後、残りの水素及び二酸化炭素の混合ガスを分離残留ガスNの返送ラインを通じて、嫌気性生物反応槽の循環ガスDに合流し、嫌気性生物反応槽1の底部の散気手段2に供給されて、再びメタン生成反応に利用される。
【0060】
ガス分離装置4のCH4分離方式として、ガス分離膜方式、圧力変動吸着法(PSA法)、深冷分離法を用いることができる。この中でCH4ガスを濃縮し、CO2及びH2ガスが透過する膜分離方式の分離装置がコンパクトかつシンプル、そして高効率であり、操作も容易であることからその採用が好ましい。
【0061】
ガス分離膜の処理条件としては、ガス供給側圧力を50~500kPaとすることが適切である。供給側圧力が高いほどガス分離速度及び分離性能が高く得られるが、膜汚染や必要動力等を考慮すると、供給側圧力を50~250kPaとするのが好ましい。ガス分離装置内又はガス分離装置に繋がる配管に加圧ポンプを設けることも可能である。
【0062】
ガス分離装置に供給するガス中、ガス分離膜の被毒成分を含有する場合は、CH4の分離精製性能が悪化し、ガス透過速度の低下を招く。このガス分離膜の被毒成分として一般的にバイオガス中のシロキサンや硫化水素が挙げられる。このため、嫌気性生物反応槽1からの処理ガスを予め、被毒成分を除去する処理装置を別途設けることが望ましい。
【0063】
ガス分離膜として、一段のガス分離膜でCH4ガスを精製分離することが望ましいが、ガス分離膜の分離特性や供給ガスの成分や性状から2段のガス分離膜を設けてもよい。例えば、第一段でCO2ガスを分離した後、後続の第2段でH2ガスを分離することも可能である。
【0064】
図6は嫌気性生物反応槽1にNH
3除去装置3及びガス分離装置4を連結した本発明の他の一例を示す。
ここでは、ガス分離装置4にはNH
3除去装置3の処理ガスHを導入する。ガス分離装置4の処理ガスLは、純度の高いメタンガスであり、一方、分離残留後の水素及び二酸化炭素含有ガスを分離残留ガスNとして、嫌気性生物反応槽の循環ガスに導入される。
【0065】
次に、
図3に示すメタンガス生成装置を用いた実施例と、
図1に示す比較例に基づく実験結果を示す。これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、実施例の内容に発明を限定するものではない。
(実施例に係る条件)
嫌気性生物反応槽は、消化汚泥を種汚泥として立ち上げた浮遊汚泥方式とし、MLSS約15,000mg/L、水温55℃に設定した。
また、担体充填率を30V%とし、10mm四角のキューブ状担体使用した。担体の比表面積は1,000m
2/m
3であった。
水素ガス:二酸化炭素ガスの流量比は約4:1に設定した。
散気手段のガス注入方式としては、微細気泡散気管方式とし、散気管平均孔径30μmとした。
注入ガス(二酸化炭素ガス及び水素ガス)の供給量に対する循環ガスの循環量は注入ガスの約10倍(循環ガス倍率)とした。
注入水素ガス負荷HLRは60L/L-Reactor/dであり、注入混合ガス量は75L/L-Reactor/dとした。
なお、実験では注入ガス(二酸化炭素ガス及び水素ガス)に対する循環ガス倍率を0.2~50倍を変化させてメタン転換率の変化も検討した。また、50倍以上時のメタン転化率も検討した。
【0066】
(実施例の結果)
上記の結果、嫌気性生物反応槽でのメタン転換率はほぼ95%以上、反応槽から生成ガス中のCH4濃度が約80%得られた。
循環ガス倍率が0.5倍より少ない0.2倍の時はメタン転換率が50%以下と低い値となった。一方、循環ガス倍率を0.5~2倍とした時はメタン転換率が70~80%得られた。循環ガス倍率を2~20倍とした場合はメタン転化率が80~95%得られた。さらに循環ガス倍率を20倍以上とした場合はメタン転換率が常時95%以上と安定した処理性能が得られた。しかし、50倍以上とした時はメタン転換率は70%未満に低下した。
【0067】
これに対し、比較例は
図1に示す生物反応槽を用い、以下の条件で処理を行った。比較例ではガス供給方式を実施例と異なり、特許文献3の従来例で開示されているような、溶解効率の低い多孔管を使用した。また反応槽の攪拌混合を攪拌機より行い、ガス循環を行わず、その他の処理条件は実施例と同じとした。
(比較例に係る条件)
嫌気性生物反応槽は、消化汚泥を種汚泥として立ち上げた浮遊汚泥方式とし、MLSS約15,000mg/L、水温55℃に設定した。
水素ガス:二酸化炭素ガスの流量比は約4:1とした。
散気手段は実施例と同じ微細気泡散気方式とした。
攪拌機回転数は、150rpmとした。
注入水素ガス負荷HLRは、60L/L-Reactor/dであり、注入混合ガス量は75L/L-Reactor/dとした。
(比較例の結果)
上記の結果、メタン転換率が約65%、CH
4濃度約30%にとどまり実施例より著しく低い値となった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明によれば、微生物を用いた場合でも、高い効率で高濃度のメタンガスを生成可能な、二酸化炭素除去を含むメタンガス生成装置及び方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 嫌気性生物反応槽
2 散気手段
3 NH3除去手段(除去装置)
4 ガス分離手段(分離装置)
10 流動担体
A 二酸化炭素を含むガス
B 水素を含むガス
E 処理ガス